説明

光ファイバ結合装置

【課題】ビームの光軸と光ファイバの中心軸との軸合わせを行っても、集光レンズの焦点と光ファイバ端面の中心点とがずれない光ファイバ結合装置を提供する。
【解決手段】空洞部18を有する球状容器17と、空洞部18に導入された光ファイバの端面を球状容器17の中心に保持する固定手段を備えた球状ホルダ12と、球状ホルダ12の空洞部18に導入された集光レンズ35と、球状ホルダ12を回転自在に支持する収納ケース14と、球状ホルダ12に接続された上面操作レバー43と、側面操作レバー44と、上面操作レバー43の回動を一の平面上における往復回動に限定する回動方向規制機構50と、側面操作レバー44の回動を一の平面上における往復回動に限定する回動方向規制機構65を備えた光ファイバ結合装置10。上面操作レバー43の往復回動によって球状ホルダ12に保持された光ファイバの軸があおり方向に回動すると共に、側面操作レバー44の往復回動によって光ファイバの軸が回転方向に回動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は光ファイバ結合装置に係り、特に、光ファイバの中心軸と光源から照射されたビームの光軸を一直線上に合わせる光軸調整機構を備えた光ファイバ結合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ発振器等の光源から照射されたビームを、光ファイバを介して伝送する際には、光の結合損失を最小化するために、集光レンズによって集光されたビームの焦点を光ファイバ端面の中心点に合わせると同時に、ビームの光軸と光ファイバの中心軸とを直線状に合わせる光軸調整が必要となる(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平4−311906
【0003】
図10は、従来の光軸調整方法を例示する模式図であり、図示しない光源から照射されたビームαが集光レンズ35によって集光され、光ファイバ端末40のフェルール41の端面に露出した光ファイバに入射する様子が描かれている。
この場合、まず集光レンズ35の焦点Fと光ファイバの中心点Cとが重なるように、レンズホルダ16の位置や光ファイバ端末40の位置が調整される(図10(a))。
【0004】
つぎに、光ファイバ70の後端から出力される光量をモニタすることにより、ビームαの光軸と光ファイバの中心軸とが一直線上に揃っているかがチェックされる。
そして、光軸が揃っていない場合には、光ファイバ端末40を保持しているホルダ80の角度を微調整することで、両者の軸合わせが行われる(図においては光ファイバ端末40の角度を上下に変位させるあおり方向の調整が示されているが、実際には、光ファイバ端末40の角度を左右に変位させる回転方向の調整も行われる)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図10(b)に示すように、光ファイバ端末40の角度を調整すると、せっかく一致させた集光レンズ35の焦点Fと光ファイバの中心点Cとがずれてしまい、両者の位置合わせを再度行う必要が生じる。
このため従来は、集光レンズ35の焦点Fと光ファイバの中心点Cとの位置合わせと、ビームαの光軸と光ファイバの中心軸との軸合わせを延々繰り返す必要があり、極めて非効率的な作業が強いられていた。
【0006】
この発明は、従来の上記問題を解決するために案出されたものであり、集光レンズの焦点と光ファイバの中心点との位置合わせが完了した後に、ビームの光軸と光ファイバの中心軸との軸合わせを行っても、集光レンズの焦点と光ファイバの中心点とがずれることのない光ファイバ結合装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載の光ファイバ結合装置は、内部に空洞部を有する球状容器と、上記空洞部に導入された光ファイバの端面を、上記球状容器の中心に保持するための固定手段を備えた球状ホルダと、この球状ホルダの空洞部に導入された光結合の対象物と、上記球状ホルダを回転自在に支持するケースと、上記球状ホルダに接続された第1の操作レバーと、上記球状ホルダに接続された第2の操作レバーと、上記第1の操作レバーの回動を、一の平面上における往復回動に限定する第1の回動方向規制手段と、上記第2の操作レバーの回動を、一の平面上における往復回動に限定する第2の回動方向規制手段とを備え、上記第1の操作レバーの往復回動によって上記球状ホルダに保持された光ファイバの軸があおり方向(上下方向)に回動すると共に、上記2の操作レバーの往復回動によって当該光ファイバの軸が上記あおり方向と直交する回転方向(左右方向)に回動するように、上記第1の操作レバー、第2の操作レバー、第1の回動方向規制手段及び第2の回動方向規制手段が配置されていることを特徴としている。
【0008】
第1の操作レバーは、光ファイバの軸を、その端部を中心にして、鉛直面に沿って上下に回動させるためのものであり、第1の回動方向規制手段により、その回動方向が上記鉛直面と平行する平面上における往復回動に限定されている。また、第2の操作レバーは、光ファイバの軸を、その端部を中心にして、水平面に沿って左右に回動させるためのものであり、第2の回動方向規制手段により、その回動方向が上記水平面と平行する平面上における往復回動に限定されている。
回動方向規制手段回動方向規制手段
【0009】
請求項2に記載の光ファイバ結合装置は、請求項1の装置であって、さらに、上記第1の回動方向規制手段が、リニアガイドと、このリニアガイドの側面に設けられた当接片部と、上記第1の操作レバーを当接片部側に押圧する付勢手段と、上記当接片部の反対面に先端が接触した調整ネジとを備え、この調整ネジの回転により、第1の操作レバーが上記リニアガイドに沿って往復回動する構造を有しており、上記第2の回動方向規制手段が、リニアガイドと、このリニアガイドの側面に設けられた当接片部と、上記第2の操作レバーを当接片部側に押圧する付勢手段と、上記当接片部の反対面に先端が接触した調整ネジとを備え、上記調整ネジの回転により、第2の操作レバーが上記リニアガイドに沿って往復回動する構造を有していることを特徴としている。
【0010】
請求項3に記載の光ファイバ結合装置は、請求項2の装置であって、さらに、上記第1の回動方向規制手段が、上記第1の操作レバーを上記当接片部とリニアガイドの側面との角部に押圧する付勢手段を備えたことを特徴としている。
【0011】
請求項4に記載の光ファイバ結合装置は、請求項2の装置であって、さらに、上記第1の回動方向規制手段における当接片部の一面に、上記第1の操作レバーを係合する凹部が形成されていることを特徴としている。
【0012】
請求項5に記載の光ファイバ結合装置は、請求項1〜4の装置であって、さらに、上記固定手段が、上記球状ホルダの空洞部を仕切る隔壁と、この隔壁に形成された光ファイバ挿通用の貫通孔と、光ファイバを収容した光ファイバ端末を上記隔壁に固定するコネクタとから構成されることを特徴としている。
【0013】
請求項6に記載の光ファイバ結合装置は、請求項1〜5の装置であって、さらに、上記光結合の対象物が、レンズホルダ内に収納された集光レンズであり、この集光レンズの焦点が、上記球状ホルダの中心に位置決めされていることを特徴としている。
【0014】
請求項7に記載の光ファイバ結合装置は、請求項6の装置であって、さらに、上記レンズホルダの外周面に弾力性を備えた素材よりなる防塵リングが嵌装されており、このレンズホルダを上記球状ホルダの空洞部に導入した際に、上記防塵リングの外周面が空洞部の内壁面に密着することを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
この発明に係る光ファイバ結合装置によれば、光ファイバの端部が球状容器の中心に保持されており、第1の操作レバー及び第2の操作レバーの回動によって球状容器と共に光ファイバの軸が端部を中心に回動する構造を備えているため、光ファイバの軸をあおり方向または回転方向に回動させても、光ファイバ端部の中心点が球状容器の中心点からずれることがない。
このため、一旦合わせた集光レンズの焦点位置と光ファイバの中心点とが、光軸合わせによってずれることを有効に回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、この発明に係る光ファイバ結合装置10を示すものであり、球状ホルダ12と、球状ホルダ12の収納ケース14と、円筒状のレンズホルダ16とを備えている。
【0017】
球状ホルダ12は、アルミニウム等の金属材よりなる球状容器17を主体としてなり、この球状容器17には円柱状の空洞部18が設けられている。
この空洞部18は、円板状の隔壁20で仕切られており、この隔壁20の中心部には、光ファイバのフェルール挿通用の貫通孔20aが形成されている。
また、この隔壁20の一方の表面には、光ファイバ端末装着用のコネクタ22が形成されている。
上記隔壁20は、空洞部18の内面に突設された円形の鍔部23に、ネジ(図示省略)を介して固定されている。
【0018】
球状容器17は、省スペース化及び軽量化の観点から、球の一部を切削することより形成された円柱部24を有しているが、これは必須の構成ではない。
したがって、円柱部24を有さない真球状の球状容器17を用いることも当然に可能である。
【0019】
球状ホルダ12の収納ケース14は、押さえ部材25と、蓋部材26と、ケース本体27とを備えている。
ケース本体27は、上面開口部27aと、前面開口部27bと、後面開口部27cとを備えている。
【0020】
上面開口部27aから球状ホルダ12がケース本体27内に装填された後、押さえ部材25及び蓋部材26によって上面開口部27aが閉塞される。その後、蓋部材26の貫通孔26aに挿通されたネジ28を、ケース本体27のネジ穴27dに螺合することにより、蓋部材26はケース本体27に固定される。
【0021】
押さえ部材25の上面には、複数のバネ収納凹部25aが形成されており、その中には圧縮コイルバネ29の下端側が装填されている。また、蓋部材26の下面にも、複数のバネ収納凹部26bが形成されており、蓋部材26を押さえ部材25に被せた際には、圧縮コイルバネ29の上端側が各凹部26b内に挿入される。この結果、押さえ部材25は、各圧縮コイルバネ29の反発力により、球状容器17側に常時付勢されることになる。
【0022】
ケース本体27の底面には、球面状の受部31が形成されており、球状容器17の球面部30と接触する。
また、押さえ部材25の下面には、球面状の押圧部25bが形成されており、球状容器17の球面部30と接触する。
球状ホルダ12は、その空洞部18の前面開口部18a及び後面開口部18bが、それぞれケース本体27の前面開口部27b及び後面開口部27cと連通する方向に合わせられる。
【0023】
レンズホルダ16内の先端部には、集光レンズ35が嵌装されている。
レンズホルダ16は、スタンド36によって水平方向に支持されている。
レンズホルダ16の先端部外周面には、溝37が円周に沿って形成されており、この溝37には防塵リング38が嵌装される。この防塵リング38は、弾力性を備えたシリコンゴム等よりなる。
【0024】
図2に示すように、レンズホルダ16の先端部は、ケース本体27の前面開口部27b及び球状ホルダ12の前面開口部18aから球状ホルダ12の空洞部18内に挿入される。
この際、レンズホルダ16の先端部外周面に嵌装された防塵リング38が、球状ホルダ12の空洞部18の内周面に密着する。
【0025】
また、球状ホルダ12の隔壁20に設けられたコネクタ22に対して、光ファイバ端末40が装着される。
この結果、光ファイバ端末40の先端部から突出したフェルール41が、隔壁20の貫通孔20aに挿通され、集光レンズ35側に導出される。
【0026】
この際、フェルール41の端面に露出した光ファイバコアの中心点Cが、球状ホルダ12の中心点に一致するように、各部の位置や寸法(隔壁20やコネクタ22の取付位置、貫通孔20aの形成位置、フェルール41の突出量等)が設定されている。
また、後述のように、集光レンズ35の焦点位置Fが光ファイバの中心点Cと正確に一致するように、レンズホルダ16は位置決めされる。
【0027】
球状ホルダ12の上面には、レバー固定用のネジ穴42が設けられており、上面操作レバー43の先端部に設けられたネジ43aをネジ穴42に螺合させることにより、上面操作レバー43が球状ホルダ12の上面に固定される。
この上面操作レバー43の後端部は、押さえ部材25の開口部25c及び蓋部材26の開口部26aを介して外部に取り出される。
【0028】
図3は、球状ホルダ12の前面開口部18a側から観察した断面図であり(図示の便宜上、レンズホルダ16の記載は省略)、この図より明らかなように、球状ホルダ12の側面にもレバー固定用のネジ穴42が設けられている。そして、側面操作レバー44の先端部に設けられたネジ44aを、ケース本体27の側面開口部27dから挿通してネジ穴42に螺合させることにより、側面操作レバー44が球状ホルダ12の側面に固定される。
【0029】
ここで、上面操作レバー43を図2における左右方向に動かせば、球状ホルダ12があおり方向に回動する。
また、上面側断面図である図4に示すように、側面操作レバー44を図中の左右方向に動かせば、球状ホルダ12が回転方向(あおり方向と直交する方向)に回動することとなる。
ただし、球状ホルダ12は上記の通り球面部30を備えてがおり、これと接触する押さえ部材25の押圧部25b及びケース本体27の受部31も球面をなしているため、このままの状態では、上面操作レバー43及び側面操作レバー44を動かすことによって、球状ホルダ12はあらゆる方向に無秩序に回動することになる。
このため、収納ケース14の外部において、上面操作レバー43及び側面操作レバー44の回動方向を規制する機構が設けられている。
【0030】
図5(a)はその一例として、上面操作レバー43の回動方向規制機構50を示しており、筐体51と、筐体51内に配置されたリニアガイド52と、筐体51の底面に設けられたレバー導入孔53と、レバー導入孔53から筐体51内に挿通された上面操作レバー43を押圧する圧縮コイルばね54と、筐体51の壁部に設けられたネジ穴55と、このネジ穴55に螺合された調整ネジ56と、引張りコイルばね57とを備えている。
この上面操作レバー43の回動方向規制機構50は、蓋部材26の上面に取り付けられている。
【0031】
レバー導入孔53は、上面操作レバー43が所定の範囲で往復移動できるように、十分な大きさを備えている。
また、上記リニアガイド52は、直線状のレール58に沿って往復移動可能に配置された可動部59を備えており、この可動部59の側面59aには接触片部60が突設されている。
上面操作レバー43には圧縮コイルバネ54の先端チップ54aが当接しているため、上面操作レバー43は接触片部60の第1の面60aに向けて常時押圧されている。また、調整ネジ56の先端部は、接触片部60の第2の面60bに当接している。
【0032】
この結果、調整ネジ56を右に回動させて先端部の突出量を増大させると、図5(b)に示すように、リニアガイド52の可動部59が図中右方向に移動し、上面操作レバー43を同方向に傾かせる。
また、調整ネジ56を左に回動させて先端部の突出量を減少させると、圧縮コイルバネ54の反発作用により、上面操作レバー43及びリニアガイド52の可動部59が、図中左方向に移動し、元の位置に復帰する。
【0033】
引張りコイルばね57は、上面操作レバー43の頭頂部に接続されたピン61と、筐体51内部の底面に固定されたピン62との間に掛け渡されているため、上面操作レバー43は接触片部60の第1の面60aと可動部59の側面59aとの間の角部に常時付勢されている。この結果、上面操作レバー43に余計な遊び(ガタ)が生じることがない。
【0034】
図6(a)は、側面操作レバー44の回動方向規制機構65を示しており、上記と同様の筐体51と、筐体51内に配置されたリニアガイド52と、筐体51の底面に設けられたレバー導入孔53と、レバー導入孔53から筐体51内に挿通された側面操作レバー44を押圧する圧縮コイルばね54と、筐体51の壁部に設けられたネジ穴55と、このネジ穴55に螺合された調整ネジ56とを備えている。
この側面操作レバー44の回動方向規制機構65は、ケース本体27の側面に取り付けられている。
【0035】
レバー導入孔53は、側面操作レバー44が所定の範囲で往復移動できるように、十分な大きさを備えている。
また、上記リニアガイド52は、直線状のレール58に沿って往復移動可能に配置された可動部59を備えており、この可動部59の側面59aには接触片部60が突設されている。
側面操作レバー44には圧縮コイルバネ54の先端チップ54aが当接しているため、側面操作レバー44は接触片部60の第1の面60aに向けて常時押圧されている。また、調整ネジ56の先端部は、接触片部60の第2の面60bに当接している。
【0036】
この結果、調整ネジ56を右に回動させて先端部の突出量を増大させると、図6(b)に示すように、リニアガイド52の可動部59が図中右方向に移動し、側面操作レバー44を同方向に傾かせる。
また、調整ネジ56を左に回動させて先端部の突出量を減少させると、圧縮コイルバネ54の反発作用により、側面操作レバー44及びリニアガイド52の可動部59が、図中左方向に移動し、元の位置に復帰する。
【0037】
上記の通り、上面操作レバー43が引張りコイルばね57によって常時一定方向に付勢されている結果、球状ホルダ12自体も同方向に付勢されることになる。
このため、側面操作レバー44も接触片部60の第1の面60aと可動部59の側面59aとの間の角部に常時付勢されることになり、引張りコイルばね57を特に設けなくとも、側面操作レバー44に余計な遊びが生じることがない。
【0038】
なお、上記のように、引張りコイルばね57によって上面操作レバー43を常時一定方向に付勢する代わりに、引張りコイルばね57を側面操作レバー44の回動方向規制機構65側に設け、側面操作レバー44を常時一定方向に付勢するように構成しても、同様の効果を奏することができる。
【0039】
以下、この光ファイバ結合装置10における光軸の調整方法を説明する。
まず、図7(a)に示すように、集光レンズ35による焦点位置Fと、光ファイバの中心点C(=球状ホルダ12の中心点)との位置合わせを行う。
この焦点位置Fと中心点Cとの一致/不一致は、例えば、光ファイバ70の後端からファイバチェッカ(図示省略)の可視光レーザを入射させ、レンズホルダ16の後端から出射された可視光レーザβが、予め設定された光路上の複数のピンホールを通過できるか否かによって確認される。
そして、可視光レーザβがレンズホルダ16の後端から出射されない場合や、出射されてもピンホールを通過できない場合には、焦点位置Fと中心点Cとが一致していないものと判定し、レンズホルダ16の位置や高さ、角度等が微調整される。
【0040】
つぎに、レンズホルダ16内に光源(図示省略)からのビームαを導くと共に、光ファイバ70の後端から出力される光量を測定し、入力ビームαの光量との比率を算出する。
そして、出力光量の比率が所定の閾値を下回っている場合には、光ファイバの中心軸がビームの光軸と一致していないものと判断し、上面操作レバー43の調整ネジ56や側面操作レバー44の調整ネジ56を任意の方向に回転させ、球状ホルダ12のあおり角度や回転角度を微調整する。
この間、光ファイバ70の後端から出力される光量を観察しておき、上記閾値以上となった時点で、調整を終了させる。
【0041】
この光ファイバ結合装置10の場合、光ファイバ端末40を支持する球状ホルダ12が基本的に球形状を備えており、光ファイバの中心点Cがこの球体の中心点に配置されているため、図7(b)に示すように、球状ホルダ12の向きを調整し、光ファイバ端末40の角度が変位しても、光ファイバの中心点Cは依然として球状ホルダ12の中心に位置しており、集光レンズ35の焦点位置Fとの間にずれが生じることはない。
このため、集光レンズ35の焦点位置Fと光ファイバの中心点Cとの位置を再度調整することが不要となる。
【0042】
また、レンズホルダ16の先端部の外周面には防塵リング38が嵌装されており、この防塵リング38の外周面が球状ホルダ12の空洞部18の内面に密着する構造を備えているため、集光レンズ35と光ファイバとの間に塵芥が介在することを有効に抑制できる。このため、例えば高出力のレーザビームが塵芥に照射されて高熱を発するといった事故の発生を、未然に防止することができる。
このように、防塵リング38をレンズホルダ16の先端部に装着させ、その外周面を球状ホルダ12の空洞部18の内面に密着させる構造を採用することにより、集光レンズ35の焦点距離が極めて短い場合であっても、有効に防塵空間を形成できる利点を備えている。
【0043】
この防塵リング38は、上記のように弾性材より構成されている。また、防塵リング38の内径が、レンズホルダ16の溝37の直径よりも若干大きく設定されると共に、防塵リング38の厚さが、レンズホルダ16の溝37の幅よりも若干薄く設定されているため、防塵リング38と溝37との間に若干の隙間が確保されている。
このため、光軸調整のために球状ホルダ12が回転しても、この位置変動をうまく吸収して空洞部18の内面に対する密着状態を維持することができる。
【0044】
上記においては、上面操作レバー43を引張りコイルばね57によって一定方向に常時付勢することにより、上面操作レバー43及び側面操作レバー44の遊びを抑制する構成を示したが、操作レバーの遊びの抑制方法はこれに限定されるものではない。
【0045】
例えば図8に示すように、接触片部60の第1の面60aにV字状の凹部72を形成し、この凹部72に上面操作レバー43を係合することが該当する。この場合、上面操作レバー43は圧縮コイルバネ54によって接触片部60の凹部72側に常時付勢されるため、引張りコイルばね57を特に用いなくても、上面操作レバー43の遊びを抑制できる。
なお、上記V字状の凹部72を、上面操作レバー43の回動方向規制機構50側に設ける代わりに、側面操作レバー44の回動方向規制機構65側に設け、側面操作レバー44をこの凹部72に係合させるように構成してもよい。
【0046】
上記においては、押さえ部材25の押圧部25bを球面状に形成すると共に、ケース本体27の底面の受部31を球面状に形成した例を示したが、図9に示すように、押圧部25b及び受部31を円錐台形状に形成することもできる。
この結果、球状ホルダ12の外面は球面ではなく円錐面と線接触することになるが、これによって回転の円滑さが損なわれることはない。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】この発明に係る光ファイバ結合装置の構造を示す分解図である。
【図2】光ファイバ結合装置の側面側断面図である。
【図3】光ファイバ結合装置の前面側断面図である。
【図4】光ファイバ結合装置の上面側断面図である。
【図5】上面操作レバーの回動方向規制機構を示す断面図である。
【図6】側面操作レバーの回動方向規制機構を示す断面図である。
【図7】光ファイバ結合装置の光軸調整方法を示す説明図である。
【図8】上面側操作レバーの回動方向規制機構の他の構成例を示す断面である。
【図9】この発明に係る光ファイバ結合装置の他の構成例を示す分解図である。
【図10】従来の光軸調整方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0048】
10 光ファイバ結合装置
12 球状ホルダ
14 収納ケース
16 レンズホルダ
17 球状容器
18 球状ホルダの空洞部
20 隔壁
22 コネクタ
25 押さえ部材
25b 押さえ部材の押圧部
26 蓋部材
27 ケース本体
29 圧縮コイルバネ
31 受部
32 押さえ部
35 集光レンズ
36 スタンド
37 溝
38 防塵リング
40 光ファイバ端末
41 フェルール
43 上面操作レバー
44 側面操作レバー
50 回動方向規制機構
52 リニアガイド
53 レバー導入孔
54 圧縮コイルバネ
55 ネジ穴
56 調整ネジ
58 レール
59 可動部
60 接触片部
65 回動方向規制機構
70 光ファイバ
F 集光レンズの焦点位置
C 光ファイバの中心点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空洞部を有する球状容器と、上記空洞部に導入された光ファイバの端部を、上記球状容器の中心に保持するための固定手段を備えた球状ホルダと、
この球状ホルダの空洞部に導入された光結合の対象物と、
上記球状ホルダを回転自在に支持するケースと、
上記球状ホルダに接続された第1の操作レバーと、
上記球状ホルダに接続された第2の操作レバーと、
上記第1の操作レバーの回動を、一の平面上における往復回動限定する第1の回動方向規制手段と、
上記第2の操作レバーの回動を、一の平面上における往復回動に限定する第2の回動方向規制手段とを備え、
上記第1の操作レバーの往復回動によって上記球状ホルダに保持された光ファイバの軸があおり方向に回動すると共に、上記2の操作レバーの往復回動によって当該光ファイバの軸が上記あおり方向と直交する回転方向に回動するように、上記第1の操作レバー、第2の操作レバー、第1の回動方向規制手段及び第2の回動方向規制手段が配置されていることを特徴とする光ファイバ結合装置。
【請求項2】
上記第1の回動方向規制手段が、リニアガイドと、このリニアガイドの側面に設けられた当接片部と、上記第1の操作レバーを当接片部側に押圧する付勢手段と、上記当接片部の反対面に先端が接触した調整ネジとを備え、この調整ネジの回転により、第1の操作レバーが上記リニアガイドに沿って往復回動する構造を有しており、
上記第2の回動回動方向規制手段が、リニアガイドと、このリニアガイドの側面に設けられた当接片部と、上記第2の操作レバーを当接片部側に押圧する付勢手段と、上記当接片部の反対面に先端が接触した調整ネジとを備え、上記調整ネジの回転により、第2の操作レバーが上記リニアガイドに沿って往復回動する構造を有していることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ結合装置。
【請求項3】
上記第1の回動方向規制手段が、上記第1の操作レバーを上記当接片部とリニアガイドの側面との角部に押圧する付勢手段を備えたことを特徴とする請求項2に記載の光ファイバ結合装置。
【請求項4】
上記第1の回動方向規制手段における当接片部の一面に、上記第1の操作レバーを係合する凹部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の光ファイバ結合装置。
【請求項5】
上記固定手段が、上記球状ホルダの空洞部を仕切る隔壁と、この隔壁に形成された光ファイバ挿通用の貫通孔と、光ファイバを収容した光ファイバ端末を上記隔壁に固定するコネクタとから構成されることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の光ファイバ結合装置。
【請求項6】
上記光結合の対象物が、レンズホルダ内に収納された集光レンズであり、
この集光レンズの焦点が、上記球状ホルダの中心に位置決めされていることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の光ファイバ結合装置。
【請求項7】
上記レンズホルダの外周面に弾力性を備えた素材よりなる防塵リングが嵌装されており、このレンズホルダを上記球状ホルダの空洞部に導入した際に、上記防塵リングの外周面が空洞部の内壁面に密着することを特徴とする請求項6に記載の光ファイバ結合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−109140(P2013−109140A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253777(P2011−253777)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(503175900)株式会社 ファースト メカニカル デザイン (7)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】