説明

光ファイバジャイロスコープにおけるバイアス不安定性の低減

【課題】偏光誤差及びバイアス不安定性が低減した干渉方式光ファイバジャイロスコープの最適な設計パラメータを見つける、より正確なモデル化方法を提供する。
【解決手段】バイアス不安定性を低減するコンピュータ実施可能な方法は、コンピュータを用いて第1のデータセットを受信することであって、第1のデータセットは光源11、光検出器14並びに光源と光検出器とを結合する複数の光学部品及び複数のファイバ部分を含み、ジャイロスコープのモデル1をコンピュータが生成することを可能にする。スペクトルの波長ごとに、光検出器に到達する相対的光波強度を計算する。相対的光波強度から、信号波強度及びスプリアス波強度を求め、信号波強度からスケールファクタを求める。光源の波長スペクトルにわたって積分し、全スプリアス波強度を得る。全スプリアス波強度及びスケールファクタに基づいて、速度バイアス誤差を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバジャイロスコープにおけるバイアス不安定性の低減に関する。
[政府の利益]
本発明は、政府契約第00030−05−C−0007号(任意選択項目(Option Item)0003)下で米国海軍によって資金を提供され、米国政府の支援を受けて行われた。政府は本発明において特定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバジャイロスコープでは、偏光誤差は、一次光波とスプリアス光波との間の干渉から、またスプリアス光波間の干渉からもたらされる。弱いスプリアス光波は、理想的でないファイバスプライスにおける、複屈折ファイバコイルにおける、光集積回路(IOC)導波管とそのピグテールファイバとの間の接合部における、また光学部品の内部における偏光交差結合から生じる。光検出器に到達するこれらのスプリアス光波は、感知ループにおいて非可逆経路を進んだため、誤ったサニャック位相情報を有する。リオ(Lyot)タイプのファイバデポラライザを使用すると共にデポラライザ偏光保持(PM)ファイバ長を調整する方法が、偏光誤差を軽減するために提案されてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来技術の偏光誤差モデルでは、偏光誤差は、時間と、光回路における交差結合に由来するスプリアス光波の位相遅延とを記録することによって時間領域において評価される。偏光依存損失(PDL)、偏光モード分散(PMD)等のような、光学部品の波長依存特性は多くの場合、このモデルにおいて完全に又は部分的に無視される。具体的には、非偏光保持シングルモード(SM)ファイバコイルを使用する偏光解消ジャイロスコープの場合、SMコイル複屈折の偏光誤差に対する影響は、広がった光源コヒーレンス関数を仮定することによって経験的に考慮される。このような単純化によって、偏光誤差の評価が不正確になる(最大10倍の偏差)。偏光誤差及びバイアス不安定性が低減した干渉方式光ファイバジャイロスコープの最適な設計パラメータを見つけるために、より正確なモデル化方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一実施の形態では、光ファイバジャイロスコープにおける、偏光誤差によって誘発されるバイアス不安定性を評価/低減するコンピュータ実施可能な方法は、コンピュータを用いて第1のデータセットを受信することであって、第1のデータセットは、光源、光検出器、並びに光源と光検出器とを結合する複数の光学部品及び複数のファイバ部分、並びに光源から光検出器まで伝播する光信号を含む、ジャイロスコープのモデルをコンピュータが生成することを可能にする、受信することを含む。光信号は関連付けられる波長スペクトルを有する。スペクトルの波長ごとに、光検出器に到達する相対的光波強度を、光路内の各部品の波長依存特性を考慮するジョーンズ行列を使用して計算する。復調プロセス後に一次信号波強度からスケールファクタを求める。復調されたスプリアス波強度、すなわち誤った位相情報を有する2つの光波の干渉を光源の波長スペクトルにわたって積分し、全スプリアス波強度を得る。全スプリアス波強度及びスケールファクタに基づいて、速度バイアス誤差を求める。
【0005】
本発明の好ましい実施形態及び代替の実施形態を、以下の図面を参照して以下において詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明の一実施形態による偏光解消ジャイロスコープの光回路を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に従って偏光誤差が得られるジャイロスコープの、バイアス対温度グラフの一例を示す図である。
【図3a】本発明の一実施形態による2つのコイルコヒーレンス関数を示す図である。
【図3b】本発明の一実施形態による、2つのコイルコヒーレンス関数の関連付けられる波長依存微分群遅延(DGD)を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態による、コイル(それぞれコイルI及びコイルII)を除いて同一の光学部品を有する2つのジャイロスコープの、勾配を成す温度変化下のバイアス熱不安定性の比較を示す図である。
【図5】2×2結合器偏光依存分割比(PDSR)の関数としての、相対的なジャイロスコープバイアス変動振幅の計算の一例を示す図である。
【図6】図1のスプライス32における交差結合の関数としての、相対的なジャイロスコープバイアス変動振幅の計算の一例を示す図である。
【図7】IOC偏光消光比の関数としての、偏光誤差によって誘発される相対的バイアス変動振幅の計算の一例を示す図である。
【図8】一実施形態によるデポラライザ設計の場合の、図1のPMファイバ15の長さvに対する相対的バイアス変動振幅の依存を示す図である。
【図9a】PMファイバ長x及びvの関数としての相対的バイアス変動振幅の等高線図の第1の例を示す図である。
【図9b】PMファイバ長x及びvの関数としての相対的バイアス変動振幅の等高線図の第1の例を示す図である。
【図10a】ファイバ長x及びwの関数としての相対的バイアス変動振幅の等高線図の第2の例を示す図である。
【図10b】ファイバ長x及びwの関数としての相対的バイアス変動振幅の等高線図の第2の例を示す図である。
【図11】本発明の一実施形態が実施されることができる動作環境を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図11は、本発明の一実施形態が実施されることができる適切なコンピューティングシステム環境100の一例を示している。コンピューティングシステム環境100は、適切なコンピューティング環境の1つの例に過ぎず、本発明の実施形態の使用又は機能の範囲に関して何らかの限定を示唆するようには意図されていない。コンピューティング環境100は、例示的な動作環境100において示されている構成要素のうちの任意の1つの構成要素又はそれらの構成要素の組み合わせに関して何らかの依存関係又は要件を有するようには解釈されるべきではない。
【0008】
本発明の実施形態は、多数の他の汎用又は専用のコンピューティングシステム環境又は構成と共に動作可能である。本発明の実施形態と共に使用するのに適切であり得る既知のコンピューティングシステム、環境、及び/又は構成の例は、パーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ、ハンドヘルド装置又はラップトップ装置、マルチプロセッサシステム、マイクロプロセッサベースシステム、セットトップボックス、プログラム可能家庭用電化製品、ネットワークPC、ミニコンピュータ、メインフレームコンピュータ、上記のシステム又は装置のうちの任意のものを含む分散コンピューティング環境等を含むが、これらに限定されない。
【0009】
本発明の実施形態は、コンピュータによって実行されるプログラムモジュールのようなコンピュータ実行可能命令の一般的な文脈において説明することができる。概して、プログラムモジュールは、特定のタスクを実行するか又は特定の抽象データ型を実装するルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造等を含む。本発明の実施形態は、通信ネットワークを通じてリンクされている遠隔処理装置によってタスクが実行される分散コンピューティング環境において実施することもできる。分散コンピューティング環境では、プログラムモジュールは、メモリ記憶装置を含むローカルコンピュータ記憶媒体及び遠隔コンピュータ記憶媒体の両方に置くことができる。
【0010】
図11に示されている動作環境は典型的には、少なくとも或る形態のコンピュータ可読媒体を含む。コンピュータ可読媒体は、このような動作環境の1つ又は複数の構成要素によってアクセスすることができる任意の利用可能な媒体とすることができる。例として且つ限定ではなく、コンピュータ可読媒体は、コンピュータ記憶媒体及び通信媒体を含むことができる。コンピュータ記憶媒体は、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュール、又は他のデータのような情報の任意の記憶方法又は記憶技術において実施される、揮発性及び不揮発性の取り外し可能及び取り外し不可能な媒体を含む。コンピュータ記憶媒体は、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ、若しくは他のメモリ技術、CD−ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)、若しくは他の光記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置、若しくは他の磁気記憶装置、又は所望の情報を記憶するために使用することができると共にこのような動作環境の1つ若しくは複数の構成要素によってアクセスすることができる任意の他の媒体を含むが、これらに限定されない。通信媒体は典型的には、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュール、又は他のデータを、搬送波又は他の移送メカニズムのような変調されるデータ信号内で具体化し、任意の情報配信媒体を含む。用語「変調されるデータ信号」は、自身の特性のうちの1つ又は複数が、情報を当該信号内に符号化するように設定又は変更される信号を意味する。例として且つ限定ではなく、通信媒体は、有線ネットワーク又は直接配線接続のような有線媒体、並びに音響媒体、RF媒体、赤外線媒体、及び他の無線媒体のような無線媒体を含む。上記のうちの任意のものの組み合わせも、コンピュータ可読媒体の範囲内に含まれるべきである。
【0011】
図11を参照すると、本発明の一実施形態を実施するための例示的なシステムは、コンピューティング装置100のようなコンピューティング装置を含む。その最も基本的な構成において、コンピューティング装置100は典型的には少なくとも1つの処理装置103及びメモリ104を備える。
【0012】
コンピューティング装置の正確な構成及びタイプに応じて、メモリ104は、(ランダムアクセスメモリ(RAM)のように)揮発性であるか、(読み取り専用メモリ(ROM)、フラッシュメモリ等のように)不揮発性であるか、又はこの2つの何らかの組み合わせであることができる。この最も基本的な構成を図11において破線106によって示す。
【0013】
加えて、装置100は追加の特徴/機能を有することができる。たとえば、装置100は、磁気又は光ディスク又はテープを含むがこれらに限定されない追加の記憶装置(取り外し可能及び/又は取り外し不可能)も含むことができる。このような追加の記憶装置を図11において取り外し可能記憶装置108及び取り外し不可能記憶装置110によって示す。コンピュータ記憶媒体は、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュール、又は他のデータのような情報の任意の記憶方法又は記憶技術において実施される、揮発性及び不揮発性の取り外し可能及び取り外し不可能な媒体を含む。メモリ104、取り外し可能記憶装置108、及び取り外し不可能記憶装置110は全て、コンピュータ記憶媒体の例である。コンピュータ記憶媒体は、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ、若しくは他のメモリ技術、CD−ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)、若しくは他の光記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置、若しくは他の磁気記憶装置、又は所望の情報を記憶するために使用することができると共に装置100によってアクセスすることができる任意の他の媒体を含むが、これらに限定されない。任意のこのようなコンピュータ記憶媒体は装置100の一部とすることができる。
【0014】
装置100は、当該装置が他の装置と通信することを可能にする通信接続(複数可)112を含むこともできる。通信接続(複数可)112は通信媒体の一例である。通信媒体は典型的には、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュール、又は他のデータを、搬送波又は他の移送メカニズムのような変調されるデータ信号内で具体化し、任意の情報配信媒体を含む。用語「変調されるデータ信号」は、自身の特性のうちの1つ又は複数が、情報を当該信号内に符号化するように設定又は変更される信号を意味する。例として且つ限定ではなく、通信媒体は、有線ネットワーク又は直接配線接続のような有線媒体、並びに音響媒体、無線周波数(RF)媒体、赤外線媒体、及び他の無線媒体のような無線媒体を含む。用語「コンピュータ可読媒体」は本明細書において使用される場合、記憶媒体及び通信媒体の両方を含む。
【0015】
装置100は、キーボード、マウス、ペン、音声入力装置、タッチ入力装置等のような入力装置(複数可)114を有することもできる。ディスプレイ、スピーカ、プリンタ等のような出力装置(複数可)116も含むことができる。
【0016】
本発明の一実施形態は、干渉方式光ファイバジャイロスコープ(IFOG)に関し、詳細には、感知コイルにおいて非偏光保持SMファイバを使用する偏光解消IFOGに関する。より詳細には、本発明の一実施形態は、偏光誤差に由来するバイアス不安定性の低減に関する。実施形態は、このようなジャイロスコープを試験及び設計する分析的/計算的方法及び経験的方法の両方を含む。
【0017】
偏光解消ジャイロスコープの光回路1を図1に示す。実施形態に応じて、回路1は、コンピュータ実行可能命令を使用して計算モデル化することができるか、又は実際の装置とすることができる。広帯域光源11は、スプライス30において異なる波長及び偏光状態を有する多数の波から成る光波
【0018】
【数1】

【0019】
を生成する。一般的な場合、広帯域光源11によって放出される光は多数の光波(optical wave)の総和として記述することができる、すなわち
【0020】
【数2】

【0021】
である。ここで、λは波長(このスペクトルはλ〜λにわたる)であり、|p>は特定の偏光状態を表すポアンカレ球上のベクトルである。異なる波長及び偏光状態を有するこれらの波の位相は無相関とすることができる。完全な非偏光光源の場合、全ての直交偏光状態に関連付けられる光強度が同一となる。非偏光が偏光依存損失(PDL)を有する光学部品を通過するとき、直交偏光状態の光波は異なる損失を受け、部品の出力において異なる強度を得る。
【0022】
広帯域光源の厳密な理論的説明は、全ての波長成分及び偏光状態を考慮に入れる必要があり得る。しかしながら、以下の論考を簡潔にするために且つ一般性を失わずに、光源が、図1のスプライス30に到達する波長成分ごとに2つの直交偏光状態のみを含むと仮定することができる。広帯域光源11の電場はしたがって、ジョーンズベクトルによって表すことができる。
【0023】
【数3】

【0024】
ここで、点30の前に光源が受けるPDLはY軸に沿っている(すなわち、より多くの損失を受ける偏光状態は図1の紙面に垂直な軸に沿っている)と仮定することができる。振幅透過係数t11y(λ)は、スプライス30に到達するときの、光源11によって放出された光の偏光度又はPDLを定量化する。
【0025】
光検出器14に到達する光照射野は、ジャイロ光回路1のジョーンズ行列記述を使用してモデル化することができる。素子12は任意の種類の方向性結合器とすることができる。ここでは、偏光保持(PM)ファイバリード線を備えることができる2×2結合器を例として使用する。通常、入力光PDL軸とPMファイバ通過軸との間に回転角αが存在する。スプライス30におけるこのような角度回転のジョーンズ行列は以下のように表すことができる。
【0026】
【数4】

【0027】
光源11によって放出された光が波長依存PDLを受ける場合、回転角度α(λ)は波長λの関数とすることができる。簡潔にするために、全てのパラメータの波長依存性を暗黙的に仮定し、以下の式においてλを省略する。
【0028】
方向性結合器12をそのファイバリード線も含めて通る光の伝播はジョーンズ行列Hinによって記述することができる。この行列は、光がスプライス30からスプライス31に伝播するときに結合器12によって引き起こされる偏光依存分割比、PDL、交差結合、及び位相遅延を考慮する。
【0029】
素子15は、結合器12と光集積回路(IOC)16とを接続する1本のPMファイバとすることができる。素子15は以下のジョーンズ行列を有する。
【0030】
【数5】

【0031】
ここで、d15はPMファイバ15の速軸に対する遅軸の相対的な位相遅延である。IOCピグテール33、36、及び38はPMファイバとすることができる。これらは以下の遅延行列によって同様に記述することができる。
【0032】
【数6】

【0033】
PMファイバ間のスプライス31及び32、並びにIOCピグテールファイバとIOC導波管との間の接続点34、35、及び37は完全ではない。これらは、以下のジョーンズ行列によって記述することができる小さな偏光交差結合を導入する。
【0034】
【数7】

【0035】
スプライス30〜スプライス34までの光伝播に関して、全体ジョーンズ行列Gは以下の通りである。
【0036】
【数8】

【0037】
IOC導波管の入力点34における電場はしたがって以下の通りである。
【0038】
【数9】

【0039】
次に、ジョーンズ行列
【0040】
【数10】

【0041】
を使用して、IOC位相変調及びその偏光消光比εを考慮に入れずに、時計回り方向において感知ループ10を通る光の透過を表す。図1に示されている偏光解消ジャイロスコープに関して、時計回りの透過行列は以下の通りである。
【0042】
【数11】

【0043】
ここで、D40及びD41はIOC導波管40及び41の遅延行列である。遅延行列D21、D23、D26、及びD28は、デポラライザ200を構成するPMファイバのセグメントの遅延行列である。このデポラライザは上方部分210及び下方部分220を含む。小さな角度ずれを有する不完全なスプライス20及び25は行列K20及びK25によって表される。デポラライザPMファイバセグメントの2つの対21、23及び26、28の間の2つの45度スプライス22及び27は行列R22及びR27によって表される。デポラライザ部分210、220とシングルモード感知コイル10のファイバリード線101、102との間のスプライス24及び29の回転行列R24及びR29も含むことができる。
【0044】
反時計回り方向における光の伝播のジョーンズ行列は時計回り行列の転置である、すなわち
【0045】
【数12】

【0046】
である。ここでも同様に、IOC位相変調及び偏光特性はこの行列において考慮に入れられない。
光集積回路(IOC)16は、偏光素子18(代替的に偏光素子自体を導波管とすることができる)、ビームスプリッタ/コンバイナ17と、IOC導波管40及び41を通過する光ビームの位相変調のための2つ以上の電極19とから成ることができる。IOCのこの位相変調関数はジャイロバイアス変調に使用される。ジャイロバイアス変調は典型的には、ループ通過時間τに等しい期間を用いて、通過軸(ここでは水平x軸を仮定する)に沿って偏光された光の位相を変更する。時計回り伝播光波が上方導波管において変調位相φ(t)を受ける場合、この光波は後方導波管において異なる変調位相φ(t+τ)を受ける。同じ時間の間、反時計回り波が、下方導波管においてφ(t)の変調位相を、上方導波管においてφ(t+τ)の変調位相を受けることができる。プッシュプル方形波変調の状況では、一般性を失うことなく簡潔に、φ(t)=φ(t+τ)=φ及びφ(t)=φ(t+τ)=−φと仮定することができる。この場合、IOCバイアス変調及び偏光消光比を考慮に入れる、時計回り光伝播の行列は、
【0047】
【数13】

【0048】
であり、反時計回り伝播の行列は以下の通りである。
【0049】
【数14】

【0050】
IOC出力34におけるCW光及びCCW光の合成電場はしたがって、以下の式によって求められる。
【0051】
【数15】

【0052】
回転感知によって誘発されるサニャック位相2φを考慮に入れると共に上記の式を展開すると、以下がもたらされる。
【0053】
【数16】

【0054】
【数17】

【0055】
光検出器14において電場を得るために、行列Fを使用して、点34から光検出器14までの光路を記述する。これは以下の通りである。
【0056】
【数18】

【0057】
ここで、K32、K33、K34はそれぞれ、行列K32、K33、K34の転置であり、Houtはスプライス31から光検出器14までの光透過の結合器行列である。行列
【0058】
【数19】

【0059】
は、以下の行列によって明示される、光検出度偏光依存応答度の軸に対するPMファイバ軸の不整合角を考慮に入れる。
【0060】
【数20】

【0061】
行列Fを用いて、光検出器14における電場を以下のように表すことができる。
【0062】
【数21】

【0063】
光検出器14における水平偏光の電力は以下の通りである。
【0064】
【数22】

【0065】
(12)及び(13)を(18)に代入すると以下がもたらされる。
【0066】
【数23】

【0067】
式19において、φM−N、φM−L、φN−L、φL−J、及び
【0068】
【数24】

【0069】
は、複素数M及びN、M及びL、N及びL、L及びJ、A及びAの位相差を表す。同様に項φF11−12は複素数F11及びF12の位相差を表す。
上記のプッシュプル方形波バイアス変調された信号の復調は、ループ通過時間τの隣接する時間スロットにおける光強度の差を計算することによって達成される。φは、隣接する期間τにおける符号を反転させるため、復調された信号は以下によって計算される。
【0070】
【数25】

【0071】
一次信号(すなわち式(19)における第1の項)に関して、復調された信号は以下の通りである。
【0072】
【数26】

【0073】
(19)における他の項の復調は、2つの主なタイプの偏光誤差をもたらす。一方のタイプは振幅タイプ誤差と呼ばれ、この誤差はIOC偏光消光比εに比例する。他方のタイプは強度タイプ誤差と呼ばれ、この誤差はεに比例する。高次項は極端に小さいため、簡潔にする目的のために以下の論考においては無視する。式(20)及び(21)における復調計算と同様の復調計算を実行すると、x軸に沿った振幅タイプ偏光誤差光強度は以下の通りである。
【0074】
【数27】

【0075】
x軸に沿った強度タイプ偏光誤差光強度は以下の通りである。
【0076】
【数28】

【0077】
同様に、y軸に沿った復調された主信号を以下のように得ることができる。
【0078】
【数29】

【0079】
y軸に沿った振幅タイプ偏光誤差強度は以下の通りである。
【0080】
【数30】

【0081】
y軸に沿った強度タイプ偏光誤差は以下の通りである。
【0082】
【数31】

【0083】
式(21)から式(26)における電場A及びAの代わりに、入射広帯域光源場E0x及びE0yを用いることができる。式(7)を適用した後、強度|A、|A及びAを以下の形に展開することができる。
【0084】
【数32】

【0085】
【数33】

【0086】
【数34】

【0087】
上記の式では、E0x及びE0y成分の位相差を有する項は、無相関であり且つ時間と共にゼロに平均化されるため無視することができる。
x軸及びy軸の両方に沿った強度を総和して、波長λにおける強度S(λ)を有する光に関して式(1)において暗示されている式E0x(λ)=√S(λ)、E0y(λ)=t11y√S(λ)を使用すると、主信号光強度は以下の通りになる。
【0088】
【数35】

【0089】
全主信号強度は、光源スペクトル全体にわたる波長積分によって得られる。(30)から、光強度を度/時間単位の速度に変換するためのスケールファクタは以下のように得られる。
【0090】
【数36】

【0091】
ここで、Lcoil及びDcoilは感知コイル10ファイバ長及び平均コイル直径であり、
【0092】
【数37】

【0093】
は光源平均波長である。スケールファクタを使用して、スプリアス光強度を度/時間の単位を有するバイアス誤差に変換する。
全振幅タイプ誤差は、x軸及びy軸の両方を考慮に入れると、以下の通りである。
【0094】
【数38】

【0095】
全強度タイプ誤差は以下の通りである。
【0096】
【数39】

【0097】
振幅タイプ偏光誤差及び強度タイプ偏光誤差の両方に由来する全誤差速度はしたがって以下とすることができる。
【0098】
【数40】

【0099】
λ〜λの波長にわたる積分は広帯域光源波長範囲をカバーする。全誤差速度及び/又は他の誤差情報を特徴付けるデータは出力装置116に表示することができる。
上記で説明した手法は、偏光誤差が存在するときのバイアスオフセットを予測する。偏光誤差は、異なるそれぞれの光路に沿って伝播する波の干渉の結果であるため、光路の相対的変化は対応する偏光誤差の変動をもたらす。上記の「光路」は光の偏光状態に依存する。PMファイバに関しては2つの偏光モードがある。1つのモードは、ファイバ交差部において、いわゆる「遅い偏光軸」に沿って偏光される。このモードは、直交した「速い偏光軸」に沿って偏光される他方の偏光モードよりも多くの位相遅延を得る。遅いモードは効率的に、速いモードよりも長い光路に沿って進む。PMファイバにおける速いモード及び遅いモードに関連付けられる位相差を定量化するために、L=λ/Δnとなるような「ビート長」(L)を用いてファイバの長さを表すことが有利である。ここで、λは光波長であり、Δnは、速い偏光モードと遅い偏光モードとの間の実効モード屈折率における差である。典型的には、Lは1mm〜4mmに及ぶ。Lのファイバ長にわたって伝播した後の遅い光と速い光との間の位相差は2πである。典型的には、ファイバビート長Lは、温度が増大する(すなわち温度が勾配を成して変化する)とわずかに増大する。PMファイバ温度を変更することは、遅い光波及び速い光波の位相差を偏光することに等しく、偏光誤差によって誘発されるバイアス変動を引き起こす効率的な方法のうちの1つである。たとえば、PMファイバ15がv=10000Lの長さを有すると仮定し、且つPMファイバのビート長Lが500ppm/℃の温度感度を有する場合、速い光及び遅い光の相対的位相変化は、5サイクル/℃、すなわち10π/℃を受ける。図2は、本発明の一実施形態による手法を使用する、偏光誤差を有するジャイロスコープの、このような相対バイアス対温度変化のグラフである。絶対バイアスは具体的なジャイロスコープ設計に依存するため、任意の線形ユニットにおける相対的バイアス振幅値のみを本明細書全体を通じて意味を失うことなく使用する。実際に温度が勾配を成して変化するのを測定するために、ジャイロは、一定の回転速度、たとえば地球回転速度下で温度室内に入れられる。速度がジャイロから連続的に読み取られる間に、温度が徐々に上昇する。被試験ジャイロが相当な偏光誤差を有する場合、速度は、正弦波振動パターン対温度を示す。振動の温度期間は偏光誤差に伴う位相遅延の良い指標である。光回路の選択された部分の勾配を成す温度変化下でのバイアス変動を測定することは、偏光誤差の原因を特定すると共に、試験を行っているユーザが回路内の低質部分をより最適に構成された部分で取り替えるか又は他の方法で変更することを可能にする効率的な方法である。付加的に、上記の分析手法に基づいて、一実施形態は、勾配を成す温度変化下でのバイアス変動を分析的にシミュレートすることを含む。本発明の実施形態による、勾配を成す温度変化試験及び方法は、ジャイロスコープ偏光誤差検査における強力なツールである。
【0100】
上記で詳細に説明した計算方法では、シングルモード非偏光保持コイルファイバの波長依存ジョーンズ行列が使用される。この行列は実際に、偏光モード分散(PMD)特徴付け機器を使用して直接測定することができる。コイル行列は、コイルを多数のランダム複屈折素子の連結として扱うことによってモデル化することもできる。コイルジョーンズ行列が使用可能であることによって、コイルのコヒーレンス関数及び波長依存微分群遅延(DGD)を求めることができる。図3aは2つのコイルコヒーレンス関数を示している。コイルIは実線によって表されており、コイルIIは破線によって表されている。これらのコイルコヒーレンス関数又は自己相関関数は干渉縞コントラストを、コイルを通過する広帯域光波の遅延長の関数とみなす。2mmの遅延長では、コイルIが、コイルII(−18dB)と比べてより小さな縞コントラスト(−30dB)を示す。図3bは、対応するコイルI及びコイルIIの波長依存DGD及び平均DGDとを示している。コイルIは、0.85psの平均DGD値を有する。この値はコイルIIの値(破線、平均DGD=1.81ps)よりもはるかに小さい。換言すると、コイルIはコイルIIよりも小さい内部複屈折を有する。偏光解消ジャイロスコープの設計では、低複屈折を有するコイルを製造することが偏光誤差を低減するのに有利である。図4は、それぞれのコイル、すなわちコイルI及びコイルIIを除いて同一の設計を有する2つのジャイロスコープの、勾配を成す温度変化下の相対的バイアス変動振幅の比較を示している。図4は、コイルII(円の印を有する破線)を使用するジャイロスコープが、コイルI(実線)を使用するジャイロスコープよりも大幅に大きいバイアス不安定性を示すことを示している。
【0101】
光回路内の結合器12はまた、偏光誤差を制御する際に重要な役割を果たす。上述したように、結合器のジョーンズ行列は、偏光依存分割比(PDSR)及びPDLを考慮に入れることになっている。点30から点31まで伝播する光に関して、x偏光及びy偏光は異なる振幅透過係数s及びsを有する。パラメータk12によって定量化することができる、x偏光とy偏光との間の交差結合も存在する。結合器の入力ピグテール121及び出力ピグテール122の位相遅延d121、d122を考慮に入れた後、結合器12のジョーンズ行列は以下のように書くことができる。
【0102】
【数41】

【0103】
上記の式では、LPDSRはデシベル単位の偏光分割比差である。他のPDLは簡潔にするために省略する。x偏光及びy偏光が受ける共通の損失及び位相は偏光誤差計算の最終結果において重要ではないため、(35)の式におけるsの係数は最後のステップにおいて省略することができる。同様に、点31〜光検出器スプライス13までの光の伝播に関して、結合器行列を以下のように書くことができる。
【0104】
【数42】

【0105】
ここで、d123は結合器ピグテール123によってもたらされる位相遅延である。小さいPDSRを式の近似において仮定したが、Hin行列及びHout行列のより一般的な形式を使用する方法の適用を制限するようには意図していない。図5に示しているように、勾配を成す温度変化下での相対的バイアス変動振幅は、PDSRがゼロに近づくにつれて単調減少することが分かる。したがって、小さいPDSR及びPDLを有する結合器を使用してバイアス不安定性を低減することが有利である。
【0106】
偏光誤差を生成するほとんどのスプリアス光は、ファイバスプライスにおける又は光学部品内の交差結合に由来する。したがって、これらの交差結合を可能な限り低減することが有利である。図6は、スプライス32における交差結合(すなわちk32)の関数としての相対的バイアス誤差の依存を示している。k32が小さければより小さいバイアスが生じることは明白である。2つのPMファイバ間のスプライスにおける交差結合を低減する、一実施形態による方法は、同一又は同様のファイバタイプを使用することである。接合点において引き起こされる歪みは、2つの接続ファイバが同じモードフィールド直径、応力要素、及び屈折率を有する場合に低減する。
【0107】
偏光誤差の計算において、振幅タイプ偏光誤差がIOC偏光消光比(PER)εに比例し、強度タイプ誤差がεに比例することに気付くことができる。一例として、図7は、IOC PERの関数としての、偏光誤差によって誘発される相対的バイアス不安定性の計算を示している。実際に、より小さいPERを有するIOCを選択することによって、バイアス変動振幅を低減することができる。
【0108】
デポラライザ200及びPMファイバ15の設計は、一実施形態による、ジャイロバイアス誤差を低減する効率的な方法である。図1の例において示されているように、デポラライザ200は2つの部分210及び220から成る。部分210は2本のPMファイバ21及び23から成り、偏光軸がスプライス22において互いに対して約45度で配置されている。部分220は2本のPMファイバ26及び28から成り、偏光軸がスプライス27において互いに対して約45度で配置されている。部分15は、遅い光及び速い光がIOC16に入る前にこのような光の遅延を生成する1本のPMファイバである。PMファイバ15、21、23、26、及び28の長さは図1においてそれぞれ、v、z、x、y、及びwとされている。IOCピグテール及び導波管長33、36、38、40、及び41と共に、PMファイバ15、21、23、26、及び28の長さを求めることは、偏光誤差を制御する観点から見て、偏光解消ジャイロスコープの設計において重要である。これらの長さは、広帯域光源干渉に伴う相対的時間遅延を決定する。遅延がより長ければ、干渉縞コントラストが低減し、温度変化下でのバイアス変動が少なくなる。これらのPMファイバの長さを調整することによって、偏光誤差を特定の値未満に制御することが可能である。たとえば図8は、上記で論じたコイルI及びコイルIIをそれぞれ使用するジャイロスコープに関連して、一実施形態によるデポラライザ200の設計の場合の、偏光誤差によって誘発される相対的バイアス変動振幅の、ビート単位におけるPMファイバ15の長さに対する依存を示している。長さvを誤差ピーク領域から遠く離れたところで選択することは、偏光誤差によって誘発されるバイアス不安定性を低減する効率的な方法である。
【0109】
一実施形態では、長さwは、長さxの概ね2倍であるように選択される(すなわちw=2x)。加えて、デポラライザ部分210及び220の物理的長さは概ね同じに保たれる(すなわちz=x+y)。部分210、220は、複数の対称点と共にコイル10上に巻き付けることができる。対称点とはすなわち、IOC内の分割点17から測定した場合に等しい光路長を有し、温度変動によって誘発される非可逆位相雑音(すなわち、いわゆるシュッペ効果によって誘発される雑音)を回避するために互いに対して近くに配置される点である。デポラライザ全長を最小化するために、長さy及びIOCピグテール長33、36、及び37を可能な限り短く選択することができる。モデルのこのような一実施形態では、x及びvの最適な長さは、IOC、結合器、及びコイル特性が既知となると求められる。
【0110】
デポラライザ及びPMファイバ15の設計を最適化する方法を示す一例として、図9a及び図9bにおいて示されている等高線図において、勾配を成す温度変化下での、計算された相対的バイアス変動振幅をx及びvの関数としてグラフ化する。図9aは、相対的に小さい複屈折を有する、図3に関連付けられているコイルIを使用するジャイロスコープに関して描画されている。図9bは、相対的に大きい複屈折を有する、図3に関連付けられているコイルIIを使用するジャイロスコープに関して描画されている。両方の図において、暗い領域におけるバイアス誤差は明るい領域におけるバイアス誤差よりも大きい。比較のために図9a及び図9bでは同じ色コードを使用している。幾つかのv−x領域は低いバイアス誤差を示し、したがって好ましいものとすることができる。これらの領域は、A、B、C、D、及びEとマークされている。これらは、大きいバイアス変動振幅を有する5つの暗い領域間に配置されている。図9a及び図9bの比較から、コイル複屈折がジャイロスコープ設計に対して大きな影響を有することが分かる。コイル複屈折が大きいと、最適な設計領域が最小化し、相対的に最適な設計領域における背景バイアス誤差がより大きくなる。
【0111】
図9a及び図9bをさらに参照すると、南西−北東方向に概ね沿った4つの狭い暗い領域が以下に近いv−x関係を有することが分かる:
v=4x+y−d32−27 AとBとの間のリッジ
v=3x−d32−27 BとCとの間のリッジ
v=2x−d32−27 CとDとの間のリッジ
v=x−d32−27 DとEとの間のリッジ (37)
ここで、d32−27=LIOC+y+d33+d38は、32と27との間の光路の速い光及び遅い光の相対的位相遅延である。この光路は、IOC導波管41、ピグテール33及び38、並びにデポラライザPMファイバ26を含む。高バイアス不安定性のこれらの領域は、感知ループ10を通って進むIOC通過(passed)(x偏光)波及びIOC非通過(rejected)(y偏光)波の干渉に由来する振幅タイプ偏光誤差に関連付けられる。設計の好ましい選択は多くの場合、領域Aに位置する。これは、そのより大きい低誤差領域がコイル不確定性に対してより多くの余地を提供するためである。しかしながら、領域Aにおける設計では、デポラライザ及びPMファイバ15の長さをより長くしなければならない場合がある。これは、ジャイロのパッケージング及びシュッペ効果の制御に関して問題であり得る。領域B、C、D、及びEはしたがって、PMファイバ長を低減するための設計選択において対象となる。
【0112】
しかしながら、デポラライザx長を特定の値未満に低減することはできない。図9a及び図9bの左側の、垂直に配置されている領域がより広いと、長さxが小さすぎる場合、バイアス性能が徐々に低減する可能性がある。この領域は、PMファイバ15長vの影響を受けない偏光誤差に関連付けられる。このような誤差は大抵の場合、同じ偏光軸においてPMファイバ15を通過する波間の干渉に由来する。デポラライザ長xが増大すると、このタイプの誤差が低減する。
【0113】
偏光解消ジャイロスコープの一実施形態の別の例示として、長さx及びwを、関係w=2xを維持することなく別個のパラメータとして最適化することができる。このような一実施形態では、長さyは固定値に設定することができ、w+yはx及びzの和に等しいように設定される(すなわち、z=y+w−x)。したがって、デポラライザ部分210及び220は同じ長さを有する。次に、PMファイバ15はまず、大きい値に設定することができる。本明細書の他の部分において論じるように、長さvを非常に大きな値に設定することによって、vの影響を受けない誤差を最小化することができることが既知である。ここで、この設計を、x及びwの最適長を求めることに変えることができる。最適なx及びwがvの影響を受けない偏光誤差を最小化することが分かると、vの影響を受ける偏光誤差を低減するようにPMファイバ15長vを求めることができる。以下において、上記で論じた一実施形態において使用されたw=2xが実際に、より良好なバイアス安定性のためのw−x関係の最適な選択のうちの1つであることが分かるであろう。
【0114】
図10a及び図10bは、コイルI及びコイルIIをそれぞれ使用する、x及びwの関数としての相対的なバイアス変動振幅計算結果のグラフを示している。低バイアス不安定性を提供する複数の設計領域が存在する。特に、領域F、G、H、及びJは、相対的に短いデポラライザファイバ長を提供するため、より重要である場合が多い。領域Fは、w=x/2又はx=2wのw及びxの間の近似的関係を有する。領域Gはw=xの関係を有し、これは2つのデポラライザPMファイバ長が略同一であることを意味する。領域Hはw=2xの関係を有する。これは、上述した実施形態において選択され且つ図9a及び図9bを生成する際に使用された。領域H及びFは、対称性の観点からすると同じタイプである(すなわち、x又はwの長さのうちの一方が他方の2倍である)。領域Jはより幅が広い領域であり、領域F、G、及びHのバイアス安定性よりも良好なバイアス安定性を有することができる。
【0115】
一実施形態は、たとえば、実質的に図10a及び図10bに示されているF、G、H、及びJの領域におけるデポラライザファイバ部分長w及びxの最適値を選択して、vの影響を受けない偏光誤差を最小化しながら、vを十分に長い長さに設定するために、勾配を成す温度変化の手法を使用することを含む。1つの例示的な実施形態では、wは実質的に8000Lに等しく、xは実質的に4000Lに等しく、yは実質的に500Lに等しく、zは実質的に4500Lに等しい。付加的に、vは、実質的に16500Lよりも長いか(図9a及び図9bにおける領域A)、実質的に12500Lに等しいか(図9a及び図9bにおける領域B)、8000Lに等しいか(図9a及び図9bにおける領域C)、実質的に4000Lに等しいか(図9a及び図9bにおける領域D)、又は実質的に1000L未満(図9a及び図9bにおける領域E)とすることができる。
【0116】
これらの領域における相対的バイアス振幅は、x=4000L、y=500L、及びw=8000Lが選択されるときに、バイアス対PMファイバ長vのグラフである図8を再び参照することによってはっきりと見てとることができる。ここでも同様に、実線はコイルIに関連付けられており、破線はコイルIIに関連付けられている。図示されているように、v>16500L、v=12500L、及びv=8000L辺りの、より大きいv値領域(A、B、及びC)を使用する設計は、v=4000L及びv<1000L辺りの、より小さいv値領域(D及びE)を使用する設計よりも、ファイバ長不確定性に対して良好な耐性を有する。
【0117】
上記のように本発明の好ましい実施形態を図示及び説明したが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく多数の変更を行うことができる。したがって、本発明の範囲は、好ましい実施形態の開示によって限定されない。代わりに、本発明は、以下の特許請求の範囲を参照することによって全体的に画定されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバジャイロスコープにおけるバイアス不安定性を低減するコンピュータ実施可能な方法であって、
コンピュータ(100)を用いて第1のデータセットを受信するステップであって、該第1のデータセットは、光源(11)、光検出器(14)、並びに該光源(11)と該光検出器(14)とを結合する複数の光学部品及び複数のファイバ部分、並びに前記光源(11)から前記光検出器(14)まで伝播する光信号を含む、前記ジャイロスコープのモデル(1)を前記コンピュータ(100)が生成することを可能にし、前記光信号は関連付けられる波長スペクトルを有する、受信するステップと、
前記スペクトルの波長ごとに、前記光検出器(14)に到達する相対的光波強度を計算するステップと、
前記計算された相対的光波強度から、信号波強度及びスプリアス波強度を求めるステップと、
前記信号波強度からスケールファクタを求めるステップと、
前記光源(11)の前記波長スペクトルにわたって前記スプリアス波強度を積分するステップであって、全スプリアス波強度を得る、積分するステップと、
前記全スプリアス波強度及び前記スケールファクタに基づいて、速度バイアス誤差を求めるステップと、
前記速度バイアス誤差を表示するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記コンピュータ(100)が前記ジャイロスコープモデル(1)を変更すると共に前記速度バイアス誤差を低減することを可能にする第2のデータセットを、前記コンピュータ(100)を用いて受信することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
複数のファイバ部分を含む光回路を備える光ファイバジャイロスコープにおけるバイアス不安定性を低減する方法であって、
前記光回路の少なくとも1つの部分に、勾配を成す温度変化を適用するステップと、
前記勾配を成して温度が変化する少なくとも1つの部分に関連付けられる少なくとも1つのバイアス変動を測定するステップと、
前記少なくとも1つのバイアス変動の少なくとも1つの温度期間を求めるステップと、
少なくとも一対の前記ファイバ部分に関連付けられると共に前記温度期間に対応する少なくとも1つの交差結合点を特定するステップと、
前記少なくとも1つのファイバ部分対のうちの少なくとも一方のファイバ部分を変更するステップと、
を含む、方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3a】
image rotate

【図3b】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9a】
image rotate

【図9b】
image rotate

【図10a】
image rotate

【図10b】
image rotate

【図11】
image rotate