説明

光ファイバーケーブルとその布設方法

【課題】 引き込み受注が分散して、かつ、時期がずれてなされたような場合でも、比較的簡単に、かつ、低コストで受注ユーザへのケーブル引き込みを行うことができる光ファイバーケーブルを提供する。
【解決手段】ユーザへの引き込みケーブルに接続されている配線用のサブケーブル3と、配線用のサブケーブル3に接続されている幹線用の本体ケーブル2と、支持線4とを一体化してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として使用末端ユーザに光通信線を配線する際に用いられる光ファイバーケーブルとこれを布設する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバーケーブルとしては、多数の芯線を備えた幹線用の本体ケーブルを支持線に取付け支持して一体化した自己支持型のものが多用されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−202469号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
末端ユーザに光通信線を配線する光ファイバケーブルの配線構造においては、例えば、図7に示すように、24〜30芯程度の容量の本体ケーブル21を電柱24等に架設したうえで、ユーザから光ケーブルの引き入れを受注すると、その都度、本体ケーブル21における光ファイバのうちの1本をクロージャ22によって複数芯(通常は8芯)の分岐ケーブル23の各光ファイバに光接続し、この分岐ケーブル23を受注ユーザ近くの電柱24まで架設したうえで、受注ユーザh1に極近い電柱24において、分岐ケーブル23における光ケーブルのうちの1本を引き出して引き込みケーブル(ドロップケーブル)25に光接続し、その引き込みケーブル25を受注ユーザh1に導く。先に受注したユーザh1の近傍において別のユーザh2から受注があれば、先に架設された分岐ケーブル23の光ファイバにおける残余のものを引き出して引き込みケーブル26に光接続し、その引き込みケーブル26を受注ユーザh2に導くことになり、分岐ケーブル23の架設領域では分岐ケーブル23の回線容量だけの引き込みが可能となる。
【0004】
先に架設した分岐ケーブル23の架設領域から離れた場所で引き込み受注があると、既設の分岐ケーブル23に未使用の光ファイバが在るにもかかわらず、本体ケーブル21における残余の光ファイバの1本をクロージャ27において別の分岐ケーブル28に接続して、この分岐ケーブル28からの引き込みが行われることになる。
【0005】
従って、引き込み受注が分散して、かつ、時期がずれてなされたような場合、数多くのクロージャを使って本体ケーブルに分岐ケーブルを接続する必要があり、布設工事に手間がかかるとともに、クロージャを数多く使用することで布設コストが高くなるものであった。
【0006】
本発明は、このような実情に着目してなされたものであって、引き込み受注が分散して、かつ、時期がずれてなされたような場合でも、比較的簡単に、かつ、低コストで受注ユーザへの引き込みを行うことができる光ファイバーケーブルとその布設方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下のように構成した。
【0008】
第1の発明に係る光ファイバケーブルは、ユーザへの引き込みケーブルに接続されている配線用のサブケーブルと、前記配線用のサブケーブルに接続されている幹線用の本体ケーブルと、支持線とを一体化してある。
【0009】
第2の発明に係る光ファイバケーブルは、24芯以下のサブケーブルと、24芯以上の本体ケーブルと、支持線とを一体化してある。
【0010】
これらの構成によると、電柱などを利用して架設した本体ケーブルの任意の光ファイバを本体ケーブルの任意の部位で引出して複数に分岐し、サブケーブルの各光ファイバに光接続することで、サブケーブルの各光ファイバを任意の箇所から任意の時期に引き出して受注ユーザの引き込みケーブルに光接続することができる。
【0011】
サブケーブルを接続した後でも、サブケーブルの別の箇所において本体ケーブルの残余の光ファイバを分岐させてサブケーブルの各光ファイバに光接続することができ、一度広域に光ファイバケーブルを架設しておくだけで、サブケーブルの光ファイバを無駄なく使用してのケーブル引き込みが可能となる。
【0012】
第3の発明に係る光ファイバケーブルは、上記第1の発明において、
前記支持線に前記サブケーブルと前記本体ケーブルとをそれぞれ取付け支持してある。
【0013】
この構成によると、サブケーブルおよび本体ケーブルは支持線にそれぞれ個別に一体化することになり、サブケーブルおよび本体ケーブルをそれぞれ独立して確実に架設支持することができる。
【0014】
第4の発明に係る光ファイバケーブルは、上記第1の発明において、
前記支持線に前記本体ケーブルを取付け支持するとともに、本体ケーブルに前記サブケーブルを取付け支持してある。
【0015】
この構成によると、光ファイバケーブルを電柱等に架設する場合、ロール巻きされた光ファイバケーブルをガイドローラを介して架設部位に案内供給する際に、光ファイバケーブルの一端部に位置する支持線を集中してガイドローラで巻回案内することが容易となり、本体ケーブルやサブケーブルを不当に擦って損傷するようなことを抑制しながら円滑に架線処理することができる。
【0016】
第5の発明に係る光ファイバケーブルの布設方法は、
支持線と、配線用のサブケーブルと、幹線用の本体ケーブルとを一体化してなる光ファイバーケーブルを架設し、前記本体ケーブルの任意の光ファイバを本体ケーブルの任意の部位で分岐させて前記サブケーブルの各光ファイバに光接続することを特徴とする。
【0017】
これによると、架設した本体ケーブルの任意の光ファイバを本体ケーブルの任意の部位で引き出して分岐し、サブケーブルの各光ファイバに光接続することで、サブケーブルの各光ファイバを任意の箇所から任意の時期に引き出して受注ユーザの引き込みケーブルに光接続することができる。
【0018】
第6の発明に係る光ファイバケーブルの布設方法は、上記第5の発明において、
分岐接続された前記サブケーブルの全ての光ファイバがケーブル供給先に接続されたサブケーブルより下流側において、前記本体ケーブルの残余の光ファイバを分岐させて、その分岐部位より下流側のサブケーブルの各光ファイバに光接続することを特徴とする。
【0019】
これによると、本体ケーブルの光ファイバにサブケーブルを接続した後でも、サブケーブルの別の箇所において本体ケーブルの残余の光ファイバを引き出してサブケーブルの各光ファイバに光接続することができ、一度広域に光ファイバケーブルを架設しておくだけで、サブケーブルの光ファイバを無駄なく使用してのケーブル供給が可能となる。
【0020】
第7の発明に係る光ファイバケーブルの布設方法は、上記第5または第6の発明において、
前記本体ケーブルから分岐させた光ファイバを、分岐部位からみて上流側に位置するサブケーブルの光ファイバに光接続することを特徴とする。
【0021】
これによると、サブケーブル光ファイバの内、使用された光ファイバの下流側部分も、その下流側において本体ケーブルから分岐させた別の光ファイバに光接続して使用することが可能であり、本体ケーブルと同時に架設されたサブケーブルの光ファイバを無駄なく利用することが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
このように、本発明による光ファイバーケーブルおよびその布設方法を利用すれば、引き込み受注が分散して、かつ、時期がずれてなされたような場合でも、比較的簡単に、かつ、低コストで受注ユーザへの引き込みを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0024】
図1に、本発明に係る光ファイバーケーブル1の一部が示されている。この光ファイバーケーブル1は、電柱などに架設できるよう、本体ケーブル2、サブケーブル3、および、支持線4を一体化した架空型に構成されている。
【0025】
前記本体ケーブル2は、ケーブルコア5をシース6で被覆して構成されている。ケーブルコア5は、鋼線を縒り合わせたテンションメンバー8が中心埋設されるとともに、外周に複数条(この例では6条)の溝9が形成された樹脂製のスペーサ7と、各溝9に沿って収容されたテープ状の芯線10と、スペーサ7の外周を覆う押え巻き層11とで構成されており、2本の光ファイバを埋設した芯線10を各溝9に2本づつ収容することで24芯の回線容量を備えている。なお、図1における各芯線10には2本の光ファイバが収納されているが、各芯線10に4〜8本の光ファイバを収納してもよい。また、ケーブルコア5は、スペーサ7を有しているが、スペーサ7を省略してもよい。
【0026】
前記サブケーブル4は、4本の光ファイバを埋設してなるテープ状の芯線を2枚積層して構成されるとともに、前記支持線2は鋼線を縒り合わせて構成されており、ケーブルコア5を覆うシース6を介して本体ケーブル2、サブケーブル3、および、支持線4が一体化されている。サブケーブル4のコアは、4本の光ファイバが埋設されたテープ状の芯線でなくてもよく、複数本の光ファイバを並べてそのまま前記コアとして用いてもよい。なお、この例では、本体ケーブル2と支持線4との連結部位、および、サブケーブル3と支持線4との連結部位においてシース6の一部がケーブル長手方向に所定ピッチで欠如されている。
【0027】
上記のように構成された光ファイバケーブル1の布設方法を以下に説明する。
【0028】
図2に示すように、ケーブル引き込みの受注があると、先ず、図外左方において光信号送受信局に接続された光ファイバケーブル1を電柱12を利用して広域に架線する。
【0029】
次に、光ファイバケーブル1の適所にクロージャ13を装填し、本体ケーブル2から1本の光ファイバ1aを引き出して8分岐器によって8本に分岐し、サブケーブル3の8本の光ファイバ3a〜3hにそれぞれ光接続する。
【0030】
受注ユーザh1の近くにおいて、サブケーブル3の1本の光ファイバ3aを引き込みケーブル14に光接続し、この引き込みケーブル14を受注ユーザh1に導く。
【0031】
図3に示すように、光ファイバケーブル1の架設領域で別の受注ユーザh2が発生すれば、サブケーブル3における残余の光ファイバ3b〜3hのいずれかを引き込みケーブル14に光接続してその受注ユーザh2に導く。この例では、サブケーブル3が8芯の回路容量であるので8件までの引き込み受注に対応することができる。
【0032】
図4に示すように、8件の引き込みが行われた領域より下流側で引き込み受注が発生すると、本体ケーブル2における残余の光ファイバの1本2bを引き出して別のクロージャ15を介して分岐し、サブケーブルの8本の光ファイバ3b〜3hに光接続することで、更に8件の引き込み受注に応じることができる。
【0033】
この光ファイバケーブル1は、本体ケーブル2とサブケーブル3が一体に架設されるので、次のような布設も可能となる。
【0034】
すなわち、図5に示すように、8件の引き込みが行われた領域の下流側で、別のクロージャ16を介して本体ケーブル2の他の光ファイバ2aをサブケーブル3に分岐接続する場合、サブケーブル3における光ファイバ3a〜3hの一部(例えば3a)を、分岐部位Xの上流側に向けて光接続することで、この分岐部位Xの下流側域のみならず上流側域のサブケーブル3から引き込みを行うことが可能となる。
(他の実施例)
【0035】
本発明は、以下のような形態で実施することもできる。
【0036】
(1)図6に示すように、支持線2に本体ケーブル3を支持するとともに、本体ケーブル3にサブケーブル4を取付支持して3者を一体化することもできる。
【0037】
(2)別体に構成した本体ケーブル2、サブケーブル3、および、支持線4をバインド線で外囲して3者を一体化、あるいは、本体ケーブル2と支持線4を一体化した架空型ケーブルとサブケーブル3とをバインド線で外囲して3者を一体化することもできる。
【0038】
(3)上記実施例では、本体ケーブル3を24芯、サブケーブルを8芯の回線容量のものとしているが、回線容量は任意に設定できる。
【0039】
(4)サブケーブル3に回線容量が多いものを用いる場合には、クロージャにおいて本体ケーブル2から複数本の光ファイバを引き出してサブケーブル3の各光ファイバに光接続すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】光ファイバケーブルの一部を示す斜視図である。
【図2】光ファイバケーブルの基本的な布設形態を示す概略図である。
【図3】光ファイバケーブルの布設形態を示す概略図である。
【図4】光ファイバケーブルの他の布設形態を示す概略図である。
【図5】光ファイバケーブルの更に別の布設形態を示す概略図である。
【図6】光ファイバケーブルの別実施例を示す斜視図である。
【図7】従来の光ファイバケーブルの布設形態を示す概略図である。
【符号の説明】
【0041】
2 本体ケーブル
2a,2b 光ファイバ
3 サブケーブル
3a〜3h 光ファイバ
4 支持線
X 分岐部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザへの引き込みケーブルに接続されている配線用のサブケーブルと、前記配線用のサブケーブルに接続されている幹線用の本体ケーブルと、支持線とを一体化する、
ことを特徴とする光ファイバーケーブル。
【請求項2】
24芯以下のサブケーブルと、24芯以上の本体ケーブルと、支持線とを一体化する、
ことを特徴とする光ファイバーケーブル。
【請求項3】
前記支持線に前記サブケーブルと前記本体ケーブルとをそれぞれ取付け支持する、
ことを特徴とする請求項1記載の光ファイバーケーブル。
【請求項4】
前記支持線に前記本体ケーブルを取付け支持するとともに、本体ケーブルに前記サブケーブルを取付け支持する、
ことを特徴とする請求項1記載の光ファイバーケーブル。
【請求項5】
支持線と、配線用のサブケーブルと、幹線用の本体ケーブルとを一体化してなる光ファイバーケーブルを架設し、
前記本体ケーブルの任意の光ファイバを本体ケーブルの任意の部位で分岐させて前記サブケーブルの各光ファイバに光接続する、
ことを特徴とする光ファイバケーブルの布設方法。
【請求項6】
分岐接続された前記サブケーブルの全ての光ファイバがケーブル供給先に接続されたサブケーブルより下流側において、前記本体ケーブルの残余の光ファイバを分岐させて、その分岐部位より下流側のサブケーブルの各光ファイバに光接続する、
ことを特徴とする請求項5記載の光ファイバケーブルの布設方法。
【請求項7】
前記本体ケーブルから分岐させた光ファイバを、分岐部位からみて上流側に位置するサブケーブルの光ファイバに光接続する、
ことを特徴とする請求項5または6記載の光ファイバケーブルの布設方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−25444(P2009−25444A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−186808(P2007−186808)
【出願日】平成19年7月18日(2007.7.18)
【出願人】(000003263)三菱電線工業株式会社 (734)
【Fターム(参考)】