説明

光ファイバの端面処理方法及び端面処理された光ファイバ

【課題】結合損失の低下等を抑えつつ空孔を有する光ファイバの端面を容易に封止できるようにする。
【解決手段】光ファイバの端面処理方法は、軸方向に沿って延びる空孔を有する光ファイバ120の端部にレーザ光101を集光して照射し、光ファイバ120の端部を溶融して空孔を封止する封止工程を備えている。封止工程において、レーザ光101は光ファイバ120の側方から照射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバの端面処理方法及び端面処理された光ファイバに関し、特にレーザ光を用いて空孔を有する光ファイバの端面を封止する方法及び端面処理された光ファイバに関する。
【背景技術】
【0002】
エアホール型のダブルクラッドファイバ等の軸方向に延びる空孔を有する光ファイバは、端面の封止を必要とする。端面を封止しない場合には、水分若しくは揮発性成分等の汚染物質又は塵等の異物が端面から空孔内に侵入して空孔内が汚染され、光ファイバの光学特性が大きく劣化してしまう。端面の封止は、通常は光ファイバを火炎又はアーク放電等により加熱して溶融することにより行われる。光ファイバを溶融して空孔を塞いだ後、空孔を塞いだ部分が端面となるようにクリーバ等により機械的に切断し、端面の研磨を行う。このようにすれば、端部に封止領域を有する光ファイバが実現できる。
【0003】
一方、空孔が塞がれた封止領域は、空孔による光の閉じ込め等が期待できない領域である。このため、封止領域の軸方向の厚さが厚くなると、光ファイバの受光角が小さくなり、結合損失が大きくなる。光ファイバの受光角を大きくして結合損失の低下を抑えるには、封止領域の厚さをできるだけ薄くする必要がある。しかし、火炎又はアーク放電等により加熱した場合には、熱源に近い部分から周囲に熱が次第に広がって広い部分に熱が加わるため封止領域の厚さを薄くすることができない。このため、端面を平滑にすると共に、封止領域の厚さを薄くするための研磨工程が不可欠である。
【0004】
また、封止領域と通常領域との間には、空孔が塞がれていないが空孔の径が小さくなっているテーパ領域が発生する。テーパ領域は、空孔のサイズ及び配置等が乱れているため、光ファイバの光学特性が通常領域よりも劣化している。このため、テーパ領域をできるだけ薄くすることが好ましい。しかし、火炎又はアーク放電等により広い範囲に亘って熱が加わると、テーパ領域が厚くなってしまう。さらに、火炎又はアーク放電等を用いて加熱する場合には、均一に加熱することが困難であり、封止領域の厚さが一定にならず、封止領域と封止されていない部分との境界面が端面に対して斜めになってしまう。
【0005】
このような問題は主に光ファイバに熱が不均一に加わることによって生じると考えられる。このため、より均一に熱を加えることができるように、レーザ光を用いて光ファイバの端面を封止する方法が検討されている(例えば、特許文献1及び2を参照)。レーザ光を光ファイバの端面に照射することにより、端面の近傍を局所的に溶融させることができ、封止領域の厚さを薄くすることができると期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−175271号公報
【特許文献2】特開2010−39064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来のレーザ光を用いた端面の封止は、レーザ光を光ファイバの端面に照射しており、以下のような問題がある。光ファイバの端面には空孔が分布しており、端面に均一にレーザ光を照射したとしても、照射領域全体が均一に溶融しない。このため、封止領域の厚さを均一にできないおそれがある。また、封止された端面が平滑とならず、封止工程の後に端面を研磨する工程が必要となる。このため、工数及び工程時間が増加し結果としてコストを増大させる。
【0008】
光ファイバの端面に複雑な温度分布を生じさせることにより、端面において、均一に溶融が生じるようすることは可能であるが、この場合には複雑な光学系を有するレーザ照射装置が必要となる。
【0009】
さらに、太い光ファイバの場合には、端面全体にレーザ光が照射されるようにビーム径を大きくする必要があるため、ビームの強度分布の影響を受け易く、封止領域の厚さを均一にすることが困難である。
【0010】
本発明は、前記の問題を解決し、結合損失の低下等を抑えつつ空孔を有する光ファイバの端面を容易に封止できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するため、本発明は光ファイバの端面処理方法を、光ファイバの端部に側方からレーザ光を照射する構成とする。
【0012】
具体的に、本発明に係る光ファイバの端面処理方法は、軸方向に沿って延びる空孔を有する光ファイバの端部にレーザ光を集光して照射し、光ファイバの端部を溶融して空孔を封止する封止工程を備え、封止工程において、レーザ光は光ファイバの側方から照射する。
【0013】
本発明の端面処理方法は、光ファイバの端部に側方からレーザ光を集光して照射する。このため、光ファイバの端部を局所的に加熱して溶融させ、空孔を封止することができる。従って、空孔が封止された封止領域の厚さを薄くすることができ、厚さのばらつきも小さくすることができる。また、空孔が封止されていないが、空孔の径が変化しているテーパ領域の厚さを薄くすることもできる。その結果、結合損失の低下が少ない光ファイバを実現することができる。さらに、封止した光ファイバの端面が平坦で且つ平滑となるため、封止後に研磨をする必要がなく、工程を簡略化して工程時間を短縮することができる。
【0014】
本発明の光ファイバの端面処理方法において、封止工程は、光ファイバの端面を平滑化する平滑化工程を兼ねる構成としてもよい。
【0015】
本発明の光ファイバの端面処理方法は、封止工程よりも前に、光ファイバの側面にレーザ光を集光して照射することにより光ファイバを切断し、端部を形成する切断工程をさらに備えている構成としてもよい。
【0016】
この場合において、切断工程において照射するレーザ光と、封止工程において照射するレーザ光とは、同一の光強度及びビーム径を有し、切断工程と封止工程とは連続して行う構成としてもよい。
【0017】
本発明の光ファイバの端面処理方法は、集光されたレーザ光の周縁光線と、光ファイバの側面とが直交するようにレーザ光を照射する構成としてもよい。
【0018】
本発明の光ファイバの端面処理方法は、光ファイバをその軸を中心に回転させた状態でレーザ光を照射する構成としてもよい。
【0019】
本発明の光ファイバの端面処理方法において、集光されたレーザ光のスポット径は、光ファイバの径よりも小さくすればよい。
【0020】
本発明に係る端面が封止された光ファイバは、軸方向に沿って延びる空孔を有する通常領域と、通常領域の両端部に設けられ空孔が封止された封止領域とを備え、封止領域の厚さのばらつきは30μm以下である。
【0021】
本発明の端面が封止された光ファイバは、通常領域と封止領域との間に設けられ、空孔の径が次第に小さくなるテーパ領域をさらに備え、テーパ領域の厚さは、5μm以上且つ50μm以下である構成としてもよい。
【0022】
本発明の端面が封止された光ファイバにおいて、端面と側面との境界部における曲率半径は、25μm以上100μm以下としてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る光ファイバの端面処理方法によれば、結合損失の低下等を抑えつつ空孔を有する光ファイバの端面を容易に封止できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】一実施形態に係る光ファイバの端面処理方法に用いる処理装置を示す模式図である。
【図2】光ファイバへのレーザ光の照射を説明する模式図である。
【図3】封止された光ファイバの端面を示す断面図である。
【図4】一実施形態に係る光ファイバの端面処理方法の変形例を示す工程図である。
【図5】レーザ光の照射角度を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に係る光ファイバの端面処理方法は、例えば図1に示すような処理装置100を用いて、レーザ光101を光ファイバ120の側方から照射することにより、端面の封止を行う。処理装置100は、光ファイバ120を保持する保持部102と、保持部102に保持された光ファイバ120に側方からレーザ光101を照射する照射部110とを有している。照射部110は、レーザ光源111と、レーザ光101の照射時間を調節するシャッター112と、レーザ光101を平行に広げるエキスパンダ113と、エキスパンダ113を透過した後のレーザ光101を光ファイバ120の端部に集光する集光レンズ114とを有している。保持部102は、保持している光ファイバ120を回転させることができる。
【0026】
光ファイバ120は、軸方向に延びる空孔を有する光ファイバである。空孔配置の周期性及び空孔サイズの均一性を必要とするフォトニックバンドギャップ型の光ファイバであってもよく、また全反射により光を閉じ込める屈折率導波型の光ファイバであってもよい。以下においては、エアホール型のダブルクラッドファイバを例に説明を行う。但し、空孔を有する光ファイバであればどのような光ファイバにも適用することができる。
【0027】
レーザ光源111は、光ファイバ120を構成する石英ガラスに吸収され、それを溶融させることができる波長及び出力を有していればよい。例えば、波長が10μm程度で、出力が30W程度の炭酸ガスレーザを用いればよい。また、炭酸ガスレーザに代えて、エルビウム添加YAG(イットリウム−アルミニウム−ガーネット)レーザ、フッ化水素レーザ又は一酸化炭素レーザ等を用いることも可能である。
【0028】
光ファイバに炭酸ガスレーザ等の石英ガラスに吸収されやすい波長のレーザ光を集光して照射すると、集光スポットにおいてレーザ光が強く吸収される。このため、集光スポットにおいて温度が急激に上昇し光ファイバが局所的に溶融する。溶融に至るまでの照射時間が短時間で済むため、集光スポットの周囲における温度上昇を抑えることができる。
【0029】
本実施形態の端面処理方法においては、図2に示すように光ファイバ120を回転させ、光ファイバ120の側方から端部の狭い領域にレーザ光101を集光して照射する。このため、軸方向の狭い範囲が局所的に加熱され溶融する。その結果、図3に示すように封止領域121の軸方向の厚さt1を薄くすることができる。封止領域121は、空孔125内への汚染物質の侵入を防ぐためには必要であるが、厚くなるほど光ファイバ120の開口数(NA)が低下する。このため、封止領域121の厚さt1はできるだけ小さくすることが好ましい。光ファイバ120の太さ及び構造等にもよるが、本実施形態の端面処理方法においては、研磨することなく封止領域121の厚さt1を50μm〜100μm程度にすることが可能である。
【0030】
封止領域121と通常領域123との間には、封止領域121側に向かって空孔125の径が次第に小さくなるテーパ領域122が生じる。テーパ領域122は、空孔の径が変化しているため光ファイバの特性が大きく変動している。従って、テーパ領域122の厚さt2が厚くなると結合損失が低下する。このため、テーパ領域122の厚さt2もできるだけ薄くすることが好ましい。本実施形態の端面処理方法においては、軸方向の熱の拡散を抑えることができるため、テーパ領域122の厚さt2を薄くすることもできる。具体的には、テーパ領域122の厚さt2を5μm〜50μm程度とすることができる。
【0031】
光ファイバ120を回転させることにより、光ファイバ120の径が大きい場合においても、端部を均一に溶融させることができ、封止領域121の厚さt1のばらつきを小さくすることができる。光ファイバ120の太さ及び構造等にもよるが、本実施形態の端面処理方法においては、封止領域121の厚さt1のばらつきを30μm以下とすることができる。
【0032】
光ファイバ120の回転速度は、光ファイバ120の直径及びレーザ光101のビーム径及び出力等に応じて決定すればよい。通常は、50rpm程度〜500rpm程度とすればよく、光ファイバ120の直径が太いほど回転を速くすることが好ましい。また、光ファイバ120の直径が125μm程度と細い場合には、光ファイバ120を回転させなくても、均一な端面処理を行うことができる。
【0033】
さらに、均一に溶融が進むことにより平滑で平坦な端面が得られる。封止領域121の厚さt1が薄く且つ端面が平滑で平坦となるため、封止後に端面の平坦化及び封止領域121の縮小のために端面を研磨する必要がない。従って、工程数を削減し工程時間を大幅に短縮することができる。
【0034】
一方、光ファイバを火炎又はアーク放電等により加熱して封止する場合には、局所的に温度を上昇させることが困難である。このため、比較的広い範囲に亘って光ファイバの溶融が生じ、封止領域の厚さt1が厚くなってしまう。また、光ファイバが溶融するまでの加熱時間が長くなるため、封止領域の周囲に熱が伝わりテーパ領域の厚さt2も厚くなる。さらに、均一な加熱が困難であるため、封止領域の厚さt1がばらついてしまう。
【0035】
封止領域の厚さt1は、光ファイバの開口数に影響を与える。封止領域の厚さが厚くなると光ファイバの開口数が小さくなり、光ファイバの結合損失が増大する。また、封止領域の厚さがばらつくと光の入射位置により光ファイバの開口数が変動してしまう。このため、光ファイバの信頼性が大きく低下する。また、封止領域の厚さのばらつきが大きい場合には、研磨を行っても封止領域の厚さを薄くすることが困難となるという問題も生じる。例えば、封止領域の厚さのばらつきが200μmである場合には、研磨により最も薄い部分の厚さを50μmとしたとしても、最も厚い部分の厚さは250μmとなる。このため全体として光ファイバの開口数は大きく低下し、結合損失が増大する。
【0036】
レーザ光を光ファイバの端面側から照射して封止する場合には、端面全体にレーザ光が照射されるため、端面を均一に加熱して溶融することができると期待される。しかし、光ファイバの径が太くなると、レーザ光のビーム径を大きくする必要があり、照射するレーザ光の光強度を均一にすることが困難となる。また、光強度を均一にしたとしても、光ファイバの端面に露出した空孔の配置等により、端面の溶融が均一に進行しない。さらに、端面から次第に軸方向の奥側に溶融が進行する。このため、光ファイバの軸方向の比較的に深い位置まで熱の影響を受ける結果、テーパ領域の厚さが厚くなる。このような弊害を回避するために、複雑な強度分布を有するレーザ光を照射する方法も検討されているが、レーザ光の照射装置が複雑になるという弊害がある。
【0037】
レーザ光を光ファイバの端部に側方から集光して照射することにより、これらの問題を解決し、結合損失の低下及び特性のばらつきを抑えつつ迅速に光ファイバを封止することが可能となる。
【0038】
本実施形態の端面処理方法においては、図4に示すように、光ファイバ120を切断して新たな端面を形成する工程と、形成した端面を封止する工程とを連続して行うことができる。図4(a)に示すように、光ファイバ120の切断を行う部分に、側方からレーザ光101を照射することにより光ファイバ120が切断されて端部が形成される。図4(b)に示すように引き続きレーザ光101を照射することにより端部において空孔125が塞がれ、封止領域121が形成される。同時に、端面の平滑化も行われる。照射するレーザ光の光強度及びビーム径等を調整したりすることなく、同一条件でレーザ光を照射すればよいため、光ファイバの切断、端面の封止及び封止した端面の平滑化が連続してほぼ同時にできる。光ファイバ120の太さ及びレーザ光101の強度等にもよるが、工程時間は5秒〜6秒程度とすることができ、生産性を大きく向上させることができる。
【0039】
封止領域121においては、空孔125が収縮して塞がれているため、光ファイバ120の体積が減少し、光ファイバ120の外径がわずかに小さくなる。空孔125の収縮が均一に生じないと、外径の収縮が均一に生じず、光ファイバ120が曲がってしまう。本実施形態においては、レーザ光101を光ファイバ120の側方から集光して照射しており、局所的に加熱されるため、光ファイバ120の外径変動がほとんど生じない。
【0040】
また、封止を行ってから光ファイバを切断し、研磨した場合には、光ファイバの端面と側面との境界部にはエッジが形成される。しかし、本実施形態のように側方から端部にレーザ光を照射して封止を行った場合には、図3に示すように端面と側面とがエッジがなく滑らかに接続された状態となる。このため、光ファイバ120の光フェルールへの挿入が容易となるという利点も得られる。一般的に、封止後に機械的な研磨を行った場合には、光ファイバの端面と側面との境界部の曲率半径(R)は5μm〜25μm程度となる。しかし、本実施形態の端面処理方法の場合には、端面と側面との境界部の曲率半径を25μm〜100μm程度とすることができる。
【0041】
レーザ光101は、図5に示すように光軸101aを光ファイバ120の側面に対し垂直方向から少し傾けて照射することが好ましい。具体的には、レーザ光101の周縁光線101bが光ファイバ120の側面に対し垂直となるように照射すればよい。レーザ光101の周縁光線101bは、光軸101aに対して角度θ傾いている。このため、光軸101aが光ファイバ120の側面に対して垂直となるようにレーザ光101を入射すると、封止領域121が斜めに形成されたり、光ファイバ120の切断面が斜めになったりするおそれがある。従って、光軸101aを光ファイバ120の側面に対して垂直からθだけ傾けて(90+θ)レーザ光101を入射すればよい。なお、角度θと集光レンズ114の開口数NAとの間には、NA=sinθという関係が成り立つ。
【0042】
レーザ光101のビーム径は、光ファイバ120の直径に応じて設定すればよいが、通常は光ファイバ120の直径よりも小さくする。具体的には、光ファイバ120の直径の1/5程度とすることが好ましい。但し、ビーム径は光ファイバ120の直径の1/10〜1/2程度の範囲であれば問題ない。また、光ファイバ120の直径が100μm程度又はそれ以下の場合には、ビーム径を光ファイバ120の直径とほぼ等しくしてもかまわない。
【0043】
以下に、本実施形態の端面処理方法の具体例について説明する。ポンプガイド径が600μm、直径が1000μmのエアホール型のダブルクラッドファイバの場合、レーザ光を250μm程度のスポットに集光して、6秒程度照射することにより、光ファイバ120の切断、封止及び平滑化を行うことができた。この場合にレーザ光源111には出力が30Wの炭酸ガスレーザを用い、光ファイバ120の回転速度は400rpmとした。封止領域121の厚さt1は、80μm程度とすることができた。封止領域121の厚さt1のばらつきは、30μm以下となり、テーパ領域122の厚さt2は30μm程度となった。光ファイバの端面と側面との境界部における曲率半径は、60μm程度となった。
【0044】
封止領域121の厚さt1は、径方向の複数の箇所において測定した厚さの最大値とした。また、測定点は径方向に等間隔に設定した。測定により得られた封止領域121の厚さt1の最大値と最小値との差を厚さのばらつきとした。テーパ領域122の厚さt2は、空孔の直径が設計値の80%以下となった位置から空孔が塞がれた(直径が0)位置までの距離とし、10箇所の平均値とした。また、測定点は径方向に等間隔に設定した。
【0045】
一方、火炎又はアーク放電を用いて封止した後、クリーバにより切断し、端面を機械的に研磨した光ファイバにおいては、封止領域の厚さt1のばらつきは、50μm〜200μm程度となり、安定しなかった。このとき、テーパ領域の厚さt2は100μm程度となった。また、光ファイバの端面と側面との境界部における曲率半径は20μm程度となった。なお、工程の完了までに30分程度の時間が必要であった。
【0046】
従来の火炎又はアーク放電を用いた端面処理方法の場合、理論的には研磨により封止領域の厚さt1を自由に設定することができる。しかし、封止領域の厚さt1のばらつき及び研磨量の制御性等から、研磨後の封止領域の実用的な厚さは250μm程度となる。封止領域の厚さをこれ以上薄くしようとすると、研磨量を正確に制御する必要があり、生産効率が大きく低下してしまう。しかし、本実施形態の端面処理方法においては、封止領域の厚さが薄く、端面も平滑で且つ平坦となるため、機械的な研磨工程が必要ない。このため、工程時間を大幅に短縮できる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明に係る光ファイバの端面処理方法は、結合損失の低下等を抑えつつ空孔を有する光ファイバの端面を容易に封止でき、光ファイバの端面処理方法等として有用である。
【符号の説明】
【0048】
100 処理装置
101 レーザ光
101a 光軸
101b 周縁光線
102 保持部
110 照射部
111 レーザ光源
112 シャッター
113 エキスパンダ
114 集光レンズ
120 光ファイバ
121 封止領域
122 テーパ領域
123 通常領域
125 空孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に沿って延びる空孔を有する光ファイバの端部にレーザ光を集光して照射し、前記光ファイバの端部を溶融して前記空孔を封止する封止工程を備え、
前記封止工程において、前記レーザ光は前記光ファイバの側方から照射することを特徴とする光ファイバの端面処理方法。
【請求項2】
前記封止工程は、前記光ファイバの端面を平滑化する平滑化工程を兼ねることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバの端面処理方法。
【請求項3】
前記封止工程よりも前に、前記光ファイバの側面にレーザ光を集光して照射することにより前記光ファイバを切断し、前記端部を形成する切断工程をさらに備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光ファイバの端面処理方法。
【請求項4】
前記切断工程において照射するレーザ光と、前記封止工程において照射するレーザ光とは、同一の光強度及びビーム径を有し、
前記切断工程と前記封止工程とは連続して行うことを特徴とする請求項3に記載の光ファイバの端面処理方法。
【請求項5】
集光された前記レーザ光の周縁光線と、前記光ファイバの側面とが直交するように前記レーザ光を照射することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光ファイバの端面処理方法。
【請求項6】
前記光ファイバをその軸を中心に回転させた状態で前記レーザ光を照射することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光ファイバの端面処理方法。
【請求項7】
集光された前記レーザ光のスポット径は、前記光ファイバの径よりも小さいことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の光ファイバの端面処理方法。
【請求項8】
軸方向に沿って延びる空孔を有する通常領域と、
前記通常領域の両端部に設けられ前記空孔が封止された封止領域とを備え、
前記封止領域の厚さのばらつきは30μm以下であることを特徴とする端面が封止された光ファイバ。
【請求項9】
前記通常領域と前記封止領域との間に設けられ、前記空孔の径が次第に小さくなるテーパ領域をさらに備え、
前記テーパ領域の厚さは、5μm以上且つ50μm以下であることを特徴とする請求項8に記載の端面が封止された光ファイバ。
【請求項10】
端面と側面との境界部における曲率半径は、25μm以上100μm以下であることを特徴とする請求項8又は9に記載の端面が封止された光ファイバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−92634(P2013−92634A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234294(P2011−234294)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000003263)三菱電線工業株式会社 (734)
【Fターム(参考)】