説明

光ファイバ照明装置及びその製造方法

【課題】 軽量な光ファイバ照明装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 任意のデザイン領域を側面に有する複数本の光ファイバと、前記光ファイバの端部に設けられた光源とを備える光ファイバ照明装置であって、前記複数本の光ファイバは、溶融変形した光ファイバが固化した固定部で接合されていることを特徴とする光ファイバ照明装置。複数本の光ファイバを配置する第1工程と、前記複数本の光ファイバの側面に先端部が発熱する加熱手段を押し付け、溶融変形させて任意のデザイン領域を形成するとともに、溶融変形した光ファイバを複数本の光ファイバ間に介在させる第2工程と、該溶融変形した光ファイバを冷却して固定部とすることで複数本の光ファイバを接合する第3工程と、第1工程の前、第1工程の後、第2工程の後、第3工程の後のいずれかで、前記光ファイバの端部に光源を接続する工程を有することを特徴とする光ファイバ照明装置の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ照明装置及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数本の光ファイバを配置した照明装置としては、光ファイバ固定部材上に、複数本の光ファイバを平行に配置し、光ファイバの端部に光源を接続し、複数本の光ファイバにより形成された平面上において、先端部が発熱する加熱手段を平面上に押し付けることにより、光ファイバの一部を溶融変形させた任意のデザイン領域を作製したものなどがある(例えば、特許文献1を参照。)。
このような技術によれば、壁などに掛ける光ファイバ照明装置を作製することが可能である。
【0003】
しかしながら、上記の光ファイバ照明装置は、光ファイバ固定部材を用いるので全体として重くなり、取り扱いに不都合を生じることがあった。
例えば、天井から吊り下げる演出、樹上に載せ置く演出、風に揺れる演出などには適さなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−032407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような問題点に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、軽量な光ファイバ照明装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)任意のデザイン領域を側面に有する複数本の光ファイバと、前記光ファイバの端部に設けられた光源とを備える光ファイバ照明装置であって、前記複数本の光ファイバは、溶融変形した光ファイバが固化した固定部で接合されていることを特徴とする光ファイバ照明装置。
(2)前記固定部は、前記任意のデザイン領域周辺に位置することを特徴とする前記(1)記載の光ファイバ照明装置。
(3)前記任意のデザイン領域は鏡像対称性を有することを特徴とする前記(1)記載の光ファイバ照明装置。
(4)任意のデザイン領域を有する複数本の光ファイバと、光源とを備える光ファイバ照明装置の製造方法であって、複数本の光ファイバを配置する第1工程と、前記複数本の光ファイバの側面に先端部が発熱する加熱手段を押し付け、溶融変形させて任意のデザイン領域を形成するとともに、溶融変形した光ファイバを複数本の光ファイバ間に介在させる第2工程と、該溶融変形した光ファイバを冷却して固定部とすることで複数本の光ファイバを接合する第3工程と、第1工程の前、第1工程の後、第2工程の後、第3工程の後のいずれかで、前記光ファイバの端部に光源を接続する工程を有することを特徴とする光ファイバ照明装置の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、軽量な光ファイバ照明装置及びその製造方法を提供することができる。
さらに、本発明によれば、両面から光を視認できる光ファイバ照明装置及びその製造方法を提供することができる。
また、光の拡散が少なく、くっきり見える光ファイバ照明装置及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態1の光ファイバ照明装置を示す正面図
【図2】任意のデザイン領域の拡大断面図であって、(a)は片面変形、(b)は両面変形の図
【図3】本発明の実施形態2の光ファイバ照明装置を示す正面図
【図4】本発明の光ファイバ照明装置の製造方法を示す斜視図であって、(a)は光ファイバを整列させた図、(b)は光ファイバを溶融させた図、(c)は光ファイバを固化した図
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、図面を用いて具体的に説明する。
図1は本発明の実施形態1の光ファイバ照明装置を示す正面図である。
1は光ファイバ、10は光源、Cは、収縮チューブ7、筒状部材8、接着剤9よりなる接続部位、Dは任意のデザイン領域、Rは溶融変形した光ファイバが固化した固定部である。
本発明の光ファイバ照明装置は、任意のデザイン領域Dを側面に有する複数本の光ファイバ1と、光ファイバ1の端部に設けられた光源10とを備える光ファイバ照明装置であって、複数本の光ファイバ1は、溶融変形した光ファイバが固化した固定部Rで接合されていることを特徴とする。
図1に示すように、複数本の光ファイバ1はそれ自体で接合されており、固定のための樹脂等を必要としない。これにより、全体重量を著しく軽量化し、取り扱いを容易にすることができる。
【0010】
そして、固定部Rは、任意のデザイン領域D周辺に位置することが好ましい。
これにより、任意のデザイン領域Dを形成するときに生じる溶融変形した光ファイバをそのまま固定部として利用でき、照明装置として重要な任意のデザイン領域Dを強固に固定するとともに、その他の部分は自由に分岐、曲げ、ねじり等させて装飾の演出に用いることができる。
【0011】
また、本発明の光ファイバ照明装置は固定のための樹脂等がないので、任意のデザイン領域Dから出射される光を背面からも視認することができる。
したがって、例えば図1に示すように任意のデザイン領域Dが鏡像対称性を有する星等の形状であれば、両面から同じように見える光ファイバ照明装置となる。
なお、任意のデザイン領域Dは鏡像対称性を有していなくてもよい。
【0012】
さらに、本発明の光ファイバ照明装置は固定のための樹脂等がないことで、出射される光の拡散が少なく、くっきり見える。
【0013】
本発明の光ファイバ照明装置に用いられる光源10は、交換等のために光ファイバ1と着脱自在に設けられていることが好ましい。
光源10は、蛍光灯、ハロゲンランプ、キセノンランプ、LEDランプなどいかなるものを用いてもかまわないが、高輝度で長寿命のLEDを用いるのが好ましい。
また、光源10の色は、白、青、黄、緑、赤等、いかなる色を用いてもかまわない。
また、本発明においては、光ファイバ1の少なくとも一方の端部に光源10が接続されていることが必須であるが、光ファイバ1の両端に光源を設けると光量をより多くすることができる。また、異なる色の光源を用いることにより、任意のデザイン領域Dにカラーグラデーションを付与することもできる。
【0014】
本発明の光ファイバ照明装置では、光ファイバ1の端部に、光源10と接続するための接続端部Cを設けることが好ましい。
この接続端部Cは、図1に示したように、複数本の光ファイバ1の先端を束ね、先端を収縮チューブ7等により集束させ、次いで、集束させた光ファイバの端部を裁断刃で切りそろえた後、プラスチック製の筒状部材8に通し、筒状部材8と光ファイバの端部とを接着剤9で固定して作製する。
なお、図1における接続端部Cは、光源10であるLEDが筒状部材8にはめ込まれる構成のものを示したが、この構成に限定されるものではない。
【0015】
図2は、任意のデザイン領域の拡大断面図であり、(a)は片面変形、(b)は両面変形の図である。
3はコア、4はクラッドである。
本発明の光ファイバ照明装置においては、中心から外側に向けてコア3、クラッド4により構成された光ファイバ1を用いる。
クラッド4の外側にはさらに外皮が設けられていてもよい。
そして、この光ファイバ1上において、ハンダごてのような先端部が発熱する加熱手段を押し付けることによって、クラッド4(必要に応じてコア3の一部)が溶融変形されて、任意のデザイン領域Dが形成されている。
これにより、コア3内を伝達されてくる光が任意のデザイン領域Dで光ファイバ側面へ出射される。
なお、任意のデザイン領域Dは図2(a)に示されるように片面のみに設けてもよいし、図2(b)に示されるように両面に設けてもよい。
【0016】
本発明における光ファイバは、クラッド4(必要に応じてコア3の一部)が加熱手段により溶融変形されていることが必須であるため、プラスチック系光ファイバであることが必要である。
【0017】
図3は、本発明の実施形態2の光ファイバ照明装置を示す正面図である。
Sは天井である。
本発明の光ファイバ照明装置は著しく軽量化されているので、図に示すように天井Sから吊り下げることも容易である。
また、光ファイバ1は、任意のデザイン領域Dと固定部R以外では単心線の状態なので、風にそよぐような演出も可能となる。
【0018】
図4は、本発明の光ファイバ照明装置の製造方法を示す斜視図であって、(a)は光ファイバを整列させた図、(b)は光ファイバを溶融させた図、(c)は光ファイバを固化した図である。
本発明の光ファイバ照明装置の製造方法は、任意のデザイン領域Dを有する複数本の光ファイバ1と、光源10とを備える光ファイバ照明装置の製造方法であって、複数本の光ファイバ1を配置する第1工程と、複数本の光ファイバ1の側面に先端部が発熱する加熱手段を押し付け、溶融変形させて任意のデザイン領域Dを形成するとともに、溶融変形した光ファイバを複数本の光ファイバ1間に介在させる第2工程と、溶融変形した光ファイバ1を冷却して固定部Rとすることで複数本の光ファイバ1を接合する第3工程と、第1工程の前、第1工程の後、第2工程の後、第3工程の後のいずれかで、光ファイバ1の端部に光源10を接続する工程を有することを特徴とする。
【0019】
(第1工程)
まず、図4(a)に示すように、複数本の光ファイバ1を配置する。
具体的には、複数本のV溝に光ファイバ1を並べたり、弱粘着の粘着シートに光ファイバ1を仮固定したりすることで配置できる。
例えば複数本の光ファイバを平行に配置したい場合には、平行に設けられた複数本のV溝を用いたり、弱粘着の粘着シートに一本の光ファイバを定規に沿わせて直線状に貼り付け、この光ファイバに沿わせて次々に光ファイバを並べたりすることができる。
なお、光ファイバの配置は、直線状に限らず、曲線状や半円状等にしてもよく、これらを組み合わせてもよい。
【0020】
(第2工程)
次いで、図4(b)に示すように、複数本の光ファイバ1の側面に先端部が発熱する加熱手段を押し付け、溶融変形させて任意のデザイン領域Dを形成するとともに、溶融変形した光ファイバを複数本の光ファイバ1間に介在させる。
具体的には、複数本の光ファイバ1の側面にハンダごて等の加熱手段を押し付け、クラッド4(必要に応じてコア3の一部)を溶融変形させて任意のデザイン領域Dを形成するとともに、溶融変形した光ファイバを隣接した光ファイバ1との隙間に貯留させ、介在させる。
なお、溶融変形した光ファイバを効率よく貯留させるには、ハンダごて等の加熱手段を押し付けたままゆっくり移動させるなどの方法が好ましい。
また、加熱手段としては、85〜400℃に発熱するものであることが好ましく、さらには、120〜300℃に発熱するものであることがより好ましい。
そのようなものの中でも、温度調節により溶融変形を厳密に制御できる高出力温調式ハンダごてが特に好ましい。
なお、第2工程には制御ロボット等を用いることもできる。
【0021】
(第3工程)
そして、図4(c)に示すように、溶融変形した光ファイバ1を冷却して固化させ、固定部Rとすることで、複数本の光ファイバ1を接合する。
具体的には、溶けていた樹脂が自然冷却等により固まることで隣接する光ファイバ同士が接合される。
【0022】
(光源接続工程)
本発明の光ファイバ照明装置の製造方法は、第1工程の前、第1工程の後、第2工程の後、第3工程の後のいずれかで、光ファイバ1の端部に光源10を接続する工程を有する。
具体的には、光源10を光ファイバ1の端部に接触または近接させる。
光を確認しながら任意のデザイン領域Dを作製する観点からは、第1工程の前または第1工程の後に行うことが好ましい。
【実施例】
【0023】
次に、実施例を用いてさらに詳細に説明する。
なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0024】
<実施例1>
光ファイバとして、長さ1.5mのプラスチック光ファイバ(三菱レイヨン社製、商品名:「ESCA CK−10」、外径0.25mm)を用意した。
そして、平面板上に仮固定のためのアクリル系粘着剤付シートを載せ、一本の光ファイバを定規に沿わせて直線状に貼り付け、この光ファイバに沿わせて次々に光ファイバを並べ、200本の光ファイバを配置した。
【0025】
次に、200本の光ファイバの一端を束ねて長さ20mmの収縮チューブ(内径7mm)に通し、この収縮チューブをドライヤーにより熱収縮させて光ファイバを集束させた。
次いで、集束させた光ファイバの端部を裁断刃で切りそろえ、プラスチック製の筒状部材に通し、筒状部材と光ファイバの端部とを接着剤で固定して、光源との接続端部を作製した。
そして、この接続端部に、光源である白色LED(径5mm、輝度9800mcd)を直接はめ込み、プラスチック光ファイバと光源とを接続した。
【0026】
次いで、光ファイバの側面に、先端部の円錐型こて先(白光社製、商品名:「T12−B4」)を200℃に発熱させた高出力温調式ハンダごて(白光社製、商品名:「FX−951」)を押し付けながら移動させ、外皮、クラッド及びコアの一部を溶融変形させて、図1に示す星の形状のデザイン領域を形成するとともに、溶融変形した光ファイバを光ファイバ間に介在させた。
なお、このとき、光源を発光させることにより、自らが描いたデザインを確認しながら任意のデザイン領域の形成を行った。
【0027】
次に、溶融変形した光ファイバを自然冷却して固化させ、固定部とすることで、200本の光ファイバを接合した。
そして、光ファイバをアクリル系粘着剤付シートから剥し、実施例1の光ファイバ照明装置を得た。
【0028】
<比較例1>
仮固定のためのアクリル系粘着剤付シートに代えて、幅50mm×長さ1m×厚さ2.3mmに塗布した室温硬化型のシリコーンゴム樹脂(モメンティブパフォーマンスマテリアルズジャパン社製、商品名:「TSE398」、白色)を用いた。
そして、当該シリコーンゴム樹脂は剥離せず、そのまま光ファイバ固定部材として光ファイバ照明装置の一部として用いた(特開2009−032407号公報の図1を参照)。
その他は実施例1と同様にして、比較例1の光ファイバ照明装置を得た。
【0029】
<評価>
実施例1の光ファイバ照明装置は、全体の重量が8gであった。
これに対して比較例1の光ファイバ照明装置は、全体の重量が20gであった。
また、実施例1の光ファイバ照明装置は、両面から光を視認できた。
これに対して比較例1の光ファイバ照明装置は、シリコーンゴム樹脂のある面からは光を視認できなかった。
また、実施例1の光ファイバ照明装置は、光の拡散が少なく、5m以上離れた遠くからもくっきり見えた。
これに対して比較例1の光ファイバ照明装置は、2m以上離れると、にじんで星状のデザインを認識することが出来なかった。
【0030】
以上のように、本発明によれば、軽量な光ファイバ照明装置及びその製造方法を提供することができる。
さらに、本発明によれば、両面から光を視認できる光ファイバ照明装置及びその製造方法を提供することができる。
また、光の拡散が少なく、くっきり見える光ファイバ照明装置及びその製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 光ファイバ
3 コア
4 クラッド
7 収縮チューブ
8 筒状部材
9 接着剤
10 光源
C 接続端部
D デザイン領域
R 固定部
S 天井

【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意のデザイン領域を側面に有する複数本の光ファイバと、前記光ファイバの端部に設けられた光源とを備える光ファイバ照明装置であって、
前記複数本の光ファイバは、溶融変形した光ファイバが固化した固定部で接合されていることを特徴とする光ファイバ照明装置。
【請求項2】
前記固定部は、前記任意のデザイン領域周辺に位置することを特徴とする請求項1記載の光ファイバ照明装置。
【請求項3】
前記任意のデザイン領域は鏡像対称性を有することを特徴とする請求項1記載の光ファイバ照明装置。
【請求項4】
任意のデザイン領域を有する複数本の光ファイバと、光源とを備える光ファイバ照明装置の製造方法であって、
複数本の光ファイバを配置する第1工程と、
前記複数本の光ファイバの側面に先端部が発熱する加熱手段を押し付け、溶融変形させて任意のデザイン領域を形成するとともに、溶融変形した光ファイバを複数本の光ファイバ間に介在させる第2工程と、
該溶融変形した光ファイバを冷却して固定部とすることで複数本の光ファイバを接合する第3工程と、
第1工程の前、第1工程の後、第2工程の後、第3工程の後のいずれかで、前記光ファイバの端部に光源を接続する工程を有することを特徴とする光ファイバ照明装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−232116(P2010−232116A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−80833(P2009−80833)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000153591)株式会社巴川製紙所 (457)
【Fターム(参考)】