説明

光ファイバケーブル、光ファイバケーブルの分岐方法

【課題】製造性や経済性にも優れ、分岐作業性にも優れる光ファイバケーブルおよび光ファイバケーブルの分岐方法を提供する。
【解決手段】光ファイバケーブル1の断面略中央位置には、光ファイバ心線7が配置される。光ファイバ心線7の外周には、被覆部3が設けられる。被覆部3の内部(光ファイバ心線7の両側方)には一対のテンションメンバ9が埋設される。テンションメンバ9は、光ファイバケーブル1の張力を受け持つ部位である。テンションメンバ9としては、鋼線である。ここで、光ファイバ心線7は、テンションメンバ9の併設方向の略中央に配置され、光ファイバケーブル1の断面の高さ方向の略中央に略一列に形成される。また、光ファイバ心線7の配置される高さをhとし、テンションメンバ9の外径をDとすると、テンションメンバ9の外径Dは、光ファイバ心線7の配置高さhよりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分岐作業性に優れる光ファイバケーブルおよび光ファイバケーブルの分岐方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光ファイバケーブルとしては、光ファイバ心線が外被で被覆されたものが用いられている。使用時には、このような光ファイバケーブルが分岐され、複数の住居等に配線される。
【0003】
このような光ファイバケーブルは、通常、シース外周の長手方向に沿ってノッチが形成されており、デタッチャと呼ばれる工具を用いて、ノッチをキッカケにしてケーブル内部を開き、内部の光ファイバ心線が後分岐される。しかしながら、この作業において、内部の光ファイバ心線はデタッチャによってケーブルと一緒になって分割されるため、光ファイバ心線が曲げられて、損失変動を発生させる場合がある。
【0004】
この対策としては、従来、ケーブルの内部に介在物が配置された光ファイバケーブルが開発されている。このような光ファイバケーブルは、デタッチャを用いることなく内部の光ファイバ心線を後分岐することが可能である。
【0005】
このような、光ファイバケーブルとしては、例えば、1本以上の光ファイバと光ファイバを被覆するシースを有する光ファイバケーブルであって、シースと光ファイバとの間に介在物が光ファイバケーブルの長手方向にそって並行に配置された光ファイバケーブルがある(特許文献1)。
【0006】
また、光ファイバ心線の両側に引張り及び圧縮に対する耐力を有するテンションメンバを平行に配して、ケーブル外被で一括被覆した光ファイバケーブルであって、テンションメンバが配されていない側の光ファイバ心線の両側部に、ケーブル外被とは接着一体化されず、光ファイバ心線の配列幅より幅広で、光ファイバ心線に接触するように合成樹脂製の剥離テープを配した光ファイバケーブルがある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−251769号公報
【特許文献2】特開2008−70601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1、特許文献2のいずれの光ファイバケーブルも、内部に介在(介在物、剥離テープ等)を用いるため、光ファイバケーブルの断面構造が複雑となり、製造性や経済性が良くないという問題があった。また、中間後分岐作業においては介在物を除去する必要があり、分岐作業における作業効率も良くなかった。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、製造性や経済性にも優れ、分岐作業性にも優れる光ファイバケーブルおよび光ファイバケーブルの分岐方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達するために第1の発明は、ファイバ心線と、前記ファイバ心線の両側に設けられる一対のテンションメンバと、前記ファイバ心線および前記テンションメンバを被覆する被覆部と、を少なくとも有する光ファイバケーブルであって、前記被覆部の上下面の少なくとも一部に突起部が形成され、前記突起部の断面において、前記突起部の両側における突起基部同士の間隔は、それぞれの側の前記突起基部と前記光ファイバ心線との最短距離の和よりも大きく、前記突起基部同士の間および、前記突起基部と前記光ファイバ心線との間は、被覆部の樹脂のみで構成され、前記テンションメンバは鋼製であり、前記テンションメンバの外径Dは、前記光ファイバ心線の配置高さhよりも大きいことを特徴とする光ファイバケーブルである。
【0011】
ここで、被覆部の樹脂のみで構成されるとは、それぞれの部位の間に、介在や空間などが存在せず、樹脂部のみで構成されることをいう。
【0012】
前記ファイバ心線は複数配置され、前記光ファイバ心線が配置される高さhは、前記テンションメンバの併設方向に垂直な方向に対する、複数の前記ファイバ心線の最上端から最下端までの長さであってもよい。
【0013】
前記被覆部の断面における肩部には、面取り部が形成され、前記面取り部の面取り長さは、前記被覆部の高さをHとすると、(H−D)/2よりも大きいことが望ましい。
ここで、面取り部の面取り長さとは、面取りがR面取りであれば、そのR形状の半径であり、面取り形状がC面取りであれば、辺に対する切欠き部の長さを指すものとする。
【0014】
前記テンションメンバの外径Dは、0.3〜0.8mmであることが望ましい。前記突起部の断面における前記突起部の幅広部よりも幅の狭い幅狭部が、前記突起部の幅広部よりも前記突起基部側に形成されてもよい。
【0015】
第1の発明によれば、被覆部に突起部が形成され、突起部の断面において、両側の突起基部同士の間隔が、それぞれの突起基部と光ファイバ心線との最短距離の和よりも大きいため、突起部を引き剥がすと、突起基部とファイバ心線との間が破断する。このため、介在を用いることなく光ファイバケーブルを断面において分割させて内部のファイバ心線を取り出すことができる。したがって、光ファイバケーブルの内部に介在を設ける必要がなく、製造性に優れ、経済性にも優れる。
【0016】
また、テンションメンバが鋼製であり、テンションメンバの外径Dが、光ファイバ心線の配置高さhよりも大きい。このため、ニッパ等で突起をつかむ際に、誤って被覆部をつかんでしまったとしても、テンションメンバによって、ニッパの刃が内部の光ファイバ心線と接触することがない。また、テンションメンバで挟まれる部位からは光ファイバ心線が上下にはみ出さないため、ニッパの刃で被覆部を切除してしまったとしても、内部の光ファイバ心線を傷つけることがない。
【0017】
また、被覆部の両肩部に、面取り部が形成され、テンションメンバの外径をD、被覆部の高さをHとすると、面取り部の長さが(H−D)/2よりも大きければ、高さ方向のテンションメンバから外れる部位には必ず面取り部が形成される。このため、ニッパの刃が滑り、被覆部に刃が食い込むことを防止することができる。
【0018】
なお、テンションメンバの外径が、0.3〜0.8mmであれば、通常の光ファイバ心線(外径0.25mm)に対しても、光ファイバ心線がテンションメンバの上下方向にはみ出すことがなく、また、光ファイバケーブルを曲げて設置する場合などの取り扱い性にも優れる。
【0019】
また、突起部に工具でつかむためのつかみ部を形成すれば、工具で突起部を引き剥がす作業も容易である。このようなつかみ部としては、突起部の幅広部よりも幅の狭い幅狭部が、突起部の幅広部よりも突起基部側に形成されることで、工具が幅広部に引っかかり、作業性に優れる。
【0020】
第2の発明は、ファイバ心線と、前記ファイバ心線の両側に設けられる一対のテンションメンバと、前記ファイバ心線および前記テンションメンバを被覆する被覆部と、を少なくとも有する光ファイバケーブルの分岐方法であって、前記被覆部の上下面の少なくとも一部に突起部が形成され、前記突起部の断面において、前記突起部の両側における突起基部同士の間隔は、それぞれの側の前記突起基部と前記光ファイバ心線との最短距離の和よりも大きく、前記突起基部同士の間および、前記突起基部と前記光ファイバ心線との間は、被覆部の樹脂のみで構成され、前記テンションメンバは鋼製であり、前記テンションメンバの外径Dは、前記光ファイバ心線が配置される高さhよりも大きく、前記突起部を前記被覆部から引き剥がすことで、前記突起部と前記被覆部との境界である突起基部と前記ファイバ心線との間の前記被覆部を破断させ、内部のファイバ心線を露出させ、前記ファイバ心線を取り出すことを特徴とする光ファイバケーブルの分岐方法である。
【0021】
第2の発明によれば、内部の光ファイバ心線を傷つけることがなく、また、分岐時に介在を除去する必要がないため、容易に分岐作業を行うことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、製造性や経済性にも優れ、分岐作業性にも優れる光ファイバケーブルおよび光ファイバケーブルの分岐方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】光ファイバケーブル1の断面図であり、(a)は全体図、(b)は(a)のA部拡大図。
【図2】(a)は光ファイバケーブル1aの断面図、(b)は光ファイバケーブル1bの断面図、(c)は光ファイバケーブル1cの断面図。
【図3】突起部5を引き剥がす状態を示す図。
【図4】工具11の位置がずれた状態を示す図。
【図5】光ファイバケーブル1dの断面図であり、(a)は全体図、(b)は(a)のF部拡大図。
【図6】(a)は光ファイバケーブル20の断面図、(b)は光ファイバケーブル20aの断面図。
【図7】(a)は光ファイバケーブル30の部分断面図、(b)は光ファイバケーブル30aの部分断面図、(c)は光ファイバケーブル30bの部分断面図。
【図8】(a)は光ファイバケーブル40の断面図、(b)は光ファイバケーブル40aの断面図。
【図9】光ファイバケーブル50の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1は、光ファイバケーブル1の断面図であり、図1(a)は全体図、図1(b)は図1(a)のA部拡大図である。光ファイバケーブル1は、被覆部3、突起部5、光ファイバ心線7、テンションメンバ9等により構成される。
【0025】
光ファイバケーブル1の断面略中央位置には、光ファイバ心線7が配置される。光ファイバ心線7の外周には、被覆部3が設けられる。被覆部3は例えば難燃ポリオレフィン系樹脂製である。
【0026】
被覆部3の内部(光ファイバ心線7の両側方)には一対のテンションメンバ9が埋設される。テンションメンバ9は、光ファイバケーブル1の張力を受け持つ部位である。テンションメンバ9としては、鋼線であることが望ましい。
【0027】
ここで、光ファイバ心線7は、テンションメンバ9の併設方向の略中央に配置され、光ファイバケーブル1の断面の高さ方向の略中央に略一列に形成される。また、光ファイバ心線7の配置される高さ(図示した光ファイバケーブル1では、光ファイバ心線7の外径と一致する)をhとし、テンションメンバ9の外径をDとすると、テンションメンバ9の外径Dは、光ファイバ心線7の配置高さhよりも大きい。したがって、光ファイバ心線7は、一対のテンションメンバで挟まれる部位に配置され、テンションメンバ9で挟まれる領域の上下方向(突起部5方向)にはみ出すことがない。
【0028】
被覆部3の断面上下面側(光ファイバ心線7を中心にテンションメンバ9が設けられない方向)には、ファイバ長手方向に連続して突起部5が形成される。突起部5は被覆部3と一体で構成される。なお、本発明では、図示したように、被覆部3に突起部5が形成される(被覆部3の一部が凸状に形成される)ことを、被覆部3の外周側に突起部5が形成されると称する。
【0029】
図示したように、光ファイバケーブル1の断面が略十字状に形成される場合において、テンションメンバ9側の突起と突起部5側の突起部とを誤ることを防止するために、突起部5に着色を施したり、突起部の一部に小さな凸部や凹部等を形成して、突起部5を視認するためのマークを形成してもよい。
【0030】
図1(b)に示すように、突起部5と(突起部以外の)被覆部3との境界を突起基部6とする。突起部5の両側の突起基部6同士の間隔をL1とする。すなわち、突起部が図示したような矩形であれば、突起基部6間隔は、突起部5の幅と略一致する。
【0031】
また、図に示すように、突起部5の両側それぞれの突起基部6と光ファイバ心線7の最短距離を、それぞれL2、L3とする。すなわち、突起部5および光ファイバ心線7が光ファイバケーブル1の幅方向の中央に設けられれば、L2とL3は同一となる。
【0032】
本発明の光ファイバケーブル1においては、突起基部6間の距離L1が、突起基部6と光ファイバ心線との最短距離の和(L2+L3)よりも大きくなるように、光ファイバ心線7および突起部5が配置される。なお、さらに望ましくは、(L2+L3)をL1の80%以下とすればよい。
【0033】
被覆部3の両肩部(被覆部の両端部の隅部)には、面取り部4が形成される。図1に示す光ファイバケーブル1には、円弧状の面取り(R面取り)が設けられる。すなわち、面取り部4の両肩部は、断面において、半径Rの円弧状形状となる。
【0034】
本発明の光ファイバケーブル1においては、テンションメンバ9の外径をD、被覆部3の高さをHとすると、面取り長さRは、(H−D)/2よりも大きいことが望ましい。すなわち、面取り部4においては、被覆部3の幅が上下に行くにつれて幅狭となるように形成されるが、上述の関係を満たす場合には、被覆部3において、テンションメンバ9が配置される高さの上下方向にずれた位置(高さ方向においてテンションメンバ9が形成されない部位)には、必ず面取り部4が形成されることとなる。したがって、被覆部3の両側面のこの範囲においては、高さ方向の直線部が形成されることがない。
【0035】
なお、面取り部4の形状は、図1の例には限られない。例えば、図2(a)に示すように、面取り部4のRをH/2としてもよい。この場合、被覆部3の側面全体が面取り部となる。すなわち、被覆部3の両側面に、高さ方向の直線部が形成されることがない。
【0036】
また、図2(b)に示すように、面取り部4を直線(C面取り)としてもよい。この場合の面取り長さは、図中Cで表わされる。この場合でも、面取り長さCは、(H−D)/2よりも大きいことが望ましい。
【0037】
また、図2(c)に示すように、面取り部4のCをHとしてもよい。この場合の面取り長さは、図中Cで表わされる。この場合、被覆部3の側面全体が面取り部となる。すなわち、被覆部3の両側面に、高さ方向の直線部が形成されることがない。なお、以下の説明においては、図1(a)に示す例について説明する。
【0038】
次に、本発明にかかる光ファイバケーブル1を用いた分岐方法について説明する。まず、図3(a)に示すように、光ファイバケーブル1の突起部5をニッパ等の工具11で挟み込む(図中矢印B方向)。なお、工具11により突起部5を挟み込む際には、工具11で突起部5を切断しない程度の力で挟み込む。
【0039】
次に、図3(b)に示すように、突起部5を工具11で挟み込んだ状態で、突起部5を被覆部3側から引き剥がす(図中矢印K方向)。このようにすることで、突起部5の基部と光ファイバ心線7との間の被覆部3が破断し、突起部5(および被覆部3の一部)が引き剥がされる。したがって、光ファイバ心線7が破断部に露出する。以上の工程を、さらに被覆部3の下側の突起部5に対しても行う。
【0040】
上下の突起部5を引き剥がすことで、光ファイバケーブル1の断面において、光ファイバケーブル1を、上下の突起部5と左右のテンションメンバ9とに4分割することができる。したがって、内部の光ファイバ心線7を容易に取り出すことができる。この際、光ファイバ心線7を過剰に曲げることもない。
【0041】
ここで、突起部5は小さいため、工具11で突起部5をつかむ際に、誤って被覆部3を挟み込む場合がある。図4は、工具11のつかみ位置がずれてしまった状態を示す図であり、例えば、図4(a)は、工具11で被覆部3の肩部をつかんだ状態を示す図である。
【0042】
図4(a)に示すように、工具11が被覆部3をつかんだ状態で、この部位で被覆部3が切除されると、内部の光ファイバ心線7を取り出すことが極めて困難となる。しかし、本実施形態では、テンションメンバ9の部位以外の被覆部3両端部には面取り部4が形成される。面取り部4は、高さ方向の端部に行くにつれて、被覆部3の幅が狭くなる。したがって、工具11が被覆部3に対して滑り、被覆部3をつかむことが困難となる。したがって、工具11の刃が被覆部3に食い込むことを防止することができる。なお、仮に、図4(a)の位置で、工具11の刃が被覆部3に食い込んだとしても、この位置には、内部の光ファイバ心線7が配置されていないため、光ファイバ心線7が傷つくことがない。
【0043】
また、図4(b)に示すように、工具11がテンションメンバ9の部位の被覆部3をつかむ場合には、当該部位には面取り部4が形成されない場合もあるため、工具11の刃が滑らずに、この部位で工具11の刃が被覆部3に食い込む恐れがある。しかし、この場合でも、工具11の刃は、テンションメンバ9によって、それ以上の食い込みが防止される。すなわち、テンションメンバ9が鋼製であるため、工具11ではテンションメンバ9を切断することができない。したがって、テンションメンバ9で挟まれる位置に配置される、内部の光ファイバ心線7が、工具11の刃で傷つけられることがない。
【0044】
以上説明したように、本実施の形態によれば、内部の光ファイバ心線7を傷つけることなく、容易に光ファイバケーブル1に対して分岐を行うことができる。また、突起部5を引き剥がす際、突起部5は最も破断長の短い所で破断されるが、本発明では、突起基部6と光ファイバ心線7との距離が突起基部間の距離よりも短いため、突起部だけが破断するのではなく、突起基部から光ファイバ心線7の方向に向かって亀裂が伝播し、突起部5(被覆部3)を破断させることができる。したがって、光ファイバ心線7を露出させるため(光ファイバケーブル1を断面において分離するため)に、介在が不要である。
【0045】
また、テンションメンバ9が鋼製であるため、工具11でテンションメンバ9を切断することがない。また、テンションメンバ9の間に位置し、一対のテンションメンバ9で挟まれる領域から、光ファイバ心線7がはみ出すことがない。このため、誤って工具11が被覆部3に食い込んだとしても、光ファイバ心線7が傷つくことがない。また、被覆部3の肩部には面取り部4が形成される。このため、工具11が面取り部のテーパによってすべり、工具11が被覆部3に食い込むことが防止される。
【0046】
次に、他の実施の形態について説明する。図5は他の実施の形態にかかる光ファイバケーブル1dを示す図で、図5(a)は全体図、図5(b)は図5(a)のF部拡大図である。なお、以下の実施の形態において、光ファイバケーブル1と同様の機能を奏する構成については、図1と同様の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0047】
光ファイバケーブル1dは、光ファイバケーブル1と略同様の構成であるが、光ファイバ心線7が複数配置される点で異なる。本発明では、光ファイバ心線7は、1本であってもよく、複数本であってもよい。この場合、図5(a)に示すように、突起部5の幅(突起基部6における突起部5の幅)Eは、複数の光ファイバ心線7全体の最大幅Jよりも大きく設定される。
【0048】
突起部5の幅を超えて左右方向に光ファイバ心線7がはみ出して形成されると、突起部5を引き剥がし、光ファイバケーブルを断面において4分割した際に、光ファイバ心線7がテンションメンバ9を含む側の被覆部3に埋設された状態となる。すなわち、光ファイバケーブル1dを断面において分割した際に、光ファイバ心線7の一部がテンションメンバ9を含む被覆部側に持っていかれる。このため、光ファイバ心線7に過度な力が付与される恐れがある。このため、幅方向において、突起部5の範囲内に全ての光ファイバ心線7が配置されることが望ましい。このようにすることで、仮に光ファイバ心線の一部が樹脂に埋設されたとしても、剛性の高いテンションメンバ側ではなく、樹脂(突起部)側となり、取り出し性がよい。
【0049】
また、光ファイバ心線7は、光ファイバケーブル1dの断面の高さ方向の略中央に最密に形成される。この場合、光ファイバ心線7の配置される高さhは、テンションメンバ9の併設方向に垂直な方向に対する、複数の光ファイバ心線7の最上端から最下端となる。この場合でも、テンションメンバ9の外径Dは、光ファイバ心線7の配置高さhよりも大きい。したがって、光ファイバ心線7は、一対のテンションメンバで挟まれる部位に配置され、テンションメンバ9で挟まれる領域の上下方向(突起部5方向)にはみ出すことがない。
【0050】
また、図5(b)に示すように、光ファイバケーブル1dにおいても、突起部5の両側の突起基部6同士の間隔をL1とし、突起部5の両側それぞれの突起基部6と光ファイバ心線7の最短距離を、それぞれL2、L3とすると、突起基部6間の距離L1が、突起基部6と光ファイバ心線との最短距離の和(L2+L3)よりも大きくなるように、光ファイバ心線7および突起部5が配置される。
【0051】
この場合、一方の側の突起基部6と光ファイバ心線7との距離(L2)は他方の側の突起基部6と光ファイバ心線7との距離(L3)と同一とは限らない。また、この場合には、それぞれの側で最短距離となる光ファイバ心線7が異なる光ファイバ心線7となる。
【0052】
光ファイバケーブル1dを用いても、光ファイバケーブル1と同様の効果を奏することができる。なお、複数の光ファイバ心線7がテープ等でバンドルされた物を用いてもよい。
【0053】
図6(a)はさらに他の実施の形態にかかる光ファイバケーブル20を示す図である。光ファイバケーブル20は、光ファイバケーブル1と略同様の構成であるが、突起基部6において被覆部3にノッチ21が形成される点で異なる。なお、光ファイバ心線7の本数は、図示した例に限られない(以下の実施例でも同様とする)。
【0054】
ノッチ21は、突起基部6近傍において、被覆部3の外面から形成される。なお、この場合、ノッチ21の先端を突起基部6とする。すなわち、ノッチ21(突起基部)の先端と光ファイバ心線7の最短距離がL2、L3(例えば図1(b))となる。また、ノッチ21は、突起部5と被覆部3との境界近傍から光ファイバ心線7の方向に形成される。すなわち、ノッチがない場合における突起基部と光ファイバ心線7との最短距離よりも、ノッチが形成された場合における突起基部(すなわちノッチ先端)と光ファイバ心線7との最短距離が短くなるようにノッチ21が形成される。
【0055】
なお、図6(a)に示すように、ノッチ21を突起部5の高さ方向に形成するのではなく、図6(b)に示すようなノッチ21aを設けてもよい。ノッチ21aは、光ファイバ心線7(光ファイバケーブルの中心)の方向に向けて、突起部5(被覆部3)に対して斜めに形成される。この場合でも、ノッチがない場合における突起基部と光ファイバ心線7との最短距離よりも、ノッチが形成された場合における突起基部(すなわちノッチ先端)と光ファイバ心線7との最短距離が短くなるようにノッチ21aが形成されればよい。
【0056】
以上のように、光ファイバケーブル20、20aを用いても、光ファイバケーブル1と同様の効果を奏することができる。また、ノッチ21を形成するため、突起基部6と光ファイバ心線7との最短距離をより短くすることができる。このため、より確実に、突起基部6と光ファイバ心線7との間を破断させることができる。
【0057】
図7(a)は、さらに他の実施の形態にかかる光ファイバケーブル30を示す部分断面図である。光ファイバケーブル30は、光ファイバケーブル1と略同様の構成であるが、突起部5につかみ部が形成される点で異なる。
【0058】
本発明におけるつかみ部とは、図7で示したように、工具11で突起部5を挟み込み、突起部5を光ファイバケーブル本体から引き剥がす際に、工具11が突起部5の側面で滑ることなく、確実に突起部5を破断させるためのものである。
【0059】
光ファイバケーブル30の突起部5は、側面(工具11でのつかみ面)が末広がり状に形成される。すなわち、光ファイバケーブル30の突起部5の幅は一定ではない。図7(a)に示すように、突起部5の最も幅の広い(図中幅G)部位を幅広部31とし、幅広部31よりも幅の狭い(図中幅I)部位を幅狭部33とする。本発明では、幅広部31よりも突起部5の基部側に幅狭部33が形成される。すなわち、突起部5の少なくとも一部に、突起部の基部側よりも幅の広い部位が端部側に形成される。
【0060】
このようにすることで、突起部5を工具11で挟み込み、突起部5を引き剥がす際、工具11が突起部5のつかみ部(幅広部31)で引っかかるため、滑ることがない。したがって、より容易に突起部5を引き剥がすことができる。
【0061】
なお、つかみ部の形態は図示した例に限られず、工具11が突起部のつかみ面で滑らないようにすればいずれの形態でも良い。例えば、図7(b)に示す光ファイバケーブル30aのように、突起部5の側面に凸状の幅広部31を形成し、幅広部31の幅Gよりも幅の狭い幅狭部33を幅広部31よりも突起部の基部側に形成すればよい。
【0062】
また、図7(c)に示す光ファイバケーブル30bのように、突起部5の側面に凹状の幅狭部33を形成してもよい。この場合でも、幅狭部33よりも突起部5の端部側(基部側とは反対側)に幅狭部33の幅Iよりも幅の広い幅広部31が形成されていれば、本発明のつかみ部として機能させることができる。
【0063】
以上のように、光ファイバケーブル30、30a、30bを用いても、光ファイバケーブル1と同様の効果を奏することができる。また、突起部5につかみ部を形成することで、工具11が滑ることがなく、容易に突起部5を破断させることができる。
【0064】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0065】
例えば、図8(a)に示すような光ファイバケーブル40を用いることもできる。本発明では、光ファイバケーブル40のように、突起部5の上端面(下端面)に凹部41を溝状に形成することができる。凹部41によれば、従来のように、端末部で凹部を引き裂くことによって光ファイバ心線を取り出せたり、デタッチャを用いることもでき、または、前述したような突起部5の識別性を高めることができる。
【0066】
なお、本発明では、図8(b)に示すように凹部41aを形成したものも当然に含まれる。凹部41aは例えば突起部5の高さと略同等の深さを有する。この場合でも、本発明においては、突起部5が複数形成されたのではなく、一体の突起部であるとする。すなわち、突起部5の両側の突起基部6同士の間隔をL1(図1(b))とすればよい。但し、この場合、両側の突起基部6同士の間隔とは、凹部41a(非樹脂部)を考慮して、実際の樹脂部の距離をL1(図1(b))とし、これがL2+L3(図1(b))よりも大きくなるようにすればよい。
【0067】
また、本発明では、図9に示すような自己支持型の光ファイバケーブル50に対しても適用可能である。光ファイバケーブル50は、例えば光ファイバケーブル1と同様のケーブル部に支持線51が連結されたものである。この場合でも突起部5および光ファイバ心線7の配置を適宜設定することで、本発明の効果を得ることができる。
【0068】
なお、以上説明した各実施形態における各構成は、当然に互いに組み合わせることができる。
【実施例】
【0069】
各種の断面形状の光ファイバケーブルを試作し、図3に示すような方法で突起部を引き剥がして、光ファイバ心線を取り出すことができるかどうかを評価した。試験片は概ね図5に示す断面形状のものを用い、全体の厚さ(被覆部+突起部×2)を2.8mm、全幅を4.6mmとした。樹脂部および突起部は難燃ポリオレフィン樹脂とした。突起部の幅は1.2mmで一定とした。なお、テンションメンバの間隔は2.5mmとし、光ファイバ心線は0.25mmΦとした。また、光ファイバ心線の配置高さ(図5の高さh)は、0.47mmであった。なお、図5(b)に示すL1は、L2+L3よりも十分に大きい。
【0070】
得られた試験片のそれぞれに対して一般的な工具であるニッパを用いて突起部を引き剥がした。また、それぞれの光ファイバケーブルに対して、収納作業性を確認した。結果を表1に示す。
【0071】
【表1】

【0072】
表の「TM材質」は、テンションメンバの材質を表わし、「TM外径」はテンションメンバの外径を表わす。また、「心線の損傷回数 n=50」は、テンションメンバの位置する部位の被覆部をニッパで挟み、突起部を引き剥がした後、内部の光ファイバ心線の損傷の有無をマイクロスコープ(100倍)で確認し、損傷した光ファイバ心線の数を計数した(n=50)。なお、「心線の損傷回数 n=50」は、n=50で損傷が見られなかったもの(=0)を「◎」とし、損傷が1〜4本のものを「○」とし、損傷が5〜9本のものを「△」、損傷が10本以上のものを「×」とした。また、「R30×1ターン光キャビネット曲げ収納作業性」は、R30で一巻きする際の作業性を評価し、R30で曲げることが困難であったものを「×」とした。
【0073】
No.3〜6は、テンションメンバが鋼製であり、心線高さよりもテンションメンバの外径が大きいため、テンションメンバによって、ニッパの刃が光ファイバ心線に到達することを防止することができ、光ファイバ心線の損傷は見られなかった。すなわち、No.3〜6は、テンションメンバの配置領域から光ファイバ心線がはみ出すことがなく、確実に光ファイバの損傷をテンションメンバによって防止することができた。なお、No.1、2、10は、テンションメンバは鋼製であるが、テンションメンバの外径が、心線高さよりも小さいため、テンションメンバの配置領域からはみ出した部位において、一部の光ファイバ心線に損傷が確認された。
【0074】
一方、No.7〜9は、テンションメンバの外径によらず、テンションメンバがアラミド繊維FRP製であるため、ニッパによってテンションメンバが容易に切断され、ニッパの刃が内部の光ファイバ心線に到達するため、多くの損傷が確認された。
【0075】
また、No.11は、テンションメンバが鋼線で構成され、さらにテンションメンバの外径が大きすぎるため、その曲げ性が悪く、R30での曲げ作業性が悪いものとなった。
【0076】
次に、各種の断面形状の光ファイバケーブルを試作し、図3に示すような方法で突起部を引き剥がして、光ファイバ心線を取り出すことができるかどうかを評価した。試験片は概ね図5に示す断面形状のものを用い、全体の厚さ(被覆部+突起部×2)を2.5mm(内被覆部の高さは1.5mm)、全幅を3.1mmとした。樹脂部および突起部は難燃ポリオレフィン樹脂とした。なお、テンションメンバの間隔は2.2mmとし、光ファイバ心線は0.25mmΦとした。また、テンションメンバは0.5mmφの鋼線であり、光ファイバ心線の配置高さ(図5の高さh)は、0.47mmとした。なお、図5(b)に示すL1は、L2+L3よりも十分に大きい。
【0077】
得られた試験片をそれぞれに対して一般的な工具であるニッパを用いて突起部を引き剥がした。結果を表2に示す。
【0078】
【表2】

【0079】
表の「面取り」は、面取り長さ(R面取りの半径R)を示す。「ニッパ位置決め失敗回数(n=50)」は、ニッパの刃が突起基部に当たるように配置して突起部を引き剥がす作業を行い、この際、ニッパでうまく突起部をつかむことができず、被覆部に食い込んでしまったものの回数を計数した。また、「失敗時剥ぎ取り位置変更回数」は、前述のニッパでの突起部のつかみを失敗した際に、被覆部に刃が食い込むことで突起部の形状が大きく変形し、さらに突起部をつかみなおして突起部の除去を行うことができず、突起部の剥ぎ取り位置を変更せざる得御得なかった回数を計数した。
【0080】
なお、「ニッパ位置決め失敗回数(n=50)」は、n=50でニッパでの突起部のつかみを失敗した回数が0のものを「◎」とし、1〜9回を「○」とし、10回以上のものを「×」とした。また、「失敗時はぎ取り位置変更回数」は、位置変更の必要がなかったもの(=0)を「○」とし、位置変更回数が1〜2回のものを「△」とし、位置変更回数が3回以上のものを「×」とした。
【0081】
試験品は、被覆部高さ1.5mmからテンションメンバの外径0.5mmを引いて2で割った数値((H−D)/2)が0.5mmである。これに対し、No.12〜15は、面取り長さがこれよりも大きい。このため、ニッパで面取り部をつかもうとしても滑ってしまい、間違った部位をつかむことが防止された。また、特にR=0.75(すなわち、被覆部の側面全体が面取り部)では、ニッパの位置決め失敗も生じなかった。また、No.12〜14においてニッパのつかみ位置を失敗した場合でも、テンションメンバによって所定以上の深さまでニッパの刃食い込むことがない。したがって、突起部の変形が大きく、剥ぎ取り位置を変更することがなかった。
【0082】
一方、No.16〜19は、面取り長さが短く、テンションメンバの配置領域外において、被覆部側面に直線部が形成されるため、ニッパで誤ってつかんでしまうと、容易にニッパの刃が食い込んでしまう。また、この際、ニッパの刃が被覆部の深くまで食い込んでしまい、突起部が大きく変形し、これにより、剥ぎ取り位置を変更せざる得を得ない場合があった。
【符号の説明】
【0083】
1、1a、1b、1c、1d、20、20a、30、30a、30b、40、40a、50………光ファイバケーブル
3………被覆部
4………面取り部
5………突起部
6………突起基部
7………光ファイバ心線
9………テンションメンバ
11………工具
21、21a………ノッチ
31………幅広部
33………幅狭部
41、41a………凹部
51………支持線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファイバ心線と、前記ファイバ心線の両側に設けられる一対のテンションメンバと、前記ファイバ心線および前記テンションメンバを被覆する被覆部と、を少なくとも有する光ファイバケーブルであって、
前記被覆部の上下面の少なくとも一部に突起部が形成され、
前記突起部の断面において、前記突起部の両側における突起基部同士の間隔は、それぞれの側の突起基部と前記ファイバ心線との最短距離の和よりも大きく、前記突起基部同士の間および、前記突起基部と前記ファイバ心線との間は、被覆部の樹脂のみで構成され、
前記テンションメンバは鋼製であり、前記テンションメンバの外径Dは、前記ファイバ心線の配置高さhよりも大きいことを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項2】
前記ファイバ心線は複数配置され、前記ファイバ心線が配置される高さhは、前記テンションメンバの併設方向に垂直な方向に対する、複数の前記ファイバ心線の最上端から最下端までの長さであることを特徴とする請求項1記載の光ファイバケーブル。
【請求項3】
前記被覆部の断面における肩部には、面取り部が形成され、前記面取り部の面取り長さは、前記被覆部の高さをHとすると、(H−D)/2よりも大きいことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光ファイバケーブル。
【請求項4】
前記テンションメンバの外径Dは、0.3〜0.8mmであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の光ファイバケーブル。
【請求項5】
前記突起部の断面における前記突起部の幅広部よりも幅の狭い幅狭部が、前記突起部の幅広部よりも前記突起基部側に形成されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の光ファイバケーブル。
【請求項6】
ファイバ心線と、前記ファイバ心線の両側に設けられる一対のテンションメンバと、前記ファイバ心線および前記テンションメンバを被覆する被覆部と、を少なくとも有する光ファイバケーブルの分岐方法であって、
前記被覆部の上下面の少なくとも一部に突起部が形成され、
前記突起部の断面において、前記突起部の両側における突起基部同士の間隔は、それぞれの側の突起基部と前記ファイバ心線との最短距離の和よりも大きく、前記突起基部同士の間および、前記突起基部と前記ファイバ心線との間は、被覆部の樹脂のみで構成され、
前記テンションメンバは鋼製であり、前記テンションメンバの外径Dは、前記ファイバ心線が配置される高さhよりも大きく、
前記突起部を前記被覆部から引き剥がすことで、前記突起部と前記被覆部との境界である突起基部と前記ファイバ心線との間の前記被覆部を破断させ、内部の前記ファイバ心線を露出させ、前記ファイバ心線を取り出すことを特徴とする光ファイバケーブルの分岐方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−97247(P2013−97247A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241179(P2011−241179)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】