説明

光ファイバ敷設装置

チューブ内に光ファイバユニットを敷設するための送り込みヘッドであって、前記チューブ内に前記光ファイバユニットを押進するための駆動手段を具備し、この駆動手段は、複数の駆動面を有し、これら駆動面のうちの1つ又は複数の駆動面が、他の駆動面に向かって所定の力で弾性的に付勢され、使用の際、前記光ファイバユニットは、前記複数の駆動面の間を移動する、送り込みヘッド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送り込み(”blowing”)技術により既設の光ファイバチューブ内に敷設される電気通信ケーブル、特に光ファイバの敷設のための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常は空気である流動媒体の高速流により与えられる粘性抵抗を利用して、光ファイバ伝送線路を光ファイバチューブ、即ちダクト内に敷設するために使用される方法及び装置が、EP108590及び他の刊行物から知られている。光ファイバユニットを光ファイバチューブ、即ちダクト内に敷設するために、送り込みヘッドが使用される。(本明細書において、記載内容から認められるように、ファイバ及びファイバユニットという表現は、ファイバ部材、ファイバの束及びファイバケーブルを夫々含み、またその逆もあると考えられる。)
一般的に、送り込みヘッドは、加圧空気が内部に圧送されるチャンバを有する。この空気は、ファイバチューブの口に流れ込んで、送り込みヘッドと接続されたチューブを通るように方向付けられる。ファイバユニットは、代表的には1対のモータ駆動ローラ、即ちホイール間の押圧力によって、チューブ内に送られる。(駆動ホイールは、代表的には、所定の厚みを有するディスクからなり、このディスクは、ディスクの厚みにより規定された表面であるリムを有する。本明細書において、リムという用語は、記載内容から認められるように、この表面の全体又は一部を参照することができる。)十分な長さのファイバユニットがチューブ内に押圧されると、粘性抵抗の効果を与える加圧空気が、ファイバの表面に作用し、チューブ内のファイバを前進させるという課題の少なくとも一部を引き継ぐ。
【0003】
使用の際、従来技術の送り込みヘッドは、いくつかの問題を抱えている。このような1つの問題は、敷設中、ファイバユニットが座屈する可能性があることである。EP253636に記載されているように、光ファイバは、可撓性があり、かつ光ファイバが装着されるファイバチューブよりも断面積が小さい必要がある。使用の際、前進するファイバユニットの一部が、ファイバとチューブの内部との間に生じる過度の摩擦により、チューブ内で止まってしまう可能性がある。それにもかかわらず送り込みヘッドがファイバユニットを押進し続けると、ファイバの座屈が進んでしまう。座屈したファイバユニットは、敷設されたとき、ファイバの性能に悪影響を及ぼす、又はファイバに物理的に損傷を与える可能性さえもある。少なくとも、座屈は敷設プロセスを遅らせるであろう。
【0004】
本出願人により、本出願より前の出願であるWO2006103419で提案された1つの解決策には、ファイバの座屈を感知するように構成された装置が記載されており、低慣性システムが、座屈が生じる前に、生じる寸前の(impending)座屈を検出することができる。駆動ホイールは、押圧力が減少し又はなくなり、かくして座屈が生じるのをかなり減少させるように、駆動ホイールを遅くする又は止めることにより、生じる寸前のファイバユニットの座屈の検出に応答性を有するように構成されている。送り込みヘッドシステムの応答性は、ファイバユニットが、駆動ホイールと、及び駆動ホイールの間で、比較的軽く係合されるように、駆動ホイール間の間隔を入念に決定することにより得られる。光ファイバユニット及びファイバケーブルは、代表的には非常に小さい直径(例えばファイバユニットでは約1mm)であり、ホイールのリムの間隔は、これらが互いに軽く接触するのみ、又は実際には接触しないが接触しそうな程度であるように構成されている。さらに、モータ駆動ホイールにより電流の出力の上限が定められることによって、送り込みヘッドは、駆動ホイールを通るファイバユニットの進行を遅らせた又は止めたとき、ファイバユニットに生じる寸前の座屈を感知するように設定されている。
【0005】
ファイバユニットの直径が小さいために、ファイバユニットを扱う際、システムの許容度がほとんどない。従って、送り込みヘッドの構成要素は、非常に正確に較正され、アライメントされなければならない。システムが、送り込みヘッド内のファイバユニットの動きの変化に応答するように、できるだけ感知性を有することを確実にするためには、特にそうである。使用の際、駆動ホイールが、生じる寸前の座屈を検出可能であるように、夫々の駆動ホイールのリム間の間隔、即ちスペースは、ファイバユニットが、滑ることなく、感知性を失うことなく、この間隔、即ちスペース内に押圧されるように、最適である、即ちファイバユニットの外面と十分に係合することが好ましい。しかし、このような駆動ホイール構成体を得ることは難しいことが判ってきた。
【0006】
ホイールのリムの最適な間隔は、最初の位置で確かめることが難しく、また、関係する所定の小さな寸法を較正することも難しい。また、ホイールのリムの間隔も、使用に伴い時間が経過すると変化する可能性があり、頻繁にかつ正確に再アライメントされる必要がある。かくして得られた構成体は、1つのみ又はかなり限定された範囲のファイバユニットの直径サイズでの使用に最適又は適している。
【発明の概要】
【0007】
本出願人は、低慣性送り込みヘッドの環境において、送り込みヘッドの正確な構成のための必要性と関係する上述の問題を克服するための解決策を与えるように、上述の問題に対処する送り込みヘッドを発明した。この送り込みヘッドでは、生じる寸前の座屈が、上限が定められた電流の出力を有するモータの採用により、減少される又は避けられる。
【0008】
本発明の第1の態様に係われば、チューブ内に光ファイバユニットを敷設するための送り込みヘッドであって、前記チューブ内に前記光ファイバユニットを押進するための駆動手段を具備し、この駆動手段は、複数の駆動面を有し、これら駆動面のうちの1つ又は複数の駆動面が、他の駆動面に向かって所定の力で弾性的に付勢され、使用の際、前記光ファイバユニットは、前記複数の駆動面の間を移動する送り込みヘッドが提供される。
【0009】
本発明に係わる送り込みヘッドは、様々な問題に対処する。これら問題は、駆動ホイール間のスペース、即ち間隔を適切かつ正確に計算し、較正する必要性を含み、滑りによりファイバが損傷を受けるのを防ぐために十分な最適なグリップを提供する。この送り込みヘッドは、なおも十分に軽量であり、生じる寸前のファイバの座屈を示すファイバの動きの変化、使用時に駆動ホイール間に設定された間隔が変化する可能性、屋外の条件で使用するための光ファイバ敷設装置の強度(robustness)の不足、並びにこの送り込みヘッドにおいて様々な外径サイズのファイバユニット、即ちファイバケーブルを使用するための可撓性の不足を感知する。
【0010】
この場合において、本出願人は、送り込みヘッドに使用されることが意図されたファイバユニットの外径を受けるために必要な間隔、即ちスペースを考慮する代わりに、圧力又は力の総量を考慮し、駆動ホイールが、運搬又は互いに押圧し、一方、ファイバユニットがこれら駆動ホイール間に駆動されることによって、上述の課題及び問題が対処されることが実現された。
【0011】
付勢される駆動面を含む駆動手段の構成体に関して、従来必要とされたように、駆動ホイールが互いに接触する、又はちょうど接触しない程度にするために、2つの駆動ホイール間の配置の最適な間隔を計算する必要がない。作業中にこの間隔を設定する必要も、送り込みヘッドの使用後に同様の再設定をする必要もなく、含まれる寸法の小ささに関する問題もない。
【0012】
本発明の他の効果は、本発明が、不均整な、即ち偏心駆動ホイールの円周部又はリムの表面を、可撓性を有するように受けることである。使用の際、夫々のホイールの円周部の不均整は、ホイールの回転中、ホイールが回転するのに従って、ホイールのリム間の間隔が変化され得るので、この結果、ギャップ、即ち駆動ホイール間の間隔が、回転している時間に亘って変化する。ファイバユニットの敷設プロセスは、ファイバユニットが駆動ホイール間で滑動し(この場合、ホイール間のスペースが過度である)、また、送り込みヘッドの感知性が弱められる(この場合、駆動ホイールが互いにかなりきつく係合される)ように、逆効果も与え得る。
【0013】
また、本発明の送り込みヘッドは、固定され、緊密に設定された駆動ホイールの間隔を有する従来技術の送り込みヘッドよりも広い範囲のファイバユニット、即ちケーブルで使用されることができる。現在、英国では、ファイバケーブルは、2ないし12の、複数のファイバユニットの範囲を含むことができる。この範囲は、将来、18又は19のファイバまで増加させることが可能であろう。本発明の送り込みヘッドは、より広い範囲のファイバの外径を受けることが可能である。
【0014】
複数の駆動面からなる、本発明の駆動手段が可能であるが、好ましい実施の形態では、駆動手段は、2つの駆動ホイールからなり、駆動ホイールのリムの表面が、送り込みヘッドを通るファイバユニットを押進するように、ファイバユニットと係合している。付勢手段は、好ましくはばね負荷部材(spring-loaded)であり、駆動ホイールの一方又は両方が、互いに夫々の駆動面を弾性的に付勢するように構成されることができる。本発明の一実施の形態では、一方又は両方の駆動ホイールが、電気モータにより電力が供給され、電気モータは、電流の上限が定められることができる。
【0015】
さらなる好ましい実施の形態では、駆動ホイールを通るファイバユニットの動きの変化が、低慣性システムで感知され、フィードバックされることができる。この結果、生じる寸前の座屈が、上限が定められた電流システムにより、未然に防がれ、好ましく避けられることができる。
【0016】
本発明の第2の態様では、チューブ内にファイバユニットを敷設するための送り込みヘッドを有する敷設装置であって、前記送り込みヘッドを通る前記チューブ内に前記光ファイバユニットを押進するための駆動手段を具備し、この駆動手段は、複数の駆動面を有し、これら駆動面のうちの1つ又は複数の駆動面が、他の駆動面に向かって所定の力で弾性的に付勢され、使用の際、前記光ファイバユニットは、前記複数の駆動面の間を移動する敷設装置が提供される。
【0017】
本発明に係わる敷設装置は、本発明の送り込みヘッドと、電力及び圧縮空気を供給するための手段と、光ファイバユニット、即ちケーブルが装着される光ファイバチューブとを有する。
【0018】
本発明の第3の態様では、チューブ内に光ファイバユニットを敷設する方法であって、送り込みヘッド内に前記光ファイバユニットを挿入する工程と、複数の駆動面の間に、前記送り込みヘッドを通る前記光ファイバを押進する工程であって、前記複数の駆動面のうちの1つ又は複数の駆動面が、他の駆動面に向かって所定の力で弾性的に付勢されるように構成されている、工程と、駆動手段を使用して、前記送り込みヘッドの外に、かつこの送り込みヘッドと接続されたチューブ内に、前記光ファイバユニットを押進する工程と、を具備する方法が提供される。
【0019】
ファイバユニットを敷設するために、所定の方法において、使用者は、駆動ホイールにより捉えられる(”caught”)まで、送り込みヘッドに手動で押圧される。そして、ファイバユニットは、駆動ホイールの間に向かって前方に進められ、駆動ホイールの一方又は両方が付勢される。この結果、駆動ホイール間を進行するファイバユニットの外径のいかなる変化も、弾性的に受けることができる。
【0020】
本発明のさらなる態様では、送り込みヘッド内に光ファイバユニットを挿入する工程と、複数の駆動面の間に、送り込みヘッドを通る光ファイバを押進する工程であって、前記複数の駆動面のうちの1つ又は複数の駆動面が、他の駆動面に向かって所定の力で弾性的に付勢されるように構成されている、工程と、駆動手段を使用して、前記送り込みヘッドの外に、かつこの送り込みヘッドと接続されたチューブ内に、光ファイバユニットを押進する工程と、を具備する方法を果すことによって得られるチューブ内に敷設される光ファイバユニットが提供される。
【0021】
本発明が、以下の図面を参照して、例示によって説明される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1A】図1Aは、従来技術に係わる代表的な送り込みヘッド部分のブロック図である。
【図1B】図1Bは、従来技術に係わる送り込みヘッドを示す図である。
【図2A】図2Aは、本発明の送り込みヘッドを示す図である。
【図2B】図2Bは、本発明の送り込みヘッドを示す図である。
【図3】図3は、本発明の送り込みヘッドの内部を示すさらなる図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1Aは、周知技術の代表的な送り込みヘッドの主要な動作部分の概略図である。ファイバユニット2の供給は、パン(図示されない)からなされ、まず、矢印Xにより示された方向で送り込みヘッド4の入口端部から与えられる。そして、このファイバユニット2は、この送り込みヘッドの全長に沿って延びたボアにより示された経路に沿って進行する。使用の際、ファイバユニットは、送り込みヘッドに沿って1対のモータ駆動ホイール6、8を通り、送り込みヘッドの反対側の出口端部へと進行し、このファイバユニットが装着されたファイバチューブ10と接合される。このファイバユニットは、モータ(図示されない)により電力が供給された駆動ホイールにより駆動されることによって、この送り込みヘッドの入口端部から出口端部へと、ボアに沿って進行する。さらに、前記ファイバチューブ内では、このファイバチューブを通るファイバユニットの進行が、空気供給口によって送り込みヘッドに与えられる加圧空気12の供給によりアシストされる。多くの空気が、ファイバユニットの進行を与える粘性抵抗により、このファイバチューブを通り遠方端部へと運搬するように、このファイバチューブに入り、ファイバチューブの内面に沿って流れる。
【0024】
図1Bは、本出願人により発展され、使用され、例えばWO98/12588の特許明細書で詳しく説明された送り込みヘッドの一実施の形態を示している。ここでは、この送り込みヘッドは、開位置で示されており、互いに枢動するようにヒンジ接続された装置の上側部分及び下側部分を有する。敷設が行われる間、これら2つの部分は、互いにクランプで取着される。貫通ボア7が、この送り込みヘッドの全長に亘って延びており、敷設が行われる間にファイバユニットを受ける経路を規定している。ファイバユニットは、矢印Xの方向に与えられ、押進(drive)されて、1対の駆動ホイール6、8の間を通過する。これら駆動ホイールは、使用の際、これら駆動ホイールの間の間隔なく、互いにしっかりと係合している。ファイバユニットは、前記貫通ボアに沿ってこのヘッドを通り、最終的に、この貫通ボアの他端部から出て、貫通ボア5の所定の部分でこのヘッドに取着された待機しているチューブに入る。送り込みヘッド内では、両駆動ホイールが、ファイバユニットを押進するように機能し、ホイール自身には、モータ3によって電力が供給される。この送り込みヘッドでは、モータは、上側駆動ホイール8に直接電力を供給する。下側駆動ホイール6は、モータに直接接続されておらず、このヘッドの2つの部分が組み合わせられたときのみ、上側駆動ホイールの動きによって下側駆動ホイールが回転されるようにして、2つのホイールが係合するように駆動される。
【0025】
本出願人によるWO2006103419に記載された送り込みヘッド(ここでの説明では低慣性送り込みヘッドとして参照される)のさらなる他の実施の形態において、駆動ホイール6、8は、プラスチック化合物のような軽量素材でできていることが好ましい。さらに、これら駆動ホイールは、使用の際、両駆動ホイールが、ホイールのリムの間を進行するファイバユニットの夫々の軸線を中心として回転するように、例えば電気モータである駆動電源と接続されており、駆動力が、送り込みヘッドを通ってファイバチューブへとファイバを運搬する。しかし、図1Bに関して説明された送り込みヘッドとは異なり、各駆動ホイールは、各々が他の駆動ホイールと係合することなく独立して回転可能であるように構成されている。ここで、これら駆動ヘッドは、使用の間、ファイバユニットと係合するホイールのリムと離れて位置された軽いギヤを介して接続されている。駆動ホイールのリム間の間隔は、使用の際、ファイバユニットは、ホイールのリム間のスペースに収容されることができるように、これらリムがちょうど接触する、又は互いにちょうど接触しそうな程度であるように入念に設定されている。
【0026】
この構成体は、使用の際、駆動ホイールの慣性レベルを最小レベルに減少させる。ここでの説明において、低慣性(”low inertia”)とは、変化、特に、例えば駆動ホイールの回転運動を遅らせる又は止めることによって、使用中、駆動ホイールの間を進行する光ファイバの速度又は動きの変化に対して、素早く応答、即ち反応するためのシステムの構成要素の能力を参照する。
【0027】
使用の際、駆動ホイールは、比較的高い圧縮力に対抗して、ファイバユニットの外面と比較的軽く係合しており、互いに及びファイバに対してきしむ("crunch”)。それ故、低慣性システムでは、両駆動ホイールにより押進されるファイバユニットが、ファイバユニットに座屈が生じたときに起こるように、動きが遅れたり止まったりすると、軽量装備の両駆動ホイールが、これらの回転運動を遅らせる又は止める。
【0028】
WO2006103419に記載された送り込みヘッドの他の態様では、モータにより電流の出力に上限が課される。これは、両駆動ホイールが遅くなる又は止まると、モータにより、電流レベルの出力が、所定の制限値を超えて上昇できないことを意味している。ファイバユニットの動きが遅くなる又は止まると、これは、例えばファイバユニットが装着されたチューブ内で、送り込みヘッドの外で生じる寸前の、又は実際に生じた座屈があることを示している。電流の制限値は、ファイバユニットが動く(座屈が生じそうであることを示している)と遅くなるように、所定のレベルに設定されており、両駆動ホイールも、これに伴い遅くなる。ファイバユニットの動きが遅くなる又は止まると、モータ電流は、限界レベルに近づく又は達し、両駆動ホイールが、遅くなる又は完全に回転しなくなる。
【0029】
かくして、特に、両駆動ホイールのリム間の間隔は、システムが十分に低慣性であり、ファイバユニットの動きを遅らせる又は止めるために、この動きが素早く検出されてフィードバックされ、モータ電流が対応して応答することができるように、非常に正確に与えられ、構成されている。しかし、巧みに構成された(delicately-configured)工作機械は、この分野において実用的ではなく、これら駆動ホイールは、手で扱え、物理的な衝撃及び汚染が与えられ得る測定に耐え得るように、十分に丈夫である必要がある。
【0030】
ここで説明された従来技術の送り込み技術において、駆動ホイールの間隔の設定と関連した可撓性は、ほとんどない、又はない。従って、設定されたホイールに対するファイバユニットの狭い範囲(所定の範囲が可能である場合)外でのファイバユニットの敷設が好ましければ、使用者は、駆動ホイールの設定を変化させる必要がある。このような設定は、両ホイール間の間隔を調整するように、若しくは、直径が大きくされたファイバを受けるために例えば平面又は平らな面から溝が形成された面へと両ホイールを完全に置き換えるように、駆動ホイールのタイヤを変化させることを含み得る。
【0031】
図2A並びに図2Bは、本発明に係る送り込みヘッド20を示す図である。図2Aは、内部、特に両駆動ホイールを示すために、ハウジングの一部分を除いた外観の斜視図である。図2Bは、図2Aの送り込みヘッドの側面図である。
【0032】
本発明の送り込みヘッドは、WO2006103419の低慣性送り込みヘッドを発展させたものである。この送り込みヘッドは、図1Bについて説明された送り込みヘッドと同様のハウジング22、24を有し、これらハウジングは、図3で下側に示されるように、使用者が内部にアクセス可能であるように開かれることができる。ボア(この図では明確には見えない)が、この送り込みヘッドの全長に沿って、入口端部から出口端部へと延びており、使用中、この経路に沿ってファイバユニット(図示されない)が進行する。そして、この経路内のファイバユニットの部分が、駆動ホイール間を通過する。ボアに沿って、及びこの送り込みヘッドの向こう側へとこのファイバユニットを押進するために、上側及び下側駆動ホイール26、28が、モータ(図示されない)から電力を伝送するように設けられている。(本明細書において、上側及び下側という用語は、他の構成体に関して、例えば一緒に(side-by-side)という用語が参照としてここに含まれるように、互いに関連して配置された2つの駆動ホイールを参照して、利便的にのみ使用されるものであることが理解されるであろう。)
使用の際、ファイバユニットは、矢印Xの方向に、入口端部を通って送り込みヘッドのボア内へと与えられる。
【0033】
本発明の送り込みヘッドでは、上側駆動ホイール26は、付勢機構30と接続されており、この付勢機構は、ばね32により弾性的に駆動され、他の駆動ホイール28に向かって、このホイールを、可撓性を有するように付勢する。この実施の形態では、コンパクトな半径のアームの使用によって、枢動ピン33を中心として付勢手段の回転を果す。従って、従来技術の送り込みヘッドとは異なり、上側駆動ホイールは、他の駆動ホイールに対して位置を固定されず、懸吊されている("suspended”)。前記ばねは、ピボットと懸吊された駆動ホイールとの間のほぼ中間点に位置している。
【0034】
かくして、ファイバユニットが送り込みヘッドを通って進行すると、懸吊された一方の駆動ホイールが、他方の駆動ホイールに対してファイバユニットを付勢又は運搬する。これによって、両駆動ホイールが、駆動ホイールの外形にかかわらず、ファイバユニットを、可撓性を有するように受けるので、ファイバユニットがこの部分を通過したとき、2つの駆動ホイールの両方が、駆動されるファイバユニット27を運搬する。
【0035】
付勢される駆動ホイールの使用により、駆動ホイールのリム間に置かれる正確な間隔を計算する必要はなくなる。なぜならば、製造中、同様の設定の実際の問題は、作業場での使用のために丈夫な装置である必要があることに起因するからである。使用により生じるミスアライメントの可能性も、なくなるか、少なくとも減少される。本発明の構成体も、両駆動ホイールのリムの一方又は両方の外面の不均整を補正する。
【0036】
本発明の懸吊された駆動ホイールを使用するさらなる効果は、送り込みヘッドが、ファイバユニット及びケーブルのこれまで可能であったよりも広い範囲の変化の幅が与えられて使用されることができることである。以下で説明されるように、様々なサイズの範囲のファイバが、敷設中、付勢アームに設定される圧力又は力に依存して最適な効果を受けることができる。
【0037】
図2A並びに図2Bに示された本発明の実施の形態では、ばね負荷部材に基づいた付勢機構を示しているが、当業者によって、本発明の範囲内で、付勢手段の他の形態が存在することが容易に理解されるであろう。また、上側駆動ホイールが、付勢機構を含む懸吊されたホイールとして示されるが、他方の駆動ホイール又は両ホイールが、本発明の効果を得るように付勢手段を組み入れることができる。従って、ファイバユニット、即ちケーブルに対して弾性的に付勢される両駆動ホイール又は他の駆動手段が、本発明の範囲内に含まれる。
【0038】
図2A並びに図2Bに戻ると、付勢された駆動ホイール26は、使用の際、ファイバユニットが下側モータ駆動ホイール28に運搬されるように構成されて示されている。当業者によって、本発明の範囲内で、運搬されるファイバユニットに適した他の面を与えても良いことが理解されるであろう。従って、ファイバユニットは、自由に回転する(即ち、駆動力を出力するための動力が与えられていない)第2の駆動ホイールに運搬されことができる。ファイバユニットは、ホイールの形態を受ける必要はないが、使用の際、ファイバユニットが沿って通過することができる面を有する。しかし、好ましい実施の形態では、下側駆動ホイールには付加的な駆動力が与えられ、また、移動可能な部材により低慣性システムの感度を向上させることができる。
【0039】
上記で簡潔に説明されたように、懸吊又は付勢された駆動ホイールは、異なるサイズのファイバユニット、即ちケーブルを受けることができ、特定の場合には、付勢力又は圧縮力に部分的に依存している。
【0040】
付勢手段のばねによる圧縮力又は圧力は、様々な値に設定されることができる。高いばね力は、硬さを生じ、懸吊された駆動ホイールが屈せず、ホイールの駆動能力を高め、ファイバユニットの滑りを防ぐことができる。逆に、低いばね力は、駆動ホイールの円周部の外面が不均整であっても、懸吊された駆動ホイールをファイバユニット及びケーブルのサイズの変化にかなり応答させることができる。圧縮力のレベルは、使用者の優先性及び必要性に応じて選択されることができ、以下で説明されるように、必要に応じて調整されることもできる。
【0041】
1mmの外径を有するファイバユニットケーブルを敷設するための一実施の形態では、ばねが負荷された付勢アームにより与えられる圧縮力が、約30g/mmのばね定数に対して約6.7Nに設定されることができる。本出願人は、この値が効果的であると決定した。本明細書において、付勢するために使用されるコイルばね32は、好ましくは比較的軽量であり、例えば小さなスクリュがこの駆動ばねと直接接触することによって、駆動ばねの圧縮力にわずかな調整が与えられることができるように、例えば全長約20mmで0.53mmの鋼のゲージのばねでできている。この付勢手段の圧縮力は、分離即ち着脱可能なばねの平衡状態を利用して、駆動ホイールの圧縮力に変化を与えるスクリュを調整し、かくして異なるサイズのファイバケーブル、即ちユニットに合わせるように設定されることができる。しかし、最も一般的に使用されている1mm及び1.5mmの送り込みファイバユニットのサイズに基づいて、これらの間のばね力の比率の差(differential)は、付勢ばねの調整を必要とせず、上限が定められたモータ電流のレベルでないために、あまり重要でない可能性がある。しかし、変化が大きければ、ばね力の設定と上限が設定された電流のレベルとの少なくとも一方の調整が必要であろう。
【0042】
当業者によって、本発明の範囲内で、コイルばねに代わって例えば板ばねが利用可能であることが理解されるであろう。しかし、コイルばねは、コンパクトかつ容易に調整可能であるので、好ましい方法である。
【0043】
図3は、本発明の送り込みヘッド20の一実施の形態の他の図である。ここで、前記ハウジング22、24の2つの部分が、内部を示すために開かれている。上側駆動ホイール26は、上側ギヤホイール36と接続されていることが示されている。2つのハウジング部分が、互いに閉じられ、スクリュ42により取着されると、上側ギヤホイールの歯が、下側ギヤホイール28と接続されている下側ギヤホイール38と係合する。本発明に示された実施の形態では、モータ(この図では見えない)は、使用の際、モータの駆動力が、夫々のギヤホイール36、38を介して直接でなく2つの駆動ホイール26、28を駆動させるように、下側駆動ホイール28と接続されている。ギヤの特定の構成は、使用中、ファイバユニットの動きに対するシステムの感度及び応答性を高めるのに寄与する。さらに、付勢機構30は、前記上側ホイールと接続されていることが示されている。なぜならば、この領域では、下側ホイールがモータと接続される余地があるからである。しかし、当業者にとって、付勢機構及びこれらの正確な位置に関して、本発明の範囲内で代わりの実施の形態が利用可能であることが明らかである。
【0044】
空気チャンバ部分40を有する送り込みヘッドの他の必須の構成要素も、この図面に示されている。空気チャンバ部分40は、この部分の全長に沿って延びたボアを有する。使用の際、光ファイバは、入口端部42からこの送り込みヘッドに入り、ボアに沿って進行し、両駆動ホイールに沿って、又は両駆動ホイールの間を押進され、空気チャンバのボアに入る。この空気チャンバは、いわゆる加圧空気を、供給口(図1には参照符号14で示されているが、図3には示されていない)を通してボアに与える。最終的に、ファイバユニットは、ファイバチューブ(図示されない)内を通って、空気チャンバの他端から現れる。
【0045】
上述の説明及び図面のような形態が、説明のみの目的のために簡潔に示されたが、使用の際、装置又は方法を特定の構成又はプロセスに制限することを意図するものではない。当業者にとって、これら方法及び装置に対して、様々な形態及び変更が、上述の本発明の範囲内で与えられることができることが理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブ内に光ファイバユニットを敷設するための送り込みヘッドであって、
前記チューブ内に前記光ファイバユニットを押進するための駆動手段を具備し、
この駆動手段は、複数の駆動面を有し、
これら駆動面のうちの1つ又は複数の駆動面が、他の駆動面に向かって所定の力で弾性的に付勢され、
使用の際、前記光ファイバユニットは、前記複数の駆動面の間を移動する、送り込みヘッド。
【請求項2】
前記駆動手段は、第1の駆動面と第2の駆動面とを有し、
前記第1の駆動面は、第1の駆動ホイールのリムの表面であり、
前記第1の駆動ホイールは、使用の際、電源と接続され、送り込みヘッドを通って前記チューブ内へと前記光ファイバユニットを押進するように回転可能である請求項1の送り込みヘッド。
【請求項3】
前記第2の駆動面は、第2の駆動ホイールのリムの表面である請求項2の送り込みヘッド。
【請求項4】
前記第2の駆動ホイールは、使用の際、電源と接続され、送り込みヘッドを通って前記チューブ内へと前記光ファイバユニットを押進するように回転可能である請求項3の送り込みヘッド。
【請求項5】
前記第2の駆動面に対して前記第1の駆動面を付勢するための付勢手段をさらに有し、この付勢手段は、ばね負荷部材である請求項2ないし4のいずれか1の送り込みヘッド。
【請求項6】
前記付勢手段は、コイルばねである請求項5の送り込みヘッド。
【請求項7】
前記駆動手段は、使用の際、前記光ファイバユニットの動きの変化に対して応答性を有するように構成されている請求項1ないし6のいずれか1の送り込みヘッド。
【請求項8】
前記駆動手段は、使用の際、上限が定められた電流を出力することが可能な電気モータにより電力が供給される請求項7の送り込みヘッド。
【請求項9】
送り込みヘッドを通って前記チューブ内にもたらされる加圧空気の発生源を方向決めするための手段をさらに具備する請求項1ないし8のいずれか1の送り込みヘッド。
【請求項10】
チューブ内に光ファイバユニットを敷設するための送り込みヘッドを有する敷設装置であって、
前記送り込みヘッドを通る前記チューブ内に前記光ファイバユニットを押進するための駆動手段を具備し、
この駆動手段は、複数の駆動面を有し、
これら駆動面のうちの1つ又は複数の駆動面が、他の駆動面に向かって所定の力で弾性的に付勢され、
使用の際、前記光ファイバユニットは、前記複数の駆動面の間を移動する、敷設装置。
【請求項11】
チューブ内に光ファイバユニットを敷設するための方法であって、
送り込みヘッド内に前記光ファイバユニットを挿入する工程と、
複数の駆動面の間に、前記送り込みヘッドを通る前記光ファイバを押進する工程であって、前記複数の駆動面のうちの1つ又は複数の駆動面が、他の駆動面に向かって所定の力で弾性的に付勢されるように構成されている、工程と、
駆動手段を使用して、前記送り込みヘッドの外に、かつこの送り込みヘッドと接続されたチューブ内に、前記光ファイバユニットを押進する工程と、を具備する方法。
【請求項12】
送り込みヘッド内に光ファイバユニットを挿入する工程と、
複数の駆動面の間に、送り込みヘッドを通る光ファイバを押進する工程であって、前記複数の駆動面のうちの1つ又は複数の駆動面が、他の駆動面に向かって所定の力で弾性的に付勢されるように構成されている、工程と、
駆動手段を使用して、前記送り込みヘッドの外に、かつこの送り込みヘッドと接続されたチューブ内に、光ファイバユニットを押進する工程と、を具備する方法を果すことによって得られる、チューブ内に敷設される光ファイバユニット。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−507122(P2010−507122A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−532881(P2009−532881)
【出願日】平成19年10月8日(2007.10.8)
【国際出願番号】PCT/GB2007/003811
【国際公開番号】WO2008/047076
【国際公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(390028587)ブリティッシュ・テレコミュニケーションズ・パブリック・リミテッド・カンパニー (104)
【氏名又は名称原語表記】BRITISH TELECOMMUNICATIONS PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】