説明

光ファイバケーブル

【課題】近距離の海底無中継システム、浅海、河川、または湖水を横断して使用する安価で簡易な構造の光ファイバケーブルを提供する。
【解決手段】光ファイバケーブル1は、光ファイバ部と該光ファイバ部の周囲を金属製の複数の扇形の分割個片2aによって構成される円筒状の耐圧層2と前記耐圧層の周囲を金属製テープで縦添えに一箇所で上下に重ね合わせて形成される接触部7を含む金属被覆層3と前記金属被覆層の周囲を絶縁材で被覆する絶縁被覆層4とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中用光ファイバケーブルの防水および耐圧構造に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】特開2002−196200号公報
【特許文献2】特開2005−292838号公報
【背景技術】
【0003】
近年、世界各地に情報通信技術が広まり、世界各地をネットワーク化すべく長距離光ファイバケーブルが敷設されている。その中で、光ファイバを内蔵した海底ケーブル、すなわち光海底ケーブルは、深海の過酷な環境下に置かれるため、その水深の水圧に耐えられる耐圧特性、敷設・回収に耐えられる引張特性、浸水に対する防水特性および走水防止(水がケーブルの長手方向に移動するのを防止する)特性が要求される。このため、光海底ケーブルは、例えば図3〜図4に示すようなものがすでに提案されている。
【0004】
図3(a)、(b)は、特許文献1の光海底ケーブル20の外観図と断面図である。
図3に示す光海底ケーブル20は、光ファイバ12の周囲に、3分割された金属製分割個片27aからなる耐圧層27を、その上に硬鋼線の撚り体からなる抗張力鋼線22を設け、さらに金属チューブ23が形成され、この金属チューブ23の周囲にさらに外被となる絶縁被覆層24を積層して構成されものである。
光ファイバ12の隙間にはコンパウンド25が充填され、分割個片27aと硬鋼線間には水走り防止材として防水コンパウンド21を充填している。
金属チューブ23は抗張力鋼線22の結束と気密、中継器への給電路となる金属層で、通常、銅またはアルミニウム等からなる金属テープを縦添え、溶接して縮径(絞り込み)し、チューブ状に形成したものである。
【0005】
図4に示す特許文献2の光ケーブルユニット30は、光導波路13を金属管31で覆ったものである。光導波路13と金属管31の間の空隙には充填化合物(コンパウンド)を充填している。これにより水がケーブルの長手方向の移動するのを防止している。
金属管31はオーステナイト(鋼)層31bと銅層31cからなっている。これらは、銅のテープとオーステナイト(鋼)のテープを重ねて光導波路13に縦添えし形成したものである。各テープの継目には、上下にオーステナイト層31bの継目31aと銅層31cの継目31dが形成される。
継目31aを溶接することにより、注がれた溶接熱がオーステナイト層31bの壁厚を貫通して、銅層31cの継目31dを合わせて溶接する。溶接は1箇所で処理することができ、銅およびオーステナイトの両方の溶接を同一処理において行うものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、図3,図4に示される光ファイバケーブルの構造においては、例えば図4に示すケーブルの場合、金属テープを縦添えし、その合わせ目を溶接した構造としている。このため、溶接の際に内部の光導波路31が高温にさらされ、その特性が劣化する懸念がある。また、溶接工程は作業速度が遅く、光ファイバケーブルの生産性のボトルネックとなっている。
また、図3の光ファイバケーブルは深海における深度、高水圧に耐えられる構造としているため構造は複雑であり、その製造コストも大きくなっている。
近年、近距離の海底無中継システムで使用したり、浅海、河川、または湖水を横断して使用する安価で簡易な構造の光ファイバケーブルが求められているが、図3の光ファイバケーブルの場合、深海に適合した光ファイバケーブルのため、浅海用等に使用するには性能が高く高価になってしまうという問題点があった。
本発明は、かかる課題を解決し安価で簡易な構造の水中で使用する光ファイバケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明の光ファイバケーブルは、光ファイバ部と、該光ファイバ部の周囲を金属製の複数の扇形の分割個片によって構成される円筒状の耐圧層と前記耐圧層の周囲を金属製テープで縦添えに一箇所で上下に重ね合わせて形成される接触部を含む金属被覆層と、前記金属被覆層の周囲を絶縁材で被覆する絶縁被覆層とを有する。
【0008】
また、別の発明は前記分割個片の合わせ部分の両面は鏡面仕上げがなされ、該鏡面同士が密着されている。
【0009】
また、別の発明は前記耐圧層を構成する分割個片の合わせ目上部のそれぞれに前記分割個片より硬度が小さい金属細線を配置し、合わせ目上部を封止している。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかる光ファイバケーブルの構成によれば、海底無中継システム、浅海、河川または湖水での敷設や引き上げ、陸上で地下に埋設する場合等に必要となる抗張力を充分確保するものとなる。
また、従来のような撚り線および溶接は不要となり、撚り線機や溶接機が存在することにともなう製造速度の制限がなくなり、かつ構造が極めて簡易なものとなり、効率的に安価に生産することができる。
さらに、耐圧層の周囲に金属被覆層が上下に重ね合わせて形成されていることから、ケーブル内への浸水および走水を極力防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施の形態の光ファイバケーブルの構成の説明図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態の光ファイバケーブルの構成の説明図である。
【図3】従来の光海底ケーブルの構成の説明図である。
【図4】従来の光海底ケーブルの構成の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を次の順序で説明する。
<1.本発明の第1の実施の形態>
<2.本発明の第2の実施の形態>
【0013】
<1.本発明の第1の実施の形態>

図1は本発明の第1の実施の形態に係る光ファイバケーブルを示す断面図である。
図1に示されているように、光ファイバケーブル1は、光ファイバ心線10の集合体と、その周囲に設けられた3分割された扇形の金属個片2aによって構成された耐圧層2と、その耐圧層2の周囲を金属テープにより縦添えに被覆した金属被覆層3と、その上に形成された外被となる絶縁被覆層4とにより構成されている。図示していないが、絶縁被覆層4の周囲に外装鉄線を撚り巻いて保護層を形成する場合もある。
【0014】
光ファイバ心線10の数量は特定の数量に限定されるものではない。その数量は1本であってもよく、必要に応じて決定される。光ファイバ心線10と耐圧層2との間には走水防止用のコンパウンドを注入することもできる。
【0015】
耐圧層2は、3分割された分割個片2aからなり、これらを縦添えに突き合わせて光ファイバ心線10を覆っている。この耐圧層2は、耐圧特性が良好な金属で構成され、典型的には鉄で構成される。なお、金属耐圧層2の分割数はこのような3分割に限らないが、取扱い上3分割が適当である。
【0016】
金属被覆層3は、耐圧層2の周囲に金属テープを光ファイバケーブルの長手方向に縦添えに被覆し、金属テープの端を一箇所で上下に重ね合わせて接触部7を形成してなるものである。金属テープは、接着性のあるEAA(エチレンとアクリル酸の共重合樹脂)付のものを絶縁被覆層4との接着性を高めるために必要に応じて使用してもよい。
【0017】
金属被覆層3は分割個片2aを開き止するものである。すなわち、金属テープを重ね合わせて接触部7を形成することにより、十分な防水性を確保できるとともに耐圧層2の分割個片2aを一体化できる。この場合に分割個片2aのそれぞれの合わせ目上部8からの浸水を防ぐことができるよう、金属被覆層3は耐圧層2に密着していることが好ましい。
また、金属被覆層3は、破断し難いように、大きな破断伸びを有する金属、例えば鉄テープで構成されていることが好ましい。
【0018】
図1の上側の図は、金属被覆層3を形成する金属テープの端を一箇所で上下に重ね合わせてなる接触部7の状態を拡大した図である。
拡大図の左図は、金属テープの端を重ね合わせた直後の図である。単に重ねているだけなので、重ね合わせた接触部7の端には隙間9が生じる。これは最終的に金属被覆層3が設けられることにより、その圧力で拡大図の右図のように重ね合わせた接触部7は上面に重なる金属テープと密着した構造とすることができる。
【0019】
次に第1の実施の形態に係る光ファイバケーブルの製造方法について説明する。
耐圧層2は、光ファイバ心線10の外周に、周方向で複数分割した扇形の分割個片2aを、連続的に供給される光ファイバ心線10の外周面の長手方向に3方向から送り、付き合わせて円筒とし、内周面が光ファイバ心線10の外周面に密接するように形成する。分割個片2aは鉄製である。
【0020】
光ファイバ心線10の外周面に複数の分割個片2aを沿わせた耐圧層2を形成した後、金属テープで耐圧層2を包むように金属テープをチューブ状に成形し、金属テープの端を重ね合わせ接触部7を形成することにより金属被覆層3とする。
【0021】
つぎに、金属被覆層3の周囲を絶縁被覆層4で被覆し、光ファイバケーブルが製造される。
【0022】
このように構成することにより、高抗張力線を撚る際の撚り線機や溶接の際の溶接機を用いる工程を省略できるため、溶接時のファイバ損傷を防止するとともに製造工程を簡略化でき、低コストで浅海や、河川および湖水等での用途さらに無中継の短距離の光通信に適した光ファイバケーブルを提供することができる。
さらに、耐圧層2の周囲に金属被覆層3が上下に重ね合わせて接触部7が形成され、金属被覆層3の上に絶縁被覆層4が形成されることにより、金属被覆層3は絶縁被覆層4と密着して、重ね合わせた接触部7は絶縁被覆層4により押さえつけられて密着し、合わせ目8からの浸水を防ぎ、防水性、気密性を確保できる。
また、分割個片が鉄の場合、一般に耐張力1−2トンの強度をもっているので、比較的浅く安定した浅海、湖水等での敷設には好適である。
【0023】
以上第1の実施の形態について説明したが、変形例として、分割個片2aのそれぞれの合わせ目の合わせ面を鏡面仕上げとし、その合わせ目を密着させた構造としてもよい。これにより防水性、走水防止性および気密性をさらに向上できる。
【0024】
<2.本発明の第2の実施の形態>
図2(a)、(b)は、本発明に係る光ファイバケーブルの第2の実施の形態に係る光ファイバケーブルを示す断面図である。この図で、図1と同一とされる部位については同一符号を付し、同一内容についての説明は省略する。
図2(a)は、分割個片2aを光ファイバ心線10の外周面に沿わせ耐圧層2を形成した後、本実施の形態係る金属細線5を、合わせ目上部8に配置させた状態を表す図である。
図2(a)に示されているように、分割個片2aのそれぞれの合わせ目上部8に、金属細線5を光ファイバケーブルの長手方向に配置した構成とするものである。金属細線5の材料は、分割個片2aを形成する金属材料よりその硬度が小さく、大きな破断伸びを有する金属材料が好ましい。
図2(a)の拡大図に示すように、合わせ目上部8は分割個片2aを縦添えに突き合わせる際、外周面と合わせ面の角がわずかに丸みを持たせて加工されていることから生じる窪みが形成している。この窪みに金属細線5を配置させている。
【0025】
図2(b)は、本実施の形態に係る光ファイバケーブルが完成したときの断面図である。
図2(b)に示されているように、金属細線5が配置、密接された耐圧層2の外周がまず金属被覆層3により被覆され、さらにその外周が絶縁被覆層4に被覆されたものとなる。
このため、図2(b)の拡大図に示すように、金属細線5は金属被覆層3から圧力を受け、変形して元の丸い断面形状が扁平となる。これにより、金属細線5が分割個片2aの合わせ目上部8の窪みに嵌合するように密接して封止する。
かかる構成により、防水性にすぐれた光ファイバケーブルを簡易に実現できる。
分割個片2aに密接させる金属細線5として、分割個片2aを形成する金属材料よりその硬度が小さく、大きな破断伸びを有する金属材料が好ましく、例えば銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等を挙げることができる。これにより防水性、走水防止性が向上すると同時に光ファイバケーブルに必要な可撓性も維持される。また、気密性がより向上し、浅海での海底敷設あるいは河川横断など潮流等により外部損傷が懸念される場合、無中継の短距離の海底ケーブルに用いる場合、さらに陸上で地下に埋設する場合に好適である。
【符号の説明】
【0026】
1、6 光ファイバケーブル、2、27 耐圧層、3 金属被覆層、4 絶縁被覆層、5 金属細線、8 合わせ目上部、20 光海底ケーブル、22 抗張力鋼線、23 金属テープ、24 絶縁被覆層、30 光ケーブルユニット、31 金属管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ部と、
該光ファイバ部の周囲を金属製の複数の扇形の分割個片によって構成される円筒状の耐圧層と、
前記耐圧層の周囲を金属製テープで縦添えに一箇所で上下に重ね合わせて形成される接触部を含む金属被覆層と、
前記金属被覆層の周囲を絶縁材で被覆する絶縁被覆層と、
を有する光ファイバケーブル。
【請求項2】
前記分割個片の合わせ部分の両面は鏡面仕上げがなされ、該鏡面同士が密着してなる請求項1記載の光ファイバケーブル。
【請求項3】
前記耐圧層を構成する分割個片の合わせ目上部のそれぞれに前記分割個片より硬度が小さい金属細線を配置して、前記金属細線が前記合わせ目上部を封止している請求項1または請求項2に記載の光ファイバケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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