説明

光ファイバトレイ及び光クロージャ

【課題】光ファイバ接続部から延長される光ファイバ心線の余長部分を安全に曲げた状態で光ファイバトレイに支持できるようにする。
【解決手段】光ファイバトレイ10は、光ファイバ心線の余長部分を収容可能な空所16を有する心線収容部18と、心線収容部18の頂壁20及び側壁22に隣接形成されて空所16への余長部分の出し入れを可能にするスロット26と、余長部分に隣接する光ファイバ心線の保護材を空所16の外側で係止する保護材係止部32とを備える。心線収容部18は、許容曲げ半径未満の曲げ部分を含まない収容形態で余長部分を空所16に保持する。スロット26は、空所16内で上記収容形態を自動的に呈するような予備曲げ形態に曲げた余長部分を、空所16に対し出し入れできるようにする。保護材係止部32は、予備曲げ形態で空所16に挿入された余長部分が空所16内で上記収容形態を維持し得るように、保護材を係止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ接続部から延長される光ファイバ心線の余長部分を支持する光ファイバトレイに関する。本発明はまた、光ファイバトレイを備えた光クロージャに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバの接続技術において、光ファイバ接続部から延長される光ファイバ心線(すなわち被覆付き光ファイバ)の余長部分を、光ファイバ接続部の周辺の物体から保護したり他の光ファイバ心線の接続作業の妨げにならないようにしたりする目的で、適当に曲げた状態で支持できる支持装置(本願では光ファイバトレイと称する)を使用することが知られている(例えば特許文献1及び2参照)。
【0003】
特許文献1に記載されるポケット型光ファイバ心線余長収納ケースは、光ファイバ心線接続部付近の光ファイバ心線の余長を、正面壁と背面壁の間にある空間に、上端開口部から収納するようになっているポケット型ケースと、このポケット型ケースの上端に設けられた、多数の光ファイバ心線接続部を保持する接続部ホルダとを備えている。ポケット型ケースは、光ファイバ心線接続部の両側の光ファイバ心線の余長をループ状にして、仕切り壁の両側の空間のそれぞれに上端開口部から収納できるようになっている。
【0004】
特許文献2に記載される光ファイバ余長収納ケースは、光ファイバ心線に取付けられている接続部を収納固定する機能部品収納部と、機能部品収納部に隣接し、光ファイバ心線の余長部を折返し収納する光ファイバ心線収納部とを備えている。接続部に接続される上流側の余長部と下流側の余長部とは、それぞれが折り返された状態で光ファイバ心線収納部に収納される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−332944号公報
【特許文献2】特開2005−70513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光ファイバトレイを使用する光ファイバ接続技術においては、光ファイバ接続部から延長される光ファイバ心線の余長部分を安全に曲げた状態で容易かつ迅速に光ファイバトレイに支持できるようにすることが、光ファイバ同士の接続作業性を向上させる観点で望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、光ファイバ接続部から延長される光ファイバ心線の余長部分を支持する光ファイバトレイにおいて、光ファイバ心線の余長部分を収容可能な空所を画定する頂壁及び側壁を有する心線収容部と、心線収容部の頂壁及び側壁に隣接して形成され、空所への余長部分の出し入れを可能にするスロットと、空所の外側に設けられ、余長部分に隣接する光ファイバ心線の保護材を係止する保護材係止部と、を具備することを特徴とする光ファイバトレイである。
【0008】
本発明の他の態様は、上記した光ファイバトレイを備えた光クロージャである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様による光ファイバトレイでは、光ファイバ接続部から延長される光ファイバ心線の余長部分を、心線収容部の頂壁及び側壁に隣接して形成されるスロットを通して空所に挿入することにより、心線収容部の頂壁及び側壁によって空所内に保持でき、また、余長部分に隣接する光ファイバ心線の保護材を、空所の外側に設けられた保護材係止部に係止することにより、余長部分が空所に収容された状態を維持できる。したがって、一態様による光ファイバトレイによれば、余長部分を安全に曲げた状態で容易かつ迅速に支持することができ、以って、光ファイバ同士の接続作業性を向上させることができる。
【0010】
本発明の他の態様による光クロージャによれば、光ファイバ心線の余長部分を安全に曲げた状態で光ファイバトレイに容易かつ迅速に支持することができ、以って、光ケーブル分岐接続作業における光ファイバ同士の接続作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】一実施形態による光ファイバトレイの斜視図である。
【図2】図1の光ファイバトレイを反対側から示す斜視図である。
【図3】図1の光ファイバトレイに支持される光ファイバ心線の余長部分の収容形態の一例を、光ファイバ接続部と共に示す平面図である。
【図4】図1の光ファイバトレイに光ファイバ心線の余長部分を支持させる手順の一例を示す斜視図である。
【図5】図1の光ファイバトレイに光ファイバ心線の余長部分を支持させる手順の一例を示す斜視図である。
【図6】図5の光ファイバトレイの線VI−VIに沿った断面図である。
【図7】図1の光ファイバトレイを、光ファイバ心線の余長部分を支持した状態で、光ファイバ接続部と共に示す斜視図である。
【図8】光ファイバトレイの変形例の図で、(a)斜視図、(b)反対側から示す斜視図である。
【図9】一実施形態による光クロージャの主要部の斜視図である。
【図10】図9の光クロージャの平面図である。
【図11】一実施形態による光クロージャの全体の外観を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。全図面に渡り、対応する構成要素には共通の参照符号を付す。
図1及び図2は、一実施形態による光ファイバトレイ10を示す斜視図、図3は、光ファイバトレイ10に支持される光ファイバ心線の余長部分12の収容形態の一例を光ファイバ接続部14と共に示す平面図、図4及び図5は、光ファイバトレイ10に光ファイバ心線の余長部分12を支持させる手順の一例を示す斜視図、図6は、光ファイバトレイ10の断面図、図7は、光ファイバ心線の余長部分12を支持した光ファイバトレイ10を光ファイバ接続部14と共に示す斜視図である。
【0013】
なお本願において、「光ファイバ心線」は、光ファイバのクラッドの外面に軟質の被覆を施したものを言い、「光ファイバ」は、この被覆を除去したものを言う。また「光ケーブル」は、単心又は多心の光ファイバ心線を絶縁外被に内蔵したものを言い、広義で「光コード」も含むものとする。また、「光ファイバ接続部」は、一対の光ファイバ心線を互いに着脱自在又は恒久的に接続する光コネクタ、メカニカルスプライス等の種々の光ファイバ接続装置や、融着接続等の直接的かつ恒久的な光ファイバ接続部を包含する。
【0014】
光ファイバトレイ10は、光ファイバ接続部14から延長される光ファイバ心線の余長部分12を支持する支持装置であって、余長部分12を収容可能な空所16を画定する心線収容部18を備えている(図1、図2)。心線収容部18は、頂壁20と、頂壁20の外縁に沿って立設される側壁22とを備え、それら頂壁20及び側壁22の内側に、1本又は複数本の余長部分12を収容可能な空所16を画定している。頂壁20は、全体として略平坦であり、側壁22は、略平坦な部分22aと適当に湾曲した部分22bとを有する。側壁22の湾曲部分22bは、余長部分12を有する光ファイバ心線の、予め定められた許容曲げ半径以上の曲率半径を有することができる。
【0015】
空所16に収容された余長部分12は、例えばそれ自体が有する「こし」により、側壁22の部分22a、22bに実質的に沿わされた状態を維持することができる。その結果、余長部分12は、許容曲げ半径以上の半径で曲げられた部分を含みかつ許容曲げ半径未満の半径で曲げられた部分を含まない所望の曲げ形態(図3:本願で「収容形態」と称する)を呈することができる。心線収容部18の頂壁20及び側壁22は、空所16に収容された余長部分12を、当該所望の収容形態に維持しながら空所16の中に保持するように機能する。
【0016】
心線収容部18の頂壁20及び側壁22は、全体として、例えばプラスチック、金属、紙等の、少なくとも重力に抗して自己形状を保持可能な剛性を有する素材から、一体に作製できる。なお図示構成では、側壁22は、頂壁20とは反対側の縁で、外側へ張り出す基部24に一体に連結されている。基部24は、心線収容部18と同一の素材から作製できる。
【0017】
光ファイバトレイ10はさらに、心線収容部18の頂壁20及び側壁22に隣接して形成され、空所16への余長部分12の出し入れを可能にするスロット26を備えている(図1、図2)。スロット26は、適当な予備曲げ形態に曲げた状態の余長部分12を、障害無く円滑に通過させて空所16に対し出し入れできるようにする寸法及び形状を有する。この予備曲げ形態は、空所16に収容された余長部分12が前述した所望の収容形態(図3)を自動的に呈し得るように、空所16に収容する前の余長部分12に予め適当に与えられる形態である。図示構成では、余長部分12を、空所16に収容されているときに呈するループ状の収容形態と同程度の巻回数だけ適当なループ状に曲げた予備曲げ形態で、円滑にスロット26を通して空所16に挿入できるようになっている(図4)。予備曲げ形態でスロット26を通して空所16に挿入された余長部分12は、心線収容部18の頂壁20及び側壁22に沿って所望の収容形態に自動的に移行することができる(図5)。
【0018】
なお図示構成では、心線収容部18の略中央に頂壁20及び側壁22が部分的に存在しない領域が設けられ、この領域がスロット26を構成している。或いは、頂壁20の外縁の所望部分から基部24に向かって延びる側壁22の幅方向の一部分に、周方向へ延びるスロット26を形成することもできる。
【0019】
光ファイバトレイ10はさらに、空所16の外側で心線収容部18に付設され、余長部分12に隣接して設けられる光ファイバ心線の保護材(28、30)を係止する保護材係止部32を備えている(図1)。保護材係止部32に係止される光ファイバ心線の保護材(28、30)は、光ファイバ接続部14によって相手ファイバに接続される光ファイバ心線を内蔵する光ケーブル34の絶縁外被28か、又は、光ファイバ接続部14を構成する光コネクタに付属して、光ファイバ接続部14から延長される光ファイバ心線の所望長さ部分を覆う保護チューブ30である(図3)。絶縁外被28及び保護チューブ30はいずれも、樹脂等の可撓性を有する素材から形成される。保護材係止部32は、これら保護材(絶縁外被28、保護チューブ30)のいずれか一方を受容して摩擦力により定位置に静止保持できる係止溝36を有する。
【0020】
保護材係止部32は、適当な予備曲げ形態でスロット26を通して心線収容部18の空所16に挿入された余長部分12が、空所16の中で所望の収容形態(図3)に自動的に移行した後に当該収容形態を維持し得るように、余長部分12に隣接する保護材(絶縁外被28、保護チューブ30)を係止することができる。図示構成では、保護材係止部32は、心線収容部18及びスロット26に対し、ループ状の予備曲げ形態でスロット26を通して空所16に挿入された余長部分12が、予備曲げ形態と同程度の巻回数のループ状の収容形態を維持しながら空所16の中に保持されるような位置に設けられる(図5)。また、保護材係止部32の係止溝36に静止保持した保護材(絶縁外被28、保護チューブ30)と、空所16内にループ状の収容形態で保持された余長部分12との間で、許容曲げ半径未満の曲げ半径を有する過剰な曲げが光ファイバ心線に生じないようになっている。
【0021】
上記構成を有する光ファイバトレイ10では、光ファイバ接続部14から延長される光ファイバ心線の余長部分12を、心線収容部18の頂壁20及び側壁22に隣接して形成されるスロット26を通して空所16に挿入することにより、心線収容部18の頂壁20及び側壁22によって空所16内に保持でき、また、余長部分12に隣接する光ファイバ心線の保護材(絶縁外被28、保護チューブ30)を、空所16の外側に設けられた保護材係止部32に係止することにより、余長部分12が空所16に収容された状態を維持できる。したがって、余長部分12を、適当に曲げて扱い易くした状態で、スロット26を介して空所16に容易かつ迅速に収容でき、また、保護材係止部32に保護材28、30を係止することで、空所16に収容した余長部分12を、心線収容部18の頂壁20及び側壁22に沿って適当に曲がった状態に維持できる。このように、光ファイバトレイ10によれば、余長部分12を安全に曲げた状態で容易かつ迅速に支持することができ、以って、光ファイバ同士の接続作業性を向上させることができる。
【0022】
また、心線収容部18は、許容曲げ半径未満の曲げ部分を含まない収容形態で余長部分12を空所16に保持するように構成され、スロット26は、空所16に収容された余長部分12が当該収容形態を自動的に呈し得るような、予備曲げ形態に曲げた状態の余長部分12を、空所16に対し出し入れできるように構成されているから、余長部分12を安全に曲げた収容形態で確実に光ファイバトレイ10に支持することができる。
【0023】
さらに、保護材係止部32は、予備曲げ形態でスロット26を通して心線収容部18の空所16に挿入された余長部分12が、空所16の中で上記収容形態に自動的に移行した後に収容形態を維持し得るように、保護材28、30を係止するように構成されているから、余長部分12を安全に曲げた収容形態で安定して光ファイバトレイ10に支持することができる。
【0024】
上記構成を有する光ファイバトレイ10は、例えば、FTTH(Fiber To The Home)等の光通信システムにおける主ケーブルと分岐ケーブルとの間の分岐接続部で、クロージャと称する端子函に内蔵した状態で使用できる。主ケーブルと分岐ケーブルとの接続に際しては、光ファイバ同士の接続作業のやり直しや分岐の切り替えのためにケーブル端部の被覆除去及び切断工程が繰り返される状況を想定して、光ファイバ接続部の近傍に予め光ファイバ心線の余長部分を確保しておくことが一般的である。光ファイバトレイ10は、クロージャの中で、このような光ファイバ心線の余長部分12を、光ファイバ接続部14の周辺の物体から保護したり他の光ファイバ心線の接続作業の妨げにならないようにしたりするべく、所望の収容形態で支持することができる。
【0025】
図示構成では、主ケーブルである単心又は多心の光ケーブル34が有する1本の光ファイバ心線と、分岐ケーブルである単心の光ケーブル38が有する1本の光ファイバ心線とが、光ファイバ接続部14を構成する光コネクタによって互いに接続されており(光コネクタを内蔵するケース40を図示)、光ケーブル34の先端で絶縁外被28を除去した光ファイバ心線の露出部分に、余長部分12が確保されている(図3)。光ファイバ接続部14を構成する光コネクタは、光ファイバ接続部14に隣接する領域で余長部分12に過剰な曲げが生じないように、光ファイバ接続部14から延長される光ファイバ心線の所望長さ部分を覆う保護チューブ30を備えている。したがって、光ファイバトレイ10が支持する光ファイバ心線の余長部分12は、当該光ファイバ心線を内蔵する光ケーブル34が有する絶縁外被28(すなわち第1の保護材)と、光ファイバ接続部14に付属する保護チューブ30(すなわち第2の保護材)との間に延長される部分である。光ファイバトレイ10は、余長部分12を、これら絶縁外被28及び保護チューブ30から実質的に隔離するように、心線収容部18に収容することができる。
【0026】
光ファイバトレイ10は、光ケーブル34の絶縁外被28(第1の保護材)を着脱自在に係止する第1の保護材係止部32Aと、保護チューブ30(第2の保護材)を着脱自在に係止する第2の保護材係止部32Bとを備えることができる(図4〜図7)。第1の保護材係止部32Aは、絶縁外被28(第1の保護材)に食い込む複数の刃を有する第1係止溝36Aを備えることができる。第2の保護材係止部32Bは、保護チューブ30を長手方向へ離間した2箇所で保持する第2係止溝36Bを備えることができる。この構成により、余長部分12の両端に位置する絶縁外被28(第1の保護材)及び保護チューブ30(第2の保護材)のそれぞれを保護材係止部32A、32Bに係止できるから、余長部分12を両端係止により一層安定して光ファイバトレイ10に支持することができる。
【0027】
心線収容部18の頂壁20は、スロット26により略中央で分断される第1の頂壁部分20Aと第2の頂壁部分20Bとを有することができ、空所16は、第1の頂壁部分20と側壁22とによって画定される第1の空所部分16Aと、第2の頂壁部分20Bと側壁22とによって画定される第2の空所部分16Bとを有することができる(図4〜図7)。この構成により、頂壁20による余長部分12の保持機能を第1及び第2の頂壁部分20A、20Bによって確保しつつ、スロット26の寸法を拡大できるから、余長部分12を、スロット26を介して第1及び第2の空所部分16A、16Bに一層容易かつ迅速に収容できる。
【0028】
また、第1の保護材係止部32Aを、第2の頂壁部分20Bよりも第1の頂壁部分20Aに近い位置(図では第1の頂壁部分20Aの上)に配置するとともに、第2の保護材係止部32Bを、第1の頂壁部分20Aよりも第2の頂壁部分20Bに近い位置(図では第2の頂壁部分20Bの上)に配置することができる(図4〜図7)。この構成により、光ファイバ心線の余長部分12のうち、第1の保護材係止部32Aに係止される光ケーブル34の絶縁外被28(第1の保護材)から延出する部分を、許容曲げ半径未満の過剰な曲げが生じない状態で、スロット26を通して第2の空所部分16Bに収容できる。同様に、光ファイバ心線の余長部分12のうち、第2の保護材係止部32Bに係止される保護チューブ30(第2の保護材)から延出する部分を、許容曲げ半径未満の過剰な曲げが生じない状態で、スロット26を通して第1の空所部分16Aに収容できる。
【0029】
第1の保護材係止部32Aは、1つの絶縁外被28(第1の保護材)を係止する1つの第1係止溝36Aを有することができ、第2の保護材係止部32Bは、各々に1つの保護チューブ30(第2の保護材)を係止する複数の第2係止溝36Bを有することができる(図4)。この構成によれば、主ケーブルである光ケーブル34が複数本の光ファイバ心線を内蔵する多心構造を有する場合に、それら複数本の光ファイバ心線に対し、1つの光ファイバトレイ10を用いて分岐接続作業を実施することができる。この場合、光ケーブル34の絶縁外被28が、第1の保護材係止部32Aの第1係止溝36Aに係止され、複数本の光ファイバ心線に個別に装着された複数の保護チューブ30が、第2の保護材係止部32Bの複数の第2係止溝36Bに個別に係止される。そして、複数本の光ファイバ心線の余長部分12が、それぞれに適当な収容形態で、光ファイバトレイ10の心線収容部18に収容される。
【0030】
なお、図示のように、第1の頂壁部分20Aに予備の第2の保護材係止部32B´を追加して設けるとともに、第2の頂壁部分20Bに予備の第1の保護材係止部32A´を追加して設けることもできる(図4、図5)。これら予備の第1及び第2の保護材係止部32A´、32B´は、それぞれ第1及び第2の保護材係止部32A、32Bと同一の構成を有する。この構成によれば、例えば光ケーブル34と光ケーブル38との敷設方向が図示の方向とは逆の場合であっても、予備の第1及び第2の保護材係止部32A´、32B´にそれぞれ絶縁外被28(第1の保護材)及び保護チューブ30(第2の保護材)を係止することができる。
【0031】
図示の光ファイバトレイ10では、保護材係止部32(第1の保護材係止部32A、32A´、第2の保護材係止部32B、32B´)は、心線収容部18の頂壁20(第1の頂壁部分20A、第2の頂壁部分20B)に形成されている。この構成に代えて、例えば図8に変形例として示すように、保護材係止部32(第1の保護材係止部32A、32A´、第2の保護材係止部32B、32B´)を、基部24に設けることもできる。なお、保護材係止部32の位置、形状等は、図示構成に限定されない。
【0032】
光ファイバトレイ10を用いた光ケーブルの分岐接続作業の一例を、図4〜図7を参照して説明する。
まず、光ケーブル34の1本の光ファイバ心線と、光ケーブル38の1本の光ファイバ心線とを、光ケーブル34側に十分な長さの余長部分12を確保した状態で、光ファイバ接続部14にて互いに接続する。次いで、この余長部分12を、光ファイバトレイ10の心線収容部18に収容されているときに呈するループ状の収容形態と同程度の巻回数だけ適当なループ状に曲げた予備曲げ形態にして、予備曲げ形態のまま、光ファイバトレイ10のスロット26を通して空所16に挿入する(図4)。なお、余長部分12の予備曲げ形態は、図示形態に限定されず、作業者が余長部分12を持つ位置等に応じて様々な形態を取り得る。また、余長部分12の挿入方向は、図示方向に限定されず、心線収容部18の頂壁20及び側壁22に隣接して広範囲に開口するスロット26に対し、多様な方向から挿入できる。
【0033】
余長部分12を適当な予備曲げ形態でスロット26を通して心線収容部18の空所16に挿入した後、作業者が余長部分12から手を離すと、余長部分12は空所16の中でループ状の収容形態に自動的に移行する。そこで、余長部分12の両端に隣接する絶縁外被28及び保護チューブ30を、第1及び第2の保護材係止部32A、32Bにそれぞれ係止する。これにより、余長部分12は空所16内でループ状の収容形態を維持する(図5、図6)。なお、余長部分12を予備曲げ形態で空所16に挿入する前に、絶縁外被28及び保護チューブ30を第1及び第2の保護材係止部32A、32Bに係止することもできる。
【0034】
最後に、光ファイバトレイ10に対し予め定めた位置に、光ファイバ接続部14を配置する(図7)。これにより、光ケーブル34の1本の光ファイバ心線の分岐接続作業が終了する。なお図では、光ファイバ心線の余長部分12の、第1の保護材係止部32Aに係止された絶縁外被28から延出する領域が、予備の第2の保護材係止部32B´の係止溝36B´(図4)に受容されているが、この領域は単に係止溝36B´を通過しているだけであって係止されている訳ではない。同様に、保護チューブ30の、第2の保護材係止部32Bに係止された領域に隣接する領域が、予備の第1の保護材係止部32A´の係止溝36A´(図4)に受容されているが、この領域は単に係止溝36A´を通過しているだけであって係止されている訳ではない。
【0035】
光ケーブル34が多心構造を有する場合、上記した分岐接続作業を、複数本の光ファイバ心線に対して1本ずつ順次実施する。全ての光ファイバ心線の分岐接続作業が完了すると、複数本の光ファイバ心線に個別に装着された複数の保護チューブ30が、第2の保護材係止部32Bの複数の第2係止溝36B(図4)に1つずつ個別に係止され、複数本の光ファイバ心線を複数本の光ケーブル38に個別に接続する複数の光ファイバ接続部14が、光ファイバトレイ10に対し予め定めた位置に並べて配置される。このような構成は、例えば10心を超えない本数の光ファイバ心線を内蔵する光ケーブル34の分岐接続作業に適用できる。
【0036】
図9〜図11は、一実施形態による光クロージャ50を示す。光クロージャ50は、FTTH(Fiber To The Home)等の光通信システムにおける主ケーブルと分岐ケーブルとの間の分岐接続部で使用できるものである。
【0037】
光クロージャ50は、光ファイバトレイ10と、光ファイバトレイ10を支持する第1筐体52と、第1筐体52に組み付けられる第2筐体54とを備える。第1筐体52及び第2筐体54は、樹脂等の電気絶縁性の素材から作製され、互いに分離可能に組み合わされて、光ファイバトレイ10及び光ファイバ接続部14を収容する収容空間56を画定する。
【0038】
第1筐体52は、光ファイバトレイ10が取り付けられるトレイ取付部58を備えている。トレイ取付部58は、光ファイバトレイ10の心線収容部18の頂壁20及び側壁22と協働して空所16を囲繞する主壁60を有する。第1筐体52はさらに、複数の光ファイバ接続部14が取り付けられる接続部取付部62を、トレイ取付部58に隣接して備えている。接続部取付部62は、個々の光ファイバ接続部14を光ファイバトレイ10に対し所定位置に着脱自在に保持できる複数の支柱64を有する。
【0039】
図示構成では、光ファイバトレイ10は、基部24の端縁に形成した一対の爪66(図1)を、接続部取付部62が有する一対の支柱64にそれぞれ係合させることにより、トレイ取付部58に着脱自在に取り付けられる。なお、第1筐体52への光ファイバトレイ10の取付構造は、図示構成に限定されず、例えば両面テープやボルト等の種々の固定手段を採用することもできる。また、第2筐体54は、ボルトやラッチ等の種々の係着手段を用いて、第1筐体52に取り付けることができる。例えば、ヒンジ部68(図11)を介して、第2筐体54を第1筐体52に開閉回転動作可能に連結することもできる。
【0040】
光クロージャ50においては、収容空間56を開放した状態で、第1筐体52のトレイ取付部58に取り付けた光ファイバトレイ10に対し、前述したような光ケーブル分岐接続作業を実施することができる。このとき光クロージャ50は、光ケーブル38に接続される光ケーブル34の光ファイバ心線の余長部分12を、安全に曲げた状態で光ファイバトレイ10に容易かつ迅速に支持することができる。したがって光クロージャ50によれば、光ケーブル分岐接続作業における光ファイバ同士の接続作業性を向上させることができる。
【0041】
光ファイバトレイ10は、上記した光クロージャ50に限定されず、種々の光配線盤や光接続箱において用いることができる。いずれの適用においても、光ファイバトレイ10は、前述した格別の効果を奏するものである。
【符号の説明】
【0042】
10 光ファイバトレイ
12 余長部分
14 光ファイバ接続部
16 空所
18 心線収容部
20 頂壁
22 側壁
26 スロット
28 絶縁外被
30 保護チューブ
32 保護材係止部
36 係止溝
50 光クロージャ
58 トレイ取付部
60 主壁
62 接続部取付部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ接続部から延長される光ファイバ心線の余長部分を支持する光ファイバトレイであって、
光ファイバ心線の余長部分を収容可能な空所を画定する頂壁及び側壁を有する心線収容部と、
前記心線収容部の前記頂壁及び前記側壁に隣接して形成され、前記空所への前記余長部分の出し入れを可能にするスロットと、
前記空所の外側に設けられ、前記余長部分に隣接する光ファイバ心線の保護材を係止する保護材係止部と、
を具備することを特徴とする光ファイバトレイ。
【請求項2】
前記心線収容部は、許容曲げ半径未満の曲げ部分を含まない収容形態で前記余長部分を前記空所に保持し、前記スロットは、前記空所に収容された前記余長部分が前記収容形態を自動的に呈し得るような、予備曲げ形態に曲げた状態の前記余長部分を、前記空所に対し出し入れできるようにする、請求項1に記載の光ファイバトレイ。
【請求項3】
前記保護材係止部は、前記予備曲げ形態で前記スロットを通して前記心線収容部の前記空所に挿入された前記余長部分が、前記空所の中で前記収容形態に自動的に移行した後に前記収容形態を維持し得るように、前記保護材を係止する、請求項2に記載の光ファイバトレイ。
【請求項4】
前記余長部分は、前記光ファイバ心線を内蔵する光ケーブルが有する第1の前記保護材と、前記光ファイバ接続部に付属する第2の前記保護材との間に延長され、第1の前記保護材を着脱自在に係止する第1の前記保護材係止部と、第2の前記保護材を着脱自在に係止する第2の前記保護材係止部とを具備する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光ファイバトレイ。
【請求項5】
前記心線収容部の前記頂壁は、前記スロットにより分断される第1の頂壁部分と第2の頂壁部分とを有し、前記空所は、該第1の頂壁部分と前記側壁とによって画定される第1の空所部分と、該第2の頂壁部分と前記側壁とによって画定される第2の空所部分とを有し、前記第1の保護材係止部は、該第2の頂壁部分よりも該第1の頂壁部分に近い位置に配置され、前記第2の保護材係止部は、該第1の頂壁部分よりも該第2の頂壁部分に近い位置に配置される、請求項4に記載の光ファイバトレイ。
【請求項6】
前記第1の保護材係止部は、1つの前記第1の保護材を係止する1つの第1係止溝を有し、前記第2の保護材係止部は、各々に1つの前記第2の保護材を係止する複数の第2係止溝を有する、請求項4又は5に記載の光ファイバトレイ。
【請求項7】
前記保護材係止部が、前記心線収容部の前記頂壁に形成される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の光ファイバトレイ。
【請求項8】
光ファイバトレイを備えた光クロージャであって、
前記光ファイバトレイが、請求項1〜7のいずれか1項に記載の光ファイバトレイであることを特徴とする光クロージャ。
【請求項9】
前記光ファイバトレイが取り付けられるトレイ取付部を具備し、該トレイ取付部は、前記光ファイバトレイの前記心線収容部の前記頂壁及び前記側壁と協働して前記空所を囲繞する主壁を有する、請求項8に記載の光クロージャ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−97114(P2013−97114A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238774(P2011−238774)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】