説明

光ファイバホルダ

【課題】光ファイバの融着接続作業を簡単にするとともに、余長処理が不要な光ファイバホルダを提供する。
【解決手段】光ファイバ融着接続機によって、2本の光ファイバの後端同士を融着接続する際に、一方の光ファイバを固定するための光ファイバホルダであって、光ファイバをフェルールに内挿させた終端処理部を、後方からベアファイバを突出させた状態で位置決めして固定する終端処理部固定構造と、光ファイバ融着接続機に形成されている位置決めガイドに係合して、当該光ファイバ融着接続機の所定の位置に装着するための構造とを備え、終端処理部固定構造は、フランジの形成された中空筒状のフランジ部材にフェルールを同軸に連結した終端処理部を収納するフランジ収納部と、フェルールの前端に着脱自在に接続されたチューブを這わせる形状に形成された溝とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光ファイバを光融着接続機内に位置決めした状態で固定するための光ファイアホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、光ファイバが宅内などに敷設されている状態で、その敷設済みの光ファイバの終端を回線終端装置などに接続する場合、その接続現場では、光ファイバの終端に光通信用機器の機種や規格に対応する光コネクタを取り付ける作業を行うことがある。この作業では、例えば、一方の端部がフェルールに内挿されて、光コネクタに組込可能な状態となっている終端処理済光ファイバを、敷設済みの光ファイバなどの接続対象の光ファイバに接続する。
【0003】
具体的には、双方の光ファイバの接続端側は、被膜が剥離されて光ファイバ本体となるベアファイバが露出した状態であり、その露出端面同士を突き合わせ、この突き合わせ部分をアーク放電などにより加熱して、両端面を溶融させて融着接続する。そして、上記の融着接続作業を行うための装置が、光ファイバ融着接続機である。
【0004】
図13(A)〜(D)に融着接続作業の手順の概略を示した。2本の光ファイバ(20c,20)は、光ファイバ融着接続機により融着接続される際、その端面同士が正しく突き合わされるように、例えば、図13(A)に示したような治具(光ファイバホルダ)1に固定された状態で、光ファイバ融着接続機に装着される。当該光ファイバホルダ1は、略扁平箱状で、V溝7が略矩形平面形状をなす上面2を長手方向(前後方向)に縦断するように形成されているとともに、その上面2をヒンジにより開閉自在に覆うクランプ部8を備えている。そして、例えば、図13(B)に示したように、終端処理済光ファイバ20cをそのV溝7の延長方向に沿って這わせたのち、同図(C)に示したように、クランプ部8を閉じて光ファイバ20cを固定する。クランプ部8は、磁性体金属で形成され、光ファイバホルダ1の上面2に貼着されている磁石9により、閉状態で固定される。また、終端処理済光ファイバ20cの接続端側、すなわち、ベアファイバ22が露出する側の末端(以下、後端)は、光ファイバホルダ1の後端面3より外方に突出する。
【0005】
光ファイバ融着接続機には、2台の光ファイバホルダ1の後端面3同士を対向させた状態で保持するための構成として、ガイドピンや、ガイドレールなどが設けられている。光ファイバホルダ1には、上下面を貫通して前記ガイドピンが挿通される縦孔4や、ガイドレールの形状に係合する溝など(図示せず)が下面に形成されている。当該終端処理済光ファイバ20cと、敷設済みの光ファイバなどの他の光ファイバ(接続対象光ファイバ)20がそれぞれの光ファイバホルダ1に固定されている状態で、これらの光ファイバホルダ1を光ファイバ融着接続機に装着すると、図13(D)に示したように、接続対象光ファイバ20のベアファイバ22と、終端処理済光ファイバ20cのベアファイバ22の後端面同士が対面する。なお、この図における終端処理済光ファイバ20cは、その終端処理部分が光コネクタ30cとなっている、いわゆる「ピグテール光ファイバ」である。
【0006】
光ファイバ融着接続機は、互いに融着接続される2本の光ファイバ(20c,20)のそれぞれが固定されている2台の光ファイバホルダ1が装着されて両光ファイバ(20c,20)におけるベアファイバ22の後端面同士が突き合わされている状態で所定の操作がなされると、このベアファイバ22の後端面部分をアーク放電によって溶融させるとともに、双方のベアファイバ22の後端面同士を押し込む動作を自動的に行い、双方のベアファイバ22の後端面同士を接触させる。また、ベアファイバ22の後端面同士を押し込む動作は、光ファイバホルダ1が装着されたままガイドレール自体をその延長方向に移動させて2台の光ファイバホルダ1同士を接近させることで行われる。
【0007】
なお、光ファイバホルダ1については以下の特許文献1に記載されており、光ファイバ融着接続機の概要については以下の非特許文献1に記載されている。また、非特許文献2には、光ファイバの融着接続方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−329873号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】株式会社フジクラ、[online]、[平成21年8月26日検索]、インターネット<URL:http://www.fujikura.co.jp/products/data/fsm-60s_j.pdf>
【非特許文献2】菊池 拓男・西沢 紘一著、「光通信時代を支えるFTTH施工技術」、株式会社オプトロニクス社、平成20年12月22日、第3版第1刷発行、P83〜P102
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
周知のごとく、光ファイバは、折り曲げると光信号を伝送することができない。円弧状に曲げる場合においてもその円弧の半径が短いと、光信号の伝送損失が大きくなる。そのため、光ファイバに接続対象までの長さに余分がでると、その余分の長さ(余長)を十分な大きさの半径で円弧状に曲げながら光ファイバを束ねる余長処理を施す。したがって、その余長分の光ファイバを収納するために大きなスペースが必要となる。このスペースは、屋外などでは問題にならないが、屋内の限られた空間では十分に確保することができなくなる。また、光ファイバを接続する場所が装置やジャンクションボックスなどの筐体内であれば、その空間はほとんど無い、と言える。したがって、敷設済の光ファイバの先端に終端処理済光ファイバを融着接続する場合などでは、光ファイバを必用最小限の長さに調整することが必要となる。
【0011】
しかしながら、従来の融着接続方法では、終端処理済光ファイバの長さ自体が数十cm以上有り、例えば、コネクタなどの終端処理部に接続される機器などのすぐ近くにまで接続対象光ファイバが延長している場合には、その接続対象光ファイバをまず切断し、その切断部にてベアファイバを露出させた上で終端処理済光ファイバと融着接続する、という繁雑な作業を要し、作業の効率が悪化する。もし、接続対象光ファイバの末端と、接続機器までの距離が極めて短ければ、終端処理済光ファイバを切断することになるが、それでも、少なくとも、光ファイバホルダを縦断させて、フェルールやコネクタなどの終端処理部分を光ファイバホルダの外に案内するだけの長さが必要となる。
【0012】
また、融着接続した部分は、他の光ファイバの部位よりも引っ張りや曲げに対する強度が弱く、その融着接続部分の前後を熱収縮チューブ(熱収縮スリーブ)に挿入し、当該接続部分の前後が直線状態を維持するように補強する処理を施す。すなわち、この補強部分は、円弧状にすら屈曲させることができない。そして、その補強部分は、光コネクタから離れた位置にあるため、中途半端に余長があると、その余長を処理すること自体が極めて難しくなる。
【0013】
本発明は、光ファイバの接続現場において、終端処理された光ファイバと他の光ファイバとを融着接続する際の主に余長処理に関わる問題に鑑みてなされたもので、光ファイバの融着接続作業を容易にするとともに、余長処理を不要にするための光ファイバホルダを提供することを目的としている。なお、本発明の他の目的については以下の記載で明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するための主たる発明は、光ファイバ融着接続機によって、2本の光ファイバの後端同士を融着接続する際に、一方の光ファイバを固定するための光ファイバホルダであって、
光ファイバをフェルールに内挿させた終端処理部を、後方からベアファイバを突出させた状態で位置決めして固定する終端処理部固定構造と、
前記光ファイバ融着接続機に形成されている位置決めガイドに係合して、当該光ファイバ融着接続機の所定の位置に装着するための構造と
を備え、
前記終端処理部固定構造は、
フランジの形成された中空筒状のフランジ部材に前記フェルールを同軸に連結した前記終端処理部を収納するフランジ収納部と、
前記フェルールの前端に着脱自在に接続されたチューブを這わせる形状に形成された溝と
を備える
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明における光ファイバホルダによれば、終端処理された光ファイバと他の光ファイバとを容易に融着接続することができるとともに、余長処理を不要とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の参考例における光ファイバホルダの概略図である。
【図2】上記光ファイバホルダに固定される終端処理済光ファイバであるコネクタ型光ファイバを示す図である。
【図3】上記第1の参考例における上記光ファイバホルダと上記コネクタ型光ファイバとの係合関係を示す図である。
【図4】上記第1の参考例において、終端処理済光ファイバと接続対象光ファイバとを融着接続する際の状態を示す図である。
【図5】組み立て後における上記光コネクタを示す図である。
【図6】上記組み立て後の光コネクタの分解斜視図である。
【図7】接続状態にある上記終端処理済光ファイバと上記接続対象光ファイバとを移動するための治具の概略図である。
【図8】本発明の実施例における光ファイバホルダに固定される終端処理済光ファイバであるフランジ部材付光ファイバの概略図である。
【図9】上記フランジ部材付光ファイバが組み込まれた光コネクタの図である。
【図10】上記フランジ部材付光ファイバが組み込まれた光コネクタの分解斜視図である。
【図11】上記実施例における光ファイバホルダに上記フランジ部材付光ファイバが固定されている状態を示す図である。
【図12】本発明の第2の参考例における光ファイバホルダの概略図であり、上記第1の参考例における光ファイバホルダと、当該光ファイバホルダに付属するアダプタと、当該アダプタによって保持されるフランジ部材付光ファイバとの係合関係を示す図である。
【図13】一般的な光ファイバの融着接続方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
===本発明の実施形態===
本発明の実施形態は、上記主たる発明に対応する実施形態の他に、以下の特徴を備えた実施形態がある。
【0018】
前記フランジ収納部は、光コネクタの内部形状に係合する形状の前記フランジ部材を収納すること。
【0019】
前記フランジ収納部の後方の壁面には、上方が開放する開口が形成され、前記フランジ部材の前記フランジの後方に形成された円筒部と前記ベアファイバとが前記開口より後方に突出すること。
【0020】
前記フランジ収納部の前方に、前記フランジ部材の前側から突出させた前記フェルールを保持するV溝が形成されていること。
前記終端処理部固定構造は、開閉自在に上面を覆うクランプ部をさらに備え、前記クランプ部を閉じると、前記クランプ部が前記フェルールをV溝に向かって付勢すること。
前記終端処理部固定構造は、開閉自在に上面を覆うクランプ部をさらに備え、前記クランプ部には、前記クランプ部を閉じる方向に突出する突起が形成されており、前記クランプ部を閉じると、前記突起の後面と前記フランジの前面が接触し、前記フランジの後面が前記フランジ収納部の後方の壁面に接触すること。
前記突起は、前記クランプ部を閉じる方向に二股に突出しており、前記突起が前記フランジと前記フェルールとの境界部分を挟持すること。
【0021】
また、明細書には、以下の記載がある。
光ファイバ融着接続機によって、2本の光ファイバの後端同士を融着接続する際に、一方の光ファイバを固定するための光ファイバホルダであって、
フェルールに内挿された終端処理部の後端側にベアファイバを露出させてなる光ファイバの前記終端処理部を位置決めした状態で固定する終端処理部固定構造と、前記光ファイバ融着接続機に形成されている位置決めガイドに係合して、当該光ファイバ融着接続機の所定の位置に装着するための構造とを備え、
前記終端処理部固定構造は、前記ベアファイバを後方から突出させた状態で前記光ファイバを固定すること。
前記終端処理部は、前記フェルールを内蔵する光コネクタであり、前記終端処理部固定構造は、当該光コネクタの外観形状に係合して、当該光コネクタを所定の位置に位置決めした状態で固定する溝構造であること。
前方にフランジが形成された中空筒状のフランジ部材が前記フェルールの後端に同軸に連結されてなる前記終端処理部と、前記フェルールの先端に着脱自在に接続されているチューブとを備えた光ファイバを固定し、
前記終端処理部固定構造は、開閉自在に上面を覆うクランプ部を一体的に備えるとともに、前記終端処理部を収納する凹部と、前記チューブを這わせる形状に形成された溝と、前記クランプ部を閉状態で固定するためのクランプ係止構造とを備えていること。
前方にフランジが形成された中空筒状のフランジ部材が前記フェルールの後端に同軸に連結されてなる前記終端処理部を備えた光ファイバを固定し、
前記終端処理部固定構造は、上面に所定の光コネクタの外観形状に係合して当該光コネクタを所定の位置に位置決めした状態で固定する溝構造と、当該溝構造に係合する外観形状を有して当該溝構造に着脱自在に装着されるアダプタとから構成され、
前記アダプタは、後方に開口して前後方向に延長する孔と、当該孔に前記フェルールが挿入された状態で前記フランジ部材を支持する構造を備えること。
また、アダプタを備えた光ファイバホルダでは、前記フランジ部材を支持する構造は、前記孔の開口の左右を基部として後方に突出する2本の板材の先端を向かい合うように屈曲させて前記フランジを左右から挟持する二つ一組の爪部と、前記孔の開口の下方を基部として後方に突出するとともに前記フランジの下方を上面で支持する舌片とを含んで構成され、
前記溝構造は、前記アダプタが装着された状態で、前記板材の左右外側方向ヘの撓みを規制する実施形態とすることができる。さらに、前記箱形の上面前端側に、上方に突出しつつ後方側に屈曲するフック部を備えた実施形態としてもよい。
【0022】
===第1の参考例===
以下に、本発明における上記各実施形態に対応する光ファイバホルダについて、具体的な参考例を挙げ、その目的、作用、効果などを明らかにする。図1は、第1の参考例における光ファイバホルダ1aの概略図である。図1(A)に示したように、当該光ファイバホルダ1aは、上下に扁平な略箱状の外観形状をなし、その上面2には、終端処理済光ファイバの終端処理部分の形状に係合しつつ、当該終端処理部分を正しく位置合わせした状態で固定するための溝構造10aを備えている。ここで、光ファイバホルダ1aにおいて、溝構造10aが開放する側の面を後面3として、図示したように前後、上下、左右のそれぞれの方向を規定すると、光ファイバホルダ1aには、光ファイバ融着接続機(以下、融着接続機)に装着される際の位置決めの基準となる構造として、上下面を連絡する縦孔4が形成されているとともに、下面に下方が開放する凹状断面形状をなして前後に延長する溝5が形成されている。そして、図1(B)に示したように、縦孔4には融着接続機のガイドピン51が挿通され、下面の溝5は、融着接続機における上方に凸となる断面を有して前後方向に延長するレール52に係合する。なお、例示した光ファイバホルダ1aには、その前端上面に上方に延長しつつ後端側へ屈曲するフック部6が一体的に形成されている。
【0023】
図2に、上記光ファイバホルダ1aに固定される終端処理済光ファイバ(以下、コネクタ型光ファイバ)20aを示した。第1の参考例におけるコネクタ型光ファイバ20aは、実質的に光コネクタそのものであり、図1に示した光ファイバホルダ1aにおける前後、上下、左右の各関係を採用すると、例示したコネクタ型光ファイバ20aは、終端処理部分がSC型光コネクタのプラグフレーム21aであり、そのプラグフレーム21aの後端からベアファイバ22を露出させたものである。そして、このコネクタ型光ファイバ20aの前端がフェルール23の端面となる。なお、図示したコネクタ型光ファイバ20aは、その前端に、フェルール23の端面をゴミや衝撃から保護するためのカバー24が着脱自在に取り付けられている。
【0024】
ところで、プラグフレーム21aは、角筒状の本体の側面25に、光コネクタのハウジングとラッチ機構により係合する凸部26や、ハウジング内に収納された際に、そのハウジング内部の構造と係合し、自身を正しい位置に固定するための上下に延長して突出するリブ27などを一体的に備えている。そして、光ファイバホルダ1aの上面における複雑な溝構造10aは、このプラグフレーム21aの側面25の形状と係合するように形成されている。
【0025】
図3に光ファイバホルダ1aとコネクタ型光ファイバとの係合関係を示した。図3(A)に示したように、光ファイバホルダ1aの上面2に形成されている溝構造10aは、カバー24が取り付けられた状態のコネクタ型光ファイバ20aの角筒状部分を収納する形状に形成されて、その深さは、当該コネクタ型光ファイバ20aを水平に支持しつつ、光ファイバホルダ1aに対して所定の上下位置に固定するように設定されている。また、溝構造10aにおける各所の左右幅Wは、コネクタ型光ファイバ20aの角筒状部分の側面25を左右から挟持し、当該コネクタ型光ファイバ20aを光ファイバホルダ1aに対して所定の左右位置に固定するように設定されている。
【0026】
さらに溝構造10aには、コネクタ型光ファイバ20aを光ファイバホルダ1aに対して所定の前後位置に固定するための形状として、左右に翼状に張り出して、コネクタ型光ファイバ20aにおける上記リブ27を収納するための凹部11が形成されている。そして、この凹部11の底には、上方に延長しつつ、上端が前方に鈎型に突出する形状のラッチ部12が形成されており、コネクタ型光ファイバ20aのプラグフレーム21aを溝構造10aに係合させるように収納すると、この翼状の凹部11におけるラッチ部12の後方にリブ27が挿入される。そして、このラッチ部12が板バネとして、リブ27を介してコネクタ型光ファイバ20aを後方に付勢する。コネクタ型光ファイバ20aは、リブ27がこの翼状の凹部11における後方の内壁面13とラッチ部12とに挟持されることで、光ファイバホルダ1aに対して所定の前後位置に固定される。
【0027】
図3(B)に、光ファイバホルダ1aにコネクタ型光ファイバ20aを固定した状態を示した。当該図では、コネクタ型光ファイバ20aを網点のハッチングによって示し、光ファイバホルダ1aの部分と容易に識別できるようにした。溝構造10aは、光ファイバホルダ1aの後面3にて開放し、コネクタ型光ファイバ20aは、その後端部分がこの開放端から光ファイバホルダ1aの前方に突出した状態で、かつ、上下、左右、前後が光ファイバホルダ1aに対して所定の位置となるように固定される。それによって、コネクタ型光ファイバ20aの後端に露出するベアファイバ22の後端面、すなわち、他の光ファイバ(以下、接続対象光ファイバ)との融着接続点の位置が光ファイバホルダ1aの後面3に対して所定の位置に固定される。
【0028】
図4は、第1の参考例における光ファイバホルダ1aを用いた融着接続方法の概略図である。まず、光ファイバホルダ1aに固定された状態のコネクタ型光ファイバ20aを用意し、融着接続作業を行う作業者は、このコネクタ型光ファイバ20aが固定されている状態の光ファイバホルダ1aを融着接続機に装着するとともに、接続対象光ファイバ20においてベアファイバ22が露出している側の末端を図13に示した一般的な光ファイバホルダ(通常ホルダ)1に固定し、その通常ホルダ1も融着接続機に装着する。ここで、通常ホルダ1や接続対象光ファイバ20における前後関係を、第1の参考例における光ファイバホルダ1aやコネクタ型光ファイバ20aに対して鏡面対象となるように規定すると、二つの光ファイバホルダ(1a,1)を融着接続機に装着したとき、コネクタ型光ファイバ20aと、接続対象光ファイバ20の双方におけるベアファイバ22の後端面同士が突き合わされることになる。融着接続機は、この状態で、双方のベアファイバ22の後端面をアーク放電により溶融するとともに押しつける動作を行い、双方の光ファイバ(20a,20)を融着接続する。
【0029】
融着接続後は、融着接続部分を熱収縮スリーブで補強したのち、図5に示した光コネクタ30aに組み立てればよい。なお、当該光コネクタ30aは、例えば、図6に示した光コネクタ30aの分解斜視図のように、ハウジング31aと、プラグフレーム21aを前方に付勢した状態でハウジング内に固定するためのスライダ32aと、ブーツ33aとから構成され、接続対象光ファイバ20は、スライダ32aとブーツ33aの中空部分を経由して延長する。それによって、第1の参考例では、熱収縮スリーブ40によって補強された部分は、スライダ32a内、すなわちコネクタ30aの内部に収納され、外力によって屈曲することなく、直線状態がほぼ恒久的に維持される。
【0030】
このように、第1の参考例では、接続対象光ファイバ20の後端に、実質的に光コネクタ30aのみを接続することができる。したがって、余長処理を必要としない。また、ピグテール光ファイバなどでは、携行時にも折り曲げないように注意する必要があったが、第1の参考例では、コネクタ型光ファイバ20aが固定された小さな光ファイバホルダ1aをケースなどに収納して携行すればよく、携行時に不用意に光ファイバを折り曲げる、という事故を未然に防ぐことができる。
【0031】
さらに、光ファイバホルダ1aは、樹脂の一体成型品で安価に製造することが可能である。そのため、コネクタ型光ファイバ20aを固定した状態で提供すれば、光ファイバホルダ1aを使い捨て部品とすることができ、コネクタ型光ファイバ20aを光ファイバホルダ1aに固定する作業を省略し、融着接続作業に要する時間や手間を大幅に削減することが可能となる。
【0032】
<融着接続部分の補強処理について>
ところで、融着接続された2本の光ファイバは、その融着接続部分を熱収縮スリーブを用いて補強する必要がある。通常は、相互に接続される2本の光ファイバの一方に熱収縮スリーブを事前に挿通させておき、融着接続後に、その熱収縮スリーブを融着接続部分まで摺動させた後、2本の光ファイバを熱収縮スリーブの加熱位置まで移動する。この移動に際しては、2本の光ファイバが融着接続部分の前後で直線状態を維持するように、2本の光ファイバを手で引っ張り、張力を掛けた状態で保持しながら移動する。
【0033】
しかしながら、第1の参考例の光ファイバホルダ1aに固定されている終端処理済光ファイバ20aは、プラグフレーム21aの後端にベアファイバ22を露出させた、心線部分が無いコネクタ型光ファイバ20aである。しかも、そのプラグフレーム21aの部分が光ファイバホルダ1aに固定されているので、融着接続後は、融着接続機から光ファイバホルダ1aを取り外し、さらに光ファイバホルダ1aからコネクタ型光ファイバ20aを取り外す作業が必要となる。そのため、このコネクタ型光ファイバ20aの取り外し作業中に直線状態に維持されるべき融着接続部分を屈曲させてしまう可能性がある。したがって、コネクタ型光ファイバ20aについては、可能であれば、補強処理が完了するまで光ファイバホルダ1aから取り外さない方が望ましい。
【0034】
そこで、第1の参考例の光ファイバホルダ1aは、融着接続後にコネクタ型光ファイバ20aを移動する作業を考慮した構成として、図1、図3に示したように、フック部6を備えている。このフック部6は、特定の治具を利用することを想定して設けられたものであり、図7にこの治具60の使用状態を示した。この治具(光ファイバ保持具)60は、棒状のグリップ61と、そのグリップ61の一方の先端側に一方の端部62が取り付けられているバー63とで構成されている。グリップ61の延長方向を前後方向とすると、当該グリップ61の表面には、前後方向に延長する溝64が形成されている。この溝64の形成面側を上方とし、グリップエンド65を後端とすると、バー63は、グリップ61の溝64の上方でグリップ61の前端側に取り付けられて、前方向に延長している。また、バー63の他方の端部66、すなわち前端側には、グリップ61の前端面67と対向して開口するリング68が形成されている。
【0035】
そして、上記治具60を用いて補強処理を行う際には、グリップ61の前端面67を光ファイバホルダ1aの後面3に対向させてリング68を上記光ファイバホルダ1aのフック部6に引っ掛けつつ、融着接続された接続対象光ファイバ20を上記U字溝64に這わせ、その接続対象ファイバ20をグリップ61を持つ手で保持する。このとき、融着接続状態にある2本の光ファイバ(20a,20)に張力を掛けた状態で保持する。それによって、接続対象光ファイバ20と、光ファイバホルダ1aに固定されたままのコネクタ型光ファイバ20aとを適度に引っ張った状態で保持したまま熱収縮スリーブ40の加熱位置まで移動させるとともに、その保持状態を維持しながら熱収縮スリーブ40の加熱作業を行うことができる。
【0036】
===実施例===
第1の参考例の光ファイバホルダ1aに固定される終端処理済光ファイバ20aは、光コネクタ30aにおけるプラグフレーム21aの後端側にベアファイバ22を露出させたコネクタ型光ファイバ20aであった。それに対し、本発明の実施例における光ファイバホルダに固定される終端処理済光ファイバは、先端をフェルールに内挿した光ファイバとなっている。
【0037】
図8に実施例における光ファイバホルダ1bに固定される終端処理済光ファイバ20bの概略を示した。なお、当該図8においても、図2に示したコネクタ型光ファイバ20aと同じ前後関係を採用している。実施例の光ファイバホルダが対象とする終端処理済光ファイバ20bの終端処理部21bは、フランジ122の後方に円筒部123が同軸に連結された形状をなす中空筒状の部材(以下、フランジ部材)121にフェルール23を挿入して当該フェルール23を前端側に突出させてなり、この終端処理済光ファイバ(以下、フランジ部材付光ファイバ)20bは、そのフランジ部材121の後端側にベアファイバ22を露出させたものである。
【0038】
また、図示したフランジ部材付光ファイバ20bでは、フェルール23の前端が軟質樹脂素材でできたチューブ124(図中網点)に挿入され、そのチューブ124が前方に延長している。このチューブ124は、フェルール23の端面を保護する役目を担うとともに、心線を模している。
【0039】
フランジ部材121は、フランジ部材付光ファイバ20bが光コネクタに組み込まれたた際、ハウジングなどの光コネクタの内部形状に係合してフェルール23を正しい位置に固定するための形状となっている。そして、ここに示したフランジ部材付光ファイバ20bは、LCコネクタに組み込まれるものとしている。
【0040】
図9に当該フランジ部材付光ファイバ20bが組み込まれるLCコネクタ30bの一例を示した。また、図10に当該LCコネクタ30bの分解斜視図を示した。ハウジング31bを前方として、そのハウジング31b内にフランジ部材付光ファイバ20bが挿入される。フランジ部材付光ファイバ20bの後端には、接続対象光ファイバ20が接続され双方の接続箇所が熱収縮スリーブ40によって補強されている。
【0041】
フランジ部材光ファイバ20bの後方からスライダ32bがハウジング31bに挿入されるとともに、ラッチ機構によりハウジング31bと連結する。なお、ハウジング内に挿入されたスライダ32bの前端は、フランジ部材121のフランジ122の後面に当接し、フランジ部材光ファイバ20bを前方に付勢する。そして、このフランジ122の前端がハウジング31b前端の内面に当接して、フランジ部材付光ファイバ20bがハウジング31b内に位置決めされた状態で固定される。そして、ブーツ33bの前端にスライダ32bの後端が挿入される。
【0042】
図11に実施例における光ファイバホルダ1bの概略構造を示した。当該図11においても、第1の参考例における前後、上下、左右のそれぞれの関係を採用する。図11(A)に示したように、光ファイバホルダ1bは、概して扁平箱状の外観で、箱の本体110となる部分と、当該本体110の上面2の前方部分を開閉自在に覆うクランプ部210とから構成されている。本体110の後端には突起111が一体的に形成され、本体110の上面2には、フランジ部材付光ファイバ20bやチューブ124を収納するための空間となる溝構造10bが形成されている。また、第1の参考例における光ファイバホルダ1aと同様に、融着接続に装着される際の位置決めに利用される上下面を連絡する縦孔4や下面の溝5も形成されている。
【0043】
実施例における光ファイバホルダ1bは、クランプ部210を含め、樹脂の一体成型品であり、箱状の本体110の後方で、側面と上面2とを接続する辺にクランプ部210の蝶番として機能する薄肉の基部211が接続されている。クランプ部210は、その基部211から先端部212に向かって平板状に延長したのち、閉じる方向に向かって屈曲したのち反転してV字を描き、先端部212に至る形状となっている。具対的には、V字部分213において、先端部212に連続する側(外側)の壁面214が、先端部212に向かって徐々の厚さを増すくさび状となっており、そのくさびは、その終端、すなわち先端部212側にて急激に薄肉となる。そして、その薄肉部215がクランプ部210の延長方向に屈曲して先端部212となっている。また、クランプ部210の前記平板状部分216の後端側に、クランプ部210を閉じる方向に二股に突出する突起217が形成され、この二つの突起217の間は、U字状に成型されている。また、この突起217の前方に浅くて短いU字溝218が連続している。
【0044】
一方、光ファイバホルダ1bの箱状の本体110における溝構造10bは、前端から後方に向かってチューブ124を這わせるための幅広の溝112と、その溝112の延長途上で大きく上方に開口する空間113と、光ファイバホルダ1bの後面3から突設された突起111の内方を上方に開口させてなる凹部(以下、フランジ収納部)114と、当該フランジ収納部114と前記空間113とを連絡するV溝115とから構成される。
【0045】
突起111の内方に形成された前記フランジ収納部114は、フランジ部材付光ファイバ20bのフランジ122を収納するための空間であり、当該フランジ収納部114の後方内壁面117には、上方が開放する開口118が形成され、その開口118によってフランジ収納部114の内外が連絡されている。また開口118の左右幅は、フランジ部材121の円筒部123の直径にほぼ等しく、光ファイバホルダ1bにフランジ部材付光ファイバ20bが固定されると、フランジ122の後面がフランジ収納部114の後方内壁面117に当接しつつ、円筒部123とベアファイバ22の部分とがフランジ収納部114の後方内壁面117に形成された開口118より後方へ突出する。
【0046】
そして、フランジ収納部114の前方は、フェルール23を保持するための前後に延長するV溝115に連絡し、当該V溝115の前端は、前記上方に大きく開口する前記空間113に開放する。また、光ファイバホルダ1bの上面2には、クランプ部210の前記V字部分213の形状に係合して当該クランプ部210を閉状態で固定するための凹部(クランプ固定部)116が形成されている。クランプ部210のV字部分213がこのクランプ固定部116に挿入されると、V字部分213は、上記くさび部分の肉厚によって壁面間が近接するように撓むとともに、その撓みに対する復元力により、V字部分213におけるV字の両側の外壁面がクランプ固定部116の内壁面を押圧する。それによって、クランプ部210が閉状態で固定される。
【0047】
図11(B)は、フランジ部材付光ファイバ20bを光ファイバホルダ1bに固定した状態を示している。ここでは、フランジ部材付光ファイバ20bの部分を斜め格子のハッチングで示した。フランジ部材付光ファイバ20bを光ファイバホルダ1bの溝構造10bに沿って収納し、クランプ部210を閉じると、チューブ124が本体110の上面の中央から前端側に延長する溝112に沿いつつ、光ファイバホルダ1bの先端面から外方に案内されるとともに、フランジ部材121とフェルール23の部分が前後、左右、上下への移動が規制された状態で保持される。
【0048】
具体的には、クランプ部210の二つの突起217がフランジ部材121のフランジ122とフェルール23との境界部分を挟持しつつ、当該突起217の後面がフランジ123の前面に当接してフランジ部材121を後方に付勢する。フランジ122の後面は、フランジ収納部114の後方内壁面117に当接し、フランジ部材121は前後への移動が規制される。また、クランプ部210の平板状部分216に形成された浅いU字溝218がフェルール23をV溝115に沿わせつつ下方に付勢する。それによって、フェルール23は、このV溝115の壁面によって挟持されて左右への移動が規制される。そして溝構造10bにおけるフランジ収納部114の深さやV溝115の壁面の傾斜は、クランプ部210を閉じた状態で、フランジ部材121やフェルール23の上下への移動を規制するように設定されている。
【0049】
なお、上記フランジ部材付光ファイバ20bは、その前端にチューブ124が接続され、かつ光ファイバホルダ1bに固定された状態で提供される。そして、このフランジ部材付光ファイバ20bを接続対象光ファイバ20と融着接続する際には、第1の参考例の場合と同様に、フランジ部材付光ファイバ20bが固定された光ファイバホルダ1bと、接続対象光ファイバ20が固定された通常ホルダ1とを融着接続機に装着すればよい。また、融着接続後は、フランジ部材付光ファイバ20bと接続対象光ファイバ20をそれぞれの光ファイバホルダ(1b,1)から取り外すとともに、融着接続点の前後を熱収縮スリーブ40に挿入した状態で、フランジ部材付光ファイバ20bに接続されているチューブ124と接続対象光ファイバ20の心線部分とを手で持ち、張力を掛けた状態で熱収縮スリーブ40の加熱場所まで移動させればよい。すなわち、実施例において、チューブ124は、フェルール23の端面を保護する機能と、融着接続後の移動に際して人が把持するための擬似的な心線として機能する。
【0050】
上述した実施例の光ファイバホルダ1bでは、第1の参考例の場合と同様に、融着接続に際し、実質的に終端処理部21bのみを接続対象光ファイバ20に接続することができ、余長処理を考慮する必要がない。また、融着接続後に特定の治具を用いることなく、融着接続状態にあるフランジ部材付光ファイバ20bと接続対象光ファイバ20とを張力を掛けた状態で熱収縮スリーブ40の加熱場所まで移動させることができる。もちろん、光ファイバホルダ1bを使い捨て部品とすることも可能である。
【0051】
===第2の参考例===
上記第1の参考例の光ファイバホルダ1aと、実施例の光ファイバホルダ1bは、それぞれ異なる形状の終端処理済光ファイバ(20a,20b)を固定するために、異なる構造を備えていた。しかし、終端処理済光ファイバの種別によらず、同じ光ファイバホルダが使用できれば、量産効果により光ファイバホルダをさらに安価に提供することが期待できる。そして、第2の参考例における光ファイバホルダは、種別が異なる光ファイバを固定することができるようになっている。
【0052】
第2の参考例における光ファイバホルダは、第1の参考例における光ファイバホルダ(コネクタ用光ファイバホルダ)1aを使いつつ、実施例とほぼ同様のLCコネクタ用のフランジ部材付光ファイバを固定することが可能となっている。図12に第2の参考例における光ファイバホルダ1cの概略を示した。ここでも、上記第1の参考例及び実施例と同様に前後、上下、左右の各方向を規定する。図12(A)に示したように、第2の参考例の光ファイバホルダ1cは、コネクタ用光ファイバホルダ1aと、プラグフレームの外観形状を模して当該コネクタ用光ファイバホルダ1aに着脱自在に固定されるアダプタ300とから構成されている点が異なっている。このアダプタ300は、図12(B)に拡大図により示したフランジ部材付光ファイバ20cを保持する構造を備えている。それによって、フランジ部材付光ファイバ20cをコネクタ用光ファイバホルダ1aに位置決めした状態で固定することが可能となる。
【0053】
アダプタ300の左右側面301は、プラグフレーム21の角筒部分の側面25とほぼ同様の凹凸形状をなし、コネクタ用光ファイバホルダ1aの溝構造10aに係合する。また、アダプタ300の後面にはフランジ部材付光ファイバ20cのフェルール23が挿入される孔302が前後方向に穿設されている。そして、この孔302の後方には、フランジ部材付光ファイバ20cのフランジ部材321を支持する構造として、左右からフランジを挟持する爪部303と、下方にてフランジを支える舌片304とを備えている。フランジ部材付光ファイバ20cのフェルール23をアダプタ300の孔302に挿入すると、当該フランジ部材付光ファイバ20cがアダプタ300に対して位置決めされた状態で保持される。また、アダプタ300は、自身の孔302にフェルール23を挿入することで、当該フェルール23の端面を保護する役目も担っている。
【0054】
なお、第2の参考例において、フランジ部材付光ファイバ20cは、実施例と同様に、フランジ部材321の前端にフェルール23が突出した終端処理部21cを備えているものの、実施例の光ファイバホルダ1bが対象とするフランジ部材付光ファイバ20bとは、そのフランジ部材321の形状が若干異なっている。図12(B)に示したように、アダプタ300に保持されるフランジ部材付光ファイバ20cは、前後二つの円板部(324,325)を筒状の中間部326を介して同軸に連結した二重フランジ322を備えている。フランジ部材321は、この二重フランジ322により、アダプタ300の後端側における爪部303や舌片304に確実に係合し、アダプタ300の孔302にフェルール23を挿入すると、フランジ部材付光ファイバ20cがアダプタ300に対して位置決めされた状態で保持される。
【0055】
具体的には、後方の円板部324の外周において、軸対称となる2箇所に、Dカットされてなる平坦部327が形成され、後方の円板部324の外周において、平坦部327の形成位置に対して軸周りに90゜回転させた2箇所に、凹状の切欠部328が形成されている。そして中間部326は、円筒側面の一部をこの切欠部328に連続して前後方向に切り欠いて、一部側面が平坦となる円筒状となっている。
【0056】
このフランジ部材付光ファイバ20cは、フェルール23がアダプタ300の孔302に挿入される際、後方の円板部324における平坦部327がアダプタ300の舌片304の上面に当接させるようにする。それによって、フランジ部材付光ファイバ20cの上下方向への移動が規制される。また、このとき、アダプタ300の孔302の後方周縁に二重フランジ322における前方の円板部325の前面が当接し、フランジ部材付光ファイバ20cの前方への移動が規制される。
【0057】
さらに、アダプタ300の二つの爪部303は、前後に延長する板状部材305の後端側を互いに対向するように屈曲させてなり、爪部303の先端部306は、その屈曲部307から先端に向かって徐々に薄肉となっていく形状となっている。また、爪部303の先端部306は、二重フランジ322における二つの円板部(324,325)を連結する前記中間部326を挟み込むように弓状に切り欠かれている。そして、フェルール23をアダプタ300の後端の孔302に挿入すると、爪部303は、二重フランジ322の後方の円板部324に形成された切欠部328によって当該後方の円板部324の縁に干渉することなく、当該爪部303の先端が中間部326の側面に当接し、当該中間部326を確実に挟持する。それによって、孔302に挿入されたフェルール23と爪部303によって挟持された中間部326とによって、フランジ部材付光ファイバ20cの左右方向への移動が規制される。
【0058】
このように、フランジ部材付光ファイバ20cがアダプタ300に保持された状態で、そのアダプタ300をさらにコネクタ用光ファイバホルダ1aに固定すると、前記爪部303は、コネクタ用光ファイバホルダ1aの溝構造10aによって左右への撓みが規制される。すなわち、左右の爪部303によって二重フランジ322の中間部326が挟持された状態では、当該爪部303の前面が二重フランジ322の前方の円板部325の前面当接しており、この爪部303に連続する板状部材305が左右外側方向に撓まない限り、フランジ部材付光ファイバ20cは、アダプタ300に保持された状態を維持し、アダプタ300から逸脱することがない。
【0059】
そして、アダプタ300が溝構造10aに固定されると、爪部303に連続する板状部材305の左右外側方向への撓みが規制され、その結果、爪部303フランジ部材付光ファイバ20cは、コネクタ用光ファイバホルダ1aに対して前方向の移動が規制される。このようにして、フランジ部材付光ファイバ20cは、位置決めされた状態でコネクタ用光ファイバホルダ1aに固定される。
【0060】
なお、第2の参考例における光ファイバホルダ1cを用いた融着接続方法では、コネクタ用光ファイバホルダ1aにアダプタ300を介してフランジ部材付光ファイバ20cを固定しておき、そのコネクタ用光ファイバホルダ1aと、接続対象光ファイバ20が固定された通常ホルダ1とを融着接続機に装着して融着接続作業を行えばよい。また、補強処理については、第1の参考例と同様に特定の治具60を用いて熱収縮スリーブ40の加熱位置までコネクタ用光ファイバホルダ1aごと移動させればよい。この第2の参考例における光ファイバホルダ1cについても、アダプタ300を含めて使い捨て部品とすることができる。それによってコネクタ用光ファイバホルダ1aにアダプタ300を固定したり、アダプタ300にフランジ部材付光ファイバ20cを保持させたりする作業が不要となる。
【符号の説明】
【0061】
1,1a,1b,1c 光ファイバホルダ、2 光ファイバホルダ上面、
3 光ファイバホルダ後面、4 融着接続機に装着するための縦孔、
5 融着接続機に装着するための溝、6 フック部 7,115 V溝、
8,210 クランプ部、10a,10b 溝構造、11 凹部、12 ラッチ部、
20 接続対象光ファイバ、20a〜20c 終端処理済光ファイバ、
21a プラグフレーム、21b,21c 終端処理部、22 ベアファイバ、
23 フェルール、24 カバー、25 プラグフレーム側面、27 リブ、
30a SC型光コネクタ、30b LC型光コネクタ、
31a,31b ハウジング、32a,32b スライダ、
33a,33b ブーツ、40 熱収縮スリーブ、60 治具、61 グリップ、
63 バー、64 グリップの溝、68 リング、
112 チューブを這わせる溝、114 フランジ収納部、
116 クランプ固定部、121 フランジ部材、122 フランジ、
123,323 円筒部、124 チューブ、217 突起、
322 二重フランジ、324 後方の円板部、325 前方の円板部、
326 中間部、
327 平坦部、328 切欠部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ融着接続機によって、2本の光ファイバの後端同士を融着接続する際に、一方の光ファイバを固定するための光ファイバホルダであって、
光ファイバをフェルールに内挿させた終端処理部を、後方からベアファイバを突出させた状態で位置決めして固定する終端処理部固定構造と、
前記光ファイバ融着接続機に形成されている位置決めガイドに係合して、当該光ファイバ融着接続機の所定の位置に装着するための構造と
を備え、
前記終端処理部固定構造は、
フランジの形成された中空筒状のフランジ部材に前記フェルールを同軸に連結した前記終端処理部を収納するフランジ収納部と、
前記フェルールの前端に着脱自在に接続されたチューブを這わせる形状に形成された溝と
を備える
ことを特徴とする光ファイバホルダ。
【請求項2】
請求項1に記載の光ファイバホルダであって、
前記フランジ収納部は、光コネクタの内部形状に係合する形状の前記フランジ部材を収納する
ことを特徴とする光ファイバホルダ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光ファイバホルダであって、
前記フランジ収納部の後方の壁面には、上方が開放する開口が形成され、
前記フランジ部材の前記フランジの後方に形成された円筒部と前記ベアファイバとが前記開口より後方に突出する
ことを特徴とする光ファイバホルダ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の光ファイバホルダであって、
前記フランジ収納部の前方に、前記フランジ部材の前側から突出させた前記フェルールを保持するV溝が形成されている
ことを特徴とする光ファイバホルダ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の光ファイバホルダであって、
前記終端処理部固定構造は、開閉自在に上面を覆うクランプ部をさらに備え、
前記クランプ部を閉じると、前記クランプ部が前記フェルールをV溝に向かって付勢する
ことを特徴とする光ファイバホルダ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の光ファイバホルダであって、
前記終端処理部固定構造は、開閉自在に上面を覆うクランプ部をさらに備え、
前記クランプ部には、前記クランプ部を閉じる方向に突出する突起が形成されており、
前記クランプ部を閉じると、
前記突起の後面と前記フランジの前面が接触し、
前記フランジの後面が前記フランジ収納部の後方の壁面に接触する
ことを特徴とする光ファイバホルダ。
【請求項7】
請求項6に記載の光ファイバホルダであって、
前記突起は、前記クランプ部を閉じる方向に二股に突出しており、
前記突起が前記フランジと前記フェルールとの境界部分を挟持する
ことを特徴とする光ファイバホルダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−92810(P2013−92810A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−32249(P2013−32249)
【出願日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【分割の表示】特願2009−259188(P2009−259188)の分割
【原出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】