説明

光ファイバケーブル、光ファイバケーブルの分岐方法

【課題】 製造性や経済性にも優れ、分岐作業性にも優れる光ファイバケーブルおよび光ファイバケーブルの分岐方法を提供する。
【解決手段】 光ファイバケーブル1の上下方向のそれぞれのノッチ11をノッチ11a、11bとする。また、同様に、上下段それぞれの最端部の光ファイバ心線を光ファイバ心線7a、7bとする。また、上側のノッチ11aの先端と上側の光ファイバ心線7aの中心とを結ぶ直線をAとする。同様に、下側のノッチ11bの先端と下側の光ファイバ心線7bの中心とを結ぶ直線をBとする。また、光ファイバ心線7a、7bの中心を結ぶ直線をCとする。この場合、直線Aと直線Cのテンションメンバ側の角度がF、直線Bと直線Cのテンションメンバ側の角度がGとなる。本発明では、角度F、Gのいずれか大きな方の角度が90°〜180°となるようにノッチ11a、11bおよび光ファイバ心線7a、7bの位置が設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分岐作業性に優れる光ファイバケーブルおよび光ファイバケーブルの分岐方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光ファイバケーブルは、光ファイバ心線が外被で被覆されたものが用いられている。使用時には、このような光ファイバケーブルが分岐され、複数の住居等に配線される。
【0003】
このような光ファイバケーブルは、通常、シース外周の長手方向に沿ってノッチが形成されており、デタッチャと呼ばれる工具を用いて、ノッチをキッカケにしてケーブル内部を開き、内部の光ファイバ心線が後分岐される。しかしながら、この作業において、内部の光ファイバ心線はデタッチャによってケーブルと一緒になって分割されるため、光ファイバ心線が曲げられて、損失変動を発生させる場合がある。
【0004】
この対策としては、従来、ケーブルの内部に介在物が配置された光ファイバケーブルが開発されている。このような光ファイバケーブルは、デタッチャを用いることなく内部の光ファイバ心線を後分岐することが可能である。
【0005】
このような、光ファイバケーブルとしては、例えば、1本以上の光ファイバと光ファイバを被覆するシースを有する光ファイバケーブルであって、シースと光ファイバとの間に介在物が光ファイバケーブルの長手方向にそって並行に配置された光ファイバケーブルがある(特許文献1)。
【0006】
また、光ファイバ心線の両側に引張り及び圧縮に対する耐力を有するテンションメンバを平行に配して、ケーブル外被で一括被覆した光ファイバケーブルであって、テンションメンバが配されていない側の光ファイバ心線の両側部に、ケーブル外被とは接着一体化されず、光ファイバ心線の配列幅より幅広で、光ファイバ心線に接触するように合成樹脂製の剥離テープを配した光ファイバケーブルがある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−251769号公報
【特許文献2】特開2008−70601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1、特許文献2のいずれの光ファイバケーブルも、内部に介在(介在物、剥離テープ等)を用いるため、光ファイバケーブルの断面構造が複雑となり、製造性や経済性が良くないという問題があった。また、中間後分岐作業においては介在物を除去する必要があり、分岐作業における作業効率も良くなかった。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、製造性や経済性にも優れ、分岐作業性にも優れる光ファイバケーブルおよび光ファイバケーブルの分岐方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達するために第1の発明は、断面において、複数列で2段に俵積みされたファイバ心線と、前記ファイバ心線の両側に設けられる一対のテンションメンバと、前記ファイバ心線および前記テンションメンバを被覆する被覆部と、を具備し、前記被覆部の上下面にはそれぞれ突起部が形成され、前記突起部の基部において、前記被覆部にはノッチが形成され、上段側の最端部に位置する第1の光ファイバ心線の中心と、前記第1の光ファイバ心線に対応する上側の前記ノッチの先端とを結ぶ直線をAとし、下段側の最端部に位置する第2の光ファイバ心線の中心と、前記第2の光ファイバ心線に対応する下側の前記ノッチの先端とを結ぶ直線をBとし、前記第1の光ファイバ心線の中心と前記第2の光ファイバ心線の中心とを結ぶ直線をCとすると、テンションメンバ側から見たACのなす角度と、BCのなす角度の大きな方の角度が90°〜180°であることを特徴とする光ファイバケーブルである。
【0011】
さらに、テンションメンバ側から見たACのなす角度と、BCのなす角度の大きな方の角度が90°〜120°であることが望ましい。ここで、被覆部の樹脂のみで構成されるとは、それぞれの部位の間に、介在や空間などが存在せず、樹脂部のみ構成されることをいう。また、ファイバ心線が2段に俵積みされるとは、上下段それぞれのファイバ心線が幅方向に併設される場合において、上下段のファイバ心線同士が互いに半ピッチずれることで、例えば下段のファイバ心線同士の間に、上段のファイバ心線が配置されることを指す。
【0012】
前記ノッチの先端と前記光ファイバ心線との最短距離が、0.15〜0.60mmであることが望ましい。
【0013】
第1の発明によれば、被覆部に突起部が形成され、突起部を引き剥がすと、ノッチ先端とファイバ心線との間が破断するため、介在を用いることなく光ファイバケーブルを断面において分割させて内部のファイバ心線を取り出すことができる。このため、光ファイバケーブルの内部に介在を設ける必要がない。したがって、製造性に優れ、経済性にも優れる。
【0014】
この場合、突起部の断面において、両側のノッチ先端同士の間隔を、それぞれのノッチ先端と光ファイバ心線との最短距離の和よりも大きくすることで、確実に内部のファイバ心線を取り出すことができる。さらに、突起基部に、ファイバ心線方向のノッチが形成され、最端部の上下のファイバ心線の中心を結ぶ直線と、それぞれのファイバ心線の中心とノッチ先端を結ぶ直線の角度を規定することで、確実に内部のファイバ心線を取り出すことができる。さらに、ノッチの先端と光ファイバ心線との最短距離が0.15〜0.6mmであれば、より確実にファイバ心線を取り出すことができる。
【0015】
第2の発明は、ファイバ心線と、前記ファイバ心線の両側に設けられる一対のテンションメンバと、前記ファイバ心線および前記テンションメンバを被覆する被覆部と、を具備する光ファイバケーブルの分岐方法であって、前記被覆部の上下面のそれぞれに突起部が形成され、前記突起部の基部において、前記被覆部にはノッチが形成され、上段側の最端部に位置する第1の光ファイバ心線の中心と、前記第1の光ファイバ心線に対応する上段側の前記ノッチの先端とを結ぶ直線をAとし、下段側の最端部に位置する第2の光ファイバ心線の中心と、前記第2の光ファイバ心線に対応する下段側の前記ノッチの先端とを結ぶ直線をBとし、前記第1の光ファイバ心線の中心と前記第2の光ファイバ心線の中心とを結ぶ直線をCとすると、テンションメンバ側から見たACのなす角度と、BCのなす角度の大きな方の角度が90°〜180°であり、前記突起部を前記被覆部から引き剥がすことで、前記ノッチの先端と前記ファイバ心線との間の前記被覆部を破断させ、内部のファイバ心線を露出させ、前記ファイバ心線を取り出すことを特徴とする光ファイバケーブルの分岐方法である。
【0016】
第2の発明によれば、光ファイバケーブル内部に介在等がなく、分岐時に介在を除去する必要がないため、容易に分岐作業を行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、製造性や経済性にも優れ、分岐作業性にも優れる光ファイバケーブルおよび光ファイバケーブルの分岐方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】光ファイバケーブル1の断面図であり、(a)は全体図、(b)は(a)のD部拡大図。
【図2】光ファイバケーブル1の断面図であり、図1(a)のE部拡大図。
【図3】突起部5を引き剥がす状態を示す図。
【図4】突起部5を引き剥がす状態を示す図。
【図5】突起部5が引き剥がされた後の被覆部3と光ファイバ心線7の状態を示す図。
【図6】(a)は光ファイバケーブル30の部分断面図、(b)は光ファイバケーブル30aの部分断面図、(c)は光ファイバケーブル30bの部分断面図。
【図7】(a)は光ファイバケーブル40の断面図、(b)は光ファイバケーブル40aの断面図。
【図8】光ファイバケーブル50の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1は、光ファイバケーブル1の断面図であり、図1(a)は全体図、図1(b)は図1(a)のD部拡大図である。光ファイバケーブル1は、被覆部3、突起部5、光ファイバ心線7、テンションメンバ9等により構成される。
【0020】
光ファイバケーブル1の断面略中央位置には、複数の光ファイバ心線7が配置される。光ファイバ心線7は、光ファイバケーブル1の幅方向(図中左右方向でありテンションメンバ9の併設方向)に複数列設けられる。また、複数列に配置される光ファイバ心線7は2段に俵積みされる。すなわち、上下段の光ファイバ心線7が幅方向に半ピッチずれて、一方の段の光ファイバ心線の間に、他方の段の光ファイバ心線がはまるように配置される。
【0021】
光ファイバ心線7の外周には、被覆部3が設けられる。被覆部3は例えば難燃ポリオレフィン系樹脂製である。
【0022】
被覆部3の内部(光ファイバ心線7の両側方)にはテンションメンバ9が埋設される。テンションメンバ9は、光ファイバケーブル1の張力を受け持つ部位である。テンションメンバ9としては、例えば鋼線、モノフィラメント、アラミド繊維等による繊維補強プラスチック等が使用できる。
【0023】
被覆部3の断面上下面側(テンションメンバ9が設けられない方向)には、ファイバ長手方向に連続して突起部5が形成される。突起部5は被覆部3と一体で構成される。なお、突起部5の幅W2は、複数の光ファイバ心線7全体の最大幅W1よりも大きく設定されることが望ましい。また、本発明では、図示したように、被覆部3に突起部5が形成される(被覆部3の一部が凸状に形成される)ことを、被覆部3の外周側に突起部5が形成されると称する。
【0024】
突起部5の基部にはノッチ11が形成される。ノッチ11は、突起部の基部近傍において、被覆部3の外面から形成される。ノッチ11は、突起部5と被覆部3との境界近傍から光ファイバ心線7の方向に形成される。すなわち、ノッチがない場合における突起基部と光ファイバ心線7との最短距離よりも、ノッチが形成された場合におけるノッチ先端と光ファイバ心線7との最短距離が短くなるようにノッチ11が形成される。なお、ノッチ11と光ファイバ心線7の位置関係については詳細を後述する。
【0025】
図1(b)に示すように、突起部5の両側のノッチ先端同士の間隔をL1とする。また、図に示すように、突起部5の両側それぞれのノッチ先端と光ファイバ心線7の最短距離を、それぞれL2、L3とする。この場合、一方の側のノッチ先端と光ファイバ心線7との距離(L2)は他方の側のノッチ先端と光ファイバ心線7との距離(L3)と同一とは限らない。
【0026】
本発明の光ファイバケーブル1においては、ノッチ先端間の距離L1が、ノッチ先端と光ファイバ心線との最短距離の和(L2+L3)よりも大きくなるように、光ファイバ心線7および突起部5が配置される。なお、さらに望ましくは、(L2+L3)をL1の80%以下とすればよい。
【0027】
なお、ノッチ11の方向や光ファイバ心線の本数は、図示した例に限られない。また、図示したように、光ファイバケーブル1の断面が略十字状に形成される場合において、テンションメンバ9側の突起と突起部5側の突起とを誤ることを防止するために、突起部5に着色を施したり、突起部の一部に小さな凸部や凹部等を形成して、突起部5を視認するためのマークを形成してもよい。
【0028】
図2は図1(a)のE部拡大図である。光ファイバケーブル1の上下方向(テンションメンバ9の併設方向に垂直な方向)のそれぞれのノッチ11をノッチ11a、11bとする。また、同様に、上下段それぞれの最端部の光ファイバ心線を光ファイバ心線7a、7bとする。また、上側のノッチ11aの先端と上側の光ファイバ心線7aの中心13aとを結ぶ直線をAとする。同様に、下側のノッチ11bの先端と下側の光ファイバ心線7bの中心13bとを結ぶ直線をBとする。また、光ファイバ心線7a、7bの中心13a、13bを結ぶ直線をCとする。
【0029】
この場合、直線Aと直線Cのテンションメンバ側(図中右側)の角度がF、直線Bと直線Cのテンションメンバ側(図中右側)の角度がGとなる。本発明では、角度F、Gのいずれか大きな方の角度が90°〜180°となるようにノッチ11(11a、11b)および光ファイバ心線7(7a、7b)の位置が設定される。
【0030】
角度F、Gのいずれもが90°よりも小さくなると、ノッチ11a、11bの互いのノッチ先端間距離が短くなりすぎる。このため、テンションメンバ9側の被覆部3と本体部側とが取り扱い時に意図せず分離してしまう恐れがある。また、製造時にノッチ11a、11b間に樹脂が充填されない恐れがある。一方、角度F、Gのいずれかが180°を超えてしまうと、突起部5を分離した際に、光ファイバ心線がテンションメンバ側の被覆部に埋設されてしまう恐れがある。すなわち、光ファイバケーブル1を断面において分割した際に、光ファイバ心線7の一部がテンションメンバ9を含む被覆部側に持っていかれる。このため、光ファイバ心線7に過度な力が付与される恐れがある。
【0031】
次に、本発明にかかる光ファイバケーブル1を用いた分岐方法について説明する。まず、図3(a)に示すように、光ファイバケーブル1の突起部5をニッパ等の工具12で挟み込む(図中矢印H方向)。なお、工具12により突起部5を挟み込む際には、工具12で突起部5を切断しない程度の力で挟み込む。
【0032】
次に、図3(b)に示すように、突起部5を工具12で挟み込んだ状態で、突起部5を被覆部3側から引き剥がす(図中矢印I方向)。このようにすることで、ノッチ先端と光ファイバ心線7との間の被覆部3が破断し、突起部5(および被覆部3の一部)が引き剥がされる。したがって、光ファイバ心線7が破断部に露出する。
【0033】
また、必要に応じて、図4に示すように、被覆部3の下側の突起部5に対しても同様の作業を行う。なお、図4において、上下の突起部5は同時に引き剥がしても良く、一方から順に作業を行っても良い。上下の突起部5を引き剥がすことで、光ファイバケーブル1の断面において、光ファイバケーブル1を、上下の突起部5と左右のテンションメンバ9とに4分割することができる。したがって、内部の光ファイバ心線7を容易に取り出すことができる。この際、光ファイバ心線7を過剰に曲げることもない。
【0034】
図5は、突起部5を引き剥がした状態を示す図である。前述したように、∠AC、∠BCの大きな方の角度が90°〜180°となるように、ノッチと光ファイバ心線の位置関係を設定すると、図5(a)に示すように光ファイバ心線7が露出する。この場合には、光ファイバ心線7がテンションメンバ9側の被覆部3に埋設されることがなく、容易に光ファイバ心線7を取り出すことができる。
【0035】
一方、∠ACまたは∠BCの角度が180°を超えると、図5(b)に示すように光ファイバ心線7が露出する。この場合には、光ファイバ心線7がテンションメンバ9側の被覆部3に埋設される。したがって、光ファイバ心線7をテンションメンバ9側の被覆部3から取り出すことが困難である。
【0036】
以上説明したように、本実施の形態によれば、内部の光ファイバ心線7を傷つけることなく、容易に光ファイバケーブル1に対して分岐を行うことができる。また、突起部5を引き剥がす際、突起部5は最も破断長の短い所で破断されるが、本発明では、ノッチ先端と光ファイバ心線7との距離がノッチ先端間の距離よりも短いため、突起部だけが破断するのではなく、ノッチ先端から光ファイバ心線7の方向に向かって亀裂が伝播し、突起部5(被覆部3)を破断させることができる。したがって、光ファイバ心線7を露出させるため(光ファイバケーブル1を断面において分離するため)に、介在が不要である。
【0037】
また、ノッチ11を形成するため、ノッチ先端と光ファイバ心線7との最短距離をより短くすることができる。このため、より確実に、ノッチ先端と光ファイバ心線7との間を破断させることができる。
【0038】
また、ノッチ先端と最端部の光ファイバ心線7a、7bとのそれぞれを結ぶ直線と、光ファイバ心線7a、7b間を結ぶ直線のなす角度を適切に設定することで、意図せずに被覆部3が分離することがなく、また、分離後に光ファイバ心線がテンションメンバ側の被覆部3内部に埋設されることがない。したがって、光ファイバ心線7の取り出し性に優れる。
【0039】
次に、他の実施の形態について説明する。図6(a)は他の実施の形態にかかる光ファイバケーブル30を示す図である。なお、以下の実施の形態において、光ファイバケーブル1と同様の機能を奏する構成については、図1等と同様の符号を付し、重複する説明を省略する。光ファイバケーブル30は、光ファイバケーブル1と略同様の構成であるが、突起部5につかみ部が形成される点で異なる。
【0040】
本発明におけるつかみ部とは、図3、図4で示したように、工具12で突起部5を挟み込み、突起部5を光ファイバケーブル本体から引き剥がす際に、工具12が突起部5の側面で滑ることなく、確実に突起部5を破断させるためのものである。
【0041】
光ファイバケーブル30の突起部5は、側面(工具12でのつかみ面)が末広がり状に形成される。すなわち、光ファイバケーブル30の突起部5の幅は一定ではない。図6(a)に示すように、突起部5の最も幅の広い(図中幅J)部位を幅広部31とし、幅広部31よりも幅の狭い(図中幅K)部位を幅狭部33とする。本発明では、幅広部31よりも突起部5の基部側に幅狭部33が形成される。すなわち、突起部5の少なくとも一部に、突起部の基部側よりも幅の広い部位が端部側に形成される。
【0042】
このようにすることで、突起部5を工具12で挟み込み、突起部5を引き剥がす際、工具12が突起部5のつかみ部(幅広部31)で引っかかるため、滑ることがない。したがって、より容易に突起部5を引き剥がすことができる。
【0043】
なお、つかみ部の形態は図示した例に限られず、工具12が突起部のつかみ面で滑らないようにすればいずれの形態でも良い。例えば、図6(b)に示す光ファイバケーブル30aのように、突起部5の側面に凸状の幅広部31を形成し、幅広部31の幅Jよりも幅の狭い幅狭部33を幅広部31よりも突起部の基部側に形成すればよい。
【0044】
また、図6(c)に示す光ファイバケーブル30bのように、突起部5の側面に凹状の幅狭部33を形成してもよい。この場合でも、幅狭部33よりも突起部5の端部側(基部側とは反対側)に幅狭部33の幅Kよりも幅の広い幅広部31が形成されていれば、本発明のつかみ部として機能させることができる。
【0045】
以上のように、光ファイバケーブル30、30a、30bを用いても、光ファイバケーブル1と同様の効果を奏することができる。また、突起部5につかみ部を形成することで、工具12が滑ることがなく、容易に突起部5を破断させることができる。
【0046】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0047】
例えば、図7(a)に示すような光ファイバケーブル40を用いることもできる。本発明では、光ファイバケーブル40のように、突起部5の上端面(下端面)に凹部41を溝状に形成することができる。凹部41によれば、従来のように、端末部で凹部を引き裂くことによって光ファイバ心線を取り出せたり、デタッチャを用いることもでき、または、前述したような突起部5の識別性を高めることができる。
【0048】
なお、本発明では、図7(b)に示すように凹部41aを形成したものも当然に含まれる。凹部41aは例えば突起部5の高さと略同等の深さを有する。この場合でも、本発明においては、突起部5が複数形成されたのではなく、一体の突起部であるとする。すなわち、突起部5の両側のノッチ先端同士の間隔をL1(図1(b))とすればよい。但し、この場合、両側のノッチ先端同士の間隔とは、凹部41a(非樹脂部)を考慮して、実際の樹脂部の距離をL1(図1(b))とし、これがL2+L3(図1(b))よりも大きくなるようにすればよい。
【0049】
また、本発明では、図8に示すような自己支持型の光ファイバケーブル50に対しても適用可能である。光ファイバケーブル50は、例えば光ファイバケーブル1と同様のケーブル部に支持線51が連結されたものである。この場合でも突起部5および光ファイバ心線7の配置を適宜設定することで、本発明の効果を得ることができる。
【0050】
なお、以上説明した各実施形態における各構成は、当然に互いに組み合わせることができる。
【実施例】
【0051】
各種の断面形状の光ファイバケーブルを試作し、図3に示すような方法で突起部を引き剥がして、光ファイバ心線を取り出すことができるかどうかを評価した。試験片は概ね図1に示す断面形状のものを用い、全体の厚さ(被覆部+突起部×2)を2.8mm、全幅を4.2mmとした。樹脂部および突起部は難燃ポリオレフィン樹脂とした。突起部の幅は1.2mmで一定とした。なお、テンションメンバは0.7mmΦの鋼線を用い、0.25mmΦの光ファイバ心線を4列×2段に俵積みした。なお、ノッチ先端から光ファイバ心線までの距離は0.15mmで一定とした。
【0052】
得られた試験片をそれぞれに対して一般的な工具であるニッパを用いて突起部を引き剥がした。結果を表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
表の∠ACまたは∠BCの大きな方の角度は、図2に示した角度であり、上下それぞれの角度のうち大きな方の角度である。光ファイバ心線の取り出し性は、突起部を引き剥がした際に、光ファイバ心線が樹脂に埋設されずに容易に取り出せたものを「◎」、光ファイバ心線が埋もれているが容易に取り出せたものを「○」、光ファイバ心線が埋もれて容易に取り出すことができなかったものを「×」とし、それぞれn=50で評価した。
【0055】
実施例1〜5は、∠ACまたは∠BCの大きな方の角度が90°〜180°の範囲であるため、光ファイバ心線を取り出すことができた。特に、実施例3〜5は、∠ACまたは∠BCの大きな方の角度が90°〜120°であり、ファイバの取り出し性が極めてよい。
【0056】
これに対し、比較例1は、∠ACまたは∠BCの大きな方の角度が180°を超えるため、光ファイバ心線が被覆部に埋設され、光ファイバ心線を取り出すことができないものが多くなった。また、比較例2は、∠ACまたは∠BCの大きな方の角度が90°未満であるため、上下のノッチ先端の距離が短くなり、ケーブルの取り回し時にすでにテンションメンバ側の被覆部が分離してしまい、突起部の除去作業を行うことができなかった。
【符号の説明】
【0057】
1、30、30a、30b、40、40a、50………光ファイバケーブル
3………被覆部
5………突起部
7、7a、7b………光ファイバ心線
9………テンションメンバ
11、11a、11b………ノッチ
12………工具
13a、13b………中心
31………幅広部
33………幅狭部
41、41a………凹部
51………支持線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面において、複数列で2段に俵積みされたファイバ心線と、前記ファイバ心線の両側に設けられる一対のテンションメンバと、前記ファイバ心線および前記テンションメンバを被覆する被覆部と、を具備し、
前記被覆部の上下面にはそれぞれ突起部が形成され、前記突起部の基部において、前記被覆部にはノッチが形成され、
上段側の最端部に位置する第1の光ファイバ心線の中心と、前記第1の光ファイバ心線に対応する上側の前記ノッチの先端とを結ぶ直線をAとし、下段側の最端部に位置する第2の光ファイバ心線の中心と、前記第2の光ファイバ心線に対応する下側の前記ノッチの先端とを結ぶ直線をBとし、前記第1の光ファイバ心線の中心と前記第2の光ファイバ心線の中心とを結ぶ直線をCとすると、
テンションメンバ側から見たACのなす角度と、BCのなす角度の大きな方の角度が90°〜180°であることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項2】
テンションメンバ側から見たACのなす角度と、BCのなす角度の大きな方の角度が90°〜120°であることを特徴とする請求項1記載の光ファイバケーブル。
【請求項3】
前記ノッチの先端と前記光ファイバ心線との最短距離が、0.15〜0.6mmであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光ファイバケーブル。
【請求項4】
ファイバ心線と、前記ファイバ心線の両側に設けられる一対のテンションメンバと、前記ファイバ心線および前記テンションメンバを被覆する被覆部と、を具備する光ファイバケーブルの分岐方法であって、
前記被覆部の上下面のそれぞれに突起部が形成され、前記突起部の基部において、前記被覆部にはノッチが形成され、
上段側の最端部に位置する第1の光ファイバ心線の中心と、前記第1の光ファイバ心線に対応する上段側の前記ノッチの先端とを結ぶ直線をAとし、下段側の最端部に位置する第2の光ファイバ心線の中心と、前記第2の光ファイバ心線に対応する下段側の前記ノッチの先端とを結ぶ直線をBとし、前記第1の光ファイバ心線の中心と前記第2の光ファイバ心線の中心とを結ぶ直線をCとすると、
テンションメンバ側から見たACのなす角度と、BCのなす角度の大きな方の角度が90°〜180°であり、
前記突起部を前記被覆部から引き剥がすことで、前記ノッチの先端と前記ファイバ心線との間の前記被覆部を破断させ、内部のファイバ心線を露出させ、前記ファイバ心線を取り出すことを特徴とする光ファイバケーブルの分岐方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−97253(P2013−97253A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241217(P2011−241217)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】