説明

光ファイバカプリング装置及び光ファイバカプリング方法

【課題】 光ファイバ側面から信号光を効率よく入射させる光ファイバカプリング技術を提供する。
【解決手段】 本発明に係る光入射装置9は、所定の曲率半径で曲げられた通信用光ファイバ4Aに入射用光ファイバ14から所定の角度で第一の光ファイバ4Aの側面上の所定の位置に向けて信号光を出射し、入射用光ファイバ14から出射した信号光が通信用光ファイバ4Aのコア21と結合する箇所で入射用光ファイバ14から出射した信号光のビーム径拡大を抑制するために光硬化性樹脂13を用いて光導波路を自己形成する機構を備える。これによって、通信用光線ファイバ4Aの側面からその光ファイバ4Aのコア21に、信号光を効率よく入射させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば光ファイバケーブルによる通信網の建設・保守に使用される光心線対照器、光パルス試験器あるいは光通信器、サービス切替技術に用いられ、光ファイバの側面から信号光を入出射させる光ファイバカプリング装置及び光ファイバカプリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバケーブルによる通信網の建設や保守を行うにあたり、作業現場において、ケーブル内、あるいはユーザ宅の光ファイバにおける心線を識別する必要性が生じる。この作業は心線対照と呼ばれている。
従来の心線対照作業では、一般的に、対照を必要とする光線路(光ファイバ)に対し、曲げ装置を用いて曲げを与える。この状態で、その光線路の上部側に設置した心線対照用光源から出射される信号光を、光カプラを介して光線路に入射し、その光線路の曲げ部分側面から信号光を放射させ、これを受光器で検出して目的とする心線を特定する手法が用いられている(非特許文献1)。また、心線対照用光源を光パルス試験器に置き換えることによって、光カプラを介して光線路の品質検査や故障位置探査を実行している。
【0003】
ところで、近年では、光アクセス網において、通信を継続した状態で信号光を迂回ルートに切り替える「無瞬断切り替え技術」が検討されている。ここでの課題は、実線路設備において、通信線路を二重化し迂回ルートに切り替える場合に、線路(光ファイバ)の区間の両端に「2入力、N出力」の光分岐器が設置されていなければ実現することができないことにある。そこで、線路設備の任意の場所において、光ファイバの側面から光を入射する装置が開発されている。
【0004】
しかしながら、従来の技術では、通信用光ファイバと入射用光ファイバとを最適な位置に配置し保持するための機構が備わっていない。このため、十分な結合効率(入射効率)を得ることは極めて困難であった。特に、光ファイバ側面からの光入射を行う場合に、光ファイバのコアとの結合において入射光、出射光が拡散するため、結合効率が大幅に下がってしまうという問題があり、実用化には至っていなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「光線路の上部下部判定を可能とする心線対照器の検討」、2003年電子情報通信学会通信ソサイエティ大会、B-10-10
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上述べたように、従来の光入出射技術では、光ファイバのコアに結合するまでに入射光および出射光の拡散によって、結合効率が大幅に低下してしまうという問題があった。
本発明は、上記の事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、光ファイバ側面から信号光を効率よく入出射させることのできるローカル信号光ファイバカプリング装置及びローカル信号光ファイバカプリング方法を提供することにある。
最適な入射位置や入射角度からのずれ、あるいは光ファイバのモードフィールド径と入射光や出射光のビーム径の違いによって、結合効率が大幅に低下してしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、光ファイバ側面から信号光を効率よく入出射させることのできる光ファイバカプリング装置及び光ファイバカプリング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る光ファイバカプリング装置は以下のような態様の構成とする。
(1)第一の光ファイバの任意の箇所を所定の曲率半径で曲げて保持する第一の保持手段と、第二の光ファイバを所定の位置に保持する第二の保持手段と、前記第二の光ファイバから所定の角度で前記第一の光ファイバの側面上に向けて信号光を出射するように調整する調整手段とを備え、前記所定の曲率半径は、前記第二の光ファイバの端面から送出された前記信号光が、前記第一の光ファイバの最外被覆の側面、前記第一の光ファイバの最外被覆とクラッド、前記第一の光ファイバのクラッドとコアのいずれの面においても全反射せずに前記第一の光ファイバのコアに入射する曲率半径とし、前記所定の位置は、前記第一の光ファイバの直線領域をシングルモードで伝搬してきた前記信号光が前記第一の光ファイバの最外被覆の側面に最初に到達する位置とし、前記所定の角度は、前記第一の光ファイバを伝搬し、前記所定の位置に到達した前記信号光が前記第一の光ファイバの最外被覆から出射する角度とする光ファイバカプリング装置であって、前記第一の光ファイバの側面と前記第二の光ファイバの端面との間に、特定波長の光の照射によって硬化し、硬化後に前記第一の光ファイバの最外被覆の屈折率と等しい屈折率である光硬化性樹脂を充填してなる充填手段と、前記光硬化性樹脂を硬化させるための特定波長の光源の光を前記第二の光ファイバに伝搬させ、前記特定波長の光源の光を前記光硬化性樹脂に照射し、前記光硬化性樹脂を硬化させ光導波路を自己形成する自己形成光導波路手段とを具備する態様とする。
【0009】
(2)(1)の構成において、前記自己形成光導波路手段は、前記第一の光ファイバに光を伝搬させ、前記第一の光ファイバの曲げ部からの漏れ光を前記第二の光ファイバで受光した光強度を測定する光強度測定手段と、前記光源からの光の入射開始後に前記光強度測定手段により測定される光強度の変化量が、前記第一の光ファイバと前記第二の光ファイバの間で光導波路の形成に伴って減少する光出射装置の損失に対応する所定の光強度の変化量に到達したことにより、導波路の形成が完了したことを判断する判断手段とを備える態様とする。
【0010】
また、本発明に係る光ファイバカプリング方法は以下のような態様の構成とする。
(3)第一の光ファイバを、その任意の箇所を所定の曲率半径で曲げて凸部を形成した状態で設置する光ファイバ設置手順と、前記光ファイバ設置手順で所定の曲率半径で曲げられた第一の光ファイバの前記曲げにおける凸部の所定の位置に第二の光ファイバを保持する光ファイバ保持手順と、前記第一の光ファイバの曲げ部において前記第一の光ファイバのコアの中心を全て含む平面に入射部における前記第二の光ファイバのコア中心から照射される光線が含まれるように設置した第二の光ファイバの端面のコア中心を、前記所定の位置に、前記第一の光ファイバの最外被覆の側面の法線方向を基準とした所定の角度の方向から近接させる光ファイバ近接手順と、前記第二の光ファイバの端面から送出される特定波長の信号光を、前記第一の光ファイバの最外被覆の側面から前記第一の光ファイバのコアへ入射させる光入射手順とを備え、前記所定の曲率半径は、前記第二の光ファイバの端面から送出された前記信号光が、前記第一の光ファイバの最外被覆の側面、前記第一の光ファイバの最外被覆とクラッド、前記第一の光ファイバのクラッドとコアのいずれの面においても全反射せずに前記第一の光ファイバのコアに入射する曲率半径とし、前記所定の位置は、前記第一の光ファイバの直線領域をシングルモードで伝搬してきた前記信号光が、前記第一の光ファイバの最外被覆の側面に最初に到達する位置とし、前記所定の角度は、前記第一の光ファイバを伝搬し、前記所定の位置に到達した前記信号光が、前記第一の光ファイバの最外被覆の境界面から出射する角度とする光ファイバカプリング方法であって、前記光ファイバ設置手順で所定の曲率半径で曲げられた第一の光ファイバの前記曲げにおける凸部の前記所定の位置に、特定波長の光の照射によって硬化し、硬化後に当該第一の光ファイバの最外被覆の屈折率と等しい屈折率である光硬化性樹脂を密着させる光硬化性樹脂密着手順と、前記光硬化性樹脂を硬化させるための特定波長の光源の光を前記第二の光ファイバを伝搬させ、前記特定波長の光源の光を前記光硬化性樹脂に照射し、前記光硬化性樹脂を硬化させ光導波路を自己形成する自己形成光導波路手順とを具備する態様とする。
【0011】
(4)(3)の構成において、前記自己形成光導波路手順は、前記第一の光ファイバに光を伝搬させ、前記第一の光ファイバの曲げ部からの漏れ光を前記第二の光ファイバで受光した光強度を測定し、前記光源からの光の入射開始後に測定される光強度の変化量が、前記第一の光ファイバと前記第二の光ファイバの間で光導波路の形成に伴って減少する光出射装置の損失に対応する所定の光強度の変化量に到達したことにより、導波路の形成が完了したことを判断する態様とする。
【0012】
本発明に係る光ファイバカプリング装置では、所定の曲率半径で第一の光ファイバを曲げ、所定の位置へ所定の角度から信号光を入射し、前記第一の光ファイバの側面と前記第二の光ファイバの端面との間に、特定波長の光の照射によって硬化し、硬化後に前記第一の光ファイバの最外被覆の屈折率と等しい屈折率である光硬化性樹脂を充填させる。前記光硬化性樹脂は、前記第一の光ファイバの側面のマイクロメートルオーダ以下の凹凸を隙間なく埋めることで、第一の光ファイバの側面すなわち最外被覆の表面粗さによって引き起こされる信号光の散乱や乱回折を防止することができる。
【0013】
信号光を密着させた光硬化性樹脂から前記第一の光ファイバの最外被覆に効率よく透過し、その後、最外被覆からクラッドへ、クラッドからコアへともっとも短い光路で、かつ、全反射することなく入射させ、かつ、前記第一の光ファイバのコアに信号光をシングルモードで伝搬させることができる。よって、第一の光ファイバの側面から第一の光ファイバのコアに、信号光を効率よく入射させることができる。
【0014】
前記光硬化性樹脂は、光が照射された部分が硬化するとともにその屈折率が上昇するため、この硬化部分(樹脂コア部)が光の閉じ込め機能を有する導波路(構造)を構成する。この導波路は光の照射中に連続的に形成され、長手方向に成長するため、前記第二の光ファイバからの入射光の拡散を防ぐことが可能となり、前記第一の光ファイバの曲げ部からの漏洩光の拡散を防ぐことが可能となる。
【0015】
本発明によれば、第一の光ファイバの側面から第一の光ファイバのコアに、第二の光ファイバの出射した信号光を効率よく入射させることができる。これによって、作業現場において簡便に、かつ、線路設備に比較的制約されることなく心線対照や光パルス試験及び光通話、サービス切り替えが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、光ファイバ側面から信号光を効率よく入出射させることのできる光ファイバカプリング装置及び光ファイバカプリング方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態に係る光ファイバカプリング方法を無瞬断切り替えに適用した光通信システムを示す概略構成図である。
【図2】図1に示すシステムの無瞬断切り替えに用いた光ファイバカプリング装置の一例を示す断面図である。
【図3】図1に示す光ファイバの素線が曲げられた凸部を拡大して示す断面図である。
【図4】本実施形態に係る光ファイバカプリング方法を心線対照に適用した光通信システムを示す概略構成図である。
【図5】本実施形態に係る光ファイバカプリング方法を光パルス試験に適用した光通信システムを示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
添付の図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。以下に説明する実施の形態は本発明の構成の例であり、本発明は、以下の実施の形態に制限されるものではない。
本発明の光入射方法を光通信システムの無瞬断切り替えに適用した例について説明する。図1は、本実施形態に係る光ファイバカプリング方法を無瞬断切り替えに適用した光通信システムを示す概略構成図である。図1において、1は所内装置、2A及び2Bは光遮断フィルタ、3は光カプラ、4Aは第一の光線路(第一の光ファイバ)、4Bは第二の光線路(第二の光ファイバ)、4Cは新設光線路(第三の光ファイバ)、5は所外装置、6は光入出力ポート、7は無瞬断切替用光源、8は無瞬断切替装置、9は光入出射装置(光ファイバカプリング装置)を示す。
【0019】
図1に示すシステムでは、第一の光線路4Aの上部側端に光カプラ3が設置され、下部側端に光入射装置9が設置される。所内装置1から出射された信号光は、光遮断フィルタ2A、光カプラ3を介して第一の光線路4Aに入射され、その出力光は光入射装置9、光遮断フィルタ2Bを介して所外装置5に送られる。
【0020】
上記光カプラ3は、入出力ポート6を介して無瞬断切替用光源7から送出されるパルス光L1を入射し、このパルス光L1を第一の光線路4Aに送出される信号光に光結合する。パルス光L1が結合された信号光の一部は無瞬断切替装置8を介して第二の光線路4Bに入射され、その出射光は光入射装置9に送られる。
【0021】
ここで、無瞬断切替装置8では、詳細は図示しないが、まず、無瞬断切替用光源7から出射されたパルス光L1を用いて、第二の光線路4Bの光路長を、第一の光線路4Aとの光路長差に基づいてビット符号が一致するように調整する。次に、光遮断機構(図示せず)を用いて第一の光線路4Aの信号光を遮断し、その信号光の経路を第一の光線路4Aから第二の光線路4Bに移し替える。続いて、無瞬断切替用光源7から出射されたパルス光L1を用いて、第二の光線路4Bと新設光線路4Cとの光路長差に基づいて双方の光路長が一致するように制御し、第2の光線路4Bと新設光線路4Cを通過する信号光のビット符号が一致するように制御し、光遮断機構(図示せず)を用いて第二の光線路4Bの信号光を遮断し、信号光の経路を第二の光線路4Bから新設光線路4Cに移し替える。
【0022】
図2は、上記無瞬断切替方法に用いた光入射装置9の一例である。図2において、4Bは第二の光線路(第一の光ファイバ)、L2は信号光(パルス光L1を含む)、13は光硬化性樹脂(屈折率整合部材)、14は入射用光ファイバ(第二の光線路4Bの延長)、ρは光線路4Aの曲げ部における曲率半径、ζは光線路4Aの側面への信号光L2の入射角すなわち所定の角度である。
【0023】
また、図3は光線路4Aの素線が曲げられた凸部の拡大図である。図3において、4Aは光線路(第一の光ファイバ)、13は光硬化性樹脂、14は入射用光ファイバ(第二の光線路の延長)、19は光線路4Aの最外被覆、20は光線路4Aのクラッド、21は光線路4Aのコアを示す。また、A点は入出射用光ファイバ14から出射される光線における光硬化性樹脂13と最外被覆19との境界点であり、B点は光線における最外被覆19とクラッド20との境界点、C点は光線におけるクラッド20とコア21との境界点を示す。xはコア21の半径を示す。xはクラッド20の半径を示す。xは最外被覆19の半径を示す。
【0024】
図3では、コア21、クラッド20、最外被覆19の外径を各々2x、2x、2xと示した。また、光線路4Aの曲率半径(光線路4Aの素線の曲率中心からコア中心までの距離)をρ、A点、B点及びC点での信号光L2の入射角を各々ζ、ζ、ζとした。A点、B点及びC点での信号光L2の屈折角を各々ψ、ψ、ψとした。また、光線路4AのD点からC点まで、C点からB点まで、B点からA点までの各方向変化角を各々、δ、δ、δとした。また、コア21でのシングルモード伝搬角をθ、コア21、クラッド20、最外被覆19、光硬化性樹脂13の屈折率を各々n、n、n、nとした。
【0025】
すなわち、図2に示す光入射装置9は、光線路4Aを所定の曲率半径ρで曲げられた状態で保持することで、図3に示すような凸部を形成する。光線路4Aが曲がり始めるまでのE部分は入射された信号光L2が多モード変換や損失を受けないように直線状であることが好ましい。
【0026】
上記光入射装置9は、入射用光ファイバ14を保持し、入射用光ファイバ14は所定の角度(図3に示すζ)から光線路4Aの側面上の所定の位置(図3のA点)に向けて信号光L2を出射する。例えば、所定の曲率半径ρで曲げられた光線路4Aを保持するための機構として、円柱体に曲げ半径が一定となるようにV溝を刻み、光線路4AをV溝に沿わせ、光線路4Aの曲げ部の両端から一定の張力を印加する機構などがある。所定の角度については後述する。
【0027】
光線路4A及び入射用光ファイバ14の光軸の軸ずれを防止するため、光線路4Aの曲げ部において、光線路4Aのコアの中心を全て含む平面に、入射部における入射用光ファイバ14の中心を結ぶ直線が含まれるように光線路4Aと入射用光ファイバ14を保持することが好ましい。
【0028】
また、光線路4Aの側面と入射用光ファイバ14の端面との間に、特定波長の光の照射によって硬化し、硬化後に前記第一の光ファイバの最外被覆の屈折率と等しい屈折率の光硬化性樹脂13を充填させることが好ましい。なぜなら、光線路4Aの表面の粗さによって引き起こされる信号光L2の散乱や乱回折を防止するためである。その硬化後の光硬化性樹脂13は、光線路4Aの側面のマイクロメートルオーダ以下の凹凸を隙間なく埋めることが好ましい。
【0029】
光線路4Aの側面と入射用光ファイバ14の端面との間に光硬化性樹脂13を充填させるための機構(図示せず)としては、例えば、光硬化性樹脂13がゲル状であれば、光線路4の側面と入射用光ファイバ14の端面との間を囲むように柵又は溝を形成しておくとよい。あるいは、光硬化性樹脂13自身が持つ表面張力によって留めておくようにしてもよい。
【0030】
本実施形態に係る光入射方法は、(S1)光入射装置設置手順、(S2)光硬化性樹脂密着手順、(S3)光ファイバ近接手順、(S4)自己形成光導波路手順、(S5)光入射手順を順に行う。
(S1)光入射装置設置手順では、所定の曲率半径(図3に示すρ)で保持しつつ光線路4Aを設置する。
(S2)屈折率整合部材密着手順では、所定の曲率半径(図3に示すρ)で曲げられた光線路4Aの曲げにおける凸部の所定の位置(図3に示すA点)に、光線路4の最外被覆の屈折率と等しい屈折率の屈折率整合部材13を密着させる。これによって光線路4Aの側面すなわち最外被覆の表面粗さによって引き起こされる信号光L2の散乱や乱回折を防止することができる。
(S3)光ファイバ近接手順では、所定の曲率半径(図3に示すρ)で曲げられた光線路4Aの最外被覆の側面に、入射用光ファイバ14の端面を、当該A点の法線方向に対する所定の角度(図3に示すζ)で近接させる。
【0031】
ここで、光ファイバ近接手順(S3)において、実験的に最も効率のよい所定の位置及び所定の角度を、3軸ステージを用いて探索する手順を、図3を用いて説明する。
まず、大まかに所定の位置及び所定の角度で入射用光ファイバ14を突き合せた後、実験的にはもっとも入射率の減少に影響がある高さ方向のz軸の微調整を行い、その後、x軸方向の微調整を行い、現在のy軸の値で最も効率のよい所定の位置及び所定の角度の計測を行う。その後、y軸を微動させ、高さ方向の微調整を行いながらx軸の微調整を行う手順を繰返し、最も効率のよい所定の位置及び所定の角度の探索を行う。x軸は入射用光ファイバ14から照射される光線方向とする。
【0032】
実験的に最も効率のよい所定の位置及び所定の角度を3軸ステージを用いて探索する手順は、コンピュータ制御で3軸の自動ステージを制御することよって、自動的に最も効率のよい所定の位置及び所定の角度を探索することができる。
(S4)自己形成光導波路手順では、光硬化性樹脂13を硬化させるための特定波長の光源の光を入射用光ファイバ14に伝搬させ、入射用光ファイバ14の端面から前記特定波長の光源の光を光硬化性樹脂13に照射し、光硬化性樹脂13を硬化させ光導波路を自己形成させる。このとき、光硬化性樹脂13では、光が照射された部分が硬化するとともにその屈折率が上昇するため、この硬化部分(樹脂コア部)が光の閉じ込め機能を有する導波路(構造)を構成する。この導波路は光の照射中に連続的に形成され、長手方向に成長するため、入射用光ファイバ14からの入射光の拡散を防ぐことが可能となり、第一の光線路4Aの曲げ部からの漏洩光の拡散を防ぐことが可能となる。
【0033】
(S5)光入射手順では、入射用光ファイバ14の端面から送出された信号光L2を、光線路4Aの最外被覆19の側面から光線路4Aのコア21へ入射させる。このとき、光入射装置9は、光線路4Aの曲げ部において、光線路4Aのコア21の中心を全て含む平面に入射部における入射用光ファイバ14の中心を結ぶ直線が含まれるように、光線路4Aと入射用光ファイバ14を接近できるようにしておく。この場合、光線路4Aのコア21へ向けて、信号光L2を所定の位置に安定して入射させることが好ましい。
【0034】
本実施形態に係る光入射装置9では、入射用光ファイバ14の端面から出射された信号光L2がコア21に入射されるまでのビーム径の広がりを、入射用光ファイバ14の端面から光線路4Aまでの間を光硬化性樹脂13で光導波路を形成することで抑えることにより、入射率を高めることができる。また、光出射技術については入射用光ファイバ14にコア径が大きく、高い開口数をもつ光ファイバを使用することが好ましい。また、光入射技術については入射用光ファイバ14にコア径が小さく、低い開口数をもつ光ファイバを使用することが好ましい。
【0035】
また、光出射技術と光入射技術の効率を両立するには、入射用光ファイバ14のコア径が大きく、入射用光ファイバ14から出射された信号光L2のビーム径が所定の距離で光線路4Aのコア径と等しいあるいは小さいことが好ましい。
前記自己形成光導波路手順S4は、前記第一の光線路4Aに光を伝搬させ、前記第一の光線路4Aの曲げ部からの漏れ光を前記第二の光線路4Bで受光した光強度を光パワーメータで測定し、前記光源7からの光の入射開始後に光パワーメータにより測定される光強度の変化量が、第一の光線路4Aと第二の光線路4Bの間で光導波路の形成に伴って減少する光入射装置9の損失に対応する所定の光強度の変化量に到達したか否かより、導波路の形成完了の可否を判断することが好ましい。所定の光強度の変化量とは、事前に測定した自己形成導波路が硬化した後の結合効率と自己形成導波路が硬化する前の結合効率の差分とする。
【0036】
図3では、所定の曲率半径ρで曲げられた光線路4の側面に対して、入射用光ファイバ14から信号光L2を入射する際の各層の境界面での透過(屈折)と反射の様子を光線学的に示している。
図3において、入射用光ファイバ14からのビームの中心が通るパスを見ると、ビームの中心は光エネルギーが最も集中しており、ビームの中心で光線の軌跡を代表している。所定の曲率半径ρは、(1)式を用いて算出される入射角ζ、ζ、ζがいずれもπ/2より小さくなる必要がある。
【0037】
【数1】

すなわち、所定の曲率半径ρは、入射用光ファイバ14の端面から送出された信号光L2が、光硬化性樹脂13と光線路4Aの最外被覆19、光線路4の最外被覆19とクラッド20、光線路4Aのクラッド20とコア21のいずれの面においても全反射せずに光線路4Aのコア21に入射する曲率半径である。
【0038】
所定の位置A点は、光線路4の最外被覆19の側面における、(2)式、(3)式及び(4)式を用いて算出される方向変化角δ、δ及びδの総和(δ+δ+δ)の角度上の位置である。
【0039】
【数2】

【0040】
【数3】

【0041】
【数4】

また、所定の角度ζは、(1)式を用いて算出される所定の位置A点への入射角ζである。なお、光ファイバ素線の種別(ファイバパラメータ)、曲率半径ρにより、所定の位置A点の方向変化角(δ+δ+δ)や入射角ζ(=ψ)が異なっていることは言うまでもない。所定の位置A点及び所定の角度ζの原理については後述する。
【0042】
密着させた光硬化性樹脂13からの最外被覆19に効率よく透過し、その後、最外被覆19からクラッド20へ、クラッド20からコア21へと最も短い光路で、かつ、全反射することなく入射させ、かつ、コア21に入射用光ファイバ14からの信号光8をシングルモードで伝搬させることができる。
【0043】
光線路4Aの側面より入射された光がコア21内をシングルモードで伝搬するということは、光線学上、光の可逆性を考えれば、シングルモードで伝搬してきた光が、ある曲がり部分においてコア21からクラッド20へ、クラッド20から最外被覆19へ、さらに最外被覆から光硬化性樹脂13へと放射される経路と全く同じである。したがって、コア21から曲げ部分に放射されていく経路を考察することで、所定の位置や所定の角度、所定の距離の根拠を説明することができる。
【0044】
図3を用いて上述の説明による根拠に従うと、直線領域E部分のコア21内をシングルモード(伝搬角θ)で反射してきた信号光L2は、光線路4Aの曲がり始めた位置のコア21とクラッド20との境界で屈折し、C点へ角度ψ1で入射する。角度ψ1はπ/2よりも小さくなっており、信号光L2はクラッド20へ角度ζ1で入射する。クラッド20へ入射した信号光L2はB点へ角度ψで入射する。角度ψはπ/2よりも小さくなっており、信号光L2は最外被覆19へ角度ζで入射する。最外被覆19へ入射した信号光L2はA点へ角度ψで入射する。角度ψはπ/2よりも小さくなっており、信号光L2は屈折率整合部材である光硬化性樹脂13へ角度ζで入射する。
【0045】
曲がりによってコア21、クラッド20、最外被覆19及び光硬化性樹脂13の各境界面(C点、B点、A点)で臨界角を超えると、その一部がコア21からクラッド20へ、クラッド20から最外被覆19へ、最外被覆19から光硬化性樹脂13へと透過される。最終的には、この光硬化性樹脂13の中の放射光路の屈折角が、側面入射における入射角ζ(図2参照)と同じになる。ただし、伝搬角θは、開口数に応じてある許容された角度Δθを有することから、入射角ζにおいてもΔζ分の変動を許すことになる。
【0046】
上記より、所定の位置A点は、光線路4Aの直線部分E部分をシングルモードで伝搬してきた信号光L2が、光線路4Aの最外被覆19の側面に最初に到達する位置として計算によって特定することができる。また、所定の角度ζは、光線路4Aの直線部分E部分を伝搬し、所定の位置A点に到達した信号光L2が、光線路4Aの最外被覆19から出射する角度ζを計算することによって特定することができる。なお、所定の角度ζは、光線路4Aを伝搬し、所定の位置A点に到達した光が、光線路4Aの最外被覆19から光硬化性樹脂13中に出射する角度である。
これら所定の位置A点及び所定の角度ζは実験によっても確かめることができるので、光線路(図2の符号4A)の把持に誤差が生じた場合でも、その誤差を実験的に補正し、最も効率のよい所定の位置及び所定の角度で信号光8を入射することができる。
【0047】
実験的には、光線路(図2の符号4)の把持による誤差以外に、光線路(図2の符号4)に印加されている張力や温度による光線路(図2の符号4)の屈折率の変化や入射用光ファイバ14の端面の形状劣化による端面での信号光8の進行方向の変化についても考慮しなければならない。
ここで、図3において、C点で反射された(コア21内にとどまった)信号光8は、幾何光線学的には、次のコア21とクラッド20との境界点から、C点と同じ割合で透過され、最終的には別の位置で最外被覆19の外部へ漏洩されていく。曲げ部分が続けば、同じ挙動が複数回繰り返されることになる。このとき、2回目以降の漏洩においても同じ透過率と反射率の割合で屈折が生じることから、最初に漏洩される光の絶対的な透過量が最大となり、2回目以降の放射光は順次小さくなる。
【0048】
上記では、信号光L2が漏れる挙動を光線学的に述べたが、入射された光についてもまた同様であり、曲がり部分で複数回の反射と屈折を繰り返し、損失を累積するよりは、各境界面において1回の反射と屈折を経た後、直線領域をシングルモードで伝搬させたほうが、より多くの信号光L2をコア21へ入射することができる。したがって、漏れ光の強度が最大となる最初に到達する位置が、信号光L2を入射させる所定の位置(A点)として最適である。
【0049】
次に、図2及び図4を参照して、心線対照手順について説明する。
ここで、図4(a)は、光線路4Aに光入射装置9を設置し、光線路4Aのもう片端に受光器10を設置した場合の光通信システムを示している。受光器10は、光入射装置9から入射された信号光L3を受信して、その受光の有無によって目的とする心線を特定する。
【0050】
また、図4(b)は、光線路4に光入射装置9を設置し、光線路4Aのもう片端に光線路4Aを曲げた曲げ部18を設け、曲げ部18に受光器10’を設置した場合の光通信システムを示している。受光器10’は、光入射装置9から入射された信号光L3の曲げ部18における光線路4Aの側面からの漏洩光を受信して、その受光の有無によって目的とする心線を特定する。
【0051】
すなわち、図4(a),(b)に示すシステムでは、まず、特定したい光線路(第一の光ファイバ)4Aに光入射装置9を設置する。次に、この光入射装置9を介して信号光L3を光線路4に入射する。
上記信号光は心線対照用光源7Bによって送出され、通信光よりも波長の長いFP−LD(Fabry Perot − Laser Diode)、またはDFB−LD(Distributed Feedback Diode Laser Diode)などの光に、270Hz程度の強度変調を加え、信号化したものを用いる。通信波長とは異なる波長であることと同時に、長波長光を用いていることから、光入射装置9で作る曲げ径を緩和し、通信光に対する曲げ損失を最小限にとどめながら信号光L3を光線路4Aのコアに効率的に入射することができる。また、光遮断フィルタ2A,2Bと合わせれば、インサービス状態においても心線対照することができる。
【0052】
このようにして入射された信号光L3を、例えば、光線路4A途中のクロージャ内において、心線に所定の曲げを作り(曲げ部18)、光線路4Aの側面から信号光L3を放射させて受光器10’で検出したり、あるいはユーザ近くの端末に受光器10を設置して信号光L3を検出したりする。図4(a)のシステムでは、受光器10により、光入射装置9から入射された信号光L3を受信して、その受光の有無によって目的とする心線を特定する。また、図4(b)のシステムでは、受光器10’により、光入射装置9から入射された信号光L3の曲げ部18における光線路4Aの側面からの漏洩光を受信して、その受光の有無によって目的とする心線を特定する。
【0053】
本実施形態に係る光ファイバカプリング方法又は光ファイバカプリング装置を用いることにより、光線路4Aの側面から信号光L3を入射し、光線路4Aの片端(端末)から受光器10で信号光L3を受信することが可能である。また、光線路4Aの線路途中に曲げを作り(曲げ部18)、その側面からの信号光L3を受光器10’で受信してすることも可能である。
【0054】
続いて、図2及び図5を用いて、光パルス試験を行う手順について説明する。
図5は、本実施形態に係る光ファイバカプリング方法を光パルス試験に適用したシステムを示す概略構成図である。光パルス試験においても、心線対照と同様に、まず、試験したい光線路4Aに光入射装置9を設置する。次に、この光入射装置9を介してパルス試験光L4を光線路4Aに入射する。
【0055】
上記パルス試験光L4は光パルス試験器7Cによって送出され、心線対照と同様、通信光よりも波長の長いFP−LDまたはDFB−LDなどの光を用いている。通信波長とは異なる波長であることと同時に、長波長光を用いていることから、パルス試験光L4を効率的に入射することができる。また、光遮断フィルタ2Aと2Bと合わせれば、インサービスも可能である。このようにして入射されたパルス試験光L4によって、光ファイバの故障位置探査や光線路とユーザ端末との設備故障切り分け等の試験を行うことができる。
【0056】
本実施形態に係る光ファイバカプリング方法を用いて測定されたOTDR(Optical Time Domain Reflectometer)波形から光遮断フィルタ2Bからの反射位置を示す反射量のピークによって、光線路設備とユーザ端末との設備故障切り分け試験に適用が可能である。また、光遮断フィルタ2Bと開放端での反射量のピークの大きさが異なることを利用して、光遮断フィルタ2Bの有無を判定することにより、現用光ファイバ心線と非現用光ファイバ心線の区別を推定することができる。
【0057】
本実施形態に係る光ファイバカプリング方法又は光ファイバカプリング装置を用いることにより、所外装置5から所内装置1に向かって送信される上り信号フレームをモニタすることによってサービスの利用状況を確認することができる。
以下に、本発明の実施形態に用いた数値について説明する。所定の位置A点及び所定の角度ζの原理について説明する。
【0058】
いま、曲率半径ρに対するA点、B点、C点での透過率Tと反射率Rは、(5)式と(6)式で表すことができる(例えば、非特許文献1参照)。ただし、信号光の電界面が入射面に垂直である場合を考察する。
【0059】
【数5】

【0060】
【数6】

また、図3による幾何学的な計算から、ψとψは、(7)式で与えられる。
【0061】
【数7】

また、図3による幾何光学的な計算から、δとδ(i=2、3)は曲率半径ρの関数として(8)式と(9)式で表される。
【0062】
【数8】

【0063】
【数9】

また、スネルの法則より、ζは、(10)式で与えられる。
【0064】
【数10】

ただし、添字i(i=1〜3)はそれぞれA点、B点及びC点に対応している。
また、入射用光ファイバ14から入射する信号光L3のコア21でのシングルモード伝搬角θとの関係は、(11)で与えられる。
【0065】
【数11】

本実施形態では、所定の曲率半径ρで曲げられた光線路4Aの凸部の所定の位置(A点)に、光線路4Aの最外被覆19とほぼ同じ屈折率の屈折率整合部材である光硬化性樹脂13を密着させ、光硬化性樹脂13の中で、光線路4Aの凸部で光線路4Aのコア21の中心を全て含む平面と入射部において同一高さにコア中心のある入射用光ファイバ14の端面のコア中心を、所定の位置(A点)における法線方向より所定の角度ζで光線路4Aの凸部の側面に近接させ、入射用光ファイバ14の端面から送出した信号光L3を光線路4Aのコア21に対して入射させる。
【0066】
所定の曲率半径ρを、入射用光ファイバ14の端面から送出される信号光L3に対して、光線路4Aのコア21とクラッド20、クラッド20と最外被覆19、および最外被覆19と光硬化性樹脂13のいずれの境界面においても信号光L3が全反射しない曲率半径ρを(5)式から(10)式より算出し、光線路4Aの凸部の所定の位置A点となる方向変化角(δ+δ+δ)上の位置、すなわち、光線路4Aの直線領域をシングルモードで伝搬してきた光が光線路4Aの凸部の各境界領域で透過(屈折)され、光線路4Aの最外被覆19に最初に到達する位置を(8)式及び(9)式より算出し、所定の角度ζを(1)式より算出し、最終的に光線路4Aの側面からコア21に入射した信号光L3がシングルモードで伝搬するように、所定の曲率半径ρと、光線路4Aの凸部の所定の位置A点と、所定の角度ζとを、全てにおいて解を有するように、(5)式から(10)式に基づいて決める。
【0067】
所定の位置は、光線路(図3の符号4A)の直線領域をシングルモードで伝搬してきた信号光L3が、光線路(図3の符号4A)の凸部において、最外被覆19と光硬化性樹脂13との境界(A点)に最初に到達する位置であり、光線路(図3の符号4A)の凸部の曲がり始めてからの角度、すなわち、信号光L3がコア21から光硬化性樹脂13に達するまでに反射や屈折される各境界層(A点、B点、C点)間の角度の和(方向変化角:δ+δ+δ)として求めることができる。
【0068】
また、最外被覆19への入射率を高めるため、最外被覆19と同じ程度の屈折率(n≒n)をもつ光硬化性樹脂13を境界面(A点)に密着させた場合、信号光L3は光硬化性樹脂13側から最外被覆19へほぼ直進する(ζ≒ψ)。このとき、光入射用ファイバ14を点Aの法線方向に対してψだけ傾ければ、入射用光ファイバ14から送出された信号光L3は、効率よく最外被覆19へと入射されると同時に、コア21内をシングルモードで伝搬する。
【0069】
以上の説明から明らかなように、上記実施形態によれば、光線路4Aの側面からそのコア21に、入射用光ファイバ14から送出された信号光L3を効率よく入射させることができる。これによって、作業現場において簡便に、かつ、線路設備に比較的制約されることなく心線対照や光パルス試験及び光通話、サービス切り替えが可能となる。
【0070】
特に、本発明は、光ファイバケーブル網の建設・保守における光心線対照又は光パルス試験、サービス無瞬断切り替え装置に利用することができる。
尚、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成を削除してもよい。さらに、異なる実施形態例に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1…所内装置
2A,2B…光遮断フィルタ
3…光カプラ
4A…第一の光線路(第一の光ファイバ)
4B…第二の光線路(第二の光ファイバ)
4C…新設光線路
5…所外装置
6…光入出力ポート
7A…無瞬断切替用光源
7B…心線対照用光源
7C…光パルス試験器
8…無瞬断切替装置
9…光入射装置
10,10’…受光器
13…光硬化性樹脂(屈折率整合部材)
14…入射用光ファイバ(第二の光ファイバ)
18…曲げ装置
19…光線路(第一の光ファイバ)の最外被覆
20…光線路(第一の光ファイバ)のクラッド
21…光線路(第一の光ファイバ)のコア
L1…無瞬断切り替え用光源からのパルス光および所内装置からの信号光
L2…パルス光が結合された信号光
L3…心線対照用光源からの信号光
L4…光パルス試験器からのパルス試験光
ρ…所定の曲率半径
ζ…入射角
(δ+δ+δ)…方向変化角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の光ファイバの任意の箇所を所定の曲率半径で曲げて保持する第一の保持手段と、第二の光ファイバを所定の位置に保持する第二の保持手段と、前記第二の光ファイバから所定の角度で前記第一の光ファイバの側面上に向けて信号光を出射するように調整する調整手段とを備え、
前記所定の曲率半径は、前記第二の光ファイバの端面から送出された前記信号光が、前記第一の光ファイバの最外被覆の側面、前記第一の光ファイバの最外被覆とクラッド、前記第一の光ファイバのクラッドとコアのいずれの面においても全反射せずに前記第一の光ファイバのコアに入射する曲率半径とし、
前記所定の位置は、前記第一の光ファイバの直線領域をシングルモードで伝搬してきた前記信号光が前記第一の光ファイバの最外被覆の側面に最初に到達する位置とし、
前記所定の角度は、前記第一の光ファイバを伝搬し、前記所定の位置に到達した前記信号光が前記第一の光ファイバの最外被覆から出射する角度とする光ファイバカプリング装置であって、
前記第一の光ファイバの側面と前記第二の光ファイバの端面との間に、特定波長の光の照射によって硬化し、硬化後に前記第一の光ファイバの最外被覆の屈折率と等しい屈折率である光硬化性樹脂を充填してなる充填手段と、
前記光硬化性樹脂を硬化させるための特定波長の光源の光を前記第二の光ファイバに伝搬させ、前記特定波長の光源の光を前記光硬化性樹脂に照射し、前記光硬化性樹脂を硬化させ光導波路を自己形成する自己形成光導波路手段と
を具備することを特徴とする光ファイバカプリング装置。
【請求項2】
前記自己形成光導波路手段は、前記第一の光ファイバに光を伝搬させ、前記第一の光ファイバの曲げ部からの漏れ光を前記第二の光ファイバで受光した光強度を測定する光強度測定手段と、前記光源からの光の入射開始後に前記光強度測定手段により測定される光強度の変化量が、前記第一の光ファイバと前記第二の光ファイバの間で光導波路の形成に伴って減少する光出射装置の損失に対応する所定の光強度の変化量に到達したことにより、導波路の形成が完了したことを判断する判断手段とを備えることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバカプリング装置。
【請求項3】
第一の光ファイバを、その任意の箇所を所定の曲率半径で曲げて凸部を形成した状態で設置する光ファイバ設置手順と、前記光ファイバ設置手順で所定の曲率半径で曲げられた第一の光ファイバの前記曲げにおける凸部の所定の位置に第二の光ファイバを保持する光ファイバ保持手順と、前記第一の光ファイバの曲げ部において前記第一の光ファイバのコアの中心を全て含む平面に入射部における前記第二の光ファイバのコア中心から照射される光線が含まれるように設置した第二の光ファイバの端面のコア中心を、前記所定の位置に、前記第一の光ファイバの最外被覆の側面の法線方向を基準とした所定の角度の方向から近接させる光ファイバ近接手順と、前記第二の光ファイバの端面から送出される特定波長の信号光を、前記第一の光ファイバの最外被覆の側面から前記第一の光ファイバのコアへ入射させる光入射手順とを備え、
前記所定の曲率半径は、前記第二の光ファイバの端面から送出された前記信号光が、前記第一の光ファイバの最外被覆の側面、前記第一の光ファイバの最外被覆とクラッド、前記第一の光ファイバのクラッドとコアのいずれの面においても全反射せずに前記第一の光ファイバのコアに入射する曲率半径とし、前記所定の位置は、前記第一の光ファイバの直線領域をシングルモードで伝搬してきた前記信号光が、前記第一の光ファイバの最外被覆の側面に最初に到達する位置とし、前記所定の角度は、前記第一の光ファイバを伝搬し、前記所定の位置に到達した前記信号光が、前記第一の光ファイバの最外被覆の境界面から出射する角度とする光ファイバカプリング方法であって、
前記光ファイバ設置手順で所定の曲率半径で曲げられた第一の光ファイバの前記曲げにおける凸部の前記所定の位置に、特定波長の光の照射によって硬化し、硬化後に当該第一の光ファイバの最外被覆の屈折率と等しい屈折率である光硬化性樹脂を密着させる光硬化性樹脂密着手順と、
前記光硬化性樹脂を硬化させるための特定波長の光源の光を前記第二の光ファイバを伝搬させ、前記特定波長の光源の光を前記光硬化性樹脂に照射し、前記光硬化性樹脂を硬化させ光導波路を自己形成する自己形成光導波路手順と
を具備することを特徴とする光ファイバカプリング方法。
【請求項4】
前記自己形成光導波路手順は、前記第一の光ファイバに光を伝搬させ、前記第一の光ファイバの曲げ部からの漏れ光を前記第二の光ファイバで受光した光強度を測定し、前記光源からの光の入射開始後に測定される光強度の変化量が、前記第一の光ファイバと前記第二の光ファイバの間で光導波路の形成に伴って減少する光出射装置の損失に対応する所定の光強度の変化量に到達したことにより、導波路の形成が完了したことを判断することを特徴とする請求項3に記載の光ファイバカプリング方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−113890(P2013−113890A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257495(P2011−257495)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】