説明

光ファイバ伝送システム及び光受信装置

【課題】本発明は、光MIMO技術を用いた光ファイバ伝送における長距離伝送を実現する技術を提供することを目的とする。
【解決手段】光受信装置Rにおいて、前段のFBG(Fiber bragg grating)装置9を利用して、光ファイバ伝送の群遅延差を予備的に補償することとし、後段のFIR(Finite inpulse response)フィルタ装置6を利用して、光ファイバ伝送の群遅延差を高精度に補償することとした。これにより、FIRフィルタ装置6においてタップ数を削減し計算時間を短縮するとともに、光MIMO技術を用いた光ファイバ伝送において長距離伝送を実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ伝送の群遅延差を補償する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ伝送システムでは、光ファイバ中で発生する非線形効果やファイバヒューズが問題となり、伝送の大容量化が制限されている。これらの制限を緩和するためには、光ファイバに導波する光の密度を低減する必要があり、非特許文献1、2に示すように大コアファイバが検討されている。
【0003】
しかし、曲げ損失低減、単一モード動作領域の拡大、実効断面積の拡大は互いにトレードオフの関係にあり、所定の条件下における実効断面積の拡大量には限界があるという課題があった。そこで、無線での大容量化技術であるMulti−input multi−output(MIMO)技術を光ファイバ伝送に適用する試みが行われている(例えば、非特許文献3、4参照)。
【0004】
光MIMO技術は伝送媒体としてマルチモード光ファイバを用い、伝送容量を拡大できるとともに、先に述べた大コア光ファイバで制限要因であった単一モード動作条件が不要になるため、さらなる大コア化が可能であることも特徴である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】T.Matsui,K.Nakajima and C.Fukai,“Applicability of Photonic Crystal Fiber With Uniform Air−Hole Structure to High−Speed and Wide−Band Transmission Over Conventional Telecommunication Bands”,J.Lightwave Technol.27,5410−5416,2009.
【非特許文献2】K.Mukasa,K.Imamura,R.Sugizaki and T.Yagi,“Comparisons of merits on wide−band transmission systems between using extremely improved solid SMFs with Aeff of 160μm2 and loss of 0.175dB/km and using large−Aeff holey fibers enabling transmission over 600nm bandwidth”,the Proceedings of OFC2008,OthR1,Feb.2008.
【非特許文献3】Akhil R.Shah,Rick C.J.Hsu,Alireza Tarighat,Ali H.Sayed and Bahram Jalali,“Coherent Optical MIMO(COMIMO)”,J.Lightwave Technol.23,2410−2419,2005.
【非特許文献4】B.C.Thomsen,“MIMO Enabled 40Gb/s Transmission Using Mode Division Multiplexing in Multimode Fiber”,in Optical Fiber Communication Conference,OSA Technical Digest(CD)(Optical Society of America,2010),paper OThM6.
【非特許文献5】M.Taylor,“Coherent Detection for Fiber Optic Communications Using Digital Signal Processing”,in Optical Amplifiers and Their Applications/Coherent Optical Technologies and Applications,Technical Digest(CD)(Optical Society of America,2006),paper CThB1.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、光MIMO技術を用いた光ファイバ伝送では、伝送距離の長距離化に伴ってモード分散に起因する符号間干渉が発生し、信号の復元が困難になり、伝送距離が数kmに制限されていることが問題となっている。
【0007】
そこで、前記課題を解決するために、本発明は、光MIMO技術を用いた光ファイバ伝送における長距離伝送を実現する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、光受信装置において、前段でFiber bragg grating(FBG)を利用して、光ファイバ伝送の群遅延差を予備的に補償することとし、後段でFinite inpulse response(FIR)フィルタを利用して、光ファイバ伝送の群遅延差を高精度に補償することとした。これにより、FIRフィルタにおいてタップ数を削減し計算時間を短縮するとともに、光MIMO技術を用いた光ファイバ伝送において長距離伝送を実現する。
【0009】
具体的には、本発明は、光信号を送信するN個(Nは1以上の整数)の光送信機と、前記光信号を受信するM個(MはN以上の整数)の光受信機と、前記N個の光送信機が送信した前記光信号を合波し、合波した前記光信号をP個(PはN以上の整数。ただし、Nが1であるときには、Pは2以上の整数)の伝搬モードを有する光ファイバに送出する合波器と、前記光ファイバが伝搬した前記光信号を前記M個の光受信機に分波する分波器と、各光受信機が受信した前記光信号について、入出射口から前記P個の伝搬モードを入射し、前記P個の伝搬モードの各々を反射するファイバブラッググレーティングを利用して前記入出射口へ前記P個の伝搬モードを反射させ、前記入出射口から前記P個の伝搬モードを出射し、群遅延差を補償する前段群遅延差補償装置と、前記前段群遅延差補償装置が群遅延差を補償した前記光信号について、遅延時間を調整する遅延素子並びに振幅及び位相を調整する振幅位相調整器からなるFIRフィルタを利用して、群遅延差を補償する後段群遅延差補償装置と、を備えることを特徴とする光ファイバ伝送システムである。
【0010】
また、本発明は、光信号を送信するN個(Nは1以上の整数)の光送信機と、前記光信号を受信するM個(MはN以上の整数)の光受信機と、前記N個の光送信機が送信した前記光信号を合波する合波器と、前記合波器が合波した前記光信号を伝搬し、P個(PはN以上の整数。ただし、Nが1であるときには、Pは2以上の整数)の伝搬モードを有する光ファイバと、前記光ファイバが伝搬した前記光信号を前記M個の光受信機に分波する分波器と、各光受信機が受信した前記光信号について、入出射口から前記P個の伝搬モードを入射し、前記P個の伝搬モードの各々を反射するファイバブラッググレーティングを利用して前記入出射口へ前記P個の伝搬モードを反射させ、前記入出射口から前記P個の伝搬モードを出射し、群遅延差を補償する前段群遅延差補償装置と、前記前段群遅延差補償装置が群遅延差を補償した前記光信号について、遅延時間を調整する遅延素子並びに振幅及び位相を調整する振幅位相調整器からなるFIRフィルタを利用して、群遅延差を補償する後段群遅延差補償装置と、を備えることを特徴とする光ファイバ伝送システムである。
【0011】
また、本発明は、光信号を送信するN個(Nは1以上の整数)の光送信機から、送信後及び合波後の前記光信号を伝搬しP個(PはN以上の整数。ただし、Nが1であるときには、Pは2以上の整数)の伝搬モードを有する光ファイバを介して、伝搬後及び分波後の前記光信号を受信するM個(MはN以上の整数)の光受信機と、各光受信機が受信した前記光信号について、入出射口から前記P個の伝搬モードを入射し、前記P個の伝搬モードの各々を反射するファイバブラッググレーティングを利用して前記入出射口へ前記P個の伝搬モードを反射させ、前記入出射口から前記P個の伝搬モードを出射し、群遅延差を補償するグレーティング群遅延差補償装置と、前記前段群遅延差補償装置が群遅延差を補償した前記光信号について、遅延時間を調整する遅延素子並びに振幅及び位相を調整する振幅位相調整器からなるFIRフィルタを利用して、群遅延差を補償するFIRフィルタ群遅延差補償装置と、を備えることを特徴とする光受信装置である。
【0012】
この構成によれば、FBGにおいて光ファイバ伝送の群遅延差を予備的に補償するため、FIRフィルタにおいてタップ数を削減し計算時間を短縮するとともに、光MIMO技術を用いた光ファイバ伝送において長距離伝送を実現することができる。
【0013】
また、本発明は、光信号を送信する1個の光送信機から、送信後の前記光信号を伝搬しP個(Pは2以上の整数)の伝搬モードを有する光ファイバを介して、伝搬後及び分波後の前記光信号を受信するM個(Mは2以上の整数)の光受信機と、各光受信機が受信した前記光信号について、入出射口から前記P個の伝搬モードを入射し、前記P個の伝搬モードの各々を反射するファイバブラッググレーティングを利用して前記入出射口へ前記P個の伝搬モードを反射させ、前記入出射口から前記P個の伝搬モードを出射し、群遅延差を補償するグレーティング群遅延差補償装置と、を備えることを特徴とする光受信装置である。
【0014】
この構成によれば、FBGにおいて光ファイバ伝送の群遅延差を全面的に補償するため、FIRフィルタを必要とすることなく、光MIMO技術を用いた光ファイバ伝送において長距離伝送を実現することができる。
【0015】
また、本発明は、前記光ファイバでは、前記P個の伝搬モードに対する実効屈折率が相互に異なり、前記前段群遅延差補償装置では、前記ファイバブラッググレーティングにおける屈折率のグレーティングのピッチ及び前記入出射口から前記ファイバブラッググレーティングまでの距離が、前記P個の伝搬モードの相互間において異なることを特徴とする光ファイバ伝送システムである。
【0016】
また、本発明は、前記光ファイバでは、前記P個の伝搬モードに対する実効屈折率が相互に異なり、前記グレーティング群遅延差補償装置では、前記ファイバブラッググレーティングにおける屈折率のグレーティングのピッチ及び前記入出射口から前記ファイバブラッググレーティングまでの距離が、前記P個の伝搬モードの相互間において異なることを特徴とする光受信装置である。
【0017】
この構成によれば、FBGにおいて各伝搬モード毎に光ファイバ伝送の群遅延差をより高精度に補償することができる。
【0018】
また、本発明は、前記光ファイバでは、使用波長における伝搬モードの個数が2個以上かつ7個以下であることを特徴とする光ファイバ伝送システムである。
【0019】
また、本発明は、前記光ファイバでは、使用波長における伝搬モードの個数が2個以上かつ7個以下であることを特徴とする光受信装置である。
【0020】
この構成によれば、FBGの個数をより削減することができる。
【0021】
また、本発明は、前記光ファイバでは、前記P個の伝搬モードのうち少なくとも2個の伝搬モードに対する実効屈折率が相互に等しく、前記前段群遅延差補償装置では、前記ファイバブラッググレーティングにおける屈折率のグレーティングのピッチ及び前記入出射口から前記ファイバブラッググレーティングまでの距離が、前記少なくとも2個の伝搬モードの相互間において等しいことを特徴とする光ファイバ伝送システムである。
【0022】
また、本発明は、前記光ファイバでは、前記P個の伝搬モードのうち少なくとも2個の伝搬モードに対する実効屈折率が相互に等しく、前記グレーティング群遅延差補償装置では、前記ファイバブラッググレーティングにおける屈折率のグレーティングのピッチ及び前記入出射口から前記ファイバブラッググレーティングまでの距離が、前記少なくとも2個の伝搬モードの相互間において等しいことを特徴とする光受信装置である。
【0023】
この構成によれば、FBGの個数をより削減することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、光MIMO技術を用いた光ファイバ伝送における長距離伝送を実現する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】FIRフィルタ装置を利用して、複数のモードの間の群遅延差を補償する、光ファイバ伝送システム及び光受信装置の構成を示す図である。
【図2】FIRフィルタ装置の構成を示す図である。
【図3】タップ係数を更新するための適応等化アルゴリズムを示す図である。
【図4】タップ係数を更新するためのトレーニングシンボルを示す図である。
【図5】FIRフィルタ装置を利用して、光送信機が1個であり光受信機が1個であるときに、基本モード及び高次モードの間の群遅延差0.5nsを補償できるかどうかを調べた、シミュレーション結果を示す図である。
【図6】FIRフィルタ装置を利用して、光送信機が1個であり光受信機が1個であるときに、基本モード及び高次モードの間の群遅延差5nsを補償できるかどうかを調べた、シミュレーション結果を示す図である。
【図7】FBG装置及びFIRフィルタ装置を利用して、複数のモードの間の群遅延差を補償する、光ファイバ伝送システム及び光受信装置の構成を示す図である。
【図8】第1のFBG装置の構成を示す図である。
【図9】第2のFBG装置の構成を示す図である。
【図10】マルチモード光ファイバの基本モード及び高次モードにおける、光信号波長及び実効屈折率の間の関係を示す図である。
【図11】マルチモード光ファイバにおける、規格化周波数及び伝搬モード数の間の関係を示す図である。
【図12】FIRフィルタ装置を利用して、光送信機が2個であり光受信機が2個であるときに、基本モード及び高次モードの間の群遅延差0.04nsを補償できるかどうかを調べた、シミュレーション結果を示す図である。
【図13】FIRフィルタ装置を利用して、光送信機が2個であり光受信機が2個であるときに、基本モード及び高次モードの間の群遅延差0.1nsを補償できるかどうかを調べた、シミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施の例であり、本発明は以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0027】
(FIRフィルタ装置を利用する群遅延差補償)
FIRフィルタ装置を利用して、複数のモードの間の群遅延差を補償する、光ファイバ伝送システム及び光受信装置の構成を図1に示す。光ファイバ伝送システムは、光送信機1−1、1−2、・・・、1−N、光受信機2−1、2−2、・・・、2−M、合波器3、光ファイバ4、分波器5及びFIRフィルタ装置6から構成される。光受信装置Rは、光受信機2−1、2−2、・・・、2−M及びFIRフィルタ装置6から構成される。
【0028】
N個の光送信機1−1、1−2、・・・、1−N、マルチモードの光ファイバ4及びM個の光受信機2−1、2−2、・・・、2−Mを利用して、N入力M出力のMIMO伝送を行なうことができ、N種の光信号の並列伝送を行なうことができる。
【0029】
光送信機1−1、1−2、・・・、1−Nは、それぞれ光信号x(n)、x(n)、・・・、x(n)を送信する。ここで、Nは1以上の整数であり、光信号x(n)、x(n)、・・・、x(n)はn番目のシンボルとして送信される光信号である。
【0030】
光受信機2−1、2−2、・・・、2−Mは、それぞれ光信号y(n)、y(n)、・・・、y(n)を受信する。ここで、MはN以上の整数であり、光信号y(n)、y(n)、・・・、y(n)はn番目のシンボルとして受信される光信号である。
【0031】
合波器3は、光送信機1−1、1−2、・・・、1−Nが送信した光信号を合波する。ここで、光送信機1の個数が1個であっても、合波という用語を使用する。光ファイバ4は、合波器3が合波した光信号を伝搬し、P個の伝搬モードを有する。ここで、PはN以上の整数である。ただし、Nが1であるときには、Pは2以上の整数である。分波器5は、光ファイバ4が伝搬した光信号を光受信機2−1、2−2、・・・、2−Mに分波する。ここで、光受信機2の個数が1個であっても、分波という用語を使用する。
【0032】
FIRフィルタ装置6は、光受信機2−1、2−2、・・・、2−Mがそれぞれ受信した光信号y(n)、y(n)、・・・、y(n)について、遅延時間を調整する遅延素子並びに振幅及び位相を調整する振幅位相調整器からなるFIRフィルタを利用して、群遅延差を補償する。そして、FIRフィルタ装置6は、光信号u(n)、u(n)、・・・、u(n)を復元する。ここで、光信号u(n)、u(n)、・・・、u(n)は、n番目のシンボルとして復元される光信号である。
【0033】
受信信号y(n)、y(n)、・・・、y(n)は、複数のモードの間の群遅延差を包含する可能性がある。復元信号u(n)、u(n)、・・・、u(n)は、複数のモードの間の群遅延差を補償されていることが望ましく、それぞれ送信信号x(n)、x(n)、・・・、x(n)と一致していることが望ましい。
【0034】
FIRフィルタ装置の構成を図2に示す。FIRフィルタ装置6は、FIRフィルタ61−1、61−2、・・・、61−M及び合波器62から構成される。復元信号u(n)、u(n)、・・・、u(n)を生成する構成はそれぞれ同様であるため、図2では復元信号u(n)を生成する構成についてのみ説明する。
【0035】
FIRフィルタ61−1、61−2、・・・、61−Mは、それぞれ受信信号y(n)、y(n)、・・・、y(n)を入力し、それぞれ光信号z(n)、z(n)、・・・、z(n)を生成する。合波器62は、光信号z(n)、z(n)、・・・、z(n)を合波し、復元信号u(n)を生成する。
【0036】
FIRフィルタ61−1、61−2、・・・、61−Mは、それぞれ1番目からL番目までのタップから構成される。1番目からL番目までのタップは、それぞれ遅延素子(図2ではτで示す)及び振幅位相調整器(図2ではwで示す)から構成される。遅延素子は、遅延時間を調整し、振幅位相調整器は、振幅及び位相を調整する。図2では、直接形のFIRフィルタを利用しているが、転置形のFIRフィルタを利用してもよい。
【0037】
受信信号y(n)についてのi番目のタップにおいて、遅延素子での遅延時間をτとし、振幅位相調整器でのタップ係数をw(i)とする。遅延時間τ及びタップ係数w(i)を調整することにより、光ファイバ4中で発生する目的外の光送信機1からの混信、モード分散、波長分散、偏波モード分散などによる信号劣化を補償することができる。局発光源、90°ハイブリッド、バランスレシーバ、アナログデジタルコンバータを利用することにより、受信信号y(n)、y(n)、・・・、y(n)の電界の振幅及び位相の情報を取得することができる(例えば、非特許文献5参照)。
【0038】
タップ係数を更新するための適応等化アルゴリズムを図3に示す。タップ係数を更新するためのトレーニングシンボルを図4に示す。送信信号xは、前段にトレーニングシンボルx(1)、・・・、x(Ntraining)を有し、後段にデータ部x(Ntraining+1)、・・・、x(Nall)を有する。ここで、Ntraining>Lである必要がある。光受信装置Rは、データ部x(Ntraining+1)、・・・、x(Nall)を未知とするが、トレーニングシンボルx(1)、・・・、x(Ntraining)は既知とするため、以下のようにタップ係数を更新することができる。
【0039】
まず、トレーニングシンボルを受信中であり、n≦Ntrainingであるときについて説明する。FIRフィルタ装置6は、既に設定されたタップ係数を利用することにより、受信信号y(n)を復元信号u(n)に変換する。減算器8は、復元信号u(n)及び既知のトレーニング信号x(n)の差分を生成することにより、誤差信号e(n)を生成する。適応等化アルゴリズム7は、誤差信号e(n)を小さくするように、タップ係数を更新する。この処理を、すべてのトレーニングシンボルについて繰り返す。
【0040】
次に、データ部を受信中であり、n≧Ntraining+1であるときについて説明する。タップ係数の設定は、トレーニングシンボルの受信中に完了している。FIRフィルタ装置6は、既に設定されたタップ係数を利用することにより、受信信号y(n)を復元信号u(n)に変換する。この処理を、すべてのデータ部について繰り返す。
【0041】
なお、適応等化アルゴリズムには、非特許文献2に記載のLeast mean square(LMS)アルゴリズムやRecursive least square(RLS)アルゴリズムを利用することができる。
【0042】
FIRフィルタ装置6を利用して、光送信機1が1個であり光受信機2が1個であるときに、基本モード及び高次モードの間の群遅延差0.5nsを補償できるかどうかを調べた、シミュレーション結果を図5に示す。FIRフィルタ装置6を利用して、光送信機1が1個であり光受信機2が1個であるときに、基本モード及び高次モードの間の群遅延差5nsを補償できるかどうかを調べた、シミュレーション結果を図6に示す。
【0043】
図5及び図6において、送受信信号は、10GbpsのBinary phase shift keying(BPSK)変調されたNon return to zero(NRZ)信号の4096bit分である。光ファイバ4の伝搬モード数は2個であり、基本モード及び高次モードがそれぞれ10:4の割合で励振される。Ntrainingは100とし、Lは20とする。τは10Gbpsのシンボル長T=0.1nsを単位とし、τ=0、τ=0.1ns、τ=0.1×2ns、・・・、τ=0.1×(L−1)nsとする。適応等化アルゴリズムにはRLSを用いる。RLSにおけるステップサイズ及び忘却係数は、それぞれ0.001及び1とする。
【0044】
基本モード及び高次モードの間の群遅延差が0.5nsである図5の場合について説明する。図5の左上には、送信信号x(n)のコンスタレーションマップを示す。図5の右上には、受信信号y(n)のコンスタレーションマップを示す。受信信号y(n)は、モード分散に起因して、送信信号x(n)を正しく反映していない。図5の左下には、復元信号u(n)のコンスタレーションマップを示す。復元信号u(n)は、FIRフィルタ装置6を利用することにより、送信信号x(n)を正しく復元している。図5の右下には、タップ番号及びタップ係数の絶対値の間の関係を示す。タップ係数の絶対値は、周期的に大きな値を取っており、遅延時間が群遅延差0.5nsの整数倍に相当するタップ番号のタップ係数が、復元に大きく寄与していることが分かる。
【0045】
基本モード及び高次モードの間の群遅延差が5nsである図6の場合について説明する。図6の左上には、送信信号x(n)のコンスタレーションマップを示す。図6の右上には、受信信号y(n)のコンスタレーションマップを示す。受信信号y(n)は、モード分散に起因して、送信信号x(n)を正しく反映していない。図6の左下には、復元信号u(n)のコンスタレーションマップを示す。復元信号u(n)は、FIRフィルタ装置6を利用しているとしても、送信信号x(n)を正しく復元していない。図6の右下には、タップ番号及びタップ係数の絶対値の間の関係を示す。タップ係数の絶対値は、周期的に変化していない。つまり、タップ数Lが群遅延差5nsと比較して不足していることが分かる。ここで、タップ数Lが群遅延差5nsと比較して十分であればよい。しかし、適応等化アルゴリズム7における計算量が増大するため、好ましくない。
【0046】
(FBG装置及びFIRフィルタ装置を利用する群遅延差補償)
FBG装置及びFIRフィルタ装置を利用して、複数のモードの間の群遅延差を補償する、光ファイバ伝送システム及び光受信装置の構成を図7に示す。光ファイバ伝送システムは、光送信機1−1、1−2、・・・、1−N、光受信機2−1、2−2、・・・、2−M、合波器3、光ファイバ4、分波器5、FIRフィルタ装置6及びFBG装置9から構成される。光受信装置Rは、光受信機2−1、2−2、・・・、2−M、FIRフィルタ装置6及びFBG装置9から構成される。
【0047】
光送信機1−1、1−2、・・・、1−N、光受信機2−1、2−2、・・・、2−M、合波器3、光ファイバ4及び分波器5は、図1及び図7において同様である。
【0048】
FBG装置9は、前段群遅延差補償装置として、光受信機2−1、2−2、・・・、2−Mがそれぞれ受信した光信号y(n)、y(n)、・・・、y(n)について、入出射口からP個の伝搬モードを入射し、P個の伝搬モードの各々を反射するFBGを利用して入出射口へP個の伝搬モードを反射させ、入出射口からP個の伝搬モードを出射し、群遅延差を補償する。そして、FBG装置9は、光信号y’(n)、y’(n)、・・・、y’(n)を生成する。ここで、光信号y’(n)、y’(n)、・・・、y’(n)は、n番目のシンボルとして生成される光信号である。
【0049】
FIRフィルタ装置6は、FBG装置9が群遅延差を補償した光信号y’(n)、y’(n)、・・・、y’(n)について、遅延時間を調整する遅延素子並びに振幅及び位相を調整する振幅位相調整器からなるFIRフィルタを利用して、群遅延差を補償する。そして、FIRフィルタ装置6は、光信号u(n)、u(n)、・・・、u(n)を復元する。ここで、光信号u(n)、u(n)、・・・、u(n)は、n番目のシンボルとして復元される光信号である。
【0050】
このように、光受信装置Rにおいて、前段でFBGを利用して、光ファイバ伝送の群遅延差を予備的に補償し、後段でFIRフィルタを利用して、光ファイバ伝送の群遅延差を高精度に補償する。よって、FIRフィルタにおいてタップ数を削減し計算時間を短縮するとともに、光MIMO技術を用いた光ファイバ伝送において長距離伝送を実現する。
【0051】
ここで、FBG装置9が補償する群遅延差は、光ファイバ4で発生する群遅延差と、一致していてもよく、一致していなくてもよい。前者では、FIRフィルタ装置6の負担が大幅に低減されるが、後者でも、FIRフィルタ装置6の負担が十分に低減される。
【0052】
第1のFBG装置の構成を図8に示す。第2のFBG装置の構成を図9に示す。第1のFBG装置9は、FBG91−1、91−2、91−3、・・・、91−P及び光サーキュレータ92から構成される。第2のFBG装置9は、FBG91−1、91−2、91−3、・・・、91−P及び光カプラ93から構成される。中間信号y’(n)、y’(n)、・・・、y’(n)を生成する構成はそれぞれ同様であるため、図8及び図9では代表的な中間信号y’(n)を生成する構成についてのみ説明する。
【0053】
光サーキュレータ92又は光カプラ93は、入出射口として機能する。光サーキュレータ92又は光カプラ93は、光受信機2から受信信号y(n)を入力し、FBG91−1、91−2、91−3、・・・、91−Pへと出力する。FBG91−1、91−2、91−3、・・・、91−Pは、P個の伝搬モードのそれぞれを反射させる。光サーキュレータ92又は光カプラ93は、FBG91−1、91−2、91−3、・・・、91−Pから中間信号y’(n)を入力し、FIRフィルタ装置6へと出力する。
【0054】
光サーキュレータ92又は光カプラ93から近い順に、FBG91−1、91−2、91−3、・・・、91−Pが配置されるとする。FBG91−1からFBG91−2までの距離をLとし、FBG91−1からFBG91−3までの距離をLとし、・・・、FBG91−1からFBG91−Pまでの距離をLP−1とする。
【0055】
FBG91−1で反射される伝搬モード及びFBG91−2で反射される伝搬モードの間では、補償される遅延時間は2L/(c/neff)=2neff/cとなる。FBG91−1で反射される伝搬モード及びFBG91−3で反射される伝搬モードの間では、補償される遅延時間は2L/(c/neff)=2neff/cとなる。FBG91−1で反射される伝搬モード及びFBG91−Pで反射される伝搬モードの間では、補償される遅延時間は2LP−1/(c/neff)=2neffP−1/cとなる。ここで、cは真空中の光速であり、neffは伝搬モードの実効屈折率である。
【0056】
FBG91−1の屈折率のグレーティングの周期をΛとし、FBG91−2の屈折率のグレーティングの周期をΛとし、FBG91−3の屈折率のグレーティングの周期をΛとし、・・・、FBG91−Pの屈折率のグレーティングの周期をΛとする。
【0057】
FBG91−1で反射される伝搬モードの実効屈折率neffはλ/(2Λ)となる。FBG91−2で反射される伝搬モードの実効屈折率neffはλ/(2Λ)となる。FBG91−3で反射される伝搬モードの実効屈折率neffはλ/(2Λ)となる。FBG91−Pで反射される伝搬モードの実効屈折率neffはλ/(2Λ)となる。ここで、λは光MIMO技術における光信号の波長である。
【0058】
基本モード及び高次モードという2個の伝搬モードが存在する場合を例に挙げて説明する。マルチモード光ファイバの基本モード及び高次モードにおける、光信号波長及び実効屈折率の間の関係を図10に示す。図10では、コア半径a=7μmであり、コアのクラッドに対する比屈折率差Δが0.4%であり、波長1.53〜1.56μmにおいて、LP01モード及びLP11モードという2個の伝搬モードが存在する。
【0059】
Λが0.5353μmであるとき、LP01モードの反射波長は1.550μmとなり、LP11モードの反射波長は1.548μmとなる。Λが0.536μmであるとき、LP01モードの反射波長は1.552μmとなり、LP11モードの反射波長は1.550μmとなる。つまり、光MIMO技術における光信号の波長が1.550μmであるときには、光サーキュレータ92又は光カプラ93から近い順に、Λを0.5353μm及び0.536μmとすれば、最も近いFBG91では、実効屈折率が高いLP01モードが反射され、次に近いFBG91では、実効屈折率が低いLP11モードが反射される。そして、LP01モード及びLP11モードの間で補償する遅延時間をDとすれば、2個のFBG91の距離は(cD)/(2neff)となる。
【0060】
ここで、FBG91の反射帯域Δλは、FBG91の屈折率のグレーティングの変化についての、振幅Δn及び領域lにより、数式1のように表される。
【数1】

つまり、図10に挙げた例において、1個のFBG91において1個の伝搬モードを反射させるときには、Δλが2nm以下となるように、Δn及びlを適切に設定する。一般には、FBG91の反射帯域を数nmの帯域とすることができるため、各伝搬モードを個別に反射する各FBG91は、現状の技術で実現可能であることが分かる。
【0061】
以上の説明では、光ファイバ4では、P個の伝搬モードに対する実効屈折率が相互に異なる。そして、FBG装置9では、FBG91における屈折率のグレーティングのピッチ、及び光サーキュレータ92又は光カプラ93からFBG91までの距離が、P個の伝搬モードの相互間において異なる。これにより、各FBG91において各伝搬モード毎に光ファイバ伝送の群遅延差をより高精度に補償することができる。
【0062】
他の実施形態として、光ファイバ4では、使用波長における伝搬モードの個数が2個以上かつ7個以下であってもよい。マルチモード光ファイバにおける、規格化周波数及び伝搬モード数の間の関係を図11に示す。規格化周波数が6.38であるとき、伝搬モード数は7となる。規格化周波数が6.38以下であるときには、規格化周波数の増加に対して伝搬モード数の増加は緩やかであるが、規格化周波数が6.38以上であるときには、規格化周波数の増加に対して伝搬モード数の増加は急速になる。そこで、光ファイバ4では、使用波長における伝搬モードの個数が2個以上かつ7個以下になるようにする。これにより、FBG91の個数をより削減することができる。
【0063】
他の実施形態として、光ファイバ4では、P個の伝搬モードのうち少なくとも2個の伝搬モードに対する実効屈折率が相互に等しくてもよい。そして、FBG装置9では、FBG91における屈折率のグレーティングのピッチ、及び光サーキュレータ92又は光カプラ93からFBG91までの距離が、少なくとも2個の伝搬モードの相互間において等しくてもよい。ここで、このような光ファイバ4として、コアの屈折率が中心から周縁への移動距離に対して2次関数的に減少する、グレーデッドインデックス・マルチモード光ファイバが挙げられる。これにより、FBG91の個数をより削減することができる。
【0064】
FIRフィルタ装置6を利用して、光送信機1が2個であり光受信機2が2個であるときに、基本モード及び高次モードの間の群遅延差0.04nsを補償できるかどうかを調べた、シミュレーション結果を図12に示す。FIRフィルタ装置6を利用して、光送信機1が2個であり光受信機2が2個であるときに、基本モード及び高次モードの間の群遅延差0.1nsを補償できるかどうかを調べた、シミュレーション結果を図13に示す。
【0065】
図12及び図13において、送受信信号は、10GbpsのBPSK変調されたNRZ信号の4096bit分である。光ファイバ4の伝搬モード数は2個である。光送信機1−1の送信信号について、基本モード及び高次モードがそれぞれ10:5の割合で励振され、光送信機1−2の送信信号について、基本モード及び高次モードがそれぞれ10:3の割合で励振される。基本モードが光受信機2−1、2−2にそれぞれ3:7の割合で分波され、高次モードが光受信機2−1、2−2にそれぞれ6:4の割合で分波される。
【0066】
trainingは400とし、Lは20とする。τは10Gbpsのシンボル長T=0.1nsを単位とし、τ=0、τ=0.1ns、τ=0.1×2ns、・・・、τ=0.1×(L−1)nsとする。適応等化アルゴリズムにはRLSを用いる。RLSにおけるステップサイズ及び忘却係数は、それぞれ0.001及び1とする。
【0067】
基本モード及び高次モードの間の群遅延差が0.04nsである図12の場合について説明する。図12の上段には、送信信号x(n)、x(n)のコンスタレーションマップを示す。図12の中段の左側には、受信信号y(n)のコンスタレーションマップを示す。受信信号y(n)は、モード分散に起因して、送信信号を正しく反映していない。図12の中段の右側には、復元信号u(n)のコンスタレーションマップを示す。復元信号u(n)は、FIRフィルタ装置6を利用することにより、送信信号x(n)を正しく復元している。図12の下段の左側には、受信信号y(n)のコンスタレーションマップを示す。受信信号y(n)は、モード分散に起因して、送信信号を正しく反映していない。図12の下段の右側には、復元信号u(n)のコンスタレーションマップを示す。復元信号u(n)は、FIRフィルタ装置6を利用することにより、送信信号x(n)を正しく復元している。
【0068】
基本モード及び高次モードの間の群遅延差が0.1nsである図13の場合について説明する。図13の上段には、送信信号x(n)、x(n)のコンスタレーションマップを示す。図13の中段の左側には、受信信号y(n)のコンスタレーションマップを示す。受信信号y(n)は、モード分散に起因して、送信信号を正しく反映していない。図13の中段の右側には、復元信号u(n)のコンスタレーションマップを示す。復元信号u(n)は、FIRフィルタ装置6を利用しているとしても、送信信号x(n)を正しく復元していない。図13の下段の左側には、受信信号y(n)のコンスタレーションマップを示す。受信信号y(n)は、モード分散に起因して、送信信号を正しく反映していない。図13の下段の右側には、復元信号u(n)のコンスタレーションマップを示す。復元信号u(n)は、FIRフィルタ装置6を利用しているとしても、送信信号x(n)を正しく復元していない。
【0069】
そこで、図13の場合において、FIRフィルタ装置6を利用するのみならず、FBG装置9を利用する。FBG装置9において、FBG91が2つであり、y(n)が入射する側から1つ目のFBG(FBG91−1と呼ぶこととする)の構造パラメータをΛ、Δn、lとし、y(n)が入射する側から2つ目のFBG(FBG91−2と呼ぶこととする)の構造パラメータをΛ、Δn、lとする。ファイバのコア半径を7μmとし、コアのクラッドに対する比屈折率差Δを0.4%とする。ファイバ中でのLP01モードのneffは1.44926であり、ファイバ中でのLP11モードのneffは1.44717である。l=1mm、Λ1=0.5353μm、Δn=0.001、l=1mm、Λ=0.536μm、Δn=0.001とする。
【0070】
すると、数式1より、FBG91−1において、LP01モードの反射波長は1.55μmとなり、LP11モードの反射波長は1.548μmとなる。また、数式1より、FBG91−2において、LP01モードの反射波長は1.552μmとなり、LP11モードの反射波長は1.55μmとなる。それぞれのFBG91の反射帯域は1.1nmであることから、FBG91−1でLP01モードのみが反射され、FBG91−2でLP11モードのみが反射される。このとき、FBG91−1とFBG91−2との距離Lを6.2mmとすると、補償される遅延時間は2L/(c/neff)=2neff/c=0.06nsである。よって、受信信号の群遅延差は、FBG装置9の適用前の0.1nsから、FBG装置9の適用後の0.04nsとなり、図12と同様に、受信信号の群遅延差0.04nsを、FIRフィルタ装置6を利用して補償することができる。
【0071】
このように、FIRフィルタ装置6のタップ数を増加させることなく、FBG装置9及びFIRフィルタ装置6を、それぞれ光受信装置Rの前段及び後段に配置することにより、復元信号u(n)、u(n)は、それぞれ送信信号x(n)、x(n)を正しく復元することができる。
【0072】
(FBG装置を利用する群遅延差補償)
以上の説明では、まずFIRフィルタ装置6を利用する群遅延差補償について説明し、次にFBG装置9及びFIRフィルタ装置6を利用する群遅延差補償について説明した。以下の説明では、FBG装置9を利用する群遅延差補償について説明する。
【0073】
光送信機1は1個であり、光受信機2はM個(Mは2以上の整数)であり、光ファイバ4の伝搬モード数はP個(Pは2以上の整数)である。ここで、FBG装置9で補償される群遅延差は、光ファイバ4で発生する群遅延差と等しい。つまり、FBG装置9において光ファイバ伝送の群遅延差を全面的に補償するため、FIRフィルタ装置6を必要とすることなく、光MIMO技術を用いた光ファイバ伝送において長距離伝送を実現することができる。なお、FBG装置9の構成は、図8及び図9に示したものと同様である。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明に係る光ファイバ伝送システム及び光受信装置は、光ファイバ中で発生する非線形効果やファイバヒューズを低減しつつ、伝送容量を大容量化し伝送距離を長距離化する、光ファイバ伝送において適用することができる。
【符号の説明】
【0075】
R:光受信装置
1、1−1、1−2、1−N:光送信機
2、2−1、2−2、2−M:光受信機
3:合波器
4:光ファイバ
5:分波器
6:FIRフィルタ装置
7:適応等化アルゴリズム
8:減算器
9:FBG装置
61、61−1、61−2、61−M:FIRフィルタ
62:合波器
91、91−1、91−2、91−3、91−P:FBG
92:光サーキュレータ
93:光カプラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光信号を送信するN個(Nは1以上の整数)の光送信機と、
前記光信号を受信するM個(MはN以上の整数)の光受信機と、
前記N個の光送信機が送信した前記光信号を合波し、合波した前記光信号をP個(PはN以上の整数。ただし、Nが1であるときには、Pは2以上の整数)の伝搬モードを有する光ファイバに送出する合波器と、
前記光ファイバが伝搬した前記光信号を前記M個の光受信機に分波する分波器と、
各光受信機が受信した前記光信号について、入出射口から前記P個の伝搬モードを入射し、前記P個の伝搬モードの各々を反射するファイバブラッググレーティングを利用して前記入出射口へ前記P個の伝搬モードを反射させ、前記入出射口から前記P個の伝搬モードを出射し、群遅延差を補償する前段群遅延差補償装置と、
前記前段群遅延差補償装置が群遅延差を補償した前記光信号について、遅延時間を調整する遅延素子並びに振幅及び位相を調整する振幅位相調整器からなるFIRフィルタを利用して、群遅延差を補償する後段群遅延差補償装置と、
を備えることを特徴とする光ファイバ伝送システム。
【請求項2】
光信号を送信するN個(Nは1以上の整数)の光送信機と、
前記光信号を受信するM個(MはN以上の整数)の光受信機と、
前記N個の光送信機が送信した前記光信号を合波する合波器と、
前記合波器が合波した前記光信号を伝搬し、P個(PはN以上の整数。ただし、Nが1であるときには、Pは2以上の整数)の伝搬モードを有する光ファイバと、
前記光ファイバが伝搬した前記光信号を前記M個の光受信機に分波する分波器と、
各光受信機が受信した前記光信号について、入出射口から前記P個の伝搬モードを入射し、前記P個の伝搬モードの各々を反射するファイバブラッググレーティングを利用して前記入出射口へ前記P個の伝搬モードを反射させ、前記入出射口から前記P個の伝搬モードを出射し、群遅延差を補償する前段群遅延差補償装置と、
前記前段群遅延差補償装置が群遅延差を補償した前記光信号について、遅延時間を調整する遅延素子並びに振幅及び位相を調整する振幅位相調整器からなるFIRフィルタを利用して、群遅延差を補償する後段群遅延差補償装置と、
を備えることを特徴とする光ファイバ伝送システム。
【請求項3】
前記光ファイバでは、前記P個の伝搬モードに対する実効屈折率が相互に異なり、
前記前段群遅延差補償装置では、前記ファイバブラッググレーティングにおける屈折率のグレーティングのピッチ及び前記入出射口から前記ファイバブラッググレーティングまでの距離が、前記P個の伝搬モードの相互間において異なる
ことを特徴とする、請求項2に記載の光ファイバ伝送システム。
【請求項4】
前記光ファイバでは、使用波長における伝搬モードの個数が2個以上かつ7個以下であることを特徴とする、請求項2又は請求項3に記載の光ファイバ伝送システム。
【請求項5】
前記光ファイバでは、前記P個の伝搬モードのうち少なくとも2個の伝搬モードに対する実効屈折率が相互に等しく、
前記前段群遅延差補償装置では、前記ファイバブラッググレーティングにおける屈折率のグレーティングのピッチ及び前記入出射口から前記ファイバブラッググレーティングまでの距離が、前記少なくとも2個の伝搬モードの相互間において等しい
ことを特徴とする、請求項2に記載の光ファイバ伝送システム。
【請求項6】
光信号を送信するN個(Nは1以上の整数)の光送信機から、送信後及び合波後の前記光信号を伝搬しP個(PはN以上の整数。ただし、Nが1であるときには、Pは2以上の整数)の伝搬モードを有する光ファイバを介して、伝搬後及び分波後の前記光信号を受信するM個(MはN以上の整数)の光受信機と、
各光受信機が受信した前記光信号について、入出射口から前記P個の伝搬モードを入射し、前記P個の伝搬モードの各々を反射するファイバブラッググレーティングを利用して前記入出射口へ前記P個の伝搬モードを反射させ、前記入出射口から前記P個の伝搬モードを出射し、群遅延差を補償するグレーティング群遅延差補償装置と、
前記前段群遅延差補償装置が群遅延差を補償した前記光信号について、遅延時間を調整する遅延素子並びに振幅及び位相を調整する振幅位相調整器からなるFIRフィルタを利用して、群遅延差を補償するFIRフィルタ群遅延差補償装置と、
を備えることを特徴とする光受信装置。
【請求項7】
光信号を送信する1個の光送信機から、送信後の前記光信号を伝搬しP個(Pは2以上の整数)の伝搬モードを有する光ファイバを介して、伝搬後及び分波後の前記光信号を受信するM個(Mは2以上の整数)の光受信機と、
各光受信機が受信した前記光信号について、入出射口から前記P個の伝搬モードを入射し、前記P個の伝搬モードの各々を反射するファイバブラッググレーティングを利用して前記入出射口へ前記P個の伝搬モードを反射させ、前記入出射口から前記P個の伝搬モードを出射し、群遅延差を補償するグレーティング群遅延差補償装置と、
を備えることを特徴とする光受信装置。
【請求項8】
前記光ファイバでは、前記P個の伝搬モードに対する実効屈折率が相互に異なり、
前記グレーティング群遅延差補償装置では、前記ファイバブラッググレーティングにおける屈折率のグレーティングのピッチ及び前記入出射口から前記ファイバブラッググレーティングまでの距離が、前記P個の伝搬モードの相互間において異なる
ことを特徴とする、請求項6又は請求項7に記載の光受信装置。
【請求項9】
前記光ファイバでは、使用波長における伝搬モードの個数が2個以上かつ7個以下であることを特徴とする、請求項6から請求項8のいずれかに記載の光受信装置。
【請求項10】
前記光ファイバでは、前記P個の伝搬モードのうち少なくとも2個の伝搬モードに対する実効屈折率が相互に等しく、
前記グレーティング群遅延差補償装置では、前記ファイバブラッググレーティングにおける屈折率のグレーティングのピッチ及び前記入出射口から前記ファイバブラッググレーティングまでの距離が、前記少なくとも2個の伝搬モードの相互間において等しい
ことを特徴とする、請求項6又は請求項7に記載の光受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−227763(P2012−227763A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94051(P2011−94051)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】