説明

光ファイバケーブル

【課題】昆虫の産卵管がノッチに挿入されてもこれを心線に到達させることなく、心線の損傷を抑えられると共に、外被を切裂きやすく心線取出し性にも優れる光ファイバケーブルを提供する。
【解決手段】ケーブルの外被部分に入口ノッチ部と先端ノッチ部からなるノッチを設け、入口ノッチ部をその向きが光ファイバ心線に向わないような配置の略くさび状断面形状とする一方、先端ノッチ部を入口ノッチ部から拡大させた断面形状とすることから、心線側に向う切裂きを誘発する隅部が入口ノッチ部側から隔離され、ノッチへの産卵管挿入に際しても産卵管を入口ノッチ部から心線側に向わせない状態を維持でき、ノッチを通じた外被への産卵管刺し入れによる光ファイバ心線の損傷抑止が図れる上、先端ノッチ部を起点として外被を手で引裂くことができ、光ファイバ心線の外被からの取出し作業を簡易に行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信用機器間配線に用いられる光ファイバケーブルに関し、特に、各機器等への接続の際における被覆除去作業(心線取出し作業)が容易で取扱い性に優れると共に、セミ等の昆虫が産卵管等を突き刺した場合でも心線の損傷を防止できる光ファイバケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
電力供給や情報通信に用いられる電線やケーブルは、一般に一又は複数本の心線を樹脂材等の外被で一括被覆を施した構造となっている。この電線やケーブルを各種機器に接続したり、接続用のコネクタを取付けたりする場合、端部で外被を除去し、内部の心線を露出させる必要がある。
【0003】
また、高速・広帯域の情報通信サービスで用いられる光ファイバケーブル、特に、光ファイバケーブル網を各通信加入者の宅内にまで接続するFTTH(Fiber To The Home)において、電柱等の架空集合部から各加入者宅内又はビル内に加入者数に対応した光ファイバ心線を引込むための架空光ファイバケーブル(ドロップケーブル)では、一般に一又は複数本の光ファイバ心線と補強線(テンションメンバ)を並列配置し、樹脂材等の外被で一括被覆を施した構造となっている。この光ファイバケーブルにおいても、通信用機器に接続したり、接続用のコネクタを取付けたりする場合、ケーブル端部で外被を除去し、内部の光ファイバ心線を露出させる必要がある。
【0004】
こうした光ファイバケーブルとして、外被表面に長手方向へ連続する複数の切裂き用溝(ノッチ)を設け、工具を可能な限り使用せずに外被を切裂いて光ファイバ心線を容易に露出させることを目指したものが従来から広く利用されている。こうしたノッチ付きの光ファイバケーブルで内部の光ファイバ心線を取出す際、ケーブル端部でノッチ位置を中心に外被を開くと、ノッチ先端と光ファイバ心線との間での切裂きが進行し、光ファイバ心線周囲から外被を外しやすくなる仕組みである。このような従来のノッチ付きの光ファイバケーブルの一例として、特開平10−301002号公報に開示されるものがある。
【0005】
一方、こうした架空光ファイバケーブルでは、セミ等の昆虫がケーブルを木の枝と誤認し、ノッチのような狭隙部分に産卵管を突き刺すことにより、ノッチの先に位置する光ファイバ心線を損傷させる問題が広く知られており、その対策が求められている。こうした問題に対し、近年、ケーブルにおけるノッチの形状を変えて、産卵管がノッチ内に突き刺されても光ファイバ心線まで到達しにくくしたものがあり、このような対策を施した従来の光ファイバケーブルの一例として、特開2006−163337号公報に開示されるものがある。
【0006】
この従来の光ファイバケーブルは、スリット状のノッチが中間部分で屈曲された形状となっており、屈曲部位より先のノッチ奥端部を光ファイバ心線に向わせるものの、ノッチの入口から屈曲部位まではその延長方向を光ファイバ心線からずらした形状とし、産卵管が突き刺されても光ファイバ心線まで到達させないことを目指したものとなっている。
【特許文献1】特開平10−301002号公報
【特許文献2】特開2006−163337号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の光ファイバケーブルは前記各特許文献に示される構成となっており、前記特許文献2に記載された従来の光ファイバケーブルの場合、ケーブルの外被が硬質であれば、ノッチの入口部分に挿入された産卵管が周囲の外被を変形させられず、産卵管はこの入口部分にとどまるか、外被におけるノッチ入口部分の延長上にある部位に突刺さり、ノッチの屈曲部分より先の心線に向いた先端部分に産卵管が達することはない。
【0008】
しかしながら、仮に外被が、手による引裂きが容易となる実用的な硬さとされている場合には、ノッチが屈曲しながらも全体としてスリット状に連続しているため、ノッチの入口部分に挿入されて屈曲部分に達した産卵管が、ノッチ周囲の外被を一部弾性変形させつつそのままスリット状のノッチに沿ってノッチ先端部に向う状態となりやすく、産卵管が撓みながらも屈曲部分を越え、心線に達する危険性が高いというという課題を有していた。
【0009】
また、この従来の光ファイバケーブルでは、ノッチが細いスリット状となっているため、一般に外被を押出被覆成形して一体のケーブルとされる実際のケーブル製造にあたって、外被の中に細く且つ屈曲したスリット状のノッチを連続的に生じさせていくことが技術的に難しく、加えて、ノッチ入口部分が外被表面の特別な位置に配置され、ケーブルの断面形状を規定する押出機での設定も難しくなっていることで、ケーブル製造に係るコストが上昇しやすいという課題を有していた。
【0010】
本発明は、前記課題を解消するためになされたもので、昆虫の産卵管がノッチに挿入されてもこれを心線に到達させることなく、心線の損傷を抑えられると共に、外被を切裂きやすく心線取出し性にも優れる光ファイバケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る光ファイバケーブルは、樹脂混合物を押出成形して形成される外被を有し、一又は複数本の光ファイバ心線、及び当該光ファイバ心線と並行させて一又は複数本配置される補強線の外周を、前記外被で一括被覆されてなる光ファイバケーブルにおいて、前記外被に、ケーブル長手方向に溝状に連続する二つのノッチが、前記光ファイバ心線中心又は心線群の中心位置について所定の対称関係となる配置でそれぞれ設けられ、前記ノッチが、前記外被表面寄りの入口ノッチ部と、前記光ファイバ心線寄りの先端ノッチ部との組合せ構造とされ、前記入口ノッチ部が、前記外被における前記光ファイバ心線から離れた端部の表面所定位置から、光ファイバ心線の側方に達する略くさび状の断面形状となる略溝状部とされ、且つ溝入口側から溝奥側へ向う延長線上に光ファイバ心線が存在しない位置関係として配置されてなり、前記先端ノッチ部が、前記入口ノッチ部の溝奥側端部から前記延長線に沿ってさらに進むにつれ拡大し、且つ前記光ファイバ心線寄りに位置する一つの隅部が先細状とされると共に当該先細になっていく向きを光ファイバ心線中心又は心線群の中心位置に向けられている所定断面形状の略溝状部とされてなるものである。
【0012】
このように本発明においては、ケーブルの外被部分に入口ノッチ部と先端ノッチ部からなるノッチを設け、入口ノッチ部をその向きが光ファイバ心線に向わないような配置の略くさび状断面形状とする一方、先端ノッチ部を入口ノッチ部から拡大させた断面形状とすることにより、心線側に向う切裂きを誘発する隅部が入口ノッチ部側から十分な空隙をもって隔離され、ノッチへの産卵管挿入に際して、ノッチ内面形状によって産卵管が心線に向けて誘導されることもなく、産卵管を入口ノッチ部から心線側に向わせない状態を維持でき、ノッチを通じた外被への産卵管刺し入れによる光ファイバ心線の損傷抑止が図れる上、先端ノッチ部を起点として外被を手で引裂くことができ、光ファイバ心線の外被からの取出し作業を簡易に行えることとなる。また、ノッチを適切で無理のない形状としていることで、押出成形によるケーブル製造も容易であり、ケーブルとしてのコストダウンが図れる。
【0013】
また、本発明に係る光ファイバケーブルは必要に応じて、前記先端ノッチ部が、前記一つの隅部を尖端とする断面V字状部分を有し、当該断面V字状部分が入口ノッチ部先端より心線寄りに位置すると共に、前記入口ノッチ部の略くさび状断面形状の開き角に対して、前記断面V字状部分の開き角を大きく設定されてなるものである。
【0014】
このように本発明においては、先端ノッチ部を心線中心に向うV字状断面部分を備える形状とし、且つその開き角を入口ノッチ部より大きくすることにより、心線側に向う切裂きを誘発する隅部周辺と入口ノッチ部とのなす角度が大きくなり、入口ノッチ部側からどのように産卵管が挿入されても産卵管先端を心線から離れた先端ノッチ部の内壁に向わせることができ、ノッチへの産卵管挿入に際して、産卵管を入口ノッチ部から心線側に向わせない状態を確実に維持でき、産卵管刺し入れによる光ファイバ心線の損傷を防止できると共に、先端ノッチ部のなすV字溝を起点として外被に容易に切れ目を生じさせることができ、光ファイバ心線の取出し作業をより速やかに行える。
【0015】
また、本発明に係る光ファイバケーブルは必要に応じて、前記光ファイバ心線と補強線を外被で被覆したケーブル本体の全体形状を、光ファイバ心線中心又は心線群の中心位置と補強線中心とを結ぶ線と平行な辺を有する矩形断面形状とし、前記ノッチが、入口部分を矩形断面のコーナ部に位置させ、前記光ファイバ心線中心又は心線群の中心位置と補強線中心とを結ぶ線を中心として左右対称に配置される前記光ファイバ心線と補強線を外被で被覆したケーブル本体の全体形状を、光ファイバ心線中心又は心線群の中心位置と補強線中心とを結ぶ線と平行な辺を有する略矩形断面形状とし、前記ノッチが、入口部分を矩形断面のコーナ部に位置させ、前記光ファイバ心線中心又は心線群の中心位置と補強線中心とを結ぶ線を中心として左右対称に配置されるものである。
【0016】
このように本発明においては、ノッチを光ファイバ心線を中心として左右対称に配設し、ケーブル断面形状をノッチに挟まれた端部分とそれ以外の部分とに大きく分けた構造とすることにより、ケーブルのノッチに挟まれた端部分を他部分に対し捻って引離すようにすれば、ノッチ先端の隅部を起点として外被に切れ目が生じることとなり、そのまま外被を引裂いて光ファイバ心線を容易に取出すことができ、外被から光ファイバ心線を取出す際に工具を一切使用することなく作業を迅速且つ容易に進められる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(本発明の第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る光ファイバケーブルを図1に基づいて説明する。本実施形態においては、光ファイバケーブルとして架空光ドロップケーブルの例について説明する。図1は本実施形態に係る光ファイバケーブルの横断面図である。
【0018】
前記図1において本実施形態に係る光ファイバケーブル1は、二つの光ファイバ心線11及びこの光ファイバ心線11と並行させて二本配置される補強線12の外周を外被15で一括被覆される構造のケーブル本体10と、このケーブル本体10と同一の外被15を有する支持線16とを、ネック部18で一体化した形状として形成される構成である。
【0019】
前記ケーブル本体10は、所定配合比のポリエチレン樹脂混合物からなる外被15に被覆された二心の光ファイバ心線11と、これら光ファイバ心線11の両側に配設されるFRP製の二本の補強線12とを備え、光ファイバ心線11群の中心位置と補強線12中心とを結ぶ線と平行な辺を有する矩形断面形状として形成される構成である。また、このケーブル本体10の外被15部分には、ケーブル長手方向に溝状に連続する所定断面形状の二つのノッチ13が、光ファイバ心線11群の中心位置について左右対称となる配置、詳細には、光ファイバ心線11群の中心位置と補強線12中心とを結ぶ線を中心として左右対称となる配置で形成される。このノッチ13は、ケーブル本体10における適度な屈曲性を付与する働きを有する他、ノッチ13の外側に外被15の薄い突出片部分を生じさせており、管路入線等の際にこのノッチ13の外側にある外被15の薄い突出片部分が撓むことで、管路内壁や既設ケーブルへの接触面積を極力小さくして摩擦係数を小さくすることができる。
【0020】
前記ノッチ13は、前記外被15表面寄りの入口ノッチ部13aと、前記光ファイバ心線11寄りの先端ノッチ部13bとの組合せ構造とされ、入口ノッチ部13aに対して先端ノッチ部13bを拡大させた断面形状とされる構成である。
【0021】
前記入口ノッチ部13aは、前記外被15の矩形断面における前記光ファイバ心線11から離れたコーナ部の表面から、光ファイバ心線11の側方に達する略くさび状の断面形状となる略溝状部とされ、且つ溝入口側から溝奥側へ向う延長線上に光ファイバ心線11が存在しない位置関係として配置される構成である。この入口ノッチ部13aと、外被15の矩形断面における一端部14の辺とのなす角度αについては、ケーブル製造上の制約から約70°以下にする必要があるが、この角度αが約55°になるとちょうどノッチの延長線上に光ファイバ心線が存在する位置関係となり、さらに小さい角度になると外被の引裂きが困難になることから、この角度αは約70°以下で且つ55°より大きくするのが好ましい。
【0022】
前記先端ノッチ部13bは、前記入口ノッチ部13aの溝奥側端部から前記延長線に沿ってさらに進むにつれ拡大し、且つ前記光ファイバ心線11寄りに位置する一つの隅部13cが先細状とされると共にこの先細になっていく向きを光ファイバ心線11群の中心位置に向けられている所定断面形状の略溝状部とされる構成である。
【0023】
この先端ノッチ部13bにおける前記隅部13cとその周辺部分は断面V字状をなしており、この断面V字状部分は入口ノッチ部13a先端より光ファイバ心線11寄りに位置すると共に、そのV字の開き角を入口ノッチ部13aの略くさび状断面形状の開き角より大きく設定される。この隅部13cを尖端とするV字の開き角は、ケーブルの製造性や外被15の引裂き性を考慮して30°〜140°の範囲に設定するのが好ましい。
【0024】
なお、ノッチ13は、識別用表示の配置やケーブル取扱い性の点で、ケーブル本体10のコーナ部に溝入口部分が位置するよう配置するのが望ましいが、これに限らず、溝入口部分がケーブル本体10の光ファイバ心線11から離れた端部表面に位置して、溝入口側から溝奥側へ向う延長線上に光ファイバ心線が存在しないようにすれば、いずれの位置でもかまわない。
前記支持線16は、鋼製のメッセンジャーワイヤ17をケーブル本体10と同じ外被15で被覆して構成される。
【0025】
これらケーブル本体10及び支持線16に用いられる外被15は、高密度ポリエチレン等のオレフィン系樹脂をベース樹脂とし、これに難燃剤、酸化防止剤や滑剤、顔料等を添加して樹脂混合物を生成し、この樹脂混合物を光ファイバ心線11、補強線12及びメッセンジャーワイヤ17の周囲に押出被覆成形することで得られるものである。
【0026】
この外被成形過程では、外被15となる樹脂混合物を混練生成し、この樹脂混合物を押出機において所定速度の押出速度で光ファイバ心線11や補強線12、及びメッセンジャーワイヤ17の周囲に押出被覆することとなるが、押出の際に同時に外被15中に生じさせるノッチ13を、入口ノッチ部13aと先端ノッチ部13bの組合せとし、入口ノッチ部13aを略くさび状断面形状に、先端ノッチ部13bを入口ノッチ部13aから拡大させた断面形状としていることで、ノッチの生成に無理が無く、押出成形によるケーブル製造が容易に行える。
【0027】
そして、得られたノッチ13では、入口ノッチ部13aの溝深さ方向が光ファイバ心線11からずれていることに加え、光ファイバ心線11側に向う外被15の切裂きを誘発する先端ノッチ部13bの隅部13cが入口ノッチ部13a側から十分な空隙をもって隔離されており、ノッチ13に対しセミ等の昆虫が産卵管を挿入した場合でも、ノッチ内面形状によって産卵管が光ファイバ心線11に向けて誘導されることはなく、産卵管が入口ノッチ部13aから先端ノッチ部13bの心線寄り部分に向うのを確実に抑えられ、ノッチ13を通じた外被15への昆虫の産卵管刺し入れによる光ファイバ心線11の損傷被害を防止できる。
【0028】
次に、本実施形態に係る光ファイバケーブルの被覆切裂き・心線露出工程について説明する。まず、二つのノッチ13に挟まれた一端部14とそれ以外の部分とに大きく分かれた構造となっているケーブル本体10のうち、ノッチ13に挟まれた一端部14を他部分に対して捻って引離すようにすれば、先端ノッチ部13bの隅部13cを起点として外被15に切れ目が生じることとなり、ケーブル本体10のノッチ13に挟まれた一端部14が他部分に対し離れて外被15を引裂いた状態が得られることとなる。これにより、外被15内から光ファイバ心線11を露出させて接続等の作業のために取出すことができる。この外被15を引裂いて光ファイバ心線11を取出すまでの過程で、工具を一切使用せずに済ませることとなり、作業を迅速且つ容易に進められると共に、光ファイバ心線11に対して損傷などの悪影響を与えることはほとんどない。
【0029】
こうしてノッチ13を利用して外被15の引裂きを進行させ、外被15と光ファイバ心線11とを十分接続作業が行える長さにわたって分離したら、分離した外被15を切離し、露出状態になった光ファイバ心線11と、他のケーブルにおける光ファイバ心線やコネクタとの接続を行えば、作業完了となる。
【0030】
このように、本実施形態に係る光ファイバケーブルは、ケーブル本体10の外被15に入口ノッチ部13aと先端ノッチ部13bからなるノッチ13を設け、入口ノッチ部13aをその向きが光ファイバ心線11に向わないような配置の略くさび状断面形状とする一方、先端ノッチ部13bを入口ノッチ部13aから拡大させた断面形状とすることから、心線側に向う切裂きを誘発する隅部13cが入口ノッチ部13a側から十分な空隙をもって隔離され、ノッチ13への産卵管挿入に際して、ノッチ13内面形状によって産卵管が心線に向けて誘導されることもなく、産卵管を入口ノッチ部13aから心線側に向わせない状態を維持でき、ノッチ13を通じた外被15への産卵管刺し入れによる光ファイバ心線11の損傷抑止が図れる上、先端ノッチ部13bを起点として手で外被15に切れ目を作って引裂くことができ、光ファイバ心線11の外被15からの取出し作業を簡易に行えることとなる。
【0031】
(本発明の第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態を図2に基づいて説明する。本実施形態においても架空光ドロップケーブルの例について説明する。図2は本実施の形態に係る光ファイバケーブルの横断面図である。
前記図2において本実施形態に係る光ファイバケーブル2は、前記第1の実施形態同様、光ファイバ心線21と補強線22とを外被25で被覆したケーブル本体20と、支持線26とを備える一方、異なる点として、外被25表面において長手方向に連続する複数のノッチ23を、光ファイバ心線21を中心とした回転対称位置に配置した構成を有するものである。
【0032】
前記ケーブル本体20は、前記第1の実施形態同様、樹脂混合物からなる外被25に被覆された二心の光ファイバ心線21と、この光ファイバ心線21の両側に配設される二本の補強線22とを備え、光ファイバ心線21群の中心位置と補強線22中心とを結ぶ線と平行な辺を有する矩形断面形状として形成される一方、異なる点として、外被25部分にケーブル長手方向に連続させて設けられる二つのノッチ23が、光ファイバ心線21群の中心位置について回転対称となる配置とされる構成を有するものである。
【0033】
このノッチ23は、前記第1の実施形態同様、入口ノッチ部23aと先端ノッチ部23bとの組合せ構造とされる一方、異なる点として、入口ノッチ部23aが、外被25の矩形断面でちょうど対向位置となるコーナ部から、それぞれ光ファイバ心線21の側方に達するものとされ、この入口ノッチ部23aに連続する形で先端ノッチ部23bも配置される構成を有するものである。
【0034】
次に、本実施形態に係る光ファイバケーブルの被覆切裂き・心線露出工程について説明する。まず、ケーブル本体20におけるノッチ23に爪やニッパ等の先端を差込んで開き、必要に応じてニッパ等の工具でノッチ23に切込みを入れた上で、ノッチ23が大きく開くようにこのノッチ23を挟むケーブル本体20の一方を他方から離れる向きに引張り、外被25をノッチ23において二つに分け、そのまま光ファイバ心線21が接続作業を十分行える長さ分露出するまで外被25を引裂いていく。外被25の引裂きに伴う光ファイバ心線21における損傷などの悪影響はほとんどない。光ファイバ心線21を十分接続作業が行える長さにわたり露出させたら、前記第1の実施形態同様、分離した外被25を切離し、露出状態になった光ファイバ心線21と、他のケーブルにおける光ファイバ心線やコネクタとの接続を行えば、作業完了となる。
【0035】
なお、前記各実施の形態に係る光ファイバケーブルにおいて、ケーブル本体10、20内に光ファイバ心線11、21が二本縦に並べて配置される構成としているが、これに限らず、光ファイバ心線の数やその並べ方はケーブル本体に適切に収められる範囲で適宜設定することができる。また、光ファイバ心線についても、単心の光ファイバ心線を一又は複数本配置する構成に限らず、複数本の光ファイバが共通被覆で一体となった束状やテープ状の心線を一又は複数組配置する構成とすることもできる。
【0036】
また、前記各実施の形態に係る光ファイバケーブルにおいて、メッセンジャーワイヤ17、27を外被15、25で被覆した支持線16、26がケーブル本体10、20と一体化されて光ファイバケーブル1、2をなす構成としているが、これに限らず、支持線を用いず、光ファイバ心線と補強線を外被で被覆し、表面にノッチを設けたケーブル本体部分のみで光ファイバケーブルをなす構成とすることもでき、架空状態での強度がそれほど必要でない場合に簡略な構造を採用することでコストダウンが図れると共に、宅内引込時等の管内挿入作業への移行も、支持線切離し等の手間なく容易且つ速やかに行え、切離し後のネック部の残り等も存在しないことで摩擦抵抗を減らしてスムーズに作業が行える。
【0037】
さらに、前記各実施の形態に係る光ファイバケーブルにおいて、補強線を光ファイバ心線及びメッセンジャーワイヤと直線上に並ぶ配置として二本配設する構成としているが、これに限らず、ケーブルの用途や設置環境に応じて光ファイバ心線に対する補強線の配置位置や配置数を適宜変更してもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る光ファイバケーブルの横断面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る光ファイバケーブルの横断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 光ファイバケーブル
10、20 ケーブル本体
11、21 光ファイバ心線
12、22 補強線
13、23 ノッチ
13a、23a 入口ノッチ部
13b、23b 先端ノッチ部
13c 隅部
14 一端部
15、25 外被
16、26 支持線
17、27 メッセンジャーワイヤ
18 ネック部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂混合物を押出成形して形成される外被を有し、一又は複数本の光ファイバ心線、及び当該光ファイバ心線と並行させて一又は複数本配置される補強線の外周を、前記外被で一括被覆されてなる光ファイバケーブルにおいて、
前記外被に、ケーブル長手方向に溝状に連続する二つのノッチが、前記光ファイバ心線中心又は心線群の中心位置について所定の対称関係となる配置でそれぞれ設けられ、
前記ノッチが、前記外被表面寄りの入口ノッチ部と、前記光ファイバ心線寄りの先端ノッチ部との組合せ構造とされ、
前記入口ノッチ部が、前記外被における前記光ファイバ心線から離れた端部の表面所定位置から、光ファイバ心線の側方に達する略くさび状の断面形状となる略溝状部とされ、且つ溝入口側から溝奥側へ向う延長線上に光ファイバ心線が存在しない位置関係として配置されてなり、
前記先端ノッチ部が、前記入口ノッチ部の溝奥側端部から前記延長線に沿ってさらに進むにつれ拡大し、且つ前記光ファイバ心線寄りに位置する一つの隅部が先細状とされると共に当該先細になっていく向きを光ファイバ心線中心又は心線群の中心位置に向けられている所定断面形状の略溝状部とされてなることを
特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項2】
前記請求項1に記載の光ファイバケーブルにおいて、
前記先端ノッチ部が、前記一つの隅部を尖端とする断面V字状部分を有し、当該断面V字状部分が入口ノッチ部先端より心線寄りに位置すると共に、前記入口ノッチ部の略くさび状断面形状の開き角に対して、前記断面V字状部分の開き角を大きく設定されてなることを
特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載の光ファイバケーブルにおいて、
前記光ファイバ心線と補強線を外被で被覆したケーブル本体の全体形状を、光ファイバ心線中心又は心線群の中心位置と補強線中心とを結ぶ線と平行な辺を有する矩形断面形状とし、
前記ノッチが、入口部分を矩形断面のコーナ部に位置させ、前記光ファイバ心線中心又は心線群の中心位置と補強線中心とを結ぶ線を中心として左右対称に配置されることを
特徴とする光ファイバケーブル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−63880(P2009−63880A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−232648(P2007−232648)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(000207089)大電株式会社 (67)
【Fターム(参考)】