説明

光ファイバー式微少電流検出器

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】検電碍子の電圧測定、アレスターの漏れ電流測定、真空バルブの真空漏れ測定に利用する光ファイバー式微少電流検出器に関する
【0002】
【従来の技術】従来光ファイバー式微少電流検出器(特願昭63−193171号)は、図3に示すように、高電圧VHが印加され微少電流IOが流れる検電碍子、アレスター等の高インピーダンスZからなる微少電流(漏れ電流IO)回路と直列に全波整流回路2を設け、この全波整流回路の出力側にコンデンサCOを接続し、このコンデンサと並列にその充電電圧eを電源とすると共にその充電電圧が所定の電圧に達したことを検出してそれより低い所定の電圧までの充電電荷を放電させる2点電圧値でヒステリシス特性(図4)を有するマイクロ・パワー電圧検出器3を用いた電圧−周波数変換回路を設け、この変換回路の抵抗Rとトランジスタ4からなる放電回路中に発光ダイオード5を接続してなる検出回路1と、この発光ダイオードの点滅回数を光ファイバー6を介して一定時間計数する信号処理回路10からできている。信号処理回路10は、図5に示すように、光ファイバー6からの光を受ける受光素子11と、受光素子に流れるパルス波形を整形するパルス波形整形回路12と、整形されたパルスnを定時間カウントし、漏れ電流IOに比例したカウント値n,αn(α:定数)を出力する定時間カウンタ13と、このカウント数値αnを表示する数値表示器14と、カウント値nと基準値設定器16からの基準値NOとを比較し、n>NOになると出力する比較器15及びこの比較器15の出力により漏れ電流IOが大きくなったことを警報する警報出力器17とから構成されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記従来微少電流検出器のコンデンサCOは、図4に示すマイクロパワー電圧検出器3の特性によって、充放電されるので、放電回路に設けられた発光ダイオードの点滅回数は図6(a),(b)の(ハ)に示すように充電電流の大きさに応じて変化する。
【0004】検電碍子,アレスター等の高インピーダンスZは容量性であり、コンデンサCOに流れる充電電流は印加電圧より約90度進んでいるので印加電圧のゼロクロス付近で大きくなる。充電電流が定格の最大充電電流IMAX以上になると、印加電圧のゼロクロス付近では充電電流が大きいため動作時コンデンサCOの充電電圧eが図4のV1からV2まで下がる時間は伸びる。このため、印加電圧のゼロクロス付近での発光ダイオードの出力幅が広がり点滅回数が減少する。図6(c)の(ハ)は充電電流が定格の最大充電電流IMAX僅かに越えた場合を示すもので、印加電圧には正負の電圧に若干差違があるため印加電圧の正から負(又は負から正)に変わるゼロクロス付近で発光ダイオードの出力幅が大きくなる。充電電流が更に増加すると印加電圧の各ゼロクロス付近で発光ダイオードの出力幅が大きくなる。
【0005】アレスターの漏れ電流値を監視している時、この漏れ電流IOがIMAXを越えた場合、信号処理回路10は単純にある時間内の発光ダイオード5の点灯回数を数えているので、漏れ電流IOが増大しているにも拘らず、漏れ電流が減少したと誤判定をする。
【0006】本発明は、従来のこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、検出回路の充電電流定格値オーバーによる発光ダイオードの発光回数の減少で生ずる微少電流の誤判定を防止できる光ファイバー式微少電流検出器を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明における光ファイバー式微少電流検出器は、微少電流を整流してコンデンサを充電し、この充電電圧が所定値に達すると放電する放電回路中に発光ダイオードを接続し、この発光ダイオードの点滅を光ファイバーを介して受光する受光素子からのパルスをパルス波形整形回路を介して所定時間カウントして微少電流を測定する微少電流検出器において、前記パルス波形整形回路よりのパルスから所定パルス幅以上のパルスを検出するパルス比較器と、この比較器より出力されるパルスのパルス周波数を測定する定時間カウンタと、この定時間カウンタよりのパルス周波数を商用周波数と比較してパルス周波数が商用周波数と同じか商用周波数より高いとき過入力判定出力を出す比較器とよりなるものである。
【0008】
【作用】コンデンサは整流回路を介して微少電流で充電され、端子電圧が所定値に達すると放電する放電回路を通じて放電する。このため放電回路中に設けられた発光ダイオードの点滅速度は微少電流に比例するので、受光素子のパルスを所定時間カウントすることにより微少電流を測定することができる。
【0009】この微少電流検出器が定格の最大充電電流以上で充電されると、放電によって電圧が所定の電圧に低下するまで時間がかかるので、発光ダイオードの点灯回数が低下すると共に発光パルス幅の大きい発光パルスが混在してくる。
【0010】パルス比較器は、パルス波形整形回路よりのパルスから、所定パルス幅以上のパルスを検出して出力する。また、定時間カウンタはパルス比較器からの所定パルス幅以上のパルスの周波数を測定する。
【0011】充電電流定格の最大充電電流以上になると印加電圧のゼロクロス付近にパルス幅の大きいパルスが発生する。このため前記定時間カウンタから出力されるパルス周波数を印加電圧の周波数である商用周波数と比較することにより過入力を判定することができる。
【0012】
【実施例】本発明の実施例を図面を参照して説明する。図1は光ファイバー式微少電流検出器の過入力警報回路を示す。なお、従来図3,図4に示したものと同一構成部分は、同一符号を付してその重複する説明を省略する。
【0013】図1において、21はパルス幅基準値設定器、22はパルス波形整形回路12からのパルスnのパルス幅TXとパルス幅基準値設定器21からのパルス幅TOとを比較し、TX>TOのときパルスnxを出力するパルス比較器、23はパルスnxを定時間カウントして周波数を測定する定時間パルスカウンタ、24は商用周波数foを出力する商用周波数設定器、25はパルスカウンタ23からの周波数fnxと商用周波数設定器24からの商用周波数foとを比較し、nx≧foのとき出力する比較器、26は比較器よりの出力により過入力警報を出力する過入力警報器である。
【0014】上記過入力警報回路の動作に付いて説明する。図3における微少電流検出回路1のコンデンサCOを充電する充電電流が定格値を越えている場合、上記発明が解決しようとする課題の項で説明したように発光ダイオード5の出力幅は印加電圧のゼロクロス付近でそのパルス幅が大きくなるので、パルス整形回路12の出力パルスnは、図2(イ)に示すようにパルス幅が広いパルスnxが混ざったものとなる。このパルスnのパルス幅TXはパルス幅比較器22で基準パルス幅TOと比較され、TX>TOのパルスnxが検出される(図2(ロ))。
【0015】検出されたパルスnxは定時間パルスカウンタ23により定時間カウントされ、パルスnxの周波数fnxが測定される。この周波数fnxは比較器25で、商用周波数foと比較され、fnx≧foとなると充電電流が定格値をオーバーしているという判定出力を過入力警報器26に出力する。
【0016】
【発明の効果】本発明は、上述のとおり構成されているので、次に記載する効果を奏する。
(1)アレスターの漏れ電流の監視等、検出微少電流が、使用状態により定格電流以上流れる状態が連続して発生し、その状態で発光ダイオードの点滅回数が低下しているのとの判定ができる。
(2)このため、充電電流が定格電流を越えたことにより低下する発光ダイオードの点滅回数をカウントして、漏れ電流が少いと誤判断することがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を示すブロック回路図。
【図2】充電電流が定格値を越えている場合のパルス幅比較器の入,出力パルスを示す波形図。
【図3】従来微少電流検出器を示すブロック回路図。
【図4】マイクロパワー電圧検出器の動作説明図。
【図5】従来微少電流検出器の信号処理回路を示すブロック回路図。
【図6】(a),(b),(c)は充電電流小,充電電流動作限界手前,充電流定格値を僅かに越えた時における印加電圧,充電電圧及び発光ダイオード出力の関係を示すタイミング図。
【符号の説明】
1…微少電流検出回路、2…全波整流回路、3…マイクロパワー電圧検出器、5…発光ダイオード、6…光ファイバー、10…信号処理回路、11…受光素子、12…パルス波形整形回路、13,23…定時間パルスカウンタ、14…数値表示器、15,25…比較器、16…基準値設定器、17,26…警報器、21…基準パルス幅設定器、22…パルス比較器、24…商用周波数設定器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 微少電流を整流してコンデンサを充電し、この充電電圧が所定値に達すると放電する放電回路中に発光ダイオードを接続し、この発光ダイオードの点滅を光ファイバーを介して受光する受光素子からのパルスをパルス波形整形回路を介して所定時間カウントして微少電流を測定する微少電流検出器において、前記パルス波形整形回路よりのパルスから所定パルス幅以上のパルスを検出するパルス比較器と、この比較器より出力されるパルスのパルス周波数を測定する定時間カウンタと、この定時間カウンタよりのパルス周波数を商用周波数と比較してパルス周波数が商用周波数と同じか商用周波数より高いとき過入力判定出力を出す比較器、とを設けてなることを特徴とした光ファイバー式微少電流検出器。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図6】
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【特許番号】特許第3116411号(P3116411)
【登録日】平成12年10月6日(2000.10.6)
【発行日】平成12年12月11日(2000.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−111323
【出願日】平成3年5月16日(1991.5.16)
【公開番号】特開平4−339268
【公開日】平成4年11月26日(1992.11.26)
【審査請求日】平成9年9月9日(1997.9.9)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【参考文献】
【文献】特開 平2−42367(JP,A)
【文献】特開 昭56−63264(JP,A)