説明

光ファイバケーブル

【課題】既存の配線に簡単に接続することができ、小径に曲げて配線することが可能な光ファイバケーブルを提供する。
【解決手段】 光ファイバ心線2と、光ファイバ心線2の延伸方向に光ファイバ心線2を挟んで互いに平行に延伸する樹脂材料からなる一対の抗張力体10と、延伸方向に垂直に切った断面において光ファイバ心線2及び一対の抗張力体10を結ぶ線上に配置され、延伸方向に一対の抗張力体10を挟んで互いに平行に延伸する塑性変形が可能な金属材料からなる一対の配線補助体16と、光ファイバ心線2及び一対の抗張力体10を被覆する光エレメント部4、一対の配線補助体16のそれぞれを被覆する一対の配線補助部6、光エレメント部4と一対の配線補助部6とを連続的又は間欠的に連結する連結部8を有する外被12とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加入者用光ファイバケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
加入者宅や、ビルあるいはマンション等の構内に配線される光ファイバケーブルとして、標準厚さ1.6mm×標準幅2mmの矩形のインドアケーブルが開発されている(特許文献1参照)。開発されたインドアケーブルは、管路の隙間に通線して使用するのに適した形状及び寸法を有している。しかし、角部を含む壁面やドア等の隙間にインドアケーブルを配線するのは困難である。インドアケーブルに用いられる抗張力体が鋼線であり、硬すぎて小径曲げを行うことが困難である。また、小径に曲げたとしても、光ファイバ心線に過剰な歪が加わり、破断寿命が短くなってしまう。
【0003】
最近、小径に曲げても損失増加が小さい空孔アシスト型光ファイバが開発されている。例えば、国際電気通信連合電気通信標準化セクタ(ITU−T)G.657.B3で規格化された光ファイバは、曲げ半径が5mmでも損失増加量が0.15dB/ターン(波長1.55μm)以下と非常に小さな曲げにも対応することができる。
【0004】
空孔アシスト型光ファイバを用いて、ドアや引き戸、窓を通す配線が可能な光ファイバコードが提案されている(特許文献2参照)。提案された光ファイバコードでは、抗張力体として塑性変形が容易な金属線が用いられている。そのため、小径に曲げたときに曲げ形状を保持しやすい。また、光ファイバに加わる歪を緩和するため、角部の出隅や入隅の稜線に対して斜めに沿わせて配線することが提案されている。また、小径曲げ時に光ファイバに加わる歪を低減するため、クラッド径を80μm以下にすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−33745号公報
【特許文献2】特開2009−128495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、小径に曲げて抗張力体を塑性変形させると、光ファイバ心線にキンクが発生しやすく、外傷や破断等のダメージを与えてしまう虞がある。また、クラッド径が80μm以下の光ファイバを用いると、一般的に使用されているクラッド径が125μmの光ファイバに較べて、引張強度が低下し、取り扱い性が悪くなる。また、提案された光ファイバコードは、現在実用化されているインドアケーブルと形状や構造が大きく異なり、インドアケーブル用の接続部材が使用できない。そのため、既存の配線に接続する際には、新たな接続部材等が必要となり、作業時間やコストが増大する。
【0007】
上記問題点を鑑み、本発明の目的は、既存の配線に簡単に接続することができ、小径に曲げて配線することが可能な光ファイバケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、光ファイバ心線と、光ファイバ心線の延伸方向に光ファイバ心線を挟んで互いに平行に延伸する樹脂材料からなる一対の抗張力体と、延伸方向に垂直に切った断面において光ファイバ心線及び一対の抗張力体を結ぶ線上に配置され、延伸方向に一対の抗張力体を挟んで互いに平行に延伸する塑性変形が可能な金属材料からなる一対の配線補助体と、光ファイバ心線及び一対の抗張力体を被覆する光エレメント部、一対の配線補助体のそれぞれを被覆する一対の配線補助部、光エレメント部と一対の配線補助部とを連続的又は間欠的に連結する連結部を有する外被とを備える光ファイバケーブルが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、既存の配線に簡単に接続することができ、小径に曲げて配線することが可能な光ファイバケーブルを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態に係る光ファイバケーブルの一例を示す上面図である。
【図2】図1に示した光ファイバケーブルのA−A断面を示す概略図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る光ファイバケーブルの分解時の各部材の長さの関係の一例を示す概略図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る光ファイバケーブルの他の例を示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る光ファイバケーブルの他の例を示す断面図である。
【図6】比較例による光ファイバケーブルの一例を示す断面図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る光ファイバケーブルの曲げ試験に用いた曲げ型の概略図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る光ファイバケーブルの曲げ試験の結果の一例を示す表である。
【図9】本発明の実施の形態に係る光ファイバケーブルに用いる抗張力体の曲げ試験の結果の一例を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下図面を参照して、本発明の形態について説明する。以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号が付してある。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0012】
又、以下に示す本発明の実施の形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0013】
本発明の実施の形態に係る光ファイバケーブルは、図1及び図2に示すように、光ファイバ心線2、一対の抗張力体10、一対の配線補助体16、及び外被12を備える。外被12は、光ファイバ心線2及び一対の抗張力体10を被覆する光エレメント部4、一対の配線補助体16のそれぞれを被覆する一対の配線補助部6、及び光エレメント部と一対の配線補助部とを連続的又は間欠的に連結する連結部8を有する。外被12の光エレメント部には、光ファイバ心線2を挟んで互いに対向するノッチ14が設けられる。
【0014】
一対の抗張力体10は、光ファイバ心線2の延伸方向に光ファイバ心線2を挟んで互いに平行に延伸する。一対の配線補助体16は、光ファイバ心線2の延伸方向に一対の抗張力体10を挟んで互いに平行に延伸する。光ファイバ心線2の延伸方向に垂直に切った断面(以下、「垂直断面」と称す。)において、光ファイバ心線2、抗張力体10及び配線補助体16は一直線上に配置される。
【0015】
光ファイバ心線2は、クラッド径が125μmの光ファイバを紫外線硬化樹脂で被覆した単心型心線である。抗張力体10及び配線補助体16の断面形状は、それぞれ略円形である。光ファイバ心線2の直径Daは、0.25mmである。抗張力体10の直径Dbは、0.5mm以下、0.25mm以上の範囲である。配線補助体16の直径Dcは、約0.4mm〜約0.65mmである。外被12の光エレメント部4及び配線補助部6は、それぞれ垂直断面形状が角丸長方形である。
【0016】
光ファイバケーブルの垂直断面において、光ファイバ心線2及び抗張力体10を結ぶ線に平行な方向及び垂直な方向の寸法をそれぞれ、幅及び厚さとする。光ファイバケーブルの幅Wtは、例えば約7.6mmである。光エレメント部4の幅Wa及び厚さTaは、例えば、それぞれ2mm±0.1mm及び1.6mm±0.1mmである。配線補助部6の幅Wb及び厚さTbは、例えば、それぞれ約2.5mm及び約1.6mmである。連結部8の厚さは、光エレメント部4と配線補助部6とが容易に分離できるように光エレメント部4及び配線補助部6より薄くする。
【0017】
光ファイバ心線2として、単心型心線を用いているが、複数の心線を用いてもよい。また、光ファイバ心線2として、例えば、2心、4心、あるいは8心等の複数の心線を有するテープ心線を用いてもよく、単心光コード、2心光コード、あるいは光テープコード等を用いてもよい。
【0018】
抗張力体10として、アラミド、超高分子ポリエチレン繊維(登録商標:ダイニーマ)、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維(登録商標:ザイロン)、高強力ポリアリレート繊維(登録商標:ベクトラン)等の樹脂材料を用いた繊維強化プラスチック(FRP)が用いられる。特に、アラミドFRPは、耐座屈性等の機械的特性を有するため、好適である。
【0019】
配線補助体16として、銅(Cu)、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)等の金属や各種合金、銅クラッドアルミニウム等の複合材料等の塑性変形が可能な材料が使用可能である。通常、光ファイバケーブルは室内の配線に用いられるため、室温、例えば0℃〜50℃の温度範囲で、延展性に優れ、塑性変形が容易な金属材料が望ましい。特に、鉄線は、広く工業的に使用され、容易に、且つ安価に入手することができるため好適な材料である。なお、表面が酸化されやすい金属線を用いる場合、酸化防止膜を金属線表面に施すことが望ましい。
【0020】
外被12としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレンエチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレンプロピレン共重合体(EP)等のポリオレフィン(PO)樹脂が用いられる。
【0021】
実施の形態に係る光ファイバケーブルでは、図2に示したように、塑性変形が可能な配線補助体16が、光ファイバケーブルの幅方向の両端に配置される。そのため、光ファイバケーブルの厚さ方向、即ち光ファイバ心線2、抗張力体10及び配線補助体16を結ぶ線の直交方向に容易に小径に曲げることができる。更に、配線補助体16の塑性変形により、光ファイバケーブルを小径に曲げた状態に保持することができる。また、光エレメント部4では、光ファイバ心線2の近傍に耐座屈性に優れた抗張力体10が配置されている。そのため、光ファイバケーブルを小径に曲げても、光ファイバ心線2のキンク、断線等を防止することができる。したがって、壁面の角部やドア枠の角部等において、角部の稜線に直交する方向に小径に曲げて配線することができる。
【0022】
また、実施の形態に係る光ファイバケーブルは、垂直断面における光エレメント部4及び配線補助部6の厚さは、どちらも2mm以下である。一般的なドア枠とドアとの間には約2mmの隙間があるので、ドアの隙間を容易に配線することができる。
【0023】
また、垂直断面において、光ファイバ心線2及び一対の抗張力体10を結ぶ線に平行な光エレメント部4及び一対の配線補助部6のそれぞれの一方の面を、同一のレベルにすることが望ましい。壁面に光ファイバケーブルを配線する場合、光エレメント部4及び配線補助部6の同一レベルの面全体を壁面に接触させることができる。接触面積が大きくなるため、両面テープ等による壁面への固定が容易となる。
【0024】
また、光エレメント部4は、幅Waを約2mm、厚さを約1.6mmとすれば、標準のインドアケーブルと同じ寸法となる。光ファイバケーブルを宅内に引き込んで、連結部8を切り裂いて一対の配線補助部6から光エレメント部4を分離すれば、現行の接続部材や把持部材を取り付けることができる。
【0025】
また、屋内で配線された光ファイバケーブルを端末機器内に接続して配線する場合、抗張力体10として、鋼線等の導電体を用いると、端末機器内での電磁誘導による障害が発生してしまう。したがって、抗張力体10としては、アラミドFRP等の無誘導材料を用いることが望ましい。金属材料等の配線補助体16を有する配線補助部6は、端末機器への接続箇所、あるいは複雑な配線が不要になる位置で光ファイバケーブルから分離して除去すればよい。配線補助体16が除去された光ファイバケーブルの光エレメント部4には、光ファイバ心線2と無誘導材料からなる抗張力体10とが含まれる。したがって、端末機器内において、電磁誘導を防止し、機械的特性を確保することができる。
【0026】
上記のように、実施の形態では、配線補助体16を塑性変形させ、抗張力体10には耐座屈性を有するアラミドFRPを用いている。したがって、直径が125μmの光ファイバ心線2を用いても、ダメージを与えることなく小径に曲げることができる。更に、図3に示すように、連結部8及びノッチ14を切り裂いて、配線補助部6、光エレメント部4、及び光ファイバ心線2をそれぞれ分離する。このとき、光ファイバ心線2、光エレメント部4、及び配線補助部6の延伸方向における長さLa、Lb、Lcを、La>Lb>Lcとすることが望ましい。光ファイバ心線2には、配線補助部6に対して余長(La−Lc)が設けられているので、小径曲げ時に光ファイバ心線2に加わる歪を低減することができる。また、光エレメント部4が配線補助部6より長く、光ファイバ心線2より短い光エレメント部4を設けることにより、小径曲げ時に、光ファイバ心線2が光ファイバケーブル端面から突き出すことを抑制することができる。
【0027】
図2に示したように、光エレメント部4及び配線補助部6は、断面が角丸長方形である。しかし、光エレメント部4及び配線補助部6の形状は限定されない。図4に示すように、傾斜端面を有する台形状の配線補助部6aを用いてもよい。例えば、台形状の光ファイバケーブルの底面の幅Wtを約7.6mm、上面の幅Wsを約4.5mmとする。光ファイバケーブルの底面が壁面に接するように配線し、上面側からカバーテープ等により貼り付けて固定する。一対の配線補助部6aの傾斜端面により、カバーテープの浮き上がりを防止することができる。
【0028】
また、抗張力体10及び配線補助体16は、断面が略円形である。しかし、抗張力体10及び配線補助体16の断面形状は限定されず、楕円形や矩形であってもよい。
【0029】
実施の形態に係る光ファイバケーブルについて、小径曲げ評価の曲げ試験を行った。試料1は、図1に示した光ファイバケーブルである。光ファイバケーブルの幅Wtは約7.6mmで、光エレメント部4の幅Wa及び厚さTaは、それぞれ約2mm及び約1.6mmである。試料2は、図2に示した光ファイバケーブルである。光ファイバケーブルの底面及び上面の幅Wt、Wsは、それぞれ約7.6mm及び約4.5mmで、光エレメント部4の幅Wa及び厚さTaは、それぞれ約2mm及び約1.6mmである。
【0030】
試料3は、図5に示すように、光エレメント部4aに光ファイバテープ心線2aが配置されている。光ファイバケーブルの幅Wtは約6.6mmで、光エレメント部4aの幅Wa及び厚さTaは、それぞれ約3mm及び約1.6mmである。
【0031】
試料1〜3では、抗張力体10として、直径が約0.4mmのアラミドFRPが用いられている。また、配線補助体16として、直径が約0.5mmの鉄線が用いられている。
【0032】
また、図6に示すように、光ファイバ心線2、一対の抗張力体10、並びに、光ファイバ心線2及び一対の抗張力体10を被覆する外被12を有する光ファイバケーブルが比較例として用いられている。比較例の光ファイバケーブルの幅Wp及び厚さTpは、それぞれ約2mm及び約1.6mmである。比較例の光ファイバケーブルでは、抗張力体10として、試料4では約0.5mmのアラミドFRP、試料5では約0.5mmの鋼線、試料6では約0.5mmmの鉄線がそれぞれ用いられている。
【0033】
曲げ試験は、図7に示すように、90度の角部を4箇所設けた曲げ型を用いて行った。曲げ型の外枠20と内枠22との間に設けられた2mmの隙間24に光ファイバケーブルが配線される。角部の出隅及び入り隅の曲率半径Rは2mmである。実際の配線作業においては、マンドレルや曲げ型を用いずに光ファイバケーブルを直接配線経路に合わせて手作業で曲げることも多い。したがって、曲げ試験では、曲げ型の角部より小さな径で光ファイバケーブルを予め手で曲げて形状を整え、曲げ型に挟みこみながら配線を行なっている。
【0034】
図8に、曲げ試験の結果を示す。図8の表に示すように、試料1〜3では、いずれも曲げ試験による光ファイバ心線2の断線はない。曲げ型に配線した前後で、光損失量を測定波長1.55μmで測定している。試料1〜3のいずれも、損失増加量は0.1dB未満であり、良好な結果が得られている。また、試料1〜3の光ファイバケーブルは、小径に曲げやすく、曲げ形状も保持することができ、小径曲げの作業性が良好であることを確認している。
【0035】
比較例である試料4では、抗張力体10がアラミドFRPであり、手で光ファイバケーブルを曲げる際、かなり小さな曲げ角度で曲げなくては曲げ形状を保持することができない。そのため、光ファイバケーブルをきつく曲げすぎたことにより、光ファイバ心線2の断線、及び抗張力体10の座屈が確認されている。試料5では、抗張力体10が鋼線であり、剛直なため、曲げにくく作業性が悪い。また、光ファイバケーブルに曲げ形状を付けようとすると、非常に小さな曲げ角度で、鋭角に曲げなければ曲げ形状を保持できない。そのため、曲げ作業中に、光ファイバ心線2の断線が発生している。試料6では、抗張力体10が鉄線であり、容易に曲げることができ、曲げ形状の保持もできる。しかし、手作業で誤って曲げ過ぎてしまうことから、光ファイバ心線2の断線が頻発している。
【0036】
このように、配線補助体16が設けられてない比較例による光ファイバケーブルでは、小径曲げにより光ファイバ心線2が断線しやすい。一方、実施の形態に係る光ファイバケーブルでは、アラミドFRPの抗張力体10に加えて、鉄線の配線補助体16が設けられている。そのため、光ファイバケーブルを配線経路の角部よりも小さな径で鋭角に手作業で曲げた形状を保持することができる。また、光エレメント部4に抗張力体10が設けられているため、光ファイバケーブルを極度に曲げ過ぎてしまうことを防止することができ、光ファイバケーブルを配線経路の角部に合わせて曲げ戻しすることもできる。また、抗張力体10は光ファイバ心線2の近傍に設けられているため、小径曲げによる光ファイバ心線2へのダメージを低減することができる。その結果、光ファイバ心線2の断線を防止することが可能となる。
【0037】
抗張力体10に用いるアラミドFRPの耐座屈性を評価する曲げ試験を行った。耐座屈性は、図6に示した構造の光ファイバケーブルを半径rのマンドレルで曲げて評価している。抗張力体10の中心から、マンドレルに接する光ファイバケーブルの外被面までの距離をtとすると、抗張力体10の中心の曲げ半径(以下、中心曲げ半径と称す。)は、(r+t)である。
【0038】
図9に、耐座屈性の評価結果を示す。図9の表に示すように、抗張力体10として、直径が0.5mmのアラミドFRPを用いると、中心曲げ半径(r+t)が3.3mm以上では、座屈の発生はない。中心曲げ半径(r+t)が3.3mmのとき、光ファイバケーブルの厚さが1.6mmであるので、マンドレルの半径、即ち曲げ半径は2.5mmとなる。中心曲げ半径(r+t)が3mm以下では、座屈が発生する。中心曲げ半径(r+t)が3mm〜2.3mmと小さくなるに従い、座屈発生頻度が17%から66%に増加する。
【0039】
抗張力体10に直径が0.4mmのアラミドFRPを用いると、中心曲げ半径(r+t)が2.3mm〜4.3mmの試験範囲で座屈の発生はない。中心曲げ半径(r+t)が2.3mmのとき、曲げ半径は1.5mmである。
【0040】
このように、抗張力体10として直径が0.5mmのアラミドFRPを用いる場合、曲げ半径は2.5mm以上としなければならない。2mm以下の曲げ小径に曲げる場合は、抗張力体10として直径が0.4mmのアラミドFRPを用いればよい。実際の配線作業では、必ずしもマンドレルに沿って光ファイバケーブルを曲げるわけではない。角部での配線では、美観を損なうことなく仕上げるためには、予め、光ファイバケーブルを手で角部よりも小さな半径で鋭角に曲げておく作業が必要となる。その際、直径が0.5mmのアラミドFRPを抗張力体10として用いると、抗張力体10を座屈させてしまう虞がある。そのため、抗張力体10としては、直径が0.5mm以下、望ましくは0.4mm以下のアラミドFRPを用いる。
【0041】
また、抗張力体10の直径は、0.25mm以上が望ましい。抗張力体10の直径が、0.25mm未満の場合、光エレメント部4の外被12の温度変化による伸縮を抗張力体10で抑える事ができず、低温下で伝送損失が劣化する事があるためである。
【0042】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明の実施の形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者にはさまざまな代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係わる発明特定事項によってのみ定められるものである。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、加入者宅用光ファイバケーブルに適用することができる。
【符号の説明】
【0044】
2…光ファイバ心線
4…光エレメント部
6…配線補助部
8…連結部
10…抗張力体
12…外被
16…配線補助体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ心線と、
前記光ファイバ心線の延伸方向に前記光ファイバ心線を挟んで互いに平行に延伸する樹脂材料からなる一対の抗張力体と、
前記延伸方向に垂直に切った断面において前記光ファイバ心線及び前記一対の抗張力体を結ぶ線上に配置され、前記延伸方向に前記一対の抗張力体を挟んで互いに平行に延伸する塑性変形が可能な金属材料からなる一対の配線補助体と、
前記光ファイバ心線及び前記一対の抗張力体を被覆する光エレメント部、前記一対の配線補助体のそれぞれを被覆する一対の配線補助部、前記光エレメント部と前記一対の配線補助部とを連続的又は間欠的に連結する連結部を有する外被
とを備えることを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項2】
前記一対の抗張力体が、標準径が0.5mm以下、0.25mm以上の範囲のアラミド繊維強化プラスチックであることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバケーブル。
【請求項3】
前記金属材料が、鉄であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光ファイバケーブル。
【請求項4】
前記一対の配線補助部、前記光エレメント部、及び前記光ファイバ心線をそれぞれ分離したとき、前記延伸方向における長さは、前記光エレメント部が前記一対の配線補助部より長く、且つ、前記光ファイバ心線が前記光エレメント部よりも長いことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光ファイバケーブル。
【請求項5】
前記垂直に切った断面において、前記光ファイバ心線及び前記一対の抗張力体を結ぶ線に直交する方向の前記光エレメント部の厚さが、2mm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光ファイバケーブル。
【請求項6】
前記垂直に切った断面において、前記光ファイバ心線及び前記一対の抗張力体を結ぶ線に平行な前記光エレメント部及び一対の配線補助部のそれぞれの一方の面が、同一のレベルにあることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光ファイバケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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