説明

光ファイバ型リングレーザジャイロ

【課題】本発明は、希土類元素ドープファイバを用いて安価なリングレーザジャイロを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明による光ファイバ型リングレーザジャイロは、希土類元素ドープファイバからなるセンシング部(1)と、このセンシング部(1)に励起用光源(4)を有する励起光導入部(5)と受光素子(15)及び検出用光源(13)を有する検出部(16)とからなる構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ型リングレーザジャイロに関し、特に、ループ状に形成された希土類元素ドープファイバからなるセンシング部に一対のカプラを設け、一方のカプラに励起用光源を接続し、他方のカプラに検出用光源及び受光素子を接続し希土類ドープファイバの増幅効果を利用したレーザ発振によりリングレーザジャイロを構成する全く新しいリングレーザジャイロに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種のリングレーザジャイロとしては、非特許文献1にも開示されているように、三角形又は四角形状の空間を有するように加工した低熱膨張ガラスを用いたキャビティに細穴をあけ、このキャビティの各頂点に高反射率、低数乱の高性能ミラーを設け、このキャビティ内にヘリウム、ネオンの混合気体を封入して高電圧印加による放電をもとにする周知の誘導放出を発生させて左右両回りのレーザを発振させ、周知の光のサニャック効果を利用したその干渉出力から入力角速度を検出する方法が代表的なものである。
【0003】
【非特許文献1】1998年発行の「Modern Inertial Technology(Anthony Law−rence著)」の第2版、p208−224(リング・レーザジャイロ)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のリングレーザジャイロは、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、三角形又は四角形のガラスのキャビティを形成するための低熱膨張ガラス材料が高価であると共に、その加工及び高性能プリズムとミラーの加工及び特殊な電極類の製造に多大のコストがかかると共に、レーザ共振器を構成するためのミラーアライメント、内部へのHe−Neガス封入、部品のキャビティへの接合等に多大なコストがかかり、簡単な構成でローコストの製品を作ることは不可能であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による光ファイバ型リングレーザジャイロは、希土類ドープファイバの両端面を融着接合してループ状としたセンシング部と、前記センシング部の外周に接して設けられた第1カプラと前記第1カプラの一端に設けられた励起用光源とからなる励起光導入部と、前記センシング部の外周に接して設けられた第2カプラと前記第2カプラの両端に設けられた受光素子及び検出用光源とからなる検出部とを備え、前記検出用光源からの検出用光ならびに励起用光源からの励起光を前記センシング部に入力した状態下で、前記希土類ドープファイバの増幅効果により前記センシング部内で誘導放出を発生し、前記センシング部内で左右両回りのレーザが発生し、前記検出部からの戻り光を前記受光素子により検出し、入力角速度を検出する構成であり、また、前記第1カプラ及び前記第1カプラと前記励起用光源との間に設けられた第3カプラと、前記第2カプラ及び前記第2カプラと前記検出用光源及び受光素子との間に設けられた第4カプラと、からなる4個の前記カプラにより、前記励起光及び検出用光ともCW及びCCW方向に前記センシング部に導入できる構成である。
【発明の効果】
【0006】
本発明による光ファイバ型リングレーザジャイロは、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、ループ状に形成された希土類元素ドープファイバからなるセンシング部に一対のカプラを設け、一方のカプラに励起用光源を接続し、他方のカプラに検出用光源及び受光素子を接続し、希土類ドープファイバの増幅効果を利用したレーザ発振によりリングレーザジャイロを得ているため、従来よりも構造が簡単で、かつ、低価格とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、ループ状に形成された希土類元素ドープファイバからなるセンシング部に一対のカプラを設け、一方のカプラに励起用光源を接続し、他方のカプラに検出用光源及び受光素子を接続し、光ファイバからなる低価格部品による極めて単純な構成がローコストの構成とした光ファイバ型リングレーザジャイロを提供することを目的とする。
【実施例】
【0008】
以下、図面と共に本発明による光ファイバ型リングレーザジャイロの好適な実施の形態について説明する。
図1において符号1で示されるものは希土類ドープファイバからなりその両端面1a、1bを融着接合してループ状としたセンシング部であり、このセンシング部1の外周に接して設けられ光ファイバからなる第1カプラ2が配設されている。
【0009】
前記第1カプラ2は、第3カプラ3を介して励起用光源4が接続され、前記第1カプラ2、第3カプラ3及び励起用光源4により励起光導入部5が構成されている。
【0010】
前記センシング部1の外周には、前記第1カプラ2と対向、すなわち、センシング部1の直径方向に沿って配設され光ファイバからなる第2カプラ10が設けられ、この第2カプラ10の両端には、第4カプラ11を介して検出用光12を発生させる検出用光源13と戻り光14を受光するための受光素子15とが設けられている。
【0011】
前記第1〜第4カプラ2、3、10、11は、−3dBカプラで構成され、各光源4、13はレーザよりなり、受光素子15はホトダイオード等によって構成されている。従って、前記第2、第4カプラ10、11、検出用光源13及び受光素子15により検出部16が構成されている。
【0012】
前述の構成において、センシング部1の希土類ドープファイバの種類に応じて適切な波長の励起光4aを励起用光源4から第1、第3カプラ2、3を介してセンシング部1に供給する。
この場合、センシング部1には、左右両回りに等しい強度の光を分配するために、各カプラ2、3を2個として使用している。
【0013】
次に、前記センシング部1の種類に応じて適切な波長の検出用光12を第4、第2カプラ11、10を介してセンシング部1に入力する。
前述の状態下で、前記検出用光12がセンシング部1内で周知の誘導放出を起し、左右両回りのレーザが発振する。
前記検出部16の戻り光14は、これらの干渉光であるため、この戻り光14を受光素子15で受光する。
【0014】
前記戻り光14を受光素子15で検出することにより、回転に伴う干渉縞変化から入力角速度を求めることができる。
従って、本発明においては、リングレーザジャイロのレーザ発振に必要な誘導放出を、市販の希土類元素ドープファイバ、発光源及び受光素子を組合わせた単純な光学系により行うことができ、従来の高価な部品が不要となる。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明は、希土類ドープファイバの種類を選択することにより、より単純な構成が安価な光ファイバ型リングレーザジャイロを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明による光ファイバ型リングレーザジャイロを示す構成図である。
【符号の説明】
【0017】
1 センシング部
2 第1カプラ
1a、1b 端面
2、3 第1、第3カプラ
4 励起用光源
5 励起光導入部
10、11 第2、第4カプラ
12 検出用光
13 検出用光源
14 戻り光
15 受光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
希土類ドープファイバの両端面(1a,1b)を融着接合してループ状としたセンシング部(1)と、前記センシング部(1)の外周に接して設けられた第1カプラ(2)と前記第1カプラ(2)の一端に設けられた励起用光源(4)とからなる励起光導入部(5)と、前記センシング部(1)の外周に接して設けられた第2カプラ(10)と前記第2カプラ(10)の両端に設けられた受光素子(15)及び検出用光源(13)とからなる検出部(16)とを備え、
前記検出用光源(13)からの検出用光(12)ならびに励起用光源(4)からの励起光(4a)を前記センシング部(1)に入力した状態下で、前記希土類ドープファイバの増幅効果により前記センシング部(1)内で誘導放出を発生し、前記センシング部内で左右両回りのレーザが発生し、前記検出部(16)からの戻り光(14)を前記受光素子(15)により検出し、入力角速度を検出することを特徴とする光ファイバ型リングレーザジャイロ。
【請求項2】
前記第1カプラ(2)及び前記第1カプラ(2)と前記励起用光源(4)との間に設けられた第3カプラ(3)と、前記第2カプラ(10)及び前記第2カプラ(10)と前記検出用光源(13)及び受光素子(15)との間に設けられた第4カプラ(11)と、からなる4個の前記カプラ(2,3.10,11)により、前記励起光(4a)及び検出用光(12)ともCW及びCCW方向に前記センシング部(1)に導入できることを特徴とする請求項1記載の光ファイバ型リングレーザジャイロ。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2007−212247(P2007−212247A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−31434(P2006−31434)
【出願日】平成18年2月8日(2006.2.8)
【出願人】(000203634)多摩川精機株式会社 (669)
【Fターム(参考)】