説明

光ファイバケーブル監視装置及び監視方法

【課題】光ファイバ測定装置の測定波形の時系列データに基づいて誤報のない光ファイバケーブル心線監視を可能にする。
【解決手段】光ファイバセレクタ3は光ファイバ心線監視装置1の指令により一定周期毎に監視ルート毎に光ファイバケーブル4の監視用予備心線を選択し、光ファイバ測定装置2で光パルスによる光損失測定を行い、光ファイバ心線監視装置1でその結果を処理した後、処理結果を一定周期毎に測定波形ファイル32に格納する。測定波形データはファイル装置12からメインメモリ14に読み出され、時系列波形検出処理部45で時系列の波形変化を照合し、CPU10はこの照合結果に基づいて異常個所(劣化個所)を特定し、ディスプレイ18に地図情報とともに表示させる。その際、異常を生じた光ファイバケーブルと同じロットのケーブルも特定し、併せて表示するようにすることもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバケーブル心線を利用した監視装置に係り、特に、下水道、道路、河川の光ファイバケーブル系統が正常に動作しているかを心線監視装置の光測定結果により管理するに好適な光ファイバケーブル監視装置及び監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路、河川、下水道管渠内に敷設された光ファイバケーブルの障害検出は、光ファイバ測定装置を光ファイバケーブルの予備心線に接続してそのパルス反射量を測定し、光損失波形の解析により行われている。監視用の予備心線は通常1本であり、多心ケーブルの場合、ケーブルの一部が損傷したときには監視用の予備心線が切れずに障害として検知しない場合がある。また、測定波形は監視対象距離が長くなると、ダイナミックレンジの不足、波形ひずみ、波形変動等により誤検出の確率が高くなる。連続監視の場合には、誤検出を少なくすることが必要であるが、従来は瞬時計測データを判断基準にしているため、誤検出が避けられなかった。光ファイバケーブルの劣化を検知するには、長期間の測定波形の記録保存とその測定波形の比較照合をするが、光ファイバケーブルは、施工上長距離になると複数ケーブルを融着処理で接続しており、途中区間ではその測定波形データは一律の変化ではない。
【0003】
なお、特許文献1には、光ファイバケーブルのうち地図上の所定位置と対応する位置に測定用のマーカを設け、光ファイバケーブルに光を入射して損失発生手段または反射光発生手段までの距離を測定し、その測定長(実長)と地図上の該当位置までの距離(設計長)との差を補正し、補正後のデータのデータベースが自動的に更新されるようにした発明が開示されている。
【特許文献1】特開2003−234708公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術においては、24時間連続の監視をする場合、光ファイバ測定装置が一定周期で該当心線のパルス測定を行い、その毎周期測定結果から異常個所を判定している。しかしながら、周期測定結果は、その前の測定結果との比較はしていないため、波形変動により発生する異常値発生の誤報が頻発する虞がある。一時的な波形変動による異常を防止するため、複数回同一心線を測定する方法を取る場合もあるが、測定時間が3倍以上かかるという欠点がある。また、監視用の予備心線が1本の場合、特定の心線固有のケーブル劣化しか障害検知できないという問題がある。
【0005】
また、特許文献1記載の発明では、光ファイバケーブルに光を入射して損失発生手段または反射光発生手段までの距離を測定し、その測定長と地図上の該当位置までの距離との差を補正し、データを自動更新して常に最新のデータを得るように構成されているが、損失発生手段または反射光発生手段までの距離の経時的データに基づいて評価しているわけでない。そのため早期の劣化診断を行うことはできない。
【0006】
本発明の目的は、光ファイバ測定装置の測定波形の時系列データに基づいて誤報のない光ファイバケーブル心線監視を可能にすることにある。
【0007】
また、他の目的は時系列で蓄積したデータに基づいて光ファイバケーブルの早期劣化診断を可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は、光ファイバケーブルの断面から複数の予備心線に対して測定用の光を出射して反射光の損失を測定する測定手段の測定結果に基づいて光ファイバケーブルの状態を監視する際、前記測定された光損失測定波形が規定値以上の損失を示したか否かを検出し、検出された前記規定値以上の損失を示した前記予備心線の光ファイバケーブルにおける断面位置を算出し、測定波形を時系列データとして管理し、この時系列データに基づいて任意区間で光ファイバケーブルの劣化を監視するように構成したことを特徴とする。
【0009】
その場合、前記監視では、前記記憶された時系列データから前記任意区間の予め設定した期間の時系列データの差分を取り、その偏差が予め設定された値を越えたときにケーブル劣化と判定する。また、前記管理は予め設定されたタイミングで連続して実行される。さらに、連続して管理された測定波形の前記任意区間の予め設定した期間の時系列データの差分を取り、その偏差の累積値が予め設定された値を越えたときにケーブル劣化と判定するように構成することもできる。その際、前記偏差の累積値が増大し始めた時を抽出すれば、光ファイバケーブルの早期劣化診断が可能となる。
【0010】
また、前記光損失波形の瞬時的な変動を排除するようにして、劣化診断の不確定要素を排除するようにすれば、診断精度も向上する。
【0011】
また、監視対象となる光ファイバケーブルの属性を当該光ファイバケーブルの測定波形データに関連づけて記憶し、前記測定された光損失測定波形が規定値以上の損失を示した光ファイバケーブルと同じ属性の光ファイバケーブルを使用している個所を検出するようにすれば、同一属性の光ケーブル、例えば同じロットの光ケーブルを抽出し、診断結果を拡張することができる。これらの結果はそれぞれ地図上の位置に変換し、あるいはデータとして表示する。
【0012】
このように構成することにより、損傷(異常発生)の位置、損傷を受けた(異常を生じた)時期、ロットなどが特定でき、早期に劣化診断を行うことが可能となる。
【0013】
さらに具体的には、監視用の予備心線を複数本利用し、ケーブルの部分障害を検知する手段と、光ファイバ測定装置の測定波形を時系列に記憶する測定波形記録手段と、時系列の測定波形データを任意期間の任意区間において比較照合し減衰量の変動を検知する手段と、障害発生個所をルート検索して地図上に表示する表示手段とを備えてなる光ファイバケーブル心線監視装置を構成した。
【0014】
前記心線監視装置を構成するに際しては、新たな要素として、光ファイバケーブルの予備心線を複数本利用し、その断面形状により障害発生部分を特定する手段、時系列測定波形データの変化照合により障害個所を確実に検知する手段、及び時系列測定波形データを長期間において任意期間の任意区間を抽出して照合し光減衰量の劣化を検知する手段、表示手段として、該当位置の地理情報上にその位置を重ねあわせ表示する機能を有するもので構成することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、光ファイバケーブルの一部が長期間に渡り劣化減衰しても任意区間のその断面領域にある監視予備心線により異常が検知できる。
【0016】
また、経時的変化が分かることから早期に光ファイバケーブルの劣化診断を行うことができる。
【0017】
さらに、経時劣化を生じた、あるいは異常が発生した光ファイバケーブルのロットを特定し、劣化診断を拡張することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態について説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る光ファイバケーブル心線監視装置の要部構成図、図2は心線監視装置の全体構成図である。図1及び図2において、心線監視装置は、例えば、マイクロコンピュータで構成されたCPU(中央処理装置)10、ファイル装置12、メインメモリ14、図面入力装置16、ディスプレイ(表示装置)18、キーボード20、マウス22、データ入力装置24、図面出力装置26、光ファイバケーブル心線4、光ファイバセレクタ3、光ファイバ測定装置2、光ファイバ心線監視装置1を備えて構成されており、各部がそれぞれデータ伝送路を介して接続されている。
【0019】
CPU10には、操作入力処理34、図面検索処理36、光測定波形選択処理38、属性検索処理40、断面位置検出処理42、断線位置検出処理44、時系列波形変化検出処理45及び長期時系列波形変化検出処理46の各処理機能が設定されている。
【0020】
図1の要部構成図から分かるようにファイル装置12には、複数の図形の集合による図面、例えば、下水道の管渠図や道路、河川の共同溝、下水管渠内に敷設された光ファイバケーブルなど施設図面に関する図形情報や図形に関連する属性情報が施設図面データとして格納されている。施設図面データのうち地形図、管渠図、光ファイバケーブル図などの図形データは図形情報として図面ファイル28に格納されており、図形に関係する町名、管口径、管種などの文字・数値で表現される属性データは属性情報として属性ファイル30に格納されている。図形データを入力するに際しては、例えば、紙に書かれた図面を図面入力装置16によって一定間隔でスキャンして読み取り、読み取ったデータをその濃淡に応じて濃淡階調化し、濃淡階調化されたデータをデジタル画像データとしてコード化し、コード化されたデータを図面入力装置16から入力するようになっている。この場合、施設図面は、図3(a)に示すように、複数の図面から構成されているため、各図面に関する図形データをそれぞれ複数の図面データファイル#1〜#nに分割して図面ファイル28に格納するようになっている。また図形データは、図3(b)に示すように、直交座標系を基準とした位置データにしたがって生成されており、各図形の大きさは、図面サイズに応じてそのX軸、Y軸方向における長さX、Yによって決定されるようになっている。また、これら図形データは、図4(b)〜(d)に示すように、道路、家枠、管渠の3段階(大分類層1〜3)に階層分離されたデータ構造を構成するようになっている。そして、これらのデータのうち必要に応じて各階層のデータを重ね合わせることにより、図4(a)に示すような図形データを構成することができるようになっている。
【0021】
一方、属性情報を構成する属性データは、キーボード20から、あるいはフロッピディスクなどのデータを一括して入力できるデータ入力装置24から入力されるようになっている。各属性データは、図5に示すように、各図形データに関連づけられて属性ファイル30に記憶されるようになっている。ファイル装置12に記憶された図面データや属性データのうちCPU10の処理に伴うデータ、すなわちCPU10の処理中のデータ、図面データの検索や編集などの処理を実行するためのプログラムや索引図に関するデータはメインメモリ14に格納されている。
【0022】
なお、前記属性データは、光ケーブルの製造年、敷設年、製造メーカ名、ケーブル型式など属性を示すデータであり、これらの属性により前記光ケーブルのロットを特定できるようにしている。このように属性が分かると、同一属性条件の光ケーブル(光ケーブルの製造時の同一ロットの光ケーブル)を抽出することが容易に行えるので、光ケーブルの劣化が判定されたときには、同一属性条件、あるいは同一ロットの光ケーブルを交換すれば、光ケーブルの劣化による障害や不都合の発生を抑えることができる。その際、交換は前記同一属性条件あるいは同一ロットの部分だけでよいので、工事も短時間で簡単に行える。
【0023】
ファイル装置12に格納された図形データおよび属性データをもとに施設図面を管理するに際しては、キーボード20、マウス22からの入力情報を基にCPU10が各種の演算処理を行ってファイル装置12内のデータを検索、検索したデータを基に指定の施設図面をディスプレイ(表示手段)18の表示画面上に表示する。光ファイバケーブルの監視は、一定周期毎に監視ルートのケーブルに接続された光ファイバ心線監視装置1により行う。
【0024】
図2の光ファイバセレクタ3は光ファイバ心線監視装置1の指令により一定周期毎に監視ルート毎に光ファイバケーブル4の監視用予備心線を選択し、光ファイバ測定装置2で光パルスによる光損失測定を行い、光ファイバ心線監視装置1でその結果を処理した後、処理結果は一定周期毎に測定波形ファイル32に格納される。測定波形データはファイル装置12からメインメモリ14に読み出され、時系列波形検出処理部45で時系列の波形変化を照合する。
【0025】
光ファイバケーブル4は図5(a)のような断面構成をしており、心線410は図5(b)のようにテープ単位にグループ化されている。ここでは4本の心線411,412,413,414が1テープ420として構成される。光ファイバケーブル4の中央部にはテンションメンバ430と呼ばれるスチール製のケーブルがあり、ケーブル敷設時の引張り強度を確保している。すなわち、光ファイバケーブル4は、テンションメンバ430の外周部にスペーサ440を介して光ファイバテープ心線410を複数本配置し、その外周を内装450で覆い、内装450を外装460で覆った構成となっており、光ファイバケーブル4の引っ張り強度をテンションメンバ430によって確保し、敷設環境のガードを内装450及び外装460によって確保している。
【0026】
ケーブル障害時には完全に光ファイバケーブル4が断線する場合と、このテンションメンバ430を境目にして一部が障害となる場合がある。したがって、このような部分障害を検知できるようにするため、監視用の予備心線410pはテンションメンバ430を中心に対角線上の配置から選択することが必要である。図5(a)の黒丸、及び図5(c)の太線が監視用の予備心線410pを選定した例である。このような配置にすることによりケーブルの半分が損傷した場合にもケーブル断線などの障害時にも確実な断線検知ができる。実際に光ファイバケーブル4が断線した場合には、障害個所で急激な光損失が測定される。ところが、光パルスの反射量は、光ファイバの屈折率の違いや、途中の接合部に短い区間があると測定毎にバラツキを生じる。ケーブル長が長くなるとより前記バラツキの傾向はより大きくなる。その結果、測定波形データの変化検知点、即ちイベント個所の位置が変化することとなる。このような誤報原因となる測定波形データを解析するため、時系列データとして測定時刻単位に波形データを記憶し、その前後の波形偏差を算出し、あらかじめ定めた規定値以上の偏差を超えているかどうかの処理をする。
【0027】
図6は光ファイバ心線監視装置1の動作、特に時系列波形変化検出処理45及び長期時系列波形変化検出処理46の処理手順を示すフローチャートである。
【0028】
この処理では、光ファイバ心線監視装置1は、キーボード42あるいはマウス22からの指示入力により操作入力処理34を実行し、まず、光測定波形検索処理38で監視対象とする光ファイバケープル4の中からあらかじめ定められた監視用の予備心線410pを光ファイバセレクタ3により選択する。そして、選択した予備心線410pに対してファイバ測定装置2から光パルスを放射し、その後方散乱光を測定することにより前記選択された光ファイバ心線の光損失を測定波形データとして計測する(ステップS101)。
【0029】
次いで、前記計測された測定波形データにおける規定値以上の損失の有無を波形解析し、規定値以上の損失がある場所を検出する(ステップS102)。この処理は断面位置検出処理42で行われる。そして、規定値以上の損失がある場合には損失個所の距離を算出する(ステップS103)。これらの処理は、監視対象となっている心線数分行われる(ステップS104)。監視対象となっている心線410pに対する処理が全て完了すると、図7に示すように前回時刻T1の測定波形(a)と今回時刻T2の測定波形(b)とを照合する。照合は横軸の距離方向と縦軸の光損失とについて実施する。この距離方向は横軸に対応し、図7では前回L1の位置でピークが立ち上がっていたものが今回L2の位置にピークの立ち上がり位置が移動し、ピークがA1からA2に低下している。そこで、偏差(L2−L1、A2−A1)が規定値以上あるかを照合し(ステップS105)、規定値以上の偏差がある場合には異常個所及び距離を算出する(ステップS106)。ピークの立ち上がり位置は光ファイバをコネクタで接続した位置にこの実施形態では対応しているが、ピークからピークまでの距離(コネクタ間の距離、peak to peak)が通常20kmなので、立ち上がりの位置から以上が生じた位置が分かる。この位置を図1に示すように地図上の光ファイバの敷設位置に対照させれば、異常が発生した位置を地図上で特定することができる。
【0030】
表示編集処理47では、該当する光ファイバケーブル4の障害位置として画面表示するため断線位置検出処理44からの出力に基づいて光ファイバケーブル断線位置56としてディスプレイ18の表示部52に表示する。また、断面位置検出処理42から出力に基づいて障害が発生した光ファイバケーブルの心線410の位置と心線番号411,412,413,414とから光ファイバーケーブル4の断面形状のどの位置であるかを特定し、表示部52に合わせて表示する。
【0031】
その際、図面検索処理36では、メインメモリ14の図面ファイル28から障害が発生した個所近傍の図面データファイルを読み出し、断面位置検出処理42でその位置を特定して表示する。属性検索処理40では、メインメモリ14の属性ファイル30から前述の光ケーブルの製造年、敷設年、製造メーカ名、ケーブル型式などの属性データを読み出し、これらの属性により光ファイバケーブル4のロットを特定する。そして、特定された光ファイバケーブル4が使用されている個所を検索し、該当個所があれば例えばディスプレイ18の表示領域54の1つにその旨表示する。そこで、オペレータが前記表示領域にポインタをあわせて選択すると、検索された個所が例えば一覧表示され、一覧表示のなかからさらにポインタで選択すると、その選択された個所がディスプレイ18の表示部52に表示される。これにより現在障害が発生しなくとも、障害が発生する蓋然性が高い個所が特定され、障害が発生する前に予防的な処理をスポット的に行うことが可能になる。
【0032】
障害の程度、例えば断線あるいは損傷かどうかの結果は図1の断線位置検出処理44で規定値の超過値で判定する。断線は例えば図7において点線で示したようにピークがでた後、すぐに減衰するような測定値が得られた場合でも判断できる。このような特性、すなわち図7(a)および(b)で実線で示した特性において、最終断のピークの後、ノイズと共に減衰しているが、これは終端が解放端のときに出現する特性で、減衰の特性が出現する直前のピーク位置で光ファイバ心線410が断線したことを示す。
【0033】
図8は光ファイバ測定装置の測定波形を時系列順に表示した図である。丸印をつけた部分が他の時系列データとの偏差部分である。このような偏差がこの測定時刻だけに表れ、次の測定時にはその前の特性と特に変わったところがなければ、測定誤差や何らかの原因の揺らぎが瞬時にあってすぐに回復したことを示す。そのため、このような偏差はフィルタリング処理により取り除き、障害の発生と見なさないように処理される。この処理は時系列波形変化検出処理46で実行される。前記揺らぎは前述のようにpeak to peakが20kmであること、及び光ファイバケーブル4が重力や引力変化(潮汐)との関係で若干延び縮みすることから生じると考えられている。そのため、このような揺らぎに起因する波形変化は光ファイバケーブル4の異常や損傷ではないと見なしている。
【0034】
ステップS106で抽出された異常個所及び特定された障害位置はメインメモリ14に格納されるとともに長期時系列波形検出処46で任意区間の過去の指定日時の測定波形(Tl)と現在の指定日時の測定波形(T2)とが照合される(ステップS107)。照合結果で予め定めた規定値以上の偏差、即ち光減衰量が大きい場合には該当区間は劣化異常であるとの判定をし、その区間を異常として特定する(ステップS108)。図9は特定区間(LlからL2)で測定波形(Tl)と測定波形(T2)に規定値以上の偏差Δαが検知された場合を示している。このような比較結果から、前記偏差Δαの大きさに応じて断線か損傷(劣化異常)かを特定することもできる。
【0035】
また、前記偏差Δαについては別途累積し、累積結果を測定波形ファイル32に別ファイルとして蓄積しておき、この累積値が予め設定された値(累積値の規定値)よりも大きくなったときにその区間で異常が生じたと判断することもできる。累積値で判断する場合には、長期間に渡る微小変化の集積として判断することになるため、経年劣化の判定としてより好ましい。
【0036】
前述のように誤報原因となる測定波形データを解析するため、時系列データとして測定時刻単位に波形データをメインメモリ14の測定波形ファイル32に記憶し、蓄積しておく。このような測定は、従来では年に1回の定期点検時に行われるのが一般的、前述のようにその定期点検時のデータを更新してデータベース化しているが、本実施形態では、測定頻度は例えば1日ないし30日に1回に設定され、さらに、この測定結果の初期データと比較に必要な複数年回分のデータを蓄積しておく。このような測定結果の蓄積データを参照して前述のような障害の個所の特定が容易に行える外に、図10に示すように蓄積データから光ファイバケーブル4の劣化特性を得ることができる。この劣化特性はロットや設置環境によって異なり、例えばA,B及びCのような特性のものが劣化特性が得られたとすると、この劣化特性に基づいて早期の劣化診断が可能になる。すなわち、時系列データとして管理することにより、劣化の開始点を特定することが可能となり、交換時期をデータに基づいて設定することが可能となる。なお、劣化の開始時は例えばAの特性のものであれば、例えば10年〜20年の範囲であると考えられるが、より精度のよい時期の特定はデータの蓄積量に依存する。また、劣化進行の単位は年単位なので全てのデータを蓄積しておく必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態に係る光ファイバケーブル心線監視装置の要部構成図である。
【図2】本発明の一実施形態を示す光ファイバケーブル心線監視装置の全体構成図である。
【図3】ファイル装置の図面構成と図形座標との関係を示す説明図である。
【図4】図形データの階層構成図である。
【図5】光ファイバケーブルの断面構成、テープ心線の構成及び予備心線の選択状態を示す図である。
【図6】図1に示す光ファイバケーブル心線監視装置の制御手順を示すフローチャートである。
【図7】光ファイバ測定装置で測定した測定波形を示す図である。
【図8】光ファイバ測定装置で測定した測定波形を時系列順に表示した図である。
【図9】光ファイバ測定装置での測定波形を任意期間で時系列順に表示した図である。
【図10】光ファイバケーブルの経年劣化特性を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
1 光ファイバ心線監視装置
2 光ファイバ測定装置
3 光ファイバセレクタ
4 光ファイバケーブル
410 光ファイバテープ心線
411,412,413,414 心線
10 CPU
12 ファイル装置
14 メインメモリ
16 図面入力装置
18 ディスプレイ
20 キーボード
22 マウス
24 データ入力装置
26 図面出力装置
28 図面ファイル
30 属性ファイル
32 測定波形ファイル
38 光測定波形検索処理
40 属性検索処理
42 断面位置検出処理
44 断線位置検出処理
45 時系列波形変化検出処理
46 長期時系列波形変化検出処理

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバケーブルの断面から複数の予備心線に対して測定用の光を出射して反射光の損失を測定する測定手段の測定結果に基づいて光ファイバケーブルの状態を監視する光ファイバケーブル監視装置において、
前記測定された光損失測定波形が規定値以上の損失を示したか否かを検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された前記規定値以上の損失を示した前記予備心線の光ファイバケーブルにおける断面位置を算出する断面位置算出手段と、
前記測定手段による測定波形を時系列データとして管理し、この時系列データに基づいて任意区間で光ファイバケーブルの劣化を監視する監視手段と、
を備えていることを特徴とする光ファイバケーブル監視装置。
【請求項2】
前記時系列データを記憶する記憶手段を備え、
前記監視手段は、前記記憶手段に記憶された時系列データから前記任意区間の予め設定した期間の時系列データの差分を取り、その偏差が予め設定された値を越えたときにケーブル劣化と判定することを特徴とする請求項1記載の光ファイバケーブル監視装置。
【請求項3】
前記管理は予め設定されたタイミングで連続して実行されることを特徴とする請求項2記載の光ファイバケーブル監視装置。
【請求項4】
前記監視手段は、連続して管理された測定波形の前記任意区間の予め設定した期間の時系列データの差分を取り、その偏差の累積値が予め設定された値を越えたときにケーブル劣化と判定することを特徴とする請求項1記載の光ファイバケーブル監視装置。
【請求項5】
前記監視手段は、前記偏差の累積値が増大し始めた時を抽出することを特徴とする請求項4記載の光ファイバケーブル監視装置。
【請求項6】
前記監視手段は、前記光損失波形の瞬時的な変動を排除する排除手段を備えていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の光ファイバケーブル監視装置。
【請求項7】
前記監視手段は、監視対象となる光ファイバケーブルの属性を当該光ファイバケーブルの測定波形データに関連づけて前記記憶手段に記憶し、前記測定された光損失測定波形が規定値以上の損失を示した光ファイバケーブルと同じ属性の光ファイバケーブルを使用している個所を検出することを特徴とする請求項1記載の光ファイバケーブル監視装置。
【請求項8】
前記断面位置算出手段により算出された光ファイバケーブルの断面位置を地図上の位置に変換して表示する表示編集手段を備えていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の光ファイバケーブル監視装置。
【請求項9】
前記表示編集手段は、前記同じ属性の光ファイバケーブルを使用している個所を表示することを特徴とする請求項8記載の光ファイバケーブル監視装置。
【請求項10】
前記同じ属性の光ファイバケーブルが同じロットで製造された光ファイバケーブルであることを特徴とする請求項7または9記載の光ファイバケーブル監視装置。
【請求項11】
光ファイバケーブルの断面から複数の予備心線に対して測定用の光を出射して反射光の損失を測定する測定手段の測定結果に基づいて光ファイバケーブルの状態を監視する光ファイバケーブル監視方法において、
前記測定された光損失測定波形が規定値以上の損失を示したか否かを検出する工程と、
前記検出手段により検出された前記規定値以上の損失を示した前記予備心線の光ファイバケーブルにおける断面位置を算出する工程と、
前記測定手段による測定波形を時系列データとして管理し、この時系列データに基づいて任意区間で光ファイバケーブルの劣化を監視する工程と、
を含んでいることを特徴とする光ファイバケーブル監視方法。
【請求項12】
前記監視する工程で、測定対象となる光ファイバケーブルの経年劣化特性を求め、求められた経年劣化特性に基づいて劣化の度合いを診断することを特徴とする請求項11記載の光ファイバケーブル監視方法。
【請求項13】
前記診断では、予め記憶しておいた光ファイバケーブルの属性を参照し、診断対象以外の光ファイバケーブルの劣化の度合いを予測することを特徴とする請求項12記載の光ファイバケーブル監視方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−47109(P2006−47109A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−228271(P2004−228271)
【出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】