説明

光ピックアップ装置及び光ディスク装置

【課題】記録層とは別に設けられたトラックガイド層を有する多層光ディスクに対しても互換性を持たせると共に小型化し得ることが可能な光ピックアップ装置及び光ディスク装置を提供する。
【解決手段】第2の光ディスクの記録再生時に、第1のレーザ光を第2の光ディスクのトラックガイド層に集光し、第2のレーザ光を当該第2の光ディスクの記録層に集光する第2の対物レンズとを有し、第2の対物レンズは、第1のレーザ光は回折させ、第2のレーザ光は回折させない波長選択性の回折特性を有する第1のレンズと、第1のレンズにおいて回折された第1のレーザ光を第2の光ディスクのトラックガイド層に集光すると共に、第1のレンズを透過した第2のレーザ光を第2の光ディスクの記録層に集光する第2のレンズとを備えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ピックアップ装置及び光ディスク装置に関し、特に、記録層とは別に設けられたトラックガイド層を有する光ディスクに対して情報の読み書きを行う光ピックアップ装置及び光ディスク装置に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタル放送の多チャンネル化及びハイビジョン化が進み、これに伴いハイビジョン対応の映像情報機器が普及しつつある。そのため、個人の取扱うデータ量は増加する一方の状況にある。このような状況下で従来のBD(Blu-ray Disc)よりも大容量化を図ったBDXL規格(3層で約100GB、4層で約128GBの容量)が策定され、この規格に対応した光ディスク装置が商品化されている。
【0003】
特許文献1では、さらなる大容量化を目指し、トラックガイド層と複数の記録層とが分離して形成された多層光ディスクが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−59092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記特許文献1では、上記多層光ディスクと、従来の光ディスクであるBD(BDXLを含む)、DVD(Digital Versatile Disk)及び又はCD(Compact Disc)との互換性を図ることについては考慮されておらず、そのための技術については何らの開示もない。
【0006】
また、従来の光ピックアップ装置でトラックガイド層と複数の記録層とが分離して形成された多層光ディスクの情報の読み書きを行う場合、波長の異なる2種類のレーザ光をレーザ光の光軸の中心が一致している状態で共通の対物レンズに入射させ、一方のレーザ光を記録層に集光させるにより情報の読み取り及び書込みを行い、他方のレーザ光をトラックガイド層に集光させることによりトラッキング誤差信号を検出している。しかしながら、このように従来技術によると、トラッキングガイド層上にレーザ光を集光させるために、コリメートレンズの移動量を大きくしなければならず、これにより、球面収差補正手段が大型化してしまうので光ピックアップ装置全体としてサイズが大きくなる問題があった。
【0007】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、記録層とは別に設けられたトラックガイド層を有する多層光ディスクに対しても互換性を持たせると共に小型化し得ることが可能な光ピックアップ装置及び光ディスク装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するために本発明においては、記録層にレーザ光を照射し、当該レーザ光の前記記録層における反射光に基づいてトラッキング制御を行う第1の光ディスクと、記録層とは別個にトラックガイド層が設けられ、当該トラックガイド層にレーザ光を照射し、当該レーザ光の前記トラックガイド層における反射光に基づいてトラッキング制御を行う第2の光ディスクとの双方に対応した光ピックアップ装置において、前記第1の光ディスクの規格に応じた第1の波長の第1のレーザ光を発射する第1のレーザ光源と、前記第1の光ディスクの記録再生時に、前記第1のレーザ光源から発射された前記第1のレーザ光を前記第1の光ディスクの前記記録層に集光する第1の対物レンズと、前記第2の光ディスクの規格に応じた第2の波長の第2のレーザ光を発射する第2のレーザ光源と、前記第2の光ディスクの記録再生時に、前記第1のレーザ光を前記第2の光ディスクの前記トラックガイド層に集光し、前記第2のレーザ光を当該第2の光ディスクの前記記録層に集光する第2の対物レンズとを有し、前記第2の対物レンズは、前記第1のレーザ光は回折させ、前記第2のレーザ光は回折させない波長選択性の回折特性を有する第1のレンズと、前記第1のレンズにおいて回折された前記第1のレーザ光を前記第2の光ディスクの前記トラックガイド層に集光すると共に、前記第1のレンズを透過した前記第2のレーザ光を前記第2の光ディスクの前記記録層に集光する第2のレンズとを備えるようにした。
【0009】
また、本発明においては、光ディスク装置において、記録層にレーザ光を照射し、当該レーザ光の前記記録層における反射光に基づいてトラッキング制御を行う第1の光ディスクと、記録層とは別個にトラックガイド層が設けられ、当該トラックガイド層にレーザ光を照射し、当該レーザ光の前記トラックガイド層における反射光に基づいてトラッキング制御を行う第2の光ディスクとの双方に対応した光ディスク装置において、前記第1及び第2の光ディスクに対し光学的に情報を読み書きする光ピックアップ装置と、前記光ピックアップ装置内における前記第1及び第2のレーザ光源を駆動するレーザ点灯回路と、前記光ピックアップ装置から検出された信号を用いてフォーカス誤差信号やトラッキング誤差信号を生成するサーボ信号再生回路と、光ディスクに書き込まれた情報信号を再生する情報信号再生回路とを備え、前記光ピックアップ装置は、前記第1の光ディスクの規格に応じた第1の波長の第1のレーザ光を発射する第1のレーザ光源と、前記第1の光ディスクの記録再生時に、前記第1のレーザ光源から発射された前記第1のレーザ光を前記第1の光ディスクの前記記録層に集光する第1の対物レンズと、前記第2の光ディスクの規格に応じた第2の波長の第2のレーザ光を発射する第2のレーザ光源と、前記第2の光ディスクの記録再生時に、前記第1のレーザ光を前記第2の光ディスクの前記トラックガイド層に集光し、前記第2のレーザ光を当該第2の光ディスクの前記記録層に集光する第2の対物レンズとを有し、前記第2の対物レンズは、前記第1のレーザ光は回折させ、前記第2のレーザ光は回折させない波長選択性の回折特性を有する第1のレンズと、前記第1のレンズにおいて回折された前記第1のレーザ光を前記第2の光ディスクの前記トラックガイド層に集光すると共に、前記第1のレンズを透過した前記第2のレーザ光を前記第2の光ディスクの前記記録層に集光する第2のレンズとを備えるようにした。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、記録層とは別に設けられたトラックガイド層を有する多層光ディスクに対しても互換性を持たせると共に小型化することが可能な光ピックアップ装置及び光ディスク装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施の形態による光ディスク装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】従来の光ピックアップ装置の構成例を示す平面図である。
【図3】従来の光ピックアップ装置の構成例を示す平面図である。
【図4】(A)はトラックガイド層のカバー層厚とコリメートレンズの移動量との関係を示すグラフであり、(B)は、トラックガイド層のカバー層厚T5とBD/DVD/CD互換対物レンズへの入射光収束角度との関係を示すグラフである。
【図5】BD/DVD/CD互換対物レンズのシフト量と、3次コマ収差量との関係を示すグラフである。
【図6】従来の光ピックアップ装置の構成例を示す平面図である。
【図7】従来の光ピックアップ装置の構成例を示す平面図である。
【図8】(A)はトラックガイド層のカバー層厚とコリメートレンズの移動量との関係を示すグラフであり、(B)は、トラックガイド層のカバー層厚T5とBD用対物レンズへの入射光収束角度との関係を示すグラフである。
【図9】DVD/CD互換対物レンズのシフト量と、3次コマ収差量との関係を示すグラフである。
【図10】第1の実施の形態による光ピックアップ装置の構成例を示す平面図である。
【図11】第1の実施の形態による光ピックアップ装置の構成例を示す平面図である。
【図12】第1の実施の形態によるBD/トラックガイド層互換対物レンズの構造の説明に供する側面図である。
【図13】(A)は、第1の実施の形態によるBD/トラックガイド層互換対物レンズのレンズにおける曲率半径の情報であり、(B)は、第1の実施の形態によるBD/トラックガイド層互換対物レンズを構成する各レンズの中心厚、中心間の間隔及び光ディスクの表面層までの距離の情報であり、(C)は、第1の実施の形態によるBD/トラックガイド層互換対物レンズにおける非球面定数の情報である。
【図14】(A)は、第1の実施の形態によるBD/トラックガイド層互換対物レンズのレンズにおける曲率半径の情報であり、(B)は、第1の実施の形態によるBD/トラックガイド層互換対物レンズを構成する各レンズの中心厚、中心間の間隔及び光ディスクの表面層までの距離の情報であり、(C)は、第1の実施の形態によるBD/トラックガイド層互換対物レンズにおける非球面定数の情報である。
【図15】(A)は、トラックガイド層のカバー層厚とコリメートレンズの移動量との関係を示すグラフであり、(B)は、DVD/CD互換対物レンズのシフト量と、3次コマ収差量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0013】
(1)本実施の形態による光ディスク装置の構成
図1において、1は全体として本実施の形態による光ディスク装置を示す。この光ディスク装置1は、スピンドルモータ2、スピンドルモータ駆動回路4、光ピックアップ装置5、レーザ点灯回路6、情報信号再生回路7、情報信号出力端子8、サーボ信号再生回路9、対物レンズ駆動制御回路10、BD/トラックガイド層互換対物レンズ11、球面収差補正素子駆動回路12、アクセス制御回路13、システム制御回路14、ユーザ入力処理回路15、ユーザ入力装置16、表示処理回路17及び表示装置18を備えて構成される。
【0014】
光ディスク3は、円盤状の情報記録体であり、その中心がスピンドルモータ2の回転軸に固定されている。このスピンドルモータ2は、スピンドルモータ駆動回路4によって電力が供給されることにより、回転軸を回転駆動する。
【0015】
また光ピックアップ装置5は、光ディスク3に対して光学的に情報を記録及び再生する光学部品である。レーザ点灯回路6から光ピックアップ装置5内に組み込まれた後述する半導体レーザに所定のレーザ駆動電流が供給されることで、当該半導体レーザからは再生に応じて所定の光量でレーザ光が出射される。なお、レーザ点灯回路6は光ピックアップ装置5内に組み込むこともできる。
【0016】
光ピックアップ装置5の出力信号は、情報信号再生回路7及びサーボ信号再生回路9に送信される。情報信号再生回路7は、情報信号出力端子8と接続されており、この情報信号出力端子8を介して光ピックアップ装置5からの出力信号に基づいて光ディスク3に記録された情報信号であるRF(Radio Frequency)信号を再生する。そして、サーボ信号再生回路9では、光ピックアップ装置5からの出力信号に基づいてフォーカス誤差信号及びトラッキング誤差信号などのサーボ信号が生成され、これを基に対物レンズ駆動制御回路10を経て光ピックアップ装置5に搭載されたBD/トラックガイド層互換対物レンズ11の位置制御がなされる。また、球面収差補正素子駆動回路12は、この生成されたサーボ信号を基に光ピックアップ装置5に搭載された後述するコリメートレンズを光軸方向へ移動させることによって球面収差を補正する。
【0017】
さらに光ピックアップ装置5には、光ディスク3のラジアル方向に沿って光ピックアップ装置5を駆動するための機構が設けられており、アクセス制御回路13からのアクセス信号に応じて位置制御される。
【0018】
システム制御回路14は、図示しないCPU(Central Processing Unit)及びメモリなどを備えるマイクロコンピュータである。システム制御回路14には、スピンドルモータ駆動回路4、レーザ点灯回路6、情報信号再生回路7、サーボ信号再生回路9、球面収差補正素子駆動回路12及びアクセス制御回路13などが接続され、スピンドルモータ駆動回路4、情報信号再生回路7、サーボ信号再生回路9及びアクセス制御回路13からの信号に基づいてスピンドルモータ駆動回路4、レーザ点灯回路6、サーボ信号再生回路9、球面収差補正素子駆動回路12及びアクセス制御回路13それぞれに制御信号を送信し、光ディスク3を回転させるスピンドルモータ2の回転制御、光ピックアップ装置5の位置制御、BD/トラックガイド層互換対物レンズ11の位置制御、球面収差補正及び光ピックアップ装置5内の半導体レーザ発光光量の制御などが行われる。
【0019】
なお、上述の光ディスク装置1をユーザが制御する場合、ユーザは、ユーザ入力装置16からユーザ入力処理回路15に指示することによって制御を行う。その際、光ディスク装置1の処理状態等の表示は表示処理回路17によって行われ、表示装置18にその処理状態が表示される。
【0020】
(2)従来の光ピックアップ装置の構成
続いて、図1の光ディスク装置1に搭載された本実施の形態による光ピックアップ装置5を説明する。これに際し、まず従来の光ピックアップ装置20の構成について説明する。
【0021】
図2は、従来の光ピックアップ装置20の構成例を示す。なお、図2では光ディスク3としてBD、DVD及びCDの表面層30及び各記録層31A〜31Cを同一紙面に記載しており、31AはBDのある記録層を、31BはDVDの記録層を、また、31CはCDの記録層を示す。図中、T1は光ディスク3の表面層30からBDの記録層31Aまでのカバー層厚さを示しており、最大約0.1〔mm〕である。また、T2は光ディスク3の表面層30からDVDの記録層31Bまでのカバー層厚さを示しており、約0.6〔mm〕である。T3は光ディスク3の表面層30からCDの記録層31Cまでのカバー層厚さを示しており、約1.2〔mm〕である。
【0022】
光ピックアップ装置20は、図2に示すように、BDに対して情報を光学的に読み書きするための第1の光学系と、CD又はDVDに対して情報を光学的に読み書きするための第2の光学系とを備える。
【0023】
このうち、第1の光学系は、BD用半導体レーザ21、コリメートレンズ22、合成素子24及びBD/DVD/CD互換対物レンズ25を備えて構成される。
【0024】
BD用半導体レーザ21は、BD規格に対応した405〔nm〕帯の波長を有するレーザ光を発射するレーザダイオードである。このBD用半導体レーザ21から発射されたレーザ光L1は、コリメートレンズ22において平行化された後、例えば偏光ビームスプリッタなどから構成される合成素子24を介してBD/DVD/CD互換対物レンズ25に入射し、このBD/DVD/CD互換対物レンズ25により光ディスク3(BD)の記録層31A上に集光されて、光スポット32Aを形成する。なお、第1の光学系では、コリメートレンズ22を矢印23に示す光軸方向に移動させることで球面収差を補正することができる。
【0025】
また、光ディスク3を反射した反射光であるレーザ光L1は、合成素子24を介してコリメートレンズ22に入射し、このコリメートレンズ22において収束光に変換された後に、図示しない光検出器の受光面上に集光される。そして、この光検出器の受光面に入射したレーザ光L1は、光検出器により光電変換される。光検出器は、得られた信号を情報信号再生回路7及びサーボ信号再生回路9に送信する。かくして、光検出器からの信号に基づいて、情報信号再生回路7において再生信号であるRF信号が生成され、サーボ信号再生回路9においてサーボ信号であるフォーカス誤差信号及びトラッキング誤差信号などが生成される。
【0026】
一方、第2の光学系は、DVD/CD互換半導体レーザ26、コリメートレンズ27、合成素子24及びBD/DVD/CD互換対物レンズ25を備えて構成される。
【0027】
DVD/CD互換半導体レーザ26は、CD規格に対応した785〔nm〕帯の波長を有するレーザ光L2と、DVD規格に対応した660〔nm〕帯の波長を有するレーザ光L3とを発射可能なレーザダイオードである。このDVD/CD互換半導体レーザ26から発射されたレーザ光L2,L3は、コリメートレンズ27において平行化された後、合成素子24を介してBD/DVD/CD互換対物レンズ25に入射し、このBD/DVD/CD互換対物レンズ25により光ディスク3(DVD又はCD)の記録層31B,31C上に集光されて、光スポット32B,32Cを形成する。
【0028】
なお、CD及びDVDに対して情報の読み書きを行う際には、球面収差の補正をする必要がない。これは、BDでは、CD及びDVDよりも高開口数の対物レンズを使用して情報の読み書きを行うので、例えば2層以上の記録層を有する光ディスク3に対して情報の読み書きをしようとすると、記録層間のフォーカスジャンプの際に光ディスク3(BD)の表面層30からそれぞれの記録層までの厚さの違いによって球面収差が大きく発生してしまうためである。従って、BDでは、記録層間のフォーカスジャンプを行う際は、対物レンズのフォーカシングを行うと同時に球面収差の補正も行わなければならない。また、光ディスク3のカバー層の厚み誤差により生じる球面収差によって適切な情報の読み書きを妨げられるということもある。この球面収差は対物レンズの開口数の4乗に比例して発生する。従ってBDと比べて開口数が比較的小さい従来のCDやDVDの場合には保護層の厚さの誤差による球面収差の発生量は十分小さいので、特別に球面収差を補正する必要はなくなる。
【0029】
光ディスク3を反射した反射光であるレーザ光L2,L3は、合成素子24を介してコリメートレンズ27に入射する。そしてこのレーザ光L2,L3は、コリメートレンズ27において収束光に変換された後に、図示しない光検出器の受光面上に集光される。そして、光検出器の受光面に入射したレーザ光L2,L3は、この光検出器によって光電変換される。
【0030】
図2との対応部分に同一符号を有した図3は、図2について上述した従来の光ピックアップ装置20により、記録層とは別にトラックガイド層を有する光ディスク3に情報を読み書きする場合の様子を示す。
【0031】
なお、図3において、30は光ディスク3の表面層を、31Aは光ディスク3のある記録層を、33は光ディスク3のトラックガイド層を示す。また、図3中、T4は光ディスク3の表面層30から記録層31Aまでのカバー層厚さを示し、T5は光ディスク3の表面層30からトラックガイド層33までのカバー層厚さを示す。
【0032】
また、以下では、説明を簡単にするため、光ディスク3をBDとして、また、光ディスク3の表面層30からトラックガイド層33までのカバー層厚T5を0.3〔mm〕として説明する。さらに、以下では、光ピックアップ装置20が、BDに対して読み書きする場合についてのみ説明するが、レーザ光L1をレーザ光L2又はレーザ光L3に切り替えることによって、CD及びDVDに対してもBDの情報を読み書きする場合と同様にして読み書きすることができるものとする。
【0033】
図3に示すような記録層31Aとは別にトラックガイド層33を有する光ディスク3に対して情報を読み書きする場合、光ピックアップ装置20は、CD又はDVDに対して情報を光学的に読み書きするための第2の光学系を用いてトラッキング誤差信号を検出する。
【0034】
具体的に、光ピックアップ装置20は、DVD/CD互換半導体レーザ26から出射するレーザ光L2又はレーザ光L3を光ディスク3のトラックガイド層33に照射する。この際、光ピックアップ装置20は、トラックガイド層33を反射した反射光であるレーザ光L2,L3に基づいてトラッキング誤差信号を生成する。なお、以下では、説明を簡単にするため、トラッキング誤差信号を検出するためのレーザ光としてDVDに対して情報を光学的に読み書きするためのレーザ光L3を用いる場合について説明する。
【0035】
実際上、上述の光ディスク3(BD)の読み取りを行うには、まず、BDを読み取るためのレーザ光L1をBD用半導体レーザ21より出射させる。レーザ光L1は、コリメートレンズ22を介して合成素子24に入射され、この合成素子24によってレーザ光L3と合成されてBD/DVD/CD互換対物レンズ25に入射する。そして、レーザ光L1は、BD/DVD/CD互換対物レンズ25により光ディスク3(BD)の記録層31A上に集光されて、光スポット22Aを形成する。そして、光ディスク3を反射した反射光であるレーザ光L1は、BD/DVD/CD互換対物レンズ25、合成素子24及びコリメートレンズ22を順次介して図示しない光検出器の受光面上に集光される。そして、このレーザ光L1に基づいて再生信号であるRF信号が生成される。
【0036】
このとき、DVD/CD互換半導体レーザ26からも、レーザ光L3が発射され、このレーザ光L3が、コリメートレンズ27において平行化された後、合成素子24よってレーザ光L1と合成されてBD/DVD/CD互換対物レンズ25に入射する。そして、レーザ光L3は、BD/DVD/CD互換対物レンズ25を介して光ディスク3(BD)のトラックガイド層33上に集光されて、光スポット22Bを形成し、そして、光ディスク3を反射した反射光であるレーザ光L3は、BD/DVD/CD互換対物レンズ25、合成素子24及びコリメートレンズ27を順次介して図示しない光検出器の受光面上に集光される。そして、このレーザ光L3に基づいてサーボ信号であるフォーカス誤差信号及びトラッキング誤差信号などが生成される。なお、第2の光学系では、コリメートレンズ27を矢印28に示す光軸方向に移動させることで球面収差を補正することができる。
【0037】
ここで、光ピックアップ装置20において、BD/DVD/CD互換対物レンズ25は、DVD/CD互換半導体レーザ26から発射されたレーザ光L3が光ディスク3の表面層30からDVDの記録層31Bまでのカバー層厚さ約0.6〔mm〕の位置で集光し、光スポット32Bを形成するように設計されている。このため、レーザ光L3を表面層30からのカバー層厚が0.3〔mm〕であるトラックガイド層33上で集光させるためには、コリメートレンズ27を矢印28に示す光軸方向で移動させることにより焦点距離を変更しなければならない。
【0038】
従って、カバー層厚が0.3〔mm〕であるトラックガイド層33上にレーザ光L3を集光するようにしたことで生じる問題について、図4及び図5を用いて以下に説明する。
【0039】
図4(A)は、トラックガイド層33のカバー層厚T5とコリメートレンズ27の移動量との関係を示す。
【0040】
図4(A)に示すように、光ディスク3の表面層30からトラックガイド層33までのカバー層厚T5が光ディスク3(DVD)の表面層30から光ディスク3(DVD)の記録層31Bまでのカバー層厚T2である約0.6〔mm〕から小さくなるに従ってコリメートレンズ27の光軸方向移動量がプラス(+)方向、すなわちBD/DVD/CD互換対物レンズ25に向かう方向に増加する。例えば、カバー層厚T5が0.3〔mm〕の場合には光軸方向移動量が約13〔mm〕という大きな値となることが分かる。
【0041】
また、図4(B)は、トラックガイド層33のカバー層厚T5とBD/DVD/CD互換対物レンズ25への入射光収束角度との関係を示す。
【0042】
図4(B)に示すように、光ディスク3の表面層30からトラックガイド層33までのカバー層厚T5が光ディスク3(DVD)の表面層30から光ディスク3(DVD)の記録層31Bまでのカバー層厚T2である約0.6〔mm〕から小さくなるに従ってレーザ光L3のBD/DVD/CD互換対物レンズ25への入射光収束角度(半角)が増加する。例えば、カバー層厚さT5が0.3〔mm〕の場合には入射光収束角度(半角)が約1.8度という大きな値となることが分かる。
【0043】
さらに、図5は、BD/DVD/CD互換対物レンズ25のシフト量と3次コマ収差量との関係を示す。
【0044】
図5に示すように、光ディスク3の表面層30からトラックガイド層33までのカバー層厚T5が光ディスク3(DVD)の表面層30から光ディスク3(DVD)の記録層31Bまでのカバー層厚T2である約0.6〔mm〕から小さくなるに従ってBD/DVD/CD互換対物レンズ25のラジアル方向のシフト量が大きくなり、トラックガイド層33に集光された光スポット32Bに発生する3次コマ収差量が顕著に大きくなる。例えば,カバー層厚さT5が0.3〔mm〕の場合にはBD/DVD/CD互換対物レンズ25がラジアル方向に0.3〔mm〕シフトすると約0.07〔λrms〕という大きなコマ収差が発生することが分かる。
【0045】
上述のようにBD、DVD及びCDのどの光ディスクを読み書きする場合も、共通のBD/DVD/CD互換対物レンズ25を使用した従来の光ピックアップ装置20がBDに対して情報の読み書きを行うためには、例えばDVDに対して情報を光学的に読み書きするための第2の光学系を用いてトラッキング誤差信号を検出しなければならない。
【0046】
この場合、DVDに対して情報を光学的に読み書きするレーザ光L3は、BDのトラックガイド層33上に集光するように調整しなければならず、このため、レーザ光L3が、大きな収束角度でBD/DVD/CD互換対物レンズ25に入射することが必要となる。従って、コリメートレンズ27の必要移動量が大きくなり、球面収差補正手段が大型化する。また、BD/DVD/CD互換対物レンズ25に入射するレーザ光L3の収束角度が大きくなることで、例えばBD/DVD/CD互換対物レンズ25を少しだけラジアル方向にシフトさせた場合でもトラックガイド層33での光スポット22Bに大きなコマ収差が発生してしまい、トラッキングサーボ特性や記録再生品質が著しく劣化する。
【0047】
以上から、この従来の光ピックアップ装置20では、記録層と別にトラックガイド層を有する光ディスク3に対して、BD、DVD及びCD等との互換性を持たせた光ピックアップ装置20を実現するのは困難であることが分かる。
【0048】
続いて、図6〜図9を用いて、図2〜図5で説明した光ピックアップ装置20と構成の異なる光ピックアップ装置100のもう1つの構成例について説明する。
【0049】
図6に示す光ピックアップ装置100は、BD用対物レンズ101とDVD/CD互換対物レンズ103との2つの対物レンズを用いることによって光ディスク3に対する情報の読み書きを行うことが異なる点を除いて図2に示した光ピックアップ装置と同様に構成されている。
【0050】
実際上、図2に示した光ピックアップ装置20において、BD、DVD及びCDのいずれの光ディスク3に情報を読み書きする場合も共通のBD/DVD/CD互換対物レンズ25を使用した場合について説明したが、図6に示す光ピックアップ装置100では、BD、DVD及びCDを読み書きする場合にそれぞれ別々の専用レンズであるBD用対物レンズ101又はDVD/CD互換対物レンズ103を使用する。
【0051】
このように、光ディスク3に情報を読み書きする際に、それぞれ別々の専用レンズであるBD用対物レンズ101又はDVD/CD互換対物レンズ103を使用することによって、再生信号であるRF信号の精度を上げることが可能となる。
【0052】
図6は、このような光ピックアップ装置100の構成例を示す。なお、図6では光ディスク3としてBD、DVD及びCDの表面層30及び各記録層31A〜31Bを同一紙面に記載しており、31AはBDのある記録層を、31BはDVDの記録層を、また、31CはCDの記録層を示す。
【0053】
光ピックアップ装置100は、図6に示すように、BDに対して情報を光学的に読み書きするための第1の光学系と、CD又はDVDに対して情報を光学的に読み書きするための第2の光学系とを備える。
【0054】
このうち、第1の光学系は、BD用半導体レーザ21、コリメートレンズ22、合成素子24及びBD用対物レンズ101を備えて構成される。
【0055】
そして、BD用半導体レーザ21から発射されたレーザ光L1は、コリメートレンズ22及び合成素子24を順次介してBD用互換対物レンズ90に入射し、このBD用対物レンズ101により光ディスク3(BD)の記録層31A上に集光されて、光スポット22Aを形成する。
【0056】
また、光ディスク3を反射した反射光であるレーザ光L1は、合成素子24及びコリメートレンズ22を順次介して、図示しない光検出器の受光面上に集光される。
【0057】
一方、第2の光学系は、DVD/CD互換半導体レーザ26、コリメートレンズ27、切替え分岐光学素子102及びDVD/CD互換対物レンズ103を備えて構成される。
【0058】
そして、DVD/CD互換半導体レーザ26から発射されたレーザ光L2,L3は、コリメートレンズ27において平行化された後、例えば、液晶を使った変更切換え素子などから構成される切替え分岐光学素子102を介してDVD/CD互換対物レンズ103に入射し、このDVD/CD互換対物レンズ103により光ディスク3(DVD又はCD)の記録層31B,31C上に集光されて、光スポット32B,32Cを形成する。
【0059】
また、光ディスク3を反射した反射光であるレーザ光L2,L3は、切替え分岐光学素子102及びコリメートレンズ27を順次介して図示しない光検出器の受光面上に集光される。そして、この光検出器によって受光面に入射したレーザ光L2,L3は、光電変換される。
【0060】
図6との対応部分に同一符号を付した図7は、図6について上述した従来の光ピックアップ装置100により、記録層とは別にトラックガイド層を有する光ディスク3に情報を読み書きする場合の様子を示す。
【0061】
以下では、説明を簡単にするため、光ディスク3をBDとして説明する。また、以下では、光ピックアップ装置100が、BDに対して読み書きする場合についてのみ説明するが、レーザ光L1をレーザ光L2又はレーザ光L3に切り替えることによって、CD及びDVDに対してもBDに情報を読み書きする場合と同様にして読み書きすることができるものとする。
【0062】
図6に示すような、記録層31Aとは別にトラックガイド層33を有する光ディスク3に対して情報を読み書きする場合、光ピックアップ装置100は、CD又はDVDに対して情報を光学的に読み書きするための第2の光学系を用いてトラッキング誤差信号を検出する。なお、以下では、説明を簡単にするため、トラッキング誤差信号を検出するためのレーザ光としてDVDに対して情報を光学的に読み書きするためのレーザ光L3を用いる場合について説明する。
【0063】
実際上、上述の光ディスク3(BD)から情報の読み出しを行うには、まず、レーザ光L1をBD用半導体レーザ21より出射させる。レーザ光L1は、コリメートレンズ22、合成素子24及びBD用対物レンズ101を介して光ディスク3(BD)の記録層31A上に集光されて光スポット32Aを形成する。そして、光ディスク3を反射した反射光であるレーザ光L1は、BD用対物レンズ101、合成素子24及びコリメートレンズ22を順次介して図示しない光検出器の受光面上に集光される。そして、このレーザ光L1に基づいて再生信号であるRF信号が生成される。
【0064】
一方、DVD/CD互換半導体レーザ26から発射されたレーザ光L3は、コリメートレンズ27において平行化された後、切替え分岐光学素子102によって反射され、合成素子24及びBD用対物レンズ101を介して光ディスク3(BD)のトラックガイド層33上に集光されて、光スポット32Bを形成する。そして、光ディスク3を反射した反射光であるレーザ光L3は、BD用対物レンズ101、合成素子24、切替え分岐光学素子102、コリメートレンズ27を順次介して図示しない光検出器の受光面上に集光される。
【0065】
ここで、光ピックアップ装置100において、BD用対物レンズ101は、入射したレーザ光が光ディスク3の表面層30からBDの記録層31Aまでのカバー層厚さ約0.1〔mm〕の位置で集光するように設計されている。このため、レーザ光L3もBD用対物レンズ101に入射すると光ディスク3の表面層30から約0.1〔mm〕の位置で集光してしまう。このため、レーザ光L3を表面層30からのカバー層厚が0.3〔mm〕であるトラックガイド層33上で集光させるためには、コリメートレンズ27を矢印110に示す光軸方向で移動させることにより焦点距離を変更しなければならない。
【0066】
従って、カバー層厚が0.3〔mm〕であるトラックガイド層33上にレーザ光L3を集光するようにしたことで生じる問題について、図8及び図9を用いて以下に説明する。
【0067】
図8(A)は、トラックガイド層33のカバー層厚T5とコリメートレンズ27の移動量との関係を示す。
【0068】
図8(A)に示すように、光ディスク3の表面層30からトラックガイド層33までのカバー層厚さT5がBDの表面層30からBDの記録層31Aまでのカバー層厚T1である約0.1〔mm〕から大きくなるに従ってコリメートレンズ27の光軸方向移動量がマイナス(−)方向、すなわちBD用対物レンズ101から離れる方向に増加する。例えば、カバー層厚T5が0.3〔mm〕の場合には光軸方向移動量が約−7.5〔mm〕という大きな値となることが分かる。
【0069】
また、図8(B)は、トラックガイド層33のカバー層厚T5とBD用対物レンズ101への入射光収束角度との関係を示す。
【0070】
図8(B)に示すように、光ディスク3の表面層30からトラックガイド層33までのカバー層厚さT5がBDの表面層30からBDの記録層31Aまでのカバー層厚T1である約0.1〔mm〕から大きくなるに従ってBD用対物レンズ101への入射光発散角度(半角)が増加する。例えば、カバー層厚さT5が0.3〔mm〕の場合には入射光発散角度(半角)が約1.7度という大きな値となることが分かる。
【0071】
さらに、図9は、BD用対物レンズ101のシフト量と3次コマ収差量との関係を示す。
【0072】
図9に示すように、光ディスク3の表面層30からトラックガイド層33までのカバー層厚さT5がBDの表面層30からBDの記録層31Aまでのカバー層厚T1である約0.1〔mm〕から大きくなるに従ってBD用対物レンズ101のラジアル方向のシフト量が大きくなり、トラックガイド層33に集光された光スポット32Bに発生する3次コマ収差量が顕著に大きくなる。例えば,カバー層厚さT5が0.3〔mm〕の場合にはBD用対物レンズ101がラジアル方向に0.3〔mm〕シフトすると約0.06〔λrms〕という大きなコマ収差が発生することが分かる。
【0073】
上述のようにBD、DVD及びCD等の光ディスク3を読み書きする場合において対応するそれぞれ別々のBD用対物レンズ101又はDVD/CD互換対物レンズ103を使用した従来の光ピックアップ装置100がBDに対して情報の読出し及び書込みを行うためには、例えばDVDに対して情報を光学的に読み書きするためのレーザ光L3及びBD用対物レンズ101を使用してトラッキング誤差信号を検出しなければならない。
【0074】
この場合、レーザ光L3は、BDのトラックガイド層上に集光するように調整しなければならず、このため、レーザ光L3が、大きな発散角度でBD用対物レンズ101に入射することが必要となる。従って、コリメートレンズ27の必要移動量が大きくなり、球面収差補正手段が大型化する。また、BD用対物レンズ101に入射する発散角度が大きくなることで、例えばBD用対物レンズ101を少しだけラジアル方向にシフトさせた場合でもトラックガイド層33での光スポット22Bに大きなコマ収差が発生してしまい、トラッキングサーボ特性や記録再生品質が著しく劣化する。
【0075】
以上から、この従来の光ピックアップ装置100では、記録層と別にトラックガイド層を有する光ディスク3に対して、BD、DVD及びCD等との互換性を持たせた光ピックアップ装置100を実現するのは困難であることが分かる。
【0076】
(3)本実施の形態による光ピックアップ装置の構成
次に、図1の光ディスク装置1に搭載された本実施の形態による光ピックアップ装置5を説明について説明する。
【0077】
光ピックアップ装置5は、図10に示すように、BDに対して情報を光学的に読み書きするための第1の光学系と、CD又はDVDに対して情報を光学的に読み書きするための第2の光学系とを備える。
【0078】
このうち、第1の光学系は、BD用半導体レーザ21、コリメートレンズ22、合成素子24及びBD/トラックガイド層互換対物レンズ11を備えて構成される。
【0079】
そして、BD用半導体レーザ21から発射されたレーザ光L1はコリメートレンズ22及び合成素子24を順次介してBD/トラックガイド層互換対物レンズ11に入射し、このBD/トラックガイド層互換対物レンズ11により光ディスク3(BD)の記録層31A上に集光され、光スポット22Aを形成する。
【0080】
また、光ディスク3を反射した反射光であるレーザ光L1は、BD/トラックガイド層互換対物レンズ11、合成素子24及びコリメートレンズ22を介して、図示しない光検出器の受光面上に集光される。
【0081】
第2の光学系については、図6について上述した従来の光ピックアップ装置100と同様の構成であるため、詳細な説明は省略する。
【0082】
図8との対応部分に同一符号を付して示す図11は、本実施の形態による光ピックアップ装置5が記録層と別にトラックガイド層を有する光ディスク3に対して情報を読み書きする状態を示す。
【0083】
図9に示すような記録層31Aと別にトラックガイド層33を有する光ディスク3に対して情報を読み書きする場合、光ピックアップ装置5は、BDに対して情報を読み書きするための第1の光学系を用いて再生信号であるRF信号を生成し、さらに、CD又はDVDに対して情報を光学的に読み書きするための第2の光学系を用いてトラッキング誤差信号を検出する。なお、本実施の形態による光ピックアップ装置5では、DVDに対して情報を光学的に読み書きするためのレーザ光L3を用いてトラッキング誤差信号を検出する。また、トラックガイド層33を有する光ディスク3に対して読み書きする本実施の形態による光ピックアップ装置5の動作原理については、図7について上述した従来の光ピックアップ装置100と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0084】
図12は、本実施の形態に係るBD/トラックガイド層互換対物レンズ11の構成例を示す。この図12に示すように、BD/トラックガイド層互換対物レンズ11は、第1のレンズ11A及び第2のレンズ11Bの2枚のレンズから構成される。このうち第1のレンズ11Aの表面(第1の面)には、矩形状の複数の格子溝が平行に形成されており、この格子溝のピッチの間隔によって入射したレーザ光を波長によって選択し回折させる、波長選択性の回折特性を有している。本実施の形態の場合、かかる第1のレンズの格子溝のピッチは、例えばDVDに情報を読み書きするときに使用される660[mm]帯の波長を有するレーザ光L3について回折を生じさせ、BDに情報を読み書きするときに使用される405[mm]帯のレーザ光L1については回折を生じさせないおおきさに選定されている。また、第2のレンズ11Bは、入射したレーザ光を屈折させる屈折特性を有したレンズである。従って、入射したレーザ光L1は、第1のレンズ11Aによって回折されないので、第1のレンズ11Aを透過し、さらに、第2のレンズ11Bによって所定の角度で屈折され、光ディスク3の記録層31A上に集光する。一方、レーザ光L2,L3は、第1のレンズ11Aによって所定の角度で回折され、さらに、第2のレンズ11Bによって所定の角度で屈折され、光ディスク3のトラックガイド層33上に集光する。
【0085】
第1のレンズ11Aは、BD用半導体レーザ21又はDVD/CD互換半導体レーザ26から発射されたレーザ光L1〜L3が入射する凸状の第1の面と、第2のレンズと対向する凹状の第2の面とを有し、第2のレンズは、第1のレンズと対向する凸上の第3の面と、光ディスクと対向する凸状の第4の面とを有する。これら第1〜第4の面は、いずれも次式
【数1】

……(1)
により曲面形状が与えられる非球面である。なお、この(1)式において、cはそのレンズ面の曲率半径の逆数、hは光軸からの距離、Kは円錐定数、A4〜A20はそれぞれ4次〜20次の非球面定数をそれぞれ示す。
【0086】
そして本実施の形態の場合、かかる第1〜第4の面の曲率半径は、図13(A)に示すように、それぞれ4.865〔mm〕、5.575〔mm〕、1.486〔mm〕及び-5.108〔mm〕に選定され、これら第1〜第4の面の円錐定数K及び4〜20次の非球面定数は、それぞれ図13(C)のように選定されている。
【0087】
また本実施の形態の場合、第1のレンズ11Aの中心厚をD1、第1及び第2のレンズ11A,11Bの中心間の間隔をD2、第2のレンズの中心厚をD3、第2のレンズ11Bから光ディスク3の表面層30までの距離をD4として、これらD1〜D4がそれぞれ図13(B)に示すように、0.5〔mm〕、0.5〔mm〕、2.355〔mm〕及び0.662〔mm〕に選定されている。
【0088】
ただし、本実施の形態に係るBD/トラックガイド層互換対物レンズ11においては、図14に示すように、BD用半導体レーザ21から発射されるレーザ光L1を第1のレンズによって何も作用されることなく透過させるため、第1及び第2の面の形状は、レーザ光L1に対しては球面形状を有さない平面状となる。従ってレーザ光L1に対しては、かかる第1のレンズの第1及び第2の面の曲率半径は、図14(A)に示すように、無限大となり、また、4〜20次の非球面定数は、図14(C)に示すように、すべて「0」となる。
【0089】
ここで、本実施の形態にかかるBD/トラックガイド層互換対物レンズ11を使用した場合に、レーザ光L3をカバー層厚が0.3〔mm〕であるトラックガイド層33上で集光するようにすることで生じる問題が解消出来たか否かについて図15を用いて以下に説明する。
【0090】
図15(A)は、トラックガイド層33のカバー層厚T5とコリメートレンズ27の移動量との関係を示す。
【0091】
図15(A)に示すように、光ディスク3の表面層30からトラックガイド層33までのカバー層厚さT5が0.3〔mm〕から±0.05〔mm〕変動した場合、コリメートレンズ27の移動量は、約±0.2〔mm〕となり、この値は従来の光ピックアップ装置における図4(A)及び図4(B)において説明したコリメートレンズ27の必要移動量の約20%に相当し、十分小さな値になっている。従って、レーザ光L3をカバー層厚が0.3〔mm〕であるトラックガイド層33上で集光するようにしても、本実施の形態にかかる光ピックアップ装置5では、コリメートレンズ27の移動量を小さく抑えることができたといえる。
【0092】
また、図15(B)は、BD/トラックガイド層互換対物レンズ11のシフト量と、3次コマ収差量との関係を示す。
【0093】
図15(B)に示すように、光ディスク3の表面20からトラックガイド層33までのカバー層厚さT5が0.3〔mm〕から±0.05〔mm〕変動し、BD/トラックガイド層互換対物レンズ11のラジアル方向のシフト量が増加しても発生する3次コマ収差量は0.01〔λrms〕未満となり、非常に小さい値である。これはBD/トラックガイド層互換対物レンズ11に入射する発散光角度、収束光角度が図4(B)及び図8(B)の場合と比較して十分に小さく、0に近いためである。従って、レーザ光L3をカバー層厚が0.3〔mm〕であるトラックガイド層33上で集光するようにしても、本実施の形態にかかる光ピックアップ装置5では、コマ収差の発生を小さく抑えることができたといえる。
【0094】
(4)本実施の形態の効果
以上のように、本実施の形態によれば、記録層と別にトラックガイド層を有する光ディスク3を読み書きする場合において、トラッキング誤差信号検出用のDVDに対して情報を光学的に読み書きするためのレーザ光L3をカバー層厚が0.3〔mm〕であるトラックガイド層33上で集光するように設計することができ、従来のようにコリメートレンズ27を移動させることでレーザ光L3の焦点距離を変更する場合と比べて、本実施の形態にかかる光ピックアップ装置5では、コリメートレンズ27の移動量を小さくおさえ、さらに、コマ収差の発生を抑えることができる。かくするにつき、記録層と別にトラックガイド層を有する光ディスク3に対しても互換性を持たせると共に小型化し得る光ピックアップ装置及び光ディスク装置を実現できる。
【0095】
(5)他の実施の形態
なお上述の本実施の形態においては、DVD/CD互換対物レンズ103を備えた光ピックアップ装置5について述べたが、本発明はこれに限らず、例えばDVD/CD互換対物レンズ103を省略し、DVD/CD互換半導体レーザ26をDVD規格に対応した660〔nm〕帯のレーザ光L3のみを出射するDVD用半導体レーザに置換えるようにしてもよい。
【0096】
また、上述の本実施の形態においては、BDに対して読み書きする場合に、トラッキング誤差信号を検出するためのレーザ光としてDVDに対して情報を光学的に読み書きするためのレーザ光L3を使用したが、本発明はこれに限らず、例えばCDに対して情報を光学的に読み書きするためのレーザ光L2をトラッキング誤差信号を検出するためのレーザ光として使用してもよい。
【0097】
さらに、上述の本実施の形態においては、記録層にレーザ光を照射し、レーザ光の記録層における反射光に基づいてトラッキング制御を行う第1の光ディスク3としてCDを適用したが、本発明はこれに限らず、例えばDVDを適用するようにしてもよい。
【0098】
さらに、上述の本実施の形態においては、録層とは別個にトラックガイド層が設けられ、当該トラックガイド層にレーザ光を照射し、当該レーザ光のトラックガイド層における反射光に基づいてトラッキング制御を行う第2の光ディスク3としてBDを適用したが、本発明はこれに限らず、録層とは別個にトラックガイド層が設けられている光ディスク3に適用するようにしてもよい。
【0099】
さらに、上述の本実施の形態においては、第1のレーザ光源及び第2のレーザ光源として、半導体レーザ光源21,26を使用したが、本発明はこれに限らず、レーザ光源は、半導体レーザ光源21,26以外のものを使用するようにしてもよい。
【0100】
第1の光ディスクの規格に応じた第1の波長の第1のレーザ光として、DVD規格に対応した660〔nm〕帯の波長を有するレーザ光L3を、また、第2の光ディスクの規格に応じた第2の波長の第2のレーザ光として、BD規格に対応した405〔nm〕帯の波長を有するレーザ光L1を使用したが、本発明はこれに限らず、DVD及びBD以外の規格に対応したレーザ光を使用するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、例えば記録層とは別に設けられたトラックガイド層を有する光ディスクに対して情報の読み書きを行う光ピックアップ装置及び光ディスク装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0102】
1……光ディスク装置、3……光ディスク、5,20,100……光ピックアップ装置、11……BD/トラックガイド層互換対物レンズ、22,27……コリメートレンズ、24……合成素子、25……BD/DVD/CD互換対物レンズ、21……BD用半導体レーザ、26……DVD/CD互換半導体レーザ、101……BD用対物レンズ、102……切替え分岐光学素子、103……DVD/CD互換対物レンズ、L1〜L3……レーザ光、T1〜T5……カバー層厚。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録層にレーザ光を照射し、当該レーザ光の前記記録層における反射光に基づいてトラッキング制御を行う第1の光ディスクと、記録層とは別個にトラックガイド層が設けられ、当該トラックガイド層にレーザ光を照射し、当該レーザ光の前記トラックガイド層における反射光に基づいてトラッキング制御を行う第2の光ディスクとの双方に対応した光ピックアップ装置において、
前記第1の光ディスクの規格に応じた第1の波長の第1のレーザ光を発射する第1のレーザ光源と、
前記第1の光ディスクの記録再生時に、前記第1のレーザ光源から発射された前記第1のレーザ光を前記第1の光ディスクの前記記録層に集光する第1の対物レンズと、
前記第2の光ディスクの規格に応じた第2の波長の第2のレーザ光を発射する第2のレーザ光源と、
前記第2の光ディスクの記録再生時に、前記第1のレーザ光を前記第2の光ディスクの前記トラックガイド層に集光し、前記第2のレーザ光を当該第2の光ディスクの前記記録層に集光する第2の対物レンズと
を有し、
前記第2の対物レンズは、
前記第1のレーザ光は回折させ、前記第2のレーザ光は回折させない波長選択性の回折特性を有する第1のレンズと、
前記第1のレンズにおいて回折された前記第1のレーザ光を前記第2の光ディスクの前記トラックガイド層に集光すると共に、前記第1のレンズを透過した前記第2のレーザ光を前記第2の光ディスクの前記記録層に集光する第2のレンズと
を備える
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項2】
前記第2のレーザ光源から発射された前記第2のレーザ光を前記第1のレーザ光源から発射された前記第1のレーザ光と合成する合成素子を備え、
前記合成素子により合成された前記第1及び第2のレーザ光が前記第2の対物レンズに入射される
ことを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ装置。
【請求項3】
前記第1の対物レンズにおける前記第1のレンズは、
第1及び第2のレーザ光が入射する凸状の第1の面と、
前記第2のレンズと対向する凹状の第2の面と
を有し、
前記第1の対物レンズにおける前記第2のレンズは、
第1及び第2のレーザ光が入射し、第1のレンズと対向する凸状の第3の面と、
前記第1及び第2の光ディスクと対向する凹状の第4の面とを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ装置。
【請求項4】
前記第2のレーザ光の前記第2の波長は、
前記第1のレーザ光の前記第1の波長よりも長い
ことを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ装置。
【請求項5】
前記第1の光ディスクは、
BD(Blu-ray Disc)であり、前記第2の光ディスクは、CD(Compact Disc)又はDVD(Digital Versatile Disk)である
ことを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ装置。
【請求項6】
記録層にレーザ光を照射し、当該レーザ光の前記記録層における反射光に基づいてトラッキング制御を行う第1の光ディスクと、記録層とは別個にトラックガイド層が設けられ、当該トラックガイド層にレーザ光を照射し、当該レーザ光の前記トラックガイド層における反射光に基づいてトラッキング制御を行う第2の光ディスクとの双方に対応した光ディスク装置において、
前記第1及び第2の光ディスクに対し光学的に情報を読み書きする光ピックアップ装置と、
前記光ピックアップ装置内における前記第1及び第2のレーザ光源を駆動するレーザ点灯回路と、
前記光ピックアップ装置から検出された信号を用いてフォーカス誤差信号やトラッキング誤差信号を生成するサーボ信号再生回路と、
光ディスクに書き込まれた情報信号を再生する情報信号再生回路と
を備え、
前記光ピックアップ装置は、
前記第1の光ディスクの規格に応じた第1の波長の第1のレーザ光を発射する第1のレーザ光源と、
前記第1の光ディスクの記録再生時に、前記第1のレーザ光源から発射された前記第1のレーザ光を前記第1の光ディスクの前記記録層に集光する第1の対物レンズと、
前記第2の光ディスクの規格に応じた第2の波長の第2のレーザ光を発射する第2のレーザ光源と、
前記第2の光ディスクの記録再生時に、前記第1のレーザ光を前記第2の光ディスクの前記トラックガイド層に集光し、前記第2のレーザ光を当該第2の光ディスクの前記記録層に集光する第2の対物レンズと
を有し、
前記第2の対物レンズは、
前記第1のレーザ光は回折させ、前記第2のレーザ光は回折させない波長選択性の回折特性を有する第1のレンズと、
前記第1のレンズにおいて回折された前記第1のレーザ光を前記第2の光ディスクの前記トラックガイド層に集光すると共に、前記第1のレンズを透過した前記第2のレーザ光を前記第2の光ディスクの前記記録層に集光する第2のレンズと
を備える
ことを特徴とする光ディスク装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−12263(P2013−12263A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143217(P2011−143217)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000153535)株式会社日立メディアエレクトロニクス (452)
【Fターム(参考)】