説明

光ファイバ型カプラ用のパッケージと、当該パッケージを有した光ファイバ型カプラ、およびその製造方法

【課題】接着剤の使用箇所を必要最低限とし、また、装置による自動化を図ることによって、工数削減や人為的ミスを防止し、さらに、時間を掛けることなく簡単に温度変化による特性の変動を抑えると共に、外部からの衝撃を緩和することのできる光ファイバ型カプラ用のパッケージと、当該パッケージを有した光ファイバ型カプラ、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】融着延伸された複数の光ファイバ1,2,3からなる融着延伸部6を基板16に固定保持し、第一樹脂23が設けられた第一筐体21と第二樹脂33が設けられた第二筐体31とを嵌合して、第一樹脂23と第二樹脂33により基板16を挟んで密着させることにより、基板16を保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の光ファイバが融着延伸して形成された光ファイバ型カプラの融着延伸部を保護する光ファイバ型カプラ用のパッケージと、当該パッケージを有した光ファイバ型カプラ、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の光ファイバを束ねて融着延伸することにより、入射された光を分岐、結合、分波、または合波する光ファイバ型カプラが周知となっている。このような光ファイバ型カプラは、複数の光ファイバの夫々の被覆を一部除去し、剥き出しにされたガラス部分同士を当接して融着延伸することにより、光結合などの機能が付加された融着延伸部を有している。そして、その融着延伸部を外的環境から保護する光ファイバ型カプラ用のパッケージは、当接された複数の光ファイバの夫々の両端部を接着剤で固定することによって、融着延伸部を中空に浮かしながら保持する基板と、保持された融着延伸部を保護する金属で形成された円筒状の筐体と、から構成されている。また、基板と円筒状の筐体とは、筐体内面において接着剤などで固定されるようになっている。
【0003】
上記のような光ファイバ型カプラ用のパッケージの場合、基板と筐体との接着時間が掛かるため、生産効率が悪くなる問題があった。また、温度変化による特性の変動を緩和するため、一般的な光ファイバを構成する石英ガラスと熱膨張係数の差が小さい材質の筐体を用いる必要があり、材料の選択自由度に制限があった。例えば、一般的な光ファイバ型カプラにおいては、光ファイバを構成する石英ガラスと熱膨張係数の差が小さいインバーなどの合金が筐体として採用されている。しかしながら、インバーはステンレス材などと比べて高価で重いため、出来れば採用を避けたいという要望があった。また、ガラス材質で形成された光ファイバは強度が弱いため、通常の使用では発生しにくい落下などによる非常に大きな衝撃が加わると、特性が大きく悪化するなどの問題が起こる場合があった。
【0004】
そこで、特許文献1には、温度変化による特性の変動を抑え、さらに衝撃を緩和する目的として、光ファイバが収められたガラスパイプと筐体である金属パイプとの隙間にコンパウンドを充填した光ファイバ融着カプラが開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、高温高湿環境下においても光ファイバ型カプラの特性を維持する目的として、光ファイバの機能部を固定した基板とそれを覆う第一の中空部材との隙間に剛性物質を充填し、さらに、外部からの衝撃や振動などを緩和する目的として、第一の中空部材とその外側の筐体である第二の中空部材との隙間に緩衝部材が充填されている光ファイバ部品用パッケージが開示されている。
【0006】
また、特許文献3には、耐衝撃特性の向上を目的として、光ファイバが接着固定された第1のモジュールケースと外側の筐体である第2のモジュールケースとの隙間に、合成樹脂を充填した光ファイバモジュールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平6−25810号公報
【特許文献2】特開2006−267192号公報
【特許文献3】特開2000−221359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された光ファイバ融着カプラは、融着延伸された光ファイバを円筒状のガラスパイプに挿入し、その後コンパウンドを充填してから接着固定し、さらに、円筒状の金属パイプに挿入してガラスパイプとの隙間にコンパウンドを充填して、最後にゴムクランプで塞ぐようにして形成されている。この場合、ガラスパイプなどの円筒状の筐体に繊細で細長い光ファイバを通す細かい作業は、どうしても人による作業が必要となってくる。そのため、製造に時間が掛かり、人為的ミスを引き起こす場合がある。また、ガラスパイプや金属パイプなどの円筒状の筐体にコンパウンドを充填している最中にコンパウンドが漏れたり、コンパウンドの管理状態や硬化条件を誤ってしまう場合があり、光ファイバ型カプラの信頼性にばらつきが生じる恐れがある。さらに、コンパウンドを硬化させる時間が必要になるため、生産効率が悪くなる問題があった。
【0009】
また、特許文献2に開示された光ファイバ部品用パッケージは、融着延伸された光ファイバを固定した基板を円筒状の第一の中空部材に挿入し、その後剛性物質であるエポキシ樹脂を充填して接着剤によって開口部用蓋で封止し、さらに、円筒状の第二の中空部材に挿入して第一の中空部材との隙間に緩衝部材であるシリコーン樹脂を充填し、最後に接着剤によって開口部用蓋で封止して形成されている。この場合においても、第一の中空部材や第二の中空部材などの円筒状の筐体に樹脂を充填している最中に樹脂が漏れたり、樹脂の管理状態や硬化条件を誤ってしまう場合があり、光ファイバ型カプラの信頼性にばらつきが生じる恐れがある。また、充填する樹脂を硬化させたり、第一の中空部材と第二の中空部材を封止する接着剤を硬化させたりする時間も必要になり、生産効率が悪くなる問題があった。
【0010】
また、特許文献3に開示された光ファイバモジュールは、光ファイバカプラを接着固定した第1のモジュールケースと外側の筐体である第2のモジュールケースとを接着剤によって接着固定し、その隙間に合成樹脂を充填して形成されている。この場合においても、充填中に合成樹脂が漏れたり、合成樹脂の管理状態や硬化条件を誤ってしまう場合があり、信頼性にばらつきが生じる恐れがある。また、合成樹脂を硬化させたり、第1のモジュールケースと第2のモジュールケースとを接着固定する接着剤を硬化させたりする時間も必要になり、生産効率が悪くなる問題があった。
【0011】
本発明は、上記の問題を鑑みてされたものであり、接着剤の使用箇所を必要最低限とし、また、装置による自動化を図ることによって、工数削減や人為的ミスを防止し、さらに、時間を掛けることなく簡単に温度変化による特性の変動を抑えると共に、外部からの衝撃を緩和することのできる光ファイバ型カプラ用のパッケージと、当該パッケージを有した光ファイバ型カプラ、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の発明の光ファイバ型カプラ用のパッケージは、融着延伸された複数の光ファイバからなる融着延伸部を保持する基板と、前記基板に密着する第一樹脂が設けられた第一筐体と、前記基板に密着する第二樹脂が設けられ、前記第一筐体と嵌合する第二筐体と、を備え、前記第一樹脂と前記第二樹脂が前記基板を挟んで、前記第一筐体と前記第二筐体が嵌合する。
【0013】
上記の構成によれば、複数の光ファイバを融着延伸して形成された融着延伸部を保持した基板を、第一筐体に設けられた第一樹脂と第二筐体に設けられた第二樹脂が密着して挟みながら、第一筐体と第二筐体とが嵌合している。これにより、第一樹脂と第二樹脂の弾力を利用して、基板を保持することができる。そのため、従来の様に、円筒型の筐体に人の手によって光ファイバを通す必要がないため、人による作業ではなく、装置による自動化を図ることができ、工数削減や人為的ミスを防ぐことができる。また、従来の様に、接着剤を用いて基板と筐体とを固定する必要がないため、接着剤分のコスト削減や接着剤を硬化させる時間の削減をすることができる。さらに、予め設けられた第一筐体における第一樹脂と第二筐体における第二樹脂との弾力により、融着延伸部に対する外部からの衝撃を抑え、筐体と光ファイバとの熱膨張係数の差を吸収することができる。これにより、製造過程において樹脂を充填する必要がないため、充填中に樹脂が漏れたり、樹脂の管理状態や硬化条件を誤ってしまったりすることがなく、従来の様に樹脂を硬化させる必要もない。また、筐体と光ファイバとの熱膨張係数の差を気にする必要がないため、筐体に用いる材料の選択自由度が向上する。
【0014】
また、第2の発明の光ファイバ型カプラ用のパッケージは、第1の発明の光ファイバ型カプラ用のパッケージにおいて、前記第一筐体と前記第二筐体は、前記嵌合により略角型の形状となる。
【0015】
上記の構成によれば、光ファイバ型カプラ用のパッケージが略角型の形状を有しているため、従来の丸型の形状よりも組み立てやすい。
【0016】
また、第3の発明の光ファイバ型カプラ用のパッケージは、第1または第2の発明の光ファイバ型カプラ用のパッケージにおいて、前記第一筐体と前記第二筐体の材質がステンレス材である。
【0017】
上記の構成によれば、一般的な光ファイバの材質である石英ガラスと熱膨張係数の差が大きいステンレス材を筐体に用いることができるため、従来の光ファイバ型カプラの筐体に用いられているインバーなどの合金よりも、軽くてさびにくく、安価である。
【0018】
また、第4の発明の光ファイバ型カプラ用のパッケージは、第1ないし第3の何れか一つの発明の光ファイバ型カプラ用のパッケージにおいて、前記第一樹脂と前記第二樹脂の硬度が、JIS−A硬度において5度〜55度の範囲にある。
【0019】
上記の構成によれば、第一樹脂と第二樹脂が柔らかすぎるために、密着した基板から離れてしまうことがなく、さらに、第一樹脂と第二樹脂が硬すぎるために、基板に余計な負荷をかけてしまうことがない。これにより、より好適に光ファイバ型カプラ用のパッケージを実現することができる。
【0020】
また、第5の発明の光ファイバ型カプラは、第1ないし第4の何れか一つの発明の光ファイバ型カプラ用のパッケージを有している。
【0021】
上記の構成によれば、接着剤の使用箇所を必要最低限とし、また、装置による自動化を図ることによって、工数削減や人為的ミスを防止し、さらに、時間を掛けることなく簡単に温度変化による特性の変動を抑えると共に、外部からの衝撃を緩和することが可能な光ファイバ型カプラを提供することができる。
【0022】
また、第6の発明の光ファイバ型カプラの製造方法は、複数の光ファイバを融着延伸して融着延伸部を形成し、前記複数の光ファイバを基板に固定して前記融着延伸部を保持し、前記基板に密着する第一樹脂が設けられた第一筐体と前記基板に密着する第二樹脂が設けられた第二筐体とを、当該第一樹脂と当該第二樹脂が当該基板を挟んで嵌合させる。
【0023】
上記の製造方法によれば、複数の光ファイバを融着延伸して形成された融着延伸部を保持した基板を、第一筐体に設けられた第一樹脂と第二筐体に設けられた第二樹脂が密着して挟みながら、第一筐体と第二筐体とが嵌合している。これにより、第一樹脂と第二樹脂の弾力を利用して、基板を保持することができる。そのため、従来の様に、円筒型の筐体に人の手によって光ファイバを通す必要がないため、人による作業ではなく、装置による自動化を図ることができ、工数削減や人為的ミスを防ぐことができる。また、従来の様に、接着剤を用いて基板と筐体とを固定する必要がないため、接着剤分のコスト削減や接着剤を硬化させる時間の削減をすることができる。さらに、予め設けられた第一筐体における第一樹脂と第二筐体における第二樹脂との弾力により、融着延伸部に対する外部からの衝撃を抑え、筐体と光ファイバとの熱膨張係数の差を吸収することができる。これにより、製造過程において樹脂を充填する必要がないため、充填中に樹脂が漏れたり、樹脂の管理状態や硬化条件を誤ってしまったりすることがなく、従来の様に樹脂を硬化させる必要もない。また、筐体と光ファイバとの熱膨張係数の差を気にする必要がないため、筐体に用いる材料の選択自由度が向上する。
【発明の効果】
【0024】
本発明の光ファイバ型カプラ用のパッケージによると、従来の様に、円筒型の筐体に人の手によって光ファイバを通す必要がないため、人による作業ではなく、装置による自動化を図ることができ、工数削減や人為的ミスを防ぐことができる。また、従来の様に、接着剤を用いて基板と筐体とを固定する必要がないため、接着剤分のコスト削減や接着剤を硬化させる時間の削減をすることができる。さらに、製造過程において樹脂を充填する必要がないため、充填中に樹脂が漏れたり、樹脂の管理状態や硬化条件を誤ってしまったりすることがなく、従来の様に樹脂を硬化させる必要もない。また、筐体と光ファイバとの熱膨張係数の差を気にする必要がないため、筐体に用いる材料の選択自由度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る光ファイバ型カプラ用のパッケージを有した光ファイバ型カプラの外観を示す説明図である。
【図2】(a)本発明の実施形態に係る光ファイバ型カプラにおける図1のA−A'線矢視断面図である。(b)本発明の実施形態に係る光ファイバ型カプラにおける図1のB−B'線矢視断面図である。
【図3】(a)本発明の実施形態に係る内側筐体の平面図である。(b)本発明の実施形態に係る内側筐体における図3(a)のC−C'線矢視断面図である。(c)本発明の実施形態に係る内側筐体における図3(a)のD−D'線矢視断面図である。
【図4】(a)本発明の実施形態に係る外側筐体の平面図である。(b)本発明の実施形態に係る外側筐体における図4(a)のE−E'線矢視断面図である。
【図5】(a)本発明の実施形態に係る外側筐体における図4(a)のF−F'線矢視拡大断面図である。(b)本発明の実施形態に係る外側筐体における図4(a)のG−G'線矢視拡大断面図である。
【図6】(a)本発明の実施形態に係る基板の平面図である。(b)本発明の実施形態に係る基板における図6(a)のH−H'線矢視断面図である。(c)本発明の実施形態に係る基板における図6(a)のJ−J'線矢視断面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る光ファイバ型カプラの製造方法を示す説明図である。
【図8】(a)従来の光ファイバ型カプラ用のパッケージを有した光ファイバ型カプラの外観を示す説明図である。(b)従来の光ファイバ型カプラにおける図8(a)のK−K'線矢視断面図である。
【図9】本発明の別の実施形態に係る光ファイバ型カプラの組立概要を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0027】
(光ファイバ型カプラ用のパッケージ)
図1および図2に示すように、本実施形態に係る光ファイバ型カプラ10用のパッケージは、融着延伸された複数の光ファイバ1,2,3からなる融着延伸部6を保持する基板16と、基板16に密着する第一樹脂23が設けられた第一筐体21と、基板16に密着する第二樹脂33が設けられ、第一筐体21と嵌合する第二筐体31と、を備え、第一樹脂23と第二樹脂33が基板16を挟んで、第一筐体21と第二筐体31が嵌合する。
【0028】
また、本実施形態に係る光ファイバ型カプラ10用のパッケージは、嵌合により略角型の形状となる。
【0029】
そして、本実施形態に係る光ファイバ型カプラ10は、上記の構成を有する光ファイバ型カプラ10用のパッケージを有している。
【0030】
ここで、『融着延伸』とは、一部の被覆が除去された複数の光ファイバ1,2,3を並行に並べ、光結合用部位となる夫々の剥き出しにされたガラス部分同士を当接し、その当接部を加熱して溶融させながら引き延ばすことによって、複数の光ファイバ1,2,3を結合させることである。このようにして形成された融着延伸部6によって、入射した光を分岐、結合、分波、または合波することが可能となる。
【0031】
また、『密着』とは、物質同士が隙間なく引っ付くことである。本実施形態の場合、第一樹脂23と第二樹脂33が、夫々の弾力によって、基板16を保持できるくらいに基板16に引っ付いていることである。
【0032】
また、『嵌合』とは、形状が合った物同士が嵌り合うことである。本実施形態の場合、第一筐体21と第二筐体31とが嵌り合うことによって、第一樹脂23と第二樹脂33とを基板16に密着させながら、基板16を挟んでいる。
【0033】
また、『略角型』とは、断面形状が四角形である六面体のことである。ここで、『四角形』は、正方形、長方形、平行四辺形、台形などを含んでいる。また、『六面体』は、6つの平面図形で囲まれた立体のことである。
【0034】
本実施形態に係る光ファイバ型カプラ10は、大別して3つの部材から構成される。具体的には、光ファイバ型カプラ10は、光ファイバユニット60と、内側筐体20と、外側筐体30と、から構成されている。詳しくは後述するが、光ファイバユニット60は、融着延伸された3本の光ファイバ1,2,3と、光ファイバ1,2,3の両端部を接着剤15を用いて接着固定することにより融着延伸部6を中空に浮かしながら保持する基板16と、を有している。この光ファイバユニット60を内側筐体20と外側筐体30とが角型に嵌合して挟み込むことによって基板16を包囲している。その際、内側筐体20に設けられた第一樹脂23と外側筐体30に設けられた第二樹脂33とが基板16を挟んで密着することにより基板16を保持している。このような光ファイバ型カプラ10用のパッケージによって、融着延伸部6は保護されている。
【0035】
(内側筐体)
内側筐体20の構成を詳細に説明する。図3(a)に示すように、内側筐体20は、長尺状の第一筐体21と第一樹脂23から構成されている。第一筐体21は、図3(c)に示すように、幅方向の断面形状が略コの字型であり、その凹面には第一樹脂23が成形されている。
【0036】
ここで、『略コの字型形状』とは、曲がり角度が80度〜100度の範囲にあるコの字型の形状のことである。
【0037】
また、『凹面』とは、断面形状が略コの字型である第一筐体21において、へこんだ側の面のことである。
【0038】
また、図3(b)に示すように、第一筐体21における長手方向の両端部には、凹面に成形された第一樹脂23から連続する壁が設けられており、後述する第二筐体31に設けられた第二樹脂33と共に基板16に密着しながら基板16全体を包囲できるようになっている。
【0039】
第一筐体21は、SUS304などのステンレス材によって形成されており、その厚みL11は0.1mm〜0.3mmの範囲である。より好ましくは、0.1mm〜0.2mmの範囲がよい。
【0040】
ここで、第一筐体21および後述する第二筐体31に使用されるSUS304などのステンレス材は、熱膨張係数が約17.3×10-6/℃である。また、後述する光ファイバ1,2,3を構成する石英ガラスの熱膨張係数は約0.56×10-6/℃であり、基板16を構成するインバーの熱膨張係数は約1.2×10-6/℃である。このように、第一筐体21を構成するステンレス材は、光ファイバ1,2,3および基板16と比べて、熱膨張係数に大きな差を生じている。しかしながら、本実施形態に係る光ファイバ型カプラ10用のパッケージの場合、第一樹脂23および第二樹脂33が基板16を挟んで密着しながら基板16を保持しているため、第一樹脂23および第二樹脂33の弾力によって、温度変化による特性の変動が抑えられるようになっている。なお、第一筐体21および第二筐体31は、ステンレス材の他にエンジニアリングプラスチックなど、より軽い材料を用いてもよい。
【0041】
第一樹脂23は、シリコーンやブチルゴムなどの樹脂によって形成されており、その厚みL12は0.4mmである。なお、第一樹脂23の厚みは、これに限定されず、樹脂の弾力で基板16を保持できる厚さであれば、適宜調整可能である。また、第一樹脂23の硬度は、JIS−A硬度において5度〜55度の範囲である。より好ましくは、JIS−A硬度において10度〜50度の範囲がよい。これは、第一樹脂23が柔らかすぎる場合、光ファイバ1,2,3に引張力が加わったときに、基板16が第一樹脂23から離れ、第一筐体21および第二筐体31からなるパッケージから抜けてしまう恐れがあるためである。一方、第一樹脂23が硬すぎる場合、基板16に余計な負荷をかけてしまうことになり、光ファイバ型カプラ10の光の損失が増加する恐れがあるためである。
【0042】
また、図2(a)に示すように、内側筐体20の長手方向の長さは、基板16の長手方向の長さよりも長くなるように設定されている。そして、内側筐体20の幅は、図2(b)に示すように、後述する基板16の幅よりも長くなるように設定されている。このような構成を有する内側筐体20は、後述する外側筐体30と嵌合することにより、略角型の形状とすることができ、基板16全体を包囲できるようになっている。
【0043】
(外側筐体)
次に、外側筐体30の構成を詳細に説明する。図4(a)に示すように、外側筐体30は、長尺状の第二筐体31と第二樹脂33から構成されている。また、外側筐体30における長手方向の両端部に位置する第二樹脂33の表面上には、溝部35が設けられている。第二筐体31は、図5に示すように、幅方向の断面形状が略コの字型であり、その凹面には第二樹脂33が成形されている。なお、外側筐体30における長手方向での中央部と端部とでは、成形された第二樹脂33の厚さが異なるように設定されている。具体的には、図5(a)に示すように、外側筐体30の長手方向における中央部では、第二樹脂33の厚さが両端部よりも薄くなるように成形されている。一方、図5(b)に示すように、外側筐体30の長手方向における両端部では、第二樹脂33の厚さが中央部よりも厚くなるように成形されている。
【0044】
ここで、『略コの字型形状』とは、内側筐体20と同様に曲がり角度が80度〜100度の範囲にあるコの字型の形状のことである。
【0045】
また、『凹面』とは、断面形状が略コの字型である第二筐体31において、へこんだ側の面のことである。
【0046】
また、図4(b)に示すように、第二筐体31における長手方向の両端部には、幅方向の凹面に成形された第二樹脂33から連続する壁が設けられており、第一筐体21に設けられた第一樹脂23と共に基板16に密着しながら基板16全体を包囲できるようになっている。
【0047】
第二筐体31は、第一筐体21と同様にSUS304などのステンレス材によって形成されており、その厚みL21は0.1mm〜0.3mmの範囲である。より好ましくは、0.15mm〜0.25mmの範囲がよい。
【0048】
第二樹脂33は、第一樹脂23と同様にシリコーンやブチルゴムなどの樹脂によって形成されており、その厚みL22は0.3mm、厚みL23は0.7mm、厚みL24は1.0mmである。なお、第二樹脂33の厚みは、これらに限定されず、樹脂の弾力で基板16を保持できる厚さであれば、適宜調整可能である。また、第二樹脂33の硬度は、JIS−A硬度において5度〜55度の範囲である。より好ましくは、JIS−A硬度において10度〜50度の範囲がよい。これは、第一樹脂23と同様に、第二樹脂33が柔らかすぎる場合、光ファイバ1,2,3に引張力が加わったときに、基板16が第二樹脂33から離れ、第一筐体21および第二筐体31からなるパッケージから抜けてしまう恐れがあるためである。一方、第二樹脂33が硬すぎる場合、基板16に余計な負荷をかけてしまうことになり、光ファイバ型カプラ10の光の損失などが起こる恐れがあるためである。
【0049】
溝部35は、後述する接着剤50が光ファイバ型カプラ10の内部に流れ込んで融着延伸部6に接触しないようにしている。具体的には後述する。
【0050】
また、図2(a)に示すように、外側筐体30の長手方向の長さは、基板16の長手方向の長さよりも長くなるように設定されており、内側筐体20の長手方向の長さと同じである。そして、外側筐体30の幅は、図2(b)に示すように、内側筐体20の幅よりも長くなるように設定されている。また、外側筐体30の高さは、基板16を挟んで内側筐体20と反対側から外側筐体30を嵌めた際に、内側筐体20の側面を覆う程度の高さである。このような構成を有する外側筐体30は、内側筐体20と嵌合することにより、略角型の形状とすることができ、基板16全体を包囲できるようになっている。
【0051】
(光ファイバユニット)
次に、光ファイバユニット60の構成を詳細に説明する。図2に示すように、光ファイバユニット60は、3本の光ファイバ1,2,3を備えている。3本の光ファイバ1,2,3は、同一平面上において互いに並行に配列されており、融着延伸部6において3本の光ファイバ1,2,3が一括で融着延伸されている。さらに、光ファイバ1と光ファイバ3は、お互い接触することなく、夫々が光ファイバ2のみと接触して配列されている。
【0052】
図6に示すように、長尺状の基板16は、幅方向の断面形状が略コの字型であり、その凹面上には、光ファイバ1,2,3が並行に配列されるようになっている。
【0053】
ここで、『略コの字型形状』とは、内側筐体20と同様に曲がり角度が80度〜100度の範囲にあるコの字型の形状のことである。
【0054】
また、基板16における長手方向の中央部には、凹みが設けられており、融着延伸部6を基板16に接触することなく中空に保持できるようになっている。
【0055】
基板16は、インバーによって形成されている。ここで、インバーとは、ニッケルを36%含む合金であり、一般的には、ニッケル36.5%と鉄63.5%から構成される。また、その他には、ニッケル32%と鉄63%とコバルト5%から構成されるスーパーインバーも筐体として採用される場合がある。また、基板16の材質には、コバールや石英などを用いてもよく、光ファイバ1,2,3を形成する石英ガラスと熱膨張係数が近い材質である方が好ましい。
【0056】
また、図2(b)に示すように、基板16の幅は、外側筐体30に成形された第二樹脂33の凹面の幅よりも短くなっている。これにより、基板16を挟みながら内側筐体20および外側筐体30を嵌合させることができるようになっている。
【0057】
また、基板16の凹面上に配列された光ファイバ1,2,3は、夫々の両端部を接着剤15によって接着固定されている。これにより、融着延伸部6を中空に浮かしながら基板16によって保持している。
【0058】
ここで、基板16に光ファイバ1,2,3を接着固定する接着剤15は、紫外線硬化型接着剤が用いられている。紫外線硬化型接着剤の基本成分は、光重合性オリゴマー(例:変性アクリレート、エポキシ樹脂)と、光重合性モノマー(例:アクリルモノマー、エポキシモノマー)と、光重合開始剤(例:ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤)であるが、目的に応じて、添加剤(接着性付与剤、充填剤、重合禁止剤、熱硬化触媒、嫌気硬化触媒、着色剤、塗料添加剤)を添加する。なお、接着剤には、熱硬化型接着剤を用いてもよいが、自動化の観点から紫外線硬化型接着剤の方が望ましい。
【0059】
以上の構成を有する光ファイバユニット60は、前述したように、内側筐体20および外側筐体30により保護されている。
【0060】
具体的には、図2に示すように、光ファイバユニット60における光ファイバ1,2,3が接着固定された上方側から内側筐体20の第一樹脂23が基板16に密着し、反対の下方側から外側筐体30の第二樹脂33が基板16に密着している。そして、基板16全体を包囲するように内側筐体20と外側筐体30とが嵌合して、全体が略角型の形状となる光ファイバ型カプラ10用のパッケージを構成している。
【0061】
このように、光ファイバ1,2,3を接着固定して融着延伸部6を保持した基板16は、密着した第一樹脂23および第二樹脂33の弾力によって保持されている。これにより、光ファイバ型カプラ10に対する外部からの衝撃を第一樹脂23および第二樹脂33が吸収してくれるため、光ファイバ1,2,3によって形成された融着延伸部6に対する衝撃を抑えることができる。さらに、温度や湿度などの環境変化に伴って生じる光ファイバ1,2,3および基板16と第一筐体21との間の歪みなどを、第一樹脂23が吸収してくれる。同様に、温度や湿度などの環境変化に伴って生じる光ファイバ1,2,3および基板16と第二筐体31との間の歪みなどを、第二樹脂33が吸収してくれる。そのため、従来であれば、光ファイバ型カプラ10用のパッケージには、光ファイバ1,2,3を構成する石英ガラスや基板16を構成するインバーと熱膨張係数の近い材質が使われるべきであるが、本実施形態の場合は、熱膨張係数の差を気にすることなく、軽くてさびにくく、しかも安価であるステンレス材を使用することができる。このように、本実施形態に係る光ファイバ型カプラ10用のパッケージを用いると、筐体を構成する材料の選択自由度が向上する。
【0062】
また、従来であれば、基板16と筐体とを接着剤などで接着固定する必要があるが、本実施形態の場合、基板16を第一樹脂23および第二樹脂33の弾力によって保持することができるため、基板16と筐体とを接着剤などで接着固定する必要がない。
【0063】
また、略コの字型の内側筐体20と外側筐体30により、基板16を挟み込むように嵌合することで基板16全体を包囲して基板16を保持することができるため、従来のように、円筒型の筐体に光ファイバを挿入させてパッケージを形成する必要がない。
【0064】
さらに、温度変化による特性の変動を抑え、さらに衝撃を緩和する目的である第一樹脂23および第二樹脂33は、予め第一筐体21および第二筐体31に夫々設けられているものであるから、パッケージを形成した後にパッケージの隙間から緩衝用の樹脂を充填する必要がない。
【0065】
また、図1に示すように、内側筐体20と外側筐体30とは、接着剤40および接着剤50によってさらに強固に接着固定されている。
【0066】
具体的には、内側筐体20における第一筐体21と外側筐体30における第二樹脂33との間にできる隙間には、接着剤40が塗布されている。接着剤40は、図1にも示すように、光ファイバ型カプラ10の長手方向に架けて塗布されている。
【0067】
接着剤40には、紫外線硬化型接着剤が用いられている。なお、接着剤40には、熱硬化型接着剤、または併用タイプのエポキシ系接着剤、若しくはアクリレート接着剤を用いてもよい。
【0068】
また、内側筐体20における第一樹脂23と外側筐体30における第二樹脂33とで、基板16を挟み込んだ際、両端面から突出する光ファイバ1,2,3の厚みの分だけ隙間ができる。この隙間には、接着剤50が塗布されている。
【0069】
接着剤50には、シリコーン系の接着剤やシアノ系の瞬間接着剤が用いられている。なお、接着剤50には、隙間を埋めて内側筐体20と外側筐体30とを接着できるものであれば何れのものを用いてもよい。
【0070】
この接着剤40および接着剤50によって、内側筐体20と外側筐体30との嵌合はさらに強固なものとなり、水や埃などを光ファイバ型カプラ10の内部に入りづらくさせている。
【0071】
なお、接着剤50は、第二樹脂33の表面上に設けられた溝部35により、光ファイバ型カプラ10の内部に流れ込まないようになっている。具体的には、塗布された接着剤50が硬化する前に光ファイバ型カプラ10の内部に流れ込んでしまった場合でも、溝部35に接着剤50が留まるようになっている。これにより、接着剤50が融着延伸部6に接触することによる光学特性の変動を防止している。
【0072】
さらに、光ファイバ型カプラ10用のパッケージの両端面において、光ファイバ1,2,3が露出する以外の面は、第一筐体21の凹面から連続する第一樹脂23と第二筐体31の凹面から連続する第二樹脂33とにより封止されている。なお、光ファイバ型カプラ10用のパッケージの両端面において、第一樹脂23および第二樹脂33は互いに嵌り合うように斜めに成形されている。そのため、パッケージの製造を自動化した場合でも、第一筐体21および第二筐体31がより嵌り易くなっている。
【0073】
(光ファイバ型カプラの製造方法)
次に、図7を参照して、本実施形態に係る光ファイバ型カプラ10の製造方法について説明する。
【0074】
本実施形態に係る光ファイバ型カプラ10の製造方法は、複数の光ファイバ1,2,3を融着延伸して融着延伸部6を形成し、複数の光ファイバ1,2,3を基板16に固定して融着延伸部6を保持し、基板16に密着する第一樹脂23が設けられた第一筐体21と基板16に密着する第二樹脂33が設けられた第二筐体31とを、第一樹脂23と第二樹脂33が基板16を挟んで嵌合させている。
【0075】
具体的には、本実施形態に係る光ファイバ型カプラ10の製造方法は、被覆除去およびファイバ洗浄工程と、融着延伸および基板取り付け工程と、終端処理および筐体取り付け工程と、を有している。
【0076】
先ず、被覆除去およびファイバ洗浄工程において、光ファイバ1,2,3夫々の被覆を除去し、クラッドを剥き出しの状態にする。ここで、被覆を除去した部分は、後工程において融着延伸部6を形成する部分となる。その後、光ファイバ1,2,3を洗浄する。
【0077】
次に、融着延伸および基板取り付け工程において、融着延伸部6を形成し、基板16に接着固定する。具体的には、被覆を除去した光ファイバ1,2,3を互いに並行に配列し、夫々の被覆が除去された部分を互いに当接する。この状態で、バーナーやレーザーなどの発熱部によって加熱して溶融させながら延伸することにより、融着延伸部6を形成する。
【0078】
次に、融着延伸部6を形成した光ファイバ1,2,3を基板16の凹面上に配列させ、光ファイバ1,2,3の長手方向の両端部において接着剤15を用いて接着固定する。これにより、基板16によって、融着延伸部6が保持される。
【0079】
次に、終端処理および筐体取り付け工程を実施する。具体的には、光ファイバ2の出射ポートおよび光ファイバ3の出射ポートに終端部を取り付けて、無反射処理を施す。その後、光ファイバ1,2,3が配列された上方側からかぶせるようにして、内側筐体20を基板16に嵌め込む。その際、第一樹脂23は、基板16に密着するように内側筐体20を基板16に嵌め込む。次に、基板16を挟んで基板16の下方側から外側筐体30を嵌め込み、内側筐体20における第一筐体21と外側筐体30における第二筐体31とを嵌合させる。その際、第二樹脂33は、基板16に密着するように外側筐体30を内側筐体20と嵌合させる。これにより、基板16全体が内側筐体20および外側筐体30によって包囲され、第一樹脂23および第二樹脂33が基板16に密着して基板16を保持するようになる。最後に、内側筐体20における第一筐体21と外側筐体30における第二樹脂33との隙間に接着剤40を塗布し、内側筐体20と外側筐体30における第二樹脂33との隙間に接着剤50を塗布することにより接着固定し、光ファイバ型カプラ10を組み立てる。なお、前述の終端処理は、必要がなければ実施しなくてもよい。
【0080】
(比較例と実施例1〜3)
次に、比較例と実施例1〜3とを用いて、従来の光ファイバ型カプラと本実施形態に係る光ファイバ型カプラ10の特性を比較する。
【0081】
ここで、比較例における光ファイバ型カプラは、従来から一般的に使用されている光ファイバ型カプラを用いている。具体的には、図8に示すように、比較例における光ファイバ型カプラ100は、断面形状が円形の上方を四角形状にくりぬいた形を有する長尺状の基板160を用いており、この基板160によって、複数の光ファイバからなる融着延伸部を保持している。また、光ファイバ型カプラ100は、円筒状の筐体120に融着延伸部を保持した基板160を挿入して基板160と筐体120とを接着剤で固定し、さらに光ファイバが露出した筐体の両端面を軟質の樹脂140によって封止することによって形成されている。円筒状の筐体120には、インバーが用いられており、Φ3.7mm、厚みは0.35mmである。この比較例における光ファイバ型カプラ100の長さは54mm、断面形状の幅はΦ3.7mm、総重量は1.77gである。
【0082】
また、実施例1〜3における光ファイバ型カプラは、本実施形態に係る光ファイバ型カプラ10を用いている。ここで、実施例1〜3における光ファイバ型カプラ10の長さは45mm、断面形状の幅は3mm、総重量は1.42gである。また、実施例における光ファイバ型カプラ10の第一筐体21および第二筐体31にはSUS304が用いられており、第一筐体21の厚みL11は0.1mm、第二筐体31の厚みL21は0.2mmである。さらに、内側筐体20における第一樹脂23の厚みL12は0.4mmである。外側筐体30における第二樹脂33の厚みL22は0.3mm、厚みL23は0.7mm、厚みL24は1.0mmである。なお、実施例1における光ファイバ型カプラ10は、第一樹脂23および第二樹脂33にブチルゴムを用いており、その硬度はA5度である。また、実施例2における光ファイバ型カプラ10は、第一樹脂23および第二樹脂33にシリコーン樹脂を用いており、その硬度はA20度である。さらに、実施例3における光ファイバ型カプラ10は、第一樹脂23および第二樹脂33にシリコーン樹脂を用いており、その硬度はA40度である。
【0083】
以上のような構成を有する比較例における光ファイバ型カプラ100と実施例1〜3における光ファイバ型カプラ10の特性を比較する。
【0084】
なお、特性を比較するにあたり、環境試験と機械試験を行った。環境試験としては、PCT(プレッシャークッカー)試験およびヒートショック試験を実施した後、挿入損失の測定をし、比較例と実施例とを比較した。ここで、PCT試験とは、温度105度、湿度100%RHの環境下にある試験槽内に試料を入れて96時間放置する試験である。ヒートショック試験とは、−40度の環境下にある試験槽内に試料を入れて28分間放置し、その後2分間で温度を上昇させる。そして、試験槽内を85度の環境下にして28分間放置して、その後2分間で温度を下降させる。このサイクルを1サイクルとして、それを15サイクル継続させる試験である。
【0085】
また、機械試験としては、静荷重試験および衝撃試験を実施した後、挿入損失の測定をし、比較例と実施例とを比較した。ここで、静荷重試験とは、試料における入力側と出力側の光ファイバ1本に150g、250g、500gの荷重をかけながら60秒間放置する試験である。衝撃試験とは、20cm、50cm、80cm、180cmの高さから夫々3回ずつ試料を自由落下させる試験である。
【0086】
以上、説明したような環境試験と機械試験において、試料を6個ずつ用いて行い、試験前と試験後の挿入損失が0.5dB以上変動した場合を不良品とし、0.5dB以内を良品とした。その結果を表1に示す。
【0087】
【表1】

【0088】
表1に示すように、比較例における光ファイバ型カプラ100は、環境試験において試料全てが良品となったが、機械試験において6個中4個の良品しか得られず、残りの2個は不良品であった。このうち、80cmの高さからの衝撃試験と、180cmの高さからの衝撃試験と、で1個ずつの不良品が発生し、共に断線による挿入損失の増加が原因であった。一方、実施例1〜3における光ファイバ型カプラ10は、環境試験および機械試験共に不良品は発生せず、全ての試料が良品となった。
【0089】
この結果について、実施例1〜3における光ファイバ型カプラ10は、本実施形態に係る光ファイバ型カプラ10用のパッケージを用いているため、融着延伸部6を保持した基板16に密着した第一樹脂23および第二樹脂33の弾力により、機械試験における外部からの衝撃を抑えることができたと考えられる。また、実施例1〜3における光ファイバ型カプラ10は、融着延伸部6を保持した基板16に密着した第一樹脂23および第二樹脂33によって、第一筐体21および第二筐体31と光ファイバ1,2,3および基板16との熱膨張係数の差を吸収することができるため、比較例のように筐体にインバーを用いる必要がなく、より軽いSUS304を用いることができる。従って、全体の重量をより軽くすることができるため、機械試験における落下試験などによって与えられる衝撃を抑えることができたと考えられる。
【0090】
以上のように、実施例1〜3に係る光ファイバ型カプラ10は、予め設けられた第一筐体21における第一樹脂23と第二筐体31における第二樹脂33との弾力により、融着延伸部6に対する外部からの衝撃を抑え、第一筐体21および第二筐体31と光ファイバ1,2,3との熱膨張係数の差を吸収することができる。また、例えば一般的な光ファイバの材質である石英ガラスと熱膨張係数の差が大きいステンレス材などの材質を筐体に用いることができ、材料の選択自由度が向上する。
【0091】
(本実施形態の概要)
以上のように、本実施形態に係る光ファイバ型カプラ10用のパッケージは、融着延伸された複数の光ファイバ1,2,3からなる融着延伸部6を保持する基板16と、基板16に密着する第一樹脂23が設けられた第一筐体21と、基板16に密着する第二樹脂33が設けられ、第一筐体21と嵌合する第二筐体31と、を備え、第一樹脂23と第二樹脂33が基板16を挟んで、第一筐体21と第二筐体31が嵌合する。
【0092】
上記の構成によれば、複数の光ファイバ1,2,3を融着延伸して形成された融着延伸部6を保持した基板16を、第一筐体21に設けられた第一樹脂23と第二筐体31に設けられた第二樹脂33が密着して挟みながら、第一筐体21と第二筐体31とが嵌合している。これにより、第一樹脂23と第二樹脂33の弾力を利用して、基板16を保持することができる。そのため、従来の様に、円筒型の筐体に人の手によって光ファイバを通す必要がないため、人による作業ではなく、装置による自動化を図ることができ、工数削減や人為的ミスを防ぐことができる。また、従来の様に、接着剤を用いて基板と筐体とを固定する必要がないため、接着剤分のコスト削減や接着剤を硬化させる時間の削減をすることができる。さらに、予め設けられた第一筐体21における第一樹脂23と第二筐体31における第二樹脂33との弾力により、融着延伸部6に対する外部からの衝撃を抑え、第一筐体21および第二筐体31と光ファイバ1,2,3との熱膨張係数の差を吸収することができる。これにより、製造過程において樹脂を充填する必要がないため、充填中に樹脂が漏れたり、樹脂の管理状態や硬化条件を誤ってしまったりすることがなく、従来の様に樹脂を硬化させる必要もない。また、第一筐体21および第二筐体31と光ファイバ1,2,3との熱膨張係数の差を気にする必要がないため、第一筐体21および第二筐体31に用いる材料の選択自由度が向上する。
【0093】
また、本実施形態に係る光ファイバ型カプラ10用のパッケージにおいて、第一筐体21と第二筐体31は、嵌合により略角型の形状となっている。
【0094】
上記の構成によれば、光ファイバ型カプラ10用のパッケージが略角型の形状を有しているため、従来の丸型の形状よりも組み立てやすい。
【0095】
また、本実施形態に係る光ファイバ型カプラ10用のパッケージにおいて、第一筐体21および第二筐体31の材質がステンレス材である。
【0096】
上記の構成によれば、一般的な光ファイバの材質である石英ガラスと熱膨張係数の差が大きいステンレス材を第一筐体21および第二筐体31に用いることができるため、従来の光ファイバ型カプラの筐体に用いられているインバーなどの合金よりも、軽くてさびにくく、安価である。
【0097】
また、本実施形態に係る光ファイバ型カプラ10用のパッケージにおいて、第一樹脂23と第二樹脂33の硬度は、JIS−A硬度において5度〜55度の範囲にある。
【0098】
上記の構成によれば、第一樹脂23と第二樹脂33が柔らかすぎるために、密着した基板16から離れてしまうことがなく、さらに、第一樹脂23と第二樹脂33が硬すぎるために、基板16に余計な負荷をかけてしまうことがない。これにより、より好適に光ファイバ型カプラ10用のパッケージを実現することができる。
【0099】
また、本実施形態に係る光ファイバ型カプラ10は、本実施形態に係る光ファイバ型カプラ10用のパッケージを有している。
【0100】
上記の構成によれば、接着剤の使用箇所を必要最低限とし、また、装置による自動化を図ることによって、工数削減や人為的ミスを防止し、さらに、時間を掛けることなく簡単に温度変化による特性の変動を抑えると共に、外部からの衝撃を緩和することが可能な光ファイバ型カプラ10を提供することができる。
【0101】
また、本実施形態に係る光ファイバ型カプラ10の製造方法は、複数の光ファイバ1,2,3を融着延伸して融着延伸部6を形成し、複数の光ファイバ1,2,3を基板16に固定して融着延伸部6を保持し、基板16に密着する第一樹脂23が設けられた第一筐体21と基板16に密着する第二樹脂33が設けられた第二筐体31とを、第一樹脂23と第二樹脂33が基板16を挟んで嵌合させている。
【0102】
上記の製造方法によれば、複数の光ファイバ1,2,3を融着延伸して形成された融着延伸部6を保持した基板16を、第一筐体21に設けられた第一樹脂23と第二筐体31に設けられた第二樹脂33が密着して挟みながら、第一筐体21と第二筐体31とが嵌合している。これにより、第一樹脂23と第二樹脂33の弾力を利用して、基板16を保持することができる。そのため、従来の様に、円筒型の筐体に人の手によって光ファイバ1,2,3を通す必要がないため、人による作業ではなく、装置による自動化を図ることができ、工数削減や人為的ミスを防ぐことができる。また、従来の様に、接着剤を用いて基板と筐体とを固定する必要がないため、接着剤分のコスト削減や接着剤を硬化させる時間の削減をすることができる。さらに、予め設けられた第一筐体21における第一樹脂23と第二筐体31における第二樹脂33との弾力により、融着延伸部6に対する外部からの衝撃を抑え、第一筐体21および第二筐体31と光ファイバ1,2,3との熱膨張係数の差を吸収することができる。これにより、製造過程において樹脂を充填する必要がないため、充填中に樹脂が漏れたり、樹脂の管理状態や硬化条件を誤ってしまったりすることがなく、従来の様に樹脂を硬化させる必要もない。また、第一筐体21および第二筐体31と光ファイバ1,2,3との熱膨張係数の差を気にする必要がないため、第一筐体21および第二筐体31に用いる材料の選択自由度が向上する。
【0103】
以上、本発明の一実施形態を説明した。なお、本発明は上記の実施形態に限定される必要はない。
【0104】
(光ファイバ型カプラ用のパッケージにおける別の実施形態)
例えば、図9に示すように、別の実施形態に係る光ファイバ型カプラ500用のパッケージのように、凸部250と凹部350とを嵌め込ませた凹凸部550により、内側筐体200および外側筐体300を嵌合させていてもよい。具体的には、光ファイバ型カプラ500用のパッケージは、内側筐体200における第一筐体210に凸部250が設けられ、外側筐体300における第二樹脂330および第二筐体310に凹部350が設けられている。そして、光ファイバユニット60を挟み込みながら内側筐体200と外側筐体300とを嵌合させる際、凸部250と凹部350とを嵌め込ませることで凹凸部550を形成し、光ファイバ型カプラ500用のパッケージを実現している。これによれば、接着剤40および接着剤50を用いることなく簡易に内側筐体200と外側筐体300とを嵌合固定させることができる。また、接着剤40および接着剤50により接着固定した場合は、より強固に内側筐体200と外側筐体300とを嵌合固定させることができるため、外部の衝撃から基板16に保持された融着延伸部6をより保護することができる。
【0105】
また、本実施形態において、光ファイバユニット60は、3本の光ファイバ1,2,3を用いて、3×1型の光ファイバ型カプラ10を構成しているが、本発明においてこれに限定されず、例えば2本の光ファイバを用いて、2×1型、2×2型の光ファイバ型カプラ10を構成していてもよいし、3本の光ファイバを用いて、3×2型、3×3型の光ファイバ型カプラ10を構成していてもよい。なお、光ファイバ型カプラ10用のパッケージは、光ファイバユニット60を構成する光ファイバの本数に応じて、そのサイズが適宜調整される。
【0106】
以上、本発明の実施例を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施形態に記載された、作用および効果は、本発明から生じる最も好適な作用および効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用および効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明は、複数の光ファイバが融着延伸して形成された光ファイバ型カプラについて利用することができる。
【符号の説明】
【0108】
1 光ファイバ
2 光ファイバ
3 光ファイバ
10 光ファイバ型カプラ
20 内側筐体
21 第一筐体
23 第一樹脂
30 外側筐体
31 第二筐体
33 第二樹脂
40 接着剤
50 接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
融着延伸された複数の光ファイバからなる融着延伸部を保持する基板と、
前記基板に密着する第一樹脂が設けられた第一筐体と、
前記基板に密着する第二樹脂が設けられ、前記第一筐体と嵌合する第二筐体と、
を備え、
前記第一樹脂と前記第二樹脂が前記基板を挟んで、前記第一筐体と前記第二筐体が嵌合することを特徴とする光ファイバ型カプラ用のパッケージ。
【請求項2】
前記第一筐体と前記第二筐体は、前記嵌合により略角型の形状となることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ型カプラ用のパッケージ。
【請求項3】
前記第一筐体と前記第二筐体の材質がステンレス材であることを特徴とする請求項1または2に記載の光ファイバ型カプラ用のパッケージ。
【請求項4】
前記第一樹脂と前記第二樹脂の硬度は、JIS−A硬度において5度〜55度の範囲にあることを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載の光ファイバ型カプラ用のパッケージ。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか1項に記載の光ファイバ型カプラ用のパッケージを有した光ファイバ型カプラ。
【請求項6】
複数の光ファイバを融着延伸して融着延伸部を形成し、
前記複数の光ファイバを基板に固定して前記融着延伸部を保持し、
前記基板に密着する第一樹脂が設けられた第一筐体と前記基板に密着する第二樹脂が設けられた第二筐体とを、当該第一樹脂と当該第二樹脂が当該基板を挟んで嵌合させることを特徴とする光ファイバ型カプラの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−164343(P2011−164343A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26660(P2010−26660)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(000108742)タツタ電線株式会社 (76)