説明

光モジュール

【課題】 光路変換用の導光部材のハウジングへの取付けと位置決めが容易であり、且つ光の結合損失の小さい光モジュールを提供する。
【解決手段】 導光部材10は、発光素子または受光素子である光学素子3に対向する第1の端面11と、光ファイバ23に対向する第2の端面12を有し、第1の端面11に直交する第1の端面中心線O1と、第2の端面12に直交する第2の端面中心線O2とが直交する湾曲部14を有している。導光部材10には、第1の端面中心線O1に向けて突出する位置決め部15が一体に形成されている。導光部材10をハウジングの収納空間7aに向けてY1方向へ挿入することで、簡単に組み立てることができ、位置決め部15を用いて導光部材10を位置決めすることができる。また、導光部材10は湾曲部14を有しているため、光の伝播損出も少ない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子を有して光ファイバへ光信号を与える発光モジュールとして使用され、または光ファイバ内を伝播した光信号を受光する受光素子を備えた受光モジュールとして使用される光モジュールに係り、特に光の向きを変える導光部材が設けられた光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
発光モジュールや受光モジュールなどの光モジュールは、ハウジング内に発光素子や受光素子が設けられるとともに、光ファイバの端部がハウジングに保持されて、発光素子または受光素子と光ファイバとの間で光の授受が行えるようにしている。
【0003】
この種の光モジュールは、発光素子や受光素子の光軸の向きに対して光ファイバの軸方向が直交し、または斜めに向けられて使用されることがある。この場合に、端部がハウジングに保持された光ファイバをハウジングの前方で湾曲させて引き出すことが必要になる。しかし、光ファイバを曲げたときの曲率半径を小さくするには限界があるため、ハウジングの前方のスペースが狭い場合には光ファイバを曲げて配置することができなくなる。
【0004】
以下の特許文献1,2,3には、発光素子や受光素子の光軸の向きに対して光ファイバの軸方向を直交させる光路変換機能を有する光モジュールが開示されている。
【0005】
特許文献1に記載された光モジュールは、発光型半導体レーザに対向する位置に板状の光導波路の下面が対向している。光導波路には屈折率が高いコアが挿入されており、光ファイバは端面が前記コアの端面に対向するようにして光導波路に保持される。光導波路の端面は傾斜面となっており、前記コアはこの傾斜面まで延びている。発光型半導体レーザから発せられた光は、下面から光導波路内に入り、前記傾斜面で反射されてコアに入射し、さらに光ファイバに与えられる。
【0006】
特許文献2に記載された光モジュールは、板状の光結合部品の下面に受光素子が対向している。光結合部材の内部に光ファイバが保持され、光結合部材の端面は、受光素子と光ファイバの端面の双方に向く凹面鏡部となっている。光ファイバのコアから出た光は、前記凹面鏡部で反射されて受光素子に与えられる。
【0007】
特許文献3には光路変換機能を有する光学素子が開示されている。この光学素子は、互いに直角の向きの平坦面である光入射面および光出射面と、光入射面と光出射面との間をむすぶ曲面形状の光路変換面とを有している。光入射面に投光素子が対向し、光出射面に光ファイバのコアの端面が対向しており、投光素子から発せられて光入射面から光学素子の内部に入射した光が、光路変換面で反射されて、光出射面から光ファイバのコアに与えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−133160号公報
【特許文献2】特開2001−51162号公報
【特許文献3】特開2003−307603号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記特許文献1に開示されている光導波路は、発光型半導体レーザが対向する下面に、コアよりも屈折率の低いクラッド層が現れている。そのため、クラッド層に入射した光がコアとの境界面で反射して戻りやすく、光の利用効率が低下するのみならず、コアで反射された光が発光型半導体レーザに戻って、発光型半導体から発せられる光信号にノイズが重畳しやすい。また、光導波路の端面の傾斜面と発光型半導体レーザとの距離や対向位置をきわめて高精度に位置決めする必要があり、組立作業が煩雑である。
【0010】
前記特許文献2に記載されたものは、光ファイバから出た光を凹面鏡部で集光させて受光素子に与えることができるが、発光素子を用いた場合に、発光素子から発せられた光を光ファイバのコアに集光させて入射させるのは難しい。また、受光素子を凹面鏡部の焦点位置に高精度に合わせることが必要であるため、組立作業が煩雑である。
【0011】
前記特許文献3に記載された光学素子は、光入射面と光出射面および光路変換面とで扇形状に形成されているため、光学素子が大型の部品となり、小型の光モジュールには搭載しづらい。また、投光素子が対向する光入射面と光ファイバ光出射面が細長いために、投光素子と光ファイバとを、光入射面と光出射面のどの位置に対向させるべきかを判断するのが難しく、投光素子と光ファイバを動かしながら光の伝達効率が最大になる箇所を探すなどの調整作業が必要となって、光モジュールの組立作業が煩雑になる。
【0012】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、発光素子または受光素子と光ファイバとの間の光の伝達効率を高くでき、また導光部材の装着位置の位置決め作業が容易である光モジュールを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、ハウジングと、前記ハウジングに設けられた受光素子または発光素子と、前記ハウジングに収納された透光材料製の導光部材と、前記ハウジングに設けられて光ファイバの端部を保持するファイバ保持部とを有する光モジュールにおいて、
前記導光部材は、前記受光素子または前記発光素子に対面する第1の端面と前記光ファイバの端面と対向する第2の端面とを有し、前記第1の端面の図心を通って前記第1の端面と直交する第1の端面中心線と、前記第2の端面の図心を通って前記第2の端面と直交する第2の端面中心線とが180度未満の角度を成しているとともに、前記第1の端面と前記第2の端面との間に、断面の図心を通る内部中心線が曲線となる湾曲部が設けられており、
前記ハウジングに収納空間が設けられ、前記収納空間は、底部に前記発光素子または前記受光素子が配置され、前記底面に対向する位置に挿入口が開口しており、前記導光部材は、前記第1の端面中心線が前記底部に向かうように前記挿入口から前記収納空間に挿入されて、前記ハウジングに位置決めされて保持されていることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の光モジュールは、導光部材に内部中心線が曲線となる湾曲部が設けられているため、第1の端面と第2の端面との間を伝播する光の光路を損失の少ない状態で曲げることができる。また、導光部材は、その第1の端面中心線に沿って一方向から収納空間に挿入することでハウジングに位置決めすることができるため、組立作業が容易である。また挿入状態で導光部材がハウジング内で位置決めされるため、発光素子または受光素子と導光部材とを最適な位置に対向させ、光ファイバと導光部材とを最適な位置に対向させることができる。
【0015】
本発明は、前記導光部材には、前記第1の端面中心線と平行に延びる位置決め部が一体に形成されており、前記位置決め部が、前記ハウジングの内部に当接して、前記導光部材の前記底部に向かう方向の位置決めおよび前記方向と直交する向きの位置決めが行われる。
【0016】
この場合に、本発明は、前記位置決め部に凹部または穴部が形成され、前記ハウジングの内部に前記凹部または前記穴部に嵌合する突部が形成されており、前記導光部材を、前記第1の端面中心線が前記底部に向かうように前記収納空間に挿入したときに、前記凹部または穴部が前記突部と嵌合する構造が好ましい。
【0017】
上記本発明は、導光部材を、第1の端面中心線が底部に向かうように前記収納空間に挿入するという簡単な組立て作業で、位置決め部をハウジングの内部に当接させて、導光部材を最適な収納位置に位置決めすることができる。
【0018】
本発明は、前記湾曲部の端部を始端として、前記端部の断面と直交する向きの前記湾曲部の全長をLとしたときに、前記始端から前記位置決め部までの距離が、前記長さLの1/8以上で3/8以下であることが好ましい。
【0019】
位置決め部を前記範囲に配置すると、導光部材の内部を伝播する光が位置決め部によって損失を受ける確率を高くできる。
【0020】
本発明は、前記ハウジングの前記挿入口を塞ぐ蓋体が設けられており、前記導光部材が前記収納空間に挿入されて、前記蓋体によって前記導光部材が抜け止めされていることが好ましい。
【0021】
上記蓋体を設けることで、ハウジングの収納空間内に導光部材を最適な位置に位置決めさせて保持させることができる。
【0022】
さらに、本発明は、前記湾曲部での前記導光部材の断面の形状は、外周側の表面が、前記内部中心線と直交する向きに曲率を有する曲面であり、内周側の表面が、前記内部中心線と直交する向きに曲率を有していないことが好ましい。
【0023】
導光部材の湾曲部の断面を上記形状にすると、導光部材の湾曲部の内部における光伝播の損失を少なくしやすい。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、発光素子または受光素子の光軸と、光ファイバの軸中心との間に180度未満の角度を設けた場合であっても、導光部材内での光の伝播損失を少なくできる。
【0025】
また、ハウジングに対する導光部材の組み付け作業が容易であり、導光部材をハウジング内に高精度に位置決めして保持させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の光モジュールを光ファイバとの接合側から正面図、
【図2】図1に示す光ファイバをII−II線で切断したたて断面図、
【図3】導光部材と位置決め部の構造の詳細を示す部分斜視図、
【図4】導光部材と位置決め部の変形例の詳細を示す部分斜視図、
【図5】導光部材と位置決め部の変形例の詳細を示す部分斜視図、
【図6】導光部材の側面図、
【図7】位置決め部の位置と光の結合損失との関係を示す線図、
【図8】導光部材の湾曲部の断面形状を示す説明図、
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1に示す光モジュール20は、共通のハウジング1を有して第1のモジュール21と第2のモジュール22とが一体に構成されている。第1のモジュール21と第2のモジュール22の一方が発光モジュールであり、他方が受光モジュールである。図2は第1のモジュール21を断面図で示しているが、第1のモジュール21と第2のモジュール22は、内部に備えているのが発光素子か受光素子かの違いがあるが、それ以外の基本的な構造は同じである。よって、以下では第1のモジュール21の構造のみを説明する。
【0028】
図2に示すように、ハウジング1は、基台部2を有しており、基台部2の表面に光学素子3が実装されている。第1のモジュール21が発光モジュールであるときは、光学素子3が発光ダイオードや半導体レーザなどの発光素子であり、第1のモジュール21が受光モジュールであるときは、光学素子3がフォトダイオードなどの受光素子である。基台部2には端子5,5が設けられており、この端子5,5を介して光学素子3が外部の回路と接続される。
【0029】
基台部2の表面には前記光学素子3を覆う被覆層4が形成されており、この被覆層4は透光性材料の合成樹脂材料で形成されている。例えば、被覆層4は環状ポリオレフィンなどで形成されている。本明細書での透光性材料とは、全光線透過率が90%以上の透明またはほぼ透明な材料を意味する。
【0030】
ハウジング1は、基台部2の上に、前記被覆層4を収納するように下ハウジング部6が固定されており、下ハウジング部6の上に中央ハウジング部7が設けられ、中央ハウジング部7は、その下部が下ハウジング部6の内部に隙間なく挿入されている。下ハウジング部6に、板ばね材料で形成された掛止ばね8,8の基部が固定されており、この掛止ばね8,8が中央ハウジング部7に掛止されて、中央ハウジング部7が下ハウジング部6に固定されている。
【0031】
中央ハウジング部7の上部には、蓋体である上ハウジング部9が固定されている。中央ハウジング部7の内部に、縦方向(Y1−Y2方向)に延びる収納空間7aが形成されており、前記上ハウジング部9の内部に位置決め空間9aが形成されている。前記光学素子3は、収納空間7aのY2側の底部7bの開口部に対向している。前記収納空間7aおよび位置決め空間9aの内部に導光部材10が収納されている。
【0032】
中央ハウジング部7に上ハウジング部9が固定されていない状態で、中央ハウジング部7の収納空間7aのY1側の挿入口7cから導光部材10がY1方向へ挿入されて、導光部材10が収納空間7aの内部で位置決めされる。その後、中央ハウジング部7の上に蓋体である上ハウジング部9が接着やねじ止めなどの手段で固定され、このとき、導光部材10の上部が上ハウジング部9に形成された位置決め空間9a内に保持されてさらに位置決めされる。
【0033】
内部に導光部材10を収納して、中央ハウジング部7と上ハウジング部9とが固定された状態で、中央ハウジング部7の下部が、下ハウジング部6の内部に挿入され、前記掛止ばね8,8で、中央ハウジング部7が固定される。
【0034】
図2に示すように、中央ハウジング部7の上部には、光ファイバ23の端部を保持するファイバ保持部7dが一体に形成されている。ファイバ保持部7dの内部の保持穴7eは、前記上ハウジング部9の内部の位置決め空間9a内に連通している。
【0035】
導光部材10は透光性材料の合成樹脂材料で形成されている。前記合成樹脂材料は、例えば環状ポリオレフィンであり、屈折率はほぼ1.5であり、光ファイバ23のコア部と同等である。また、光学素子3を覆っている被覆層4も、導光部材10と同等の屈折率であることが好ましい。
【0036】
図2と図6に示すように、導光部材10は、第1の端面11と第2の端面12を有している。中央ハウジング部7の下部が下ハウジング部6に挿入され掛止ばね8,8で固定されたときに、中央ハウジング部7の収納空間7a内に保持されている導光部材10の前記第1の端面11が、被覆層4の上面に当接し、第1の端面11が光学素子3に対向する。図2の状態では、導光部材10の第2の端面12が、ファイバ保持部7dの保持穴7e内に望んでいる。ファイバ保持部7dに光ファイバ23の端部が保持されると、光ファイバ23のコア部の端面が導光部材10の第2の端面12に対向し、好ましくは第2の端面12に当接する。
【0037】
図2と図6に示すように、導光部材10の第1の端面11の図心(面の重心)を通って第1の端面11に直交する中心線を第1の端面中心線O1とし、第2の端面12の図心を通って第2の端面12に直交する中心線を第2の端面中心線O2としたときに、第1の端面中心線O1と第2の端面中心線O2は、180度未満の角度で交差している。この実施の形態では、第1の端面中心線O1と第2の端面中心線O2とがほぼ90度の角度で交差している。したがって、導光部材10は、第1の端面11と第2の端面12との間で光路が90度変換される。
【0038】
図6に示すように、導光部材10は、第1の端面11から上方の一定の範囲が直線部13であり、この直線部13では、断面の図心を通る中心線が、第1の端面中心線O1と一致している。
【0039】
前記直線部13の上端13aから前記第2の端面12までの範囲が湾曲部14である。湾曲部14では、断面の図心を結ぶ内部中心線O3が湾曲している。図6に示す実施の形態は、内部中心線O3が一定の半径Rの曲率を有する円弧に一致している。湾曲部14の長さは、前記内部中心線O3が半径Rの円の1/4周に相当するように設定されている。前記湾曲部14の形状は、前記内部中心線O3が正確な真円の円弧に一致しているものに限られず、例えば楕円や長円の円弧の一部であってもよい。
【0040】
図6に示す導光部材10は、図2に示すものよりも直線部13が短く図示されているが、この直線部13の長さは任意である。または直線部13が設けられておらず、第1の端面11が、湾曲部14の端部(符号13aで示す部分)に位置していてもよい。図6に示す導光部材10は、第2の端面12において内部中心線O3が第2の端面中心線O2と接しており、第1の端面12側に直線部が設けられていない。ただし、第2の端面12から図示右方向へ延長し且つ断面の図心が第2の端面中心線O2に一致する直線部が設けられていてもよい。
【0041】
図8は、導光部材10の湾曲部14の断面を示している。湾曲部14はどの箇所であってもその断面の形状が同じである(ただし、後に説明する位置決め部15を有する箇所は異なる)。
【0042】
図8に示す湾曲部14の断面形状は、内周側の表面14aが、内部中心線O3と直交する左右方向(X1−X2方向)に曲率を有していない直線である。図6に示すように、Y−Z平面で見たとき、内周側の表面14aは、前後方向(Z1−Z2方向)に湾曲する半径rの円筒面である。半径rの曲率中心O0は、内部中心線O3の曲率中心(半径R)に一致している。
【0043】
図8に示すように、湾曲部14の断面形状は、外周側の表面14bが前記左右方向(X1−X2方向)へ曲率を有する曲線であり、この実施の形態では、断面に現れる表面14bの線がほぼ180度の円弧である。よって、外周側の表面14bは、図6に示すように、Y−Z平面で見たときに、内部中心線O3と同じ向きの曲率を有するとともに、図8の断面で見たときは左右方向(X1−X2方向)に曲率を有する三次元の曲面である。
【0044】
また、図8に示すように、湾曲部14の断面形状において、左右方向(X1−X2方向)に向く両側面14c,14cは、内周側の表面14aの断面の直線に対して直角であり、両側面14c,14cは、互いに平行に対面する平坦面である。
【0045】
前記直線部13における導光部材10の断面形状は、図8に示す湾曲部14での導光部材10の断面形状と同じである。直線部13の前方(Z1方向)に向く表面13bは、湾曲部14の内周側の表面14aと連続しており、垂直方向(Y1−Y2方向)に延びる平坦面である。直線部13の後方(Z2方向)に向く表面13cは、湾曲部14の外周側の表面14bと連続しており、左右方向(X1−X2方向)に曲率を有する曲面である。
【0046】
導光部材10の前記湾曲部14に位置決め部15が一体に突出して形成されている。図3に示すように、位置決め部15の左右方向(X1−X2)に向く側面15a,15aは、湾曲部14の前記側面14c,14cと同一の平面である。図6に示すように、位置決め部15のZ1方向に向く前端面15bは平坦面であり、前記前端面15bと逆に向けられる後端面15cも平坦面である。前端面15bと後端面15cは互いに平行であり、これらの面は第2の端面12ならびに第1の端面中心線O1と平行である。位置決め部15の下端面15dは、第1の端面中心線O1と直交する向きの平面である。位置決め部15には、前記下端面15dから上向きに形成された凹部15eが形成されている。凹部15eの上内底面15fは前記下端面15dと平行な平坦面であり、内側面15g,15gは、前記両側面15a,15aと平行な平面である。
【0047】
図2に示すように、中央ハウジング部7に形成された収納空間7aの前方(Z1方向)の内側面は、左右方向(X1−X2方向)および縦方向(Y1−Y2)の双方に平行な突き当て平面17である。
【0048】
図2と図3に示すように、中央ハウジング部7の内部には、突き当て面16aが形成されている。この突き当て面16aは、基台部2の上面と平行な水平な平坦面であり、前記突き当て面16aに嵌合突部16bが上向きに一体に形成されている。嵌合突部16bの上面16cは、突き当て面16aと平行な平坦面である。嵌合突部16bの左右方向(X1−X2方向)に向く側面16d,16dは、互いに平行であり、前記突き当て面16aから垂直に延びている。
【0049】
図3に示すように、上ハウジング部9に形成された位置決め空間9aの左右方向(X1−X2方向)に向く内側面は互いに平行な平面部9b,9bを有し、平面部9b,9bは、基台部2の上面に対して垂直に延びている。平面部9b,9bの左右方向(X1−X2方向)の対向間隔W2は、導光部材10の湾曲部14の両側面14c,14cの対向間隔W1とほぼ同じである。
【0050】
図2に示すように、上ハウジング部9に形成された位置決め空間9aの内部には、導光部材10の最上端部(第2の端面12の上端)に隙間なく対向する第1の対向部9cと、湾曲部14と直線部13とのほぼ境界部において、導光部材10の外周側の表面に隙間なく対向する第2の対向部9dが形成されている。
【0051】
前記第1のモジュール21の組み立て工程を説明する。なお、第2のモジュール22の組み立て工程は、第1のモジュール21と同じである。
【0052】
下ハウジング部6から分離されている中央ハウジング部7の挿入口7cから収納空間7a内へ導光部材10を挿入する。このとき、導光部材10の直線部13の内部中心線、すなわち第1の端面中心線O1が、収納空間7aの底部7bに向けて直線的に挿入される。この挿入動作によって、図3に示す位置決め部15の下端面15dが、中央ハウジング部7内の突き当て面16aに突き当てられ、または、位置決め部15に形成された凹部15eの上内底面15fが嵌合突起16bの上面16cに突き当てられて、導光部材10のY1方向の位置が決められる。また、位置決め部15の凹部15e内に、嵌合突起16bが左右方向(X1−X2方向)へほとんど隙間無く嵌合して、位置決め部15が左右方向へ位置決めされる。
【0053】
中央ハウジング部7に上ハウジング部9を取り付けて、接着またはねじ止めなどで固定すると、図3に示すように、上ハウジング部9に形成された位置決め空間9a内に、導光部材10の湾曲部14が左右方向(X1−X2方向)へほとんど隙間が無く嵌合し、湾曲部14がX1−X2方向へ動かないように位置決めされる。また、図2に示すように、上ハウジング部9の内部に形成された第1の対向部9cと第2の対向部9dが導光部材10の主に湾曲部14の外周側の表面14bに当接する。これにより、中央ハウジング部7内からの導光部材10の抜け止めがなされ、ハウジング1内での導光部材10の縦方向(Y1−Y2方向)のがたつきが防止される。また、第1の対向部9cと第2の対向部9dによって、導光部材10が下方(Y1方向)および前方(Z1方向)へ押されるため、導光部材10の直線部13の前方の平坦な表面13bが、中央ハウジング部7の収納空間7a内の垂直な突き当て平面17に突き当てられて、導光部材10の前方(Z1方向)への位置決めが行われる。
【0054】
なお、中央ハウジング部7の収納空間7aの左右方向(X1−X2方向)に対向する内側面の間隔を、図3に示す導光部材10の幅寸法W1とほぼ同じに設定することで、収納空間7a内で導光部材10が左右方向(X1−X2方向)へほとんど動くことなく位置決めされて保持されてもよい。
【0055】
以上のように、中央ハウジング部7の収納空間7a内に導光部材10を一方向であるY1方向へ挿入することで、直線部13を収納空間7a内に挿入できるとともに、位置決め部15を嵌合突起16bと嵌合させることできる。また、中央ハウジング部7に上ハウジング部9を被せて固定することで、導光部材10をハウジング1の内部で動くことがなく、また離脱することがないように位置決めして保持できる。その後に、中央ハウジング部7の下部を下ハウジング部6の内部に挿入し、中央ハウジング部7と下ハウジング部6を互いに動くことなく位置決めした後に、掛止ばね8,8で中央ハウジング部7を固定する。この組立て工程が完了した状態で、導光部材10の第1の端面11が、被覆層4の上面に隙間無く密着し、光学素子3が第1の端面11に対向する。このとき、光学素子3の発光領域または受光領域の中心線である光軸は、第1の端面中心線O1とほぼ平行に設定される。
【0056】
光ファイバ23は、コア部の周囲にクラッドが設けられているものであり、ファイバ保持部7dの保持穴7e内に挿入されて保持される。または、光ファイバのコア部のみが前記保持穴7e内に挿入されて保持される。光ファイバ23が保持穴7e内で保持されると、光ファイバ23のコアの先端面が、導光部材10の第2の端面12に隙間無く密着する。
【0057】
第1のモジュール21が発光モジュールとして使用される場合、光学素子3から発せられる光が、第1の端面11から導光部材10の内部に入射する。光は、導光部材10と外部の空気層との境界面で反射されながら進み、第2の端面12から光ファイバ23のコア部内に与えられる。
【0058】
第1のモジュール21が受光モジュールとして使用される場合、光学素子3は受光素子である。光ファイバ23のコア部内を送られてくる光信号は、第2の端面12から導光部材10の内部に入射し、導光部材10とその外側の空気層との間で反射して進み、第1の端面11から出射して光学素子3に入射される。
【0059】
図6に示すように、第1の端面11から入射した光が第2の端面12に向かう際に、光は湾曲部14の外周側の表面14bに当たって反射されて第2の端面12に向けられる。また第2の端面12から光が入射する場合も、光が湾曲部14の外周側の表面14bに当たって反射されて第1の端面11に向けられる。このとき、湾曲部14は内部中心線O3が円弧軌跡に沿って曲線状となっているため、第1の端面11から入射した光、または第2の端面12から入射した光を90度の向きに変換しやすく、前記外周側の表面14bから外部に光が漏出しにくくなり、光の結合損失を小さくできる。
【0060】
図8に示すように、湾曲部14での導光部材10の断面形状は、内周側の表面14aがX1−X2方向に曲率を有しておらず、外周側の表面14bがX1−X2側に曲率を有している。外周側の表面14bで反射される内部反射光r1は、内部中心線O3の方向に向けて集中するように反射されやく、曲率を有しない内周側の表面14aへの内部反射光r1の入射角度を浅くでき、内周側の表面14aから外部の光の漏洩を抑制しやすい。
【0061】
逆に、内周側の表面14aを断面においてX1−X2方向へ水平にしておくことで、この表面14aをハウジング1内での回転止めなどとして利用しやすく、また、前記表面14aを位置決め用の面としても利用しやすくなる。
【0062】
図7は、導光部材10に位置決め部15が一体に形成されていることの影響を示す線図である。図7の横軸は、第1の端面12(湾曲部14の一方の端面)を始端とし、前記始端から位置決め部15の前端面15bまでの距離を、第2の端面12(湾曲部14の一方の端面)と垂直な方向での距離xとして表している。図7の縦軸は光の結合損失を示している。
【0063】
受光モジュール(i)として使用される場合、前記結合損失は、第2の端面12に入力した光量に対する第1の端面11から出射する光量の損失分を意味し、発光モジュール(ii)として使用される場合、前記結合損失は、第1の端面11に入力した光量に対する第2の端面12から出射する光量の損失分を意味している。
【0064】
図6では、第2の端面12(湾曲部14の一方の端面)を始端とし、第2の端面12(湾曲部14の一方の端面)と垂直な方向での湾曲部14の長さ寸法をLで示している。Lは8mmである。
【0065】
図7から、受光モジュール(i)としての使用であっても、発光モジュール(ii)としての使用であっても、距離xが、Lの1/8以上で3/8以下のときに結合損失を小さくできる。また、図6に示すように、位置決め部15が湾曲部14において、第2の端面12に近い側に設けられているため、受光モジュール(i)として使用する方が、発光モジュール(ii)として使用するときよりも結合損失を小さくできる。
【0066】
なお、発光モジュールの場合の結合損失を低下させるために、位置決め部15の前端面15bに金属膜や白色膜を形成し、前端面15bの光の反射率を高める手段を設けてもよい。
【0067】
図4と図5は、導光部材に設けられた位置決め部の変形例を示している。
図4に示す導光部材110の位置決め部115では、凹部115eがX1−X2方向に向けて開口している。この凹部115eが中央ハウジング部7の嵌合突起に嵌合することで、導光部材110の前後方向(Z1−Z2方向)の位置決め精度を高めることができる。
【0068】
図5に示す導光部材210の位置決め部215では、丸穴の凹部215eが形成されており、中央ハウジング部7の嵌合突起216bは円柱形状である。凹部215eが嵌合突起216bに嵌合することで、導光部材210を左右方向(X1−X2方向)と前後(Z1−Z2方向)の双方へ位置決めしやすい。
【0069】
図4と図5に示す変形例においても、導光部材を、第1の端面中心線O1をハウジングの収納空間に向けてY2方向へ挿入することで、ハウジング内で導光部材を位置決めすることが可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 ハウジング
2 基台部
3 発光素子または受光素子である光学素子
4 被覆層
6 下ハウジング部
7 中央ハウジング部
7a 収納空間
7b 底部
7c 挿入口
7d ファイバ保持部
9 上ハウジング部(蓋体)
9a 位置決め空間
10 導光部材
11 第1の端面
12 第2の端面
14 湾曲部
15 位置決め部
15e 凹部
23 光ファイバ
110,210 導光部材
115,215 位置決め部
O1 第1の端面中心線
O2 第2の端面中心線
O3 内部中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、前記ハウジングに設けられた受光素子または発光素子と、前記ハウジングに収納された透光材料製の導光部材と、前記ハウジングに設けられて光ファイバの端部を保持するファイバ保持部とを有する光モジュールにおいて、
前記導光部材は、前記受光素子または前記発光素子に対面する第1の端面と前記光ファイバの端面と対向する第2の端面とを有し、前記第1の端面の図心を通って前記第1の端面と直交する第1の端面中心線と、前記第2の端面の図心を通って前記第2の端面と直交する第2の端面中心線とが180度未満の角度を成しているとともに、前記第1の端面と前記第2の端面との間に、断面の図心を通る内部中心線が曲線となる湾曲部が設けられており、
前記ハウジングに収納空間が設けられ、前記収納空間は、底部に前記発光素子または前記受光素子が配置され、前記底面に対向する位置に挿入口が開口しており、前記導光部材は、前記第1の端面中心線が前記底部に向かうように前記挿入口から前記収納空間に挿入されて、前記ハウジングに位置決めされて保持されていることを特徴とする光モジュール。
【請求項2】
前記導光部材には、前記第1の端面中心線と平行に延びる位置決め部が一体に形成されており、前記位置決め部が、前記ハウジングの内部に当接して、前記導光部材の前記底部に向かう方向の位置決めおよび前記方向と直交する向きの位置決めが行われる請求項1記載の光モジュール。
【請求項3】
前記位置決め部に凹部または穴部が形成され、前記ハウジングの内部に前記凹部または前記穴部に嵌合する突部が形成されており、前記導光部材を、前記第1の端面中心線が前記底部に向かうように前記収納空間に挿入したときに、前記凹部または穴部が前記突部と嵌合する請求項2記載の光モジュール。
【請求項4】
前記湾曲部の端部を始端として、前記端部の断面と直交する向きの前記湾曲部の全長をLとしたときに、前記始端から前記位置決め部までの距離が、前記長さLの1/8以上で3/8以下である請求項2または3記載の光モジュール。
【請求項5】
前記ハウジングの前記挿入口を塞ぐ蓋体が設けられており、前記導光部材が前記収納空間に挿入されて、前記蓋体によって前記導光部材が抜け止めされている請求項1ないし4のいずれかに記載の光モジュール。
【請求項6】
前記湾曲部での前記導光部材の断面の形状は、外周側の表面が、前記内部中心線と直交する向きに曲率を有する曲面であり、内周側の表面が、前記内部中心線と直交する向きに曲率を有していない請求項1ないし5のいずれかに記載の光モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−169819(P2010−169819A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−11046(P2009−11046)
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】