説明

光ピックアップ装置

【課題】 複数の信号記録層が設けられている光ディスクに記録されている信号の読み出し動作を行う光ピックアップ装置において生じる迷光による問題を解決する。
【解決手段】 レーザー光が入射されるとともにメインビーム及びサブビームを生成させる回折格子2と、信号記録層から反射される戻り光であるサブビームが照射されるとともにトラッキングエラー信号を生成する第1及び第2のサブビーム用受光部と戻り光であるメインビームが照射されるとともに再生信号及びフォーカスエラー信号を生成するメインビーム用受光部とより成る光検出器10と、前記回折格子2を透過したレーザー光を対物レンズ8方向へ導くとともに信号記録層から反射される戻り光を光検出器方向10へ導く偏光ビームスプリッタを備え、前記光検出器10に入射される戻り光の強度分布が平坦になるようにしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクに記録されている信号の読み出し動作をレーザー光によって行う光ピックアップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ピックアップ装置から照射されるレーザー光を光ディスクの信号記録層に照射することによって信号の読み出し動作を行うことが出来る光ディスク装置が普及している。
【0003】
信号記録層に記録されている信号の光ピックアップ装置による読み出し動作は、レーザーダイオードから放射されるレーザー光を信号記録層に照射させ、該信号記録層から反射されるレーザー光の変化を光検出器によって検出することによって行われている。
【0004】
また、レーザー光によって信号記録層に記録されている信号を読み出すためには、レーザー光を信号記録層に集光させるフォーカシング制御動作及び信号記録層に渦巻き状に設けられている信号トラックにレーザー光を追従させるトラッキング制御動作を正確に行う必要がある。
【0005】
斯かるフォーカシング制御動作を行う方法としては、種々あるが非点収差の発生を利用した非点収差法が一般的に行われている。また、トラッキング制御方法としても種々あるが、メインビームと2つのサブビームを使用する3ビーム法が一般的に行われている。
【0006】
更に、最近では正確なフォーカシング制御動作を行うためにメインビームだけでなくサブビームも使用する差動非点収差法が採用されている。斯かるフォーカシング制御動作に利用される非点収差法、差動非点収差法及びトラッキング制御動作に利用される3ビーム法は、2つのサブビームが各々照射される2つのサブビーム用受光部とメインビームが照射されるメインビーム用受光部が組み込まれている光検出器を設け、この光検出器から得られる信号によりフォーカスエラー信号やトラッキングエラー信号を生成させることによって各制御動作を行うように構成されている。
【0007】
また、最近では、信号記録層が1層ではなく複数、例えば4つの層が設けられている4層式の光ディスクが製品化されており、斯かる複数の信号記録層が設けられている光ディスクの各信号記録層に記録されている信号の読み出し動作を行うことが出来る光ピックアップ装置も製品化されている。
【0008】
図9はBlu−ray規格にて規定されている4層式の光ディスクDの信号記録層L0、L1、L2及びL3に記録されている信号を読み出すように構成された光ピックアップ装置の光学構成図であり、同図を参照にして光ピックアップ装置について説明する。
【0009】
図9において、1は例えば波長が405nmの青紫色光であるレーザー光を放射するレーザーダイオード、2は前記レーザーダイオード1から放射されるレーザー光が入射される回折格子であり、レーザー光を0次光であるメインビーム、+1次光及び−1次光である2つのサブビームに分離する回折格子部2aと入射されるレーザー光をP方向の直線偏光光に変換する1/2波長板2bとより構成されている。
【0010】
3は前記回折格子2を透過したレーザー光が入射されるハーフミラーであり、P偏光光に変換されたレーザー光を反射し、S方向に偏光されたレーザー光を透過させるように構成されている。4は前記ハーフミラー3にて反射されたレーザー光が入射されるとともに
入射されるレーザー光を平行光に変換するコリメートレンズであり、収差補正用モーター5によって光軸方向へ変位せしめられるように構成されている。前記コリメートレンズ4の光軸方向への変位動作によって光ディスクDの信号記録層L0、L1、L2、L3とディスク面との間に設けられている保護層の厚さの相違に基づいて生じる球面収差を補正することが出来るように構成されている。
【0011】
6は前記コリメートレンズ4を透過したレーザー光が入射される位置に設けられている立ち上げミラーであり、入射されるレーザー光の出射方向を90度変更する作用を成すものである。7は前記立ち上げミラー6にて反射されたレーザー光が入射される位置に設けられている1/4波長板であり、直線偏光光から円偏光光へ、また反対に円偏光光から直線偏光光に変換する作用を成すものである。8は前記1/4波長板7を透過したレーザー光が入射される対物レンズであり、入射されたレーザー光を光ディスクDに設けられている信号記録層L0、L1、L2、L3に集光する作用を成すものである。
【0012】
斯かる構成において、前記レーザーダイオード1から放射されたレーザー光は、回折格子2、ハーフミラー3、コリメートレンズ4、立ち上げミラー6及び1/4波長板7を介して対物レンズ8に入射された後、該対物レンズ8の集光動作によって光ディスクDの信号記録層L0、L1、L2、L3にレーザースポットとして照射されるが、該信号記録層L0、L1、L2、L3に照射されたレーザー光は戻り光として対物レンズ8側へ反射されることになる。
【0013】
光ディスクDの信号記録層L0、L1、L2、L3から反射された戻り光は、対物レンズ8、1/4波長板7、立ち上げミラー6及びコリメートレンズ4を通してハーフミラー3に入射される。このようにしてハーフミラー3に入射される戻り光は、前記1/4波長板7による位相変更動作によってS方向の直線偏光光に変更されている。従って、斯かる戻り光は、制御用レーザー光としてハーフミラー3を透過することになる。
【0014】
9は前記ハーフミラー3を透過した制御用レーザー光が入射されるAS板であり、該ハーフミラー3にて生成される非点収差の大きさを調整するとともに該ハーフミラー3にて発生するコマ収差を補正する作用を成すものである。10は前記AS板9を透過する戻り光である制御用レーザー光が照射される位置に設けられている光検出器である。
【0015】
前記光検出器10には、後述する4分割センサー等が設けられており、メインビームの照射動作によって光ディスクDの信号記録層L0、L1、L2、L3に記録されている信号の読み出し動作に伴う信号生成動作及び非点収差法によるフォーカス制御動作を行うためのフォーカスエラー信号の生成動作、そして2つのサブビームの照射動作によってトラッキング制御動作を行うためのトラッキングエラー信号の生成動作を行うように構成されている。
【0016】
前記光検出器10に設けられている受光部としては、図10に示すように0次光であるメインビームMが照射されるとともに信号読み出し動作やフォーカシング制御動作に使用されるメインビーム用受光部MD、+1次光である先行サブビームS1が照射されるとともにトラッキング制御動作に使用される第1サブビーム用受光部SD1及び−1次光である後行サブビームS2が照射されるとともにトラッキング制御動作に使用される第2サブビーム用受光部SD2にて構成されている。
【0017】
前記光検出器10には、前述したようにメインビーム用受光部MD、第1サブビーム用受光部SD1及び第2サブビーム用受光部SD2が同一の直線上に設けられているが、その配置方向はトラッキング方向、即ち対物レンズ8にて集光生成されるスポットが光ディスクDの径方向に変位するとメインビーム用受光部MD、第1サブビーム用受光部SD1
及び第2サブビーム用受光部SD2に各々照射されるメインビームM、先行サブビームS1及び後行サブビームS2が変位する方向と一致するように構成されている。
【0018】
また、前記メインビーム用受光部MD、第1サブビーム用受光部SD1及び第2サブビーム用受光部SD2は、例えば図示したように各々4分割されたセンサーにて構成されている。そして、前記メインビーム用受光部MDを構成する全センサーA、B、C、Dに照射されるメインビームの光量に応じた信号を加算することによって光ディスクDに記録されている信号を読み出し信号として読み出すように構成されている。
【0019】
そして、前記メインビーム用受光部MDを構成する4分割センサーの中の対角関係にあるセンサーから得られる信号を加算するとともにこの加算信号から他方の対角関係にあるセンサーから得られる信号を加算信号した信号を減算することによってフォーカスエラー信号を生成させ、このフォーカスエラー信号を利用してフォーカシング制御動作を行うように構成されているが、斯かるフォーカシング制御動作は非点収差法と呼ばれるフォーカシング制御方法であり、その説明は省略する。
【0020】
非点収差法によるフォーカシング制御動作はメインビーム用受光部MDを構成する4分割センサーから得られる信号よりフォーカスエラー信号を生成させることによって行われるが、次にトラッキング制御動作について説明する。斯かるトラッキング制御動作は、第1サブビーム用受光部SD1への先行サブビームS1の照射動作及び第2サブビーム用受光部SD2への後行サブビームS2の照射動作を利用して行われる。
【0021】
例えば、第1サブビーム用受光部SD1を構成する4分割センサーの中の上側にある2つのセンサーI、Jから得られる信号を加算するとともにこの加算信号から下側にある2つのセンサーL、Kから得られる信号を加算した信号を減算させて第1制御信号を得、また、第2サブビーム用受光部SD2を構成する4分割センサーの中の上側にある2つのセンサーE、Fから得られる信号を加算するとともにこの加算信号から下側にある2つのセンサーH、Gから得られる信号を加算した信号を減算させて第2制御信号を得、このようにして得られた第1制御信号と第2制御信号とを演算処理することによってトラッキングエラー信号を生成させるように構成されているが、斯かる動作は周知であり、その説明は省略する。
【0022】
また、前述したトラッキング制御動作に加えて最近では、サブビームS1、S2だけでなくメインビームMが照射されるメインビーム用受光部MDから得られるトラッキングエラー信号を利用してトラッキング制御動作を行う方式、所謂差動プッシュプルと呼ばれる方式が精度向上のために採用されている。
【0023】
斯かる方式におけるトラッキングエラー信号は、メインビーム用受光部MDから得られるメイントラッキングエラー信号から第1サブビーム用受光部SD1及び第2サブビーム用受光部SD2から得られるサブトラッキングエラー信号を減算することによって得るように構成されている。
【0024】
次に、図示したセンサー部の符号を参照にしてトラッキングエラー信号の演算処理について説明する。メインのトラッキングエラー信号をMTEとすると、MTE=(A+B)−(C+D)となり、サブのトラッキングエラー信号をSTEとすると、STE={(E+F)−(G+H)}+{(I+J)−(L+K)}と表される。
【0025】
そして、斯かる差動プッシュプル方式におけるトラッキング制御動作は、差動プッシュプル信号DPPに基づいて行われるが、このDPP信号は、DPP=MTE−k×STEとして得られる。ここで、kはメインビームの光強度とサブビームの光強度に基づいて決
定される定数である。
【0026】
このようにサブビームとメインビームとを組み合わせたトラッキング制御動作を行う光ピックアップ装置が開発されている。
【0027】
前述したようにメインビーム用受光部MD、第1サブビーム用受光部SD1及び第2サブビーム用受光部SD2から得られる信号からフォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号を生成させ、このフォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号に基づいてフォーカシング制御動作及びトラッキング制御動作は行われるが、斯かるフォーカシング制御動作は対物レンズ8を光ディスクDの信号面に対して垂直方向に変位させることによって行われ、トラッキング制御動作は対物レンズ8を光ディスクDの径方向に変位させることによって行われる。
【0028】
以上に説明したように従来の光ピックアップ装置は構成されているが、次に所望の信号記録層に記録されている信号の読み出し動作を行っている状態におけるその他の信号記録層から反射される戻り光、即ち迷光による問題について説明する。
【0029】
図10は、前述したメインビーム用受光部MD、第1サブビーム用受光部SD1及び第2サブビーム用受光部SD2と迷光との関係を示すものであり、破線で示す輪Pの内側の部分が迷光と呼ばれるレーザー光の照射部分である。
【0030】
この図より明らかなように迷光が光検出器10に設けられているメインビーム用受光部MD、第1サブビーム用受光部SD1及び第2サブビーム用受光部SD2上に照射されることになる。
【0031】
メインビームである0次光とサブビームである+1次光及び−1次光は、回折格子2によって生成されるが、その光量比、即ち1つのサブビームとメインビームの光量比は、一般に1対6のようにメインビームの方が強くなるように設定されている。従って、例えば信号記録層L0に記録されている信号の読み出し動作を行っているとき、その他の信号記録層L1、L2、L3から迷光として反射されるサブビームの光量は、迷光として反射されるメインビームの光量と比較して十分に小さいので、フォーカシング制御動作等に与える影響は無視することが出来る。
【0032】
また、メインビーム用受光部MDに照射されるメインビームM、例えば信号記録層L0に記録されている信号の読み出し動作を行う場合、該信号記録層L0から反射されるメインビームMの光量は、その他の信号記録層L1、L2、L3から反射される迷光ビームの光量よりも十分大きいので、メインビーム用受光部MDによる信号生成動作、即ち信号記録層L0に記録されている信号の読み出し動作及びフォーカスエラー信号の生成動作等に悪影響を与えることはない。
【0033】
一方、前述したように第1サブビーム用受光部SD1及び第2サブビーム用受光部SD2にトラッキングエラー信号を生成するために照射される先行サブビームS1及び後行サブビームS2の光量は、メインビームMの光量より小さくなるように設定されている。そのため第1サブビーム用受光部SD1及び第2サブビーム用受光部SD2から得られる信号を増幅するべく設けられている増幅器の利得は、メインビーム用受光部MDから得られる信号を増幅するべく設けられている増幅器の利得より一般的には高くなるように設定されている。
【0034】
その結果、信号の読み出し動作を行う信号記録層L0ではない信号記録層L1、L2、L3から反射されるメインビームMから生成される迷光が第1サブビーム用受光部SD1
及び第2サブビーム用受光部SD2上に照射されることによって受ける影響の度合いが大きくなる。即ち、第1サブビーム用受光部SD1及び第2サブビーム用受光部SD2から得られるトラッキングエラー信号に迷光の光強度に応じた信号が作用するので、正確なトラッキングエラー信号を得ることが出来ず、その結果トラッキング制御動作が不安定になるという問題がある。
【0035】
斯かる迷光による問題を解決する方法として光検出器の形状を迷光による影響を排除する形状にした技術が開発されている。(特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0036】
【特許文献1】特開2009−176367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0037】
特許文献1に記載されている技術は、光検出器に組み込まれているメインビーム用受光部の面積に対してサブビーム用受光部の面積を小さくすることによって、またサブビーム用受光部の形状を八角形にすることによって迷光による問題を解決するようにされているが、メインビーム用受光部に対する迷光対策は何ら成されていない。
【0038】
メインビーム用受光部に対する迷光対策を行わなかった理由は、信号の読み取り動作を行っている信号記録層から反射されるメインビームのレベルに対してその他の信号記録層から反射されるメインビームのレベル及びサブビームのレベルが小さいので、迷光による影響を受けることがないことにある。
【0039】
しかしながら、Blu−ray規格にて規定されている4層式の光ディスクDでは、信号記録層と信号記録層との間隔が非常に狭いので、信号の読み出し対象となる信号記録層に隣接する信号記録層から反射されるメインビーム及びサブビームより生成される迷光のレベルが無視できない程度に大きくなっている。
【0040】
前述した迷光による問題について図11、12、13及び14を参照にして説明する。図11は、光検出器10に組み込まれている受光部に照射されるメインビームMの光強度分布、即ちメインビームのレベル変化を示すものであり、MAは信号の読み出し対象となる信号記録層からの戻り光の強度分布を示し、MBは隣接する信号記録層からの戻り光、即ち迷光の強度分布を示すものである。
【0041】
図12は、光検出器10に組み込まれている受光部に照射されるメインビームM、サブビームS1、S2の光強度分布、即ち各ビームのレベル変化を示すものであり、MA、SA1、SA2は信号の読み出し対象となる信号記録層からの各戻り光の強度分布を示すものである。
【0042】
図13は、光検出器10に組み込まれている受光部に照射されるメインビームM、サブビームS1、S2が迷光による影響を受けた状態における光強度分布を示すものであり、MA、SA1、SA2は信号の読み出し対象となる信号記録層からの各戻り光の強度分布を示すものである。斯かる図面より明らかなようにメインビームM、サブビームS1、S2の強度は、迷光による影響を受けてそのレベルが大きく変化していることが分かる。
【0043】
図14は、光検出器10に組み込まれている受光部に照射されるメインビームM、サブビームS1、S2及び迷光の強度分布を模式的に表したものであり、MA、SA1、SA2は信号の読み出し対象となる信号記録層からの戻り光のレベルである強度分布を示し、
MBは隣接する信号記録層からの戻り光、即ち迷光のレベルである強度分布を示すものである。
【0044】
斯かる図より明らかなように受光部に照射されるメインビームM、サブビームS1、S2及び迷光の強度分布は、平坦ではなく中心部の強度が最も高くなる。斯かる理由は、周知のようにレーザーダイオードから放射されるレーザー光の光強度がガウシャン特性を有しているからである。即ち、レーザーダイオードから放射されるレーザー光の断面は、図3に示すように楕円形状であり、光ディスクDに記録されている信号の読み出し動作等には、図3に示す円形の部分のレーザー光が使用されている。そして、斯かるレーザー光において、その中心部の光強度が最も強く、中心部から外側に向かって次第に光強度が弱くなるという特性がある。
【0045】
斯かる特性があるので、光検出器10に組み込まれている受光部に照射される全ての戻り光の強度も図14に示すように平坦ではなく中心部が最も高くなる。その結果、対物レンズ8のトラッキング方向への変位時に先行サブビーム及び後行サブビームに対する迷光の影響度のバランスがずれることになるので、差動プッシュプル方式におけるトラッキング制御動作を正確に行うことが出来ないという問題がある。
【0046】
本発明は、斯かる問題を解決することが出来る光ピックアップ装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0047】
本発明は、光ディスクに記録されている信号を読み出すために信号記録層にレーザー光を集光させる対物レンズと、レーザー光が入射されるとともに0次光であるメインビーム、+1次光及び−1次光であるサブビームを生成させる回折格子と、信号記録層から反射される戻り光であるサブビームが照射されるとともにトラッキングエラー信号を生成する第1及び第2のサブビーム用受光部と信号記録層から反射される戻り光であるメインビームが照射されるとともに再生信号及びフォーカスエラー信号を生成するメインビーム用受光部とより成る光検出器と、前記回折格子を透過したレーザー光を対物レンズ方向へ導くとともに信号記録層から反射される戻り光を光検出器方向へ導く偏光ビームスプリッタを備え、前記光検出器に入射される戻り光の強度分布が平坦になるようにしたことを特徴とするものである。
【0048】
また、本発明は、強度分布を平坦にする強度平坦化素子をレーザーダイオードと偏光ビームスプリッタとの間に配置したことを特徴とするものである。
【0049】
そして、本発明は、強度分布を平坦にする強度平坦化素子を偏光ビームスプリッタと光検出器との間に配置したことを特徴とするものである。
【0050】
更に、本発明は、平行平板硝子の表面に透過率を調整する透過膜を塗布することによって強度平坦化素子を構成したことを特徴とするものである。
【0051】
また、本発明は、透過率の異なる透過膜を楕円状に塗布したことを特徴とするものである。
【0052】
そして、本発明は、強度平坦化素子を回折格子が形成された回折素子にて構成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0053】
本発明の光ピックアップ装置は、光ディスクに設けられている信号記録層から反射され
て光検出器に照射される戻り光の強度分布が平坦になるようにしたので、レンズシフト時、即ち対物レンズのトラッキング方向への変位時先行サブビーム及び後行サブビームに対する迷光の影響度を均一にすることが出来る。即ち、本発明によれば、対物レンズがトラッキング方向へ変位しても先行サブビーム及び後行サブビームに対する戻り光の影響度を同一にすることが出来るので、先行サブビームを受光する受光部から得られる信号と後行サブビームを受光する受光部から得られる信号とから得られるプッシュプル信号の直流変動を抑えることが出来、その結果差動プッシュプル方式のトラッキング制御動作を正確に行うことが出来る。
【0054】
従って、本発明は、信号記録層の間隔が狭い光ディスクに記録されている信号の読み出し動作を行うように構成された光ピックアップ装置に実施した場合に非常に大きな効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に係る光ピックアップ装置の一実施例を示す概略図である。
【図2】本発明に係る光ピックアップ装置に使用される強度平坦化素子の一実施例を示す説明図である。
【図3】レーザー光を説明するための図である。
【図4】本発明に係る光ピックアップ装置に使用される強度平坦化素子の一実施例を示す説明図である。
【図5】本発明の光ピックアップ装置に使用される光検出器に組み込まれている受光部に照射される戻り光の強度分布を説明するための図である。
【図6】本発明の光ピックアップ装置に使用される光検出器に組み込まれている受光部に照射される戻り光の強度分布を説明するための図である。
【図7】本発明の光ピックアップ装置に使用される光検出器に組み込まれている受光部に照射される戻り光の強度分布を説明するための図である。
【図8】本発明の光ピックアップ装置に使用される光検出器に組み込まれている受光部に照射される戻り光の強度分布を説明するための模式図である。
【図9】従来の光ピックアップ装置を示す概略図である。
【図10】受光部と戻り光との関係を説明するための図である。
【図11】従来の光ピックアップ装置に使用される光検出器に組み込まれている受光部に照射される戻り光の強度分布を説明するための図である。
【図12】従来の光ピックアップ装置に使用される光検出器に組み込まれている受光部に照射される戻り光の強度分布を説明するための図である。
【図13】従来の光ピックアップ装置に使用される光検出器に組み込まれている受光部に照射される戻り光の強度分布を説明するための図である。
【図14】従来の光ピックアップ装置に使用される光検出器に組み込まれている受光部に照射される戻り光の強度分布を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
光ディスクに設けられている複数の信号記録層にレーザー光を集光させてレーザースポットを生成するように構成された光ピックアップ装置において、信号の読み出し動作を行っている信号記録層ではなく、他の信号記録層から反射されるレーザー光、即ち迷光によるトラッキング制御動作に対する悪影響を抑えることが出来る光ピックアップ装置を提供する。
【実施例1】
【0057】
図1は本発明の実施例を示すものであり、図9に示した光ピックアップ装置と同一の部材には同一の符号を付している。
【0058】
本発明は、光ディスクDに設けられている信号記録層L0、L1、L2、L3から反射されるとともに光検出器10に入射される戻り光の強度分布を平坦にするための強度平坦化素子11をレーザーダイオード1と偏光ビームスプリッタであるハーフミラー3との間に設けたことを特徴とするものである。
【0059】
図2は斯かる強度平坦化素子11の一実施例であり、透明な平行平板硝子11Aにレーザー光の透過率が異なる楕円状の透過膜11Bを塗布したものである。即ち、前記透過膜11Bは中心部の透過率が最も小さく、外周に向かって透過率が高くなるように構成されている。
【0060】
前記平行平板硝子11Aに塗布される透過膜11Bの透過率は、レーザー光である戻り光の強度分布を均一にするべく、即ちレーザー光の強度分布が平坦になるように設定されている。レーザー光は、前述したようにガウシャン特性を有しているので、中心部の光強度が最も大きく外側に向かって光強度が小さくなるという特性がある。従って、本発明では、前記平行平板硝子11Aに塗布される透過膜11Bの透過率をレーザー光の強度分布と逆の関係になるように設定されている。
【0061】
前述したように構成された強度平坦化素子11をレーザーダイオード1と偏光ビームスプリッタであるハーフミラー3との間に配置させた光ピックアップ装置について図5、6、7及び8を参照にして説明する。図5は、光検出器10に組み込まれている受光部に照射されるメインビームMの光強度分布、即ちメインビームのレベル変化を示すものであり、MAは信号の読み出し対象となる信号記録層からの戻り光の強度分布を示し、MBは隣接する信号記録層からの戻り光、即ち迷光の強度分布を示すものである。
【0062】
図6は、光検出器10に組み込まれている受光部に照射されるメインビームM、サブビームS1、S2の光強度分布、即ち各ビームのレベル変化を示すものであり、MA、SA1、SA2は信号の読み出し対象となる信号記録層からの各戻り光の強度分布を示すものである。
【0063】
図7は、光検出器10に組み込まれている受光部に照射されるメインビームM、サブビームS1、S2が迷光による影響を受けた状態における光強度分布を示すものであり、MA、SA1、SA2は信号の読み出し対象となる信号記録層からの各戻り光の強度分布を示すものである。斯かる図面より明らかなようにメインビームM、サブビームS1、S2の強度は、迷光による影響を受けてそのレベルが大きく変化していることが分かる。
【0064】
図8は、光検出器10に組み込まれている受光部に照射されるメインビームM、サブビームS1、S2及び迷光の強度分布を模式的に表したものであり、MA、SA1、SA2は信号の読み出し対象となる信号記録層からの戻り光のレベルである強度分布を示し、MBは隣接する信号記録層からの戻り光、即ち迷光のレベルである強度分布を示すものである。
【0065】
前述した図5、6、7及び8より明らかなように受光部に照射されるメインビームM、サブビームS1、S2及び迷光の全てのレーザー光の強度分布は、強度平坦化素子11の働きによって平坦にされている。従って、迷光によって受ける第1サブビーム用受光部SD1及び第2サブビーム用受光部SD2に対する影響度は対物レンズ8がトラッキング方向へ変位しても同一になる。また、サブビームS1、S2の強度分布も平坦化されているので、対物レンズ8がトラッキング方向へ変位しても先行サブビームを受光する受光部から得られる信号と後行サブビームを受光する受光部から得られる信号とから得られるプッシュプル信号の直流変動を抑えることが出来、その結果差動プッシュプル方式のトラッキング制御動作を正確に行うことが出来る。
【実施例2】
【0066】
実施例1では、強度平坦化素子11として図2に示すような平行平板硝子11Aに透過率が異なる楕円状の透過膜11Bを塗布した部材を使用したが透過率を調整する手段として回折格子が形成されている回折素子を利用することも出来る。図4は強度平坦化素子11として回折素子を利用したものであり、同図において11Cは透明な平行平板硝子であり、その表面に回折格子11D、11Eが形成されている。斯かる回折格子11D、11Eは、楕円状のレーザー光の長径方向に合致するように配置されており、該回折格子11D、11Eとして作用するべく形成される溝の深さを長径方向に階段状に変化させることによって透過するレーザー光の強度を調整することが出来る。
【0067】
斯かる回折素子を強度平坦化素子11として使用することによって光検出器10に組み込まれている受光部に照射される各レーザー光の強度分布を平坦にすることが出来るので、実施例1と同様に差動プッシュプル方式のトラッキング制御動作を正確に行うことが出来る。
【実施例3】
【0068】
前述した実施例1及び実施例2では、強度平坦化素子11をレーザーダイオード1と偏光ビームスプリッタとして作用するハーフミラー3との間に設けたが、該ハーフミラー3と光検出器10との間に配置させることも出来る。
【0069】
実施例1及び実施例2のように強度平坦化素子11をレーザーダイオード1とハーフミラー3との間に設ける場合には、該強度平坦化素子11によるレーザー光の平坦化が光ディスクDの信号記録層L0、L1、L2、L3に照射されるレーザー光に対しても作用するので、各記録層に生成されるレーザースポットの形状を良好なものにすることが出来るという利点がある。
【0070】
斯かる実施例1、2に対して、実施例3のように強度平坦化素子11をハーフミラー3と光検出器10との間に配置させた場合には、光検出器10に組み込まれている受光部に適した平坦化のための光学設計を他の光学特性に関係なく行うことが出来るので、トラッキング制御特性を向上させることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、Blu−ray規格の光ディスクに記録されている信号の読み出し動作を行う光ピックアップ装置に実施した場合について説明したが、異なる規格の光ピックアップ装置にも応用することが出来る。また、4つの信号記録層を備えた光ディスクについて説明したが、2層及び3層の信号記録層や更に多くの信号記録層が設けられている光ディスクに記録されている信号の読み出し動作を行う光ピックアップ装置にも応用することが出来る。
【符号の説明】
【0072】
1 レーザーダイオード
2 回折格子
3 ハーフミラー
4 コリメートレンズ
8 対物レンズ
10 光検出器
11 強度平坦化素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクに記録されている信号を読み出すために信号記録層にレーザー光を集光させる対物レンズと、レーザー光が入射されるとともに0次光であるメインビーム、+1次光及び−1次光であるサブビームを生成させる回折格子と、信号記録層から反射される戻り光であるサブビームが照射されるとともにトラッキングエラー信号を生成する第1及び第2のサブビーム用受光部と信号記録層から反射される戻り光であるメインビームが照射されるとともに再生信号及びフォーカスエラー信号を生成するメインビーム用受光部とより成る光検出器と、前記回折格子を透過したレーザー光を対物レンズ方向へ導くとともに信号記録層から反射される戻り光を光検出器方向へ導く偏光ビームスプリッタを備えた光ピックアップ装置であり、前記光検出器に入射される戻り光の強度分布が平坦になるようにしたことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項2】
強度分布を平坦にする強度平坦化素子をレーザーダイオードと偏光ビームスプリッタとの間に配置したことを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ装置。
【請求項3】
強度分布を平坦にする強度平坦化素子を偏光ビームスプリッタと光検出器との間に配置したことを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ装置。
【請求項4】
平行平板硝子の表面に透過率を調整する透過膜を塗布することによって強度平坦化素子を構成したことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の光ピックアップ装置。
【請求項5】
透過率の異なる透過膜を楕円状に塗布したことを特徴とする請求項4に記載の光ピックアップ装置。
【請求項6】
強度平坦化素子を回折格子が形成された回折素子にて構成したことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の光ピックアップ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−109811(P2013−109811A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256080(P2011−256080)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(504464070)三洋オプテックデザイン株式会社 (315)
【Fターム(参考)】