説明

光ファイバ複合架空地線

【課題】アルミ被覆鋼線又は亜鉛メッキ鋼線の耐食性を向上させ、光ファイバ複合架空地線の機械的、電気的特性を良好に維持すると共に、長期間安定して使用することができる光ファイバ複合架空地線を提供する。
【解決手段】ステンレス鋼管8内にルースに収納される複数本の光ファイバ5と、ステンレス鋼管8内の空隙部に光ファイバ5相互の間隙を埋めるように充填されるジェリーコンパウンド9とを有するルースチューブ型の光ファイバユニット11に、複数本のアルミ被覆鋼線6又は亜鉛メッキ鋼線を撚り合わせた光ファイバ複合架空地線において、前記光ファイバユニット11が、1本の前記ステンレス鋼管8をアルミ外管10内にルースに収納して形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光ファイバ複合架空地線に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、増加する電力需要に伴い、保守管理等の情報も益々複雑多岐にわたるようになり、光ファイバを送電線の架空地線と組み合わせ、送電線と通信線の機能を一体化した光ファイバ複合架空地線(OPGW)が開発され実用化されている。
【0003】
この光ファイバ複合架空地線としては、例えば、図4に示すように、アルミ管2内に収納される長手方向に複数のらせん溝4が形成されたアルミスペーサ3と、各らせん溝4内に収納される複数本の光ファイバ5とを有する光ファイバユニット1に、複数本のアルミ被覆鋼線6を撚り合わせた固定型の架空地線がある。なお、本明細書に記載されたアルミはすべてアルミ合金を含むものである。
【0004】
また、図5に示すように、ステンレス鋼管8内にルースに収納される複数本の光ファイバ5と、ステンレス鋼管8内の空隙部に光ファイバ5相互の間隙を埋めるように充填されるジェリーコンパウンド9とを有するルースチューブ型の光ファイバユニット7に、複数本のアルミ被覆鋼線6又は亜鉛メッキ鋼線を撚り合わせたステンレスルースチューブ型の架空地線等がある。
【特許文献1】特開平11−242146号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記光ファイバ複合架空地線において、特に図5に示すステンレスルースチューブ型の架空地線は、構造が比較的簡単で製造も容易なこと、光ファイバの多心化に対応し易いこと、引張応力や曲げ応力の作用による光ファイバの歪みを緩和し易いこと等から海外で多く使用されている。
【0006】
しかしながら、この種の光ファイバ複合架空地線を日本のような海に囲まれて腐食環境の厳しいところで使用すると、光ファイバユニットのステンレス鋼管と直接接触する部分におけるアルミ被覆鋼線又は亜鉛メッキ鋼線のアルミ又は亜鉛が腐食して内部の鋼線が露出する恐れが多くなる。このため、光ファイバ複合架空地線を長期間使用中に、その機械的、電気的特性が大きく損なわれるという問題があり、日本ではまだ広く使用されていない。
【0007】
本発明は上記の課題を解決し、アルミ被覆鋼線又は亜鉛メッキ鋼線の耐食性を向上させ、光ファイバ複合架空地線の機械的、電気的特性を良好に維持すると共に、長期間安定して使用することができる光ファイバ複合架空地線を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、ステンレス鋼管内にルースに収容される複数本の光ファイバと、ステンレス鋼管内の空隙部に光ファイバ相互の間隙を埋めるように充填されるジェリーコンパウンドとを有するルースチューブ型の光ファイバユニットに、複数本のアルミ被覆鋼線又は亜鉛メッキ鋼線を撚り合わせた光ファイバ複合架空地線において、前記光ファイバユニットが、前記ステンレス鋼管1本を、アルミ外管内にルースに収容して形成したものである。
【0009】
上記構成の光ファイバ複合架空地線によると、ルースチューブ型の光ファイバユニットのアルミ外管が前記アルミ被覆鋼線又は亜鉛メッキ鋼線と直接接触することになる。そうすると、相互に接触する二つの金属間の電気化列におけるイオン化傾向が等しくなるか、若しくは、接近するので、光ファイバ複合架空地線の使用中に、光ファイバユニットのアルミ外管と直接接触する部分におけるアルミ被覆鋼線又は亜鉛メッキ鋼線のアルミ又は亜鉛が侵食するのを抑制し得る。従って、アルミ被覆鋼線又は亜鉛メッキ鋼線の耐食性が向上して鋼線が露出するようなことがなくなり、光ファイバ複合架空地線の機械的、電気的特性を良好に維持すると共に、腐食環境の厳しいところでも長期間安定して使用することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光ファイバ複合架空地線によると、前記ルースチューブ型の光ファイバユニットがステンレス鋼管をアルミ外管内に収納して形成されるので、そのアルミ外管が前記アルミ被覆鋼線又は亜鉛メッキ鋼線と直接接触することになる。その結果、光ファイバ複合架空地線の使用中に、光ファイバユニットのアルミ外管と直接接触する部分におけるアルミ被覆鋼線又は亜鉛メッキ鋼線のアルミ又は亜鉛が侵食するのを抑制し得る。これにより、アルミ被覆鋼線又は亜鉛メッキ鋼線の耐食性が向上して鋼線が露出するようなことがなくなり、光ファイバ複合架空地線の機械的、電気的特性を良好に維持すると共に、腐食環境の厳しいところでも長期間安定して使用することができる。
【0011】
また、アルミ外管内にステンレス鋼管を収納することにより、アルミ外管を造管しながらその内部にステンレス鋼管を収納することが可能になる。従って、ステンレス鋼管の外周面に押出加工等によりアルミ被覆層を設けるものよりも低費用でステンレス鋼管とアルミ被覆鋼線又は亜鉛メッキ鋼線との直接接触を容易に防ぐことが可能になり、光ファイバ複合架空地線のコストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施形態を図面により詳細に説明する。図1に示す光ファイバ複合架空地線は、ステンレス鋼管(SUS管)8内にルースに(緩く)収納される、UV樹脂(紫外線硬化樹脂)で一次被覆を施された複数本の光ファイバ5と、ステンレス鋼管8内の空隙部に光ファイバ5相互の間隙を埋めるように充填される、防水性、応力緩和特性に優れた、例えば、シリコン系、ポリブデン系のジェリーコンパウンド9とを有し、更に前記ステンレス鋼管8をアルミ外管10内に収納して形成される1本のステンレスルースチューブ型の光ファイバユニット11を備える。
【0013】
前記ステンレス鋼管8をアルミ外管10内に収納する場合には次のようにして行う。即ち、ステンレス鋼管8内に予め複数本の光ファイバ5をルースに収納してジェリーコンパウンド9を充填する。次に、このステンレス鋼管8にアルミテープを縦添えしながら、該テープをステンレス鋼管8の外周に円管状に成形し、アルミテープの両側縁突き合わせ部を溶接してアルミ外管10を形成すると共に、その内部にステンレス鋼管8をルースに収納する。その後、アルミ外管10は、必要に応じて、連続的に、若しくは、別工程において、縮径ダイス又は成形ロール等により縮径してもよい。
【0014】
このように、アルミ外管10内にステンレス鋼管8を収納することにより、アルミ外管10を造管しながらその内部にステンレス鋼管8を収納することが可能になるので、ステンレス鋼管8の外周面に押出加工等によりアルミ被覆層を設けるものよりも低費用でステンレス鋼管8と後記のアルミ被覆鋼線6又は亜鉛メッキ鋼線との直接接触を容易に防ぐことができる。
【0015】
前記構成の光ファイバユニット11は、更に該ユニット11を中心にしてその外周に同心状に複数本(6本)のアルミ被覆鋼線6を一層に撚り合わせ、このようにして光ファイバ複合架空地線を得る。なお、アルミ被覆鋼線6の代わりに亜鉛メッキ(溶射を含む。以下同じ)鋼線を使用して光ファイバユニット11の外周に撚り合わせるようにしてもよい。
【0016】
上記構成の光ファイバ複合架空地線によると、ルースチューブ型の光ファイバユニット11のアルミ外管10が前記アルミ被覆鋼線6又は亜鉛メッキ鋼線と直接接触することになり、ステンレス鋼管8が前記亜鉛メッキ鋼線6又は亜鉛メッキ鋼線とは接触しなくなる。そうすると、相互に接触する二つの金属間の電気化列におけるイオン化傾向が等しくなるか、若しくは、接近するので、光ファイバ複合架空地線の使用中に、光ファイバユニット11のアルミ外管10と直接接触する部分におけるアルミ被覆鋼線6又は亜鉛メッキ鋼線のアルミ又は亜鉛が侵食するのを抑制し得る。その結果、アルミ被覆鋼線6又は亜鉛メッキ鋼線の耐食性が向上して内部の鋼線が露出するようなことがなくなり、光ファイバ複合架空地線の機械的、電気的特性を良好に維持することができ、性能が安定して信頼性が向上する。
【0017】
図2に示す光ファイバ複合架空地線は、図1に示す光ファイバ複合架空地線の変形例である。この光ファイバ複合架空地線は、光ファイバユニット11の外周面に撚り合わされる複数本のアルミ被覆鋼線6が内外二層構造になっていて、内側のアルミ被覆鋼線6の断面形状がセグメント形状であり、外側のアルミ被覆鋼線6の断面形状が円形状に形成されるものである。なお、アルミ被覆鋼線6の代わりに亜鉛メッキ鋼線を使用してもよい。その他の構成は図1に示すものと同一である。
【0018】
図3に示す光ファイバ複合架空地線は、図1に示す光ファイバ複合架空地線の更なる変形例である。この光ファイバ複合架空地線は、3本の光ファイバユニット11と4本のアルミ被覆鋼線6とを撚り合わせて撚線コア12を形成し、該撚線コア12の外周に更に複数本のアルミ線13を撚り合わせて構成されるものである。なお、アルミ線13の代わりにアルミ被覆鋼線6を使用してもよい。また、このアルミ被覆鋼線6及び撚線コア12のアルミ被覆鋼線6の代わりに亜鉛メッキ鋼線を使用してもよい。その他の構成は図1に示すものと同一である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態を示す横断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態を示す横断面図である。
【図3】本発明の更に他の実施形態を示す横断面図である。
【図4】従来の光ファイバ複合架空地線の1例を示す横断面図である。
【図5】従来の光ファイバ複合架空地線の他例を示す横断面図である。
【符号の説明】
【0020】
5 光ファイバ
6 アルミ被覆鋼線
8 ステンレス鋼管
9 ジェリーコンパウンド
10 アルミ外管
11 光ファイバユニット
12 撚線コア
13 アルミ線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステンレス鋼管内にルースに収容される複数本の光ファイバと、ステンレス鋼管内の空隙部に光ファイバ相互の間隙を埋めるように充填されるジェリーコンパウンドとを有するルースチューブ型の光ファイバユニットに、複数本のアルミ被覆鋼線又は亜鉛メッキ鋼線を撚り合わせた光ファイバ複合架空地線において、前記光ファイバユニットが、前記ステンレス鋼管1本を、アルミ外管内にルースに収容して形成したものであることを特徴する光ファイバ複合架空地線。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−5321(P2007−5321A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−231877(P2006−231877)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【分割の表示】特願2001−336773(P2001−336773)の分割
【原出願日】平成13年11月1日(2001.11.1)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】