説明

光ヘッドおよび画像形成装置

【課題】光ヘッドを小型化する。
【解決手段】第1基板10と第2基板20とは相互に対向する。第2基板20の面上には
、複数の発光素子Eと、各発光素子Eの階調を指定するデータ信号Dが供給されるデータ
信号線LDとが配置される。第1基板10の面上には、各発光素子Eに対応する複数の単
位回路Uと、各単位回路Uを順次に選択するシフトレジスタ43とが配置される。単位回
路Uは、シフトレジスタ43による選択に応じてデータ信号線LDから取得したデータ信
号Dに基づいて、当該単位回路Uに対応する発光素子Eの発光を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光ダイオード素子などの発光素子を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
多数の発光素子が基板に配列された光ヘッド(ラインヘッド)を感光体ドラムなどの像
担持体の露光に利用した画像形成装置が従来から提案されている。例えば特許文献1には
、各発光素子の駆動に関わる様々な要素を多数の発光素子とともにひとつの基板の面上に
配置した光ヘッドが開示されている。基板の面上には、例えば、各発光素子の階調を指定
するデータ信号が供給される複数の信号線や、各発光素子の駆動のためにデータ信号を信
号線から取得(サンプリング)する複数のスイッチング素子、各スイッチング素子を順番
にオン状態に遷移させるシフトレジスタなどが配置される。
【特許文献1】特開2005−231171号公報(図7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1の構成においては、以上のような様々な要素の配置のために
大型の基板が必要となるから、光ヘッドやこれを利用した画像形成装置の小型化が制約さ
れるという問題があった。このような事情を背景として、本発明は、光ヘッドを小型化す
るという課題の解決を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
以上の課題を解決するために、本発明の第1の特徴に係る光ヘッドは、相互に対向する
第1基板および第2基板を具備し、第2基板のうち第1基板に対向する面上には、複数の
発光素子と、各発光素子の階調を指定するデータ信号が供給される信号線とが配置され、
第1基板のうち第2基板に対向する面上には、各発光素子に対応する複数の単位回路と、
各単位回路を順次に選択する選択回路(例えば図2のシフトレジスタ43や図8のサンプ
リング回路45)とが配置され、各単位回路は、選択回路による選択に応じて信号線から
取得したデータ信号に基づいて、当該単位回路に対応する発光素子の発光を制御する。
【0005】
以上の構成においては、選択回路および複数の単位回路が配置された第1基板と複数の
発光素子および信号線が配置された第2基板とが相互に対向するから、これらの要素がひ
とつの基板の面上に相互に重なり合わないように配置された構成と比較して光ヘッドが小
型化される。また、例えば選択回路や単位回路が薄膜トランジスタなどの能動素子を含む
構成においては、能動素子をひとつの基板の面上に形成すれば足りる。したがって、第1
基板および第2基板の双方に能動素子が配置される構成(例えば第1基板に選択回路が配
置されて第2基板に各単位回路が配置された構成)と比較して製造コストが削減される。
【0006】
さらに好適な態様において、信号線は、各発光素子が配列する第1方向(例えば図5の
X方向)に沿って延在し、各単位回路は、信号線から取得したデータ信号を保持する保持
回路と、保持回路が保持するデータ信号に応じて発光素子の発光を制御する発光制御回路
とを含み、第1方向に沿って配列する。この態様においては、データ信号を各単位回路に
入力する経路やデータ信号を保持回路から発光制御回路に伝送する経路など第1基板上の
データ信号の経路(以下「データ経路」という)と、第2基板上にてデータ信号を伝送す
る信号線とが、第1基板や第2基板に垂直な方向からみて交差する。したがって、データ
経路と信号線とがひとつの基板の別個の領域に設置された構成と比較して光ヘッドを小型
化することが可能である。
ところで、単純に光ヘッドの小型化という作用のみに着目すると、データ経路と信号線
とがひとつの基板の面上に配置されて相互に交差する構成も採用され得る。より具体的に
は、各単位回路を配列した基板の表面が絶縁層によって被覆され、信号線は絶縁層の表面
に形成されて各単位回路の配列と交差する。しかしながら、この構成においては、データ
経路および信号線の一方における電圧の変動が他方の電圧に影響する(例えばノイズが発
生する)可能性がある。特にデータ経路と信号線とが交差する箇所においてこの問題は顕
著である。もちろん絶縁層の膜厚を充分に確保すれば相互間の電気的な影響を低減するこ
とも可能ではあるが、所期の歩留まりを維持しながら絶縁層を充分な膜厚に欠陥なく形成
するのは製造技術上の事情から容易ではない。これに対し、本発明の好適な態様によれば
、第1基板と第2基板との間隔を適宜に選定することでデータ経路と信号線とが充分に離
間するから、データ経路および信号線の相互間における電気的な影響を容易に抑制するこ
とが可能である。
【0007】
より具体的な態様において、第2基板のうち第1基板に対向する面上には、各発光素子
が配列する第1方向に延在する第1給電線(例えば図2の電源線41)および第2給電線
(例えば図2の接地線42)が配置され、各発光素子は、第1給電線と第2給電線とを結
ぶ電気的な経路上に配置され、各単位回路は、第1給電線から発光素子に供給される電流
をデータ信号に基づいて制御する。以上の態様によれば、第1基板と第2基板との間隔を
適宜に選定することで中間配線と第1給電線や第2給電線との電気的な影響を抑制するこ
とが可能である。
【0008】
本発明の第2の特徴に係る光ヘッドは、相互に対向する第1基板および第2基板を具備
し、第2基板のうち第1基板に対向する面上には、第1給電線および第2給電線と、第1
給電線と第2給電線とを結ぶ電気的な経路上の複数の発光素子とが配置され、第1基板の
うち第2基板に対向する面上には、各発光素子に対応する複数の単位回路と、各単位回路
を順次に選択する選択回路とが配置され、各単位回路は、選択回路による選択に応じて信
号線から取得したデータ信号に基づいて、第1給電線から発光素子に供給される電流を制
御する。
【0009】
以上の構成においては、選択回路および複数の単位回路が配置された第1基板と複数の
発光素子および信号線が配置された第2基板とが相互に対向するから、これらの要素がひ
とつの基板の面上に相互に重なり合わないように配置された構成と比較して光ヘッドが小
型化される。また、例えば選択回路や単位回路が薄膜トランジスタなどの能動素子を含む
構成においては、能動素子をひとつの基板の面上に形成すれば足りる。したがって、第1
基板および第2基板の双方に能動素子が配置される構成(例えば第1基板に選択回路が配
置されて第2基板に各単位回路が配置された構成)と比較して製造コストが削減される。
【0010】
第2の特徴に係る光ヘッドの好適な態様において、第1給電線および第2給電線は、各
発光素子が配列する第1方向(例えば図5のX方向)に沿って延在し、各単位回路は、信
号線から取得したデータ信号を保持する保持回路と、保持回路が保持するデータ信号に応
じて発光素子の発光を制御する発光制御回路とを含み、第1方向に沿って配列する。この
構成においては、第1基板上にてデータ信号を伝送するデータ経路と第1給電線や第2給
電線とが交差するから、これらの要素がひとつの基板上に形成された構成と比較して光ヘ
ッドが小型化される。また、第1基板と第2基板との間隔を適宜に選定することでデータ
経路と第1給電線や第2給電線とが充分に離間するから、データ経路および各給電線の相
互間における電気的な影響を容易に抑制することができる。
【0011】
なお、本発明の発光素子とは、電気エネルギの付与(例えば電流の供給や電界の印加)
によって発光する素子であり、例えば電流の供給によって輝度が制御される有機発光ダイ
オード素子である。また、本発明における「複数の発光素子」は、光ヘッドが備える発光
素子の全部であっても一部であってもよい。
【0012】
ところで、各発光素子が第2基板の周辺の近傍に配置された構成においては、第1基板
と第2基板との接合部から浸入した水分や不純物が容易に発光素子に到達し、これによっ
て発光素子が劣化する可能性がある。一方、単純に第1基板や第2基板を大型化すること
で各発光素子の両側に各々の封止のためのスペースを確保する構成においては、光ヘッド
の小型化が阻害されるという問題がある。
そこで、第1および第2の特徴に係る光ヘッドの好適な態様において、各単位回路は、
第1給電線と発光素子とを結ぶ電気的な経路上に配置されるとともにデータ信号に応じて
発光素子の発光を制御する駆動素子(例えば図3の駆動トランジスタRdr)を含み、各単
位回路の駆動素子と発光素子とは第1接続部(例えば図4の接続端子Ca1・導通粒子31
・接続端子Cb1)にて電気的に接続され、第1給電線と各単位回路の駆動素子とは第2接
続部(例えば図4の接続端子Ca2・導通粒子31・接続端子Cb2)にて電気的に接続され
、各発光素子は、第2基板に垂直な方向からみて、第1接続部と第2接続部との間隙の領
域に配置される。
以上の態様においては、各発光素子の配列を挟んだ両側に第1接続部と第2接続部とが
配置されるから、第1基板や第2基板を大型化することなく各発光素子と第2基板の周縁
との距離が充分に確保される。したがって、第1基板と第2基板との接合部から浸入した
水分や不純物が発光素子に到達する可能性は低減され、これらの付着に起因した発光素子
の劣化が抑制されるという利点がある。
【0013】
第1および第2の特徴に係る光ヘッドの好適な態様において、各発光素子と各単位回路
とは、第1基板や第2基板に垂直な方向からみて相互に重なり合い、各発光素子は、相互
に対向する第1電極および第2電極と両電極間に介在する発光層とを含み、各発光素子の
第2電極は、当該発光素子の発光層と単位回路との間に介在する。以上の態様によれば、
各発光素子と各単位回路とが重なり合わないように配置された構成と比較して光ヘッド(
第1基板や第2基板)の小型化が可能である。また、発光層と単位回路との間に第2電極
が介在するから、単位回路から発光層に対する電気的な影響(例えばノイズ)が第2電極
によって遮蔽される。以上の作用および効果は、第2電極が複数の発光素子にわたって連
続に形成された態様において特に顕著となる。また、遮光性(光吸収性または光反射性)
の導電材料によって第2電極が形成された構成によれば、単位回路に向かう光が第2電極
によって遮光されるから、光照射に起因した単位回路の誤動作が防止されるという利点が
ある。
【0014】
さらに好適な態様において、信号線と選択回路とは第1基板や第2基板に垂直な方向か
らみて相互に重なり合う。この態様によれば、信号線と選択回路とが重なり合わないよう
に配置された構成と比較して光ヘッドの小型化が可能である。
【0015】
第1および第2の特徴に係る光ヘッドの具体的な態様において、選択回路は、各発光素
子が配列する第1方向に沿って延在し、各単位回路と各発光素子とは第1接続部にて電気
的に接続され、各発光素子は、第2基板に垂直な方向からみて、選択回路と第1接続部と
の間隙の領域に配置される。別の観点からすると、信号線は、各発光素子が配列する第1
方向に沿って延在し、各単位回路と各発光素子とは第1接続部にて電気的に接続され、各
発光素子は、第2基板に垂直な方向からみて、信号線と第1接続部との間隙の領域に配置
される。
以上の各態様においては、各発光素子の配列を挟んだ両側に第1接続部と他の要素(選
択回路や信号線)とが位置するから、第1基板や第2基板を大型化することなく各発光素
子と第2基板の周縁との距離が充分に確保される。したがって、各発光素子を良好に封止
することが可能である。
【0016】
本発明に係る光ヘッドは各種の電子機器に利用される。本発明に係る電子機器の典型例
は、以上の各態様に係る光ヘッドを感光体ドラムなどの像担持体の露光に利用した電子写
真方式の画像形成装置である。この画像形成装置は、露光によって潜像が形成される像担
持体(例えば図10の感光体ドラム70)と、像担持体を露光する本発明の光ヘッドと、
像担持体の潜像に対する現像剤(例えばトナー)の付着によって顕像を形成する現像器と
を含む。もっとも、本発明に係る光ヘッドの用途は像担持体の露光に限定されない。例え
ば、スキャナなどの画像読取装置においては、本発明に係る光ヘッドを原稿の照明に利用
することが可能である。この画像読取装置は、本発明に係る光ヘッドと、光ヘッドから出
射して読取対象(原稿)で反射した光を電気信号に変換する受光装置(例えばCCD(Ch
arge Coupled Device)素子などの受光素子)とを具備する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
<A:第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る光ヘッド(露光ヘッド)を利用した画像形成装置
の部分的な構成を示す斜視図である。同図に示すように、画像形成装置は光ヘッドHと集
光性レンズアレイ60と感光体ドラム70とを具備する。光ヘッドHは、X方向(主走査
方向)に配列する多数の発光素子(図1では図示略)を含む。感光体ドラム70は、X方
向に延在する回転軸に支持され、外周面を光ヘッドHに対向させた状態で回転する。
【0018】
集光性レンズアレイ60は光ヘッドHと感光体ドラム70との間隙に配置される。この
集光性レンズアレイ60は、各々の光軸を光ヘッドH(Z方向)に向けた姿勢でアレイ状
に配列された多数の屈折率分布型レンズを含む。集光性レンズアレイ60としては、例え
ば日本板硝子株式会社から入手可能なSLA(セルフォック・レンズ・アレイ)がある(
セルフォック/SELFOCは日本板硝子株式会社の登録商標)。光ヘッドHにおける各
発光素子からの出射光は集光性レンズアレイ60の各屈折率分布型レンズを透過したうえ
で感光体ドラム70の表面に到達する。この露光によって感光体ドラム70の表面には所
望の画像に応じた潜像(静電潜像)が形成される。
【0019】
図2は、光ヘッドHの電気的な構成を示すブロック図である。図2に示すように、光ヘ
ッドHは、複数の発光素子EがX方向に配列された素子アレイ部Aと、電源線41および
接地線42と、各発光素子Eに対応する複数(発光素子Eと同数)の単位回路Uとを具備
する。各発光素子Eは、有機EL(ElectroLuminescence)材料からなる発光層が陽極と
陰極との間に介在する有機発光ダイオード(OLED:Organic Light Emitting Diode)
素子であり、発光層に供給される電流に応じた輝度(光度)に発光する。
【0020】
電源線41には外部の電源回路46から外部接続端子Tp1を介して電源電位VDDが供給
される。接地線42には電源回路46から外部接続端子Tp2を介して接地電位VSSが供給
される。各発光素子Eの陰極は接地線42に接続される。複数の単位回路Uは、X方向に
相隣接するn個(U1,U2,……,Un)を単位としてm個のブロックB(B1,B2,…
…,Bm)に区分される(mおよびnの各々は2以上の整数)。なお、本実施形態では説
明の便宜のために各ブロックBに同数の単位回路Uが含まれる構成を例示するが、ブロッ
クBごとに単位回路Uの個数が相違する構成としてもよい。
【0021】
さらに、光ヘッドHは、ブロックBの総数に相当するmビットのシフトレジスタ43と
、各ブロックBの単位回路Uの個数に相当するn本のデータ信号線LD(LD1〜LDn)
を含む信号線群Lとを具備する。シフトレジスタ43には外部の制御回路47から外部接
続端子Tsを介してスタートパルスSPとクロック信号CLKとが供給される。シフトレ
ジスタ43は、各単位回路UをブロックBごとに選択するための手段であり、クロック信
号CLKに同期したスタートパルスSPのシフトによってm系統の選択信号S1〜Smを生
成する。選択信号S1〜Smの各々は、クロック信号CLKの1周期ごとに順番にアクティ
ブレベルとなる。選択信号Si(iは1≦i≦mを満たす整数)は、ブロックBiに属する
n個の単位回路U1〜Unに対して共通に供給される。選択信号Siのアクティブレベルへ
の遷移はブロックBiに属する各単位回路U1〜Unの選択を意味する。
【0022】
図2の画像処理回路48は、ひとつのブロックBに属する単位回路Uの総数に相当する
n系統のデータ信号D1〜Dnを生成する。データ信号Dj(jは1≦j≦nを満たす整数
)は外部接続端子Tdを介してデータ信号線LDjに供給される。ブロックB1〜Bmの各々
に属する第j段目の単位回路Uj(合計m個)はデータ信号線LDjに対して共通に接続さ
れる。データ信号Djは、ブロックB1〜Bmの各々の第j段目の単位回路Ujに対応した発
光素子Eの輝度(階調)をブロックB1〜Bmの配列の順番に時分割にて指定する電圧信号
である。さらに詳述すると、データ信号Djは、選択信号Siがアクティブレベルとなる期
間において、ブロックBiの単位回路Ujに対応した発光素子Eに指定された輝度に応じて
ハイレベルおよびローレベルの何れかとなる。
【0023】
次に、図3を参照して、ひとつの単位回路Uの具体的な構成を説明する。なお、同図に
おいてはブロックBiに属するひとつの単位回路Ujのみが図示されているが、総ての単位
回路U(U1〜Un)は同様の構成である。図3に示すように、ひとつの単位回路Ujは、
保持回路441と発光制御回路442とを含む。
【0024】
保持回路441は、選択信号SiによるブロックBiの選択に応じてデータ信号線LDj
からデータ信号Djを取得して保持する手段(例えばラッチ回路)である。さらに詳述す
ると、保持回路441は、選択信号Siがアクティブレベルに遷移したタイミングにてデ
ータ信号線LDjからデータ信号Djを取得し、選択信号Siが次にアクティブレベルに遷
移するまでデータ信号Djの出力を維持する。
【0025】
発光制御回路442は、保持回路441が保持するデータ信号Djに応じて発光素子E
の発光を制御する手段であり、pチャネル型のトランジスタ(以下「駆動トランジスタ」
という)Rdrとnチャネル型のトランジスタR0とを含む。駆動トランジスタRdrは、発
光素子Eに供給される電流を制御する手段であり、電源線41と発光素子Eの陽極との間
に介在する。トランジスタR0は駆動トランジスタRdrのドレイン(発光素子Eの陽極)
と接地線42との間に介在する。駆動トランジスタRdrおよびトランジスタR0の各々の
ゲートには保持回路441から出力されたデータ信号Djが供給される。保持回路441
がローレベルのデータ信号Djを保持している場合、駆動トランジスタRdrはオン状態と
なり、トランジスタR0はオフ状態となる。したがって、発光素子Eは、電源線41から
駆動トランジスタRdrを介した電流の供給によって発光する。これに対し、データ信号D
jがハイレベルである場合には、駆動トランジスタRdrはオフ状態とって発光素子Eは消
灯する。なお、駆動トランジスタRdrがオフ状態にあるときのリーク電流はオン状態のト
ランジスタR0を経由して接地線42に流れ込むから、データ信号Djがハイレベルである
場合に発光素子Eを確実に消灯させることができる。
【0026】
次に、光ヘッドHの機械的な構造について説明する。図4は、図1におけるIV−IV線か
らみた断面図である。図1および図4に示すように、光ヘッドHは、相互に対向する状態
で貼り合わされた第1基板10と第2基板20とを具備する。第2基板20は第1基板1
0からみて感光体ドラム70側に位置する。第1基板10および第2基板20は、X方向
を長手とする姿勢に固定された長尺状の板材である。
【0027】
図5の部分(a)は、第1基板10のうち第2基板20に対向する表面(以下「対向面」
という)10s上に配置された要素の構造を示す平面図であり、同図の部分(b)は、第2基
板20のうち第1基板10に対向する表面(以下「対向面」という)20s上に配置され
た要素の構造を示す平面図である。図5の部分(a)および部分(b)の各々における紙面の手
前側が相互に向かい合うように第1基板10と第2基板20とが貼り合わされる。
【0028】
図4と図5の部分(a)とに示すように、シフトレジスタ43および各単位回路Uは第1
基板10の対向面10s上に配置される。図5の部分(a)に示すように、シフトレジスタ4
3は、X方向を長手としてY方向(副走査方向)の正側の周縁に沿うように配置された長
尺状の回路である。対向面10sにはシフトレジスタ43に接続される外部接続端子Ts(
図示略)が形成される。また、対向面10sのうちY方向の負側の周縁に沿った領域には
、X方向に配列する複数の接続端子Ca1が配置される。複数の単位回路Uは、シフトレジ
スタ43と接続端子Ca1の配列との間隙の領域にてX方向に配列する。
【0029】
図4と図5の部分(b)とに示すように、複数の発光素子Eと電源線41および接地線4
2と信号線群Lとは第2基板20の対向面20s上に配置される。信号線群Lを構成する
n本のデータ信号線LD1〜LDnは、対向面20sのうちY方向の正側の周縁に沿った領
域にてX方向に延在する。各データ信号線LDは、対向面20sのうちX方向の正側の周
縁に形成された外部接続端子Tdに接続される。また、対向面20sのうちY方向の負側の
周縁に沿った領域には、X方向に配列する複数の接続端子Cb1が配置される。電源線41
および接地線42は、信号線群Lと接続端子Cb1の配列との間隙の領域にてX方向に延在
する。電源線41のうち第1基板10の周縁に至った端部が図2の外部接続端子Tp1であ
る。同様に、接地線42のうち第1基板10の周縁に至った端部が外部接続端子Tp2であ
る。複数の発光素子Eは、接地線42と接続端子Cb1の配列との間隙の領域にてX方向に
配列する。なお、第1基板10と第2基板20とが接合された状態において、第2基板2
0上の外部接続端子Td・Tp1・Tp2は、実際には第1基板10とは重なり合わない。つ
まり、外部接続端子Td・Tp1・Tp2は、第2基板20のうち第1基板10の周縁から張
り出す領域に形成される。同様に、第1基板10上の外部接続端子Tsは第2基板20と
は重なり合わない。
【0030】
図4に示すように、第1基板10と第2基板20とが接合された状態で第1基板10の
各接続端子Ca1と第2基板20の各接続端子Cb1とは相互に対向する。第1基板10と第
2基板20とは両者間に介在する異方性導電体30によって接合される。異方性導電体3
0は、多数の導電性の粒子(以下「導通粒子」という)31を接着剤32に分散させた膜
体である。第1基板10と第2基板20との間隙に異方性導電体30を介挿したうえで両
基板を熱圧着すると、第1基板10と第2基板20とが接着剤32によって相互に接合さ
れるとともに接続端子Ca1とこれに対向する接続端子Cb1とが導通粒子31に接触して電
気的に接続される。なお、導通粒子31は、第1基板10と第2基板20との間隔を所定
の寸法に維持するスペーサとしても機能する。
【0031】
図4に示すように、第1基板10の各単位回路Uと第2基板20の各発光素子Eとは、
第1基板10や第2基板20の表面に垂直なZ方向からみて相互に重なり合う。この構成
によれば、ひとつの基板に区画された別個の領域に単位回路Uと発光素子Eとが配置され
た構成と比較して基板(第1基板10・第2基板20)が小型化される。さらに、本実施
形態においては、第1基板10のシフトレジスタ43(より詳細にはシフトレジスタ43
を構成するトランジスタQ)と第2基板20の信号線群LとがZ方向からみて相互に重な
り合う。この構成によれば、ひとつの基板の別個の領域にシフトレジスタ43と信号線群
Lとが配置された構成と比較して基板が小型化される。以上のように、本実施形態によれ
ば第1基板10や第2基板20に必要となる面積が第1基板10上の要素と第2基板20
上の要素との重複分だけ削減される。したがって、光ヘッドHやこれを内蔵する画像形成
装置が小型化されるという利点がある。
【0032】
また、図5の部分(b)に示すように各発光素子EはX方向に延在する配線(信号線群L
・電源線41・接地線42)と接続端子Cb1の配列との間隙に位置する。換言すると、各
発光素子Eは、図4に示すように、Z方向からみて接続端子Ca1・Cb1とシフトレジスタ
43との間隙に位置する。この構成によれば、第2基板20の周縁と発光素子Eとの距離
を充分に確保することが可能である。各発光素子Eが第2基板20の周縁の近傍に配置さ
れた構成(例えば発光素子Eと第2基板20の周縁との間に配線が介在しない構成)にお
いては、第1基板10と第2基板20との接合部から浸入した水分や不純物が容易に発光
素子Eに到達し、これによって発光素子Eが劣化する可能性がある。これに対し、本実施
形態によれば、第2基板20のうちY方向の沿った中央寄りの位置に各発光素子Eが配置
されるから、第1基板10と第2基板20との接合部から浸入した水分や不純物が発光素
子Eに到達する可能性は低減される。すなわち、各発光素子Eを第1基板10と第2基板
20との間隙に良好に封止して外部との接触を有効に防止することが可能である。したが
って、本実施形態によれば、水分や不純物の付着に起因した発光素子Eの劣化が抑制され
るという利点がある。
【0033】
なお、以上においては対向面10sに外部接続端子Tsが形成された構成を例示したが、
第2基板20の対向面20sに形成された外部接続端子Tsを導通粒子31によって第1基
板10のシフトレジスタ43に接続する構成としてもよい。この構成においては、総ての
外部接続端子(Ts・Td・Tp1・Tp2)が第2基板20に形成されるから、光ヘッドHと
外部とを接続するための構成が簡素化されるという利点がある。
【0034】
次に、図6は、第1基板10に形成された要素の構成を示す断面図(図5の部分(a)に
おけるVI−VI線からみた断面図)である。図6と図4とでは上下(Z方向)が逆転してい
る。図6に示すように、第1基板10の対向面10s上には、シフトレジスタ43を構成
する複数のトランジスタQ(図6ではひとつのみが図示されている)と、単位回路Uを構
成する複数のトランジスタRとが配置される。なお、単位回路Uを構成するトランジスタ
(図3の駆動トランジスタRdr・トランジスタR0や保持回路441を構成するトランジ
スタ)の各々を特に区別する必要がない場合には単に「トランジスタR」と表記する。ト
ランジスタQとトランジスタRとは共通の工程にて一括的に形成される。
【0035】
第1基板10上のトランジスタQ・Rの各々は、第1基板10の表面に半導体材料によ
って形成された半導体層11と、半導体層11上のゲート絶縁層Fa0を挟んで半導体層1
1(チャネル領域)に対向するゲート電極121とを含む薄膜トランジスタである。半導
体層11は、例えばアモルファスシリコンに対するレーザアニールで形成されたポリシリ
コンの膜体である。ゲート電極121は第1絶縁層Fa1に覆われる。トランジスタQ・R
の各々のソース電極131およびドレイン電極132は、アルミニウムなど低抵抗の金属
によって第1絶縁層Fa1の面上に形成されるとともにコンタクトホールを介して半導体層
11(ソース領域およびドレイン領域)に導通する。トランジスタQ・Rが形成された第
1基板10の表面は第2絶縁層Fa2に覆われる。第1絶縁層Fa1や第2絶縁層Fa2はSi
2やSiNなどの絶縁材料で形成された膜体である。
【0036】
図6に示すように、各接続端子Ca1は第1層133と第2層14とが第1基板10側か
らこの順番に積層された構造となっている。各トランジスタQ・Rのソース電極131お
よびドレイン電極132と第1層133とは、第1絶縁層Fa1の全面にわたって連続に形
成された導電膜のパターニングによって同一の工程で一括的に形成される。なお、ソース
電極131・ドレイン電極132と第1層133との関係のように、複数の要素が共通の
膜体(単層であるか複数層であるかは不問である)の選択的な除去によって同一の工程で
形成されることを以下では単に「同層から形成される」と表記する。同層から形成された
各要素の材料は当然に同一であって各々の膜厚は略一致する。複数の要素が同層から形成
される構成によれば、各々が別個の膜体から形成される構成と比較して、製造工程の簡素
化や製造コストの低減が実現されるという利点がある。
【0037】
図6に示すように、各接続端子Ca1の第1層133は、第1絶縁層Fa1を貫通するコン
タクトホールを介して中間導電体122に電気的に接続される。中間導電体122は、ト
ランジスタQ・Rのゲート電極121と同層から形成される。駆動トランジスタRdrのド
レイン電極132は、中間導電体122を介して接続端子Ca1に接続される。
【0038】
第2絶縁層Fa2のうち第1層133に重なり合う部分には開口部Oa1が形成される。第
2層14は、開口部Oa1の内側に入り込むように形成されて第1層133と電気的に接続
される。第2層14は、例えばITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxid
e)といった導電性の酸化物(光透過性の導電材料)によって形成される。このように耐
食性の高い第2層14によってアルミニウムなど耐食性の低い材料の第1層133を被覆
することで第1層133の腐食が有効に防止される。
【0039】
第2絶縁層Fa2のうち駆動トランジスタRdrのソース電極131に重なり合う部分には
開口部Oa2が形成される。図6に示すように、開口部Oa2の内側に入り込むように接続端
子Ca2が第2層14と同層から形成される。接続端子Ca2は、駆動トランジスタRdrのソ
ース電極131に接触して電気的に接続される。また、第2絶縁層Fa2(トランジスタQ
のドレイン電極132に重なり合う部分)には開口部Oa3が形成される。図6に示すよう
に、開口部Oa3の内側に入り込むように接続端子Ca3が第2層14と同層から形成される
。接続端子Ca3は、シフトレジスタ43や単位回路Uの保持回路441に電気的に接続さ
れる。
【0040】
次に、図7は、第2基板20に形成された要素の構成を示す断面図(図5の部分(b)に
おけるVII−VII線からみた断面図)である。図7に示すように、第2基板20の対向面2
0s上には電源線41とn本のデータ信号線LD1〜LDnとがアルミニウムなどの低抵抗
な金属によって同層から形成される。電源線41と信号線群Lとが形成された対向面20
sは第1絶縁層Fb1に覆われる。
【0041】
各接続端子Cb1は、接続端子Ca1と同様に、第1層221と第2層242とが第2基板
20側からこの順番に積層された構造となっている。図7に示すように第1絶縁層Fb1の
面上には、接地線42および中間導電体222・223が、アルミニウムなど低抵抗の金
属によって第1層221と同層から形成される。中間導電体222は、第1層221と同
様に、単位回路U(あるいは発光素子E)ごとに形成されてX方向に配列する導電体であ
る。総ての中間導電体222は、第1絶縁層Fb1を貫通するコンタクトホールを介して電
源線41に電気的に接続される。同様に、中間導電体223は、単位回路U(発光素子E
)ごとに形成されてX方向に配列する。単位回路Ujに対応した中間導電体223は、第
1絶縁層Fb1を貫通するコンタクトホールを介してデータ信号線LDjに電気的に接続さ
れる。
【0042】
図7に示すように、第1絶縁層Fb1の表面は第2絶縁層Fb2に覆われる。第2絶縁層F
b2の面上には第1電極241が発光素子Eごとに相互に離間して形成される。第1電極2
41は、発光素子Eの陽極として機能する略円形の電極であり、ITOやIZOといった
光透過性の導電材料によって形成される。接続端子Ca1の第2層242は、第1電極24
1に連続する部分であり、第2絶縁層Fb2に形成された開口部Ob1の内側に入り込むよう
に形成されて第1層221と電気的に接続される。したがって、図6における駆動トラン
ジスタRdrのドレイン電極132は、中間導電体122と接続端子Ca1と導通粒子31と
接続端子Cb1とを介して発光素子Eの第1電極241に電気的に接続される。
【0043】
図7に図示された接続端子Cb2・Cb3および中間導電体243は、第2層242と同層
から形成された部分である。接続端子Cb2は、単位回路Uごとに形成されてX方向に配列
する端子であり、第2絶縁層Fb2のうち各中間導電体222と重なり合う開口部Ob2に入
り込んで中間導電体222と電気的に接続される。同様に、接続端子Cb3は、単位回路U
ごとに形成されてX方向に配列する端子であり、第2絶縁層Fb2の開口部Ob3に入り込ん
で中間導電体223に導通する。また、中間導電体243は、発光素子Eごとに形成され
、第2絶縁層Fb2の開口部Ob4を介して接地線42に電気的に接続される。
【0044】
以上の要素が形成された第2絶縁層Fb2の表面は第3絶縁層Fb3に覆われる。図7に示
すように、接続端子Cb1の第2層242と接続端子Cb2・Cb3と中間導電体243とは第
3絶縁層Fb3から露出する。また、第3絶縁層Fb3のうち第1電極241に重なり合う部
分には略円形の開口部Ob5が形成される。発光素子Eの発光層25は、開口部Ob5の内側
であって第1電極241を底面とする空間に形成される。すなわち、第3絶縁層Fb3は、
発光層25の平面的な形状を規定する役割を担う。発光層25の形成には、例えば発光材
料の液滴をノズルから吐出して第1電極241の表面に付着させるインクジェット法(液
滴吐出法)が好適に採用される。なお、発光層25による発光を促進または効率化するた
めの各種の機能層(正孔注入層・正孔輸送層・電子注入層・電子輸送層・正孔ブロック層
・電子ブロック層)が発光層25に積層された構成としてもよい。
【0045】
第3絶縁層Fb3の面上には、アクリルなどの有機材料やSiO2およびSiNなどの無
機材料といった各種の絶縁材料によって隔壁Fb4が形成される。隔壁Fb4は、発光層25
を露出させる開口部Ob6を有し、インクジェット法による発光層25の形成時に発光材料
の液滴が到達する領域を発光素子Eごとに仕切る隔壁として機能する。したがって、スピ
ンコート技術や蒸着技術によって発光層25が成膜される構成において隔壁Fb4は不要で
ある。図7に示すように、接続端子Cb1の第2層242と接続端子Cb2・Cb3と中間導電
体243とは隔壁Fb4から露出する。
【0046】
図4に示すように、第1基板10と第2基板20とが接合された状態において、第1基
板10の接続端子Ca2と第2基板20の接続端子Cb2とは両者間に介在する導通粒子31
に接触する。したがって、図4・図6および図7に示すように、駆動トランジスタRdrの
ソース電極131は、接続端子Ca2と導通粒子31と接続端子Cb2と中間導電体222と
を介して電源線41に電気的に接続される。以上のように、各発光素子Eは、各単位回路
Uおよび各発光素子Eが電気的に接続される箇所(Ca1・Cb1)と、電源線41および各
単位回路Uが電気的に接続される箇所(Ca2・Cb2)との間隙の領域に配置される(図4
参照)。
【0047】
また、図4に示すように接続端子Ca3と接続端子Cb3とは導通粒子31に接触する。し
たがって、図4・図6および図7に示すように、第2基板20上のデータ信号線LDjは
、中間導電体223と接続端子Cb3と導通粒子31と接続端子Ca3とを介して、第1基板
10上のシフトレジスタ43や単位回路Uj(保持回路441)に対して電気的に接続さ
れる。
【0048】
図7に示す第2電極27は、発光層25を挟んで第1電極241に対向する電極(発光
素子Eの陰極)である。第2電極27の材料としては、アルミニウムや銀などの金属およ
びこれらを主成分とする合金といった各種の光反射性の導電材料が採用される。発光層2
5から第1電極241側に放射された光と発光層25から第1電極241とは反対側に放
射されて第2電極27の表面にて反射した光とは、図4に白抜きの矢印で図示されるよう
に、第1電極241や第2基板20を透過して感光体ドラム70側に出射する。したがっ
て、第2基板20には光透過性が要求されるが、第1基板10に光透過性は不要である。
【0049】
図5の部分(b)に示すように、第2電極27は、複数の発光素子Eにわたって連続に形
成されるとともに接地線42と重なり合う。さらに詳述すると、第2電極27は、図7に
示すように、発光層25の上層から隔壁Fb4を跨ぐ形状に形成されて中間導電体243に
接触する。すなわち、第2電極27は中間導電体243を介して接地線42に電気的に接
続される。
【0050】
図4に示したように、発光素子Eと単位回路UとはZ方向からみて重なり合うから、ト
ランジスタR(半導体層11)と発光層25との間には第2電極27が介在する。したが
って、例えばトランジスタRのオン・オフの切換に伴なって発生するノイズは第2電極2
7によって遮蔽されて発光層25や第1電極241には影響しない。このように本実施形
態によれば、光ヘッドHの小型化のために単位回路Uと発光素子Eとが重なり合う構成を
採用しているにも拘わらず、単位回路Uと発光素子Eとの相互間における電気的な影響が
抑制されるという利点がある。
【0051】
また、発光層25からの出射光が単位回路Uやシフトレジスタ43に直接的に到達する
とすれば、半導体層11の光励起に起因してトランジスタQ・Rに誤動作(例えば電流の
リーク)が発生する可能性がある。これに対し、本実施形態においては遮光性(光反射性
)の第2電極27が発光層25と第1基板10との間に介在するから、発光層25から第
1基板10側への放射光は第2電極27によって遮光されて単位回路Uやシフトレジスタ
43には到達しない。したがって、光照射に起因したトランジスタQ・Rの誤動作を防止
することが可能である。
【0052】
以上のように本実施形態においては、総てのトランジスタ(Q・R)が第1基板10に
形成され、第2基板20には発光素子Eと各種の配線のみが形成される。この構成によれ
ば、シリコンの成膜やレーザアニールといったポリシリコンプロセス(半導体層11の形
成)を第2基板20に実施する必要がない。したがって、トランジスタQ・Rが第1基板
10および第2基板20の双方に分散して配置された構成と比較して、光ヘッドHの製造
工程が簡素化されるという利点がある。
【0053】
ところで、本実施形態においては、第1基板10上にてデータ信号Dが伝送される経路
(データ経路:接続端子Ca2から各単位回路Uに至る経路および各単位回路Uの保持回路
441から駆動トランジスタRdrに至る経路)はY方向に延在する。これに対し、データ
信号線LD・電源線41および接地線42といった第2基板20上の各配線(以下では「
X方向配線」と総称する)はX方向に延在する。すなわち、第1基板10のデータ経路と
第2基板20のX方向配線とはZ方向からみて交差する。この構成によれば、データ経路
とX方向配線とがひとつの基板の別個の領域に形成された構成と比較して光ヘッドHが小
型化されるという利点がある。
【0054】
なお、データ経路とX方向配線とがZ方向に近接する構成においては両者間に容量が寄
生するから、データ経路およびX方向配線の一方における電圧の変動に起因して他方にノ
イズが発生する可能性がある。本実施形態においては、データ経路が第1基板10に形成
されるとともに配線が第2基板20に形成されるから、第1基板10と第2基板20との
間隔を適宜に選定することでデータ経路とX方向配線とを充分に離間させることが可能で
ある。したがって、データ経路およびX方向配線の相互間における電気的な影響を容易に
抑制できるという利点がある。
【0055】
<B:第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図8は、本実施形態に係る光ヘッドH
の電気的な構成を示すブロック図であり、図9は、第1基板10および第2基板20の各
々に配置された要素の構成を示す平面図(図5に対応する平面図)である。なお、本実施
形態のうち作用や機能が第1実施形態と共通する要素については以上と同じ符号を付して
その詳細な説明を適宜に省略する。
【0056】
図8および図9に示すように、本実施形態に係る光ヘッドHにおいては、第1実施形態
のシフトレジスタ43に代えて、サンプリング回路(デマルチプレクサ)45が第1基板
10の対向面10sに配置される。サンプリング回路45は、各単位回路Uに対応する複
数(「m×n」個)のトランジスタSWをX方向に配列した回路であり、シフトレジスタ
43と同様に、各単位回路Uを順番に選択する手段として機能する。
【0057】
第2基板20の対向面20sには、図8や図9の部分(b)に示すように、m本のデータ信
号線LD(LD1〜LDm)を含む信号線群Lと、n本の選択信号線LS(LS1〜LSn)
を含む信号線群Laとが形成される。各選択信号線LSは、信号線群Lと電源線41との
間隙にてX方向に延在する。図8に示すように、ブロックBiに属するn個の単位回路U1
〜Unは、各々に対応するトランジスタSWを介してデータ信号線LDiに対して共通に接
続される。また、ブロックB1〜Bmの各々における単位回路Ujに対応したトランジスタ
SW(合計m個)のゲートは選択信号線LSjに対して共通に接続される。
【0058】
各選択信号線LSjは、異方性導電体30の導通粒子31を介して、第1基板10の対
向面10sに配置されたトランジスタSWのゲートに電気的に接続される。以上の構成に
おいて、第2基板20上の選択信号線LSは、第1基板10上のデータ経路や選択信号SE
Lが伝送される配線と交差する。したがって、第1実施形態と同様に、第1基板10上の
経路と第2基板20上のX方向配線(各選択信号線LSを含む)の相互間における電気的
な干渉を抑制しながら光ヘッドHを小型化することが可能である。また、各データ信号線
LD1〜LDnおよび各選択信号線LS1〜LSnは、Z方向からみると、第1基板10のサ
ンプリング回路45(トランジスタSW)に重なり合う。この構成によれば、信号線群L
・Laがサンプリング回路45に重なり合わない構成と比較して光ヘッドHが小型化され
る。
【0059】
選択信号線LSjには制御回路47から外部接続端子Tselを介して選択信号SELjが供給
される。選択信号SEL1〜SELnの各々は所定の周期で順番にアクティブレベルとなる。デー
タ信号線LDiには画像処理回路48からデータ信号Diが供給される。選択信号SELjがア
クティブレベルに遷移すると、各単位回路Ujに対応した合計m個のトランジスタSWが
一斉にオン状態に変化し、このときにデータ信号線LD1〜LDmに供給されているデータ
信号D1〜Dmが各ブロックBの単位回路Ujに対して並列に入力される。選択信号SEL1〜S
ELnによるn回の選択が完了すると、第1実施形態と同様に、総ての単位回路Uの保持回
路441にデータ信号Dが保持されることになる。
【0060】
<C:変形例>
以上の各形態には様々な変形を加えることができる。具体的な変形の態様を例示すれば
以下の通りである。なお、以下の各態様を適宜に組み合わせてもよい。
【0061】
(1)変形例1
以上の各形態においては、各発光素子Eからの放射光が第2基板20を透過する構成(
ボトムエミッション構造)を例示したが、発光素子Eからの放射光が第2基板20とは反
対側に出射するトップエミッション構造にも本発明は適用される。トップエミッション構
造の光ヘッドHにおいては第2電極27が光透過性の導電材料によって形成される。
【0062】
(2)変形例2
単位回路Uの構成は適宜に変更される。例えば、以上の各形態においてはラッチ回路が
保持回路441として利用された構成を例示したが、駆動トランジスタRdrのゲートに接
続された容量素子が保持回路441とされた構成も採用される。この構成においては、駆
動トランジスタRdrのゲートとデータ信号線LDとの電気的な接続(導通/非導通)を選
択信号Siに応じて制御するスイッチング素子が配置される。オン状態となったスイッチ
ング素子を介してデータ信号線LDから駆動トランジスタRdrのゲート電極121にデー
タ信号Djが供給され、スイッチング素子がオフ状態に変化した後も、ゲート電極121
の電圧は容量素子(保持回路441)によってデータ信号Djに応じた電圧に維持される

【0063】
(3)変形例3
以上の各形態においては発光素子EとしてOLED素子が採用された構成を例示したが
、これ以外の発光素子を利用した様々な光ヘッドにも本発明は適用される。例えば、無機
EL材料からなる発光層を含む発光素子や発光ダイオード素子、電界放出(FE:Field
Emission)素子、表面導電型電子放出(SE:Surface-conduction Electron-emitter
)素子、弾道電子放出(BS:Ballistic electron Surface emitting)素子など様々
な発光素子を本発明に適用することができる。
【0064】
<D:応用例>
次に、本発明に係る光ヘッドを利用した機器のひとつの形態として画像形成装置を例示
する。
図10は、以上の各形態に係る光ヘッドHを採用した画像形成装置の構成を示す断面図
である。画像形成装置は、タンデム型のフルカラー画像形成装置であり、以上の形態に係
る4個の光ヘッドH(HK,HC,HM,HY)と、各光ヘッドHに対応する4個の感光体ド
ラム70(70K,70C,70M,70Y)とを具備する。ひとつの光ヘッドHは、これに
対応した感光体ドラム70の像形成面(外周面)に対向するように配置される。なお、各
符号の添字「K」「C」「M」「Y」は、黒(K)、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロ
ー(Y)の各顕像の形成に利用されることを意味している。
【0065】
図10に示すように、駆動ローラ711と従動ローラ712とには無端の中間転写ベル
ト72が巻回される。4個の感光体ドラム70は、相互に所定の間隔をあけて中間転写ベ
ルト72の周囲に配置される。各感光体ドラム70は、中間転写ベルト72の駆動に同期
して回転する。
【0066】
各感光体ドラム70の周囲には、光ヘッドHのほかにコロナ帯電器731(731K,
731C,731M,731Y)と現像器732(732K,732C,732M,732Y)
とが配置される。コロナ帯電器731は、これに対応する感光体ドラム70の像形成面を
一様に帯電させる。この帯電した像形成面を各光ヘッドHが露光することで静電潜像が形
成される。各現像器732は、静電潜像に現像剤(トナー)を付着させることで感光体ド
ラム70に顕像(可視像)を形成する。
【0067】
以上のように感光体ドラム70に形成された各色(黒・シアン・マゼンタ・イエロー)
の顕像が中間転写ベルト72の表面に順次に転写(一次転写)されることでフルカラーの
顕像が形成される。中間転写ベルト72の内側には4個の一次転写コロトロン(転写器)
74(74K,74C,74M,74Y)が配置される。各一次転写コロトロン74は、これ
に対応する感光体ドラム70から顕像を静電的に吸引することによって、感光体ドラム7
0と一次転写コロトロン74との間隙を通過する中間転写ベルト72に顕像を転写する。
【0068】
シート(記録材)75は、ピックアップローラ761によって給紙カセット762から
1枚ずつ給送され、中間転写ベルト72と二次転写ローラ77との間のニップに搬送され
る。中間転写ベルト72の表面に形成されたフルカラーの顕像は、二次転写ローラ77に
よってシート75の片面に転写(二次転写)され、定着ローラ対78を通過することでシ
ート75に定着される。排紙ローラ対79は、以上の工程を経て顕像が定着されたシート
75を排出する。
【0069】
以上に例示した画像形成装置はOLED素子を光源(露光手段)として利用しているの
で、レーザ走査光学系を利用した構成よりも装置が小型化される。なお、以上に例示した
以外の構成の画像形成装置にも本発明を適用することができる。例えば、ロータリ現像式
の画像形成装置や、中間転写ベルトを使用せずに感光体ドラムからシートに対して直接的
に顕像を転写するタイプの画像形成装置、あるいはモノクロの画像を形成する画像形成装
置にも本発明に係る光ヘッドを利用することが可能である。
【0070】
なお、本発明に係る光ヘッドの用途は像担持体の露光に限定されない。例えば、本発明
の光ヘッドは、原稿などの読取対象に光を照射するライン型の光ヘッド(照明装置)とし
て画像読取装置に採用される。この種の画像読取装置としては、スキャナ、複写機やファ
クシミリの読取部分、バーコードリーダ、あるいはQRコード(登録商標)のような二次
元画像コードを読む二次元画像コードリーダがある。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】第1実施形態に係る画像形成装置の部分的な構成を示す斜視図である。
【図2】光ヘッドの電気的な構成を示すブロック図である。
【図3】単位回路の構成を示すブロック図である。
【図4】図1のIV−IV線からみた断面図である。
【図5】第1基板・第2基板に配置される要素の構成を示す平面図である。
【図6】図5のVI−VI線からみた断面図である。
【図7】図5のVII−VII線からみた断面図である。
【図8】第2実施形態に係る光ヘッドの電気的な構成を示すブロック図である。
【図9】第1基板・第2基板に配置される要素の構成を示す平面図である。
【図10】本発明に係る画像形成装置の具体的な形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0072】
H……光ヘッド、10……第1基板、20……第2基板、10s,20s……対向面、30
……異方性導電体、31……導通粒子、32……接着剤、41……電源線、42……接地
線、43……シフトレジスタ、441……保持回路、442……発光制御回路、45……
サンプリング回路、46……電源回路、47……制御回路、48……画像処理回路、A…
…素子アレイ部、E……発光素子、L……信号線群、LD(LD1〜LDn)……データ信
号線、U(U1〜Un)……単位回路、B(B1〜Bm)……ブロック、Ts,Td,Tp1,T
p2……外部接続端子、Q,R……トランジスタ、Ca1,Ca2,Ca3,Cb1,Cb2,Cb3)
……接続端子、60……集光性レンズアレイ、70……感光体ドラム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に対向する第1基板および第2基板を具備し、
前記第2基板のうち前記第1基板に対向する面上には、
複数の発光素子と、
前記各発光素子の階調を指定するデータ信号が供給される信号線とが配置され、
前記第1基板のうち前記第2基板に対向する面上には、
前記各発光素子に対応する複数の単位回路と、
前記各単位回路を順次に選択する選択回路とが配置され、
前記各単位回路は、前記選択回路による選択に応じて前記信号線から取得したデータ信
号に基づいて、当該単位回路に対応する前記発光素子の発光を制御する
ことを特徴とする光ヘッド。
【請求項2】
前記信号線は、前記各発光素子が配列する第1方向に沿って延在し、
前記各単位回路は、前記信号線から取得したデータ信号を保持する保持回路と、前記保
持回路が保持するデータ信号に応じて前記発光素子の発光を制御する発光制御回路とを含
み、前記第1方向に沿って配列する
請求項1に記載の光ヘッド。
【請求項3】
前記第2基板のうち前記第1基板に対向する面上には、前記各発光素子が配列する第1
方向に延在する第1給電線および第2給電線が配置され、
前記各発光素子は、前記第1給電線と前記第2給電線とを結ぶ電気的な経路上に配置さ
れ、
前記各単位回路は、前記第1給電線から前記発光素子に供給される電流をデータ信号に
基づいて制御する
請求項1または請求項2に記載の光ヘッド。
【請求項4】
相互に対向する第1基板および第2基板を具備し、
前記第2基板のうち前記第1基板に対向する面上には、
第1給電線および第2給電線と、
前記第1給電線と前記第2給電線とを結ぶ電気的な経路上の複数の発光素子とが配置さ
れ、
前記第1基板のうち前記第2基板に対向する面上には、
前記各発光素子に対応する複数の単位回路と、
前記各単位回路を順次に選択する選択回路とが配置され、
前記各単位回路は、前記選択回路による選択に応じて信号線から取得したデータ信号に
基づいて、前記第1給電線から前記発光素子に供給される電流を制御する
ことを特徴とする光ヘッド。
【請求項5】
前記第1給電線および前記第2給電線は、前記各発光素子が配列する第1方向に沿って
延在し、
前記各単位回路は、前記信号線から取得したデータ信号を保持する保持回路と、前記保
持回路が保持するデータ信号に応じて前記発光素子の発光を制御する発光制御回路とを含
み、前記第1方向に沿って配列する
請求項4に記載の光ヘッド。
【請求項6】
前記各単位回路は、前記第1給電線と前記発光素子とを結ぶ電気的な経路上に配置され
るとともにデータ信号に応じて前記発光素子の発光を制御する駆動素子を含み、
前記各単位回路の駆動素子と前記発光素子とは第1接続部にて電気的に接続され、
前記第1給電線と前記各単位回路の駆動素子とは第2接続部にて電気的に接続され、
前記各発光素子は、前記第2基板に垂直な方向からみて、前記第1接続部と前記第2接
続部との間隙の領域に配置される
請求項3から請求項5の何れかに記載の光ヘッド。
【請求項7】
前記各発光素子と前記各単位回路とは重なり合い、
前記各発光素子は、相互に対向する第1電極および第2電極と両電極間に介在する発光
層とを含み、前記各発光素子の第2電極は、当該発光素子の発光層と前記単位回路との間
に介在する
請求項1から請求項6の何れかに記載の光ヘッド。
【請求項8】
前記信号線と前記選択回路とは重なり合う
請求項1から請求項7の何れかに記載の光ヘッド。
【請求項9】
前記選択回路は、前記各発光素子が配列する第1方向に沿って延在し、
前記各単位回路と前記各発光素子とは第1接続部にて電気的に接続され、
前記各発光素子は、前記第2基板に垂直な方向からみて、前記選択回路と前記第1接続
部との間隙の領域に配置される
請求項1から請求項8の何れかに記載の光ヘッド。
【請求項10】
前記信号線は、前記各発光素子が配列する第1方向に沿って延在し、
前記各単位回路と前記各発光素子とは第1接続部にて電気的に接続され、
前記各発光素子は、前記第2基板に垂直な方向からみて、前記信号線と前記第1接続部
との間隙の領域に配置される
請求項1から請求項8の何れかに記載の光ヘッド。
【請求項11】
露光によって潜像が形成される像担持体と、
前記像担持体を露光する請求項1から請求項10の何れかに記載の光ヘッドと、
前記像担持体の潜像に対する現像剤の付着によって顕像を形成する現像器と
を具備する画像形成装置。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−223095(P2007−223095A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−44865(P2006−44865)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】