説明

光プローブおよびこれを用いた光治療診断システム

【課題】光プローブから2つの光を同時に射出するときに、一方の光の射出による測定結果に他方の光の影響を最小限に抑える。
【解決手段】プローブ外筒11の軸方向に、第1の光L1と第2の光Ltとを導波する光導波部材12が配設されている。そして、第1照射部12が第1の光L1をプローブ外筒11の外方に配された照射対象S上に走査しながら照射する。また、第2照射部16が第2の光Ltを、プローブ外筒11の外方に配された照射対象S上であって第1照射部11により走査しながら照射されたときに照射対象S上に形成される第1の光の軌跡Ltrk上に照射可能にする。ここで、光導波部材12から第1の光L1と第2の光Ltとが同時に射出されたとき、第1照射部12と第2照射部14とはそれぞれ照射対象S上の異なる部位Pm、Ptに第1の光L1と第2の光Ltとをそれぞれ照射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は筒状のプローブ外筒を有しその周面から出射する機能を備えた光プローブおよび光治療診断システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光による生体治療法として、たとえば癌温熱療法、コラーゲン繊維の接合、タンパク質凝固・変性、止血、組織除去、切開等のレーザ光の照射による照射対象の発熱を利用した生体治療法や、光線力学的治療等の光感受性物質を介して化学反応を起こさせることを利用した生体治療法が知られている。上記レーザ治療を行う際に治療目的に応じてレーザの種類や広範囲への照射もしくは局所的な照射等の照射方法が適宜選択される。レーザ治療を体腔内の生体物質等に照射するとき、体腔内に光プローブを挿入し光プローブから照射対象へ治療レーザを照射するようになっている。
【0003】
ここで、上述のように体腔内において治療レーザを照射するとき、照射部位を正確に特定するため、治療レーザの照射に先立ち内視鏡装置もしくはOCT(光トモグラフィー計測)装置等による照射部位の画像の取得が行われる。たとえば、特許文献1において、光プローブ内に治療レーザを導波するための光ファイバと診断レーザを導波するための光ファイバとを収容し、2つの光ファイバ内をそれぞれ導波した治療レーザと診断レーザとを照射対象の同じ部位に照射することにより、断層画像の取得と治療レーザの照射とを行う方法が開示されている(特許文献1、図7参照)。
【0004】
また、特許文献2において、治療用レーザ装置からプローブへ射出される治療レーザと共焦点用レーザ光源からプローブへ射出される診断レーザとをスイッチで切り替えるようにし、治療レーザと診断レーザとが1つのプローブから異なるタイミングで照射対象に射出する方法が開示されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2001−264246号公報
【特許文献2】特開2004−73337号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したレーザ治療を行っている間であっても、レーザ治療を行っている部位の画像を取得し、治療の進捗状況を確認することが望まれている。しかし、特許文献2においては、光プローブからは治療レーザもしくは診断レーザのいずれか一方のみしか照射できないため、治療レーザによる治療の最中には画像の取得を行うことができず、治療中に治療部位の状態をリアルタイムで確認することができないという問題がある。
【0006】
一方、特許文献1においては、治療レーザと診断レーザとが同一の部位に照射されるようになっている。このため、診断レーザを照射したときの照射対象からの反射光を検出することにより画像を取得するときに、治療レーザからの反射光も検出されてしまい、取得された画像の画質が劣化してしまうという問題がある。
【0007】
さらに、上述のような診断レーザと治療レーザとの事例に限らず、2つの光が照射対象の同一の部位を照射することができるとともに、一方の光の射出により得られる測定結果に他方の光の影響を最小限に抑えることができるものが望まれている。
【0008】
そこで、本発明は、光プローブから2つの光を同時に射出するときに、一方の光の射出による測定結果に他方の光の影響を最小限に抑えることができる光プローブおよびこれを用いた光治療診断システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の光プローブは、筒状のプローブ外筒と、プローブ外筒の内部空間にプローブ外筒の軸方向に配設された、第1の光と第2の光とを導波する光導波部材と、光導波部材の先端から射出した第1の光をプローブ外筒の外方に配された照射対象上に走査しながら照射する第1照射部と、光導波部材の先端から射出した第2の光を、プローブ外筒の外方に配された照射対象上であって第1照射部により走査しながら照射されたときに照射対象上に形成される第1の光の軌跡上に照射可能にする第2照射部とを有し、光導波部材から第1の光と第2の光とが同時に射出されたとき、第1照射部と第2照射部とが照射対象上の異なる部位に第1の光と第2の光とをそれぞれ照射するものであることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の光治療診断システムは、照射対象に測定光を照射したときの照射対象からの反射光を用いて、照射対象の画像を取得する画像取得装置と、照射対象に照射するための治療レーザを射出するレーザ治療装置と、レーザ治療装置から射出された治療レーザと、画像取得装置から射出された測定光とを照射対象まで導波する光プローブとを備え、光プローブが、筒状のプローブ外筒と、プローブ外筒の内部空間にプローブ外筒の軸方向に配設された、測定光と治療レーザとを導波する光導波部材と、光導波部材の先端から射出した測定光をプローブ外筒の外方に配された照射対象上に走査しながら照射する第1照射部と、光導波部材の先端から射出した治療レーザをプローブ外筒の外方に配された照射対象上であって、第1照射部により走査しながら照射されたときに照射対象上に形成される測定光の軌跡上に照射可能にする第2照射部とを有し、光導波部材から測定光と治療レーザとが同時に射出されたとき、第1照射部と第2照射部とが照射対象上の異なる部位に測定光と治療レーザとをそれぞれ照射するものであることを特徴とするものである。
【0011】
ここで、光導波部材は、第1の光と第2の光とを導波するものであれば、第1の光および第2の光の双方を導波する1本の光ファイバからなるものであってもよいし、第1の光を導波する第1光ファイバと、第2の光を導波する第2光ファイバを有するものであってもよい。
【0012】
なお、光導波部材が1本の光ファイバからなるとき、第1光照射部は、光導波部材内から射出される第1の光及び第2の光のうち、第2の光を透過し第1の光をプローブ外筒の外方に配された照射対象上に走査しながら照射するものであってもよい。そして、第2照射部は、第1光照射部を透過した第2の光をプローブ外筒の外方に配された照射対象上に照射可能にするものであってもよい。
【0013】
あるいは、第2照射部が、光導波部材から射出される第1の光及び第2の光のうち、第1の光を透過し第2の光をプローブ外筒の外方に配された照射対象上に走査しながら照射可能するものであってもよい。そして、第1照射部が、第2照射部を透過した第2の光をプローブ外筒の外方に配された照射対象上に照射するものであってもよい。
【0014】
このとき、第1の光と第2の光とが異なる波長域の光からなり、波長域の違いにより、第1照射部が第2の光を透過し第1の光を反射する、もしくは第2照射部が第1の光を透過し第2の光を反射するようにしても良い。あるいは、第1の光と第2の光とが互いに垂直な偏光方向を有する光であり、光導波部材が偏光保存光ファイバからなるものであって、偏光方向の違いにより、第1照射部が第2の光を透過し第1の光を反射する、もしくは第2照射部が第1の光を透過し第2の光を反射するようにしても良い。
【0015】
第1照射部は、第1の光を走査しながら照射するものであればその走査方法は問わず、たとえばプローブ外筒の円周方向に沿って走査するものであってもよいし、プローブ外筒の長手方向に沿って走査するものであってもよい。さらには、第1の光は円周方向に沿って走査しながらプローブ外筒の長手方向に走査するものであってもよい。
【0016】
ここで、第1の光がプローブ外筒の円周方向に沿って走査するものとき、第2照射部は、円周方向に形成された第1の光の軌跡上に第2の光を照射可能にするようになっている。具体的には、第1照射部と第2照射部とはプローブ外筒の円周方向に回転可能に配設されたものであって、第1照射部と第2照射部とが、光導波部材から第1の光と第2の光とが同時に射出されたとき、プローブ外筒の円周方向に対し略180°離れた位置に第1の光と第2の光とをそれぞれ照射するものであることが好ましい。
【0017】
また、第1の光がプローブ外筒の長手方向に沿って走査するものであるとき、第1照射部と第2照射部とは、光導波部材から第1の光と第2の光とが同時に射出されたとき、第1の光と第2の光とを同一の方向であって所定の距離だけ離れた位置にそれぞれ照射するようにしてもよい。あるいは、第1照射部は光導波部材の光軸に対し揺動可能な第1の光を反射する第1反射面を有するものであって、第1反射面を揺動させることにより第1の光をプローブ外筒の外方に配された照射対象上に走査しながら照射するものであってもよい。このとき、第2照射部が光導波部材の光軸に対し揺動可能な第2の光を反射する第2反射面を有するものであって、第2反射面を揺動させることにより第2の光を第1の光の軌跡上の任意の部位に照射するものであってもよい。
【0018】
なお、上記光治療診断システムにおいて、画像取得装置により取得された画像において治療レーザを照射する位置情報を取得する照射位置取得手段と、第2照射部が照射位置取得手段により取得された照射位置に治療レーザを照射可能な状態になったときに、治療レーザが射出されるようにレーザ治療装置を制御するシステム制御部とをさらに備えたものであってもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の光プローブによれば、筒状のプローブ外筒と、プローブ外筒の内部空間にプローブ外筒の軸方向に配設された、第1の光と第2の光とを導波する光導波部材と、光導波部材の先端から射出した第1の光をプローブ外筒の外方に配された照射対象上に走査しながら照射する第1照射部と、光導波部材の先端から射出した第2の光を、プローブ外筒の外方に配された照射対象上であって第1照射部により走査しながら照射されたときに照射対象上に形成される第1の光の軌跡上に照射可能にする第2照射部とを有し、光導波部材から第1の光と第2の光とが同時に射出されたとき、第1照射部と第2照射部とが照射対象上の異なる部位に第1の光と第2の光とをそれぞれ照射することにより、第1の光と第2の光とを照射対象の同一の部位に照射することができるとともに、第1の光と第2の光とが同時に照射されたときには、それぞれ異なる部位に照射されるため、第1の光の照射により取得される測定結果に第2の光が照射対象に照射されたときの照射対象からの反射光が及ぼす影響を最小限に抑えることができる。
【0020】
なお、光導波部材が、第1の光および第2の光を導波する1本の光ファイバからなるものであれば、光プローブの径を細くすることができる。
【0021】
また、第1照射部が、光導波部材内から射出される第1の光及び第2の光のうち、第2の光を透過し第1の光をプローブ外筒の外方に配された照射対象上に走査しながら照射するものであり、第2照射部が、第1照射部を透過した第2の光をプローブ外筒の外方に配された照射対象上に照射可能にするものであるとき、あるいは、第2照射部が、光導波部材から射出される第1の光及び第2の光のうち、第1の光を透過し第2の光をプローブ外筒の外方に配された照射対象上に走査しながら照射するものであり、第1照射部が、第2照射部を透過した第2の光をプローブ外筒の外方に配された照射対象上に照射可能にするものであるとき、1本の光ファイバ内を第1の光と第2の光とを同時に導波させたときであっても、第1の光と第2の光とを確実に分波し、照射対象の異なる部位に照射することができる。
【0022】
さらに、光導波部材が、第1の光を導波する第1光ファイバと、第2の光を導波する第2光ファイバを有するものであれば、各光ファイバ、第1照射部、第2照射部に各光に最適化された光学部材を用いることができる。
【0023】
また、第1照射部と第2照射部とが、プローブ外筒の円周方向に回転可能に配設されたものであり、特に、第1照射部と第2照射部とが、光導波部材から第1の光と第2の光とが同時に射出されたとき、プローブ外筒の円周方向に対し略180°離れた位置に第1の光と第2の光とをそれぞれ照射するものであるとき、第1の光の照射により取得される測定結果に第2の光が及ぼす影響を確実に低減することができる。
【0024】
さらに、第1照射部と第2照射部とがプローブ外筒の長手方向に移動可能に配設されたものであり、特に、第1照射部と第2照射部とが、光導波部材から第1の光と第2の光とが同時に射出されたとき、第1の光と第2の光とを同一の方向であって所定の距離だけ離れた位置にそれぞれ照射するものであっても、第1の光の照射により取得される測定結果に第2の光が及ぼす影響を確実に低減することができる。
【0025】
本発明の光治療診断システムによれば、照射対象に測定光を照射したときの照射対象からの反射光を用いて、照射対象の画像を取得する画像取得装置と、照射対象に照射するための治療レーザを射出するレーザ治療装置と、レーザ治療装置から射出された治療レーザと、画像取得装置から射出された測定光とを照射対象まで導波する光プローブとを備え、光プローブが、筒状のプローブ外筒と、プローブ外筒の内部空間にプローブ外筒の軸方向に配設された、第1の光と第2の光とを導波する光導波部材と、光導波部材の先端から射出した第1の光をプローブ外筒の外方に配された照射対象上に走査しながら照射する第1照射部と、光導波部材の先端から射出した第2の光をプローブ外筒の外方に配された照射対象上であって、第1照射部により走査しながら照射されたときに照射対象上に形成される第1の光の軌跡上に照射可能にする第2照射部とを有し、光導波部材から測定光と治療レーザとが同時に射出されたとき、第1照射部と第2照射部とが照射対象上の異なる部位に測定光と治療レーザとをそれぞれ照射することにより、測定光と治療レーザとを照射対象の同一の部位に照射することができるとともに、測定光と治療レーザとが同時に照射されたときには、それぞれ異なる部位に照射されるため、測定光の照射により取得される測定結果に治療レーザが照射対象に照射されたときの照射対象からの反射光が及ぼす影響を最小限に抑えることができる。
【0026】
なお、画像取得装置により取得された画像において治療レーザを照射する位置情報を取得する照射位置取得手段と、第2照射部が該照射位置取得手段により取得された照射位置に治療レーザを照射可能な状態になったときに、治療レーザが射出されるようにレーザ治療装置を制御するシステム制御部とをさらに備えたことにより、不要な部位に治療レーザを照射するのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の光治療診断システムの実施形態を詳細に説明する。図1は本発明の光治療診断システムの好ましい実施形態を示す模式図である。図1の光治療診断システム1は、体腔内に光プローブ10を挿入することにより、照射対象Sの画像を取得するとともに照射対象(患部)に治療レーザLtを照射するものであって、照射対象Sに測定光L1を照射することにより照射対象Sの画像を取得する画像取得装置1Aと、照射対象Sに治療レーザLtを射出するレーザ治療装置1Bと、画像取得装置1Aから射出される測定光L1と、レーザ治療装置1Bから射出される治療レーザLtとを照射対象Sまで導波する光プローブ10とを備えている。
【0028】
画像取得装置1Aは、たとえばOCTOptical Coherence Tomography)計測により照射対象Sの断層画像を取得し、表示装置1Cに表示する機能を有している。具体的には、画像取得装置1Aは、いわゆるSS−OCT(Swept source OCT)により断層画像を取得するものであって、たとえば1.3μmを中心波長とした100nmの波長範囲において一定周期で波長を掃引しながら測定光L1を射出するようになっている。そして、画像取得装置1Aは、測定光L1が照射対象に照射されたときの照射対象Sからの反射光(後方散乱光)Lrに基づいて断層画像を生成し、表示装置4に表示するようになっている。
【0029】
レーザ治療装置1Bは、照射対象Sに照射する治療レーザLtを射出するものであって、その動作はシステム制御部により制御されている。治療レーザLtは、たとえばNd:YAGレーザからなる光源から射出されるものであって1.06μmの波長を有している。このように、光治療診断システム1においては、画像取得装置1Aから射出される測定光L1の波長(1.3μm±100nm)と治療レーザLtの波長(1.06μm)とはそれぞれ異なる波長域のレーザからなっている。なお、レーザ治療装置1Bは、例えばレーザ光の照射による照射対象の発熱を利用した癌温熱療法、コラーゲン繊維の接合、タンパク質凝固・変性、止血、組織除去、切開等や、光感受性物質を介して化学反応を起こさせることを利用した光線力学的治療等のような用途に応じて特定の波長のレーザを射出することになる。
【0030】
光プローブ10は、画像取得装置1Aから射出された測定光L1とレーザ治療装置1Bから射出された治療レーザLtとを体腔内部の照射対象Sまで導波するものであって、鉗子口を介して体腔内に挿入されるものである。なお、この光プローブ10には光入射手段5を介して治療レーザLtおよび測定光L1が入射されるようになっている。
【0031】
この光入射手段1Fはたとえばダイクロックミラーからなっており、画像取得装置1Aから光ファイバFB2を介して射出された測定光L1を反射して光プローブ10側に射出し、レーザ治療装置1Bから光ファイバFB3を介して射出された治療レーザLtを透過して光プローブ10側に射出するようになっている。
【0032】
図2は本発明の光プローブの好ましい実施の形態を示す模式図であり、図1と図2を参照して光プローブ10について説明する。光プローブ10は、筒状のプローブ外筒11と、プローブ外筒11内に収容された、照射対象Sの断層画像を取得するための測定光(第1の光)L1と照射対象Sを治療する治療レーザ(第2の光)Ltとを導波する光導波部材12と、光導波部材12内を導波した測定光(第1の光)L1をプローブ外筒11の外方にある照射対象Sに照射する第1照射部14と、光導波部材12内を導波した治療レーザ(第2の光)Ltをプローブ外筒11の外方にある照射対象Sに照射するレーザ照射部16とを備えている。
【0033】
プローブ外筒(シース)11は、可撓性を有する筒状の部材からなっており、またプローブ外筒11は測定光L1と治療レーザLtとが透過するたとえば透明な材料からなっている。また、プローブ外筒11は先端がキャップ11aにより閉塞された構造を有している。
【0034】
光導波部材12は、測定光L1および治療レーザLtを導波する1本の光ファイバからなり、図1の走査駆動ユニット31の作動により、たとえば約20Hzでプローブ外筒11に対し矢印R1方向に回転するようになっている。このように、測定光L1および治療レーザLtの双方が1つの光ファイバ内を導波することにより、プローブ外筒11内に収容する光ファイバは1本で済むため、光プローブ10の径を細くすることができる。
【0035】
図2の第1照射部14はたとえばダイクロイックミラーからなっており、光導波部材12から射出された治療レーザLtが有する波長帯域の光を透過し、光導波部材12から射出された測定光L1をプローブ外筒11の外方にある照射対象Sに向かって反射して照射するようになっている。第1照射部14は、光導波部材12の先端に測定光集光手段13を介して固定されている。したがって、走査駆動ユニット20の作動により光導波部材12が矢印R1方向に回転したとき、第1照射部14も矢印R1方向に回転することになる。なお、測定光集光手段13はたとえばGRINレンズ(勾配屈折率レンズ)からなっており、光導波部材12から射出された測定光L1をプローブ外筒11から約1mmだけ離れた照射対象Sの照射位置Pmに対し集光するようになっている。
【0036】
第2照射部16はたとえばプリズムからなっており、光導波部材12から射出され第1照射部14を透過した治療レーザLtをプローブ外筒11の外方にある照射対象Sに全反射して照射するものである。この第2照射部16は、第1照射部14に治療レーザ集光レンズ15を介して固定されている。したがって、第2照射部16は、走査駆動ユニット20の作動により光導波部材12が矢印R1方向に回転したとき、第2照射部16も矢印R1方向に回転することになる。なお、測定光集光手段15はたとえばGRINレンズ(勾配屈折率レンズ)からなり、プローブ外筒11から約1mmだけ離れた照射対象Sの照射部位Pmに対し集光するようになっている。
【0037】
ここで、光導波部材12から測定光L1と治療レーザLtとが同時に射出された場合、第1照射部14とレーザ照射部16とはそれぞれ異なる部位に測定光L1および治療レーザLtを照射するようになっている。具体的には、図3に示すように、光導波部材12から測定光L1と治療レーザLtとが同時に射出された場合、第1照射部14は照射対象Sの部位Pmに測定光L1を照射し、第2照射部16は、治療レーザLtを部位Pmから略180°だけずれた部位Ptに照射するようになっている。
【0038】
さらに、第2照射部16は、測定光L1が照射対象Sに矢印R1方向に走査しながら照射されたときに測定光L1が照射対象S上に形成する軌跡Ltrk上に治療レーザLtを照射するようになっている。したがって、画像取得装置1Aにおいて測定光L1の照射により取得された断層画像が表示されている照射位置には治療レーザLtを照射することができる。
【0039】
次に、図1と図2を参照して光治療診断システム1および光プローブ10の動作例について説明する。まず、図1の画像取得装置1Aから測定光L1が射出され、光ファイバFB1、光入射手段1Fおよび光ファイバFB4を介して光プローブ10に入射される。図2の光プローブ10において測定光Ltは光導波部材12内を導波し、測定光集光手段13により集光されて第1照射部14によりプローブ外筒11の外方の照射対象Sに向かって射出される。
【0040】
測定光L1が照射対象Sに照射されたとき、照射対象Sからの反射光(後方散乱光)Lrが第1照射部14に入射される。この反射光Lrは第1照射部14により測定光集光手段13を介して光導波部材12に入射される。そして、反射光Lrは光導波部材12内を導波し、図1の光ファイバFB4、光入射手段1Fおよび光ファイバFB2を介して画像取得装置1Aに入射される。画像取得装置1Aにおいて、反射光Lrに基づき照射対象Sの各深さ位置における反射強度(反射率)が検出される。この反射強度の検出が走査駆動ユニット31により光導波部材12が矢印R1方向に回転しながら測定光L1が照射対象Sに走査されながら照射することにより行われる。なお、第1照射部14による測定光L1の照射位置はシステム制御部1Dにおいてロータリモータトリガ信号により常に監視されている。すると、画像取得装置1Aにおいて図3に示すようなプローブ外筒11の円周方向に沿った断層画像が取得され表示装置1Cに表示される。
【0041】
その後、医師が表示装置1Cに表示された断層画像に基づいて診断を行い、治療レーザLtを照射する照射位置・領域を決定し、マウス等の入力手段を用いて照射位置・領域が入力され、照射位置取得手段1Eおいて入力された照射位置・領域が取得される。すると、システム制御部1Dにおいて、取得した断層画像上の照射位置・領域からレーザ照射部16の回転速度および向き等に基づいて治療レーザLtのON/OFFのタイミングが計算される。具体的には、図3において、照射部位Ptが治療レーザLtを照射する部位SPであると設定された場合、第2照射部16が照射部位SPに対し治療レーザLtを照射可能な向きになったとき(SP=Pt)、図1のレーザ制御部1Dはレーザ治療装置1Bから治療レーザLtが射出されるように制御する。
【0042】
これにより、不要な部分に治療レーザLtを照射することなく、必要な部分のみ照射させることができる。なお、医師からの指示により、治療レーザLtを所定時間/所定パルス数だけ照射対象Sに照射して自動的に停止させ、あるいはレーザ治療の進捗状況を医師がOCT画像でモニタしながら治療レーザLtを当て続け、適切なタイミングで医師が治療レーザLtの照射の停止を指示するようにしてもよい。
【0043】
ここで、レーザ治療装置1Bから治療レーザLtが射出されたとき、治療レーザLtと測定光L1とが、同時に光導波部材12に入射されるとともに、第1照射部14および第2照射部16からそれぞれ同時に射出されることになる。このとき、図3に示すように、測定光L1は照射対象Sの照射位置Ptに射出され、治療レーザLtは照射部位Ptとは異なる照射部位Ptに照射される。つまり、測定光L1を照射することにより断層情報を取得している部位には治療レーザLtは照射されない。よって、測定光L1の反射光Lrに治療レーザLtに起因する迷光が含まれるのを低減することができるため、迷光による画質の劣化を低減することができる。特に、測定光L1の照射位置Pmと治療レーザLtの照射位置Ptとは、プローブ外筒11の円周方向に対し略180°離れているため、治療レーザLtによる画質の劣化を確実に低減することができる。
【0044】
また、治療レーザLtが照射されている間であっても、測定光L1は治療レーザの照射部位Ptとは異なる部位Pmに照射され断層情報を取得することができる。このため、効率的に断層画像を取得することができるとともに、治療レーザによる治療の進捗状況を断層画像を用いて照射対象Sをリアルタイムに監視しながらレーザ治療を行うことができる。
【0045】
なお、上記実施の形態において、測定光L1と治療レーザLtとの波長域の違いにより、図1の光入射手段1Fおよび図2の第1照射部14は、測定光L1を反射し治療レーザLtを透過するようにしている。ここで、測定光L1と治療レーザLtとが同一の波長域であっても偏光方向が互いに直交しているものであってもよい。このとき、図1の光入射手段1Fおよび図2の第1照射部14において、たとえば偏光ビームスプリッタを用いることにより測定光L1を反射し治療レーザLtを透過することができる。
【0046】
なお、上記実施の形態において、図2の第1照射部14と第2照射部16との配列を逆にしてもよい。つまり、図2中、14が第2照射部となって測定光L1(第1の光)を透過し治療レーザLt(第2の光)を反射するようにし、16が第1照射部となって第2照射部を透過した測定光L1を照射対象Sに反射するようにしてもよい。
【0047】
また、測定光L1の照射位置Pmと治療レーザLtの照射位置Ptとの離散角度が180°である場合について例示しているが、たとえば120°、90°など、測定光L1と治療レーザLtが分離できる角度であればどの様な関係であっても良い。
【0048】
図4は本発明の光プローブの第2の実施形態を示す模式図であり、図4を参照して光プローブ100について説明する。なお、図4の光プローブ100において、図1の光プローブ10と同一の構成を有する部位には同一の符号を付してその説明を省略する。図4の光プローブ100が図1の光プローブ10を異なる点は、プローブ外筒11に対し第1照射部14および第2照射部16がプローブ外筒11の長手方向(矢印A方向)に移動する、いわゆるリニアスキャン型の構成を有している点である。
【0049】
具体的には、図1の駆動ユニット120は、プローブ外筒11内に収容された光導波部材12を矢印A方向に移動させることにより、光導波部材12に固定された測定光集光レンズ13、第1照射部14、レーザ集光レンズ15および第2照射部16を一体的に矢印A方向に移動させるようになっている。また、第1照射部14における測定光L1の反射面とレーザ照射部16における治療レーザLtの反射面とは、それぞれ略平行になるように形成されている。したがって、第1照射部14が矢印A1方向に移動ながら測定光L1を照射したとき、第1照射部14から射出される測定光L1がプローブ外筒11に沿った略直線状の軌跡Ltrkが描かれる。そして、レーザ照射部16から治療レーザLtが照射されたとき、測定光L1が照射対象S上に形成した軌跡Ltrk上に照射されることになる。
【0050】
この場合であっても、測定光L1と治療レーザLtとは、それぞれ異なる照射位置Pm、Ptに照射されるため、測定光L1の反射光Lrが治療レーザLtに起因する迷光が含まれるのを低減することができ、迷光による画質の劣化を低減することができる。また、治療レーザLtが照射されている間であっても、測定光L1は治療レーザの照射部位Ptとは異なる部位Pmに照射され断層情報が取得されることになるため、測定光L1と治療レーザとを同時に照射することができ、効率的に断層画像を取得することができるとともに、治療レーザによる治療の進捗状況を断層画像を用いてリアルタイムに監視しながらレーザ治療を行うことができる。
【0051】
なお、駆動ユニット31は矢印A方向に移動させる場合について例示しているが、矢印A方向に移動させるとともに矢印R1方向に回転させるようにしてもよい。これにより、画像取得装置1Aは照射対象Sの3次元の断層画像を取得することができ、3次元の断層画像に基づいてレーザ治療を行う部位を特定し観察することができる。
【0052】
図5は本発明の光プローブの第3の実施形態を示す模式図であり、図5を参照して光プローブ120について説明する。なお、図5の光プローブ120において、図1の光プローブ10と同一の構成を有する部位には同一の符号を付してその説明を省略する。図4の光プローブ120が図1の光プローブ10を異なる点は、第1照射部214および第2照射部216の構造である。
【0053】
具体的には、第1照射部214は、たとえばMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)全反射ミラーからなっており、光導波部材12の光軸に対し揺動可能な測定光L1を反射する第1反射面216aを有するものであって、第1反射面214を矢印R2方向に揺動させることにより測定光L1をプローブ外筒11の外方に配された照射対象上に矢印A方向に走査しながら照射するものである。一方、第2照射部は、たとえばMEMSダイクロイックミラーからなっており、光導波部材12の光軸に対し揺動可能な治療レーザLtを反射する第2反射面216aを有するものであって、第2反射面216aを矢印R2方向に揺動させることにより治療レーザLtを測定光L1の軌跡Ltrk上の任意の部位に照射するようになっている。
【0054】
そして、医師は表示装置1C上で断層画像を見ながら断層画像診断を行う。そして、医師が、表示装置1C上で治療レーザLtの照射位置・領域を指示する。この照射位置等は照射位置取得手段1Eにおいて取得され、システム制御部1Dにより第2照射部16の偏向角、偏向範囲が計算され、治療レーザ装置1Bにより治療レーザLtが照射対象Sに照射される。これにより、不要な部分に治療レーザLtを照射することなく、必要な部分のみ照射させる事ができる。測定光L1が照射対象Sを走査する際には、治療光は他の場所を走査、もしくは停止することになる。これにより、治療レーザにより画像にノイズが発生するのを低減することができる。
【0055】
なお、図5においては、第2光照射部216が、光導波部材12内から射出される測定光L1および治療レーザLtのうち、測定光L1を透過し治療レーザLtをプローブ外筒11の外方に配された照射対象S上に走査しながら照射するものであり、第2照射部214が、第2光照射部216を透過した測定光L1をプローブ外筒11の外方に配された照射対象S上に照射可能にするような配置構造を有しているが、この配置構造は、上述した図2および図4の光プローブ10、100についても同様に適用することができる。
【0056】
図6は本発明の光プローブの第4の実施形態を示す模式図であり、図6を参照して光プローブ140について説明する。なお、図6の光プローブ140において、図1の光プローブ10と同一の構成を有する部位には同一の符号を付してその説明を省略する。図6の光プローブ140が図1の光プローブ10を異なる点は、光導波部材が複数の光ファイバからなっている点である。
【0057】
すなわち、光導波手段312は、測定光L1を導波する第1光ファイバ312aと、治療レーザLtを導波する第2光ファイバ312bとを有している。第1光ファイバ312aはシングルモード光ファイバからなっており、第2光ファイバ312bはマルチモード光ファイバからなっている。各光ファイバ312a、312bの先端にはそれぞれ光学レンズ13、15が固定されており、光学レンズ13、15には全反射ミラー301が固定されている。全反射ミラー301は、互いに略直交する2つの反射面を有しており、一方の反射面は、測定光L1を反射する第1照射部314として機能し、他方の反射面は治療レーザLtを反射する第2照射部316として機能する。
【0058】
この場合であっても、治療レーザLtが照射されている間にも、測定光L1は治療レーザの照射部位Ptとは異なる部位Pmに照射され断層情報を取得することができる。このため、効率的に断層画像を取得することができるとともに、治療レーザによる治療の進捗状況を断層画像を用いて照射対象Sをリアルタイムに監視しながらレーザ治療を行うことができる。さらに、測定光L1と治療レーザLtとの光路が異なるものとなるため、光導波部材312a、312bおよび光学レンズ13、15に各光に最適化された光学部材を用いることができる。
【0059】
なお、この光プローブ140においては、図1の光入射手段1Fは不要となり、各光ファイバ312a、312bにそれぞれ画像取得装置1A、レーザ治療装置1Bが光学的に接続されることになる。
【0060】
以下、本発明による光プローブが適用される画像取得装置の例について説明する。図7に示す画像取得装置1Aは、測定対象の断層画像を前述のSS−OCT計測により取得するものである。
【0061】
本装置における光源ユニット310は、周波数を一定の周期で掃引させながらレーザ光Laを射出するものである。具体的に該光源ユニット310は、半導体光増幅器(半導体利得媒質)311と光ファイバFB10とを有しており、光ファイバFB10が半導体光増幅器311の両端に接続された構造を有している。半導体光増幅器311は駆動電流の注入により微弱な放出光を光ファイバFB10の一端側に射出するとともに、光ファイバFB10の他端側から入射された光を増幅する機能を有している。そして、半導体光増幅器311に駆動電流が供給されたとき、半導体光増幅器311および光ファイバFB10により形成される光共振器によりパルス状のレーザ光Laが光ファイバFB1へ射出されるようになっている。
【0062】
さらに、光ファイバFB10には光分岐器312cが結合されており、光ファイバFB10内を導波する光の一部が光分岐器312cから光ファイバFB11側へ射出されるようになっている。光ファイバFB11から射出した光はコリメータレンズ313、回折格子素子314、光学系315を介して回転多面鏡(ポリゴンミラー)316において反射される。そして反射された光は光学系315、回折格子素子314、コリメータレンズ313を介して再び光ファイバFB11に入射される。
【0063】
ここで、この回転多面鏡316は矢印R1方向に回転するものであって、各反射面の角度が光学系315の光軸に対して変化するようになっている。これにより、回折格子素子314において分光された光のうち、特定の周波数域の光だけが再び光ファイバFB11に戻るようになる。この光ファイバFB11に戻る光の周波数は光学系315の光軸と反射面との角度によって決まる。そして光ファイバFB11に入射した特定の周波数域の光が光分岐器312cから光ファイバFB10に入射され、結果として特定の周波数域のレーザ光Laが光ファイバFB1側に射出されるようになっている。
【0064】
したがって、回転多面鏡316が矢印R1方向に等速で回転したとき、再び光ファイバFB11に入射される光の波長λは、時間の経過に伴って一定の周期で変化することになる。こうして光源ユニット310からは、波長掃引されたレーザ光Laが光ファイバFB1側に射出される。
【0065】
光分割手段3は、例えば2×2の光ファイバカプラから構成されており、光源ユニット210から光ファイバFB1を介して導波した光Laを測定光L1と参照光L2とに分割する。この光分割手段3は、2本の光ファイバFB2、FB3にそれぞれ光学的に接続されており、測定光L1は光ファイバFB2を導波し、参照光L2は光ファイバFB3を導波する。なお、本例におけるこの光分割手段3は、合波手段4としても機能するものである。
【0066】
光ファイバFB2には、先に図1に示した光プローブ10が光学的に接続されており、測定光L1は光ファイバFB2から光プローブ10へ導波する。光プローブ10は、例えば鉗子口から鉗子チャンネルを介して体腔内に挿入されるものであって、光学コネクタ31により光ファイバFB2に対して着脱可能に取り付けられている。
【0067】
一方、光ファイバFB3の参照光L2の射出側には光路長調整手段220が配置されている。光路長調整手段220は、断層画像の取得を開始する位置を調整するために、参照光L2の光路長を変更するものであって、光ファイバFB3から射出された参照光L2を反射させる反射ミラー22と、反射ミラー22と光ファイバFB3との間に配置された第1光学レンズ21aと、第1光学レンズ21aと反射ミラー22との間に配置された第2光学レンズ21bとを有している。
【0068】
第1光学レンズ21aは、光ファイバFB3のコアから射出された参照光L2を平行光にするとともに、反射ミラー22により反射された参照光L2を光ファイバFB3のコアに集光する機能を有している。また、第2光学レンズ21bは、第1光学レンズ21aにより平行光にされた参照光L2を反射ミラー22上に集光するとともに、反射ミラー22により反射された参照光L2を平行光にする機能を有している。つまり、第1光学レンズ21aと第2光学レンズ21bとにより共焦点光学系が形成されている。
【0069】
したがって、光ファイバFB3から射出した参照光L2は、第1光学レンズ21aにより平行光になり、第2光学レンズ21bにより反射ミラー22上に集光される。その後、反射ミラー22により反射された参照光L2は、第2光学レンズ21bにより平行光になり、第1光学レンズ21aにより光ファイバFB3のコアに集光される。
【0070】
さらに光路長調整手段220は、第2光学レンズ21bと反射ミラー22とを固定した基台23と、該基台23を第1光学レンズ21aの光軸方向に移動させるミラー移動手段24とを有している。そして基台23が矢印A方向に移動することにより、参照光L2の光路長が変えられるようになっている。
【0071】
また合波手段4は、前述の通り2×2の光ファイバカプラからなり、光路長調整手段220により周波数シフトおよび光路長の変更が施された参照光L2と、照射対象Sからの反射光L3とを合波し、光ファイバFB4を介して干渉光検出手段240側に射出するように構成されている。
【0072】
干渉光検出手段240は、合波手段4により合波された反射光L3と参照光L2との干渉光L4を検出する。そして、画像取得手段250は、干渉光検出手段240により検出された干渉光L4をフーリエ変換することにより、照射対象Sの各深さ位置における反射光L3の強度を検出し、照射対象Sの断層画像を取得する。そして、この取得された断層画像が表示装置260に表示される。なお本例の装置は、干渉光L4を光ファイバカプラ3で二分した光をそれぞれ光検出器40aと40bに導き、演算手段241においてバランス検波を行う機構を有している。以上の通り本例では、光検出器40a、40bおよび演算手段241により干渉光検出手段240が構成されている。
【0073】
ここで、干渉光検出手段240および画像取得手段250における干渉光L4の検出および画像の生成について簡単に説明する。なお、この点の詳細については「武田 光夫、「光周波数走査スペクトル干渉顕微鏡」、光技術コンタクト、2003、Vol.41、No.7、p426−p432」に詳しい記載がなされている。
【0074】
測定光L1が照射対象Sに照射されたとき、照射対象Sの各深さからの反射光L3と参照光L2とがいろいろな光路長差をもって干渉しあう際の各光路長差lに対する干渉縞の光強度をS(l)とすると、干渉光検出手段240において検出される光強度I(k)は、
I(k)=∫S(l)[1+cos(kl)]dl
で表される。ここで、kは波数、lは光路長差である。上式は波数k=ω/cを変数とする光周波数領域のインターフェログラムとして与えられていると考えることができる。このため、画像取得手段250において、干渉光検出手段240が検出したスペクトル干渉縞をフーリエ変換を行い、干渉光L4の光強度S(l)を決定することにより、照射対象Sの測定開始位置からの距離情報と反射強度情報とを取得し、断層画像を生成することができる。この画像取得装置1Aにおいても光プローブ10が用いられる。
【0075】
次に、図8を用いて本発明による光プローブが適用される画像取得装置の別の例について説明する。図8に示す画像取得装置200は、例えば体腔内の生体組織や細胞等の測定対象の断層画像を前述のSD−OCT(Spectral Domain OCT)計測により取得するものであって、具体的に図7の画像取得装置1と異なる点は、光源ユニットおよび干渉光検出手段の構成である。
【0076】
光Laを射出する光源ユニット210と、光源ユニット210から射出された光Laを測定光L1と参照光L2とに分割する光分割手段3と、光分割手段3により分割された参照光L2の光路長を調整する光路長調整手段220と、光分割手段3により分割された測定光L1を照射対象Sに照射する光プローブ10と、こうして照射対象Sに測定光L1が照射されたとき照射対象Sで反射した反射光L3と参照光L2とを合波する合波手段4と、合波された反射光L3と参照光L2との間の干渉光L4を検出する干渉光検出手段240とを有している。
【0077】
光源ユニット210は、低コヒーレント光Laを射出する例えばSLD(Super Luminescent Diode)やASE(Amplified Spontaneous Emission)、超短パルスレーザ光を非線形媒質に照射させて広帯域光を得るスーパーコンティニューム等の光源111と、この光源111から射出された光を光ファイバFB1内に入射させるための光学系112とを有している。
【0078】
一方、干渉光検出手段240は、合波手段4により合波された反射光L3と参照光L2との干渉光L4を検出するものであって、光ファイバFB4から出射した干渉光L4を平行光化するコリメータレンズ141と、複数の波長帯域を有する干渉光L4を各波長帯域毎に分光する分光手段142と、分光手段142により分光された各波長帯域の干渉光L4を検出する光検出手段144とを有している。
【0079】
分光手段144は例えば回折格子素子等から構成されており、そこに入射した干渉光L4を分光して、光検出手段144に向けて射出する。また光検出手段144は、例えば1次元もしくは2次元に光センサが配列されてなるCCD等の素子から構成され、各光センサが、上述のように分光された干渉光L4を波長帯域毎にそれぞれ検出するようになっている。
【0080】
上記光検出手段144は例えばパーソナルコンピュータ等のコンピュータシステムからなる画像取得手段250に接続され、この画像取得手段250はCRTや液晶表示装置等からなる表示装置260に接続されている。
【0081】
以下、上記構成を有する画像取得装置1Aの作用について説明する。断層画像を取得する際には、まず基台23を矢印A方向に移動させることにより、測定可能領域内に照射対象Sが位置するように光路長の調整が行われる。その後、光源ユニット210から光Laが射出され、この光Laは光分割手段3により測定光L1と参照光L2とに分割される。測定光L1は光プローブ10から体腔内に向けて射出され、照射対象Sに照射される。このとき、前述したように作動する該光プローブ10により、そこから出射した測定光L1が照射対象Sを1次元に走査する。そして、照射対象Sからの反射光L3が反射ミラー22において反射した参照光L2と合波され、反射光L3と参照光L2との干渉光L4が干渉光検出手段240によって検出される。この検出された干渉光L4が画像取得手段250において適当な波形補償、ノイズ除去を施した上でフーリエ変換されることにより、照射対象Sの深さ方向の反射光強度分布情報が得られる。
【0082】
そして、光プローブ10により上述のように測定光L1を照射対象S上で走査させれば、この走査方向に沿った各部分において照射対象Sの深さ方向の情報が得られるので、この走査方向を含む断層面についての断層画像を取得することができる。このようにして取得された断層画像は、表示装置260に表示される。なお、例えば光プローブ10を図7の左右方向に移動させて、照射対象Sに対して測定光L1を、上記走査方向に対して直交する第2の方向に走査させることにより、この第2の方向を含む断層面についての断層画像をさらに取得することも可能である。
【0083】
次に、本発明による光プローブが適用される画像取得装置のさらに別の例について説明する。図9に示す画像取得装置300は、測定対象の断層画像を前述のTD−OCT計測により取得するものであって、レーザ光Laを射出する光源111および集光レンズ112からなる光源ユニット210と、光源ユニット210から射出されて光ファイバFB1を伝搬するレーザ光Laを分割する光分割手段2と、ここを通過したレーザ光Laを測定光L1と参照光L2とに分割する光分割手段3と、光分割手段3により分割されて光ファイバFB3を伝搬した参照光L2の光路長を調整する光路長調整手段220と、光分割手段3により分割されて光ファイバFB2を伝搬した測定光L1を照射対象Sに照射する光プローブ10と、光プローブ10から測定光L1が照射対象Sに照射されたときの測定対象からの反射光L3と参照光L2とを合波する合波手段4(光分割手段3が兼ねている)と、合波手段4により合波されて反射光L3と参照光L2との干渉光L4を検出する干渉光検出手段240とを備えている。
【0084】
上記光路長調整手段220は、光ファイバFB3から出射した参照光L2を平行光化するコリメータレンズ21と、このコリメータレンズ21との距離を変えるように図中矢印A方向に移動可能とされたミラー23と、このミラー23を移動させるミラー移動手段24とから構成されて、照射対象S内の測定位置を深さ方向に変化させるために、参照光L2の光路長を変える機能を有している。そして、光路長調整手段220により光路長の変更がなされた参照光L2が合波手段4に導波されるようになっている。
【0085】
干渉光検出手段240は、合波手段4から光ファイバFB2を伝搬して来た干渉光L4の光強度を検出する。具体的には、測定光L1の全光路長と照射対象Sのある点で反射、もしくは後方散乱された反射光L3の合計と、参照光L2の光路長差が光源のコヒーレンス長よりも短い場合にのみ、反射光量に比例した振幅の干渉信号が検出される。また、光路長調整手段220により光路長を走査することで、干渉信号が得られる照射対象Sの反射点位置(深さ)が変わって行き、それにより、干渉光検出手段240が照射対象Sの各測定位置における反射率信号を検出するようになっている。なお、測定位置の情報は光路長調整手段220から画像取得手段へ出力されるようになっている。そして、ミラー移動手段24における測定位置の情報と干渉光検出手段240により検出された信号とに基づいて、画像取得手段250により照射対象Sの深さ方向の反射光強度分布情報が得られる。
【0086】
そして、光プローブ10により上述のように測定光L1を照射対象S上で走査させれば、この走査方向に沿った各部分において照射対象Sの深さ方向の情報が得られるので、この走査方向を含む断層面についての断層画像を取得することができる。このようにして取得された断層画像は、表示装置260に表示される。なお、例えば光プローブ10を図7の左右方向に移動させて、照射対象Sに対して測定光L1を、上記走査方向と直交する第2の方向に走査させることにより、この第2の方向を含む断層面についての断層画像をさらに取得することも可能である。
【0087】
この画像取得装置300においても、図7の装置に用いられたものと同様の構成を有する光プローブ10が用いられており、その作用も図7の装置におけるのと同様である。
【0088】
以上、光プローブ10が用いられた画像取得装置1A、200、300について説明したが、その光プローブ10に代えて、先に述べた本発明の別の実施形態による光プローブ100、120、140を用いることも勿論可能である。
【0089】
本発明の実施の形態は上記実施の形態に限定されない。たとえば、画像取得装置1Aは、OCT計測による断層画像を取得するものに限らず、たとえば共焦点顕微鏡装置であってもよいし、励起光(第1の光)を照射することにより蛍光を画像として検出する蛍光検出装置であってもよい。さらには、種類の異なる2つの画像を表示するものであって、測定光(第1の光)L1を照射することによるOCT計測による断層画像の取得と、励起光(第2の光)を照射することによる蛍光検出とを同時に行う場合にも、上述した光プローブ10、100、120、140を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の光治療診断システムの好ましい実施の形態を示すブロック図
【図2】本発明の光プローブの好ましい実施の形態を示す模式図
【図3】図2のIII−III断面を示す断面図
【図4】本発明の第2実施形態による光プローブを示す一部破断側面図
【図5】本発明の第3実施形態による光プローブを示す一部破断側面図
【図6】本発明の第4実施形態による光プローブを示す一部破断側面図
【図7】本発明の光プローブが用いられた、SD−OCT計測による画像取得装置の一例を示す概略構成図
【図8】本発明の光プローブが用いられた、SS−OCT計測による画像取得装置の一例を示す概略構成図
【図9】本発明の光プローブが用いられた、TD−OCT計測による画像取得装置の一例を示す概略構成図
【符号の説明】
【0091】
1 光治療診断システム
1A、200、300 画像取得装置
1B レーザ治療装置
1C 表示装置
1D システム制御部
1E 照射位置取得手段
10、100、120、140 光プローブ
11 プローブ外筒
12、312 光導波部材
14、214 第1照射部
16、216 第2照射部
L1 測定光
Lt 治療レーザ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のプローブ外筒と、
該プローブ外筒の内部空間に該プローブ外筒の軸方向に配設された、第1の光と第2の光とを導波する光導波部材と、
前記光導波部材の先端から射出した前記第1の光を前記プローブ外筒の外方に配された前記照射対象上に走査しながら照射する第1照射部と、
前記光導波部材の先端から射出した前記第2の光を、前記プローブ外筒の外方に配された前記照射対象上であって前記第1照射部により走査しながら照射されたときに前記照射対象上に形成される前記第1の光の軌跡上に照射可能にする第2照射部と
を有し、
前記光導波部材から前記第1の光と前記第2の光とが同時に射出されたとき、前記第1照射部と前記第2照射部とが前記照射対象上の異なる部位に前記第1の光と前記第2の光とをそれぞれ照射するものであることを特徴とする光プローブ。
【請求項2】
前記光導波部材が、前記第1の光および前記第2の光を導波する1本の光ファイバからなることを特徴とする請求項1記載の光プローブ。
【請求項3】
前記第1照射部が、前記光導波部材から射出される前記第1の光及び前記第2の光のうち、前記第2の光を透過し前記第1の光を前記プローブ外筒の外方に配された前記照射対象上に走査しながら照射するものであり、
前記第2照射部が、前記第1照射部を透過した前記第2の光を前記プローブ外筒の外方に配された前記照射対象上に照射可能にするものであることを特徴とする請求項1または2記載の光プローブ。
【請求項4】
前記第2照射部が、前記光導波部材から射出される前記第1の光及び前記第2の光のうち、前記第1の光を透過し前記第2の光を前記プローブ外筒の外方に配された前記照射対象上に照射可能にするものであり、
前記第1照射部が、前記第2照射部を透過した前記第2の光を前記プローブ外筒の外方に配された前記照射対象上に走査しながら照射するものであることを特徴とする請求項1または2記載の光プローブ。
【請求項5】
前記第1の光と前記第2の光とが異なる波長域の光からなるものであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の光プローブ。
【請求項6】
前記第1の光と前記第2の光とが互いに垂直な偏光方向を有する光であり、前記光導波部材が偏光保存光ファイバからなるものであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の光プローブ。
【請求項7】
前記光導波部材が、前記第1の光を導波する第1光ファイバと、前記第2の光を導波する第2光ファイバを有するものであることを特徴とする請求項1項記載の光プローブ。
【請求項8】
前記第1照射部と前記第2照射部とが、前記プローブ外筒の円周方向に回転可能に配設されたものであることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項記載の光プローブ。
【請求項9】
前記第1照射部と前記第2照射部とが、前記光導波部材から前記第1の光と前記第2の光とが同時に射出されたとき、前記プローブ外筒の円周方向に対し略180°離れた位置に前記第1の光と前記第2の光とをそれぞれ照射するものであることを特徴とする請求項8記載の光プローブ。
【請求項10】
前記第1照射部と前記第2照射部とが前記プローブ外筒の長手方向に移動可能に配設されたものであることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項記載の光プローブ。
【請求項11】
前記第1照射部と前記第2照射部とが、前記光導波部材から前記第1の光と前記第2の光とが同時に射出されたとき、前記第1の光と前記第2の光とを同一の方向であって所定の距離だけ離れた位置にそれぞれ照射するものであることを特徴とする請求項10記載の光プローブ。
【請求項12】
前記第1照射部が前記光導波部材の光軸に対し揺動可能な前記第1の光を反射する第1反射面を有するものであって、該第1反射面を揺動させることにより前記第1の光を前記プローブ外筒の外方に配された前記照射対象上に走査しながら照射するものであり、
前記第2照射部が前記光導波部材の光軸に対し揺動可能な前記第2の光を反射する第2反射面を有するものであって、該第2反射面を揺動させることにより前記第2の光を前記第1の光の軌跡上の任意の部位に照射するものであることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項記載の光プローブ。
【請求項13】
照射対象に測定光を照射したときの該照射対象からの反射光を用いて、前記照射対象の画像を取得する画像取得装置と、
前記照射対象に照射するための治療レーザを射出するレーザ治療装置と、
前記レーザ治療装置から射出された前記治療レーザと、前記画像取得装置から射出された測定光とを前記照射対象まで導波する光プローブと
を備え、
前記光プローブが、
筒状のプローブ外筒と、
該プローブ外筒の内部空間に該プローブ外筒の軸方向に配設された、測定光と治療レーザとを導波する光導波部材と、
前記光導波部材の先端から射出した前記測定光を前記プローブ外筒の外方に配された前記照射対象上に走査しながら照射する第1照射部と、
前記光導波部材の先端から射出した前記治療レーザを前記プローブ外筒の外方に配された前記照射対象上であって、前記第1照射部により走査しながら照射されたときに前記照射対象上に形成される前記測定光の軌跡上に照射可能にする第2照射部と
を有し、
前記光導波部材から前記測定光と前記治療レーザとが同時に射出されたとき、前記第1照射部と前記第2照射部とが前記照射対象上の異なる部位に前記測定光と前記治療レーザとをそれぞれ照射するものであることを特徴とする光治療診断システム。
【請求項14】
前記画像取得装置により取得された画像において前記治療レーザを照射する位置情報を取得する照射位置取得手段と、前記第2照射部が該照射位置取得手段により取得された照射位置に前記治療レーザを照射可能な状態になったときに、前記治療レーザが射出されるように前記レーザ治療装置を制御するシステム制御部とをさらに備えたことを特徴とする請求項13記載の光治療診断システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−125939(P2008−125939A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−316612(P2006−316612)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【復代理人】
【識別番号】100134245
【弁理士】
【氏名又は名称】本澤 大樹
【Fターム(参考)】