説明

光プリフォームを製造するための装置および方法

【課題】内部蒸着プロセスによって光プリフォームを製造するための、エネルギー源および基材チューブを備える装置および方法を提供すること。
【解決手段】この基材チューブは、ガラス形成前駆体が基材チューブの内部に供給される供給側と、基材チューブの内部に堆積されなかった構成材料が排出される排出側とを備え、エネルギー源は、供給側の反転点と排出側の反転点との間で基材チューブの長手に沿って運動可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部蒸着プロセスによって光プリフォームを製造するための、エネルギー源および中空の石英基材チューブを備える装置および方法に関し、この中空の基材チューブは、ガラス形成前駆体が中空の基材チューブの内部に供給される供給側と、基材チューブの内部に堆積されなかった構成材料が排出される排出側とを備え、エネルギー源は、供給側の反転点と排出側の反転点との間で基材チューブの長手に沿って運動可能である。
【背景技術】
【0002】
そのような装置は、大韓民国特許出願第2003−774,952号明細書から知られている。この出願から知られている装置を用いて、MCVD(変形化学蒸着)プロセスによって光プリフォームが製作される。このプロセスでは、放出チューブおよび挿入チューブが使用され、放出チューブは、基材チューブに取り付けられる。挿入チューブは、放出チューブ内に配置され、放出チューブの直径よりも小さい一定の直径を、その長手に沿って有する。挿入チューブの内部に、挿入チューブの内部で回転し、その内部直径(内部表面)と接触する棒を備える、スートこそげ要素が配置されている。挿入チューブと放出チューブとの間に、環状の空間があり、そこを気体が通過させられる。
【0003】
国際公開第89/02419号パンフレットから、蒸着されない固体粒子を除去するために管状要素が基材のポンプ側に取り付けられる、内部蒸着プロセスによって光プリフォームを製造するための装置が知られている。特に、そのような装置は、管状要素の内部表面に沿って延びるスクリュー構造を備え、このスクリュー構造は、螺旋形状であり回転可能な、開いた気体導管を備える。
【0004】
仏国特許公報第2266668号明細書から、光プリフォームを製造するための方法が知られている。
【0005】
仏国特許公報第2253723号明細書から、光プリフォームを製造するための方法が知られている。
【0006】
特にPCVD(プラズマ化学蒸着)プロセスによって、中空のガラス基材チューブ内の、ドープされた、またはドープされないガラス層が堆積される間に、低品質の石英の層が、特に、基材チューブの長手に沿って動くエネルギー源すなわち共振器の、往復路の外側の領域内に堆積されることがある。そのような低品質の石英の層の例は、たとえば、いわゆるスートリングであるが、大きいドーパント含有量によって生じる高い内部応力を有する石英も含む。さらなる例は、共振器内で生み出されるプラズマが、共振器の外側にわずかに移動し、その結果、プラズマ領域が、特に中空の基材チューブの排出側上で、明確に画成されない場合である。そのようなプラズマ領域は、両側の、特に排出側の反転点にて、ガラス層の内部堆積をもたらし、その結果、プリフォーム自体の破損などの問題が生じるおそれがある。
【0007】
そのような低品質の石英は、特に、中空の基材チューブがコラップスされて中実のプリフォームとなるときに、堆積されたガラス層内の気泡形成の結果として基材チューブに悪影響を及ぼすおそれがあることを、本発明の発明者らは見出している。それに加えて、そのような低品質の石英が、コラップスプロセス中に中空の基材チューブの内部から剥がれることがあり、このことが、基材チューブ内の至る所での汚染または気泡の形成をもたらすことがあることを、本発明者らは見出している。別の好ましくない態様は、低品質の石英領域内で亀裂が生じることがあり、この亀裂が基材チューブの中心方向に伝播するおそれがあることであり、これは望ましくない。低品質の石英は、目詰まりをもたらすおそれがあり、その結果として、堆積プロセス中に圧力が望ましくない高い値まで上昇することがあり、このことが基材チューブ内の堆積プロセスに有害な効果を及ぼし、この効果が実際に白色として認知されることを、本発明者らはさらに見出している。
【0008】
基材チューブは、高品質の石英から製作される。ただし実際は、堆積が行なわれる基材チューブの2つの端部は、望ましくない副次的な効果、すなわち堆積の欠陥、汚染、気泡の形成などを生じることがあり、そのため、2つの端部はそこから光ファイバを形成するのに適さないので、基材チューブの全長は、線引きプロセスによって最終的にグラスファイバに変えられる基材チューブの部分の長さよりも長くなる。
【特許文献1】大韓民国特許出願第2003−774,952号明細書
【特許文献2】国際公開第89/02419号パンフレット
【特許文献3】仏国特許公報第2266668号明細書
【特許文献4】仏国特許公報第2253723号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
すなわち、本発明の一目的は、上述の問題のうちの1つまたは複数をなくすことができる、内部蒸着プロセスによって光プリフォームを製造するための装置を提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、中空基材チューブの内部に堆積されたガラス層を備える中空基材チューブが、中実のプリフォームに変えられるコラップスプロセス中に、ガラス層の亀裂および別の望ましくない効果が生じる可能性がない、内部蒸着プロセスによって光プリフォームを製造するための装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
プリアンブルにおいて述べられるような本発明は、挿入チューブが、中空基材チューブの排出側の内部に存在し、その挿入チューブが、中央部分および切頭円錐部分を備え、供給側に面する切頭円錐部分の端部の外径が、中央部分の外径よりも小さく、一方さらに、中央部分の外径が、排出側付近の中空の基材チューブの内径よりも小さいことを特徴とする。
【0012】
上述の目的の1つまたは複数は、そのような装置を使用することによって達成される。特に、こうして構成された挿入チューブが使用される場合、より低品質の石英が、中空基材チューブの内部上の限られた領域内に蓄積され、これは、中空基材チューブの内部上の前記蓄積に沿った長さが、最小限に低減されることを意味する。本発明者によれば、この驚くべき効果は、より低品質の石英の堆積が中空基材チューブの限定された、すなわち限られた領域内に集中するように、挿入チューブの切頭円錐部分付近で中空基材チューブの内部に気体流の乱流を生じる、挿入チューブの特別の構成によってもたらされる。その結果、「有用な」部分、すなわち一定の品質の光ファイバを得ることができる長さが、そのような挿入チューブを使用せずに実行される堆積プロセスの場合での長さよりも大きい、基材チューブが得られる。
【0013】
本発明では、供給側に面する端部、すなわち切頭円錐部分の狭い端部にて測定される切頭円錐部分の直径が、中央部分の外径の最大0.9倍となるように選択されることが、特に望ましい。そのような構造は、中空基材チューブの内部上のより低品質の石英の蓄積および集中を、限られた領域に集中させるのに特に適していることが見出されている。
【0014】
特別の実施形態では、供給側に面する端部にて測定される切頭円錐部分の直径が、好ましくは中央部分の外径の0.35倍と中央部分の外径の0.90倍との間の範囲である。切頭円錐部分の直径がこのように特別に選択される結果として、中空基材チューブの中央部分上に堆積されるガラス層の組成と基本的に異なる組成を有するガラス層の堆積が、中空基材チューブの内部上のより限定された領域に制限される。
【0015】
挿入チューブの位置は、供給側に面する切頭円錐部分の端部が、中空基材チューブの供給側の反転点および排出側の反転点によって印が付けられた領域の外側に配置されるような位置である。
【0016】
挿入チューブ自体は、中空基材チューブの内部上に堆積されなかった気体が、挿入チューブを通って排出されるように、中空であるが、上述の気体が、挿入チューブの中央部分の外径(外面)と中空基材チューブの内径(内面)との間に形成された、環状空間を通って移動する可能性もある。
【0017】
特別な一実施形態では、基材チューブの内部および/または挿入チューブ上に堆積されなかった固体構成材料をこそげるための要素が、問題となっているチューブ内に配置され、その要素が、問題となっているチューブの内径(内面)と接触することが、さらに望ましい。回転棒は、そのような適当な要素である。
【0018】
本発明が使用される場合、堆積プロセス中または堆積プロセス後のいずれにも、中空基材チューブの内部上に堆積されたガラス層の亀裂が生じず、さらに、コラップスプロセス中に泡が形成されない。さらに、本発明の装置が使用される場合、排出側の詰まりが最低限に抑えられているので、より長い(時間間隔の)堆積プロセスが可能である。それに加えて、特に基材チューブの排出側で、コラップス後に得られる中実のプリフォームの均一性に関して望ましくない変化が生じないことを、本発明者らは見出している。したがって、本発明を使用すると、光ファイバを基材チューブから線引きするために、高品質ガラス材料の基材チューブのほぼ全体を利用すること、すなわち基材チューブの長さの最大利用を実現することが可能である。
【0019】
本発明はさらに、内部蒸着プロセスによって光プリフォームを製造するための方法に関し、ガラス形成前駆体が、中空の石英基材チューブに、その供給側上で供給され、その基材チューブがさらに、中空基材チューブの内部上に堆積されなかった構成材料が排出される排出側を有し、エネルギー源が、少なくとも堆積プロセス中に中空基材チューブ内に堆積状態を生み出すために、中空基材チューブの長手に沿って供給側の反転点と排出側の反転点との間で動かされ、中空基材チューブの内部にガラス形成前駆体が供給される前に、中央部分および切頭円錐部分を備える挿入チューブが、中空基材チューブの排出側上でその内部に配置され、供給側に面する切頭円錐部分の端部の外径が、中央部分の外径よりも小さく、一方さらに、中央部分の外径が、排出側付近の中空基材チューブの内径よりも小さいことを特徴とする。
【0020】
中空基材チューブ内に広がる状態は、中空基材チューブの内部上のガラス形成前駆体による、1つまたは複数のガラス層の堆積をもたらす。中実のプリフォームは、中空基材チューブをコラップスすることによって得られ、さらにこれに、さらなるガラス層をその外部に設けることができ、堆積プロセスの後に、その中実のプリフォームから、その一端部を加熱した後に光ファイバを線引きすることができる。
【0021】
本方法の特別の実施形態は、追加のサブクレームにおいて定められる。
【0022】
本発明はさらに、本発明による内部蒸着プロセスの実行によって得られる中空のプリフォームが使用される、光ファイバを製造するための方法に関する。
【0023】
本発明が、以下で例によってより詳細に説明されるが、それに関連して、本発明は決してそのような特別な例に限定されないことが留意されるべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1は、本発明による装置を概略的に示す。中空のガラス基材チューブ10は、基材チューブ10の供給側20上にガラス形成前駆体(図示せず)を備え、中に存在するガラス形成前駆体と共に気体流が、チューブ10の内部を図の左から右へと移動する。そのようなガラス形成前駆体の堆積を実行するために、プラズマ40を発生させるための共振器(図示せず)が、基材チューブ10の長手に沿って往復運動させられ、プラズマを発生するための共振器は、排出側30の60で示される位置付近で反転し、続いて、基材チューブ10の長手に沿って供給側20の方向に後退し、そこから排出側30へと戻る。供給側20の反転点が、50にて概略的に示される。完全に理解するために、ガラス形成前駆体の供給は、供給側20上で、ポンプまたは排出側30の方向で行なわれることが留意されるべきである。基材チューブ10の対称軸が、8で示される。一実施形態では、基材チューブ10および共振器(図示せず)は、炉によって取り囲まれ、したがって共振器は、堆積プロセス中に炉内で、反転点50と反転点60との間で基材チューブ10の長手に沿って往復運動させられる。
【0025】
反転点50〜反転点60によって印が付けられた領域の外側にある位置に、切頭円錐部分3と中央部分4とを有する石英製の挿入チューブ1が、基材チューブ10の排出側30上に配置されている。すなわち挿入チューブ1は、5で示される中央部分4の外径が、排出側30付近で中空基材チューブ10の内径よりも小さくなるようなやり方で、中空の基材チューブ10の内部に配置される。切頭円錐部分3の、9で示される端部付近の外径が、中央部分4の外径の0.35倍と中央部分4の外径の0.90倍との間の範囲であることが、特に望ましい。挿入チューブ1が、切頭円錐部分3として概略的に表されるこの円錐形である結果として、挿入チューブ1が全く存在しない実施形態、または、供給側20に面する切頭円錐部分3を有する端部が設けられていない挿入チューブ1が使用される実施形態と比べて、低品質のガラスが排出側30の反転点60付近で中空の基材チューブ10の内部上に堆積する距離が、小さくなる。
【0026】
PCVDプロセス中に、共振器は、基材チューブ10上で1.3mの長さに沿って動かされ、プラズマ40を発生するための共振器は、反転点50と反転点60との間で往復運動する。PCVDプロセスが終了された後に、基材チューブ10は、コラップスされて中実のプリフォームにされる。こうして得られた中実のプリフォームに、1つまたは複数の追加のガラス層を外部に設けることができ、その後、こうして得られたプリフォームは、熱を供給しながらそこから光グラスファイバを得る目的で、線引きタワー内に取り付けられる。こうして得られる高品質のガラスファイバの全長は、基材チューブ10の中央部分全体、つまり供給側20付近の反転点50と排出側30付近の反転点60との間の領域に、基本的に対応する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明による装置を概略的に示す図である。
【符号の説明】
【0028】
1 挿入チューブ
3 切頭円錐部分
4 中央部分
5 中央部分の外径
8 対称軸
9 切頭円錐部分の端部付近の外径
10 基材チューブ
20 供給側
30 排出側
40 プラズマ
50、60 反転点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー源および中空の石英基材チューブを備え、この中空の基材チューブが、ガラス形成前駆体が中空の基材チューブの内部に供給される供給側と、基材チューブの内部に堆積されなかった構成材料が排出される排出側とを有し、エネルギー源が、供給側の反転点と排出側の反転点との間で中空の基材チューブの長手に沿って運動可能である、内部蒸着プロセスによって光プリフォームを製造するための装置であって、挿入チューブが、中空基材チューブの排出側上でその内部に存在し、その挿入チューブが、中央部分および切頭円錐部分を備え、供給側に面する切頭円錐部分の端部の外径が、中央部分の外径よりも小さく、一方さらに、中央部分の外径が、排出側付近の中空の基材チューブの内径よりも小さいことを特徴とする、装置。
【請求項2】
供給側に面する端部にて測定される切頭円錐部分の直径が、中央部分の外径の最大0.9倍であることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
供給側に面する端部にて測定される切頭円錐部分の直径が、中央部分の外径の0.35倍と中央部分の外径の0.90倍との間の範囲であることを特徴とする、請求項1または2のいずれか一項または両方に記載の装置。
【請求項4】
挿入チューブが、供給側の反転点と排出側の反転点との間にある領域の外側の位置へと、供給側の方向に延びることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項または複数項に記載の装置。
【請求項5】
ガラス形成前駆体が、中空の石英基材チューブへと、その供給側上で供給され、その基材チューブがさらに、中空基材チューブの内部上に堆積されなかった構成材料が排出される排出側を有し、エネルギー源が、中空基材チューブ内に堆積状態を生み出すために、中空基材チューブの長手に沿って供給側の反転点と排出側の反転点との間で動かされる、内部蒸着プロセスによって光プリフォームを製造するための方法であって、中央部分と切頭円錐部分とを備える挿入チューブが、中空基材チューブの内部にガラス形成前駆体が供給される前に、中空基材チューブの排出側の内部に配置され、供給側に面する切頭円錐部分の端部の外径が、中央部分の外径よりも小さく、一方さらに、中央部分の外径が、排出側付近の中空基材チューブの内径よりも小さいことを特徴とする、方法。
【請求項6】
切頭円錐部分を有する挿入チューブが使用され、供給側に面する端部にて測定される切頭円錐部分の直径が、中央部分の外径の最大0.9倍であることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
切頭円錐部分を有する挿入チューブが使用され、その切頭円錐部分の直径が、中央部分の外径の0.35倍と中央部分の外径の0.90倍との間の範囲であることを特徴とする、請求項5または6のいずれか一項または両方に記載の方法。
【請求項8】
挿入チューブが、供給側の反転点と排出側の反転点との間にある領域の外側で中空基材チューブの排出側上に配置されるようなやり方で、中空基材チューブの内部に配置されることを特徴とする、請求項5から7のいずれか一項または複数項に記載の方法。
【請求項9】
プラズマ発生装置が、エネルギー源として使用されることを特徴とする、請求項5から8のいずれか一項または複数項に記載の方法。
【請求項10】
中空基材チューブの内部上のガラス層の堆積後に、挿入チューブが、中空基材チューブから取り出され、その後、こうして得られる、堆積によって得られた1つまたは複数のガラス層をその内部に備える中空基材チューブに、中実のプリフォームを得るためのコラップスプロセスが行なわれることを特徴とする、請求項5から9のいずれか一項または複数項に記載の方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法を実行することによって得られるプリフォームが使用されることを特徴とする、プリフォームの端部を加熱し続いてそこから光ファイバを線引きすることによって、光ファイバを製造するための方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−280237(P2008−280237A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−106446(P2008−106446)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(507112468)ドラカ・コムテツク・ベー・ベー (39)
【Fターム(参考)】