光モジュール及びその製造方法
【課題】光反射性光学部品と光透過性光学部品とを近づけて配置することができ、基板の特性に関する要求が光学部品によって相反する場合でもそれらの要求を満たすことが可能な光モジュール及びその製造方法を提供する。
【解決手段】光モジュールは、シリコン領域11をエッチングすることにより形成された光透過性光学部品12を有する第1の板状部材10と、光透過性光学部品12を透過した光を反射する為の光反射性光学部品(鏡21〜24)を有する第2の板状部材20とを備える。第1及び第2の板状部材10,20は互いに接合されており、光透過性光学部品12を透過する光の光路が、第1の板状部材10の部品形成面及び第2の板状部材20の主面に沿っている。
【解決手段】光モジュールは、シリコン領域11をエッチングすることにより形成された光透過性光学部品12を有する第1の板状部材10と、光透過性光学部品12を透過した光を反射する為の光反射性光学部品(鏡21〜24)を有する第2の板状部材20とを備える。第1及び第2の板状部材10,20は互いに接合されており、光透過性光学部品12を透過する光の光路が、第1の板状部材10の部品形成面及び第2の板状部材20の主面に沿っている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光モジュール及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び2には、MEMS技術を用いてSOI(Silicon On Insulator)基板上に干渉光学系を構成した光モジュールが開示されている。これらの干渉光学系は、ビームスプリッタと、静電アクチュエータに取り付けられた可動鏡と、固定鏡とを備えており、これらはSOI基板のシリコン層および絶縁層を任意の形状にエッチングすることにより形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−102132号公報
【特許文献2】特開2010−170029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基板をエッチングすることにより作製される光学系は、例えば特許文献1や特許文献2に記載された干渉光学系のように、静電アクチュエータ、鏡面、或いはビームスプリッタといった種々の光学部品によって構成される。これらの光学部品のうち例えば鏡面といった光反射性光学部品を形成するためには、基板をエッチングして形成した面上に光反射の為の金属膜を、シャドウマスクを介して蒸着するとよい。また、例えばビームスプリッタといった光透過性光学部品を形成する際には、基板をエッチングして形成した面上に半透過反射膜や反射防止膜を形成することが好ましい。
【0005】
しかしながら、金属膜を蒸着する際には、光反射性光学部品の周囲に金属が拡がって付着する傾向がある。特に、基板の板面に対して垂直な面に金属膜を蒸着する場合、基板の板面の法線方向に対して傾いた方向から金属粒子を供給する必要があり、このような傾向が顕著となる。したがって、光透過性光学部品を金属が付着しない領域まで離して配置することとなるので、光反射性光学部品と光透過性光学部品との間の光路が長くなり、ビーム径が過度に拡がってその一部がこれらの光学部品から外れてしまい、光利用効率が低下するおそれがある。
【0006】
また、例えば静電アクチュエータといった導電性部品を作製する際には、該部品の導電性を得るために、所定濃度のドーパントを含む基板を用いることが好ましい。一方、ビームスプリッタ等の光透過性光学部品では、光の吸収を抑制するために、基板に含まれる不純物は少ないほど好ましい。このように、光学部品の種類によって、基板の特性に関する要求が相反する場合がある。しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載されたように一枚の基板を用いて種々の光学部品を形成すると、このような相反する要求を同時に満たすことが難しくなる。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、鏡面といった光反射性光学部品と、ビームスプリッタといった光透過性光学部品とを近づけて配置することができ、且つ、基板の特性に関する要求が光学部品によって相反する場合でもそれらの要求を満たすことが可能な光モジュール及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明による光モジュールは、シリコン領域をエッチングすることにより形成された光透過性光学部品を有する第1の板状部材と、光透過性光学部品を透過した光を反射する為の光反射性光学部品を主面上に有する第2の板状部材とを備え、第1の板状部材の光透過性光学部品が形成された部品形成面と、第2の板状部材の主面とが対向するように、第1及び第2の板状部材が互いに接合されており、光透過性光学部品を透過する光の光路が、第1の板状部材の部品形成面及び第2の板状部材の主面に沿っていることを特徴とする。
【0009】
この光モジュールでは、光透過性光学部品と光反射性光学部品とが、それぞれ別の板状部材(第1及び第2の板状部材)に形成されている。したがって、これらの光学部品をそれぞれの板状部材に形成する際、例えば不純物濃度といった基板の特性を、各光学部品に最適な特性に合わせることができる。一つの例としては、光透過性光学部品が形成される第1の板状部材には不純物を添加せずに光の吸収を抑制し、また光反射性光学部品が形成される第2の板状部材には、適量の不純物を添加して良好な導電性を確保し、光反射性光学部品を駆動する静電アクチュエータといった導電性部品の形成を可能にできる。また、光透過性光学部品及び光反射性光学部品を各板状部材において個別に形成することができるので、金属膜の蒸着といった一方の光学部品に対する処理は他方の光学部品には影響しない。したがって、光反射性光学部品と光透過性光学部品とを相互に近づけて配置することができ、光利用効率を向上することができる。
【0010】
また、光モジュールは、光反射性光学部品が、半導体領域をエッチングすることにより形成された面と、該面上に設けられた金属膜とを有することを特徴としてもよい。光モジュールがこのような光反射性光学部品を備える場合、従来の光モジュールでは、光透過性光学部品を金属が付着しない領域まで離して配置する必要があった。これに対し、本発明による光モジュールによれば、第2の板状部材において金属膜を蒸着した後に第1の板状部材と第2の板状部材とを接合すれば良いので、光透過性光学部品に金属が付着することなく光反射性光学部品と光透過性光学部品とを相互に近づけて配置することができる。
【0011】
また、光モジュールは、光反射性光学部品が、半導体領域をエッチングすることにより形成された面を有し、該半導体領域がシリコンから成ることを特徴としてもよい。これにより、光反射性光学部品を容易に形成することができる。
【0012】
また、光モジュールは、光反射性光学部品が、主面から分離されて該主面に沿った方向に移動可能となっており、第2の板状部材が、静電気力によって光反射性光学部品を駆動するアクチュエータ構造を更に有することを特徴としてもよい。前述したように、本発明による光モジュールでは不純物濃度を各板状部材毎に最適化することができる。したがって、第2の板状部材がアクチュエータ構造を有する場合であっても、第2の板状部材に適量の不純物を添加して導電性を確保しつつ、第1の板状部材には不純物を添加せずに光透過性光学部品での光の吸収を抑えることができる。
【0013】
また、光モジュールは、光反射性光学部品が、光透過性光学部品を透過した光を第1の板状部材へ向けて反射し、第1の板状部材が該光を透過することを特徴としてもよい。これにより、光透過性光学部品を透過した光(例えば干渉光など)を光モジュールの外部へ好適に出力することができる。
【0014】
また、光モジュールは、第1の板状部材の比抵抗が、第2の板状部材の比抵抗より大きいことを特徴としてもよい。このような場合、第1の板状部材の不純物濃度が第2の板状部材の不純物濃度より小さいので、光透過性光学部品における光の吸収を好適に抑制することができる。
【0015】
また、光モジュールは、第1の板状部材の周縁部と、第2の板状部材の周縁部とが互いに接合されており、第1及び第2の板状部材の各周縁部には、第1及び第2の板状部材の位置合わせの為の複数のアライメントマークが形成されていることを特徴としてもよい。このように、各板状部材の周縁部に複数のアライメントマークが形成されていることにより、第1の板状部材と第2の板状部材との相対角度のずれを低減し、光利用効率の低下を抑えることができる。
【0016】
また、光モジュールは、光透過性光学部品が、シリコン領域をエッチングすることにより形成された複数の面を有し、複数の面のうち少なくとも一つの面には反射防止膜が設けられ、複数の面のうち他の少なくとも一つの面には半透過反射膜が設けられていることを特徴としてもよい。これにより、光透過性光学部品としてのビームスプリッタを好適に実現することができる。
【0017】
本発明による第1の光モジュールの製造方法は、シリコン領域をエッチングすることにより形成された光透過性光学部品を有する第1の板状部材の周縁部、及び、光透過性光学部品を透過した光を反射する為の光反射性光学部品を主面上に有する第2の板状部材の周縁部のそれぞれに、第1及び第2の板状部材の位置合わせの為の複数のアライメントマークを形成し、該複数のアライメントマークを用いて、第1の板状部材の光透過性光学部品が形成された部品形成面と第2の板状部材の主面とが対向するように第1及び第2の板状部材の周縁部を互いに接合することを特徴とする。
【0018】
また、本発明による第2の光モジュールの製造方法は、シリコン領域をエッチングすることにより形成された光透過性光学部品をそれぞれ有する複数の領域を含む第1のウエハの周縁部、及び、光透過性光学部品を透過した光を反射する為の光反射性光学部品を主面上に有する複数の領域を含む第2のウエハの周縁部のそれぞれに、第1及び第2のウエハの位置合わせの為の複数のアライメントマークを形成し、該複数のアライメントマークを用いて、第1のウエハの光透過性光学部品が形成された部品形成面と第2のウエハの主面とが対向するように第1及び第2のウエハを互いに接合することを特徴とする。
【0019】
上述した第1及び第2の光モジュールの製造方法によれば、板状部材やウエハの周縁部に複数のアライメントマークを形成し、これらのアライメントマークを用いて第1及び第2のウエハを互いに接合するので、第1の板状部材と第2の板状部材との相対角度のずれを低減し、光利用効率の低下を抑えることができる。特に、第2の光モジュールの製造方法によれば、光モジュールに相当する領域を複数含むウエハの周縁部に複数のアライメントマークを形成するので、アライメントマーク間の距離を極めて長くすることができ、相対角度のずれを顕著に低減することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明による光モジュール及びその製造方法によれば、鏡面といった光反射性光学部品と、ビームスプリッタといった光透過性光学部品とを近づけて配置することができ、且つ、基板の特性に関する要求が光学部品によって相反する場合でもそれらの要求を満たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1の板状部材の外観を示す斜視図である。
【図2】図1に示されたII−II線に沿った断面を示す図である。
【図3】第2の板状部材の外観を示す斜視図である。
【図4】図3に示されたIV−IV線に沿った断面を示す図である。
【図5】第1の板状部材と第2の板状部材とを互いに接合した状態を示す断面図である。
【図6】可動反射鏡を駆動する静電アクチュエータの外観を示す斜視図である。
【図7】光透過性光学部品及び光反射性光学部品によって構成されるマイケルソン干渉光学系を説明するための平面図である。
【図8】第1の板状部材の製造方法におけるマスク形成工程を示す図である。
【図9】第1の板状部材の製造方法におけるマスク形成工程を示す図である。
【図10】第1の板状部材の製造方法における第1のエッチング工程を示す図である。
【図11】第1の板状部材の製造方法における熱酸化工程を示す図である。
【図12】第1の板状部材の製造方法における熱酸化工程中の窒化膜除去を示す図である。
【図13】第1の板状部材の製造方法における第2のエッチング工程を示す図である。
【図14】第1の板状部材の製造方法における第3のエッチング工程を示す図である。
【図15】第1の板状部材の製造方法における窒化膜形成工程を示す図である。
【図16】第1の板状部材と第2の板状部材とを相互に貼り合わせる様子を模式的に示す斜視図である。
【図17】アライメントマークが一致するように第1及び第2の板状部材を位置合わせする様子を示す図である。
【図18】光透過性光学部品の一例として、干渉光学系等に用いられるビームスプリッタを模式的に示す平面図である。
【図19】波長分散を補償するための光学部材を有する干渉光学系の構成例を示す平面図である。
【図20】或る干渉光学系においてシャドウマスクを用いて金属膜を製膜する様子を示す断面図である。
【図21】第1の板状部材と第2の板状部材との位置ずれに起因する問題を説明するための図である。
【図22】第1変形例について説明するための図である。
【図23】第2変形例について説明するための図である。
【図24】突起が凹部に挿入された状態において、板状部材の厚さ方向から見た突起及び凹部の位置関係を示す断面図である。
【図25】第3変形例に係る第2の板状部材の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照しながら本発明による光モジュール及びその製造方法の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0023】
本実施形態に係る光モジュールは、2枚の板状部材(第1及び第2の板状部材)が互いに張り合わされて構成されており、マイケルソン干渉光学系を内蔵している。図1及び図2は、第1の板状部材10を示す図である。図1は、第1の板状部材10の外観を示す斜視図であり、図2は、図1に示されたII−II線に沿った断面を示す図である。第1の板状部材10は、シリコン基板をエッチングすることによって作製された部材であり、主としてシリコンから成る。第1の板状部材10は、部品形成面10aと、部品形成面10aとは反対側の裏面10bとを有する。
【0024】
図1に示されるように、第1の板状部材10の部品形成面10a側には、光透過性光学部品12が形成されている。光透過性光学部品12は、シリコン基板を構成するシリコン領域11をエッチングすることにより形成された光学部品であって、所定波長の光を透過する。本実施形態の光透過性光学部品12は、略V字状といった平面形状を有しており、光学的に機能する4つの側面12a〜12dを有する。側面12aは半透過反射面(ハーフミラー)であり、使用波長範囲の光に対して例えば30%〜50%の反射率を有する。この半透過反射面は、マイケルソン干渉光学系においてビームスプリッタとして機能する。側面12b〜12dは光透過面であり、使用波長範囲の光に対して例えば90%〜99%の透過率を有する。
【0025】
図2に示されるように、光透過性光学部品12の側面12aは、シリコン領域11の側面上に形成された酸化シリコン膜14と、該酸化シリコン膜14上に形成された窒化シリコン膜16とから成る半透過反射膜13によって覆われている。側面12aにおける波長−反射特性は、酸化シリコン膜14及び窒化シリコン膜16それぞれの厚さに応じて変化する。また、光透過性光学部品12の側面12b〜12dは、シリコン領域11の側面上に形成された窒化シリコン膜16から成る反射防止膜(AR膜)によって覆われている。側面12b〜12dにおける波長−反射特性は、窒化シリコン膜16の厚さに応じて変化する。なお、酸化シリコン膜14は、光透過性光学部品12の側面12aから光透過性光学部品12の周辺のシリコン領域11上にわたって形成されており、後述するように、シリコン領域11を熱酸化させて形成される。また、窒化シリコン膜16は、酸化シリコン膜14上および光透過性光学部品12の側面12b〜12d上を含むシリコン領域11上の全面にわたって形成されている。光透過性光学部品12の上面と窒化シリコン膜16との間には、酸化シリコン膜18が介在している。酸化シリコン膜18は、シリコン領域11をエッチングして光透過性光学部品12を形成する際に使用されたエッチングマスクである。
【0026】
第1の板状部材10の周縁部10cは、部品形成面10aに対して厚さ方向にやや突出しており、光透過性光学部品12を囲んでいる。周縁部10cには、後述する第2の板状部材との位置合わせ為の複数(本実施形態では二つ)のアライメントマーク17が形成されている。一実施例では、第1の板状部材10の一辺における周縁部10cに一つのアライメントマーク17が形成されており、第1の板状部材10の他の一辺(好適には、前記一辺と対向する辺)における周縁部10cに他の一つのアライメントマーク17が形成されている。これらのアライメントマーク17は、例えば十字状といった任意の平面形状を有しており、本実施形態では周縁部10cに形成された溝によって構成されている。
【0027】
図3及び図4は、第2の板状部材20を示す図である。図3は、第2の板状部材20の外観を示す斜視図であり、図4は、図3に示されたIV−IV線に沿った断面を示す図である。なお、図3には、第1の板状部材10と第2の板状部材20とが接合された状態における光透過性光学部品12の位置及び範囲が、一点鎖線で示されている。
【0028】
第2の板状部材20は、支持基板28上に絶縁層29及びシリコン層25が積層された、いわゆるシリコン・オン・インシュレータ(SOI)基板のシリコン層25をエッチングすることによって作製された部材である。第2の板状部材20は、支持基板28が露出している主面20aと、主面20aとは反対側の裏面20bとを有する。図3に示されるように、第2の板状部材20の主面20a側には、入射鏡21、固定反射鏡22、可動反射鏡23、及び出射鏡24が形成されている。これらの鏡21〜24は、本実施形態における光反射性光学部品である。これらの鏡21〜24は、SOI基板のシリコン層25をエッチングすることにより形成された面上に金属膜26が成膜された光学部品であって、これらに到達した光を全反射する。なお、本実施形態では、金属膜26を蒸着する際の都合により、主面20a上にも金属膜26が形成されている。入射鏡21及び出射鏡24の各鏡面は、主面20aの法線方向に対して例えば45°といった角度で傾斜している。一方、固定反射鏡22及び可動反射鏡23の各鏡面は、主面20aの法線方向に沿っており、主面20aに対して略垂直に形成されている。入射鏡21は、主面20aの法線方向から第1の板状部材10を透過して入射した光を、光透過性光学部品12の半透過反射面である側面12aに向けて反射する。固定反射鏡22は、光透過性光学部品12の光透過面である側面12cから出射された光を、該側面12cへ向けて反射する。可動反射鏡23は、光透過性光学部品12の光透過面である側面12dから出射された光を、該側面12dへ向けて反射する。なお、可動反射鏡23は、後述する静電アクチュエータによって、入射する光の光軸に沿った方向に平行移動することができる。出射鏡24は、光透過性光学部品12の光透過面である側面12dから出射された光(干渉光)を、主面20aの法線方向に反射する。この干渉光は、第1の板状部材10を透過して光モジュールの外部へ出射される。
【0029】
第2の板状部材20の周縁部20cは、主面20aに対して厚さ方向に突出しており、光反射性光学部品である鏡21〜24を囲んでいる。周縁部10cには、前述した第1の板状部材10との位置合わせ為の複数(本実施形態では二つ)のアライメントマーク27が、第1の板状部材10のアライメントマーク17に対応する位置に形成されている。一実施例では、第2の板状部材20の一辺における周縁部20cに一つのアライメントマーク27が形成されており、第2の板状部材20の他の一辺(好適には、前記一辺と対向する辺)における周縁部20cに他の一つのアライメントマーク27が形成されている。これらのアライメントマーク27は、第1の板状部材10のアライメントマーク17と同様の平面形状を有しており、例えば周縁部20cに形成された溝によって構成される。
【0030】
図5は、第1の板状部材10と第2の板状部材20とを互いに接合した状態を示す断面図である。図5に示されるように、これらの板状部材10,20は、第1の板状部材10の光透過性光学部品12が形成された部品形成面10aと、第2の板状部材20の主面20aとが対向するように互いに接合される。このとき、光透過性光学部品12は、固定反射鏡22と出射鏡24との間に配置され、且つ、図3に示された入射鏡21と可動反射鏡23との間に配置される。また、このとき、光透過性光学部品12の上面に形成された窒化シリコン膜19と、第2の板状部材20の主面20a上に形成された金属膜26との間には、隙間が存在することが好ましい。
【0031】
ここで、図6は、可動反射鏡23を駆動する静電アクチュエータ30の外観を示す斜視図である。図6に示されるように、静電アクチュエータ30は、第2の板状部材20の主面20aに固定された第1電極31と、可動反射鏡23に固定された第2電極32とを有する。静電アクチュエータ30は、第1電極31と第2電極32との間に静電気力を発生させることにより、第2電極32を第1電極31に対して相対的に変位させるものである。
【0032】
第1電極31は、絶縁層29(図4を参照)を介して支持基板28に固定された固定部31aと、第2電極32と対向する固定部31aの側面に形成された櫛歯部31bとを有する。なお、櫛歯部31bは、該部分と支持基板28との間の絶縁層29が除去されたことにより、支持基板28に対して浮いた状態となっている。
【0033】
第2電極32は、可動反射鏡23と第1電極31との間に配置されている。第2電極32は、可動反射鏡23の鏡面に垂直な方向に延設されてその一端において可動反射鏡23を支持する支柱32aと、支柱32aの他端を支持する櫛歯部32bと、板ばねを連結した構造を有しており櫛歯部32bの両端を弾性的に支持する支持部32cとを有する。支柱32a、櫛歯部32b、及び支持部32cは、支持基板28との間の絶縁層29が除去されたことにより、支持基板28に対して浮いた状態となっている。また、支持部32cの一端は櫛歯部32bの端部を支持しており、支持部32cの他端は第2の板状部材20の周縁部20c(図3を参照)に固定されている。このような構成により、支柱32a及び櫛歯部32bは、可動反射鏡23の鏡面に垂直な方向に変位可能となっている。櫛歯部32bは第1電極31の櫛歯部31bと対向しており、櫛歯部32bの櫛歯は、櫛歯部31bの各櫛歯間に配置されている。
【0034】
第2電極32に所定の電圧が印加されると、櫛歯部32bと櫛歯部31bとの間に静電気力が働く。この静電気力は第2電極32に印加される電圧値によって定まるので、櫛歯部32bと櫛歯部31bとの間隔は、該電圧値によって制御される。すなわち、櫛歯部31b及び支柱32aによって支持された可動反射鏡23の鏡面に垂直な方向における位置は、第2電極32に印加される電圧によって制御される。
【0035】
図7は、上述した光透過性光学部品12、並びに光反射性光学部品(入射鏡21、固定反射鏡22、可動反射鏡23、及び出射鏡24)によって構成されるマイケルソン干渉光学系を説明するための平面図である。光モジュールの外部から第1の板状部材10を透過して被測定光L1が入射すると、入射鏡21は、部品形成面10a及び主面20aに沿った方向に被測定光L1を反射させる。この被測定光L1の一部L2は、光透過性光学部品12の側面12a(半透過反射面)において反射し、光透過面である側面12bに入射する。この被測定光L2は、光透過性光学部品12の内部を透過して光透過面である側面12cから出射し、固定反射鏡22に到達する。そして、この被測定光L2は、固定反射鏡22において全反射したのち、上記と同じ光路を辿って側面12aに戻る。
【0036】
一方、光透過性光学部品12の側面12aにおいて反射した一部の被測定光L2を除く残りの被測定光L3は、側面12aに入射する。この被測定光L3は、光透過性光学部品12の内部を透過して光透過面である側面12dから出射し、可動反射鏡23に到達する。そして、この被測定光L3は、可動反射鏡23において全反射したのち、上記と同じ光路を辿って側面12aに戻る。
【0037】
固定反射鏡22から側面12aに戻った被測定光L2と、可動反射鏡23から側面12aに戻った被測定光L3とは、側面12aにおいて互いに合波し、干渉光像L4となる。干渉光像L4は、光透過性光学部品12の内部を透過して側面12dから出射し、出射鏡24に到達する。干渉光像L4は、出射鏡24において反射し、第1の板状部材10を透過して光モジュールの外部へ出射する。
【0038】
続いて、本実施形態に係る光モジュールの製造方法について説明する。図8〜図15は、第1の板状部材10の製造方法における各工程を示す図であって、(a)は光透過性光学部品12に相当する領域の平面図であり、(b)は(a)に示されたB−B線に沿った断面を示す図である。
【0039】
<マスク形成工程>
まず、図8に示されるように、シリコン領域11を含む板状部材を準備する。このような板状部材としては、シリコン基板や、支持基板上に絶縁層およびシリコン層が積層されたSOI基板等が好適である。そして、シリコン領域11上に、酸化シリコン膜18を形成する。この酸化シリコン膜18は、本実施形態における第1のマスクであって、側面12a〜12dを有する光透過性光学部品12の平面形状に応じたパターンを有する。このような酸化シリコン膜18は、後述する熱酸化工程において高温に曝されることを考慮し、例えば熱酸化や熱CVDによってシリコン領域11上の全面に酸化シリコン膜を形成したのち、通常のフォトリソグラフィ技術を用いて好適に形成される。
【0040】
次に、図9に示されるように、シリコン領域11上の全面を覆うように窒化シリコン膜41(第2のマスク)を形成する。窒化シリコン膜41は、後述する熱酸化工程において高温に曝されることを考慮し、例えば高温処理の減圧化学気相成長法(LP−CVD;Low Pressure-Chemical Vapor Deposition)によって好適に形成される。このとき、酸化シリコン膜18も窒化シリコン膜41によって覆われる。そして、図10に示されるように、開口42aを有するレジストマスク42(第3のマスク)を窒化シリコン膜41上に形成する。開口42aは、後の工程において形成されるシリコン領域11の凹部の平面形状に応じた形状を有しており、シリコン領域11の厚さ方向から見て酸化シリコン膜18と重ならないように、酸化シリコン膜18に隣接して形成される。開口42aの平面形状は例えば四角形状であり、その一辺は、酸化シリコン膜18の一辺(光透過性光学部品12の側面12aに対応する辺)18aに重なっている。そして、このレジストマスク42をエッチングマスクとして用い、窒化シリコン膜41のエッチングを行うことにより、窒化シリコン膜41に開口を形成する。
【0041】
<第1のエッチング工程>
続いて、レジストマスク42をエッチングマスクとして用い、シリコン領域11に対してドライエッチングを行う。これにより、シリコン領域11に凹部11aが形成され、同時に、凹部11aの側面として光透過性光学部品12の側面12aが形成される。なお、シリコン領域11を含む板状部材としてSOI基板を使用した場合には、絶縁層がエッチング停止層として機能するので、エッチング深さをより高精度に制御することができる。また、この工程では、ドライエッチングの方法として、例えばボッシュプロセスを用いた深堀りRIE(反応性イオンエッチング)法などを用いるとよい。この工程ののち、レジストマスク42を除去する。
【0042】
この第1のエッチング工程では、シリコン領域11に対して例えばアルカリ性エッチャントを用いたウェットエッチングを行ってもよい。そのような場合でも、エッチングにより形成される凹部11aの側面をシリコン領域11の結晶面に一致させるなどの方法によって、シリコン領域11の厚さ方向に沿った(板面に対して垂直な)凹部11aの側面を好適に形成することができる。このような結晶面としては、例えば(100)面や(111)面が好適である。なお、このようにウェットエッチングによって凹部11aを形成する場合には、エッチング前にレジストマスク42を除去し、窒化シリコン膜41をエッチングマスクとして用いても良い。
【0043】
<熱酸化工程>
続いて、図11に示されるように、凹部11aの内面(側面および底面)を熱酸化させることにより、酸化シリコン膜14を形成する。このとき、凹部11aの内面を除くシリコン領域11の表面は窒化シリコン膜41によって覆われているので、凹部11aの内面のみ熱酸化される。また、本工程では、熱酸化により形成される酸化シリコン膜14の膜厚を、完成後の光モジュールにおける酸化シリコン膜14の膜厚の2倍程度(例えば0.48μm)にしておくとよい。この工程ののち、例えば150℃〜170℃に加熱した熱リン酸液を用いて窒化シリコン膜41を除去する(図12)。熱リン酸液を用いることによって、酸化シリコン膜14及び18を残したまま窒化シリコン膜41のみを好適に除去できる。
【0044】
<第2のエッチング工程>
続いて、図13に示されるように、酸化シリコン膜18をエッチングマスクとして用い、シリコン領域11を再びエッチングすることにより、側面12aとは別の側面12b〜12dをシリコン領域11に形成する。これにより、光透過性光学部品12が形成される。なお、本工程でのエッチング方法としては、ドライエッチングおよびアルカリウェットエッチングの何れでもよい。
【0045】
<第3のエッチング工程>
続いて、酸化シリコン膜14のうち不要な部分14a(図13を参照)を除去するため、例えば希フッ酸を用いたエッチングを行う。このとき、酸化シリコン膜14のうちシリコン領域11に沿っていない部分14aは、希フッ酸によって内外面の双方からエッチングされるので、シリコン領域11に沿った他の部分と比較して約2倍の速さでエッチングされる。したがって、該部分14aが完全に除去されたタイミングにおいて、他の部分(特に側面12a上の部分)は膜厚の半分程度しかエッチングされない。このような工程により、図14に示されるように、酸化シリコン膜14の不要な部分14aが除去され、酸化シリコン膜14の他の部分は残存することとなる。熱酸化により形成された直後の酸化シリコン膜14の厚さが0.48μmである場合、本工程後における酸化シリコン膜14の厚さは0.24μmである。この厚さによって半透過反射膜13の反射率が変化するので、本工程における酸化シリコン膜14の減厚分を考慮して上述した熱酸化工程を行うことが望ましい。
【0046】
なお、上述した工程では酸化シリコン膜14の不要な部分14aをエッチングによって除去したが、該部分14aの厚さによっては、ウェット処理の際の水圧によって該部分14aを折ることにより除去してもよい。
【0047】
<窒化膜形成工程>
続いて、図15に示されるように、シリコン領域11上の全面に、窒化シリコン膜16を形成する。この工程では、側面12a上の酸化シリコン膜14、および他の側面12b〜12dを少なくとも覆うように窒化シリコン膜16を形成する。これにより、反射防止膜としての窒化シリコン膜16が側面12b〜12dに形成され、同時に、半透過反射膜13の一部を構成する窒化シリコン膜16が酸化シリコン膜14上に形成される。なお、この工程では、酸化シリコン膜14上および側面12b〜12d上に窒化シリコン膜16を均一に形成する為に、高温処理の減圧化学気相成長法(LP−CVD)を用いて窒化シリコン膜16を形成することが好ましい。
【0048】
以上に説明した方法によって、第1の板状部材10が好適に作製される。一方、第2の板状部材20のうち静電アクチュエータ30以外の部分は、例えば次のようにして作製される。まず、SOI基板を準備する。このSOI基板のシリコン層の表面上に、酸化シリコン膜を形成する。次に、この酸化シリコン膜をエッチングすることにより、入射鏡21の傾斜した鏡面に対応する開口と、出射鏡24の傾斜した鏡面に対応する開口とを形成する。そして、SOI基板のシリコン層上の全域にわたって、窒化シリコン膜を形成する。この窒化シリコン膜をエッチングすることにより、入射鏡21、固定反射鏡22、可動反射鏡23、及び出射鏡24にそれぞれ対応する開口を形成する。
【0049】
続いて、窒化シリコン膜及び酸化シリコン膜を介して、シリコン層に対しドライエッチングを施す。このとき、SOI基板の絶縁層が露出するまでシリコン層をエッチングする。これにより、シリコン層において、入射鏡21、固定反射鏡22、可動反射鏡23、及び出射鏡24が形成される。そして、シリコン層の露出した側面を酸化シリコン膜によって保護したのち、窒化シリコン膜を除去する。このとき、例えば熱リン酸等を用いて酸化シリコン膜を残しつつ選択的に窒化シリコン膜をエッチングする。これにより、入射鏡21及び出射鏡24の傾斜した鏡面に対応する酸化シリコン膜の開口が再び現れ、当該部分のシリコン層が露出することとなる。その後、露出したシリコン層に対してウェットエッチングを施す。このとき、例えばアルカリエッチングによりシリコン層の露出部分を異方性エッチングする。これにより、入射鏡21及び出射鏡24の傾斜した鏡面がシリコン層に形成される。
【0050】
続いて、酸化シリコン膜を除去し、入射鏡21、固定反射鏡22、可動反射鏡23、及び出射鏡24の各鏡面上に金属膜26を形成する。まず、SOI基板の部品形成面を覆うようにシャドウマスクを配置する。このシャドウマスクには、入射鏡21、固定反射鏡22、可動反射鏡23、及び出射鏡24のそれぞれにおいて鏡面となる部分を全て含むような一つの大きな開口が形成されている。そして、このシャドウマスクを介して金属材料を物理蒸着することにより、上記各鏡面上に金属膜26を形成する。このとき、金属膜26の形成方法としては、エネルギーの高いスパッタ方式の他、抵抗蒸着やEB蒸着が好適である。こうして、第2の板状部材20が好適に作製される。
【0051】
図16は、第1の板状部材10と第2の板状部材20とを相互に貼り合わせる様子を模式的に示す斜視図である。この工程では、部品形成面10aと主面20aとが対向するように、且つ、第1の板状部材10の光透過性光学部品12と、第2の板状部材20の入射鏡21、固定反射鏡22、可動反射鏡23、及び出射鏡24とが図7に示された位置関係となるように、第1及び第2の板状部材10,20を相互に貼り合わせる。このとき、第1の板状部材10の周縁部10c、及び、第2の板状部材20の周縁部20cのそれぞれにアライメントマーク17,27を形成し、図17に示されるように、これらのアライメントマーク17,27が一致するように第1及び第2の板状部材10,20を位置合わせした後に、周縁部10c,20cを互いに接合するとよい。また、第1及び第2の板状部材10,20の接合方法としては、直接接合させる方法、半田を介して接合させる方法、或いは樹脂を介して接合させる方法などが好適である。
【0052】
以上に説明した、本実施形態に係る光モジュール及びその製造方法による効果について、MEMS技術を用いた一般的な光モジュールが抱える課題とともに説明する。
【0053】
MEMS技術によれば、半導体フォトリソグラフィ技術を用いた微細且つ高精度な加工が可能であり、光を波として処理するような光干渉計や回折格子を有する光モジュールを好適に作製することができる。特に、シリコン基板やSOI基板を用いたMEMS加工では、シリコンが適度な弾性を有することから、機械的特性が良く信頼性が高いセンサやアクチュエータを作製することができ、また、シリコン結晶の異方性を利用した斜面の形成や、ボッシュプロセスなどを用いた深いトレンチの形成が可能である。このため、MEMS技術は、加速度センサ、圧力センサ、プロジェクタの画素ミラー(デジタルミラーデバイス等)、FTIR(Fourier TranformInfrared Spectrometer)分光器の為の光干渉計などを製造する為に利用される。特に、光干渉計については幅広い応用が可能であり、FTIRだけでなく、OCT(Optical Coherent Tomography)や、膜厚測定、表面粗さ測定などへの応用が可能であり、且つ、これらの計測器を小型に構成することができる。
【0054】
しかしながら、シリコン基板等にMEMS加工を行って種々の光モジュールを作製する場合、以下に示すような課題が存在する。
(1)ビームスプリッタといった光透過性光学部品における光利用効率が低い。
(2)反射鏡を形成するためにシャドウマスクによる金属膜の形成を行う場合、他の光学部品に金属が付着することを避ける為に他の光学部品を反射鏡から離して配置する必要があるので、これらの距離(すなわち光路長)が長くなってしまう。
(3)ビームスプリッタといった光透過性の光学部品と、静電アクチュエータといった導電性部品とが光モジュール内に混在している場合、導電性部品の電気伝導性を高めるためにシリコンの不純物濃度を大きくすると、光透過性の光学部品の光吸収が大きくなってしまい、光利用効率が低下する。逆に、光透過性の光学部品の光吸収を抑えるためにシリコンの不純物濃度を小さくすると、導電性部品の電気伝導性が小さくなって良好な動作を確保できない。このように、光透過性の光学部品と導電性部品との相反する要求を満足することができない。
以下、これらの課題(1)〜(3)について、詳細に説明する。
【0055】
(1)光透過性光学部品における光利用効率が低い
図18は、光透過性光学部品の一例として、干渉光学系等に用いられるビームスプリッタ100を模式的に示す平面図である。このビームスプリッタ100は、半透過反射面101、光反射面103、及び光透過面104を有する。ここで、例えば波長1μm帯でのシリコンの屈折率は約3.5なので、シリコン表面におけるフレネル反射の反射率は約30%となる。すなわち、半透過反射面101に到達した光La1の30%は、半透過反射面101において反射する。なお、この反射した光La2は、図示しない可動反射鏡によって反射されて半透過反射面101へ戻り、そのうち70%が半透過反射面101を透過して光透過面104に到達する。また、光La1のうち残りの70%(La3)は、半透過反射面101からビームスプリッタ100に入射し、光反射面103で反射したのち、半透過反射面101に戻る。半透過反射面101に戻った光La3の30%が半透過反射面101において再び反射し、光透過面104に到達する。そして、光透過面104に到達した光La2及びLa3の各70%が、光透過面104からビームスプリッタ100の外部へ出射する。
【0056】
しかしながら、図18に示されたビームスプリッタ100の半透過反射面101における反射率(30%)は、光干渉計としては理想的な値ではない。光干渉計において、最終的に取り出される干渉光の振幅Aは、半透過反射面101における反射率をrとすると、次の数式(1)によって表される。
【数1】
この数式(1)によれば、rが0.5(すなわち反射率50%)であるときに振幅Aが最大値(0.5)となる。これに対し、rが0.3(すなわち反射率30%)であるときには、Aは0.41となり、光利用効率が20%程度小さくなる。更に、ビームスプリッタ100から光La2及びLa3が出射する際にも30%の損失が生じるので、最終的な光利用効率は、41%×70%=28.7%にまで小さくなる。なお、この計算では光反射面103における反射率を100%としているが、光反射面103に金属膜を製膜できない場合には、光利用効率は更に低くなる。
【0057】
このような光利用効率の低さは、シリコンの波長分散に対する補償によって更に顕著となる。シリコンからなる光透過性光学部品の内部を透過する光の光路長は、その光の波長によって異なる。例えば、光透過性光学部品を透過する光の波長が1μm〜1.7μmの範囲内である場合、シリコンからなる光透過性光学部品の屈折率は、3.5±0.04程度の範囲内で波長に応じて変化する。ここで、図18に示されたビームスプリッタ100を例にとって説明する。光La1〜La3のビーム幅を150μmと仮定すると、光La2及びLa3が光反射面103に遮られることなく光透過面104に向けて進む為には、半透過反射面101と光反射面103との間の光路の長さが少なくとも360μm程度必要となる。そして、光La2はこの光路を往復するので、その間の光La2の伝搬距離は720μm程度となる。結局、上記波長範囲において、720μm×±0.04=±29μm、すなわち光La2の波長毎の等価光路長に最大58μmのズレが生じてしまい、干渉光像を劣化させてしまう。なお、複素フーリエ変換を使用すれば、位相のずれ(光路長のずれと等価である)を算出できるが、アポタイジング補正等の必要性が増し、分解能劣化に繋がる為、好ましくない。
【0058】
このような理由から、波長分散を補償するための光学部材が設けられる。図19は、波長分散を補償するための光学部材を有する干渉光学系の構成例を示す平面図である。図19に示されるように、この干渉光学系120は、ビームスプリッタ121と、固定反射鏡122と、固定反射鏡122の前に設けられたシリコン製の波長分散補償部材123と、可動反射鏡124とを備えている。ビームスプリッタ121の一側面121aは光分岐面として利用され、別の側面121bは光透過面として利用される。このビームスプリッタ121の側面121aに光Lb1が入射すると、この光Lb1の一部(30%)であるLb2は側面121aにて反射し、波長分散補償部材123の側面123aを通って固定反射鏡122に達する。この光Lb2は、固定反射鏡122において反射し、波長分散補償部材123の側面123aを再び通って側面121aに戻る。一方、光Lb1の他の一部(70%)であるLb3は側面121aを透過し、側面121bから出射して可動反射鏡124に達する。この光Lb3は、可動反射鏡124において反射し、側面121bを再び通って側面121aに戻る。側面121aに戻った光Lb2及びLb3は、側面121bから外部へ向けて出射する。
【0059】
図19に示された干渉光学系120によれば、光Lb2の光路長と、光Lb3の光路長とを等しくすることによって、上述した波長分散を補償することが可能となる。しかしながら、このように波長分散補償の為の光学部材(波長分散補償部材123)を設けると、光が通過する光透過面の数が増し、それらの光透過面を通過する毎に損失が発生するので、光利用効率は更に低下してしまう。例えば、図19に示された干渉光学系120では、光利用効率は
【数2】
となってしまう。
【0060】
以上に述べたような課題は、光透過面に反射防止膜(ARコート)を設け、光分岐面に半透過反射膜を設けることによって軽減される。例えば、図19に示された干渉光学系120の側面121b及び123aに反射率5%の反射防止膜を形成し、側面121aに反射率50%の半透過反射膜を形成した場合、光利用効率は次のように大幅に改善される。
【数3】
このような反射防止膜は、例えば窒化シリコン膜といった誘電体膜を、CVD等を用いて光透過面上に製膜することによって好適に作製される。また、半透過反射膜は、例えば酸化シリコン膜と窒化シリコン膜とを、CVD等を用いて光分岐面上に積層することによって作製される。しかしながら、MEMS技術によってこのような干渉光学系を作製する場合、シリコン基板やSOI基板をエッチングして形成された光透過性光学部品に反射防止膜や半透過反射膜を製膜することとなる。MEMS技術では、他に金属膜を蒸着する工程など種々の工程が混在するので、従来のように一枚の基板から干渉光学系を作製すると、様々な工程上の制約が生じ、また工程が複雑になってしまう。
【0061】
(2)シャドウマスクによる金属膜の形成のために、光学部品間の距離が長くなってしまう
図20は、或る干渉光学系においてシャドウマスクを用いて金属膜を製膜する様子を示す断面図である。図20には、製膜対象の光反射面であるシリコン領域140の側面140aと、製膜対象ではない光透過面(或いは半透過反射面)であるシリコン領域140の側面140bとが示されている。側面140aに金属膜142を製膜する際、シリコン領域140上にはシャドウマスク144が配置される。このシャドウマスク144には開口144aが形成されており、ターゲット146から発した金属材料は、この開口144aを介して限定的にシリコン領域140上へ飛散する。
【0062】
通常、このようなシャドウマスクを用いた金属製膜では、製膜対象面とターゲットとが互いに対向するように配置される。しかし、MEMS技術を用いた干渉光学系では基板面に対して略垂直の光反射面に製膜する必要があるので、図20に示されるように、ターゲット146とシャドウマスク144との距離D1を、従来の距離D2と比較して短くすることにより、金属粒子の飛散方向の横方向成分を大きくする必要がある。したがって、製膜対象ではない側面140bに金属が付着して光透過率が低下することを回避するために、側面140aと側面140bとの距離を長くする必要が生じる。このことは、光反射面と光透過面(或いは半透過反射面)との間の光路長が長くなることを意味する。
【0063】
多くの光モジュールにおいて、光学部品間の光路長が長くなることは好ましいことではない。例えば光干渉計では、半透過反射面において分岐された光が、途中で失われることなく光検出器まで到達しなければならない。そのためには、干渉光学系を光が伝搬する間、その光は平行光に近いことが望ましい。通常、分光器などにおいてコヒーレントでない光を用いる場合、入射ビーム径を数μm〜数十μmの範囲に損失なく絞り込むことは極めて難しい。一般的に、入射ビーム径の入射窓の大きさは数百μm以上であって、このような大きさの窓を通過したビームは様々な角度の広がり成分を有しており、同程度のビーム径の平行光を作り出すことは極めて困難である。
【0064】
なお、像倍率がmであるレンズ系では、ビーム径がm倍に拡大されるのと同時に、ビーム径の広がり角(開口率NA)が1/mに変換される。ビームを平行光とすることは、ビームの広がり角を小さくすることと同義であり、したがって像倍率mを大きくすれば良い。しかし、このことは、或るビーム径で一定の広がり角を有するビームを、更に小さなビーム径の平行光に変換することは不可能であることを意味する。例えば、コア径が200μmでNAが0.2である光ファイバから出射されたビームを、NAが0.002程度(1mmで2μm程度の広がり)の平行光に変換しようとすると、ビーム径は100倍の20mmとなってしまう。MEMS技術によって形成される光透過面や半透過光反射面の寸法は100μm〜数百μm程度なので、このように大きなビーム径では、光学系を伝搬中にそのそのほとんどが損失してしまう。以上のことから、MEMS技術によって作製されるような小さな光学系では、損失を少なくするために光路長を可能な限り短くすることが重要となる。
【0065】
(3)光透過性の光学部品と導電性部品との相反する要求を満足することができない
静電アクチュエータのような導電性部品を効率良く駆動するためには、導電性部品を構成するシリコンの電気抵抗が小さいほど好ましい。静電アクチュエータは、各電極に印加される電圧による静電気力によって動作するので、基本的に直流電流は流れない。しかし、交流電流は流れるので、各電極を構成するシリコンの電気抵抗が大きい場合、電力が熱に変換されて失われる。また、電気抵抗値が大きいと、静電アクチュエータの応答特性の時定数が大きくなり、動作速度が遅くなってしまう。これらのことから、静電アクチュエータを構成するシリコンの電気抵抗は低いほど良い。換言すれば、静電アクチュエータを構成するシリコンの不純物濃度は高いほど良い。
【0066】
一方、ビームスプリッタのような光透過性の光学部品では、シリコンの不純物濃度は小さいほど良い。不純物を含まない純粋なシリコン単結晶は、1μm以上の波長域では少なくとも100μm程度の厚さまでは極めて高い透明度を有する。しかし、不純物濃度が高いと、不純物による吸収や散乱が生じ、透過光に損失が発生する。
【0067】
このように、光透過性の光学部品と導電性部品とには、シリコンの不純物濃度といった点において互いに相反する要求がある。しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載された光モジュールでは、一枚の基板からこれらの部品を作成しているので、これらの要求を同時に満足することは難しい。
【0068】
以上に述べた課題(1)〜(3)に対し、本実施形態による光モジュール及びその製造方法では、図1〜図5に示されたように、光透過性光学部品12と光反射性光学部品(入射鏡21、固定反射鏡22、可動反射鏡23、及び出射鏡24)とが、それぞれ別の板状部材10,20に形成されている。したがって、これらの光学部品をそれぞれの板状部材10,20に形成する際、例えば不純物濃度といった基板の特性を、各光学部品に最適な特性に合わせることができる。例えば、光透過性光学部品12が形成される第1の板状部材10のシリコン領域11には不純物を添加せずに光の吸収を抑制し、また可動反射鏡23が形成される第2の板状部材20のシリコン層25には、適量の不純物を添加して良好な導電性を確保し、可動反射鏡23を駆動する静電アクチュエータ30といった導電性部品の電気的特性を良好にできる。
【0069】
また、本実施形態による光モジュール及びその製造方法によれば、光透過性光学部品12と光反射性光学部品(入射鏡21、固定反射鏡22、可動反射鏡23、及び出射鏡24)とを各板状部材10,20に個別に形成することができるので、第2の板状部材20において金属膜26を蒸着した後に第1の板状部材10と第2の板状部材20とを接合すれば良く、金属膜26の蒸着の際に光透過性光学部品12に金属粒子が付着することを確実に防止できる。したがって、第2の板状部材20の鏡21〜24と光透過性光学部品12とを相互に近づけて配置することができ、光利用効率を向上することができる。
【0070】
また、本実施形態による光モジュール及びその製造方法によれば、光透過性光学部品12と光反射性光学部品とを各板状部材10,20に個別に形成することができる。したがって、例えば、第1の板状部材10では、光透過性光学部品12の各側面12a〜12dに対し、酸化シリコン膜14及び窒化シリコン膜16からなる半透過反射膜13や、窒化シリコン膜16からなる反射防止膜を形成する一方、第2の板状部材20では、静電アクチュエータ30といった複雑な形状の部品を形成することができる。このように、MEMS技術によって形成される種々の光学部品の形成工程を完全に分離し並行して行うことができるので、工程上の制約を軽減し、また工程を簡易化することができる。
【0071】
なお、本実施形態では、第2の板状部材20の光反射性光学部品(入射鏡21、固定反射鏡22、可動反射鏡23、及び出射鏡24)はシリコン層25をエッチングすることにより形成されている。シリコンはエッチングによる加工が容易なので、これによって光反射性光学部品を容易に形成することができる。なお、これらの光学部品は、シリコンに限らず他の半導体材料からなる層をエッチングすることにより形成されてもよい。
【0072】
また、本実施形態のように、第2の板状部材20は、可動反射鏡23を駆動する静電アクチュエータ30を有してもよい。前述したように、本実施形態では不純物濃度を各板状部材10,20毎に最適化することができる。したがって、本実施形態のように第2の板状部材20が静電アクチュエータ30を有する場合であっても、第2の板状部材20に適量の不純物を添加して導電性を確保しつつ、第1の板状部材10には不純物を添加せずに光透過性光学部品12での光の吸収を抑えることができる。
【0073】
また、本実施形態のように、出射鏡24が、光透過性光学部品12を透過した光を第1の板状部材10へ向けて反射し、第1の板状部材10が該光を透過してもよい。これにより、光透過性光学部品12を透過した干渉光を光モジュールの外部へ好適に出力することができる。
【0074】
また、本実施形態のように、第1の板状部材10のシリコン領域11の比抵抗は、第2の板状部材20のシリコン層25の比抵抗より大きいことが好ましい。このような場合、シリコン領域11の不純物濃度がシリコン層25の不純物濃度より小さくなるので、光透過性光学部品12における光の吸収を効果的に抑制することができる。
【0075】
また、本実施形態では、光透過性光学部品12において、シリコン領域11をエッチングすることにより形成された複数の側面12a〜12dのうち一つの側面12aに半透過反射膜13が設けられ、他の側面に反射防止膜(窒化シリコン膜16)が設けられている。これにより、光透過性光学部品12としてビームスプリッタを好適に実現することができる。
【0076】
また、本実施形態のように、第1の板状部材10の周縁部10cと、第2の板状部材20の周縁部20cとには、第1及び第2の板状部材10,20の位置合わせの為の複数のアライメントマーク17,27をそれぞれ形成することが好ましい。これにより、第1の板状部材10と第2の板状部材20との相対角度のずれを低減し、光利用効率の低下を抑えることができる。
【0077】
図21は、第1の板状部材10と第2の板状部材20との位置ずれに起因する問題を説明するための図であって、第1の板状部材10の光透過性光学部品12と、第2の板状部材20の光反射性光学部品(入射鏡21、固定反射鏡22、可動反射鏡23、及び出射鏡24)との相対位置関係を示している。図21(a)は、入射鏡21、固定反射鏡22、可動反射鏡23、及び出射鏡24に対して光透過性光学部品12が角度変化無く平行にずれた場合について、本来の位置を実線で、位置ずれが生じた位置を一点鎖線で示している。また、図21(b)は、入射鏡21、固定反射鏡22、可動反射鏡23、及び出射鏡24に対する光透過性光学部品12の角度ずれが生じた場合について、本来の位置を実線で、位置ずれが生じた位置を一点鎖線で示している。
【0078】
通常、フリップチップボンディングにおける接合精度は、数μm〜10μm程度である。したがって、図21(a)に示されるような位置ずれでは、各鏡21〜24に到達する光の光軸が数μm〜10μm程度ずれるだけであり、各鏡21〜24が100μm〜1000μm程度の横幅を有する場合には、大きな問題にはならない。なお、各鏡21〜24の鏡面の法線方向への位置ずれについても、例えば可動反射鏡23の動作距離が100μm以上あれば、校正することが可能である。
【0079】
一方、図21(b)に示されるような角度ずれは大きな問題となる。例えば、干渉光学系全体の大きさ(例えば固定反射鏡22から出射鏡24までの距離)を3mmと仮定する。そして、光透過性光学部品12の両端の距離を1mmとし、フリップチップボンディングにおける接合精度を10μmとする。このとき、光透過性光学部品12の角度ずれは、最大でtan−1(0.02/1)=1.1°となる。固定反射鏡22へ進む被測定光L2の光路は、このような半透過反射面12aの角度ずれに起因して、次第に本来の光路から離れていく。この被測定光L2は、固定反射鏡22において反射し、反対側にある出射鏡24までの距離を進むので、仮に半透過反射面12aが干渉光学系の中央(すなわち固定反射鏡22及び出射鏡24から1.5mmの位置)にある場合、被測定光L2は、半透過反射面12aにおいて反射してから4.5mmの距離を伝搬することとなる。したがって、光透過性光学部品12の角度ずれに起因する出射鏡24での位置ずれは、4.5mm×tan(1.1°)=86μmとなる。
【0080】
更に、可動反射鏡23から反射した被測定光L3もまた、半透過反射面12aにおいて反射するときに角度ずれを生じる。この被測定光L3が出射鏡24に到達したときの位置ずれは、約30μmとなる。すなわち、出射鏡24における被測定光L2及びL3の位置ずれを合わせると110μm程度となり、出射鏡24の横幅に対して無視できない大きさとなる。
【0081】
このような課題に対し、本実施形態では、板状部材10,20の周縁部10c,20cに複数のアライメントマーク17,27を形成し、これらのアライメントマーク17,27を用いて周縁部10c,20cを互いに接合する。この場合、複数のアライメントマーク17,27間の距離(例えば3mm以上)を、光透過性光学部品12の両端の距離(例えば1mm)より長くすることができるので、フリップチップボンディングにおける接合精度(例えば10μm程度)が変わらない場合でも、第1の板状部材10と第2の板状部材20との相対角度のずれを低減することができる。したがって、各鏡21〜24(特に出射鏡24)における干渉光の位置ずれを少なくし、光利用効率の低下を抑えることができる。
【0082】
一例を挙げると、アライメントマーク同士の間隔が例えば5mmである場合、フリップチップボンディングにおける接合精度を10μmとすると、半透過反射面12aの角度ずれ、出射鏡24における被測定光L2及びL3の位置ずれ、並びに被測定光L2及びL3を合わせた位置ずれは、それぞれ以下のようになる。
半透過反射面12aの角度ずれ:tan−1(0.02/5)=0.23°
出射鏡24における被測定光L2の位置ずれ:4.5mm×tan(0.23°)=18μm
出射鏡24における被測定光L3の位置ずれ:1.5mm×tan(0.23°)=6μm
被測定光L2及びL3を合わせた位置ずれ:24μm
このように位置ずれを小さくすることができるので、出射鏡24などの横幅を広げること等によって容易に対応可能となる。
【0083】
なお、本実施形態では、第1の板状部材10の周縁部10cが部品形成面10aに対して厚さ方向にやや突出しており、また、第2の板状部材20の周縁部20cが、主面20aに対して厚さ方向に突出している。周縁部10c及び20cの形態はこれに限られるものではなく、例えば、周縁部10c及び20cのうち一方が突出しておらず、他方が大きく突出することによりこれらが互いに接するような形態であってもよい。特に、本実施形態のように第2の板状部材20がSOI基板から作製される場合には、絶縁層29をエッチングしてこれを除去することにより、周縁部20cにおいて支持基板28を露出させ、露出した支持基板28と第1の板状部材10の周縁部10cとを相互に接合することが好ましい。また、この場合、第1の板状部材10の光透過性光学部品12の上面を少しエッチングして周縁部10cの上面より低くしておくことにより、光透過性光学部品12と第2の板状部材20との接触を回避することが好ましい。
【0084】
(第1の変形例)
図22は、上記実施形態の第1変形例について説明するための図である。上記実施形態では、アライメントマーク17,27を板状部材10,20の周縁部10c,20cに形成しているが、図22(a)に示されるように、複数の板状部材10,20を作製するために使用されるウエハ50,60の周縁部のそれぞれに、アライメントマーク57,67を形成してもよい。なお、図22(a)に示されるウエハ50は、本変形例における第1のウエハであって、シリコン領域をエッチングすることにより形成された光透過性光学部品12をそれぞれ有する複数の領域を含んでいる。また、ウエハ60は、本変形例における第2のウエハであって、光反射性光学部品(入射鏡21、固定反射鏡22、可動反射鏡23、及び出射鏡24)を主面60a側に有する複数の領域61を含んでいる。
【0085】
本変形例では、まず、図22(a)に示されるように、ウエハ50,60の周縁部のそれぞれに、ウエハ50,60の位置合わせの為の複数のアライメントマーク57,67を形成する。そして、図22(b)に示されるように、複数のアライメントマーク57,67の位置が互いに一致するように、ウエハ50の光透過性光学部品12が形成された部品形成面50aと、ウエハ60の主面60aとを対向させる。この状態で、ウエハ50,60を互いに接合する(図22(c))。その後、この接合後のウエハを所定の切断ライン81に沿って切断し、板状部材10,20に対応する領域を切り出すことによって(図22(d))、光モジュール80が作製される。
【0086】
本変形例では、ウエハ50,60の周縁部にアライメントマーク57,67を形成するので、複数のアライメントマーク同士の距離を極めて長くすることができる。したがって、フリップチップボンディングにおける接合精度(例えば10μm程度)が変わらない場合でも、第1の板状部材10と第2の板状部材20との相対角度のずれを顕著に低減することができる。例えば、アライメントマーク57,67をそれぞれ130mm間隔で作成した場合、角度ずれはtan−1(0.02/130)=0.009°となり、殆ど無視できる大きさとなる。
【0087】
(第2の変形例)
図23は、上記実施形態の第2変形例について説明するための図である。上記実施形態では、アライメントマーク17,27を用いて第1及び第2の板状部材10,20を位置合わせしているが、第1及び第2の板状部材10,20の位置合わせの方法はこれに限られるものではない。例えば、本変形例では、第1の板状部材10の周縁部10cに突起10dを形成し、第2の板状部材20の周縁部20cに凹部20dを形成し、突起10dを凹部20dに挿入することによって第1及び第2の板状部材10,20の位置合わせを行う。
【0088】
第2の板状部材20の凹部20dは、静電アクチュエータ30や各鏡21〜24を形成するためのエッチング工程において、周縁部20cのシリコン層25を同時にエッチングすることにより好適に形成される。また、第1の板状部材10の突起10dは、光透過性光学部品12を形成するためのエッチング工程において、周縁部10cのシリコン領域11を同時にエッチングすることにより好適に形成される。このように、突起10d及び凹部20dは半導体プロセスを用いて形成可能であり、精度良く形成されることができる。
【0089】
なお、突起10dは、凹部20dに対して隙間無く嵌合しなくても良い。図24は、突起10dが凹部20dに挿入された状態において、板状部材10,20の厚さ方向から見た突起10d及び凹部20dの位置関係を示す断面図である。図24に示されるように、凹部20dの平面寸法が突起10dの平面寸法より大きい場合には、突起10dを挿入し易くなり、また、突起10dと凹部20dとの接触面を精度良く形成すれば、板状部材10,20相互の角度ずれを十分に小さくすることが可能である。なお、図24に示された態様では、突起10dと凹部20dとの接触面に沿った方向に位置ずれが生じるおそれがあるが、図21(a)を示して説明したように、このような平行方向のずれは大きな問題とはならない。勿論、突起10d及び凹部20dの該方向の寸法を合致させることによって位置決めを更に精度良く行っても良い。なお、本変形例では、突起10dを凹部20dに挿入したのち、周縁部10c及び20cを相互に樹脂止めして固定する。或いは、光モジュールを一回り大きなパッケージに収めて、第1の板状部材10と第2の板状部材20とが互いに外れないように固定してもよい。
【0090】
(第3の変形例)
上記実施形態では、静電アクチュエータ30を備える干渉光学系を例示したが、本変形例では、静電アクチュエータ30といった導電性部材を備えない光モジュールの例について説明する。本変形例に係る光モジュールは、未知の距離にある測定対象面からの反射光の干渉光を生成する。この干渉光は、測定対象面までの距離を算出する為に利用される。
【0091】
図25は、本変形例に係る第2の板状部材70の構成を示す平面図である。本変形例では、上記実施形態の可動反射鏡23に代えて、測定対象面へ向けて光を投射するための出射鏡71が、第2の板状部材70に形成されている。出射鏡71は、第2の板状部材70の主面に対して45°といった角度を有する傾斜面を有しており、該傾斜面上には金属膜26が蒸着されている。この出射鏡71は、半透過反射面12aから到達した光L3を、第2の板状部材70の主面の法線方向へ反射する。測定対象面において反射した光L3は、再び出射鏡71に戻り、半透過反射面12aにおいて反射したのち出射鏡24から干渉光L4として取り出される。
【0092】
本変形例のように、導電性部材を備えない光モジュールにおいても、上記実施形態において述べた効果と同様の効果を好適に得ることができる。すなわち、光反射性光学部品(入射鏡21、固定反射鏡22、出射鏡71、及び出射鏡24)と光透過性光学部品12とを互いに近づけて配置することができ、且つ、基板の特性に関する要求が光学部品によって相反する場合でもそれらの要求を満たすことができる。
【0093】
本発明による光モジュール及びその製造方法は、上述した実施形態及び各変形例に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上述した実施形態及び各変形例では、本発明を適用する光モジュールとしてマイケルソン干渉光学系を例示したが、本発明は、干渉光学系に限らず、光透過性光学部品および光反射性光学部品を備える様々な光学系に適用可能である。
【符号の説明】
【0094】
10…第1の板状部材、10a…部品形成面、10c…周縁部、11…シリコン領域、12…光透過性光学部品、12a〜12d…側面、13…半透過反射膜、14…酸化シリコン膜、16,18…窒化シリコン膜、17,27…アライメントマーク、19…窒化シリコン膜、20…第2の板状部材、20a…主面、20c…周縁部、21…入射鏡、22…固定反射鏡、23…可動反射鏡、24…出射鏡、25…シリコン層、26…金属膜、28…支持基板、29…絶縁層、30…静電アクチュエータ、50,60…ウエハ、57,67…アライメントマーク、L1〜L3…被測定光、L4…干渉光像。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光モジュール及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び2には、MEMS技術を用いてSOI(Silicon On Insulator)基板上に干渉光学系を構成した光モジュールが開示されている。これらの干渉光学系は、ビームスプリッタと、静電アクチュエータに取り付けられた可動鏡と、固定鏡とを備えており、これらはSOI基板のシリコン層および絶縁層を任意の形状にエッチングすることにより形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−102132号公報
【特許文献2】特開2010−170029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基板をエッチングすることにより作製される光学系は、例えば特許文献1や特許文献2に記載された干渉光学系のように、静電アクチュエータ、鏡面、或いはビームスプリッタといった種々の光学部品によって構成される。これらの光学部品のうち例えば鏡面といった光反射性光学部品を形成するためには、基板をエッチングして形成した面上に光反射の為の金属膜を、シャドウマスクを介して蒸着するとよい。また、例えばビームスプリッタといった光透過性光学部品を形成する際には、基板をエッチングして形成した面上に半透過反射膜や反射防止膜を形成することが好ましい。
【0005】
しかしながら、金属膜を蒸着する際には、光反射性光学部品の周囲に金属が拡がって付着する傾向がある。特に、基板の板面に対して垂直な面に金属膜を蒸着する場合、基板の板面の法線方向に対して傾いた方向から金属粒子を供給する必要があり、このような傾向が顕著となる。したがって、光透過性光学部品を金属が付着しない領域まで離して配置することとなるので、光反射性光学部品と光透過性光学部品との間の光路が長くなり、ビーム径が過度に拡がってその一部がこれらの光学部品から外れてしまい、光利用効率が低下するおそれがある。
【0006】
また、例えば静電アクチュエータといった導電性部品を作製する際には、該部品の導電性を得るために、所定濃度のドーパントを含む基板を用いることが好ましい。一方、ビームスプリッタ等の光透過性光学部品では、光の吸収を抑制するために、基板に含まれる不純物は少ないほど好ましい。このように、光学部品の種類によって、基板の特性に関する要求が相反する場合がある。しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載されたように一枚の基板を用いて種々の光学部品を形成すると、このような相反する要求を同時に満たすことが難しくなる。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、鏡面といった光反射性光学部品と、ビームスプリッタといった光透過性光学部品とを近づけて配置することができ、且つ、基板の特性に関する要求が光学部品によって相反する場合でもそれらの要求を満たすことが可能な光モジュール及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明による光モジュールは、シリコン領域をエッチングすることにより形成された光透過性光学部品を有する第1の板状部材と、光透過性光学部品を透過した光を反射する為の光反射性光学部品を主面上に有する第2の板状部材とを備え、第1の板状部材の光透過性光学部品が形成された部品形成面と、第2の板状部材の主面とが対向するように、第1及び第2の板状部材が互いに接合されており、光透過性光学部品を透過する光の光路が、第1の板状部材の部品形成面及び第2の板状部材の主面に沿っていることを特徴とする。
【0009】
この光モジュールでは、光透過性光学部品と光反射性光学部品とが、それぞれ別の板状部材(第1及び第2の板状部材)に形成されている。したがって、これらの光学部品をそれぞれの板状部材に形成する際、例えば不純物濃度といった基板の特性を、各光学部品に最適な特性に合わせることができる。一つの例としては、光透過性光学部品が形成される第1の板状部材には不純物を添加せずに光の吸収を抑制し、また光反射性光学部品が形成される第2の板状部材には、適量の不純物を添加して良好な導電性を確保し、光反射性光学部品を駆動する静電アクチュエータといった導電性部品の形成を可能にできる。また、光透過性光学部品及び光反射性光学部品を各板状部材において個別に形成することができるので、金属膜の蒸着といった一方の光学部品に対する処理は他方の光学部品には影響しない。したがって、光反射性光学部品と光透過性光学部品とを相互に近づけて配置することができ、光利用効率を向上することができる。
【0010】
また、光モジュールは、光反射性光学部品が、半導体領域をエッチングすることにより形成された面と、該面上に設けられた金属膜とを有することを特徴としてもよい。光モジュールがこのような光反射性光学部品を備える場合、従来の光モジュールでは、光透過性光学部品を金属が付着しない領域まで離して配置する必要があった。これに対し、本発明による光モジュールによれば、第2の板状部材において金属膜を蒸着した後に第1の板状部材と第2の板状部材とを接合すれば良いので、光透過性光学部品に金属が付着することなく光反射性光学部品と光透過性光学部品とを相互に近づけて配置することができる。
【0011】
また、光モジュールは、光反射性光学部品が、半導体領域をエッチングすることにより形成された面を有し、該半導体領域がシリコンから成ることを特徴としてもよい。これにより、光反射性光学部品を容易に形成することができる。
【0012】
また、光モジュールは、光反射性光学部品が、主面から分離されて該主面に沿った方向に移動可能となっており、第2の板状部材が、静電気力によって光反射性光学部品を駆動するアクチュエータ構造を更に有することを特徴としてもよい。前述したように、本発明による光モジュールでは不純物濃度を各板状部材毎に最適化することができる。したがって、第2の板状部材がアクチュエータ構造を有する場合であっても、第2の板状部材に適量の不純物を添加して導電性を確保しつつ、第1の板状部材には不純物を添加せずに光透過性光学部品での光の吸収を抑えることができる。
【0013】
また、光モジュールは、光反射性光学部品が、光透過性光学部品を透過した光を第1の板状部材へ向けて反射し、第1の板状部材が該光を透過することを特徴としてもよい。これにより、光透過性光学部品を透過した光(例えば干渉光など)を光モジュールの外部へ好適に出力することができる。
【0014】
また、光モジュールは、第1の板状部材の比抵抗が、第2の板状部材の比抵抗より大きいことを特徴としてもよい。このような場合、第1の板状部材の不純物濃度が第2の板状部材の不純物濃度より小さいので、光透過性光学部品における光の吸収を好適に抑制することができる。
【0015】
また、光モジュールは、第1の板状部材の周縁部と、第2の板状部材の周縁部とが互いに接合されており、第1及び第2の板状部材の各周縁部には、第1及び第2の板状部材の位置合わせの為の複数のアライメントマークが形成されていることを特徴としてもよい。このように、各板状部材の周縁部に複数のアライメントマークが形成されていることにより、第1の板状部材と第2の板状部材との相対角度のずれを低減し、光利用効率の低下を抑えることができる。
【0016】
また、光モジュールは、光透過性光学部品が、シリコン領域をエッチングすることにより形成された複数の面を有し、複数の面のうち少なくとも一つの面には反射防止膜が設けられ、複数の面のうち他の少なくとも一つの面には半透過反射膜が設けられていることを特徴としてもよい。これにより、光透過性光学部品としてのビームスプリッタを好適に実現することができる。
【0017】
本発明による第1の光モジュールの製造方法は、シリコン領域をエッチングすることにより形成された光透過性光学部品を有する第1の板状部材の周縁部、及び、光透過性光学部品を透過した光を反射する為の光反射性光学部品を主面上に有する第2の板状部材の周縁部のそれぞれに、第1及び第2の板状部材の位置合わせの為の複数のアライメントマークを形成し、該複数のアライメントマークを用いて、第1の板状部材の光透過性光学部品が形成された部品形成面と第2の板状部材の主面とが対向するように第1及び第2の板状部材の周縁部を互いに接合することを特徴とする。
【0018】
また、本発明による第2の光モジュールの製造方法は、シリコン領域をエッチングすることにより形成された光透過性光学部品をそれぞれ有する複数の領域を含む第1のウエハの周縁部、及び、光透過性光学部品を透過した光を反射する為の光反射性光学部品を主面上に有する複数の領域を含む第2のウエハの周縁部のそれぞれに、第1及び第2のウエハの位置合わせの為の複数のアライメントマークを形成し、該複数のアライメントマークを用いて、第1のウエハの光透過性光学部品が形成された部品形成面と第2のウエハの主面とが対向するように第1及び第2のウエハを互いに接合することを特徴とする。
【0019】
上述した第1及び第2の光モジュールの製造方法によれば、板状部材やウエハの周縁部に複数のアライメントマークを形成し、これらのアライメントマークを用いて第1及び第2のウエハを互いに接合するので、第1の板状部材と第2の板状部材との相対角度のずれを低減し、光利用効率の低下を抑えることができる。特に、第2の光モジュールの製造方法によれば、光モジュールに相当する領域を複数含むウエハの周縁部に複数のアライメントマークを形成するので、アライメントマーク間の距離を極めて長くすることができ、相対角度のずれを顕著に低減することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明による光モジュール及びその製造方法によれば、鏡面といった光反射性光学部品と、ビームスプリッタといった光透過性光学部品とを近づけて配置することができ、且つ、基板の特性に関する要求が光学部品によって相反する場合でもそれらの要求を満たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1の板状部材の外観を示す斜視図である。
【図2】図1に示されたII−II線に沿った断面を示す図である。
【図3】第2の板状部材の外観を示す斜視図である。
【図4】図3に示されたIV−IV線に沿った断面を示す図である。
【図5】第1の板状部材と第2の板状部材とを互いに接合した状態を示す断面図である。
【図6】可動反射鏡を駆動する静電アクチュエータの外観を示す斜視図である。
【図7】光透過性光学部品及び光反射性光学部品によって構成されるマイケルソン干渉光学系を説明するための平面図である。
【図8】第1の板状部材の製造方法におけるマスク形成工程を示す図である。
【図9】第1の板状部材の製造方法におけるマスク形成工程を示す図である。
【図10】第1の板状部材の製造方法における第1のエッチング工程を示す図である。
【図11】第1の板状部材の製造方法における熱酸化工程を示す図である。
【図12】第1の板状部材の製造方法における熱酸化工程中の窒化膜除去を示す図である。
【図13】第1の板状部材の製造方法における第2のエッチング工程を示す図である。
【図14】第1の板状部材の製造方法における第3のエッチング工程を示す図である。
【図15】第1の板状部材の製造方法における窒化膜形成工程を示す図である。
【図16】第1の板状部材と第2の板状部材とを相互に貼り合わせる様子を模式的に示す斜視図である。
【図17】アライメントマークが一致するように第1及び第2の板状部材を位置合わせする様子を示す図である。
【図18】光透過性光学部品の一例として、干渉光学系等に用いられるビームスプリッタを模式的に示す平面図である。
【図19】波長分散を補償するための光学部材を有する干渉光学系の構成例を示す平面図である。
【図20】或る干渉光学系においてシャドウマスクを用いて金属膜を製膜する様子を示す断面図である。
【図21】第1の板状部材と第2の板状部材との位置ずれに起因する問題を説明するための図である。
【図22】第1変形例について説明するための図である。
【図23】第2変形例について説明するための図である。
【図24】突起が凹部に挿入された状態において、板状部材の厚さ方向から見た突起及び凹部の位置関係を示す断面図である。
【図25】第3変形例に係る第2の板状部材の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照しながら本発明による光モジュール及びその製造方法の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0023】
本実施形態に係る光モジュールは、2枚の板状部材(第1及び第2の板状部材)が互いに張り合わされて構成されており、マイケルソン干渉光学系を内蔵している。図1及び図2は、第1の板状部材10を示す図である。図1は、第1の板状部材10の外観を示す斜視図であり、図2は、図1に示されたII−II線に沿った断面を示す図である。第1の板状部材10は、シリコン基板をエッチングすることによって作製された部材であり、主としてシリコンから成る。第1の板状部材10は、部品形成面10aと、部品形成面10aとは反対側の裏面10bとを有する。
【0024】
図1に示されるように、第1の板状部材10の部品形成面10a側には、光透過性光学部品12が形成されている。光透過性光学部品12は、シリコン基板を構成するシリコン領域11をエッチングすることにより形成された光学部品であって、所定波長の光を透過する。本実施形態の光透過性光学部品12は、略V字状といった平面形状を有しており、光学的に機能する4つの側面12a〜12dを有する。側面12aは半透過反射面(ハーフミラー)であり、使用波長範囲の光に対して例えば30%〜50%の反射率を有する。この半透過反射面は、マイケルソン干渉光学系においてビームスプリッタとして機能する。側面12b〜12dは光透過面であり、使用波長範囲の光に対して例えば90%〜99%の透過率を有する。
【0025】
図2に示されるように、光透過性光学部品12の側面12aは、シリコン領域11の側面上に形成された酸化シリコン膜14と、該酸化シリコン膜14上に形成された窒化シリコン膜16とから成る半透過反射膜13によって覆われている。側面12aにおける波長−反射特性は、酸化シリコン膜14及び窒化シリコン膜16それぞれの厚さに応じて変化する。また、光透過性光学部品12の側面12b〜12dは、シリコン領域11の側面上に形成された窒化シリコン膜16から成る反射防止膜(AR膜)によって覆われている。側面12b〜12dにおける波長−反射特性は、窒化シリコン膜16の厚さに応じて変化する。なお、酸化シリコン膜14は、光透過性光学部品12の側面12aから光透過性光学部品12の周辺のシリコン領域11上にわたって形成されており、後述するように、シリコン領域11を熱酸化させて形成される。また、窒化シリコン膜16は、酸化シリコン膜14上および光透過性光学部品12の側面12b〜12d上を含むシリコン領域11上の全面にわたって形成されている。光透過性光学部品12の上面と窒化シリコン膜16との間には、酸化シリコン膜18が介在している。酸化シリコン膜18は、シリコン領域11をエッチングして光透過性光学部品12を形成する際に使用されたエッチングマスクである。
【0026】
第1の板状部材10の周縁部10cは、部品形成面10aに対して厚さ方向にやや突出しており、光透過性光学部品12を囲んでいる。周縁部10cには、後述する第2の板状部材との位置合わせ為の複数(本実施形態では二つ)のアライメントマーク17が形成されている。一実施例では、第1の板状部材10の一辺における周縁部10cに一つのアライメントマーク17が形成されており、第1の板状部材10の他の一辺(好適には、前記一辺と対向する辺)における周縁部10cに他の一つのアライメントマーク17が形成されている。これらのアライメントマーク17は、例えば十字状といった任意の平面形状を有しており、本実施形態では周縁部10cに形成された溝によって構成されている。
【0027】
図3及び図4は、第2の板状部材20を示す図である。図3は、第2の板状部材20の外観を示す斜視図であり、図4は、図3に示されたIV−IV線に沿った断面を示す図である。なお、図3には、第1の板状部材10と第2の板状部材20とが接合された状態における光透過性光学部品12の位置及び範囲が、一点鎖線で示されている。
【0028】
第2の板状部材20は、支持基板28上に絶縁層29及びシリコン層25が積層された、いわゆるシリコン・オン・インシュレータ(SOI)基板のシリコン層25をエッチングすることによって作製された部材である。第2の板状部材20は、支持基板28が露出している主面20aと、主面20aとは反対側の裏面20bとを有する。図3に示されるように、第2の板状部材20の主面20a側には、入射鏡21、固定反射鏡22、可動反射鏡23、及び出射鏡24が形成されている。これらの鏡21〜24は、本実施形態における光反射性光学部品である。これらの鏡21〜24は、SOI基板のシリコン層25をエッチングすることにより形成された面上に金属膜26が成膜された光学部品であって、これらに到達した光を全反射する。なお、本実施形態では、金属膜26を蒸着する際の都合により、主面20a上にも金属膜26が形成されている。入射鏡21及び出射鏡24の各鏡面は、主面20aの法線方向に対して例えば45°といった角度で傾斜している。一方、固定反射鏡22及び可動反射鏡23の各鏡面は、主面20aの法線方向に沿っており、主面20aに対して略垂直に形成されている。入射鏡21は、主面20aの法線方向から第1の板状部材10を透過して入射した光を、光透過性光学部品12の半透過反射面である側面12aに向けて反射する。固定反射鏡22は、光透過性光学部品12の光透過面である側面12cから出射された光を、該側面12cへ向けて反射する。可動反射鏡23は、光透過性光学部品12の光透過面である側面12dから出射された光を、該側面12dへ向けて反射する。なお、可動反射鏡23は、後述する静電アクチュエータによって、入射する光の光軸に沿った方向に平行移動することができる。出射鏡24は、光透過性光学部品12の光透過面である側面12dから出射された光(干渉光)を、主面20aの法線方向に反射する。この干渉光は、第1の板状部材10を透過して光モジュールの外部へ出射される。
【0029】
第2の板状部材20の周縁部20cは、主面20aに対して厚さ方向に突出しており、光反射性光学部品である鏡21〜24を囲んでいる。周縁部10cには、前述した第1の板状部材10との位置合わせ為の複数(本実施形態では二つ)のアライメントマーク27が、第1の板状部材10のアライメントマーク17に対応する位置に形成されている。一実施例では、第2の板状部材20の一辺における周縁部20cに一つのアライメントマーク27が形成されており、第2の板状部材20の他の一辺(好適には、前記一辺と対向する辺)における周縁部20cに他の一つのアライメントマーク27が形成されている。これらのアライメントマーク27は、第1の板状部材10のアライメントマーク17と同様の平面形状を有しており、例えば周縁部20cに形成された溝によって構成される。
【0030】
図5は、第1の板状部材10と第2の板状部材20とを互いに接合した状態を示す断面図である。図5に示されるように、これらの板状部材10,20は、第1の板状部材10の光透過性光学部品12が形成された部品形成面10aと、第2の板状部材20の主面20aとが対向するように互いに接合される。このとき、光透過性光学部品12は、固定反射鏡22と出射鏡24との間に配置され、且つ、図3に示された入射鏡21と可動反射鏡23との間に配置される。また、このとき、光透過性光学部品12の上面に形成された窒化シリコン膜19と、第2の板状部材20の主面20a上に形成された金属膜26との間には、隙間が存在することが好ましい。
【0031】
ここで、図6は、可動反射鏡23を駆動する静電アクチュエータ30の外観を示す斜視図である。図6に示されるように、静電アクチュエータ30は、第2の板状部材20の主面20aに固定された第1電極31と、可動反射鏡23に固定された第2電極32とを有する。静電アクチュエータ30は、第1電極31と第2電極32との間に静電気力を発生させることにより、第2電極32を第1電極31に対して相対的に変位させるものである。
【0032】
第1電極31は、絶縁層29(図4を参照)を介して支持基板28に固定された固定部31aと、第2電極32と対向する固定部31aの側面に形成された櫛歯部31bとを有する。なお、櫛歯部31bは、該部分と支持基板28との間の絶縁層29が除去されたことにより、支持基板28に対して浮いた状態となっている。
【0033】
第2電極32は、可動反射鏡23と第1電極31との間に配置されている。第2電極32は、可動反射鏡23の鏡面に垂直な方向に延設されてその一端において可動反射鏡23を支持する支柱32aと、支柱32aの他端を支持する櫛歯部32bと、板ばねを連結した構造を有しており櫛歯部32bの両端を弾性的に支持する支持部32cとを有する。支柱32a、櫛歯部32b、及び支持部32cは、支持基板28との間の絶縁層29が除去されたことにより、支持基板28に対して浮いた状態となっている。また、支持部32cの一端は櫛歯部32bの端部を支持しており、支持部32cの他端は第2の板状部材20の周縁部20c(図3を参照)に固定されている。このような構成により、支柱32a及び櫛歯部32bは、可動反射鏡23の鏡面に垂直な方向に変位可能となっている。櫛歯部32bは第1電極31の櫛歯部31bと対向しており、櫛歯部32bの櫛歯は、櫛歯部31bの各櫛歯間に配置されている。
【0034】
第2電極32に所定の電圧が印加されると、櫛歯部32bと櫛歯部31bとの間に静電気力が働く。この静電気力は第2電極32に印加される電圧値によって定まるので、櫛歯部32bと櫛歯部31bとの間隔は、該電圧値によって制御される。すなわち、櫛歯部31b及び支柱32aによって支持された可動反射鏡23の鏡面に垂直な方向における位置は、第2電極32に印加される電圧によって制御される。
【0035】
図7は、上述した光透過性光学部品12、並びに光反射性光学部品(入射鏡21、固定反射鏡22、可動反射鏡23、及び出射鏡24)によって構成されるマイケルソン干渉光学系を説明するための平面図である。光モジュールの外部から第1の板状部材10を透過して被測定光L1が入射すると、入射鏡21は、部品形成面10a及び主面20aに沿った方向に被測定光L1を反射させる。この被測定光L1の一部L2は、光透過性光学部品12の側面12a(半透過反射面)において反射し、光透過面である側面12bに入射する。この被測定光L2は、光透過性光学部品12の内部を透過して光透過面である側面12cから出射し、固定反射鏡22に到達する。そして、この被測定光L2は、固定反射鏡22において全反射したのち、上記と同じ光路を辿って側面12aに戻る。
【0036】
一方、光透過性光学部品12の側面12aにおいて反射した一部の被測定光L2を除く残りの被測定光L3は、側面12aに入射する。この被測定光L3は、光透過性光学部品12の内部を透過して光透過面である側面12dから出射し、可動反射鏡23に到達する。そして、この被測定光L3は、可動反射鏡23において全反射したのち、上記と同じ光路を辿って側面12aに戻る。
【0037】
固定反射鏡22から側面12aに戻った被測定光L2と、可動反射鏡23から側面12aに戻った被測定光L3とは、側面12aにおいて互いに合波し、干渉光像L4となる。干渉光像L4は、光透過性光学部品12の内部を透過して側面12dから出射し、出射鏡24に到達する。干渉光像L4は、出射鏡24において反射し、第1の板状部材10を透過して光モジュールの外部へ出射する。
【0038】
続いて、本実施形態に係る光モジュールの製造方法について説明する。図8〜図15は、第1の板状部材10の製造方法における各工程を示す図であって、(a)は光透過性光学部品12に相当する領域の平面図であり、(b)は(a)に示されたB−B線に沿った断面を示す図である。
【0039】
<マスク形成工程>
まず、図8に示されるように、シリコン領域11を含む板状部材を準備する。このような板状部材としては、シリコン基板や、支持基板上に絶縁層およびシリコン層が積層されたSOI基板等が好適である。そして、シリコン領域11上に、酸化シリコン膜18を形成する。この酸化シリコン膜18は、本実施形態における第1のマスクであって、側面12a〜12dを有する光透過性光学部品12の平面形状に応じたパターンを有する。このような酸化シリコン膜18は、後述する熱酸化工程において高温に曝されることを考慮し、例えば熱酸化や熱CVDによってシリコン領域11上の全面に酸化シリコン膜を形成したのち、通常のフォトリソグラフィ技術を用いて好適に形成される。
【0040】
次に、図9に示されるように、シリコン領域11上の全面を覆うように窒化シリコン膜41(第2のマスク)を形成する。窒化シリコン膜41は、後述する熱酸化工程において高温に曝されることを考慮し、例えば高温処理の減圧化学気相成長法(LP−CVD;Low Pressure-Chemical Vapor Deposition)によって好適に形成される。このとき、酸化シリコン膜18も窒化シリコン膜41によって覆われる。そして、図10に示されるように、開口42aを有するレジストマスク42(第3のマスク)を窒化シリコン膜41上に形成する。開口42aは、後の工程において形成されるシリコン領域11の凹部の平面形状に応じた形状を有しており、シリコン領域11の厚さ方向から見て酸化シリコン膜18と重ならないように、酸化シリコン膜18に隣接して形成される。開口42aの平面形状は例えば四角形状であり、その一辺は、酸化シリコン膜18の一辺(光透過性光学部品12の側面12aに対応する辺)18aに重なっている。そして、このレジストマスク42をエッチングマスクとして用い、窒化シリコン膜41のエッチングを行うことにより、窒化シリコン膜41に開口を形成する。
【0041】
<第1のエッチング工程>
続いて、レジストマスク42をエッチングマスクとして用い、シリコン領域11に対してドライエッチングを行う。これにより、シリコン領域11に凹部11aが形成され、同時に、凹部11aの側面として光透過性光学部品12の側面12aが形成される。なお、シリコン領域11を含む板状部材としてSOI基板を使用した場合には、絶縁層がエッチング停止層として機能するので、エッチング深さをより高精度に制御することができる。また、この工程では、ドライエッチングの方法として、例えばボッシュプロセスを用いた深堀りRIE(反応性イオンエッチング)法などを用いるとよい。この工程ののち、レジストマスク42を除去する。
【0042】
この第1のエッチング工程では、シリコン領域11に対して例えばアルカリ性エッチャントを用いたウェットエッチングを行ってもよい。そのような場合でも、エッチングにより形成される凹部11aの側面をシリコン領域11の結晶面に一致させるなどの方法によって、シリコン領域11の厚さ方向に沿った(板面に対して垂直な)凹部11aの側面を好適に形成することができる。このような結晶面としては、例えば(100)面や(111)面が好適である。なお、このようにウェットエッチングによって凹部11aを形成する場合には、エッチング前にレジストマスク42を除去し、窒化シリコン膜41をエッチングマスクとして用いても良い。
【0043】
<熱酸化工程>
続いて、図11に示されるように、凹部11aの内面(側面および底面)を熱酸化させることにより、酸化シリコン膜14を形成する。このとき、凹部11aの内面を除くシリコン領域11の表面は窒化シリコン膜41によって覆われているので、凹部11aの内面のみ熱酸化される。また、本工程では、熱酸化により形成される酸化シリコン膜14の膜厚を、完成後の光モジュールにおける酸化シリコン膜14の膜厚の2倍程度(例えば0.48μm)にしておくとよい。この工程ののち、例えば150℃〜170℃に加熱した熱リン酸液を用いて窒化シリコン膜41を除去する(図12)。熱リン酸液を用いることによって、酸化シリコン膜14及び18を残したまま窒化シリコン膜41のみを好適に除去できる。
【0044】
<第2のエッチング工程>
続いて、図13に示されるように、酸化シリコン膜18をエッチングマスクとして用い、シリコン領域11を再びエッチングすることにより、側面12aとは別の側面12b〜12dをシリコン領域11に形成する。これにより、光透過性光学部品12が形成される。なお、本工程でのエッチング方法としては、ドライエッチングおよびアルカリウェットエッチングの何れでもよい。
【0045】
<第3のエッチング工程>
続いて、酸化シリコン膜14のうち不要な部分14a(図13を参照)を除去するため、例えば希フッ酸を用いたエッチングを行う。このとき、酸化シリコン膜14のうちシリコン領域11に沿っていない部分14aは、希フッ酸によって内外面の双方からエッチングされるので、シリコン領域11に沿った他の部分と比較して約2倍の速さでエッチングされる。したがって、該部分14aが完全に除去されたタイミングにおいて、他の部分(特に側面12a上の部分)は膜厚の半分程度しかエッチングされない。このような工程により、図14に示されるように、酸化シリコン膜14の不要な部分14aが除去され、酸化シリコン膜14の他の部分は残存することとなる。熱酸化により形成された直後の酸化シリコン膜14の厚さが0.48μmである場合、本工程後における酸化シリコン膜14の厚さは0.24μmである。この厚さによって半透過反射膜13の反射率が変化するので、本工程における酸化シリコン膜14の減厚分を考慮して上述した熱酸化工程を行うことが望ましい。
【0046】
なお、上述した工程では酸化シリコン膜14の不要な部分14aをエッチングによって除去したが、該部分14aの厚さによっては、ウェット処理の際の水圧によって該部分14aを折ることにより除去してもよい。
【0047】
<窒化膜形成工程>
続いて、図15に示されるように、シリコン領域11上の全面に、窒化シリコン膜16を形成する。この工程では、側面12a上の酸化シリコン膜14、および他の側面12b〜12dを少なくとも覆うように窒化シリコン膜16を形成する。これにより、反射防止膜としての窒化シリコン膜16が側面12b〜12dに形成され、同時に、半透過反射膜13の一部を構成する窒化シリコン膜16が酸化シリコン膜14上に形成される。なお、この工程では、酸化シリコン膜14上および側面12b〜12d上に窒化シリコン膜16を均一に形成する為に、高温処理の減圧化学気相成長法(LP−CVD)を用いて窒化シリコン膜16を形成することが好ましい。
【0048】
以上に説明した方法によって、第1の板状部材10が好適に作製される。一方、第2の板状部材20のうち静電アクチュエータ30以外の部分は、例えば次のようにして作製される。まず、SOI基板を準備する。このSOI基板のシリコン層の表面上に、酸化シリコン膜を形成する。次に、この酸化シリコン膜をエッチングすることにより、入射鏡21の傾斜した鏡面に対応する開口と、出射鏡24の傾斜した鏡面に対応する開口とを形成する。そして、SOI基板のシリコン層上の全域にわたって、窒化シリコン膜を形成する。この窒化シリコン膜をエッチングすることにより、入射鏡21、固定反射鏡22、可動反射鏡23、及び出射鏡24にそれぞれ対応する開口を形成する。
【0049】
続いて、窒化シリコン膜及び酸化シリコン膜を介して、シリコン層に対しドライエッチングを施す。このとき、SOI基板の絶縁層が露出するまでシリコン層をエッチングする。これにより、シリコン層において、入射鏡21、固定反射鏡22、可動反射鏡23、及び出射鏡24が形成される。そして、シリコン層の露出した側面を酸化シリコン膜によって保護したのち、窒化シリコン膜を除去する。このとき、例えば熱リン酸等を用いて酸化シリコン膜を残しつつ選択的に窒化シリコン膜をエッチングする。これにより、入射鏡21及び出射鏡24の傾斜した鏡面に対応する酸化シリコン膜の開口が再び現れ、当該部分のシリコン層が露出することとなる。その後、露出したシリコン層に対してウェットエッチングを施す。このとき、例えばアルカリエッチングによりシリコン層の露出部分を異方性エッチングする。これにより、入射鏡21及び出射鏡24の傾斜した鏡面がシリコン層に形成される。
【0050】
続いて、酸化シリコン膜を除去し、入射鏡21、固定反射鏡22、可動反射鏡23、及び出射鏡24の各鏡面上に金属膜26を形成する。まず、SOI基板の部品形成面を覆うようにシャドウマスクを配置する。このシャドウマスクには、入射鏡21、固定反射鏡22、可動反射鏡23、及び出射鏡24のそれぞれにおいて鏡面となる部分を全て含むような一つの大きな開口が形成されている。そして、このシャドウマスクを介して金属材料を物理蒸着することにより、上記各鏡面上に金属膜26を形成する。このとき、金属膜26の形成方法としては、エネルギーの高いスパッタ方式の他、抵抗蒸着やEB蒸着が好適である。こうして、第2の板状部材20が好適に作製される。
【0051】
図16は、第1の板状部材10と第2の板状部材20とを相互に貼り合わせる様子を模式的に示す斜視図である。この工程では、部品形成面10aと主面20aとが対向するように、且つ、第1の板状部材10の光透過性光学部品12と、第2の板状部材20の入射鏡21、固定反射鏡22、可動反射鏡23、及び出射鏡24とが図7に示された位置関係となるように、第1及び第2の板状部材10,20を相互に貼り合わせる。このとき、第1の板状部材10の周縁部10c、及び、第2の板状部材20の周縁部20cのそれぞれにアライメントマーク17,27を形成し、図17に示されるように、これらのアライメントマーク17,27が一致するように第1及び第2の板状部材10,20を位置合わせした後に、周縁部10c,20cを互いに接合するとよい。また、第1及び第2の板状部材10,20の接合方法としては、直接接合させる方法、半田を介して接合させる方法、或いは樹脂を介して接合させる方法などが好適である。
【0052】
以上に説明した、本実施形態に係る光モジュール及びその製造方法による効果について、MEMS技術を用いた一般的な光モジュールが抱える課題とともに説明する。
【0053】
MEMS技術によれば、半導体フォトリソグラフィ技術を用いた微細且つ高精度な加工が可能であり、光を波として処理するような光干渉計や回折格子を有する光モジュールを好適に作製することができる。特に、シリコン基板やSOI基板を用いたMEMS加工では、シリコンが適度な弾性を有することから、機械的特性が良く信頼性が高いセンサやアクチュエータを作製することができ、また、シリコン結晶の異方性を利用した斜面の形成や、ボッシュプロセスなどを用いた深いトレンチの形成が可能である。このため、MEMS技術は、加速度センサ、圧力センサ、プロジェクタの画素ミラー(デジタルミラーデバイス等)、FTIR(Fourier TranformInfrared Spectrometer)分光器の為の光干渉計などを製造する為に利用される。特に、光干渉計については幅広い応用が可能であり、FTIRだけでなく、OCT(Optical Coherent Tomography)や、膜厚測定、表面粗さ測定などへの応用が可能であり、且つ、これらの計測器を小型に構成することができる。
【0054】
しかしながら、シリコン基板等にMEMS加工を行って種々の光モジュールを作製する場合、以下に示すような課題が存在する。
(1)ビームスプリッタといった光透過性光学部品における光利用効率が低い。
(2)反射鏡を形成するためにシャドウマスクによる金属膜の形成を行う場合、他の光学部品に金属が付着することを避ける為に他の光学部品を反射鏡から離して配置する必要があるので、これらの距離(すなわち光路長)が長くなってしまう。
(3)ビームスプリッタといった光透過性の光学部品と、静電アクチュエータといった導電性部品とが光モジュール内に混在している場合、導電性部品の電気伝導性を高めるためにシリコンの不純物濃度を大きくすると、光透過性の光学部品の光吸収が大きくなってしまい、光利用効率が低下する。逆に、光透過性の光学部品の光吸収を抑えるためにシリコンの不純物濃度を小さくすると、導電性部品の電気伝導性が小さくなって良好な動作を確保できない。このように、光透過性の光学部品と導電性部品との相反する要求を満足することができない。
以下、これらの課題(1)〜(3)について、詳細に説明する。
【0055】
(1)光透過性光学部品における光利用効率が低い
図18は、光透過性光学部品の一例として、干渉光学系等に用いられるビームスプリッタ100を模式的に示す平面図である。このビームスプリッタ100は、半透過反射面101、光反射面103、及び光透過面104を有する。ここで、例えば波長1μm帯でのシリコンの屈折率は約3.5なので、シリコン表面におけるフレネル反射の反射率は約30%となる。すなわち、半透過反射面101に到達した光La1の30%は、半透過反射面101において反射する。なお、この反射した光La2は、図示しない可動反射鏡によって反射されて半透過反射面101へ戻り、そのうち70%が半透過反射面101を透過して光透過面104に到達する。また、光La1のうち残りの70%(La3)は、半透過反射面101からビームスプリッタ100に入射し、光反射面103で反射したのち、半透過反射面101に戻る。半透過反射面101に戻った光La3の30%が半透過反射面101において再び反射し、光透過面104に到達する。そして、光透過面104に到達した光La2及びLa3の各70%が、光透過面104からビームスプリッタ100の外部へ出射する。
【0056】
しかしながら、図18に示されたビームスプリッタ100の半透過反射面101における反射率(30%)は、光干渉計としては理想的な値ではない。光干渉計において、最終的に取り出される干渉光の振幅Aは、半透過反射面101における反射率をrとすると、次の数式(1)によって表される。
【数1】
この数式(1)によれば、rが0.5(すなわち反射率50%)であるときに振幅Aが最大値(0.5)となる。これに対し、rが0.3(すなわち反射率30%)であるときには、Aは0.41となり、光利用効率が20%程度小さくなる。更に、ビームスプリッタ100から光La2及びLa3が出射する際にも30%の損失が生じるので、最終的な光利用効率は、41%×70%=28.7%にまで小さくなる。なお、この計算では光反射面103における反射率を100%としているが、光反射面103に金属膜を製膜できない場合には、光利用効率は更に低くなる。
【0057】
このような光利用効率の低さは、シリコンの波長分散に対する補償によって更に顕著となる。シリコンからなる光透過性光学部品の内部を透過する光の光路長は、その光の波長によって異なる。例えば、光透過性光学部品を透過する光の波長が1μm〜1.7μmの範囲内である場合、シリコンからなる光透過性光学部品の屈折率は、3.5±0.04程度の範囲内で波長に応じて変化する。ここで、図18に示されたビームスプリッタ100を例にとって説明する。光La1〜La3のビーム幅を150μmと仮定すると、光La2及びLa3が光反射面103に遮られることなく光透過面104に向けて進む為には、半透過反射面101と光反射面103との間の光路の長さが少なくとも360μm程度必要となる。そして、光La2はこの光路を往復するので、その間の光La2の伝搬距離は720μm程度となる。結局、上記波長範囲において、720μm×±0.04=±29μm、すなわち光La2の波長毎の等価光路長に最大58μmのズレが生じてしまい、干渉光像を劣化させてしまう。なお、複素フーリエ変換を使用すれば、位相のずれ(光路長のずれと等価である)を算出できるが、アポタイジング補正等の必要性が増し、分解能劣化に繋がる為、好ましくない。
【0058】
このような理由から、波長分散を補償するための光学部材が設けられる。図19は、波長分散を補償するための光学部材を有する干渉光学系の構成例を示す平面図である。図19に示されるように、この干渉光学系120は、ビームスプリッタ121と、固定反射鏡122と、固定反射鏡122の前に設けられたシリコン製の波長分散補償部材123と、可動反射鏡124とを備えている。ビームスプリッタ121の一側面121aは光分岐面として利用され、別の側面121bは光透過面として利用される。このビームスプリッタ121の側面121aに光Lb1が入射すると、この光Lb1の一部(30%)であるLb2は側面121aにて反射し、波長分散補償部材123の側面123aを通って固定反射鏡122に達する。この光Lb2は、固定反射鏡122において反射し、波長分散補償部材123の側面123aを再び通って側面121aに戻る。一方、光Lb1の他の一部(70%)であるLb3は側面121aを透過し、側面121bから出射して可動反射鏡124に達する。この光Lb3は、可動反射鏡124において反射し、側面121bを再び通って側面121aに戻る。側面121aに戻った光Lb2及びLb3は、側面121bから外部へ向けて出射する。
【0059】
図19に示された干渉光学系120によれば、光Lb2の光路長と、光Lb3の光路長とを等しくすることによって、上述した波長分散を補償することが可能となる。しかしながら、このように波長分散補償の為の光学部材(波長分散補償部材123)を設けると、光が通過する光透過面の数が増し、それらの光透過面を通過する毎に損失が発生するので、光利用効率は更に低下してしまう。例えば、図19に示された干渉光学系120では、光利用効率は
【数2】
となってしまう。
【0060】
以上に述べたような課題は、光透過面に反射防止膜(ARコート)を設け、光分岐面に半透過反射膜を設けることによって軽減される。例えば、図19に示された干渉光学系120の側面121b及び123aに反射率5%の反射防止膜を形成し、側面121aに反射率50%の半透過反射膜を形成した場合、光利用効率は次のように大幅に改善される。
【数3】
このような反射防止膜は、例えば窒化シリコン膜といった誘電体膜を、CVD等を用いて光透過面上に製膜することによって好適に作製される。また、半透過反射膜は、例えば酸化シリコン膜と窒化シリコン膜とを、CVD等を用いて光分岐面上に積層することによって作製される。しかしながら、MEMS技術によってこのような干渉光学系を作製する場合、シリコン基板やSOI基板をエッチングして形成された光透過性光学部品に反射防止膜や半透過反射膜を製膜することとなる。MEMS技術では、他に金属膜を蒸着する工程など種々の工程が混在するので、従来のように一枚の基板から干渉光学系を作製すると、様々な工程上の制約が生じ、また工程が複雑になってしまう。
【0061】
(2)シャドウマスクによる金属膜の形成のために、光学部品間の距離が長くなってしまう
図20は、或る干渉光学系においてシャドウマスクを用いて金属膜を製膜する様子を示す断面図である。図20には、製膜対象の光反射面であるシリコン領域140の側面140aと、製膜対象ではない光透過面(或いは半透過反射面)であるシリコン領域140の側面140bとが示されている。側面140aに金属膜142を製膜する際、シリコン領域140上にはシャドウマスク144が配置される。このシャドウマスク144には開口144aが形成されており、ターゲット146から発した金属材料は、この開口144aを介して限定的にシリコン領域140上へ飛散する。
【0062】
通常、このようなシャドウマスクを用いた金属製膜では、製膜対象面とターゲットとが互いに対向するように配置される。しかし、MEMS技術を用いた干渉光学系では基板面に対して略垂直の光反射面に製膜する必要があるので、図20に示されるように、ターゲット146とシャドウマスク144との距離D1を、従来の距離D2と比較して短くすることにより、金属粒子の飛散方向の横方向成分を大きくする必要がある。したがって、製膜対象ではない側面140bに金属が付着して光透過率が低下することを回避するために、側面140aと側面140bとの距離を長くする必要が生じる。このことは、光反射面と光透過面(或いは半透過反射面)との間の光路長が長くなることを意味する。
【0063】
多くの光モジュールにおいて、光学部品間の光路長が長くなることは好ましいことではない。例えば光干渉計では、半透過反射面において分岐された光が、途中で失われることなく光検出器まで到達しなければならない。そのためには、干渉光学系を光が伝搬する間、その光は平行光に近いことが望ましい。通常、分光器などにおいてコヒーレントでない光を用いる場合、入射ビーム径を数μm〜数十μmの範囲に損失なく絞り込むことは極めて難しい。一般的に、入射ビーム径の入射窓の大きさは数百μm以上であって、このような大きさの窓を通過したビームは様々な角度の広がり成分を有しており、同程度のビーム径の平行光を作り出すことは極めて困難である。
【0064】
なお、像倍率がmであるレンズ系では、ビーム径がm倍に拡大されるのと同時に、ビーム径の広がり角(開口率NA)が1/mに変換される。ビームを平行光とすることは、ビームの広がり角を小さくすることと同義であり、したがって像倍率mを大きくすれば良い。しかし、このことは、或るビーム径で一定の広がり角を有するビームを、更に小さなビーム径の平行光に変換することは不可能であることを意味する。例えば、コア径が200μmでNAが0.2である光ファイバから出射されたビームを、NAが0.002程度(1mmで2μm程度の広がり)の平行光に変換しようとすると、ビーム径は100倍の20mmとなってしまう。MEMS技術によって形成される光透過面や半透過光反射面の寸法は100μm〜数百μm程度なので、このように大きなビーム径では、光学系を伝搬中にそのそのほとんどが損失してしまう。以上のことから、MEMS技術によって作製されるような小さな光学系では、損失を少なくするために光路長を可能な限り短くすることが重要となる。
【0065】
(3)光透過性の光学部品と導電性部品との相反する要求を満足することができない
静電アクチュエータのような導電性部品を効率良く駆動するためには、導電性部品を構成するシリコンの電気抵抗が小さいほど好ましい。静電アクチュエータは、各電極に印加される電圧による静電気力によって動作するので、基本的に直流電流は流れない。しかし、交流電流は流れるので、各電極を構成するシリコンの電気抵抗が大きい場合、電力が熱に変換されて失われる。また、電気抵抗値が大きいと、静電アクチュエータの応答特性の時定数が大きくなり、動作速度が遅くなってしまう。これらのことから、静電アクチュエータを構成するシリコンの電気抵抗は低いほど良い。換言すれば、静電アクチュエータを構成するシリコンの不純物濃度は高いほど良い。
【0066】
一方、ビームスプリッタのような光透過性の光学部品では、シリコンの不純物濃度は小さいほど良い。不純物を含まない純粋なシリコン単結晶は、1μm以上の波長域では少なくとも100μm程度の厚さまでは極めて高い透明度を有する。しかし、不純物濃度が高いと、不純物による吸収や散乱が生じ、透過光に損失が発生する。
【0067】
このように、光透過性の光学部品と導電性部品とには、シリコンの不純物濃度といった点において互いに相反する要求がある。しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載された光モジュールでは、一枚の基板からこれらの部品を作成しているので、これらの要求を同時に満足することは難しい。
【0068】
以上に述べた課題(1)〜(3)に対し、本実施形態による光モジュール及びその製造方法では、図1〜図5に示されたように、光透過性光学部品12と光反射性光学部品(入射鏡21、固定反射鏡22、可動反射鏡23、及び出射鏡24)とが、それぞれ別の板状部材10,20に形成されている。したがって、これらの光学部品をそれぞれの板状部材10,20に形成する際、例えば不純物濃度といった基板の特性を、各光学部品に最適な特性に合わせることができる。例えば、光透過性光学部品12が形成される第1の板状部材10のシリコン領域11には不純物を添加せずに光の吸収を抑制し、また可動反射鏡23が形成される第2の板状部材20のシリコン層25には、適量の不純物を添加して良好な導電性を確保し、可動反射鏡23を駆動する静電アクチュエータ30といった導電性部品の電気的特性を良好にできる。
【0069】
また、本実施形態による光モジュール及びその製造方法によれば、光透過性光学部品12と光反射性光学部品(入射鏡21、固定反射鏡22、可動反射鏡23、及び出射鏡24)とを各板状部材10,20に個別に形成することができるので、第2の板状部材20において金属膜26を蒸着した後に第1の板状部材10と第2の板状部材20とを接合すれば良く、金属膜26の蒸着の際に光透過性光学部品12に金属粒子が付着することを確実に防止できる。したがって、第2の板状部材20の鏡21〜24と光透過性光学部品12とを相互に近づけて配置することができ、光利用効率を向上することができる。
【0070】
また、本実施形態による光モジュール及びその製造方法によれば、光透過性光学部品12と光反射性光学部品とを各板状部材10,20に個別に形成することができる。したがって、例えば、第1の板状部材10では、光透過性光学部品12の各側面12a〜12dに対し、酸化シリコン膜14及び窒化シリコン膜16からなる半透過反射膜13や、窒化シリコン膜16からなる反射防止膜を形成する一方、第2の板状部材20では、静電アクチュエータ30といった複雑な形状の部品を形成することができる。このように、MEMS技術によって形成される種々の光学部品の形成工程を完全に分離し並行して行うことができるので、工程上の制約を軽減し、また工程を簡易化することができる。
【0071】
なお、本実施形態では、第2の板状部材20の光反射性光学部品(入射鏡21、固定反射鏡22、可動反射鏡23、及び出射鏡24)はシリコン層25をエッチングすることにより形成されている。シリコンはエッチングによる加工が容易なので、これによって光反射性光学部品を容易に形成することができる。なお、これらの光学部品は、シリコンに限らず他の半導体材料からなる層をエッチングすることにより形成されてもよい。
【0072】
また、本実施形態のように、第2の板状部材20は、可動反射鏡23を駆動する静電アクチュエータ30を有してもよい。前述したように、本実施形態では不純物濃度を各板状部材10,20毎に最適化することができる。したがって、本実施形態のように第2の板状部材20が静電アクチュエータ30を有する場合であっても、第2の板状部材20に適量の不純物を添加して導電性を確保しつつ、第1の板状部材10には不純物を添加せずに光透過性光学部品12での光の吸収を抑えることができる。
【0073】
また、本実施形態のように、出射鏡24が、光透過性光学部品12を透過した光を第1の板状部材10へ向けて反射し、第1の板状部材10が該光を透過してもよい。これにより、光透過性光学部品12を透過した干渉光を光モジュールの外部へ好適に出力することができる。
【0074】
また、本実施形態のように、第1の板状部材10のシリコン領域11の比抵抗は、第2の板状部材20のシリコン層25の比抵抗より大きいことが好ましい。このような場合、シリコン領域11の不純物濃度がシリコン層25の不純物濃度より小さくなるので、光透過性光学部品12における光の吸収を効果的に抑制することができる。
【0075】
また、本実施形態では、光透過性光学部品12において、シリコン領域11をエッチングすることにより形成された複数の側面12a〜12dのうち一つの側面12aに半透過反射膜13が設けられ、他の側面に反射防止膜(窒化シリコン膜16)が設けられている。これにより、光透過性光学部品12としてビームスプリッタを好適に実現することができる。
【0076】
また、本実施形態のように、第1の板状部材10の周縁部10cと、第2の板状部材20の周縁部20cとには、第1及び第2の板状部材10,20の位置合わせの為の複数のアライメントマーク17,27をそれぞれ形成することが好ましい。これにより、第1の板状部材10と第2の板状部材20との相対角度のずれを低減し、光利用効率の低下を抑えることができる。
【0077】
図21は、第1の板状部材10と第2の板状部材20との位置ずれに起因する問題を説明するための図であって、第1の板状部材10の光透過性光学部品12と、第2の板状部材20の光反射性光学部品(入射鏡21、固定反射鏡22、可動反射鏡23、及び出射鏡24)との相対位置関係を示している。図21(a)は、入射鏡21、固定反射鏡22、可動反射鏡23、及び出射鏡24に対して光透過性光学部品12が角度変化無く平行にずれた場合について、本来の位置を実線で、位置ずれが生じた位置を一点鎖線で示している。また、図21(b)は、入射鏡21、固定反射鏡22、可動反射鏡23、及び出射鏡24に対する光透過性光学部品12の角度ずれが生じた場合について、本来の位置を実線で、位置ずれが生じた位置を一点鎖線で示している。
【0078】
通常、フリップチップボンディングにおける接合精度は、数μm〜10μm程度である。したがって、図21(a)に示されるような位置ずれでは、各鏡21〜24に到達する光の光軸が数μm〜10μm程度ずれるだけであり、各鏡21〜24が100μm〜1000μm程度の横幅を有する場合には、大きな問題にはならない。なお、各鏡21〜24の鏡面の法線方向への位置ずれについても、例えば可動反射鏡23の動作距離が100μm以上あれば、校正することが可能である。
【0079】
一方、図21(b)に示されるような角度ずれは大きな問題となる。例えば、干渉光学系全体の大きさ(例えば固定反射鏡22から出射鏡24までの距離)を3mmと仮定する。そして、光透過性光学部品12の両端の距離を1mmとし、フリップチップボンディングにおける接合精度を10μmとする。このとき、光透過性光学部品12の角度ずれは、最大でtan−1(0.02/1)=1.1°となる。固定反射鏡22へ進む被測定光L2の光路は、このような半透過反射面12aの角度ずれに起因して、次第に本来の光路から離れていく。この被測定光L2は、固定反射鏡22において反射し、反対側にある出射鏡24までの距離を進むので、仮に半透過反射面12aが干渉光学系の中央(すなわち固定反射鏡22及び出射鏡24から1.5mmの位置)にある場合、被測定光L2は、半透過反射面12aにおいて反射してから4.5mmの距離を伝搬することとなる。したがって、光透過性光学部品12の角度ずれに起因する出射鏡24での位置ずれは、4.5mm×tan(1.1°)=86μmとなる。
【0080】
更に、可動反射鏡23から反射した被測定光L3もまた、半透過反射面12aにおいて反射するときに角度ずれを生じる。この被測定光L3が出射鏡24に到達したときの位置ずれは、約30μmとなる。すなわち、出射鏡24における被測定光L2及びL3の位置ずれを合わせると110μm程度となり、出射鏡24の横幅に対して無視できない大きさとなる。
【0081】
このような課題に対し、本実施形態では、板状部材10,20の周縁部10c,20cに複数のアライメントマーク17,27を形成し、これらのアライメントマーク17,27を用いて周縁部10c,20cを互いに接合する。この場合、複数のアライメントマーク17,27間の距離(例えば3mm以上)を、光透過性光学部品12の両端の距離(例えば1mm)より長くすることができるので、フリップチップボンディングにおける接合精度(例えば10μm程度)が変わらない場合でも、第1の板状部材10と第2の板状部材20との相対角度のずれを低減することができる。したがって、各鏡21〜24(特に出射鏡24)における干渉光の位置ずれを少なくし、光利用効率の低下を抑えることができる。
【0082】
一例を挙げると、アライメントマーク同士の間隔が例えば5mmである場合、フリップチップボンディングにおける接合精度を10μmとすると、半透過反射面12aの角度ずれ、出射鏡24における被測定光L2及びL3の位置ずれ、並びに被測定光L2及びL3を合わせた位置ずれは、それぞれ以下のようになる。
半透過反射面12aの角度ずれ:tan−1(0.02/5)=0.23°
出射鏡24における被測定光L2の位置ずれ:4.5mm×tan(0.23°)=18μm
出射鏡24における被測定光L3の位置ずれ:1.5mm×tan(0.23°)=6μm
被測定光L2及びL3を合わせた位置ずれ:24μm
このように位置ずれを小さくすることができるので、出射鏡24などの横幅を広げること等によって容易に対応可能となる。
【0083】
なお、本実施形態では、第1の板状部材10の周縁部10cが部品形成面10aに対して厚さ方向にやや突出しており、また、第2の板状部材20の周縁部20cが、主面20aに対して厚さ方向に突出している。周縁部10c及び20cの形態はこれに限られるものではなく、例えば、周縁部10c及び20cのうち一方が突出しておらず、他方が大きく突出することによりこれらが互いに接するような形態であってもよい。特に、本実施形態のように第2の板状部材20がSOI基板から作製される場合には、絶縁層29をエッチングしてこれを除去することにより、周縁部20cにおいて支持基板28を露出させ、露出した支持基板28と第1の板状部材10の周縁部10cとを相互に接合することが好ましい。また、この場合、第1の板状部材10の光透過性光学部品12の上面を少しエッチングして周縁部10cの上面より低くしておくことにより、光透過性光学部品12と第2の板状部材20との接触を回避することが好ましい。
【0084】
(第1の変形例)
図22は、上記実施形態の第1変形例について説明するための図である。上記実施形態では、アライメントマーク17,27を板状部材10,20の周縁部10c,20cに形成しているが、図22(a)に示されるように、複数の板状部材10,20を作製するために使用されるウエハ50,60の周縁部のそれぞれに、アライメントマーク57,67を形成してもよい。なお、図22(a)に示されるウエハ50は、本変形例における第1のウエハであって、シリコン領域をエッチングすることにより形成された光透過性光学部品12をそれぞれ有する複数の領域を含んでいる。また、ウエハ60は、本変形例における第2のウエハであって、光反射性光学部品(入射鏡21、固定反射鏡22、可動反射鏡23、及び出射鏡24)を主面60a側に有する複数の領域61を含んでいる。
【0085】
本変形例では、まず、図22(a)に示されるように、ウエハ50,60の周縁部のそれぞれに、ウエハ50,60の位置合わせの為の複数のアライメントマーク57,67を形成する。そして、図22(b)に示されるように、複数のアライメントマーク57,67の位置が互いに一致するように、ウエハ50の光透過性光学部品12が形成された部品形成面50aと、ウエハ60の主面60aとを対向させる。この状態で、ウエハ50,60を互いに接合する(図22(c))。その後、この接合後のウエハを所定の切断ライン81に沿って切断し、板状部材10,20に対応する領域を切り出すことによって(図22(d))、光モジュール80が作製される。
【0086】
本変形例では、ウエハ50,60の周縁部にアライメントマーク57,67を形成するので、複数のアライメントマーク同士の距離を極めて長くすることができる。したがって、フリップチップボンディングにおける接合精度(例えば10μm程度)が変わらない場合でも、第1の板状部材10と第2の板状部材20との相対角度のずれを顕著に低減することができる。例えば、アライメントマーク57,67をそれぞれ130mm間隔で作成した場合、角度ずれはtan−1(0.02/130)=0.009°となり、殆ど無視できる大きさとなる。
【0087】
(第2の変形例)
図23は、上記実施形態の第2変形例について説明するための図である。上記実施形態では、アライメントマーク17,27を用いて第1及び第2の板状部材10,20を位置合わせしているが、第1及び第2の板状部材10,20の位置合わせの方法はこれに限られるものではない。例えば、本変形例では、第1の板状部材10の周縁部10cに突起10dを形成し、第2の板状部材20の周縁部20cに凹部20dを形成し、突起10dを凹部20dに挿入することによって第1及び第2の板状部材10,20の位置合わせを行う。
【0088】
第2の板状部材20の凹部20dは、静電アクチュエータ30や各鏡21〜24を形成するためのエッチング工程において、周縁部20cのシリコン層25を同時にエッチングすることにより好適に形成される。また、第1の板状部材10の突起10dは、光透過性光学部品12を形成するためのエッチング工程において、周縁部10cのシリコン領域11を同時にエッチングすることにより好適に形成される。このように、突起10d及び凹部20dは半導体プロセスを用いて形成可能であり、精度良く形成されることができる。
【0089】
なお、突起10dは、凹部20dに対して隙間無く嵌合しなくても良い。図24は、突起10dが凹部20dに挿入された状態において、板状部材10,20の厚さ方向から見た突起10d及び凹部20dの位置関係を示す断面図である。図24に示されるように、凹部20dの平面寸法が突起10dの平面寸法より大きい場合には、突起10dを挿入し易くなり、また、突起10dと凹部20dとの接触面を精度良く形成すれば、板状部材10,20相互の角度ずれを十分に小さくすることが可能である。なお、図24に示された態様では、突起10dと凹部20dとの接触面に沿った方向に位置ずれが生じるおそれがあるが、図21(a)を示して説明したように、このような平行方向のずれは大きな問題とはならない。勿論、突起10d及び凹部20dの該方向の寸法を合致させることによって位置決めを更に精度良く行っても良い。なお、本変形例では、突起10dを凹部20dに挿入したのち、周縁部10c及び20cを相互に樹脂止めして固定する。或いは、光モジュールを一回り大きなパッケージに収めて、第1の板状部材10と第2の板状部材20とが互いに外れないように固定してもよい。
【0090】
(第3の変形例)
上記実施形態では、静電アクチュエータ30を備える干渉光学系を例示したが、本変形例では、静電アクチュエータ30といった導電性部材を備えない光モジュールの例について説明する。本変形例に係る光モジュールは、未知の距離にある測定対象面からの反射光の干渉光を生成する。この干渉光は、測定対象面までの距離を算出する為に利用される。
【0091】
図25は、本変形例に係る第2の板状部材70の構成を示す平面図である。本変形例では、上記実施形態の可動反射鏡23に代えて、測定対象面へ向けて光を投射するための出射鏡71が、第2の板状部材70に形成されている。出射鏡71は、第2の板状部材70の主面に対して45°といった角度を有する傾斜面を有しており、該傾斜面上には金属膜26が蒸着されている。この出射鏡71は、半透過反射面12aから到達した光L3を、第2の板状部材70の主面の法線方向へ反射する。測定対象面において反射した光L3は、再び出射鏡71に戻り、半透過反射面12aにおいて反射したのち出射鏡24から干渉光L4として取り出される。
【0092】
本変形例のように、導電性部材を備えない光モジュールにおいても、上記実施形態において述べた効果と同様の効果を好適に得ることができる。すなわち、光反射性光学部品(入射鏡21、固定反射鏡22、出射鏡71、及び出射鏡24)と光透過性光学部品12とを互いに近づけて配置することができ、且つ、基板の特性に関する要求が光学部品によって相反する場合でもそれらの要求を満たすことができる。
【0093】
本発明による光モジュール及びその製造方法は、上述した実施形態及び各変形例に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上述した実施形態及び各変形例では、本発明を適用する光モジュールとしてマイケルソン干渉光学系を例示したが、本発明は、干渉光学系に限らず、光透過性光学部品および光反射性光学部品を備える様々な光学系に適用可能である。
【符号の説明】
【0094】
10…第1の板状部材、10a…部品形成面、10c…周縁部、11…シリコン領域、12…光透過性光学部品、12a〜12d…側面、13…半透過反射膜、14…酸化シリコン膜、16,18…窒化シリコン膜、17,27…アライメントマーク、19…窒化シリコン膜、20…第2の板状部材、20a…主面、20c…周縁部、21…入射鏡、22…固定反射鏡、23…可動反射鏡、24…出射鏡、25…シリコン層、26…金属膜、28…支持基板、29…絶縁層、30…静電アクチュエータ、50,60…ウエハ、57,67…アライメントマーク、L1〜L3…被測定光、L4…干渉光像。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン領域をエッチングすることにより形成された光透過性光学部品を有する第1の板状部材と、
前記光透過性光学部品を透過した光を反射する為の光反射性光学部品を主面上に有する第2の板状部材と
を備え、
前記第1の板状部材の前記光透過性光学部品が形成された部品形成面と、前記第2の板状部材の前記主面とが対向するように、前記第1及び第2の板状部材が互いに接合されており、
前記光透過性光学部品を透過する光の光路が、前記第1の板状部材の部品形成面及び前記第2の板状部材の前記主面に沿っている
ことを特徴とする、光モジュール。
【請求項2】
前記光反射性光学部品が、半導体領域をエッチングすることにより形成された面と、該面上に設けられた金属膜とを有することを特徴とする、請求項1に記載の光モジュール。
【請求項3】
前記光反射性光学部品が、半導体領域をエッチングすることにより形成された面を有し、該半導体領域がシリコンから成ることを特徴とする、請求項1に記載の光モジュール。
【請求項4】
前記光反射性光学部品が、前記主面から分離されて該主面に沿った方向に移動可能となっており、
前記第2の板状部材が、静電気力によって前記光反射性光学部品を駆動するアクチュエータ構造を更に有する
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光モジュール。
【請求項5】
光反射性光学部品が、前記光透過性光学部品を透過した光を前記第1の板状部材へ向けて反射し、前記第1の板状部材が該光を透過することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光モジュール。
【請求項6】
前記第1の板状部材の比抵抗が、前記第2の板状部材の比抵抗より大きいことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の光モジュール。
【請求項7】
前記第1の板状部材の周縁部と、前記第2の板状部材の周縁部とが互いに接合されており、
前記第1及び第2の板状部材の各周縁部には、前記第1及び第2の板状部材の位置合わせの為の複数のアライメントマークが形成されている
ことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の光モジュール。
【請求項8】
前記光透過性光学部品が、シリコン領域をエッチングすることにより形成された複数の面を有し、
前記複数の面のうち少なくとも一つの面には反射防止膜が設けられ、
前記複数の面のうち他の少なくとも一つの面には半透過反射膜が設けられている
ことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の光モジュール。
【請求項9】
シリコン領域をエッチングすることにより形成された光透過性光学部品を有する第1の板状部材の周縁部、及び、前記光透過性光学部品を透過した光を反射する為の光反射性光学部品を主面上に有する第2の板状部材の周縁部のそれぞれに、前記第1及び第2の板状部材の位置合わせの為の複数のアライメントマークを形成し、該複数のアライメントマークを用いて、前記第1の板状部材の前記光透過性光学部品が形成された部品形成面と前記第2の板状部材の前記主面とが対向するように前記第1及び第2の板状部材の周縁部を互いに接合することを特徴とする、光モジュールの製造方法。
【請求項10】
シリコン領域をエッチングすることにより形成された光透過性光学部品をそれぞれ有する複数の領域を含む第1のウエハの周縁部、及び、前記光透過性光学部品を透過した光を反射する為の光反射性光学部品を主面上に有する複数の領域を含む第2のウエハの周縁部のそれぞれに、前記第1及び第2のウエハの位置合わせの為の複数のアライメントマークを形成し、該複数のアライメントマークを用いて、前記第1のウエハの前記光透過性光学部品が形成された部品形成面と前記第2のウエハの前記主面とが対向するように前記第1及び第2のウエハを互いに接合することを特徴とする、光モジュールの製造方法。
【請求項1】
シリコン領域をエッチングすることにより形成された光透過性光学部品を有する第1の板状部材と、
前記光透過性光学部品を透過した光を反射する為の光反射性光学部品を主面上に有する第2の板状部材と
を備え、
前記第1の板状部材の前記光透過性光学部品が形成された部品形成面と、前記第2の板状部材の前記主面とが対向するように、前記第1及び第2の板状部材が互いに接合されており、
前記光透過性光学部品を透過する光の光路が、前記第1の板状部材の部品形成面及び前記第2の板状部材の前記主面に沿っている
ことを特徴とする、光モジュール。
【請求項2】
前記光反射性光学部品が、半導体領域をエッチングすることにより形成された面と、該面上に設けられた金属膜とを有することを特徴とする、請求項1に記載の光モジュール。
【請求項3】
前記光反射性光学部品が、半導体領域をエッチングすることにより形成された面を有し、該半導体領域がシリコンから成ることを特徴とする、請求項1に記載の光モジュール。
【請求項4】
前記光反射性光学部品が、前記主面から分離されて該主面に沿った方向に移動可能となっており、
前記第2の板状部材が、静電気力によって前記光反射性光学部品を駆動するアクチュエータ構造を更に有する
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光モジュール。
【請求項5】
光反射性光学部品が、前記光透過性光学部品を透過した光を前記第1の板状部材へ向けて反射し、前記第1の板状部材が該光を透過することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光モジュール。
【請求項6】
前記第1の板状部材の比抵抗が、前記第2の板状部材の比抵抗より大きいことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の光モジュール。
【請求項7】
前記第1の板状部材の周縁部と、前記第2の板状部材の周縁部とが互いに接合されており、
前記第1及び第2の板状部材の各周縁部には、前記第1及び第2の板状部材の位置合わせの為の複数のアライメントマークが形成されている
ことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の光モジュール。
【請求項8】
前記光透過性光学部品が、シリコン領域をエッチングすることにより形成された複数の面を有し、
前記複数の面のうち少なくとも一つの面には反射防止膜が設けられ、
前記複数の面のうち他の少なくとも一つの面には半透過反射膜が設けられている
ことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の光モジュール。
【請求項9】
シリコン領域をエッチングすることにより形成された光透過性光学部品を有する第1の板状部材の周縁部、及び、前記光透過性光学部品を透過した光を反射する為の光反射性光学部品を主面上に有する第2の板状部材の周縁部のそれぞれに、前記第1及び第2の板状部材の位置合わせの為の複数のアライメントマークを形成し、該複数のアライメントマークを用いて、前記第1の板状部材の前記光透過性光学部品が形成された部品形成面と前記第2の板状部材の前記主面とが対向するように前記第1及び第2の板状部材の周縁部を互いに接合することを特徴とする、光モジュールの製造方法。
【請求項10】
シリコン領域をエッチングすることにより形成された光透過性光学部品をそれぞれ有する複数の領域を含む第1のウエハの周縁部、及び、前記光透過性光学部品を透過した光を反射する為の光反射性光学部品を主面上に有する複数の領域を含む第2のウエハの周縁部のそれぞれに、前記第1及び第2のウエハの位置合わせの為の複数のアライメントマークを形成し、該複数のアライメントマークを用いて、前記第1のウエハの前記光透過性光学部品が形成された部品形成面と前記第2のウエハの前記主面とが対向するように前記第1及び第2のウエハを互いに接合することを特徴とする、光モジュールの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2012−240129(P2012−240129A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109686(P2011−109686)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
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