説明

光ファイバテープ心線の巻取方法および巻取装置

【課題】高精度なトラバースの反転制御を必要とせず、鍔部との接触による伝送特性の悪化や巻崩れの生じない光ファイバテープ心線の巻取方法および巻取装置を提供する。
【解決手段】光ファイバテープ心線10を巻取ボビン11上に整列して巻取る方法および装置であって、光ファイバテープ心線10は、パイプ状のガイド部材14に挿通されて巻取ボビン11に対して相対的にトラバースされ、ガイド部材14の先端部を巻取ボビンの両側鍔部13の内壁面13aに当接するように配置して巻取る。なお、パイプ状にガイド部材14は円筒状で形成され、巻取ボビン11の両側鍔部の内壁部に、発泡ポリエチレン等の弾力性のあるシート部材が貼り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバテープ心線を巻取ボビンに整列させて巻取る光ファイバテープ心線の巻取方法および巻取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバテープ心線は、複数本の光ファイバ素線または着色が施された光ファイバ心線を平行一列に並べて共通の樹脂により一括被覆を施して形成され、一旦、巻取ボビンにより巻取られて保管される。この後、巻取ボビンに巻取られた光ファイバテープ心線は、そのまま出荷されたり、または、スロットロッド等により多数枚の光ファイバテープ心線が集合された多心光ケーブルとされる。
【0003】
光ファイバテープ心線を巻取ボビンに巻取る方法として、例えば、特許文献1に開示の方法が知られている。この巻取方法は、図5に示すように、外周にクッション材4を備えた胴部2の両側に鍔部3を有するボビン5を用い、光ファイバテープ心線1を整列させて台形巻きする。最下層の第1層は、クッション材4により滑りにくく、巻き緩みが生じないようにすることができる。第2層は、第1層より巻取り幅が小さくなるようにトラバースさせ、以下、外側の層に移るにしたがって巻き幅を順に小さくすることにより、台形状に巻取っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006―52042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光ファイバテープ心線を巻取る場合、巻取ボビンの胴部上に光ファイバテープ心線を巻取ボビンの軸方向にトラバースさせながら多層に巻取っている。この光ファイバテープ心線の巻取りは、通常、50g〜350gの巻取張力で行われるが、光ファイバテープ心線に異常な曲げ張力が生じると光信号の伝送特性が悪化するので、光ファイバテープ心線の幅よりわずかに大きいピッチで、胴部上で同じ巻層で重なりが生じないように整列巻きされる。
【0006】
特に、巻取り方向が反転する際に、光ファイバテープ心線に揺れが生じやすく、鍔部に当たって接触していると、光ファイバテープ心線の端側に位置する光ファイバに側圧による伝送特性が悪化する虞がある。特許文献1に開示のように、光ファイバテープ心線が、鍔部に当たらないように台形状に積層することで、前記の伝送特性の悪化は回避することができるが、巻取り方向の反転制御を高精度で行う必要がある。また、台形状に精度よく巻いたとしても巻層が多くなると、トラバース時に巻乱れや輸送時の振動等により巻崩れが生じる虞がある。
【0007】
本発明は、上述のような実状に鑑みてなされたもので、高精度なトラバースの反転制御を必要とせず、鍔部との接触による伝送特性の悪化や巻崩れの生じない光ファイバテープ心線の巻取方法および巻取装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による光ファイバテープ心線の巻取は、光ファイバテープ心線を巻取ボビン上に整列して巻取る方法および装置であって、光ファイバテープ心線は、パイプ状のガイド部材に挿通されて巻取ボビンに対して相対的にトラバースされ、ガイド部材の先端部を巻取ボビンの両側鍔部の内壁面に当接するように配置して巻取ることを特徴する。
なお、パイプ状にガイド部材は円筒状で形成され、巻取ボビンの両側鍔部の内壁部に、発泡ポリエチレン等の弾力性のあるシート部材が貼り付けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光ファイバテープ心線は、各層ともに両側の鍔部に近接する位置まで巻取ることができるので、巻崩れを起こすことを防止することができる。また、ガイド部材のトラバースが慣性により行き過ぎる場合でも、パイプ部材が巻取ボビンの鍔部に当接することでその移動が制限され、光ファイバテープ心線が鍔部に密接して異常な曲げやストレスを受けるのを抑制し、伝送損失が悪化するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態を説明する図である。
【図2】本発明の他の実施形態を説明する図である。
【図3】本発明による光ファイバテープ心線の巻取端部分を示す図である。
【図4】本発明で用いるガイド部材の一例を示す図である。
【図5】従来技術を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1により本発明の実施形態の概略を説明する。図1(A)は巻取ドラムの光ファイバテープ心線の巻取を示す斜視図、図1(B)は上面図である。図において、10は光ファイバテープ心線(テープ心線)、11は巻取ボビン、12は胴部、13は鍔部、13aは内壁面、14はガイド部材、15は支持ブロック、16はトラバース駆動軸、17aは発光素子、17bは受光素子を示す。
【0012】
光ファイバテープ心線10(以下、テープ心線という)は、例えば、4心〜16心の光ファイバ素線または心線を平行一列に並べて、共通の樹脂により一括被覆を施して形成される。このテープ心線10を巻取る巻取ボビン11は、図5に示したのと同様な、胴部12の両端に鍔部13を有する形状のもので、樹脂製またはアルミ金属等で形成したものが用いられる。巻取ボビン11は、巻取駆動機構(図示せず)により回転駆動され、テープ心線10を所定の張力で多層に巻取る。
【0013】
テープ心線10は、パイプ状のガイド部材14に挿通されて巻取ボビン11の胴部12の外周に、軸方向に沿って巻取られる。ガイド部材14は、支持ブロック15に片持ち梁状で固定支持され、支持ブロック15はトラバース駆動軸16に螺合結合される。トラバース駆動軸16は、トラバース制御機構(図示せず)により、所定の回転駆動と反転が制御され、これにより、ガイド部材14が巻取ボビン11のボビン軸に沿ってトラバースされ、テープ心線10を巻取ボビン11の胴部12上に所定のピッチで整列巻きで巻取る。
【0014】
ガイド部材14の先端部は、巻取ボビン11の両側の鍔部13の内壁面13aに当接するように延びていて、このガイド部材14の先端部が鍔部13の内壁面13aに近接または接触することで、ガイド部材14のトラバースの反転位置を検知することができる。ガイド部材14の近接または接触を検知するには、種々のセンサ手段を用いることができる。例えば、図に示すようなレーザ光等を発光する発光素子17aと該レーザ光を受光する受光素子17bからなる光学的なセンサ手段を用いることができる。
【0015】
発光素子17aと受光素子17bは、両素子を結ぶ光路が鍔部13の内壁面13aの外周側領域に近接するように配置される。テープ心線10の巻層が鍔部13の内壁面13aに接触するように接近したとき、受光素子17bによるレーザ光の受光がガイド部材14により遮断され、トラバースの反転位置を検出し、トラバース制御機構に反転信号を送出し、テープ心線10の巻層を+1とするとともに、巻取り方向を反転させる。
【0016】
なお、上記の光学的なセンサ手段に変えて、電気的な接触によるセンサ手段を用いることもできる。例えば、巻取ボビン11を導電性のある金属で形成されている場合、ガイド部材14を金属製とすれば、鍔部13の内壁面13aとガイド部材14との接触による検出、あるいは、鍔部13の内壁面13aとガイド部材14の接近による静電容量の変化の検出等に近接状態の検出を用いたセンサ手段を用いることができる。
【0017】
上記構成において、テープ心線10を巻取ボビンに巻取る際に、胴部12上に整列巻きで巻かれた後、ガイド部材14が鍔部13に近接または接触することで、巻取り方向を反転させ、反対方向に巻取りを開始させる。この時、後述するように、少なくともガイド部材14が鍔部13の内壁面13aに当接して、ガイド部材14のパイプ厚み相当分を残してテープ心線10の巻取り方向を反転させることができる。この結果、テープ心線10は、鍔部13には接触することなく上層への巻取りを開始することが可能となる。
【0018】
図2は他の実施形態を説明する図で、テープ心線10を巻取る巻取ボビン11’は、図1に示したのと同様な、胴部12の両端に鍔部13を有する形状のもので、樹脂製またはアルミ金属等で形成したものが用いられる。ただ、鍔部13の内壁面13aには、外周部を残してテープ心線10が多層に積層される領域に弾力性のあるシート部材18が貼り付けられている。シート部材18としては、例えば、発泡率が5倍以上あるような発泡ポリエチレン等で形成され、ものが当たったときに、その当接部の応力を緩和するクッション機能を有する材料で形成される。
【0019】
図1の例と同様に、巻取ボビン11は巻取駆動機構により回転駆動され、ガイド部材14により案内されたテープ心線10は、巻取ボビン11の胴部12の外周にボビン軸の軸方向に沿って所定の張力で多層に巻取られる。ガイド部材14は、支持ブロック15に片持ち梁状で固定支持され、支持ブロック15はトラバース駆動軸16に螺合結合される。トラバース駆動軸16は、トラバース制御機構により所定の回転駆動と反転が制御され、これによりガイド部材14の先端部が巻取ボビン11のボビン軸に沿ってトラバースされ、テープ心線10は巻取ボビン11に所定のピッチで整列巻きで巻取られる。
【0020】
ガイド部材14の先端部は、少なくとも巻取ボビン11の両側の鍔部13の内壁面13aの周辺に当接するように延びていて、このガイド部材14の先端部が鍔部13の内壁面13aに近接または接触することで、ガイド部材14のトラバースの反転位置を検知することができる。ガイド部材14の近接または接触を検知するには、図1で説明したように種々のセンサ手段を用いることができる。
【0021】
上記構成において、テープ心線10を巻取ボビンに巻取る際に、胴部12上にテープ心線10が整列巻きされた後、発光素子17aと受光素子17bからなるセンサ手段によりガイド部材14が鍔部13に近接または接触を検知することで、巻取り方向が反転され、反対方向への巻取りが開始される。この時、次に説明するように、少なくともガイド部材14が鍔部13の内壁面13aに接触することで、ガイド部材14のパイプ厚み相当分を残してテープ心線10の巻取りを反転させることができる。しかし、慣性によりテープ心線10の反転に多少の遅れが発生することがあるが、このような場合でも、シート部材18のクッション機能によりテープ心線10が鍔部13に直に当接するのを防止し、伝送損失の低下の原因となる曲げの発生を抑制することが可能となる。
【0022】
図3は、巻取ボビンの鍔部13の近傍における巻取状態を示す図で。図3(A)は図1(A)の実施形態の場合、図3(B)は図2の実施形態の場合を示す。図3(A)に示すように、ガイド部材14がパイプ状でその先端部が両側の鍔部13の内壁面13aに当接するような位置にあることから、ガイド部材14の鍔部13への近接位置の検出を確実で精度よく行うことができる。このため、テープ心線10と鍔部13の内壁面13aとの間隙Dを所定の範囲に制御することができる。
【0023】
間隙Dは、テープ心線幅をWmmとすると、(0.9×W)mm以下で0.1mm以上となるように設定されていることが望ましい。また、図3(B)に示すように、クッション機能を有するシート部材18を備えることにより、実質的な間隙Dをより小さくすることができる。この結果、テープ心線10が鍔部13に当たって異常な曲げが生じるのを防止し、また、巻崩れを起こすことなく巻取ることが可能となる。
【0024】
図4は、テープ心線を巻取ボビンに案内するガイド部材の例を示す図である。本発明で用いるガイド部材は、ステンレス等の比較的に耐摩耗性、強度、すべり特性等に優れた、例えば、ステンレスのような金属で形成され、基本的には円筒形状のものが好ましい。これは、テープ心線10の両側のエッジ部分のみがガイド部材の円筒の内径面に接して、最小の接触面でガイド部材14内を移動させることができ、テープ表面に傷がつくのを回避することができる。なお、ガイド部材は円筒形状に限らずテープ心線を挿通してガイドできるパイプ形状であれば良く、矩形の筒状や、外周の一部に長手方向に沿って開口部を設けた断面がU字形状等のガイド部材を用いても良い。
【0025】
図4(A)は、ガイド部材が全長にわたって円形に形成された例を示し、図4(B)は、楕円形に形成された例を示している。何れの例も、テープ心線10は、両側のエッジ部分がガイド部材14の内壁に接触して支持される。なお、楕円形の場合は、テープ心線10が長径側に安定して保持され、テープ心線が幅方向に傾くことなく繰り出すことができる。また、図4(C)の例は、テープ心線が繰り出される先端部分のみを楕円状とし、他の部分は円形状とした例で、図3(B)の例と同様にテープ心線が幅方向に傾くことなく繰り出すことができる。
【0026】
なお、上述の実施形態では、巻取ボビンに対してガイド部材をトラバースさせる形態で説明したが、ガイド部材を固定し巻取ボビンをトラバースさせるようにしてもよい。この場合、反転位置を検出するセンサ手段は、ガイド部材の近傍に1箇所設置するだけの形態とすることができる。
【符号の説明】
【0027】
10…光ファイバテープ心線(テープ心線)、11…巻取ボビン、12…胴部、13…鍔部、13a…内壁面、14…ガイド部材、1…5支持ブロック、16…トラバース駆動軸、17a…発光素子、17b…受光素子、18…シート部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバテープ心線を巻取ボビン上に整列して巻取る方法であって、前記光ファイバテープ心線は、パイプ状のガイド部材に挿通されて前記巻取ボビンに対して相対的にトラバースされ、前記ガイド部材の先端部を前記巻取ボビンの両側鍔部の内壁面に当接するように配置して巻取ることを特徴する光ファイバテープ心線の巻取方法。
【請求項2】
前記パイプ状にガイド部材は円筒状であることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバテープ心線の巻取方法。
【請求項3】
前記巻取ボビンの両側鍔部の内壁部に、弾力性のあるシート部材が貼り付けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の光ファイバテープ心線の巻取方法。
【請求項4】
前記弾力性のあるシート部材は、発泡率が5倍以上の発泡ポリエチレンからなることを特徴とする請求項3に記載の光ファイバテープ心線の巻取方法。
【請求項5】
光ファイバテープ心線を巻取ボビン上に整列して巻取る装置であって、前記光ファイバテープ心線を挿通して前記巻取ボビンに対して相対的にトラバースするパイプ状のガイド部材を備え、該ガイド部材の先端部が前記巻取ボビンの両側鍔部の内壁面に当接するように配置されていることを特徴とする光ファイバテープ心線の巻取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−37553(P2012−37553A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174481(P2010−174481)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】