説明

光ファイバカプラパッケージ、光ファイバカプラパッケージアレイ及び光ファイバカプラ用接着剤

【課題】光ファイバカプラの無駄を防止すると共に部品の信頼性を向上することができ、加えて容易に製造することができる光ファイバカプラパッケージを提供する。
【解決手段】光ファイバカプラパッケージ1は、光ファイバカプラ10と、固定用基材20と、固定用基材20に光ファイバカプラ10の両端部を固定する接着部40,40’とを備える。固定用基材20は、ガラス系材料からなる断面略角形の長尺部材であって、その一端から他端に亘って外表面に形成された断面略長方形の溝21と、溝21の両側壁22,23の上端に設けられた一対の平面部22a,23aとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信システムや光センサシステムで用いられる光ファイバカプラパッケージ、光ファイバカプラパッケージアレイ及び光ファイバカプラ用接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光ファイバカプラパッケージは、光通信システムや光センサシステムにおける重要な光素子として使用されている。光ファイバカプラは、例えば2本の光ファイバを平行に束ねて或いは捻ってその中央部を加熱融着すると共に延伸して、テーパ状の細径の延伸部としたものである。
【0003】
光ファイバカプラの溶融部の固定には、例えば、長尺状の部材にカプラ収容のための溝が形成された基材が用いられ、この固定用基材には一般にガラス系の材料が使用されている。また、溶融部の固定用基材への固定には、石英系フィラーを含有させることによって温度依存の膨張収縮や硬化収縮をある程度抑えた、エポキシ系やアクリル系の接着剤が使用されている。
【0004】
接着剤における石英系フィラーの含有率は、通常70〜80重量%程度となっている。また、温度依存の膨張収縮や硬化収縮を更に抑えるために球状の弾性フィラーが接着剤に添加された例がある。
【0005】
ここで近年、光モジュールの小型化が進むにつれて、光ファイバカプラパッケージの収容スペースが益々制限されてきている。しかし、ダウンサイジングのために光ファイバカプラパッケージの構成部品を小さくすると、固定用基材にはガラス系の材料が使用されているため、該基材の強度が低下することとなる。その結果、樹脂製接着剤の温度変化に起因する収縮膨張によって、固定用基材に割れが発生する確率が高くなるという問題があった。
【0006】
図8は、従来の光ファイバカプラパッケージの構成の一例を説明する図であり、(a)は固定用基材の斜視図、(b)は固定用基材に光ファイバカプラの溶融部が固定された状態を示す。
【0007】
図8(a)及び(b)に示すように、固定用基材131は、断面略円形のガラス製柱状部材であり、その一端から他端に至る溝132を表面に有している。溝132は円柱体の周面に90°間隔で4つ形成されており、これら溝132の底面がそれぞれ光ファイバカプラの融着延伸部分133の固定面として使用されている。一つの溝132には融着延伸部分133が二つ固定され、2個の光ファイバカプラが接着剤134で固定されている。
【0008】
本構成によれば一つの固定用基材に8個の光ファイバカプラを固定できるので、小さい収容スペースに多数の光ファイバカプラを収容することができ、省スペース化を実現することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−117978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来の光ファイバカプラパッケージでは、一つの固定用基材に複数本の光ファイバカプラが収容されるため、複数本の光ファイバカプラのうちいずれか一つでも不良になると、残り全てが不良扱いになってしまい、折角作製した良好な光ファイバカプラが無駄になるというリスクがある。
【0011】
また、複数本の光ファイバカプラを一つの固定用基材に収容するためには基材の形状を複雑にしなければならず、高いスキルが必要となって製造が困難になるという問題がある。特に、固定用基材の溝は通常切削によって形成されるが、基材がガラス系材料からなるため、固定用基材を更に小型化しようとする場合には、切削時に発生するチッピングを無視できず、部品の信頼性が低下してしまう。
【0012】
また、光ファイバカプラは接着剤で溝に固定されるところ、更なる小型化を実現しようとすると、接着剤の収縮・膨張によって固定用基材に割れが発生する可能性があり、部品の信頼性が低下する。また、石英系フィラーの含有率が70〜80重量%程度では、固定用基材の割れを十分に抑えることはできなかった。
【0013】
本発明の目的は、光ファイバカプラの無駄を防止すると共に部品の信頼性を向上することができ、加えて容易に製造することができる光ファイバカプラパッケージ、光ファイバカプラパッケージアレイ及び光ファイバカプラ用接着剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の光ファイバカプラパッケージは、ガラス系の材料からなる長尺状の基材に、光ファイバカプラの両端部を接着剤で固定してなる光ファイバカプラパッケージであって、前記基材は、その一端から他端に亘って外表面に設けられた断面略角形の一つの溝と、前記溝の両側壁上端に設けられた一対の平面部とを有し、一の前記光ファイバカプラが、前記基材に設けられた一の前記溝に収容されることを特徴とする。
【0015】
また、前記基材は、断面略角形であり、前記断面略角形の溝が、前記基材の外周面に形成された一つの平面に設けられる。
【0016】
また、前記接着剤は、平均粒径5〜75μmの球状のSiO系フィラーを81〜87重量%含有する。
【0017】
さらに、前記基材は、線引き又は押出しで成形されることが好ましい。
【0018】
また、前記SiO系フィラーの平均粒径は17〜31μmであるのが好ましい。
【0019】
また、前記SiO系フィラーの含有率は84〜87重量%であるのが好ましく、より好ましくは86〜87重量%である。
【0020】
さらに、前記接着剤は、熱硬化性樹脂を母材とすることが好ましい。
【0021】
また、本発明の光ファイバカプラパッケージアレイは、上記光ファイバカプラパッケージの複数を集積して構成されることを特徴とする光ファイバカプラパッケージアレイである。
【0022】
また上記目的を達成するために、本発明の光ファイバカプラ用接着剤は、ガラス系の材料からなる長尺基材に光ファイバカプラの両端部を固定する光ファイバカプラ用接着剤であって、平均粒径5〜75μmの球状のSiO系フィラーを81〜87重量%含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、基材が、その一端から他端に亘って外表面に設けられた断面略角形の一つの溝と、該溝の両側壁上端に設けられた一対の平面部とを有し、当該溝に一の光ファイバカプラが収容される。すなわち、溝の両側壁上端に一対の平面部が設けられるため、両側壁の上端でチッピングなどの欠損が生じにくく、光ファイバカプラパッケージの信頼性を向上することができる。また、一つの基材に一本の光ファイバカプラが収容されるため、他の良好な光ファイバカプラを無駄にすることなく光ファイバカプラパッケージを作製することができ、更に、基材の形状が単純化されるので製造を容易にすることができる。
【0024】
また、基材の溝を切削加工でなく線引き又は押出しで成形することにより、チッピングの発生を更に抑制して、光ファイバカプラパッケージの信頼性を更に向上することができる。
【0025】
また、ガラス系の材料からなる基材に光ファイバカプラを固定する際には、平均粒径5〜75μmの球状のSiO系フィラーを81〜87重量%含有する接着剤を使用することで、接着剤の温度変化による収縮・膨張で割れが発生する確率を格段に小さくすることができる。すなわち、接着剤に球状かつ比較的大きい粒径のSiO系フィラーが含有されるので、フィラーの体積に対する表面積が小さくなり、高含有率でも流動性が低下しにくく、接着剤とフィラーとが分離することなく混合することができる。この結果、接着剤と基材の線膨張係数の差を十分に緩和することができ、基材の割れを十分に抑制して、製品の信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係る光ファイバカプラパッケージの構成を説明する分解斜視図である。
【図2】光ファイバカプラパッケージの構成を概略的に示す斜視図である。
【図3】(a)は、接着部に含有される球状SiO系フィラーの外観を示す電子顕微鏡写真であり、(b)は、その拡大写真である。
【図4】球状以外の形状を有するSiO系フィラーを示す電子顕微鏡写真であり(a)は無定形フィラーの外観、(b)は針状フィラーの外観を示す。
【図5】図2の光ファイバカプラパッケージを8個集積した光ファイバカプラパッケージアレイの構成を示す斜視図である。
【図6】図2の光ファイバカプラパッケージを16個集積した光ファイバカプラパッケージアレイの構成を示す斜視図である。
【図7】本実施形態に係る光ファイバカプラパッケージの変形例を説明する図であり、(a)は光ファイバカプラパッケージ全体、(b)は固定用基材を示す。
【図8】従来の光ファイバカプラパッケージの構成の一例を説明する図であり、(a)は固定用基材の斜視図、(b)は固定用基材に光ファイバカプラの溶融部が固定された状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0028】
図1は、本発明の実施形態に係る光ファイバカプラパッケージの構成を説明する分解斜視図である。
【0029】
光ファイバカプラ10は、互いに溶融接着された2本の光ファイバ1a,1bと、クラッド部2a,2bと、溶融延伸部12とを有している。
【0030】
固定用基材20は、石英系ガラスなどのガラス系材料からなる断面略角形の長尺部材であって、その一端から他端に亘って外表面に形成された断面略長方形の溝21と、溝21の両側壁22,23の上端に設けられた一対の平面部22a,23aとを有している。この固定用基材20は、好ましくはプリフォームからの線引き又は押出しで成形され、その外法は、例えば幅1.6mm、厚さ1.0mmである。
【0031】
一対の平面部22a,23aは、本実施形態では四角柱体の外周面の一つの平面に断面略長方形の溝21を形成してなるものである。溝21は、底面部21aと、該底面に略直角に設けられた一対の側面部22b,23bとによって画定される。この溝21の内法は、例えば幅0.8mm、深さ0.6mmである。本実施形態では、一対の平面部22a,23aは底面部21aと略平行に形成されている。
【0032】
光ファイバカプラ10は固定用基材20の溝21に収容され、これにより溶融延伸部12が固定用基材20によって補強されることとなる。
【0033】
図2は、光ファイバカプラパッケージの構成を概略的に示す斜視図である。
【0034】
光ファイバカプラパッケージ1は、固定用基材20に光ファイバカプラ10の両端部を固定する接着部40,40’を有している。光ファイバカプラ10、固定用基材20及び接着部40,40’は光ファイバカプラパッケージを構成する。
【0035】
接着部40,40’は溝21の長手方向両端部に形成され、各接着部の長さは7.0〜11mmである。光ファイバカプラ10の溶融延伸部12は、溝21の開口方向にのみ露出しており、光ファイバカプラ10のそれ以外の部分は接着部40,40’あるいは固定用基材20によって覆われている。
【0036】
接着部40,40’は、熱硬化性樹脂を母材とするフィラー充てん材料からなり、熱硬化性樹脂として、例えばアクリル系樹脂やエポキシ系樹脂が使用される。接着部40,40’が光硬化性樹脂であると光線がフィラーによって遮断されて樹脂の硬化にむらが生じやすくなる。一方、熱硬化性樹脂の場合、硬化メカニズムがフィラー含有率に影響されないので、接着剤塗布部の形状や深度によらずに十分な硬化を得ることができ、光ファイバカプラ10を固定用基材20に確実に固定することができる。
【0037】
接着部40,40’は、平均粒径5〜75μmの球状SiO系フィラーを81〜87重量%含有している。好ましくは、SiO系フィラーの平均粒径は17〜31μmである。接着部40,40’に含有される球状SiO系フィラーの外観を図3(a)に、球状SiO系フィラーの拡大写真を図3(b)にそれぞれ示す。
【0038】
球状フィラーの平均粒径が5μmより小さいと所望の比率まで混合できず、75μmより大きいと混合状態が不十分となる。一方、平均粒径が17〜31μmであると、フィラーの体積に対して表面積を大きくすることができるので、接着剤の全体量に対するフィラー量、すなわち含有量を多くすることができる。
【0039】
また、球形以外の形状を有するフィラーの例として、無定形フィラーの外観を図4(a)、針状フィラー(ウィスカ)の外観を図4(b)に示す。フィラーがこのような球形以外の形状であると、同重量の球状よりもフィラーの表面積が大きくなり、接着剤がフィラー間に入り込んで流動性が著しく悪化する。その結果、フィラーを80重量%以上含有させることが難しくなる。一方、接着剤に含有されるフィラーが球状であると、高含有率でも流動性が低下せず、フィラーと接着剤が分離せずに混合することが可能となる。
【0040】
SiO系フィラーの含有率は、好ましくは84〜87重量%であり、より好ましくは86〜87重量%である。例えば、SiO系フィラーの平均粒径が5μmの場合には82重量%まで充填することが可能である。フィラーの含有率が80重量%以下であると基材に割れが生じる確率を小さくすることができず、87重量%より大きいと接着剤の流動性が損なわれる。一方、SiO系フィラーの含有率を82〜87重量%と高充填率にすれば、接着剤と基材の線膨張係数の差を大幅に小さくすることができる。
【0041】
尚、本実施形態ではSiO系フィラーの含有率は82〜87重量%と高充填率であるため、接着剤と基材の線膨張係数の差が十分緩和されているが、必要に応じて球状のアクリル製弾性フィラーを数%含有させてもよい。
【0042】
図5は、図3の光ファイバカプラパッケージ1を8個集積した光ファイバカプラパッケージアレイの構成を概略的に示す斜視図である。
【0043】
光ファイバカプラパッケージ1には、異物混入を防止するために、外周全体を覆う樹脂製チューブ51が取り付けられている。そして、光ファイバカプラパッケージアレイ50は、樹脂製チューブ51が取り付けられた光ファイバカプラパッケージ1を2×4個集積した集積型カプラを構成している。
【0044】
この光ファイバカプラパッケージアレイ50は、樹脂製チューブ51の厚さを含めて、光ファイバカプラパッケージ1の8個集積で6.5mm×4.5mm程度の大きさとすることができる。尚、一般的な光ファイバカプラの外径はφ3mmであり、2×4個で集積すると12mm×6mmの大きさになる。よって本実施形態ではパッケージを小型化できることで容易に小型のパッケージアレイを製造することができる。
【0045】
更なる保護が必要な場合には、8個集積した光ファイバカプラパッケージアレイ50の外周を覆う金属製ハウジングが取り付けられてもよい。このとき、光ファイバカプラパッケージアレイ50の両端縁部に、約2.5mm厚で樹脂が充填される。
【0046】
図6は、図2の光ファイバカプラパッケージ1を16個集積した光ファイバカプラパッケージアレイの構成を示す斜視図である。
【0047】
光ファイバカプラパッケージ1の外周形状は矩形であるため、パッケージの積載方向に自由度がある。図6の光ファイバカプラパッケージアレイ60は、光ファイバカプラパッケージ1を一列に6個集積してその外周を樹脂チューブで被覆してなる集積体61と、2個集積してその外周を樹脂チューブで被覆してなる集積体62を組み合わせてL字に8個集積し、さらにこの8個の集積体を2個組み合わせて、16個集積した構成となっている。
【0048】
光ファイバカプラパッケージアレイ60の中央には空間部63が形成されている。この空間部63は、例えば集積後に光ファイバカプラ10のいずれかが不良となった場合、アレイの外法を変更せずに空間部63に新たな光ファイバカプラパッケージを追加して、アレイとしての機能を満たすことができるように設計されたものである。尚、収容スペースに余裕がある場合には、新たなパッケージを光ファイバカプラパッケージアレイ60の外側に追加してもよい。
【0049】
上述したように、本実施形態によれば、固定用基材20が、その一端から他端に亘って外表面に設けられた断面略四角形の一つの溝21と、該溝の両側壁上端に設けられた一対の平面部22a,23aとを有し、当該溝に一の光ファイバカプラ10が収容される。すなわち、溝21の両側壁上端に一対の平面部22a,23aが設けられるため、両側壁22,23の上端でチッピングなどの欠損が生じにくく、光ファイバカプラパッケージ1の信頼性を向上することができる。また、一つの固定用基材20に一本の光ファイバカプラ10が収容されるため、他の良好な光ファイバカプラを無駄にすることなく光ファイバカプラパッケージを作製することができ、更に、固定用基材の形状が単純化されるので製造を容易にすることができる。
【0050】
また、石英系ガラスなどのガラス系材料からなる固定用基材20に光ファイバカプラ10を固定する際には、平均粒径5〜75μmの球状のSiO系フィラーを81〜87重量%含有する接着剤を使用することで、接着部40,40’の温度変化による収縮・膨張で割れが発生する確率を格段に小さくすることができる。
【0051】
図7は、本実施形態に係る光ファイバカプラパッケージの変形例を説明する図であり、(a)は光ファイバカプラパッケージ全体、(b)は固定用基材を示す。なお、本変形例の光ファイバカプラパッケージ2は、その構成が基本的に図2の光ファイバカプラパッケージ1と同様であるので、重複する説明を省略し、以下に異なる部分を説明する。
【0052】
固定用基材70は、その一端から他端に亘って外表面に形成された略断面略台形の溝71と、溝71の両側壁72,73の上端に設けられた一対の平面部72a,73aとを有している。
【0053】
一対の平面部72a,73aは、本実施形態では円柱体の外周に形成された一つの平面に断面略台形の溝71を形成してなるものである。溝71は、底面部71aと、該底面に対して鈍角に設けられた一対の側面部72b,73bとによって画定されている。そして、光ファイバカプラパッケージ2は、固定用基材70に光ファイバカプラ10の両端部を固定する接着部90,90’を有している。
【0054】
本変形例によれば、固定用基材70は、略断面略台形の溝71と、溝71の両側壁72,73の上端に設けられた一対の平面部72a,73aとを有しているので、両側壁72,73の上端でチッピングなどの欠損が生じにくく、光ファイバカプラパッケージ2の信頼性を向上することができる。
【0055】
以上、本実施形態に係る光ファイバカプラパッケージ及び光ファイバカプラパッケージアレイについて述べたが、本発明は記述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
【0056】
例えば、本実施形態では、固定用基材20は断面略四角形であるが、これに限らず、断面略多角形であってもよい。
【0057】
また本実施形態では、溝21は断面略長方形であるが、断面略正方形や断面略台形、あるいは断面略半円形であってもよい。溝71は断面略台形であるが、断面略正方形や断面略長方形、あるいは断面略半円形であってもよい。
【実施例】
【0058】
以下、本発明の実施例を説明する。
【0059】
先ず、被覆された光ファイバの被覆を除去し、露出した裸ファイバをアルコール等で洗浄する。上記のように処理した2本の裸ファイバを溶融延伸機のファイバクランプ部分にて把持し、平行に押し当てるか、裸ファイバを捻ることで密着させる。その後、バーナーにて、裸ファイバの密着部分を炙りながらクランプを広げることで溶融延伸を実施し、所望の分岐比にて溶融延伸を停止し、光ファイバカプラを得る。
【0060】
また、石英系ガラスなどのガラス系材料からなるプリフォームの線引きまたは押出しを行い、断面略凹型の固定用基材を得る。
【0061】
また、エポキシ系の熱硬化型接着剤に、含有率が82〜87重量%となるように平均粒径17〜31μmのSiO系フィラーを添加し、これを市販の攪拌機で攪拌して接着剤を得る。
【0062】
次に、溶融延伸された光ファイバカプラの直下に固定用基材を配置し、固定用基材の溝に光ファイバカプラが収まるよう移動する。
【0063】
その後、固定用基材の溝に光ファイバカプラが収容された状態で固定用基材の両端部の溝に接着剤を塗布し、光ファイバの被覆部と被覆除去部の境目を含んで溶融延伸部の境目までを覆う、長さ約11mmの接着部を形成する。これにより光ファイバカプラパッケージを得る。
【0064】
そして、接着剤のSiO系フィラー含有率を変化させた場合における光ファイバカプラパッケージの割れ発生率を求める試験を行った。具体的には、所定含有率の接着剤を使用したパッケージを100個準備し(N数)、環境温度を−40℃〜85℃の範囲で8サイクル変化させた後、固定用基材に割れが生じているパッケージの個数(発生数)を調べ、各含有率における割れの発生率を求めた。
【0065】
また、接着部の長さを11mmから8mmに変更して、上記と同様の熱サイクル試験を行った。このとき、接着剤のSiO系フィラー含有率は84〜87重量%とした。これらの結果を表1及び表2に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
【表2】

【0068】
表1及び表2の結果から、SiO系フィラーを84〜87重量%含有するエポキシ系接着剤を使用すると、固定用基材の割れを十分に抑制することができ、とりわけ86〜87重量%含有するエポキシ系接着剤を使用すると、固定用基材の割れを確実に防止できることが分かった。
尚、本発明に係る接着剤を使用する場合、接着剤と固定用基材の線膨張率差を非常に小さくできるので、固定用基材は本実施形態のように線引き又は押出しによって成形されたものに限らずとも、その効果を奏することが可能である。
【符号の説明】
【0069】
1,2 光ファイバカプラパッケージ
1a,1b 光ファイバ
2a,2b クラッド部
10 光ファイバカプラ
12 溶融延伸部
20,70 固定用基材
21,71 溝
21a 底面部
22,23 両側壁
22a,23a 一対の平面部
22b,23b 一対の側面部
40,40’ 接着部
50 光ファイバカプラパッケージアレイ
51 樹脂性チューブ
60 光ファイバカプラパッケージアレイ
61,62 集積体
63 空間部
71a 底面部
72,73 両側壁
72a,73a 一対の平面部
72b,73b 一対の側面部
90,90' 接着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス系の材料からなる長尺状の基材に、光ファイバカプラの両端部を接着剤で固定してなる光ファイバカプラパッケージであって、
前記基材は、その一端から他端に亘って外表面に設けられた断面略角形の一つの溝と、前記溝の両側壁上端に設けられた一対の平面部とを有し、
一の前記光ファイバカプラが、前記基材に設けられた一の前記溝に収容されることを特徴とする光ファイバカプラパッケージ。
【請求項2】
前記基材は、断面略角形であり、前記断面略角形の溝が、前記基材の外周面に形成された一つの平面に設けられることを特徴とする請求項1記載の光ファイバカプラパッケージ。
【請求項3】
前記接着剤は、平均粒径5〜75μmの球状SiO系フィラーを81〜87重量%含有することを特徴とする請求項1又は2記載の光ファイバカプラパッケージ。
【請求項4】
前記基材は、線引き又は押出しで成形されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の光ファイバカプラパッケージ。
【請求項5】
前記SiO系フィラーの平均粒径が17〜31μmであることを特徴とする請求項4記載の光ファイバカプラパッケージ。
【請求項6】
前記SiO系フィラーの含有率が84〜87重量%であることを特徴とする請求項4記載の光ファイバカプラパッケージ。
【請求項7】
前記SiO系フィラーの含有率が、86〜87重量%であることを特徴とする請求項6記載の光ファイバカプラパッケージ。
【請求項8】
前記接着剤は、熱硬化性樹脂を母材とすることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の光ファイバカプラパッケージ。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の光ファイバカプラパッケージの複数を集積して構成されることを特徴とする光ファイバカプラパッケージアレイ。
【請求項10】
ガラス系の材料からなる長尺基材に光ファイバカプラの両端部を固定する光ファイバカプラ用接着剤であって、
平均粒径5〜75μmの球状SiO系フィラーを81〜87重量%含有することを特徴とする光ファイバカプラ用接着剤。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−80217(P2013−80217A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−200170(P2012−200170)
【出願日】平成24年9月12日(2012.9.12)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)