説明

光ファイバケーブル

【課題】高度な難燃性、低発煙性を有し、燃焼時にハロゲン系ガスを発生せず、管路内への布設作業が容易な光ファイバケーブルを提供する。
【解決手段】光ファイバ心線4等の外周に、アクリレート含量が5質量%以上のポリオレフィン樹脂100質量部に対し、水酸化マグネシウムが50〜200質量部配合され、表面の摩擦係数が0.25以下となるよう滑剤が配合された樹脂組成物を外被材として被覆した外被5を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバケーブルに関し、特に、高度な難燃性、低発煙性を有し、燃焼時にハロゲン系ガスを発生せず、管路内への布設作業が容易な光ファイバケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
ハロゲンを被覆材に含まない難燃性の光ファイバケーブルの例が特許文献1に開示されている。それには、被覆材として、アクリレートを含有するポリオレフィンと水酸化マグネシウムとを配合した材料を用いることにより、垂直トレイ燃焼試験(VTFT)合格基準を満たす高度な難燃性を有し、発煙量が少なく、燃焼時に有毒なハロゲン系ガスを発生しない光ファイバケーブルが得られることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62−144120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の光ファイバケーブルを既設管路内へ布設しようとした場合、その被覆材表面の摩擦係数が大きいため、作業が極めて困難であった。
本発明の目的とするところは、高度な難燃性、低発煙性を有し、燃焼時にハロゲン系ガスを発生せず、管路内への布設作業が容易な光ファイバケーブルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の発明者らは、鋭意検討の結果、下記構成を採ることにより上記課題を解決することができた。
即ち、本発明は以下の通りである。
【0006】
(1)アクリレート含量が5質量%以上のポリオレフィン樹脂100質量部に対し、水酸化マグネシウムが50〜200質量部配合され、表面の摩擦係数が0.25以下となるよう滑剤が配合された樹脂組成物を外被材として被覆したことを特徴とする光ファイバケーブル。
(2)前記樹脂組成物が、前記ポリオレフィン樹脂100質量部に対し、滑剤として脂肪酸アミドが0.1〜3質量部配合されたものであることを特徴とする前記(1)記載の光ファイバケーブル。
(3)前記脂肪酸アミドが、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド及びエチレンビスオレイン酸アミドから選ばれる少なくともいずれかであることを特徴とする前記(2)記載の光ファイバケーブル。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、外被材として、アクリレート含量が5質量%以上のポリオレフィン樹脂100質量部に対し、水酸化マグネシウムが50〜200質量部配合され、表面の摩擦係数が0.25以下となるよう滑剤が配合された樹脂組成物を被覆したことにより、高度な難燃性、低発煙性を有し、燃焼時にハロゲン系ガスを発生せず、管路内への布設作業が容易であり、さらに、外被材を被覆する際に押出時の吐出量変動が生じない光ファイバケーブルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の光ファイバケーブルの一例を示す模式断面図である。
【図2】実施例における摩擦係数の評価方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の光ファイバケーブルについての好ましい実施形態を詳細に説明する。
【0010】
上述のように、本発明の光ファイバケーブルは、アクリレート含量が5質量%以上のポリオレフィン樹脂100質量部に対し、水酸化マグネシウムが50〜200質量部配合され、表面の摩擦係数が0.25以下となるよう滑剤が配合された樹脂組成物を外被材として被覆したものである。
【0011】
本発明において外被材として被覆する樹脂組成物(以下、「本発明の樹脂組成物」とも称する)に使用する「アクリレート含量が5質量%以上のポリオレフィン樹脂」としては、エチレン・アクリレート共重合体、すなわち、エチレン・メチルアクリレート共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・ブチルアクリレート共重合体等、あるいはこれらと他のポリオレフィン、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・プロピレン共重合体等との混合物であって、アクリレート含有量が5質量%以上のものが挙げられる。なお、アクリレート含有量が5質量%未満のポリオレフィンでは堅固な外被を形成できず、高度の難燃性を付与できない。
【0012】
本発明の樹脂組成物に使用する水酸化マグネシウムは、ポリオレフィン100質量部に対して50〜200質量部の範囲で含有せしめる必要があり、50質量部未満ではポリオレフィンに十分な難燃性を付与できず、また堅固な外被を形成できず、200質量部を越えると光ファイバケーブルの外被材料としての機械的特性の低下を招く。
【0013】
本発明の樹脂組成物に使用する滑剤としては、光ファイバケーブルの表面の摩擦係数が0.25以下となるように、その材料及び添加量を適宜選択することができる。例えば、滑剤として脂肪酸アミドを、前記樹脂組成物における、前記ポリオレフィン樹脂100質量部に対し、0.1〜3質量部の範囲で配合することが好ましい。
また、脂肪酸アミドとしては、特に限定されないが、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド及びエチレンビスオレイン酸アミド等が挙げられ、これらの中の1種を単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0014】
本発明の光ファイバケーブルは、本発明の樹脂組成物を外被材として被覆したものであれば、その形態等は特に限定されない。
本発明の一実施形態に係る光ファイバケーブル1を図1に示す。図中、1は光ファイバケーブル、4は光ファイバ心線、5は本発明の樹脂組成物を外被材として被覆した外被、6は抗張力線(テンションメンバ)を示し、本実施形態においては、光ファイバ心線4と並行して、一対の抗張力線6を有し、この光ファイバ心線4と抗張力線6とが外被5によって一体化されている。また、光ファイバ心線4は、コア部2とクラッド部3とからなり、例えば、コア部にはゲルマニウムを添加した石英を用いることができ、クラッド部には純石英、或いはフッ素が添加された石英を用いることができる。光ファイバ心線4に平行に配される抗張力線6は、外径0.4mm程度の鋼線あるいはガラス繊維強化プラスチック(FRP)、アラミド繊維強化プラスチック(KFRP)などを用いることができる。
【実施例】
【0015】
以下、本発明に係る実施例及び比較例を用いた評価試験の結果を示し、本発明を更に詳細に説明する。なお、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0016】
(実施例1〜8,比較例1〜6)
下記表1に示す配合の樹脂組成物について、引張強度、引張伸び、摩擦係数、難燃性、発煙性、及び、押出安定性の評価を行った。
引張強度、引張伸び、及び、摩擦係数の評価には、下記表1に示す配合の樹脂組成物をオイル加熱式のオープンロールで200℃に加熱して混合し、プレス機でシート状に成型(150mm×250mm×1.0mm及び150mm×250mm×2.0mm)したものを試験片として使用した。
難燃性及び発煙性の評価には、下記表1に示す配合の樹脂組成物のロール混合で得られたものをペレタイザでペレット状に切断し、65mmφ押出機を使用して、光ファイバ心線上に被覆したものを試験片として使用した。光ファイバケーブルは、図1に示す形状のものとし、厚さ2.0mm、幅3.1mm、抗張力線の径0.4mm、光ファイバ心線の径0.25mmとした。
引張強度、引張伸び、摩擦係数、難燃性、発煙性、及び、押出安定性の評価方法の詳細については以下の通りである。結果を下記表1に示す。
【0017】
〔引張強度及び引張伸び〕
JIS K7113に準拠して引張試験を行い、引張破断強度と引張破断伸びを求めた。試験片はJIS3号の形状に打ち抜き、引張速度500mm/分で試験片が破断するまで引張を行った。そして、引張破断強度≧10MPa、引張破断伸び≧300%を合格とした。
〔摩擦係数〕
2mm厚の試験片を用いて、図2に示すように、固定試験片11(150mm×6mm×2mm)と滑り試験片12(210mm×2mm×2mm)の形状に切取り、2kgの錘13を載せ、図示しない引張試験機により引張速度500mm/分で滑り試験片12を引張り、(動摩擦係数又は静摩擦係数)を求めた。摩擦係数≦0.25を合格とした。
【0018】
〔難燃性〕
IEC 60332-3-24に規定の垂直トレイ燃焼試験により評価を行った。延焼長が2.5m以下のを合格とした。
〔発煙性〕
IEC 61034-1,2に規定の方法に従って評価を行った。透過率が60%以下のものを合格とした。
〔押出安定性〕
押出ラインに冷却水槽の後端にレーザー式の外径測定器を設置し、オンラインで外径測定を行った。そして、外径変動が設計値の±10%以内の場合を合格とした。
【0019】
【表1】

【符号の説明】
【0020】
1 光ファイバケーブル、2 光ファイバ、3 被覆層、4 光ファイバ心線、5 外被、6 抗張力線、11 固定試験片、12 滑り試験片、13 錘

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリレート含量が5質量%以上のポリオレフィン樹脂100質量部に対し、水酸化マグネシウムが50〜200質量部配合され、表面の摩擦係数が0.25以下となるよう滑剤が配合された樹脂組成物を外被材として被覆したことを特徴とする光ファイバケーブル。
【請求項2】
前記樹脂組成物が、前記ポリオレフィン樹脂100質量部に対し、滑剤として脂肪酸アミドが0.1〜3質量部配合されたものであることを特徴とする請求項1記載の光ファイバケーブル。
【請求項3】
前記脂肪酸アミドが、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド及びエチレンビスオレイン酸アミドから選ばれる少なくともいずれかであることを特徴とする請求項2記載の光ファイバケーブル。






【図1】
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【図2】
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