説明

光ファイバ装置およびその製造方法

【課題】より低コストでの製造や補修が可能であり、かつ、より品質の安定した光学膜や処理加工面を、利得媒体ファイバの端部に付与すること。
【解決手段】長さ500mm以下の光ファイバを端末ファイバ2として用意し、その一方の端面2aに光学膜4を形成しまたは表面加工を施し、その後、該光ファイバの他方の端面を、利得媒体ファイバ1の端面1Aに接続し、端末ファイバ2として、光ファイバ装置を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利得媒体ファイバと光学膜等を一体的に組み合わせた光ファイバ装置とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
イッテルビウム(Yb)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、ネオジム(Nd)などの希土類元素をコア部分に添加した光ファイバ(特に、ダブルクラッドファイバ)は、光変換効率が高く、光通信用増幅器などの種々の光増幅器、産業用レーザ装置を構成するために用いられている(例えば、特許文献1〜4)。
上記のような波長変換や増幅が可能な物質を含んだ光ファイバを、「利得媒体ファイバ」と呼ぶ。
利得媒体ファイバを用いてレーザを構成するためには、該ファイバに対して共振器を付与しなければならず、ミラーと該利得媒体ファイバとの結合が必要になる。また、該利得媒体ファイバを用いて増幅器を構成する場合にも、該利得媒体ファイバに対して種々のフィルターやミラーが設けられ、この場合も、フィルターやミラーと利得媒体ファイバとの結合が必要になる。
【0003】
例えば、レーザ発振用の共振器を利得媒体ファイバに付与する場合、共振器を構成するためのミラーの配置態様には、主として次の2種類のものが挙げられる。
一つは、図8(a)に示すように、利得媒体ファイバの両端に一対の外部ダイクロイックミラー(光バンドパスフィルタ)201、202を配置して外部共振器200を構成する態様である(例えば、特許文献5)。しかし、このような態様では、利得媒体ファイバと各ミラーとを空間的に結合させねばならないために、ある程度大きい空間が必要であり、かつ、ミラーやコリメータなどの高価な部品が必要となるので、装置の大きさや価格が問題になる。
他の一つは、図8(b)に示すように、利得媒体ファイバの少なくとも一方の端面(通常、励起光を入力する側)に高反射膜301を直接的に蒸着してダイクロイックミラーとする態様である(例えば、特許文献6、7)。他方の端面にも反射膜を直接形成してミラーとしてもよいが、同図の例では、ファイバ端面をフラット研磨面とすることで、レーザ光出射側の低反射ミラー(フレネル反射ミラー)302としている。
【0004】
利得媒体ファイバの端面に反射膜を直接形成する態様は、別個の外部ミラーを用いる態様と比べて部品の数が少なく、かつ、構成が簡単であるために、装置全体が小さくなり、コスト低減の効果もある。
【0005】
しかしながら、本発明者等が、上記のような光ファイバ端面に反射膜を直接的に形成するプロセスを詳細に検討したところ、その形成プロセスでは、スパッタリングや電子ビーム蒸着などの高真空状態で膜形成が行われており、そこで次のような問題が生じていることがわかった。
(i)利得媒体ファイバは、通常、全長20m以上にも達する長いものであるために、そのような長い光ファイバを加工用のチャンバー内に収容して加工するのでは、光ファイバの取り扱いやチャンバー内へのセットに多大な手間を要するため、反射膜の形成に長時間を要する。このような取り扱い上の問題は、膜形成のみならず、端面研磨の場合にも存在する問題である。
(ii)蒸着中にチャンバー内部の温度が上がり、ファイバの外側を被覆するポリマー層からガスが放出され反射膜の特性が劣化する。
(iii)反射膜の特性の再現性が低く、加工毎の品質にばらつきがある。
(iv)ポリマー層からガスが放出するため、また、長尺の光ファイバをチャンバー内に収納可能なようにチャンバーの体積を大きくする必要が有るため、真空引きに長時間を要する。
また、前記(ii)のポリマー層からのガスの問題に起因して、一回の加工で蒸着可能なファイバの本数(または総長さ)が限られているという問題があることもわかった。
また、ファイバ端面に反射膜や反射面を直接的に形成する態様では、反射膜や反射面が損傷を受けた場合に、その修理のために、ファイバ全体を加工対象として取り扱わねばならず、修理のために長い時間と高い費用が必要になるという問題があることもわかった。
以上のような問題は、反射膜のみならず、あらゆる利得媒体ファイバの端面に、種々の光学膜を付与する場合や、鏡面等の形成などのための表面加工を施す場合にも、同様に存在する問題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−103751号公報
【特許文献2】特開平9−205239号公報
【特許文献3】特開2000−503476号公報
【特許文献4】特開2002−277669号公報
【特許文献5】特願2007−273842号公報
【特許文献6】特開2007−13181号公報
【特許文献7】特開2007−250951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記問題を解決し、より低コストでの製造や補修が可能であり、かつ、より品質の安定した光学膜や処理加工面を、利得媒体ファイバの端部に付与することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明は、次の特徴を有するものである。
(1)利得媒体ファイバの少なくとも一方の端面に、長さ500mm以下の光ファイバが端末ファイバとして接続された構造を有し、
該端末ファイバには、利得媒体ファイバとの接続に係る端面の側とは反対側の端面に、光学膜が形成されているかまたは表面加工が施されている、
光ファイバ装置。
(2)利得媒体ファイバと端末ファイバとの接続が、
(i)利得媒体ファイバと端末ファイバの接続に係る端面同士を接触させ融着させてなる接続であるか、
(ii)利得媒体ファイバと端末ファイバのそれぞれの接続に係る端面にコネクタを装着し、それらコネクタ同士を連結することによる接続である、
上記(1)記載の光ファイバ装置。
(3)利得媒体ファイバがダブルクラッドファイバであり、端末ファイバが断面構造において該利得媒体ファイバと同じ層構造を持ったダブルクラッドファイバであり、
利得媒体ファイバと端末ファイバとの接続が、両者のうちの少なくとも一方に対し、その接続に係る端面から所定の長さまで、第2クラッドとその外側の層を除去して第1クラッドを露出させ、両者の接続に係る端面同士を接触させ融着させてなる接続である、
上記(1)記載の光ファイバ装置。
(4)利得媒体ファイバと端末ファイバとが接続された部分において、第2クラッドとその外側の層が除去されている区間の長さの合計が2mm以上であり、それによって、利得媒体ファイバの第1クラッドを伝播する光が端末ファイバの第1クラッドに入るのが抑制される構成となっている、上記(3)記載の光ファイバ装置。
(5)利得媒体ファイバと端末ファイバとが接続された部分において、第2クラッドとその外側の層を除去することで露出した第1クラッドに、ポンプ光を伝送するファイバが、コンバイナーによって接続されている、上記(3)記載の光ファイバ装置。
(6)利得媒体ファイバと端末ファイバとが接続された部分において、第2クラッドとその外側の層を除去することで露出した第1クラッドが、該第1クラッドの材料よりも屈折率の高い材料によって被覆されている、上記(3)記載の光ファイバ装置。
(7)利得媒体ファイバが、エアホールを第2クラッドとして有するエアホール型ダブルクラッドファイバであり、端末ファイバが断面構造において該利得媒体ファイバと同じ層構造を持ったエアホール型ダブルクラッドファイバであり、
端末ファイバは、利得媒体ファイバとの接続に係る端面の側とは反対側の端面から所定の長さまでエアホールが封止されている、
上記(1)記載の光ファイバ装置。
(8)利得媒体ファイバがダブルクラッドファイバであり、端末ファイバが断面構造において該利得媒体ファイバと同じ層構造を持ったダブルクラッドファイバであり、
該端末ファイバの第1クラッドには、利得媒体ファイバの第1クラッド内を伝播して該端末ファイバの第1クラッドに入る光を吸収する物質が添加されている、
上記(1)〜(7)のいずれかに記載の光ファイバ装置。
(9)上記(1)〜(8)のいずれかに記載の光ファイバ装置の製造方法であって、
該光ファイバ装置の端末ファイバとして用いられ得る長さ500mm以下の光ファイバを用意し、その一方の端面に光学膜を形成するかまたは表面加工を施した後、前記光ファイバの他方の端面を、利得媒体ファイバの端面に接続し端末ファイバとすることを特徴とする、前記製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、長尺の利得媒体ファイバの端面を直接加工対象とするのではなく、その加工部分を分離し、即ち、利得媒体ファイバに接続可能な長さ500mm以下の短い光ファイバを端末ファイバとして用意し、その短い端末ファイバの端面に対して、表面加工(フラット鏡面研磨など)や光学膜の形成を行った後、それを利得媒体ファイバに接続している。
この製造方法およびそれによって得られた構造により、ファイバ端面に直接的に光学膜の形成等を行うメリットはそのままに、光学膜の形成等の加工を行う際の取り扱い上の問題、ポリマー層からのガス発生の問題、ファイバの総長の制限による膜形成可能な数の制限の問題等を無くすことが可能になり、生産性の向上やコスト低減、容易な部品交換などが可能になる。
【0010】
また、本発明では、利得媒体ファイバに短い端末ファイバが接続された構造となっているので、その接続部分や端末ファイバに種々の機能を加えることが可能になっている。
例えば、利得媒体ファイバがダブルクラッドファイバである場合、同様のクラッド構造を持った端末ファイバを接続し、その接続部において、両者のうちの少なくとも一方に対し、その接続に係る端面から所定の長さまでの区間の第2クラッド(エアホール構造の場合にはその外側の層も含んでよい)を除去しておけば、第1クラッド中を伝播してきたポンプ光等が端末ファイバに無用に伝播するのを抑制し、コア中の光だけを伝播させることが可能になる。その結果、ポンプ光が出力させるのを抑制したり、ポンプ光によって多層膜が劣化するのを抑制できるようになる。
また、利得媒体ファイバがエアホール型ダブルクラッドファイバである場合、同様のクラッド構造を持った端末ファイバを接続し、該端末ファイバの光学膜等を形成すべき端面から所定の長さの区間のエアホールを封止しておけば、外部から入力されるポンプ光の結合効率がエアホールによって阻害されることがなくなる。
また、利得媒体ファイバがダブルクラッドファイバである場合、端末ファイバも同様の構造を持った光ファイバとし、該端末ファイバの第1クラッドに、利得媒体ファイバの第1クラッド内を伝播してきたポンプ光などの光を吸収する物質を添加しておけば、吸収されなく第1クラッドへ伝播してきたポンプ光が第1クラッドで吸収され、光学膜などの損傷を防ぐことができる。このような構成は、ポンプ光を利得媒体の端末から入力する場合に有用である。
また、利得媒体ファイバがエアホール型ダブルクラッドファイバの場合には、エアークラッド層を取り除き、1以上のポンプ光伝送用の光ファイバを、コンバイナーなどによって、露出した第1クラッドと接続すれば、該ポンプ光をコリメータなどで区間結合しなくてもファイバのみで簡単に結合でき、光結合損失を大幅に低減できる。また、ポンプ光を閉じ込めるために、前記コンバイナーが接続された第1クラッドの部分を、該第1クラッドの材料より低い屈折率のポリマーを用いて被覆することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、当該光ファイバ装置の構成の一例を示す断面図である。各部の寸法関係は、説明のために誇張して描いている。また、図中の利得媒体ファイバ1の中央のループは、該利得媒体ファイバ1が充分に長いかまたは曲げた状態の光ファイバであることを示唆する表現である。
【図2】図2は、ファイバ増幅器の配置構成の一例を示す模式図である。
【図3】図3は、エアホール型ダブルクラッドファイバの構造例を示す図である。
【図4】図4は、端末ファイバの最外端面に対する好ましい処理を順に示した斜視図である。
【図5】図5は、利得媒体ファイバと端末ファイバが共にダブルクラッドファイバである場合の接続の態様例を示す図である。
【図6】図6は、利得媒体ファイバと端末ファイバが共にエアホール型ダブルクラッドファイバである場合の接続の態様例を示す図である。
【図7】図7は、ファイバエアホール型ダブルクラッドファイバを例として、端部の第2クラッドを除去する場合の様子を見せた斜視図である。
【図8】図8は、利得媒体ファイバに共振器を付与する場合のミラーの構成例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の製造方法に言及しながら、本発明の光ファイバ装置の態様を詳細に説明する。尚、本発明の具体的な用途としては、ファイバレーザ装置やファイバ増幅器などが挙げられるが、ファイバレーザ装置とファイバ増幅器では、光学膜の態様など、細部の構成(公知技術の部分)が互いに異なる。以下の説明では、ファイバレーザ装置を代表的な具体例として取り上げて行うが、該説明は、ファイバ増幅器の主たる構成の説明をも兼ねるものである。ファイバ増幅器に特有の細部の構成については、付加的に言及する。
図1は、当該光ファイバ装置の構成の一例を示す断面図であって、当該光ファイバ装置が共振器を備えた光ファイバレーザ装置である場合の一態様を示している。
当該光ファイバ装置は、図1に示すように、利得媒体ファイバ1の少なくとも一方の端面1Aに、長さ500mm以下の光ファイバが端末ファイバ2として接続された構造を有する。該端末ファイバ2には、利得媒体ファイバ1との接続に係る端面とは反対側の端面(以下、最外端面)2aに、フラット鏡面研磨を施した後、多層膜(高反射ミラー)が光学膜4として形成されている。
同図の例では、利得媒体ファイバ1の他方の端面1Bの側にも、長さ500mm以下の別の光ファイバが端末ファイバ3として接続されており、その最外端面は、表面加工としての研磨加工によってフラットな鏡面(フレネル反射鏡)が形成されており、低反射ミラー3aとなっている。2つの端末ファイバ2、3の各最終端面のミラー(4、3a)によって共振器が構成され、ポンプ光L1が端末ファイバ2を通して利得媒体ファイバ内に入力され、利得媒体ファイバ内で生じたレーザ光L2が端末ファイバ3を通して出射される構成となっている。このような入出力の構成は、前方励起方式と呼ばれている。
また、前記のような前方励起方式の他に、後方励起方式、双方向励起方式を採用してもよい。後方励起方式では、ポンプ光を端末ファイバ3側のミラーから利得媒体ファイバ1内に入力し、端末ファイバ2側のミラーを高反射ミラーとして、両ミラー間でレーザ発振を生じさせ、該レーザ光を、再び端末ファイバ3を通して出射するといった構成例が挙げられる。また、双方向励起方式では、ポンプ光の光分布を均一化させるために、ポンプ光を両方の端末ファイバ2、3から同時に利得媒体ファイバ1内に入力し、該ファイバ1において発生した光をファイバ3を通して出射するといった構成例が挙げられる。共振器を構成する両端のミラーは、それぞれの励起方式に応じて、適切なものを選択し組み合わせればよい。
尚、図1では、共振器の好ましい例として、利得媒体ファイバの両方に端末ファイバを接続する態様を示しているが、用途や必要に応じて、片方の端末ファイバの替わりに外部光学機器を用いてもよい。
【0013】
当該光ファイバ装置の製造方法では、先ず、端末ファイバ2を用意し、その一方の端面2aに光学膜4を形成しておく。該光学膜の形成に先立って、該端面にフラットな鏡面研磨加工を施しておくことが好ましい。ガラスのフレネル反射率は3〜4%であるために、該光学膜の形成に替えて、最外端面への表面加工であってもよい。
以下、「光学膜」および「表面加工を施された端面」を総称して「光学膜等」とも呼び、光学膜を形成することおよび表面加工を施すことを総称して「光学膜等の形成」とも呼ぶ。
図1の例のように、利得媒体ファイバの両端に端末ファイバを接続する場合には、他方の端末ファイバ3の端面3aにも、必要な光学膜等を形成しておく。
次に、図1に示すように、光学膜等が形成された端末ファイバ(図の例では両方の端末ファイバ2、3)を、利得媒体ファイバ1の端面1A、1Bに接続し、本発明の光ファイバ装置を得る。
【0014】
当該光ファイバ装置の用途としては、例えば、光ファイバ型レーザ装置、光ファイバ型増幅器、ASE(Amplified Spontaneous Emission)光源などの波長変換器、レーザガイド(この場合、光学膜はミラーではなく反射防止膜になる)などが挙げられる。
当該光ファイバ装置を構成するために用いられる利得媒体ファイバの断面構造(コアの径、クラッドの構造、中心から外側までの屈折率プロフィール)、各部の母材、添加される物質、端末ファイバの断面構造(コアの径、クラッドの構造、中心から外側までの屈折率プロフィール)、端末ファイバの最外端面に付与される光学膜等の特性は、これらの用途に応じて、レーザ装置や増幅器が構成されるように決定し、組み合わせればよい。
【0015】
図2は、ファイバ増幅器の配置構成の一例を示す模式図である。同図の例では、利得媒体ファイバ1の片側(右方の側)だけに端末ファイバ3が接続され、もう一方の側(図の左方の側)の端面は、8度の斜め研磨面となっている。斜め研磨面は、フレネル反射による反射率を低減するので、それによって、戻り光を抑制する効果が得られる。端末ファイバ3の端面も、斜め研磨面としてもよいが、図2の例では、フレネル反射率をほぼ0%として入射光とファイバとの結合効率を高めるという光学特性を持つ多層膜5が形成されている。図2の構成によって、ポンプ光L20と、シグナル光(種光)L10とが利得媒体ファイバ1に入力されると、利得媒体ファイバ内で増幅されたシグナル光L30が出力される。
【0016】
レーザ装置や光増幅器を構成するための利得媒体ファイバとしては、背景技術の説明で述べたとおり、ダブルクラッドファイバが好ましいものとして例示され、コア部分には、Yb、Er、Tm、Ndなどの希土類元素と、Al、Ge、Pなどから一つ以上選択された元素が添加される。
ダブルクラッドファイバのなかでも、図3に光軸に垂直な断面の様子を模式的に示すように、多数のエアホール12hが集合して第2クラッド12となっているエアホール型ダブルクラッドファイバは、ポリマークラッド型のダブルクラッドファイバと比べて、NA(開口数)を大きくし易く、耐熱性が高く、スキュー光を低減できるなどの特徴を持っており、利得媒体ファイバの構造として好ましく用いることができる。
希土類元素をコア部分に添加したエアホール型ダブルクラッドファイバの断面構造、寸法、各部の材料などについては、従来技術を参照してよい(Optics Communication, Vol.186(2003), p.311-317, Quantum Electronics Vol.13(2007), p.573-578)。
図3に示したエアホール型ダブルクラッドファイバの構造例を以下に挙げる。
コア10:Ybドープ石英ガラス(外径5μm〜60μm)
第1クラッド11(ポンプ光ガイド用):純粋石英ガラス(層厚60μm〜600μm)
第2クラッド12:エアホール構造(層厚約5μm〜約50μm)
サポート層13:純粋石英ガラス(層厚150μm〜500μm)
該サポート層の外側には、さらに複数の保護層(低屈折シリコーン樹脂からなる層、さらにその外側のフッ素樹脂層など)が形成されるが、図示や説明は省略する。
保護層を含んだファイバ全体の外径は800μm〜1700μm程度となる。
【0017】
当該光ファイバ装置に用いられる利得媒体ファイバの全長は、用途やコア吸収係数に応じて異なるが、0.5m〜50m程度であり、5m〜30mが好ましい範囲であるが、利得媒体ファイバのコア吸収係数によって全長が異なるために、ポンプガイドの総吸収係数を10dBに合わせるのが好ましい。このような長い光ファイバは、背景技術の説明において述べたとおり、その端面に直接的に光学膜形成等を施すことに種々の問題が存在しているので、本発明の構成の利点が顕著となる。
【0018】
端末ファイバの断面構造は、当該光ファイバ装置全体を一本の連続した光ファイバの形態とする点から、利得媒体ファイバの断面構造と一致させることが好ましい。例えば、利得媒体ファイバがエアホール型ダブルクラッドファイバであれば、端末ファイバも、同じ寸法のコア構造や開口数NAを持ったエアホール型ダブルクラッドファイバとするのが好ましい態様である。コア寸法やコアNAが異なると、接続された部分から散乱(反射)を起こし、損失が増える場合があるので、コア径やコアNAの誤差は±10%以内とするのが好ましい。
端末ファイバのコアには、必ずしも希土類元素などの利得媒体となる物質が添加されている必要はない。端末ファイバは、自体の最外端面と利得媒体ファイバとを好ましく連結するだけの単なる伝送用の光ファイバであってもよい。
また、端末ファイバの構造は、少なくともコア外径とファイバ全体の最外径が、利得媒体ファイバのそれらと一致しているだけであってもよく、それ以外のクラッドの構造は、利得媒体ファイバの構造と異なっていてもよい。
また、出力側の端末ファイバの開口数NAは、Al、P、Ge、F、および、Bからなる郡から選択された材料で制御することが好ましい。
【0019】
端末ファイバの長さは、その太さによっても異なるが、本発明の目的を達成する点から、また、共振器の変換効率の点から、500mm以下が好ましい長さである。この端末ファイバの長さの上限値は、その値を境として、ファイバの取り扱い性や端面への成膜加工性が急激に変化するというような臨界的な値ではないが、本発明者等が本発明の目的を達成し得るとして設定した適切な値である。
端末ファイバの長さが500mmを超えると、本発明が解決しようとする問題(即ち、長い利得媒体ファイバをチャンバー内に収容して加工するときの問題)が、端末ファイバへの加工においても現れるようになり、また、端末ファイバ内での光損失も顕著に現れるようになる。
一方、端末ファイバの長さの下限は、特に限定はされないが、10mm程度が適切な下限である。端末ファイバの長さが下限値10mmを下回ると、短すぎて取り扱い性が悪く、また、接続する際、光学膜が熱損傷を受けるという問題も生じる。
以上から、端末ファイバの好ましい長さの範囲は、下限値10mm〜上限値500mmであり、そのなかでも20mm〜100mmがより好ましい長さである。
【0020】
端末ファイバの最外端面に形成される光学膜等は、該最外端面に付け加えられた1以上の膜や、表面加工された面自体である。表面加工された面は、二乗平均粗さ(RMS)が0.1μm以下のフラット鏡面、レンズ面など、その表面自体がなす凹凸面や湾曲面の他、最外端面の表面を含む表層が変質したものであってもよい。光学膜は、その下地に表面加工された面を含んでいてもよい。
光学膜等の機能は、レーザ装置や増幅器を構成するために必要な種々の反射機能、反射防止機能、フィルター機能などが挙げられる。
【0021】
光学膜は、金属酸化物、無機酸化物、半導体材料、誘電体材料などからなる多層膜(即ち、多層膜高反射膜、多層膜反射防止膜、選択性フィルタなど)、種々の材料からなる単一の膜或いは多層膜などが挙げられ、その構成と分光特性、成膜法については公知技術を参照してもよい。
多層膜の構成例としては、SiO2 、TaOx 、Ta25 、TiO2 、Si、ZrO2 、HfO2 、GaN、SiNx 、ITO(Indium Tin Oxide)、Al23 、および、SiCからなる群から2つの材料を選択し、それらの材料からなる膜をファイバ端面上に交互に積層する態様が挙げられる。
ガラスファイバの端面に多層膜を形成する場合、膜の耐性、ガラスとの密着性、分光特性の点から、SiO2 膜とTaOX 膜とを交互に積層するのが好ましい態様である。ガラスファイバの端面に接する層は、SiO2 膜、TaOX 膜のどちらであってもよいが、SiO2 膜をガラスファイバの端面に接する層とすることで、該端面への密着性が良好となる。
多層膜の形成には、スパッタリング法、CVD法、電子ビーム蒸着法などを用いることが可能であるが、生産性や膜厚の精度からは、電子ビーム蒸着法が望ましい方法である。
【0022】
図4は、端末ファイバがエアホール型ダブルクラッドファイバである場合の好ましい最外端面の処理方法を模式的に示している。同図の端末ファイバ2は、コア20、第1クラッド21、エアホール構造からなる第2クラッド22、サポート層23を有する。その外側の層は図示を省略している。
上記発明の効果の説明で述べたとおり、端末ファイバがエアホール型ダブルクラッドファイバである場合、図4(a)に示すように、最外端面2aに第2クラッド(エアホール構造)22の各エアホールが開口していると、研磨加工する際、エアホールの中にゴミ・埃・水滴などが入り、ファイバ特性を悪化させる場合がある。
そこで、図4(b)に示すように、最外端面から特定の長さまでエアホールを封止した上で、図4(c)に示すように、光学膜4等の付与を行う。
エアホールの封止区間の長さは、光ファイバの径やポンプ光の波長によっても異なるが、概ね50mm以下、特に0.1mm〜5mmが効果的で好ましい長さである。
また、端末ファイバの最外端面からポンプ光を入力する場合に、最外端面にエアホールが開口していると、ポンプ光が該エアホールの開口へ漏れるために、入力ポンプ光の結合効率が低下する。そこで最外端面から特定の長さまでを封止することが好ましいが、サポート層の外径が1mm、第2クラッドの外径が600μmである場合には、エアホールの好ましい封止区間は、sinθ=NAから、0.2mm〜0.3mmが好ましい。
図6(a)〜(c)の端末ファイバ2の断面には、エアホールが封止された状態が現れており、エアホール22は最外端面まで達していない。
端末ファイバの長さが50mm以下の場合には、端末ファイバの全長にわたってエアホールを封止してもよい。また、接続部のエアホールを一定区間除去してもよいが、そのまま接続しても構わない。
エアホールの封止は、バーナートーチ、放電、レーザなどによってファイバを加熱して行うことが好ましい。
【0023】
多層膜によって高反射膜を形成し、ファイバ共振器を構成する場合、その分光特性は、目的に応じて設計すればよいが、例えば、利得媒体ファイバがYb添加ファイバ、ポンプ光の波長が915nmまたは976nmの場合には、1000nmから1150nmまでの波長領域では、ほぼ100%の反射率、850nmから990nmまでの波長領域では、ほぼ100%の透過率を持つといった分光特性が挙げられる。
部分反射膜を形成する場合、その反射率は、レーザの変換効率を高めるために5%〜60%が望ましいが、自励パルスの発生や非線形特性も注意すべきである。
【0024】
端末ファイバの最外端面に施される表面加工としては、目的によって異なるが、機械研磨によるフラット鏡面加工、斜め鏡面加工、レンズ面の加工、端面が最初から鏡面となるようにファイバを切断する方法はダイアモンドブレイドの切断、レーザ切断、ダイヤモンドペンの切断などが挙げられる。
【0025】
利得媒体ファイバと端末ファイバとを接続する方法は、両者の間を光が伝播し得るものであれば特に限定はされない。
例えば、図5(a)に示すように、利得媒体ファイバ1と端末ファイバ2のそれぞれの接続に係る端面同士を全面的に接触させ、融着させて結合する方法、図5(b)に示すように、両者の接続に係る端面同士を部分的に接触させ、融着させて結合する方法(詳細は後述)、または、図5(c)に示すように、両者の接続に係る端面にコネクタを装着し該コネクタ同士を連結する方法などが挙げられる。
光ファイバの端面同士の融着には、公知の融着技術を参照してよく、バーナートーチや放電などが利用可能である。
コネクタによって接続する構成とすることで、端末ファイバの着脱が容易になり、端末ファイバを交換部品として保有しておけば、メンテナンスも容易になる。
【0026】
上記発明の効果の説明で述べたとおり、利得媒体ファイバと端末ファイバが、互いに同じ断面構造を持ったダブルクラッドファイバである場合、その接続部において、両者のうちの少なくとも一方に対し、所定長さの区間だけ第2クラッド(エアホール構造の場合にはその外側の層も含んでよい)を除去しておけば、第1クラッド中を伝播してきたポンプ光等が端末ファイバに無用に伝播するのを抑制することができる。
図6は、エアークラッド型のダブルクラッドファイバを例として、第2クラッドとその外側の層を除去する態様を示した断面図である。図6に示す端末ファイバ2は、利得媒体ファイバ1と同じ断面構造を持ったエアークラッド型のダブルクラッドファイバである。各部の符号は、図3、図4と同様である。また、図7(a)は、利得媒体ファイバ1の端面1Aを見せた斜視図であり、図7(b)は、そこから第2クラッドと外層を除去した様子を見せた斜視図である。各部の符号は、図3、図6と同様である。
図6(a)の例では、利得媒体ファイバ1と端末ファイバ2が、共に第2クラッドとその外層を除去されている。符号Jは、両者の接続界面(融着面)である。このような態様は、両方の第1クラッドが露出してるので接合のための位置合わせが容易であるというメリットもある。
図6(b)の例では、利得媒体ファイバ1の方だけが第2クラッドと外層を除去されており、図6(c)の例では、端末ファイバ2の方だけが第2クラッドと外層を除去されている。
図6(a)〜(c)のいずれの場合も、除去した第2クラッドの長さの合計xは同様であって、剥離に適した長さxが存在する。該長さxは、利得媒体ファイバの第1クラッドを伝播してきた光が端末ファイバへ伝播し難くなるような値を少なくとも確保すればよい。例えば、一般的なファイバの仕様の一例として、コア径40μm、開口数NA=0.08、サポート層の外径1mm、第2クラッドの外径600μmの場合には、長さxは、2mm以上、特に10mm〜100mmが好ましい範囲である。
除去した第2クラッドの長さの合計xは、光の伝播を抑制する点からは、大きい値であるほど効果があるが、xが大き過ぎると(除去区間が長すぎると)、ファイバが割れやすくなり、取り扱いが困難になる。
【0027】
図6に示した接続部では、第2クラッドと外層を除去したことで、第1クラッドが露出している。この接続部を利用して、利得媒体ファイバの第1クラッド中を伝播してきたポンプ光を効果的に除去するために、または、外界に向かわせるために、第1クラッドの材料よりも屈折率の高い材料(樹脂、オイルなど)によって、露出した第1クラッドを被覆してもよい。
また、接続部に露出した第1クラッド部に、ポンプ光を結合するためのコンバイナーを用いて1以上のポンプ光ファイバを接続すれば、ポンプ光を区間結合しなくてもファイバのみで簡単に結合できる。この構成によれば、ポンプ光が光学膜へ伝播しないために、光学膜が損傷することがなく、安定的にファイバ装置の動作が可能になる。
【0028】
上記発明の効果の説明で述べたとおり、利得媒体ファイバと端末ファイバが、互いに同じ断面構造を持ったダブルクラッドファイバである場合、利得媒体ファイバの第1クラッド内を伝播してくる光(ポンプ光など)を吸収する物質を、端末ファイバの第1クラッドにドーパントとして添加しておくのが好ましい態様である。
そのような物質としては、ポンプ光の波長に応じて、Yb、Nd、Er、Tm、および、Ndからなる群から選択された1以上の材料が挙げられる。
【実施例1】
【0029】
図1に示すように、利得媒体ファイバ1の両端にそれぞれ端末ファイバ2、3を融着によって接続し、後方励起方式のレーザ装置とした具体例を示す。
入力すべきポンプ光の波長は、915nmであり、発振させるレーザ光の中心波長は1080nmである、
利得媒体ファイバ1と2つの端末ファイバ2、3は、いずれもコアにYb、Alが添加された同一構造のエアホール型ダブルクラッドファイバである。ポンプ光L1を入力する側の端末ファイバ2の最外端面には、フラット鏡面研磨後、SiO2 /Ta25からなる多層膜(高反射膜)を形成し、レーザ光L2の出力側の端末ファイバ2の最外端面は、研磨によるミラー面(フレネル反射ミラー)とした。
【0030】
〔端末ファイバの最外端面への光学膜等の加工〕
利得媒体ファイバ1の全長は15m、2つの端末ファイバ2、3の長さは、それぞれ50mmである。
端末ファイバの最外端面は、多層膜に覆われていても、エアホール(第2クラッド)が開口していると、入力ポンプ光の結合効率が低下するので、2つの端末ファイバ共に、外周のファイバ被覆層を剥離した後、端面から300μmの長さまで、エアホールをバナートーチ(放電でもよい)で加熱し封止した。
その後、2つの端末ファイバ共に、最外端面に対して機械研磨を施し、封止長さが250μmになるようにフラット端面とした後に、表面傷を無くすためにフッ酸(HF)処理を1分間行った。
出力側の端末ファイバ3の最外端面は、得られたフラット端面をそのまま反射面として用いた。また、信号光反射側の最外端面には、さらに、電子ビーム蒸着法によって、SiO2 /Ta25からなる多層膜を形成した。
該多層膜の分光特性は、1000nmから1150nmまでの波長領域では、ほぼ100%の反射率、850nmから990nmまでの波長領域では、ほぼ100%の透過率を持たせた。
【0031】
〔利得媒体ファイバの両端面への端末ファイバの融着〕
その後、Yb添加ファイバ(利得媒体ファイバ)1に対して、その両端の接続面から長さ2mm程度にわたってエアホールを封止し、同様に、2つの端末ファイバ2、3に対しても、それぞれの接続面から長さ2mm程度にわたってエアホールを封止し、綺麗な断面(平滑な平面形状)が出るように切断し、図1に示すように、2つの端末ファイバ2、3を利得媒体ファイバの両端面に融着によって接合し共振器として、ファイバ型レーザを得た。
【実施例2】
【0032】
本実施例では、図1に示す構成のファイバ型レーザにおいて、利得媒体ファイバ1、光学膜4を形成した端末ファイバ2のそれぞれの接続に係る面に対し、図6(a)に示すように、該接続に係る面から20mmまでの区間に渡って樹脂被服を剥いた後、接続に係る面から15mmの位置に、長さ1mm程度のエアホール封止区間を形成した。出力側の端末ファイバ3に対しては、第2クラッドとその外層を除去することはしなかった。
接続に係る面から15mmの位置にエアホール封止区間を形成する目的は、後述するフッ酸溶液でファイバのエアホールをエッチングする際に、フッ酸溶液がエアホールの奥まで入り込んでファイバ特性が劣化するのを防ぐためである。即ち、エアホール封止区間を、エアホールのエッチングのストッパとして利用するためである。
次に、エアホールをエッチングし、簡単に第2クラッドとその外層を除去するために、樹脂被服を剥いた部分をフッ酸溶液にて1時間エッチングした後に、ダイヤモンドブレード、ダイヤモンドペン、レーザなどの石英カッターを用い石英ガラスを傷付け、第2クラッドとその外層を除去し、第1クラッドを露出させ、第1クラッドの露出部分の長さが10mmになるようにその先端部分を切断した。
最後に、利得媒体ファイバ1と2つの端末ファイバ2、3とを、第1クラッド同士をつき合わせて融着させた。
他の加工は、実施例1と同様である。
個々の接続部分における、それぞれの第2クラッドの除去区間の長さxは、10mm×2=20mmである。
エアホール部分を除去することによって、ポンプ光入力側については、第2クラッドを伝播してきたポンプ光が多層膜へ伝播するのを低減させ、高反射膜の劣化を抑制し得ることがわかった。
また、第1クラッドから伝播してきたポンプ光を、除去または外界へ向かわせるために接続部で露出した第1クラッドの外側に、それより屈折率が高い樹脂を被覆することによって、第1クラッドを伝播するポンプ光を、ほぼ全て除去し得ることがわかった。
【実施例3】
【0033】
本実施例では、図1の態様において、光学膜が形成された側の端末ファイバ2として、コア中にYbが含まないものを用い、該端末ファイバ2の第1クラッド中にポンプ光を吸収させるためにYbをドーパントとして添加したこと、出力側の端末ファイバ3のコア中にYb、Alをドーパントとして添加し、開口数NAを0.08としたこと以外は、実施例1と同様にレーザ装置を構成した。
得られたレーザ装置は、915nmのポンプ波長に対し、発振中心波長が1080nmであり、70%の高いスロープ効率、発振パワーが500W以上になっても光学膜が壊れることなく、安定的に動作させ得ることがわかった。
【実施例4】
【0034】
本実施例では、ポンプ光入力側の端末ファイバの最外端面に、1080nmの発振光に対する反射率がほぼ100%になるように、SiO2 /Ta25多層膜を形成したこと、および、レーザ光出射側の端末ファイバの最外端面には、該端面をフラット加工した後に、レーザ光に対して30%の部分反射率を持つようにSiO2 /Ta25多層膜を形成したこと以外は、実施例1と同様にレーザ装置を構成した。
得られたレーザ装置は、915nmのポンプ波長に対し、発振中心波長が1080nmであり、かつ、75%の高いスロープ効率であり、発振パワーが500W以上になっても光学膜が壊れることなく、安定的に動作させ得ることがわかった。
【実施例5】
【0035】
本実施例では、2つの端末ファイバと利得媒体ファイバとのそれぞれの接続端部に着脱自在のファイバコネクタを装着し、それによって接続を行うようにしたこと以外は、実施例4と同様にレーザ装置を構成した。
高反射膜付き端部と反対の側にファイバコネクタを付けることにより、融着加工なしで共振器を容易に構成できるようになった。更に、ファイバコネクタによる着脱可能な構成としたことにより、多層膜が破損した場合でも、利得媒体ファイバの端面を直接加工するような手間がいらず、簡単に取り替えることができるために修理時間が短縮されることもわかった。
また、増幅ファイバ装置の応用に関しても光学膜を高反射膜から反射防止膜に変更される以外は前述した技術と同様であり、同じ効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明によって、光ファイバ型のレーザ装置や増幅器において、利得媒体ファイバの端面に直接的に形成された光学膜や処理加工面の利点はそのままに、該光学膜等を低コストで容易に製造や補修ができるようになり、また、その光学膜の品質は、より安定するようになった。
【符号の説明】
【0037】
1 利得媒体ファイバ
1A 一方(ポンプ光入力側)の端面
1B 他方(レーザ光出力側)の端面
2 一方の端部ファイバ
2a 最外端面
3 他方の端部ファイバ
3a 最外端面
4 光学膜
L1 ポンプ光
L2 レーザ光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利得媒体ファイバの少なくとも一方の端面に、長さ500mm以下の光ファイバが端末ファイバとして接続された構造を有し、
該端末ファイバには、利得媒体ファイバとの接続に係る端面の側とは反対側の端面に、光学膜が形成されているかまたは表面加工が施されている、
光ファイバ装置。
【請求項2】
利得媒体ファイバと端末ファイバとの接続が、
(i)利得媒体ファイバと端末ファイバの接続に係る端面同士を接触させ融着させてなる接続であるか、
(ii)利得媒体ファイバと端末ファイバのそれぞれの接続に係る端面にコネクタを装着し、それらコネクタ同士を連結することによる接続である、
請求項1記載の光ファイバ装置。
【請求項3】
利得媒体ファイバがダブルクラッドファイバであり、端末ファイバが断面構造において該利得媒体ファイバと同じ層構造を持ったダブルクラッドファイバであり、
利得媒体ファイバと端末ファイバとの接続が、両者のうちの少なくとも一方に対し、その接続に係る端面から所定の長さまで、第2クラッドとその外側の層を除去して第1クラッドを露出させ、両者の接続に係る端面同士を接触させ融着させてなる接続である、
請求項1記載の光ファイバ装置。
【請求項4】
利得媒体ファイバと端末ファイバとが接続された部分において、第2クラッドとその外側の層が除去されている区間の長さの合計が2mm以上であり、それによって、利得媒体ファイバの第1クラッドを伝播する光が端末ファイバの第1クラッドに入るのが抑制される構成となっている、請求項3に記載の光ファイバ装置。
【請求項5】
利得媒体ファイバと端末ファイバとが接続された部分において、第2クラッドとその外側の層を除去することで露出した第1クラッドに、ポンプ光を伝送するファイバが、コンバイナーによって接続されている、請求項3に記載の光ファイバ装置。
【請求項6】
利得媒体ファイバと端末ファイバとが接続された部分において、第2クラッドとその外側の層を除去することで露出した第1クラッドが、該第1クラッドの材料よりも屈折率の高い材料によって被覆されている、請求項3に記載の光ファイバ装置。
【請求項7】
利得媒体ファイバが、エアホールを第2クラッドとして有するエアホール型ダブルクラッドファイバであり、端末ファイバが断面構造において該利得媒体ファイバと同じ層構造を持ったエアホール型ダブルクラッドファイバであり、
端末ファイバは、利得媒体ファイバとの接続に係る端面の側とは反対側の端面から所定の長さまでエアホールが封止されている、
請求項1に記載の光ファイバ装置。
【請求項8】
利得媒体ファイバがダブルクラッドファイバであり、端末ファイバが断面構造において該利得媒体ファイバと同じ層構造を持ったダブルクラッドファイバであり、
該端末ファイバの第1クラッドには、利得媒体ファイバの第1クラッド内を伝播して該端末ファイバの第1クラッドに入る光を吸収する物質が添加されている、
請求項1〜7のいずれか1項に記載の光ファイバ装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の光ファイバ装置の製造方法であって、
該光ファイバ装置の端末ファイバとして用いられ得る長さ500mm以下の光ファイバを用意し、その一方の端面に光学膜を形成するかまたは表面加工を施した後、前記光ファイバの他方の端面を、利得媒体ファイバの端面に接続し端末ファイバとすることを特徴とする、前記製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−205926(P2010−205926A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49720(P2009−49720)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(000003263)三菱電線工業株式会社 (734)
【Fターム(参考)】