説明

光ファイバセンサとこれを用いた測定方法、および光ファイバセンサを備えたコンクリート構造物

【課題】所望位置へ簡単に配置でき安価に実施できるうえ、コンクリート構造物の歪や温度等を簡単に且つ正確に測定できるようにする。
【解決手段】光ファイバセンサ(1)は、光ファイバ(2)と、その周囲に配置された連続繊維(3)と、連続繊維(3)に含浸された結合剤とを備える。光ファイバ(2)は、長さ方向の中間部が、連続繊維(3)で製紐された紐体(5)により被覆してある。光ファイバ(2)には、紐体(5)で覆われた部位に1又は複数のFBG(9)が形成してある。光ファイバ(2)の端部をコンクリート構造物(14)の表面に取り出した状態で、コンクリート構造物(14)の内部に、光ファイバセンサ(1)の中間部を一体的に埋設する。取り出された光ファイバ(2)の端部に測定器(15)を接続して、コンクリート構造物(14)の歪や温度を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続繊維で補強された光ファイバセンサに関し、さらに詳しくは、所望位置へ簡単に配置でき安価に実施できるうえ、コンクリート構造物の歪や温度等を簡単に且つ正確に測定できる、光ファイバセンサと測定方法、及び光ファイバセンサを備えたコンクリート構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
構造物等に生じた歪や温度を測定するセンサとして、光ファイバにファイバブラッググレーティング(Fiber Bragg Grating、以下、FBGと略す)を形成した、光ファイバセンサが知られている。このFBGはグレーティング(回折格子)のピッチが張力や温度により変化すると、その変化に応じて、グレーティングから反射する光のピーク波長(ブラッグ波長)が変化すること、あるいはグレーティングを透過する光のスペクトル(ディップ光の中心波長)が変化することを利用するものである。この光ファイバのFBG形成部をコンクリート構造物に取り付けておき、FBGに伝わった歪を測定することで、その構造物に生じた歪などが正確に測定される。
【0003】
上記の光ファイバセンサに用いられる光ファイバは、直径が例えば125μmの極めて細いグラスファイバにより形成されており、これをUV硬化樹脂や熱可塑性樹脂で被覆した状態でも直径が1mm以下と細く、構造物へ取り付ける際などの取扱いには、折れたり損傷を与えたりしないよう、十分に注意を払う必要があった。
【0004】
これを解消するため、アラミド繊維などの織物に光ファイバを編み込んで保護すること(例えば、特許文献1参照。)や、繊維材料を硬化樹脂で硬化させたテープ内に光ファイバを埋め込んで保護すること(例えば、特許文献2参照。)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−058835号公報
【特許文献2】特開2007−225785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の従来技術は、上記の織物や繊維材料テープ内への光ファイバの組込み作業が容易でなく、光ファイバを折損する虞があるうえ、作業が煩雑である。またこれらの光ファイバセンサは、構造物等の表面に接着剤で固定されるが、これではその構造物の表面での歪しか測定できず、構造物全体の挙動を測定するとは言い難い。そこで、この構造物の内部に生じている歪を正確に測定するには、その構造物の周囲の全ての表面について歪を測定し、それらの測定結果を総合して算出する必要がある。このため、上記の従来技術による測定方法では、多数の光ファイバセンサと測定器が必要であり安価に実施できないうえ、それら多数の測定結果を総合して算出しなければならず、測定作業がきわめて煩雑になる問題があった。
【0007】
また従来の技術では、上記の光ファイバセンサを構造物等の表面へ長期に亘ってしっかりと固定するため、熱硬化型などの接着剤により固定されている。しかしこれらの接着剤は固く伸度が低く、応力等で構造物等の寸法が変化した際、その変化にこれらの接着剤が容易に追随できない。この結果、その変化が光ファイバセンサへ伝わりにくいうえ、取付面との間の寸法差によりこの接着剤がその表面から剥離し易く、例えば地震などで構造物にひび割れを生じると、その部分で剥離して光ファイバセンサが落下する虞があり、構造物の歪や温度を測定できなくなる問題がある。
【0008】
さらに上記の従来技術では、補強材として用いる高強度繊維の少なくとも一部を、光ファイバの長さ方向と同じ方向に揃えて配置している。これらの高強度繊維は伸度が低いことから、この高強度繊維が抵抗となって光ファイバが構造物の変化に追随し難くなり、構造物に生じた歪を正確に測定できない虞や、剥離を生じる虞がある。
【0009】
本発明はこれらの問題点を解消し、所望位置へ簡単に配置でき安価に実施できるうえ、コンクリート構造物の歪や温度等を簡単に且つ正確に測定できる、連続繊維で補強された光ファイバセンサと、これを用いる歪測定方法及び、この光ファイバセンサを用いたコンクリート構造物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記の課題を解決するために、例えば本発明の実施の形態を示す図1から図4に基づいて説明すると、次のように構成したものである。
即ち、本発明1は光ファイバセンサに関し、光ファイバ(2)と、その周囲に配置された連続繊維(3)と、その連続繊維(3)に含浸された結合剤とを備え、上記の光ファイバ(2)は、少なくとも長さ方向の中間部が、上記の連続繊維(3)で製紐された紐体(5)により被覆してあることを特徴とする。
【0011】
また本発明2は光ファイバセンサを用いた測定方法に関し、光ファイバセンサ(1)が有する光ファイバ(2)の少なくとも一端をコンクリート構造物(14)の表面に取り出した状態で、このコンクリート構造物(14)の内部に上記の光ファイバセンサ(1)の少なくとも中間部を一体的に埋設し、その埋設後に、上記の取り出された光ファイバ(2)の端部に測定器(15)を接続して上記のコンクリート構造物(14)の歪や温度を測定することを特徴とする。
【0012】
本発明3は光ファイバセンサを備えたコンクリート構造物に関し、コンクリート構造物(14)の内部に光ファイバセンサ(1)の少なくとも中間部が一体的に埋設されており、この光ファイバセンサ(1)に備えられた光ファイバ(2)の少なくとも一端がコンクリート構造物(14)の表面に取り出してあり、その取り出された光ファイバ(2)の端部に測定器(15)が接続可能であることを特徴とする。
【0013】
本発明1にあっては、上記の光ファイバセンサは、光ファイバの周囲に紐体を連続繊維で製紐したり、紐体の中心部分に光ファイバを挿通したのち、その連続繊維に結合剤を含浸したりするだけでよく、光ファイバを折損することなく簡単に製造される。
この光ファイバセンサは、連続繊維で製紐した紐体の中心部分に光ファイバが挿通された状態となっており、この紐体は含浸された結合剤で固められているので、光ファイバはこの紐体でしっかりと保護されている。このため、この光ファイバセンサは、周囲にコンクリートを流し込んでも、内部の光ファイバが折れたり損傷したりする虞がなく、例えば所定位置にワイヤで取り付けるなどの処置だけで、コンクリート構造物内へ簡単に埋設することができる。
【0014】
本発明2と本発明3にあっては、光ファイバセンサがコンクリート構造物内へ埋設されているので、このコンクリート構造物と良好に一体化している。このため、例えば地震などでコンクリート構造物にひび割れが生じても、接着剤を用いる前記の従来技術と異なって、この光ファイバセンサがコンクリート構造物から剥がれ落ちることがない。
【0015】
そしてこのコンクリート構造物内に埋設された光フアイバセンサは、例えば柱の断面における中央部分など、対象物の測定に必要な部位へ容易に配置することができ、コンクリート構造物の歪や温度など、構造物全体の挙動を直接、容易に測定することができる。
【0016】
上記のコンクリート構造物内に埋設される光ファイバは、少なくとも長さ方向の中間部が連続繊維で製紐された紐体により被覆してあると好ましく、具体的には上記の本発明1の光ファイバセンサであるとより好ましい。上記の紐体は光ファイバをしっかりと保護できるうえ、表面が凹凸状になっていることと相俟って、光ファイバセンサを周囲のコンクリートと良好に一体化することができる。また、上記の連続繊維は光ファイバの周囲へ螺旋状に配置されるので、紐体全体として伸長性があり、周囲のコンクリート構造物の歪や温度変化による挙動に良好に追随できる。この結果、長期間にわたって優れたセンサ性能を安定して発揮することができる。
【0017】
上記の光ファイバを覆う紐体は、編目を広げることで光ファイバの端部をその編目から紐体の外部へ簡単に取り出すことができる。従って、光ファイバを上記の紐体で覆った場合も、この光ファイバの少なくとも一端を、紐体の編目を介してコンクリート構造物の表面に取り出しておくことができ、その取り出された光ファイバの端部に測定器を接続可能に構成することができる。特に、上記の紐体から引き出された光ファイバの端部が接続ボックス内に収容してあり、この光ファイバの先端にコネクタが付設してあると、光ファイバの端部を接続ボックスでしっかりと保護できるうえ、上記のコネクタを介してこの光ファイバの端部に測定器を容易に接続できて好ましい。
【0018】
なお上記の紐体から取り出された光ファイバの端部は、可撓管により覆っておくと光ファイバセンサの取扱いが容易であり、コンクリートの流し込みなどの影響を受けないので好ましい。また上記の光ファイバの一端を取り出したのち、上記の紐体には結合剤を含浸させて固化しておくと、光ファイバを一層良好に保護でき、光ファイバセンサの取扱いが容易となるので好ましい。
【0019】
本発明1〜3において、上記の紐体内に配置する光ファイバは、1本であってもよく、複数本であっても良い。この光ファイバは、歪や温度を測定するセンサとして使用できるものであればよく、特定の構造のものに限定されないが、1又は複数のFBGを形成したものがセンサとして好ましく、特に複数のFBGを備える場合には、1本の光ファイバセンサを用いることで互いに離隔した部位での歪や温度を測定できて、より好ましい。
【0020】
また上記の光ファイバを覆う紐体は、特定の太さや長さに限定されないが、細すぎると取扱い中に折損する虞があり、過剰に太いと構造物の歪等を光ファイバへ良好に伝達できない虞があるので、例えば外径が3〜30mm程度が好ましい。
またこの光ファイバセンサは、取扱いや汎用性から直線状であると好ましいが、U字型や円弧状など、構造物の配置部位での形状に応じた任意の形状に成形したものであってもよい。
【0021】
上記の連続繊維は、特定の材質のものに限定されず任意の繊維材料であってもよいが、高強度繊維であると好ましく、例えばアラミド繊維、ポリエステル繊維、高強度ポリオレフィン繊維、強力ポリアミド繊維、強力ポリビニルアルコール繊維等の有機繊維や、例えば炭素繊維、ガラス繊維、セラミック繊維等の無機繊維などが挙げられ、単独であるいはこれらを組み合わせて用いることができる。
中でも特に好ましいのは、アラミド繊維である。アラミド繊維は、パラ系アラミド繊維またはメタ系アラミド繊維に大別でき、具体的には、パラ系アラミド繊維として、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維や、コポリパラフェニレン−3,4’−ジフェニルエーテルテレフタルアミド繊維などが挙げられ、メタ系アラミド繊維として、例えば、ポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維などが挙げられる。本発明においては、パラ系アラミド繊維が好適に用いられ、中でも、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維は特に好適に用いられる。上記パラ系アラミド繊維の中でも、引張弾性率が90kN/mm以上であるアラミド繊維が、特に好適に用いられる。
【0022】
上記の結合剤は、連続繊維に含浸可能で、これらの連続繊維を一体的に結合して固化されるものであればよく、例えばエポキシ系、ポリエステル系、ビニルエステル系、フェノール系、ポリイミド系等の常温硬化性または熱硬化性樹脂等の有機系結合剤や、例えば水ガラスなど、アルカリ金属ケイ酸塩系、コロイダルシリカ系、リン酸塩系、セメント系等の常温硬化型または加熱硬化型の無機系結合剤、或いは、例えばタールなどの常温硬化型または加熱硬化型の有機・無機複合材料等を用いることができる。中でも特に好ましいのは、エポキシ樹脂である。特に上記のコンクリート構造物が、核融合炉施設や原子力発電施設など、放射線を多量に受ける虞がある場合は、エポキシ樹脂の中でも、放射線耐久性が90MGy以上であるエポキシ樹脂が特に好ましい。ここで、放射線耐久性が90MGy以上とは、サンプルに90MGy以上の放射線を照射した後の、そのサンプルの引張強度が90%保持されていることをいう。
【0023】
上記の紐体は、公知の手段を用いて製紐することができ、通常は組紐機(製紐機)を用いて行われ、例えば、丸打ちや角打ち等、任意の組紐に編成してもよいが、丸打ちであると紐体表面から光ファイバまでの寸法を均等にできるのでより好ましい。これらの製紐に用いる連続繊維からなるストランドの本数は、4本に限らず、8本、12本または16本等、所望の本数を用いることができる。
【0024】
なお上記の紐体は、連続繊維に結合剤を含浸させた後、所望により、コンクリート付着性を向上させるために、表面に、例えば砂、シリカ等の粒状物を付着させてもよい。この粒状物の粒径は、本発明の目的を損なわない限り任意の大きさに設定できるが、約0.1〜5mm程度であることが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明は上記のように構成され作用することから、次の効果を奏する。
(1)本発明1にあっては、光ファイバを折損することなく簡単に製造できるうえ、光ファイバを紐体とこれに含浸した結合剤とでしっかりと保護することができ、取扱いが容易であるうえ、コンクリート構造物内へ簡単に埋設することができる。
(2)本発明2と本発明3にあっては、光ファイバセンサをコンクリート構造物と良好に一体化されるので、例えば地震などでコンクリート構造物にひび割れが生じても構造物から離れ落ちることがなく、このコンクリート構造物に生じた歪や温度を長期間にわたって測定することができる。
(3)光ファイバセンサはコンクリート構造物内に埋設されているので、コンクリート構造物の歪や温度など、構造物全体の挙動を直接測定できることから、前記の従来技術と異なって、少数のセンサを用いて所望位置へ簡単に配置でき安価に実施できるうえ、構造物に生じた歪や構造物の温度等を正確に且つ簡単に測定することができる。
【0026】
(4)本発明2や本発明3において、上記の本発明1の光ファイバセンサを用いた場合には、上記の光ファイバを紐体でしっかりと保護できるうえ、光ファイバセンサを周囲のコンクリートと良好に一体化することができる。しかも、上記の連続繊維は光ファイバの周囲へ螺旋状に配置されるので、光ファイバセンサは周囲のコンクリート構造物の歪や温度変化による挙動に良好に追随でき、長期間にわたって優れたセンサ性能を安定して発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態を示し、図1(a)は光ファイバセンサの側面図、図1(b)は図1(a)のB部を拡大した一部破断図である。
【図2】本発明の実施形態の、光ファイバセンサの一部破断斜視図である。
【図3】本発明の変形例の、光ファイバの挿通手順を示す概略構成図である。
【図4】本発明の実施形態の、光ファイバセンサを埋設したコンクリート構造物を示す、概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面に基づいて本発明を具体的に説明する。
図1(a)と図2に示すようにこの実施形態の光ファイバセンサ(1)は、光ファイバ(2)と、その周囲に配置された連続繊維(3)と、その連続繊維(3)に含浸された結合剤とを備える。上記の連続繊維(3)は互いに組み合わせて紐体(5)に製紐してある。
上記の光ファイバ(2)は、長さ方向の中間部が上記の紐体(5)により被覆してあり、両端部が上記の紐体(5)の外側に引き出してある。この引き出された光ファイバ(2)の各先端部は接続ボックス(6)内に収容されている。この光ファイバ(2)の先端にコネクタ(7)が付設してあり、上記の接続ボックス(6)と紐体(5)との間の光ファイバ(2)は、可撓管(8)で覆ってある。
【0029】
上記の光ファイバ(2)はコアとクラッドからなり、上記の紐体(5)に覆われた長さ方向の中間部に複数のFBG(9)が形成してある。図1(b)と図2に示すように、この光ファイバ(2)は、UV硬化樹脂による一次被覆層(10)と、熱可塑性樹脂による二次被覆層(11)とで被覆してある。この両被覆層(10・11)を有するものは光ファイバ心線ともいう。上記の光ファイバは、通常、これらの被覆層を有するが、本発明の光ファイバはこの被覆層を省略したものであってもよい。そこで本明細書では、便宜上、この光ファイバ心線も含めて「光ファイバ」と称する。
【0030】
上記の連続繊維(3)は高強度繊維からなり、好ましくはパラ系アラミド繊維からなる。上記の紐体(5)は、上記の連続繊維(3)からなる任意の太さのストランド(12)を、任意の本数だけ用いて製紐される。例えば、約10デニールのパラ系アラミド繊維からなる、約6000デニールのストランド(12)を、例えば8本用いて丸打紐状に編成することで、例えば直径約2.5mm程度の紐体(5)に製紐される。
【0031】
一方、上記の結合剤は、エポキシ樹脂や水ガラス、タールなどが用いられ、好ましくはエポキシ樹脂が用いられる。これらの結合剤は、上記の紐体(5)で上記の光ファイバ(2)の中間部を覆ったのち、上記の連続繊維(3)に含浸され、その後固化される。
【0032】
上記の光ファイバセンサ(1)は、具体的には、例えば次の手順で製造される。
最初に上記の連続繊維(3)からなるストランド(12)を、例えば8本用いて製紐装置により製紐する。このとき、図2に示すように、製紐される紐体(5)の中心部分に芯材として上記の光ファイバ(2)を配置しておいてもよい。しかし製紐の際には芯材に直径方向の締付け力が加わる。このため、上記の製紐の際、光ファイバ(2)に沿って合成繊維などの補強糸を紐体(5)の中心部分に追加してもよい。
【0033】
或いは、上記の製紐の際、上記の光ファイバ(2)に代えて、合成繊維などの導入用線材を芯材として用い、製紐したのち、図3の変形例に示すように、この導入用線材(13)の端部に光ファイバ(2)を連結して、導入用線材(13)を図3に示す矢印の方向へ引き抜くことで、光ファイバ(2)を紐体(5)の中心部分へ案内し挿通してもよい。
【0034】
次いで、得られた紐体(5)を緩み用ロール間に走行させて、各ストランド間および細線間に緩みを入れ、光ファイバ(2)の端部近傍で編目を広げ、光ファイバ(2)の端部をその編目から紐体(5)の外部へ取り出す。
上記の導入用線材(13)を用いる場合は、紐体(5)に上記の緩みを入れたのち、導入用線材(13)の端部を紐体(5)の編目から引き出して光ファイバ(2)と連結し、この導入用線材(13)を引き抜くことで、光ファイバ(2)の中間部を紐体(5)の中心部分へ案内し挿通してもよい。
【0035】
上記の紐体(5)の外部に引き出された端部は可撓管(8)を被せて覆い、この可撓管(8)の先端に接続ボックス(6)を取り付け、この可撓管(8)の先端から飛び出した光ファイバ(2)の先端部を接続ボックス(6)内に収容し、光ファイバ(2)の先端にコネクタ(7)を付設する。なお、上記の接続ボックス(6)は、下記に説明する結合剤の含浸や硬化の処理の後で、可撓管の先端に取り付けてもよい。
その後、上記の緩みが入った紐体(5)を、例えばエポキシ樹脂等の結合剤が収容された含浸槽に通過させて、この紐体(5)に結合剤を含浸させる。このとき結合剤が上記の可撓管(8)内に浸入すると光ファイバ(2)が固結されて可撓性を失うので、可撓管(8)の基端側(紐体側)の端部を合成樹脂等で閉塞しておくと好ましい。
【0036】
次いで、上記の紐体(5)の表面から余剰の結合剤をスクイズ等で拭い取り、この結合剤が含浸された紐体(5)に所望の張力を付与しながら走行させて、温度約80〜120℃程度に設定された第1加熱炉を通過させ、結合剤の粘度を下げると共に脱気、脱泡して、紐体(5)を構成する連続繊維(3)の周囲に結合剤を充分に含浸させる。次に、この紐体(5)の表面の余剰結合剤を第1加熱炉の出口側で拭い取り、必要に応じて、その表面に粒径約0.1〜5mm程度の砂、シリカヒューム等の粒状物をホッパーから落下供給して付着させたのち、この粒状物が付着した紐体(5)を温度約120〜250℃程度に設定された第2加熱炉を通過させ、本硬化を行う。その後、この紐体(5)を温度約80℃程度以下に設定された冷却炉を通過させて常温まで冷却する。
【0037】
なお、上記の光ファイバセンサ(1)を曲げ状に形成する場合は、上記の紐体(5)に結合剤を含浸させ、所望により砂付けしたのち、所望の形状をした成形枠にセットし、加熱炉で加熱して上記の結合剤を硬化させる。
【0038】
上記の光ファイバセンサ(1)は、周囲のコンクリートと良好に一体化する。しかもこの光ファイバセンサ(1)は、金属製のセンサと異なって優れた電気抵抗率、電磁波透過性、磁化率等を有するうえ、優れた耐アルカリ性や耐熱性を備えており、さらに結合剤の材質を設定することで、優れた放射線耐久性等を備えることができる。また上記の連続繊維として上記のアラミド繊維や炭素繊維、ガラス繊維などの高強度繊維を用いると、これらの連続繊維は優れた引張強度と引張弾性率を備えるので、光ファイバセンサ(1)自体の強度や耐久性を高めることができる。
【0039】
次に、上記の光ファイバセンサ(1)を備えたコンクリート構造物について説明する。
図4に示すように、例えば柱などのコンクリート構造物(14)の内部に、上記の光ファイバセンサ(1)の中間部が一体的に埋設してある。この光ファイバセンサ(1)が備える上記の光ファイバ(2)は、一端がコンクリート構造物(14)の表面に取り出してあり、この端部に付設された上記の接続ボックス(6)がそのコンクリート構造物(14)の表面に固定してある。なお、この光ファイバ(2)の図外の他端部も、同様に処置されてコンクリート構造物(14)の表面に取り出され、この端部に付設された接続ボックスがこのコンクリート構造物(14)の表面に固定してある。上記の接続ボックス(6)内の光ファイバ(2)の端部には、上述の通りコネクタ(7)が敷設してあり、このコネクタ(7)を介して上記の光ファイバ(2)に測定器(15)が接続される。
【0040】
上記の光ファイバセンサ(1)は、上記のコンクリート構造物(14)を形成する際に、鉄筋にワイヤで取り付けるなどして、予め所定位置に配設し、端部の接続ボックス(6)はコンクリート構造物(14)の表面に位置するように配置しておく。この状態でコンクリートを打設すると、光ファイバセンサ(1)内の光ファイバ(2)は、中間部が上記の結合剤を含浸した紐体(5)で保護され、端部が上記の可撓管(8)で保護されているので、折損することなくそのコンクリート構造物(14)内の所定位置に保持される。
なお、上記の光ファイバセンサ(1)の配設は、例えば柱などコンクリート構造物(14)の断面における、周辺部に変位した位置であってもよいが、この光ファイバセンサ(1)をコンクリート構造物(14)の断面における中央部分やその近傍に配置すると、その構造物全体の歪をより正確に測定できて好ましい。
【0041】
上記のコンクリート構造物(14)の内部に埋設された光ファイバセンサ(1)は、接着剤等を用いないので経年変化を受けることなく、長期間にわたって周囲のコンクリートと一体化することができる。しかも上記の光ファイバセンサ(1)は、特に上記の連続繊維(3)がアラミド繊維などの高強度繊維であると、優れた強度や耐久性を有する。このため、仮にコンクリート構造物(14)にひび割れを生じても、上記の連続繊維(3)からなる紐体(5)で保護されている光ファイバ(2)は、切断したりコンクリート構造物(14)から離脱したりする虞がなく、長期にわたって優れたセンサ性能を安定して発揮することができる。
さらに上記の連続繊維(3)が高強度繊維である場合、結合剤が含浸された紐体(5)の引張強度が高いので、この光ファイバセンサ(1)をコンクリート補強用の鉄筋に代用することも可能である。
【0042】
上記の光ファイバセンサ(1)は、上記の紐体(5)の表面が凹凸状に形成されていることもあって、周囲のコンクリートと良好に一体化しており、コンクリート構造物(14)の挙動に良好に追随する。例えば、このコンクリート構造物(14)が応力や温度により歪を生じると、その歪が光ファイバ(2)に伝わり、FBG(9)のピッチが変化する。そこで、上記の接続ボックス(6)内の光ファイバ(2)の端部に、コネクタ(7)を介して測定器(15)を接続し、グレーティングからの反射光またはグレーティングの透過光を測定することで、このコンクリート構造物(14)に生じた歪や温度が正確に測定される。上記の測定は光ファイバ(2)の端部に測定器(15)を接続するだけでよいので、コンクリート構造物(14)に生じた歪等を、任意のタイミングで、或いは連続的に、測定することができる。
【0043】
上記の実施形態や変形例で説明した光ファイバセンサや測定方法、コンクリート構造物等は、本発明の技術的思想を具体化するために例示したものであり、光ファイバや連続繊維、結合剤等は上記の実施形態や変形例のものに限定するものではなく、本発明の特許請求の範囲内において種々の変更を加え得るものである。
【0044】
例えば上記の実施形態ではいずれもFBGを形成した光ファイバを用いる場合について説明した。しかし本発明に用いる光ファイバは、構造物の歪や温度を測定できるものであればよく、例えばB−OTDR方式、OTDR方式、MDM方式、干渉方式、光学ストランド方式など、他の任意の方式に用いる光ファイバであってもよい。
【0045】
また上記の実施形態では、光ファイバが紐体で覆われた光ファイバセンサをコンクリート構造物内に埋設した。しかし本発明では、結合剤が含浸された紐体以外で保護したものであってもよい。ただし光ファイバを、上記の実施形態のように結合剤が含浸された紐体で覆うと、光ファイバを良好に保護するとともに、コンクリートと確実に一体化できて、好ましい。
また上記の実施形態では、いずれも紐体の両端部近傍からそれぞれ光ファイバを紐体の外部へ取り出した。しかし本発明では、紐体の先端から光ファイバを取り出してもよく、また紐体の一方の端部のみから光ファイバを取り出したものであってもよい。
【0046】
上記の実施形態では、連続繊維としてパラ系アラミド繊維を用い、結合剤としてエポキシ樹脂を用いる場合について説明した。しかし本発明では、上記の紐体を構成する上記の連続繊維や結合剤の材質はこれらのものに限定されず、連続繊維の太さやこれで構成したストランドの太さ、本数なども上記の実施形態のものに限定するものではない。
また本発明では、上記の光ファイバに形成するFBGの数や、紐体内に配置する光ファイバの本数を、それぞれ任意に設定することができ、これらも上記の実施形態のもに限定されない。
さらに上記の実施形態では、コンクリート構造物が柱である場合について説明した。しかし本発明のコンクリート構造物は、梁や橋梁、壁など、他の構造物であってもよく、これらの構造物のいずれの部位に1又は複数の光ファイバセンサを埋設してもよいことは、言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の光ファイバセンサは、所望位置へ簡単に配置でき安価に実施できるうえ、コンクリート構造物の歪や温度等を簡単に且つ正確に測定できるので、例えば原子力関連施設などをはじめ、さまざまなコンクリート構造物の歪や温度の測定に有用である。
【符号の説明】
【0048】
1…光ファイバセンサ
2…光ファイバ
3…連続繊維
5…紐体
6…接続ボックス
7…コネクタ
8…可撓管
9…FBG
10…一次被覆層
11…二次被覆層
12…ストランド
13…導入用線材
14…コンクリート構造物
15…測定器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ(2)と、その周囲に配置された連続繊維(3)と、その連続繊維(3)に含浸された結合剤とを備え、
上記の光ファイバ(2)は、少なくとも長さ方向の中間部が、上記の連続繊維(3)で製紐された紐体(5)により被覆してあることを特徴とする、光ファイバセンサ。
【請求項2】
上記の光ファイバ(2)には、上記の紐体(5)で覆われた部位に1又は複数のFBG(9)が形成してある、請求項1に記載の光ファイバセンサ。
【請求項3】
上記の連続繊維(3)が高強度繊維からなる、請求項1又は請求項2に記載の光ファイバセンサ。
【請求項4】
上記の紐体(5)から引き出された光ファイバ(2)の端部が接続ボックス(6)内に収容してあり、この光ファイバ(2)の先端にコネクタ(7)が付設してある、請求項1から3のいずれかに記載の光ファイバセンサ。
【請求項5】
光ファイバセンサ(1)が有する光ファイバ(2)の少なくとも一端をコンクリート構造物(14)の表面に取り出した状態で、このコンクリート構造物(14)の内部に上記の光ファイバセンサ(1)の少なくとも中間部を一体的に埋設し、その埋設後に、上記の取り出された光ファイバ(2)の端部へ測定器(15)を接続して上記のコンクリート構造物(14)の歪や温度を測定することを特徴とする、光ファイバセンサを用いた測定方法。
【請求項6】
上記の光ファイバ(2)は、少なくとも長さ方向の中間部が連続繊維(3)で製紐された紐体(5)により被覆してある、請求項5に記載の光ファイバセンサを用いた測定方法。
【請求項7】
上記の光ファイバセンサ(1)は、請求項1から4のいずれかに記載の光ファイバセンサである、請求項5又は請求項6に記載の光ファイバセンサを用いた測定方法。
【請求項8】
コンクリート構造物(14)の内部に光ファイバセンサ(1)の少なくとも中間部が一体的に埋設されており、この光ファイバセンサ(1)に備えられた光ファイバ(2)の少なくとも一端がコンクリート構造物(14)の表面に取り出してあり、その取り出された光ファイバ(2)の端部に測定器(15)が接続可能であることを特徴とする、光ファイバセンサを備えたコンクリート構造物。
【請求項9】
上記の光ファイバ(2)は、少なくとも長さ方向の中間部が連続繊維(3)で製紐された紐体(5)により被覆してある、請求項8に記載の光ファイバセンサを備えたコンクリート構造物。
【請求項10】
上記の光ファイバセンサ(1)は、請求項1から4のいずれかに記載の光ファイバセンサである、請求項8又は請求項9に記載の光ファイバセンサを備えたコンクリート構造物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−104701(P2013−104701A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247048(P2011−247048)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(505374783)独立行政法人日本原子力研究開発機構 (727)
【出願人】(000141060)株式会社関電工 (115)
【出願人】(598072180)ファイベックス株式会社 (24)
【Fターム(参考)】