説明

光ファイバ型電流センサ

【課題】1つの光源を複数種類の用途に用いることを実現した光ファイバ型電流センサを提供することを目的とする。
【解決手段】光ファイバ型電流センサ10は、光源11が接続された光ファイバ12を備えている。光ファイバ12は、分岐部12aから分岐した測定用光ファイバ部12bを有しており、光源11からの光が測定用光ファイバ部12bに分岐される。測定用光ファイバ部12bには、通過する光を直線偏光に変換する偏光フィルタ21と、ブラッグ波長の光を反射するFBG22とが設けられており、これらを含む範囲が被測定回路15の近傍に配置される。偏光フィルタ21を通過した直線偏光は被測定回路15の電流が発生させる磁界が及ぼすファラデー効果によって偏波面を回転される。FBG22が反射したブラッグ波長の光は再び偏光フィルタ21を通過し、直線偏光に変換されてから測定機14に導かれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光ファイバを利用して導体に流れる電流を測定する光ファイバ型電流センサの構成に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、導体を流れる電流を測定するために、ファラデー効果を利用して電流を測定する光ファイバ型電流センサが用いられる。ファラデー効果とは、磁界中に配置された媒質に直線偏光を伝播させると直線偏光の偏波面が磁界の強さに比例して回転する現象であり、光ファイバ型電流センサでは、光ファイバそのものが媒質として磁界中に配置される。磁界の強さは、磁界を発生させる電流の大きさに比例するため、偏波面の回転角度に基づいて電流を求めることが可能となる。
【0003】
例えば特許文献1に記載されている光ファイバ型電流センサは、電流が流れる導体の周囲に配置されるセンサ用光ファイバと、第1の導波路及び第2の導波路が形成された光部品とを備えている。光部品の第1の導波路には光源とセンサ用光ファイバの一端とが接続されており、光源から発せられた光が、第1の導波路に設けられた偏光子によって直線偏光に変換されてからセンサ用光ファイバを通過する。
【0004】
一方、光部品の第2の導波路にはセンサ用光ファイバの他端と一対の受光器とが接続されており、センサ用光ファイバを通過する際にファラデー効果によって回転した直線偏光が、第2の導波路に設けられた偏光分離子によって2つの直線偏光に分離されてから各受光器に導かれる。各受光器は、導かれた直線偏光の強度をそれぞれ測定しており、これらの強度から算出される偏波面の回転角度に基づいて導体を流れる電流の大きさが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−39528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通常、光ファイバは、複数の波長の光を同時に伝送することが可能である。また、光ファイバは、例えば被測定物のひずみ、振動あるいは温度等、電流以外の物理量を測定するためのセンサとして適用することが可能である。このような特性から、近年、電気自動車(EV)やハイブリッド自動車(HV)等の車両内に、光ファイバを介して各種センサや車両の制御機器等を接続したセンサネットワークを構築することが注目されている。光ファイバに複数の波長の光を入射し、各波長を複数個所の電流測定や電流以外の物理量測定、あるいは測定した物理量以外の情報伝達に振り分ければ、車両内に1本の光ファイバを敷設するだけでセンサネットワークを構築できる。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の光ファイバ型電流センサでは、波長1.55μmの光を発する単波長光源が用いられており、1つの光源で一箇所の電流測定のみを行う構成となっている。そのため、この光ファイバ型電流センサは、センサ用光ファイバに入射される光の波長を選択する手段を備えておらず、仮に複数の波長の光を発する光源を用いたとしても、各波長を異なる用途に振り分けることが不可能となっている。すなわち、特許文献1に記載の光ファイバ型電流センサでは、1つの光源を複数種類の用途に用いることができず、上述したようなセンサネットワークに適用しようとする場合、用途の数に応じた複数の光源を必要とするという問題点を有していた。
【0008】
この発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、1つの光源を複数種類の用途に用いることを実現した光ファイバ型電流センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る光ファイバ型電流センサは、被測定回路の電流を測定するセンサであって、光ファイバと、光を直線偏光に変換する偏光手段とを備え、偏光手段は光ファイバと連結して設けられ、光ファイバには、入射光が伝播する方向における偏光手段の下流側にFBGが設けられることを特徴とするものである。
【0010】
まず、FBG(ファイバブラッググレーティング)とは、光ファイバのコアの屈折率を軸方向に沿った所定の長さ周期(グレーティング周期)で変化させた回折格子であって、光ファイバへの入射光に対し、グレーティング周期に応じた特定の波長(ブラッグ波長)の光を反射し、残りの光を透過するという特性を有する。
【0011】
光ファイバに入射された光は、偏光手段を通過する際に直線偏光に変換される。次いで、直線偏光の偏波面は、被測定電流が発生させる磁界が及ぼすファラデー効果により、磁界の強さに応じた角度で回転する。このように、直線偏光に変換された後に偏波面が回転した入射光のうち、ブラッグ波長の光はFBGによって反射され、再び偏光手段を通過する。その際、FBGが反射した光は再び直線偏光に変換されるため、入射時の光の強度と反射時の光の強度との間には、偏波面の回転角度に応じた強度差が生じる。すなわち、この強度差に基づいて偏波面の回転角度を求めることが可能であり、求めた回転角度から被測定電流が求められる。
【0012】
ここで、上述したように、FBGはブラッグ波長の光を反射し、残りの波長の光を透過するという特性を有している。つまり、光ファイバへの入射光の光源として、FBGの反射スペクトルの帯域幅より広い帯域幅を有する広帯域の光を発する機器を用いれば、ブラッグ波長の光のみを電流測定に利用し、残りの波長の光を他の用途に利用することができる。したがって、光ファイバ型電流センサにおいて、1つの光源を複数種類の用途に用いることが可能となる。
【0013】
尚、光ファイバは、光ファイバから分岐された測定用光ファイバ部を有し、偏光手段及びFBGは、測定用光ファイバ部に直列に設けられてもよい。
また、被測定回路の電流が発生させる磁界によって直線偏光の偏波面を回転させるファラデー効果を利用して、被測定回路の電流を測定してもよく、FBGが反射した光に基づいて、被測定回路の電流を測定してもよい。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、光ファイバ型電流センサにおいて、1つの光源が発する光を複数種類の用途に用いることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の実施の形態1に係る光ファイバ型電流センサの構成を示す概略図である。
【図2】実施の形態1に係る光ファイバ型電流センサにおけるFBGの構成を示す概略図である。
【図3】実施の形態1に係る光ファイバ型電流センサにおける偏光手段の作用を説明するために光の振動方向と強度とを示した概略図であり、(a)は偏光手段を通過する前の光、(b)は偏光手段及び磁界を通過する光、(c)はFBGに反射されてから偏光手段を通過する光を示す。
【図4】この発明の実施の形態2に係る光ファイバ型電流センサの構成を示す概略図である。
【図5】この発明の実施の形態3に係る光ファイバ型電流センサの構成を示す概略図である。
【図6】実施の形態3に係る光ファイバ型電流センサを用いた被測定電流の測定方法を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、この発明の実施の形態について添付図に基づいて説明する。
実施の形態1.
図1に、この実施の形態1に係る光ファイバ型電流センサ10の構成を概略的に示す。
光ファイバ型電流センサ10は、一端に光源11が接続された光ファイバ12を備えている。また、光ファイバ12は、その分岐部12aから分岐された測定用光ファイバ部12bを有している。光源11から発せられた光は、光ファイバ12内を矢印Aで示される方向に伝播するとともに、矢印Bで示されるように分岐部12aで分岐されて測定用光ファイバ部12b内を伝播する。尚、光源11から発せられた光は、分岐部12aにおいて予め設定されている所定の強度比で分岐される。
【0017】
光源11と分岐部12aとの間にはサーキュレータ13が設けられており、このサーキュレータ13には、分岐用光ファイバ12cを介して測定機14が接続されている。サーキュレータ13は、光源11から光ファイバ12に入射された光を矢印Aで示される方向に通過させるとともに、後述するFBG22が光源11側に向かって反射した反射光を、矢印Cで示すように測定機14に導く光学部品である。また、測定機14は、例えば複眼の光学素子であるMOSやCCD等を用いてFBG22からの反射光を受け取るとともに、受け取った反射光の強度を測定可能となっている。
【0018】
測定用光ファイバ部12bの途中には、通過する光を直線偏光に変換する偏光手段である偏光フィルタ21が設けられている。また、矢印Bで示される光の伝播方向における偏光フィルタ21の下流側には、偏光フィルタ21を通過した光のうち、ブラッグ波長と呼ばれる特定の波長の光を反射するFBG22が、偏光フィルタ21と連結して設けられている。偏光フィルタ21及びFBG22が直列に設けられている測定用光ファイバ部12bは、導体としての被測定回路15を流れる電流を測定するためのものであり、少なくとも偏光フィルタ21の下流側の部位からFBG22が位置する部位までを含む範囲が、被測定回路15を流れる被測定電流によって発生する磁界中に配置される。すなわち、偏光フィルタ21を通過してFBG22に達する光には、被測定回路15の電流が発生させた磁界によるファラデー効果が作用する。尚、この実施の形態1における測定用光ファイバ部12bは、矢印Bで示される光の伝播方向におけるFBG22の下流側で切断されている。
【0019】
次に、図2を用いてFBG22の構成について説明する。測定用光ファイバ部12bは、分岐部12a(図1参照)で分岐された光である入射光L1が伝播するコア23aと、コア23aの外周部を覆うクラッド23bとを有している。FBG22は、コア23aの屈折率を軸方向に沿った所定の長さ周期(グレーティング周期)Λで変化させた回折格子であって、例えばコア23aに紫外線等を照射することによって形成される。また、FBG22のブラッグ波長はグレーティング周期Λに応じて決まる値となっており、FBG22は、入射光L1に対してブラッグ波長の光を反射光L2として反射するとともに、残りの波長の光を透過光L3として透過する。また、図2には示されていないが、光ファイバ12及び分岐用光ファイバ12c(図1参照)も測定用光ファイバ部12bと同様に、コア23a及びクラッド23bを有する構成となっている。
【0020】
図1に戻って、光源11は、波長λ1,λ2,λ3,・・・,λnの光を含み、且つFBG22の反射スペクトルを帯域幅に含む広帯域の光を発する機器であり、例えば白色光を発するLED等が光源11として用いられる。尚、光源11から発せられる白色光とは、紫外線(不可視)、紫色〜赤色に対応する波長の光(可視)および赤外線(不可視)が連続的につながったスペクトルを示す光を指す。すなわち、光源11から入射されて光ファイバ12及び測定用光ファイバ部12bを伝播する光は無色の光のみに限定されるものではなく、そのスペクトルの帯域幅に応じた様々な色の光を含み得る。
【0021】
次に、この発明の実施の形態1に係る光ファイバ型電流センサ10を用いて被測定回路15を流れる電流を測定する方法について説明する。
図1に示すように、まず、測定用光ファイバ部12bにおいて偏光フィルタ21の下流側の部位からFBG22が位置する部位にわたる範囲が被測定回路15の近傍に配置され、光源11から発せられた光が光ファイバ12に入射される。光ファイバ12に入射された光はサーキュレータ13を通過し、次いで、分岐部12aにおいて所定の強度比で分岐され、光ファイバ12内(矢印A参照)と測定用光ファイバ部12b内(矢印B参照)とを伝播する。被測定回路15の周囲には、流れている電流による磁界が発生しており、測定用光ファイバ部12bのうち被測定回路15の近傍に配置された部位が、この磁界中に位置している。
【0022】
分岐部12aにおいて測定用光ファイバ部12b側に分岐した光は、偏光フィルタ21を通過する。ここで、図3(a)に概略的に示すように、測定用光ファイバ部12b内を伝播する光Laは様々な方向に所定の強度F1で振動しており、その偏波面も様々な方向に傾いている。このような光Laが偏光フィルタ21を通過する際、図3(b)に示すように振動方向が一定、すなわち偏波面の傾きが一定で且つ強度がF1である直線偏光Lbに変換される。尚、偏光フィルタ21は、通過する光の振動方向を図3における上下方向に偏光する。偏光フィルタ21を通過した直線偏光Lbの偏波面は、被測定回路15(図1参照)を流れる電流が発生させる磁界のファラデー効果により、符号Lb’で示すように磁界の強さに応じた角度αだけ回転する。
【0023】
ファラデー効果によって偏波面が回転した直線偏光Lb’は、FBG22(図1参照)に入射される。ここで、光源11が発する光は波長λ1,λ2,λ3,・・・,λnの光を含み、且つFBG22の反射スペクトルをその帯域幅に含んでいる。すなわち、FBGに入射される直線偏光Lb’も、これらの波長を含むとともにFBG22の反射スペクトルを帯域幅に含んでいる。したがって、例えばFBG22のブラッグ波長をλ3とした場合、FBG22は波長λ3の光を反射(図1の矢印D参照)するとともに、残りの波長の光を透過する。図2を用いて説明すると、波長λ1〜λnの光が入射光L1に相当し、波長λ3の光がFBG22からの反射光L2に相当する。また、波長λ1,λ2,λ4〜λnの光は透過光L3としてFBG22を通過する。
【0024】
FBG22が反射した波長λ3の光は、測定用光ファイバ部12b内を逆行して再び偏光フィルタ21を通過する(図1参照)。ここで、FBG22に入射された光は、ファラデー効果によって偏波面が角度α回転した直線偏光Lb’(図3(b)参照)であるため、FBG22が反射した波長λ3の光も、その偏波面が角度α傾いた状態となっている。すなわち、FBG22からの反射光が偏光フィルタ21を通過する際、図3(c)に示すように、偏光フィルタ21によって再び直線偏光Lb”に変換される。したがって、FBG22への入射時の直線偏光Lb’の強度F1と、FBG22からの反射時の直線偏光Lb”の強度F2との間には強度差が生じる。
【0025】
図1に戻って、FBG22に反射されて偏光フィルタ21を通過した強度F2の直線偏光Lb”は、分岐部12aを通ってサーキュレータ13に達し、分岐用光ファイバ12cを介して測定機14に導かれる。測定機14は、光源11が発した光の強度と、光源11から発せられて測定用光ファイバ部12b側に分岐された光の強度F1とを内部情報として有している。この強度F1と、受け取った反射光の強度F2とを対比することにより、磁界のファラデー効果による偏波面の回転角度αが算出される。上述したように、ファラデー効果による偏波面の回転角度αは、被測定回路15を流れる電流が発生させる磁界の強さに応じたものとなっている。また、この磁界の強さは、被測定回路15の電流の大きさに応じたものとなっている。つまり、測定機14は、算出した回転角度αに基づいて被測定回路15を流れる電流の大きさを導き出す。
【0026】
ここで、光源11が発する波長λ1〜λnの光は、電流を測定するための測定用光ファイバ部12b内だけではなく、光ファイバ12における分岐部12aの下流側にも伝播する。また、測定機14は、FBG22からの反射光の強度に基づいて、被測定回路15を流れる電流を測定している。すなわち、光ファイバ型電流センサ10が電流の大きさを測定するために利用しているのは特定の波長の光、すなわちFBG22のブラッグ波長λ3の光のみとなっている。
【0027】
したがって、光ファイバ型電流センサ10では、光ファイバ12内を伝播する波長λ1〜λnの光のうちFBG22のブラッグ波長λ3を除いた波長の光を、被測定回路15を流れる電流の測定以外の用途に用いることが可能となっている。尚、このような用途としては、被測定回路15以外の導体を流れる電流の測定や、例えば被測定物のひずみ、振動、温度等、電流以外の物理量の測定、あるいは測定した物理量以外の情報伝達が挙げられる。
【0028】
このように、光ファイバ12の測定用光ファイバ部12bに入射された光を直線偏光に変換する偏光フィルタ21を備えた光ファイバ型電流センサ10において、測定用光ファイバ部12bへの入射光が伝播する方向における偏光フィルタ21の下流側にFBG22を設けたので、FBG22のブラッグ波長の光のみを電流測定用として用いることが可能となる。すなわち、光ファイバ12内を伝播する光のうちFBG22のブラッグ波長とは異なる波長の光を、被測定回路15以外の導体を流れる電流の測定や電流以外の物理量測定、あるいは測定した物理量以外の情報伝達に振り分けることが可能となる。したがって、光ファイバ型電流センサ10において、1つの光源11を複数種類の用途に用いることが可能となる。尚、複数種類の用途とは、例えば複数の箇所の電流を測定する電流センサに用いる場合や、電流センサ及び電圧センサ等の複数種類のセンサに用いる場合を含む。
【0029】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2に係る光ファイバ型電流センサについて説明する。この実施の形態2に係る光ファイバ型電流センサは、実施の形態1に係る光ファイバ型電流センサ10における偏光フィルタ21及びFBG22が、光ファイバ12から分岐した測定用光ファイバ部12bに設けられていたのに対し、測定用光ファイバ部12bを用いることなく電流の測定を行うように構成したものである。尚、以下に説明する各実施の形態において、図1〜3に示される符号と同一の符号は同一または同様の構成要素であるため、その詳細な説明は省略する。
【0030】
図4に示すように、光ファイバ型電流センサ30は、一端側に光源11が接続された一本の光ファイバ31を備えており、光ファイバ31の途中に設けられたサーキュレータ13に測定機14が接続されている。また、光ファイバ31において、光源11から入射された光が伝播する方向(矢印A参照)におけるサーキュレータ13の下流側には、実施の形態1と同様の偏光フィルタ21及びFBG22が設けられている。被測定回路15の近傍には、偏光フィルタ21の下流側の部位からFBG22が位置する部位にわたる範囲が配置され、被測定回路15の電流が発生させる磁界中に位置している。その他の構成については実施の形態1と同様である。
【0031】
以上のように構成される光ファイバ型電流センサ30において、光源11から光ファイバ31に光が入射されると、実施の形態1と同様に、入射された光が偏光フィルタ21によって直線偏光に変換される。次いで、偏光フィルタ21によって変換された直線偏光は、被測定電流が発生させた磁界のファラデー効果によって偏波面を回転されてからFBG22に入射され、FBG22は、入射された波長λ1〜λnの光のうち、ブラッグ波長λ3の光を反射する。
【0032】
FBG22からの反射光は、偏光フィルタ21を矢印Aで示される方向とは逆方向に通過する際に再び直線偏光に変換されるため、光源11が発した光の強度と、FBG22から反射された光の強度との間に差異が生じる。測定機14は、実施の形態1と同様に、これらの光の強度の差異に基づいて直線偏光の回転角度を算出し、電流の大きさを導き出す。また、FBG22に入射された光のうち、ブラッグ波長λ3を除いた波長の光は下流側に透過されるため、これらの波長の光を、被測定回路15を流れる電流の測定以外の用途に用いることができる。このように、一本の光ファイバ31に偏光フィルタ21及びFBG22を設けて被測定回路15の電流を測定するように構成しても、実施の形態1と同様の効果を得ることが可能となる。
【0033】
実施の形態3.
次に、この発明の実施の形態3に係る光ファイバ型電流センサについて説明する。この実施の形態3に係る光ファイバ型電流センサは、実施の形態1における測定機14が光ファイバ12において光源11側に接続されていたのに対し、測定機14を光源11とは反対側となる端部に接続するように構成したものである。
図5に示すように、光ファイバ型電流センサ40における光ファイバ12の一端には光源11が接続されており、他端には測定機14が接続されている。また、光ファイバ12の途中にはサーキュレータ41が設けられており、このサーキュレータ41に測定用光ファイバ部12bが接続されている。測定用光ファイバ部12bには、実施の形態1と同様に偏光フィルタ21及びFBG22が設けられている。
【0034】
サーキュレータ41は、光源11から光ファイバ12に入射された光を矢印Aで示される方向に通過させるとともに、矢印Bで示されるように測定用光ファイバ部12bに分岐させる。また、サーキュレータ41は、FBG22が反射した光を矢印Eで示される方向、すなわち矢印Aで示される方向に伝播する光に合流させる方向に通過させる。つまり、光ファイバ型電流センサ40は、サーキュレータ41を通過して光ファイバ12内を伝播する波長λ1〜λnの光と、FBG22が反射したブラッグ波長λ3の光とを測定機14が受け取るように構成されている。また、測定機14は光源11が発する光の強度、光ファイバ12側を伝播する光の強度、及び測定用光ファイバ部12b側を伝播する光の強度を内部情報として有している。その他の構成については実施の形態1と同様である。
【0035】
次に、この実施の形態3に係る光ファイバ型電流センサ40を用いて被測定回路15を流れる電流を測定する方法について説明する。
光源11から光ファイバ12に入射された光はサーキュレータ41によって所定の強度比で分岐され、光ファイバ12内と測定用光ファイバ部12b内とを伝播する。測定用光ファイバ部12b内を伝播する光は、偏光フィルタ21を通過する際に直線偏光に変換され、次いで、被測定回路15を流れる電流が発生させる磁界のファラデー効果によって偏波面を回転されてからFBG22に入射される。
【0036】
FBG22は、入射された光のうちブラッグ波長λ3の光を反射し、この反射光が偏光フィルタ21を通過する際に直線偏光に変換される。この際、実施の形態1と同様に、FBG22に入射される直線偏光Lb’の強度F1と、FBG22に反射されて偏光フィルタ21を通過した直線偏光Lb”の強度F2との間に強度差が生じる(図3(a)〜図3(c)参照)。サーキュレータ41は、FBG22からの反射光を光ファイバ12側に分岐された光に合流させ、これらの光が測定機14に導かれる。
【0037】
ここで、光ファイバ12側に分岐された光は、波長λ1〜λnの光を含んでおり、FBG22からの反射光はブラッグ波長λ3の光となっている。そのため、図6に示すように、測定機14が受け取る光のスペクトルは、波長λ3における強度がFBG22からの反射光の分だけ突出した形状となる。光源11が発する光の強度をF0、光ファイバ12側に分岐された光の強度をF3としてより具体的に説明すると、測定機14が受け取る光のスペクトルにおいて、波長λ1,λ2,λ4〜λnの光の強度はF3となり、波長λ3の光の強度はF2+F3となる。尚、FBG22からの反射光の強度は偏光フィルタ21を通過した際に小さくなっているため、図6における波長λ3の光の強度F2+F3は、光源11が発した光の強度F0より小さい値となる。
【0038】
測定機14は、図6に示されるスペクトルの光を受け取ると各波長の光の強度を測定し、波長λ3の光の強度とその他の波長の光の強度とを対比して、ファラデー効果による偏波面の回転角度α(図3(b)参照)を算出する。また、測定機14は、算出された回転角度αに基づいて被測定回路15の電流の大きさを導き出す。このように、測定機14は受け取った光の波長を相対的に対比して電流を算出するため、光源11から発せられてから測定機14に達するまでの間における光の強度の劣化を考慮することなく、電流の測定を行うことが可能となる。尚、このような光の強度の劣化が起こる原因としては、電流を測定する際の周囲温度や、経年変化による光ファイバの特性劣化等が挙げられる。
【0039】
このように、光ファイバ12の一端側に光源11を接続し、他端側に測定機14を接続した光ファイバ型電流センサ40を構成しても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0040】
10,30,40 光ファイバ型電流センサ、12,31 光ファイバ、12b 測定用光ファイバ部、15 被測定回路、21 偏光フィルタ(偏光手段)、22 FBG、L1 入射光。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定回路の電流を測定する光ファイバ型電流センサであって、
光ファイバと、
光を直線偏光に変換する偏光手段と
を備え、
前記偏光手段は前記光ファイバと連結して設けられ、
前記光ファイバには、入射光が伝播する方向における前記偏光手段の下流側にFBGが設けられることを特徴とする光ファイバ型電流センサ。
【請求項2】
前記光ファイバは、前記光ファイバから分岐された測定用光ファイバ部を有し、
前記偏光手段及び前記FBGは、前記測定用光ファイバ部に直列に設けられる請求項1に記載の光ファイバ型電流センサ。
【請求項3】
前記被測定回路の電流が発生させる磁界によって前記直線偏光の偏波面を回転させるファラデー効果を利用して、前記被測定回路の電流を測定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光ファイバ型電流センサ。
【請求項4】
前記FBGが反射した光に基づいて、前記被測定回路の電流を測定する請求項1〜3のいずれか一項に記載の光ファイバ型電流センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−32967(P2013−32967A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169125(P2011−169125)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【出願人】(304028346)国立大学法人 香川大学 (285)
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【Fターム(参考)】