説明

光ファイバ心線

【目的】 単心の光ファイバ心線とテープ状のテープ心線の融着接続が簡単にできる光ファイバ心線を提供する。
【構成】 光伝送用の裸光ファイバ2の外周に保護被覆層を有した光ファイバ心線1であって、保護被覆層は内部被覆層4と外径が250μmで内部被覆層4の外周に位置する剥離層5と剥離層5の外周に位置する外部被覆層6からなり、剥離層5と外部被覆層6との接着強度が2〜50gf/cmという構造になっている。
【効果】 剥離層の外側の外部被覆層のみを容易に除去できる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、光伝送用の光ファイバ心線に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の光ファイバ心線としては、図2に示すように裸光ファイバ11の外周にシリコン樹脂からなる外径約400μmの緩衝層12、該緩衝層12の外周に外径約900μmのナイロンからなる保護被覆層13を持つ光ファイバ心線10や、図3に示すように裸光ファイバ11の外周にUV樹脂からなる外径約200μmの緩衝層12、該緩衝層12の外周にUV樹脂からなる外径約250μmの内部被覆層14を有した単心構造の光ファイバ素線を複数本、例えば4本を一列に並べ、これらをUV樹脂によって一括被覆して保護被覆層15を形成したテープ心線20などが知られている。
【0003】前記光ファイバ心線10を用いた光ファイバケーブルの構造としては、前記光ファイバ心線を撚合わせたり、スロットに落とし込んだりする単心集合型光ファイバケーブルが知られている。また、前記テープ心線20を用いた光ファイバケーブルの構造としては、前記テープ心線20をスロットに落とし込むテープ集合型光ファイバケーブルが知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上述したような光ファイバケーブル同士を接続する場合、すなわち光ファイバケーブル内の光ファイバ心線の接続は、以下のようにして行われる。すなわち、単心構造の光ファイバ心線同士の場合は、光ファイバ心線の接続端部の被覆を取り除いて裸ファイバを露出させ、これらを融着接続させる。また、テープ心線同士の場合は、テープ心線の端部の被覆を取り除いて裸ファイバを露出させ、これらを一列に並べて突き合わせて一括して融着する一括融着を行わせている。この一括融着によれば、それぞれを一本ずつ融着接続するよりも、接続に要する作業時間を短縮できるという利点がある。
【0005】しかしながら、単心集合型光ファイバケーブルをテープ集合型光ファイバケーブルとを接続する場合には、単心構造の光ファイバ心線の外径がテープ心線内の光ファイバ素線の外径よりも大きいために、光ファイバ心線をテープ状に並べても、それぞれの裸光ファイバのピッチが合わないので一括融着することができなかった。したがって、テープ心線内の光ファイバ素線を単心に分離し、この分離して裸ファイバとならしめたものを、それぞれ1本ずつ単心構造の光ファイバ心0内の裸光ファイバと接続する必要があり、接続に非常に多くの時間を要していた。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の課題を解決し、単心構造の光ファイバ心線とテープ心線の融着接続が容易に行うことが可能な光ファイバ心線を提供することを目的とする。本発明は上記の課題を解決するために、以下のような手段を有している。
【0007】本発明のうち、請求項1の光ファイバ心線は、光伝送用の裸光ファイバの外周に保護被覆層を有した光ファイバ心線であって、前記保護被覆層は内部被覆層と外径が250μmで前記内部被覆層の外周に位置する剥離層と該剥離層野外周に位置する外部被覆層からなり、前記剥離層と前記外部剥離層との接着強度が2〜50gf/cmであることを特徴とする。
【0008】本発明のうち、請求項2の光ファイバ心線は、前記保護被覆層の外径が400μm以上であることを特徴とする。
【0009】本発明のうち、請求項3の光ファイバ心線は、前記剥離層が紫外線硬化性樹脂にシリコン系の添加物を含有させたものからなることを特徴とする。
【0010】本発明のうち、請求項4の光ファイバ心線は、前記剥離層がウレタンクリレート樹脂にシリコン系の剥離剤を1〜5%含有させたものからなることを特徴とする。
【0011】本発明のうち、請求項5の光ファイバ心線は、前記剥離層が熱硬化性樹脂にシリコン系の添加物を含有させたものからなることを特徴とする。
【0012】本発明のうち、請求項6の光ファイバ心線は、前記剥離層が顔料または染料を含有して着色されていることを特徴とする。
【0013】
【作用】本発明のうち、請求項1ないし請求項5の光ファイバ心線によれば、光伝送用の裸光ファイバの外周に保護被覆層を有した光ファイバ心線であって、前記保護被覆層は内部被覆層と外径が250μmで前記内部被覆層の外周に位置する剥離層と該剥離層の外周に位置する外部被覆層からなり、前記剥離層と前記外部被覆層との接着強度が2〜50gf/cmという構造になっているので、剥離層の外側の外部被覆層のみを容易に除去できる。外部被覆層顔除去された部分は、外径が250μmの単心線となる。したがって、この光ファイバ心線をテープ心線と接続する場合には、外部被覆層を除去して、外径250μmとした単心線を複数本並べてテープ状にすることにより、テープ心線との一括融着接続を可能にし、接続時間を短縮することができる。
【0014】本発明のうち、請求項2の光ファイバ心線によれば、前記保護被覆層の外径が400μm以上であるので、光ファイバ心線を取り扱う際のハンドリング性がよく、また当該光ファイバ心線に触れてもロス増を生じない。
【0015】本発明のうち、請求項2または請求項5の光ファイバ心線によれば、前記剥離層が紫外線硬化樹脂または熱硬化性樹脂にシリコン系の添加物を含有させたものからなるので、外部被覆層の除去が容易である。
【0016】本発明のうち、請求項4の光ファイバ心線によれば、前記剥離層がウレタンアクリレート樹脂にシリコン系の剥離剤を1〜5%含有させたものからなるので、外部被覆層の除去がより容易である。
【0017】本発明のうち、請求項6の光ファイバ心線によれば、前記剥離層が顔料または染料を含有して着色されているので、剥離層の部分が容易に識別される。
【0018】
【実施例】以下に本発明を実施例により詳細に説明する。図1は本発明による光ファイバ心線の一実施例である。図1において、符号1は光ファイバ心線である。光ファイバ心線1は裸光ファイバ2の外周に緩衝層3、緩衝層3の外周に内部被覆層4、内部被覆層4の外周に剥離層5、剥離層5の外周に外部被覆層6が設けられている。
【0019】緩衝層3はヤング率10kgf/mm2 以下の低ヤング率の熱硬化性樹脂や紫外線硬化性の樹脂等からなっている。内部被覆層4はヤング率10kgf/mm2 以上の高ヤング率の熱硬化性樹脂や紫外線硬化性の樹脂等からなっている。剥離層5としては熱硬化性樹脂や紫外線硬化性の樹脂にシリコン系の添加剤を加えたもの等からなっている。
【0020】また上記剥離層5は識別用の着色層と兼用させるために、熱硬化性樹脂や紫外線硬化性の樹脂にシリコン系の添加剤を加えたものに顔料、染料を含有させると良い。外部被覆層6はヤング率10kgf/mm2 以上の高ヤング率の熱硬化性樹脂や紫外線硬化性の樹脂、熱可塑性樹脂等からなる。
【0021】なお、剥離層5の外径は通常のテープ心線の光ファイバ素線の外径寸法である250μmと同一となっている。また、上記外部被覆層6は、光ファイバ心線1を取り扱う際のハンドリング性や当該光ファイバ心線1に触れてもロス増を生じないことを考慮にいれると外径400μm以上が望ましい。
【0022】以下に本発明の光ファイバ心線1の具体例について説明する。裸光ファイバ2にとして外径125μmの石英ガラスを用い、この裸光ファイバ2の外周に緩衝層3としてヤング率0.2kgf/mmの紫外線硬化性のウレタンアクリレート樹脂を被覆して外径200μmとした。さらに、この緩衝層3の外周に内部被覆層4としてヤング率70kgf/mm2 のウレタンアクリレート樹脂を被覆して外径240μmとした。
【0023】その後、内部被覆層4の外周に剥離層5として、ウレタンアクリレート樹脂にシリコン系の剥離剤を1〜5%の範囲で量を変化させて添加したものを厚さ5μmとなるように被覆し、剥離層5の外周に外部被覆層6としてヤング率60kgf/mm2 のウレタンアクリレート樹脂を被覆して外径400μmとした。
【0024】また、外部被覆層6のみを除去できるようにするためには、剥離層5と外部被覆層6の接着強度が重要な要素となる。このため剥離層5と外部被覆層6の接着強度と、光ファイバ心線1から外部被覆層6を引き抜くときの引き抜き力との関係を調べた。結果を表1と図4に示す。
【0025】接着強度の測定は、以下により測定した。先ず、ガラス板に剥離層4用の樹脂を塗布、硬化させ、次いでその上に外部被覆層6用の樹脂を塗布、硬化させる。このようにして作成したサンプルに2cm×10cmの切れ目をいれ、端から外部被覆層6をはがし、その端を万能引っ張り試験機により引っ張り、得られた値を2分の1にして両者の接着強度gf/cmを求める。また、外部被覆層6の引き抜き力の測定は市販の皮剥き治具(古河電工製、FITEL、S−212)の刃の間隔を0.26mmにしたものを用いて、光ファイバ心線1の端末から3cmの長さの外部被覆層6を引き抜くときの力を測定した。
【0026】図4の結果から、外部被覆層6の除去を簡単に行うには接着強度を50gf/cm以下にすることが望ましいといえる。
【0027】
【表1】


【0028】ところで、剥離層5と外部被覆層6の接着強度が小さすぎると、ヒートサイクル等で外部被覆層6に収縮力が作用した場合に、外部被覆層6の内側の裸光ファイバ2と内部被覆層4および剥離層5(以下光ファイバ素線という)が突き出すという現象が生じ、ロス増や断線の原因になることがある。
【0029】この突き出し量と接着強度との関係を調べた結果を表2、図5に示す。突き出し量の測定は、1mの光ファイバ心線1に−30℃〜+60℃のヒートサイクルを10回行いその後に外部被覆層6の端部から突き出した光ファイバ素線の量を測定した。
【0030】
【表2】


【0031】この結果から光ファイバ素線の突き出しを押さえるためには、接着強度を2gf/cm以上にすることが望ましいといえる。次に、実施例の光ファイバ心線1を4本用いた場合の、図3に示す4心のテープ心線20との融着接続の時間と、図2に示す従来の光ファイバ心線10を4本用いた場合の、図3に示す4心のテープ心線20との融着接続時間の比較を行った。なお、実施例の光ファイバ心線1を用いた場合は外部被覆層6を除去したもの4本をテープ状に整列して並べて、4心のテープ心線20との一括融着接続を行った。
【0032】従来の光ファイバ心線10を用いた場合は4心のテープ心線20を単心の光ファイバ素線に分離し、1本づつ4回、融着接続を行った。表3に結果を示す。
【0033】
【表3】


以上の結果から解るように本発明による光ファイバ心線を用いると、テープ心線との融着接続時間を大幅に短縮できる。
【0034】
【発明の効果】以上述べたように、本発明のうち、請求項1ないし請求項5の光ファイバ心線によれば、光伝送用の裸光ファイバの外周に保護被覆層を有した光ファイバ心線であって、前記保護被覆層は内部被覆層と外径が250μmで前記内部被覆層の外周に位置する剥離層と該剥離層の外周に位置する外部被覆層からなり、前記剥離層と前記外部被覆層との接着強度が2〜50gf/cmという構造になっているので、剥離層の外側の外部被覆層のみを容易に除去できる。外部被覆層顔除去された部分は、外径が250μmの単心線となる。この単心線を複数本並べてテープ状にすることにより、テープ心線との一括融着接続を可能にし、接続時間を短縮することができる。
【0035】本発明のうち、請求項2の光ファイバ心線によれば、前記保護被覆層の外径が400μm以上であるので、光ファイバ心線を取り扱う際のハンドリング性がよく、また当該光ファイバ心線に触れてもロス増を生じない。
【0036】本発明のうち、請求項3または請求項5の光ファイバ心線によれば、前記剥離層が紫外線硬化性樹脂または熱硬化性樹脂にシリコン系の添加物を含有させたものからなるので、外部被覆層の除去が容易である。
【0037】本発明のうち、請求項4の光ファイバ心線によれば、前記剥離層がウレタンアクリレート樹脂にシリコン系の剥離剤を1〜5%含有させたものからなるので、外部被覆層の除去がより容易である。
【0038】本発明のうち、請求項6の光ファイバ心線によれば、前記剥離層が顔料または染料を含有して着色されているので、剥離層の部分が容易に識別される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光ファイバ心線の一実施例を示す断面図である。
【図2】従来の光ファイバ心線の一例を示す断面図である。
【図3】従来のテープ心線の一例を示す断面図である。
【図4】接着強度と引き抜き力の関係図である。
【図5】接着強度と突き出し量の関係図である。
【符号の説明】
1 光ファイバ心線
2 裸光ファイバ
3 緩衝層
4 内部被覆層
5 剥離層
6 外部被覆層

【特許請求の範囲】
【請求項1】 光伝送用の裸光ファイバの外周に保護被覆層を有した光ファイバ心線であって、前記保護被覆層は内部被覆層と外径が250μmで前記内部被覆層の外周に位置する剥離層と該剥離層の外周に位置する外部被覆層からなり、前記剥離層と前記外部被覆層との接着強度が2〜50gf/cmであることを特徴とする光ファイバ心線。
【請求項2】 前記保護被覆層の外径は、400μm以上であることを特徴とする請求項1記載の光ファイバ心線。
【請求項3】 前記剥離層は、紫外線硬化性樹脂にシリコン系の添加物を含有させたものからなることを特徴とする請求項1および請求項2記載の光ファイバ心線。
【請求項4】 前記剥離層は、ウレタンアクリレート樹脂にシリコン系の剥離剤を1〜5%含有させたものからなることを特徴とする請求項1ないし請求項3記載の光ファイバ心線。
【請求項5】 前記剥離層は、熱硬化性樹脂にシリコン系の添加物を含有させたものからなることを特徴とする請求項1および請求項2記載の光ファイバ心線。
【請求項6】 前記剥離層は、顔料又は染料を含有して着色されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5記載の光ファイバ心線。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開平8−122591
【公開日】平成8年(1996)5月17日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−257241
【出願日】平成6年(1994)10月24日
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)