説明

光ファイバ接続用クロージャ

【課題】単純な構造で、心線接続トレイに対する作業空間を確保することができる光ファイバ接続用クロージャを提供する。
【解決手段】光ファイバ接続用クロージャ1は、複数枚の心線接続トレイ10からなる心線接続トレイ群9を備えている。心線接続トレイ10は、局側の幹線主ケーブル2に内蔵された光ファイバ心線3と加入者側の分岐ケーブル4に内蔵された光ファイバ心線5との接続部分を収容するためのトレイである。心線接続トレイ群9の上側には、心線通過トレイ33が配置されている。心線通過トレイ33は、幹線主ケーブル2の中間部分の外被を除去して露出された複数本の光ファイバ心線3及びそれを単心分離させた光ファイバ心線30を収容するためのトレイである。心線通過トレイ33は、上下方向に回動可能に取り付けられており、心線接続トレイ群9に対して上方に傾くことが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば局側光ケーブルと加入者側光ケーブルとを接続する光ファイバ接続用クロージャに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の光ファイバ接続用クロージャとしては、例えば特許文献1に記載されているものが知られている。特許文献1に記載の光ファイバ接続用クロージャは、積層状態に配置され、光ケーブルの主心線の接続部及び心線余長を収納する複数の成端トレイと、この成端トレイの下部に配置され、スプリッタモジュールを収納するスプリッタトレイと、成端トレイの上部に配置され、光ケーブルの主心線を収納するセンタートレイとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−121603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術においては、以下の問題点が存在する。即ち、積層状態の複数の成端トレイ(心線接続トレイ)の上部にはセンタートレイが配置されているため、心線接続トレイにおいて光ファイバの接続作業を行う際に、センタートレイが邪魔になる。従って、心線接続トレイに対する作業空間を確保するために、複数の心線接続トレイを一旦前に引き出す必要がある。この場合には、心線接続トレイを前後に移動させる機構が必要となるため、クロージャの構造が全体的に複雑化し、コストアップにつながる。また、心線接続トレイの前後移動により光ファイバに引っ張りや急激な曲げが加わることで、光ファイバの伝送特性に影響を与える可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、単純な構造で、心線接続トレイに対する作業空間を確保することができる光ファイバ接続用クロージャを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1光ケーブルに内蔵された第1光ファイバ心線と第2光ケーブルに内蔵された第2光ファイバ心線とを接続する光ファイバ接続用クロージャにおいて、第1光ファイバ心線と第2光ファイバ心線との接続部分を収容するための心線接続トレイと、心線接続トレイの上側に配置され、第1光ケーブルの中間部分の外被を除去して露出された第1光ファイバ心線を収容するための心線通過トレイとを備え、心線通過トレイは、心線接続トレイに対して上方に傾くように回動可能に設けられていることを特徴とするものである。
【0007】
このような本発明の光ファイバ接続用クロージャにおいては、第1光ケーブルの中間部分の外被を除去して露出された第1光ファイバ心線を切断し、その第1光ファイバ心線と第2光ケーブルの第2光ファイバ心線とを接続する。そして、第1光ファイバ心線と第2光ファイバ心線との接続部分を心線接続トレイに収容すると共に、切断していない第1光ファイバ心線を心線通過トレイに収容する。ここで、心線通過トレイを心線接続トレイに対して上方に傾けた状態では、心線接続トレイの上側に作業空間が形成されるようになる。従って、第1光ファイバ心線と第2光ファイバ心線とを接続し、その接続部分を心線接続トレイに収容する作業を行う際には、心線通過トレイを心線接続トレイに対して上方に傾けるだけで良い。このため、特に心線接続トレイを前方に引き出すための機構を設けなくて済む。これにより、単純な構造で、心線接続トレイに対する作業空間を確保することができる。
【0008】
好ましくは、心線通過トレイの下部には、第1光ファイバ心線と第2光ファイバ心線とを接続するときに切断された第1光ファイバ心線同士の再接続部を収容するための下部延ばしトレイが設けられており、下部延ばしトレイは、心線通過トレイに対して開閉可能に取り付けられている。第1光ファイバ心線と第2光ファイバ心線との接続が不要となった場合には、両者の接続を外し、第1光ファイバ心線と第2光ファイバ心線とを接続するときに切断された第1光ファイバ心線同士を再接続し、その再接続部分を下部延ばしトレイに収容する。このような下部延ばしトレイを心線通過トレイに対して開閉可能に取り付けることにより、クロージャ内に大きなスペースをとったり第1光ファイバ心線の配線を煩雑にすること無く、第1光ファイバ心線同士の再接続(下部延ばし)処理に対応することができる。
【0009】
また、好ましくは、心線接続トレイの側方に配置され、心線通過トレイと心線接続トレイとの間に存在する第1光ファイバ心線の余長を収容するための余長収容部とを更に備え、余長収容部は、ベース板と、ベース板に開閉自在に設けられ、第1光ファイバ心線をベース板に対して押さえる押さえ板とを有する。このような余長収容部を設けることにより、心線通過トレイと心線接続トレイとの間に存在する第1光ファイバ心線を余長処理しながら保護することができる。
【0010】
このとき、好ましくは、ベース板は、心線接続トレイの左右両側に設けられ、押さえ板は、ベース板に対して着脱可能に取り付けられている。余長収容部は、光ファイバ接続用クロージャの用途上、クロージャの上流側にのみあれば十分である。従って、クロージャの左側が上流側である場合は、押さえ板を左側のベース板に取り付け、クロージャの右側が上流側である場合は、押さえ板を右側のベース板に取り付けるようにする。このようにクロージャの上流側の位置に応じて押さえ板を付け替えることにより、押さえ板を心線接続トレイの左右両側に設けなくて済む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、単純な構造で、心線接続トレイに対する作業空間を確保することができる。これにより、心線接続トレイを前方に引き出すための機構が不要となるため、光ファイバ心線に引っ張りや急激な曲げが加わることが抑制され、光ファイバ心線の伝送特性に影響を与えることが防止されると共に、低コスト化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係わる光ファイバ接続用クロージャの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示した光ファイバ接続用クロージャにおける主要なトレイを除いた部分を示す斜視図である。
【図3】図1に示した心線接続トレイ群の斜視図である。
【図4】図3に示した心線接続トレイにおける光ファイバ心線の配線形態を示す平面図である。
【図5】図1に示した心線通過トレイの斜視図である。
【図6】図1に示した光ファイバ接続用クロージャにおいて心線通過トレイが上方に傾斜した状態を示す斜視図である。
【図7】図1に示した光ファイバ接続用クロージャにおいて下部延ばしトレイが心線通過トレイに対して開いた状態を示す斜視図である。
【図8】図7に示した下部延ばしトレイを心線通過トレイと共に示す斜視図である。
【図9】図1に示した余長収容ポケットの開閉状態を示す斜視図である。
【図10】図1に示した光ファイバ接続用クロージャにおいて主要なトレイがトレイ押さえ板によりフレーム体に対して固定された状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係わる光ファイバ接続用クロージャの好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明に係わる光ファイバ接続用クロージャの一実施形態を示す斜視図である。同図において、本実施形態の光ファイバ接続用クロージャ(以下、単にクロージャ)1は、架空において局側の幹線主ケーブル2に内蔵された光ファイバ心線3と加入者側の分岐ケーブル4に内蔵された光ファイバ心線5とを接続する機器であり、PDS(Passive Double Star)回線システムにおいて使用される。
【0015】
クロージャ1は、幹線主ケーブル2及び分岐ケーブル4が導入される筐体(図示せず)に固定されるフレーム体6を備えている。図2に示すように、フレーム体6の中央部には、トレイ固定ベース板7が取り付けられている。また、フレーム体6におけるトレイ固定ベース板7の左右両側には、トレイ固定ベース板8がそれぞれ取り付けられている。
【0016】
トレイ固定ベース板7には、複数(ここでは4つ)の心線接続トレイ群9が固定されている。心線接続トレイ群9は、図3に示すように、互いに開閉可能な複数枚(ここでは4枚)の心線接続トレイ10からなっている。
【0017】
心線接続トレイ10は、長手方向に一列に配置された心線収容部11〜13を有している。心線収容部12は、心線収容部11,13の間に設けられている。
【0018】
心線収容部11の奥側(背面側)端部には、光ファイバ心線を導入するための心線導入部14が設けられている。心線収容部11における心線収容部12に隣接した部位には、異なる光ファイバ心線同士の融着接続部S1(図4参照)を位置決めして装着するための接続部装着部15が設けられている。接続部装着部15は、心線接続トレイ10の奥行き方向に延びるように設けられている。心線収容部11には、光ファイバ心線の余長を巻いて収容するときに光ファイバ心線をガイドするための余長ガイド部16が設けられている。また、心線収容部11には、光ファイバ心線を押さえるための複数の押さえ板17が設けられている。
【0019】
心線収容部13の奥側端部には、光ファイバ心線を導入するための心線導入部18が設けられている。心線収容部13における心線収容部12に隣接した部位には、異なる光ファイバ心線同士の融着接続部S2(図4参照)を位置決めして装着するための接続部装着部19が設けられている。接続部装着部19は、心線接続トレイ10の奥行き方向に延びるように設けられている。心線収容部13には、光ファイバ心線の余長を巻いて収容するときに光ファイバ心線をガイドするための余長ガイド部20が設けられている。また、心線収容部13には、光ファイバ心線を押さえるための複数の押さえ板21が設けられている。
【0020】
心線収容部11,12の境界部分の奥側端部には、心線収容部11,12間で光ファイバ心線を導くための心線ガイド部22が設けられている。心線収容部12,13の境界部分の奥側端部には、心線収容部12,13間で光ファイバ心線を導くための心線ガイド部23が設けられている。
【0021】
心線収容部12には、光スプリッタ24(図4参照)を位置決めして装着するためのスプリッタ装着部25が設けられている。スプリッタ装着部25は、心線収容部12の奥側端部の近傍に配置されている。心線収容部12には、光ファイバ心線の余長を巻いて収容するときに光ファイバ心線をガイドするための余長ガイド部26が設けられている。また、心線収容部12には、光ファイバ心線を押さえるための複数の押さえ板27が設けられている。
【0022】
光スプリッタ24は、図4に示すように、1つの光信号を8つの光信号に分岐させる(1×8)型の光分岐器であり、1本の入力光ファイバ心線28と複数本の出力光ファイバ心線29とを有している。入力光ファイバ心線28は、例えば線径が0.25mmの単心光ファイバ心線である。入力光ファイバ心線28の許容曲げ半径Rは、30mmまたは15mmである。出力光ファイバ心線29は、例えば4心ファイバテープ心線で形成されている。なお、出力光ファイバ心線29は、補強された単心光ファイバ心線であっても良く、この場合の許容曲げ半径Rは、30mmまたは15mmである。
【0023】
心線収容部11〜13には、複数種類の光ファイバ心線がファイバ上流側(幹線主ケーブル2側)からファイバ下流側(分岐ケーブル4側)に向かって順番に渡るように収容される。
【0024】
具体的には、心線収容部11には、幹線主ケーブル2から延び出た1本の光ファイバ心線30と光スプリッタ24の入力光ファイバ心線28との接続部分が収容される。光ファイバ心線30は、上記の光ファイバ心線3(ここでは4心光ファイバテープ心線)を単心分離させて切断した単心光ファイバ心線である。光ファイバ心線30の線径は0.25mmであり、光ファイバ心線30の許容曲げ半径Rは30mmである。従って、心線収容部11には、心線種が同じである単心の光ファイバ心線28,30が収容されることになる。
【0025】
光ファイバ心線30は、心線導入部14から心線収容部11に導入される。入力光ファイバ心線28は、心線収容部12から心線ガイド部22を通って心線収容部11に導入され、更に余長ガイド部16に沿って巻回される。
【0026】
光ファイバ心線30と入力光ファイバ心線28との融着接続部S1は、接続部装着部15に装着される。接続部装着部15は、心線収容部11における心線収容部12に隣接した部位に心線接続トレイ10の奥行き方向に延びるように設けられているので、心線導入部14から接続部装着部15までの光ファイバ心線30の長さを必要最小限に短くすることができる。
【0027】
心線収容部12には、光スプリッタ24の入力光ファイバ心線28及び出力光ファイバ心線29が光スプリッタ24と共に収容される。光スプリッタ24は、スプリッタ装着部25に装着される。スプリッタ装着部25は心線収容部12の奥側端部付近に設けられているので、心線導入部22からスプリッタ装着部25までの入力光ファイバ心線28の長さが十分短くなる。出力光ファイバ心線29は、余長ガイド部26に沿って巻回される。このとき、入力光ファイバ心線28は余長ガイド部26に沿って1周以上巻かれていないので、心線収容部12において心線種が異なる光ファイバ心線28,29の混在が抑えられ、光ファイバ心線28,29が取り出しにくくなることは無い。
【0028】
心線収容部13には、複数の出力光ファイバ心線29と複数の光ファイバ心線5との接続部分が収容される。光ファイバ心線5は、出力光ファイバ心線29と同様に4心ファイバテープ心線で形成されていても良いし、線径が0.5mmまたは0.25mmの単心光ファイバ心線であっても良い。
【0029】
出力光ファイバ心線29と光ファイバ心線5との融着接続部S2は、接続部装着部19に装着される。出力光ファイバ心線29及び光ファイバ心線5は、余長ガイド部20に沿って巻回される。ただし、出力光ファイバ心線29及び光ファイバ心線5の何れか一方は、余長ガイド部20に沿って1周以上巻かれることは無い。このため、心線収容部13において心線種が異なる光ファイバ心線5,29の混在が抑えられ、光ファイバ心線5,29が取り出しにくくなることは無い。
【0030】
図1に戻り、心線接続トレイ群9の下側には、補助心線接続トレイ31,32が配置されている。補助心線接続トレイ31,32は、図2に示すように、トレイ固定ベース板7に上下方向に回動可能に取り付けられている。
【0031】
心線接続トレイ群9の上側には、心線通過トレイ33が配置されている。心線通過トレイ33は、幹線主ケーブル2の中間部分の外被を除去して露出された複数本の光ファイバ心線3及びそれを単心分離させた光ファイバ心線30を収容するためのトレイである。単心分離された複数本の光ファイバ心線30のうち一部の光ファイバ心線30は、切断されて上記の光スプリッタ24と接続され、残りの光ファイバ心線30は、心線通過トレイ33にそのまま通過するように収容される。
【0032】
図5に示すように、心線通過トレイ33の両端部には、光ファイバ心線3(光ファイバ心線30を含む)を導入するための心線導入部34がそれぞれ設けられている。また、心線通過トレイ33には、光ファイバ心線3を押さえるための複数の押さえ板35が設けられている。
【0033】
心線通過トレイ33は、各トレイ固定ベース板8(図2参照)に上下方向に回動可能に取り付けられている。これにより、心線通過トレイ33は、図6に示すように、心線接続トレイ群9に対して上方に傾くことが可能となる。このとき、心線通過トレイ33は、回転軸部のロック機構等の保持手段によって、心線接続トレイ群9に対して上方に30度程度傾いた状態で保持可能となるように構成されている。各トレイ固定ベース板8には、通常状態において心線通過トレイ33を載せるための支持アーム36が設けられている。
【0034】
心線通過トレイ33を上方に傾けたときは、心線通過トレイ33の心線導入部34が幹線主ケーブル2に近づくようになるため、光ファイバ心線3の引きつれが発生せず、光ファイバ心線3に与える影響は少ない。
【0035】
心線通過トレイ33の下部には、図7及び図8に示すように、下部延ばしトレイ37が心線通過トレイ33に対して奥側(背面側)の回転軸を中心として開閉可能に設けられている。下部延ばしとは、例えば加入者が光通信の契約を解除したために光スプリッタ24を撤去する場合に、光スプリッタ24の入力光ファイバ心線28と光ファイバ心線30との接続を外し、その光ファイバ心線30を元の光ファイバ心線30と再度接続する、つまり切断された光ファイバ心線30同士を再度接続することである。下部延ばしトレイ37は、下部延ばしを実施した光ファイバ心線30同士の再接続部を収容するためのトレイである。
【0036】
下部延ばしトレイ37の両端部には、光ファイバ心線30を導入するための心線導入部38がそれぞれ設けられている。下部延ばしトレイ37には、切断された光ファイバ心線30同士の融着接続部を位置決めして装着する接続部装着部39が設けられている。また、下部延ばしトレイ37には、光ファイバ心線30を押さえるための複数の押さえ板40が設けられている。
【0037】
心線通過トレイ33の手前側(前面側)の先端には、下部延ばしトレイ37が心線通過トレイ33に対して閉じられたときに、心線通過トレイ33と下部延ばしトレイ37とを係止するための2つのフック部41が設けられ、下部延ばしトレイ37の先端には、各フック部41と係合する2つの突部42が設けられている。各フック部41を各突部42に引っ掛けることで、下部延ばしトレイ37が心線通過トレイ33に対して閉じられた状態に保持される。これにより、心線通過トレイ33と下部延ばしトレイ37とは、それぞれ別個に、あるいは一体となって回動、開閉可能となる。
【0038】
心線接続トレイ群9の左右いずれか一方の側には、心線接続トレイ10と心線通過トレイ33との間に存在する光ファイバ心線30の余長を収容する余長収容ポケット43が設けられている。余長収容ポケット43は、クロージャ1の上流側に対応する側に設けられている。ここでは、クロージャ1の左側が上流側であるとして、余長収容ポケット43は心線接続トレイ群9の左側に設けられている。
【0039】
余長収容ポケット43は、図9に示すように、トレイ固定ベース板8の一部を形成するポケットベース板44と、このポケットベース板44に着脱可能に取り付けられ、心線接続トレイ10と心線通過トレイ33との間に存在する光ファイバ心線30をポケットベース板44に対して押さえる押さえ板45とからなっている。
【0040】
ポケットベース板44には、手前側に延びる係止突起部46が突設されている。押さえ板45には、係止突起部46と係合する2つの係止窓穴47が左右に形成されている。押さえ板45の下部には、押さえ板45をポケットベース板44に対して上下方向に開閉させるためのヒンジ部45aが設けられている。2つの係止窓穴47の何れか一方を係止突起部46の先端部に引っ掛けることで押さえ板45をポケットベース板44に対して閉じたときは、余長収容ポケット43の上方に向かって空間が大きくなるように押さえ板45がポケットベース板44に対して傾斜した状態となる。このため、心線通過トレイ33から導出された光ファイバ心線30を無理なく配線して心線接続トレイ10に収容することが可能となる。
【0041】
また、押さえ板45をポケットベース板44に対して着脱可能な構造とすることにより、クロージャ1の上流側の位置に応じて押さえ板45を付け替えれば良いため、押さえ板45としては1枚だけあれば足り、部品点数の削減に寄与することができる。
【0042】
補助心線接続トレイ32には、図10に示すように、心線接続トレイ群9、補助心線接続トレイ31,32、心線通過トレイ33及び下部延ばしトレイ37をフレーム体6に対して動かないように固定するためのトレイ押さえ板48が取り付けられている。
【0043】
以上のように本実施形態のクロージャ1にあっては、心線通過トレイ33をトレイ固定ベース板7に上下方向に回動可能に取り付けたので、心線通過トレイ33を下部延ばしトレイ37と共に心線接続トレイ群9に対して上方に傾けることで、心線接続トレイ群9の上方に作業空間が形成されるようになる。このため、心線接続トレイ10に対する作業空間を確保するために心線接続トレイ群9を手前側に引き出さなくて済む。従って、心線接続トレイ群9を移動させるための機構が不要となるため、クロージャ1の構造が簡素化され、低コスト化を図ることができる。また、心線接続トレイ群9の移動によって光ファイバ心線に引っ張りや急激な曲げが加わることが抑制されるため、光ファイバ心線の伝送特性に悪影響を及ぼすことを防止できる。
【0044】
また、心線接続トレイ群9の一側に、心線接続トレイ10と心線通過トレイ33との間に存在する光ファイバ心線30の余長を収容する余長収容ポケット43を設けたので、光ファイバ心線30を保護することができる。
【0045】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、心線接続トレイ10が心線収容部11〜13を有しているが、心線接続トレイにおける心線収容部の数としては、特に3つには限られず、2つ以下でも良いし、4つ以上でも良い。
【0046】
また、上記実施形態では、心線接続トレイ群9の一側のみに余長収容ポケット43を設けたが、余長収容ポケット43を心線接続トレイ群9の左右両側に設けても良い。この場合には、作業者が押さえ板45をいちいち付け替えなくて済む。
【0047】
さらに、上記実施形態のクロージャ1は、幹線主ケーブル2の光ファイバ心線3と分岐ケーブル4の光ファイバ心線5との間に光スプリッタ24を介在させる接続形態であるが、本発明は、幹線主ケーブル2の光ファイバ心線3と分岐ケーブル4の光ファイバ心線5とを接続するものであれば適用可能である。
【符号の説明】
【0048】
1…光ファイバ接続用クロージャ、2…幹線主ケーブル(第1光ケーブル)、3…光ファイバ心線(第1光ファイバ心線)、4…分岐ケーブル(第2光ケーブル)、5…光ファイバ心線(第2光ファイバ心線)、10…心線接続トレイ、11〜13…心線収容部、30…光ファイバ心線(第1光ファイバ心線)、33…心線通過トレイ、37…下部延ばしトレイ、43…余長収容ポケット(余長収容部)、44…ポケットベース板、45…押さえ板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1光ケーブルに内蔵された第1光ファイバ心線と第2光ケーブルに内蔵された第2光ファイバ心線とを接続する光ファイバ接続用クロージャにおいて、
前記第1光ファイバ心線と前記第2光ファイバ心線との接続部分を収容するための心線接続トレイと、
前記心線接続トレイの上側に配置され、前記第1光ケーブルの中間部分の外被を除去して露出された前記第1光ファイバ心線を収容するための心線通過トレイとを備え、
前記心線通過トレイは、前記心線接続トレイに対して上方に傾くように回動可能に設けられていることを特徴とする光ファイバ接続用クロージャ。
【請求項2】
前記心線通過トレイの下部には、前記第1光ファイバ心線と前記第2光ファイバ心線とを接続するときに切断された前記第1光ファイバ心線同士の再接続部を収容するための下部延ばしトレイが設けられており、
前記下部延ばしトレイは、前記心線通過トレイに対して開閉可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1記載の光ファイバ接続用クロージャ。
【請求項3】
前記心線接続トレイの側方に配置され、前記心線通過トレイと前記心線接続トレイとの間に存在する前記第1光ファイバ心線の余長を収容するための余長収容部とを更に備え、
前記余長収容部は、ベース板と、前記ベース板に開閉自在に設けられ、前記第1光ファイバ心線を前記ベース板に対して押さえる押さえ板とを有することを特徴とする請求項1または2記載の光ファイバ接続用クロージャ。
【請求項4】
前記ベース板は、前記心線接続トレイの左右両側に設けられ、
前記押さえ板は、前記ベース板に対して着脱可能に取り付けられていることを特徴とする請求項3記載の光ファイバ接続用クロージャ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−113925(P2013−113925A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258119(P2011−258119)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000231936)日本通信電材株式会社 (98)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(595083051)株式会社ジャパンリーコム (40)
【Fターム(参考)】