説明

光モジュール

【課題】光ファイバのコア部と光素子の光軸とのずれを防止でき、しかも、接着剤により十分な強度をもって光ファイバを固定できようにした光モジュールを提供する。
【解決手段】光ファイバ13を補助固定部材9の接着剤収容部10を通って主固定部材3の光ファイバ挿入凹部7に挿入する。そして、接着剤収容部10に接着剤14を充填し、主固定部材3と補助固定部材9と光ファイバ13とを一体に接着する。また、光ファイバ挿入凹部7は、光素子2に近付くに従って穴の内径が小さくなるように傾斜した光ファイバ案内面7Aを有するものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光素子と光ファイバとを光結合させる光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、光モジュールとして、光素子と光ファイバとを光結合させるために、光素子に光ファイバの端部を対向させた状態で、これら光素子と光ケーブルの端部とを基板上に固定した構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。このとき、光ケーブルの端部は、基板に設けられた断面V字状のV溝内に装着され、接着剤と押さえ板とを用いて基板に固定される構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−200153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した従来技術では、深さが光ファイバの外径の1/3程度のV溝に光ファイバを接着剤により接着しており、この場合、光ファイバと接着剤との接触面積(接着面積)を十分に確保できず、接着剤だけでは光ファイバを十分な強度をもって基板に固定できない。そこで、上述した従来技術では、接着剤と共に押さえ板を用いて光ファイバを基板に固定する構成となっている。
【0005】
しかし、この場合には、押さえ板が必要になる分、部品点数が増えると共に固定作業の工程数も増える。この結果、光ファイバの固定作業が面倒になり生産性が低下し、コストが増大するという問題がある。
【0006】
また、上述した従来技術では、光ファイバの位置決めを、この光ファイバの周面の一部とV溝の内面の一部との当接に基づいて行うため、この位置決め精度を十分に確保できず、この光ファイバのコア部と光素子の光軸とがずれ易くなるという問題もある。
【0007】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、光ファイバのコア部と光素子の光軸とのずれを防止でき、しかも、押さえ板を用いることなく接着剤により十分な強度をもって光ファイバを固定できようにした光モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するため、本発明に係る光モジュールは、光信号を発光または受光する光素子と、該光素子が設けられると共に、該光素子に近付くに従って穴の内径が小さくなるように傾斜した光ファイバ案内面を有する光ファイバ挿入凹部が設けられた主固定部材と、接着剤収容部と該接着剤収容部に隣接して前記主固定部材を保持する主固定部材保持部とを有する補助固定部材と、該補助固定部材の接着剤収容部を通って前記主固定部材の光ファイバ挿入凹部に向け挿入され、前記光素子に端部が対向する光ファイバと、前記主固定部材と前記補助固定部材とを組立て前記光ファイバを前記補助固定部材の接着剤収容部を通って前記主固定部材の光ファイバ挿入凹部に挿入した状態で、前記接着剤収容部に充填され前記主固定部材と補助固定部材と光ファイバとを一体に接着する接着剤とを備えてなる構成としている。
【0009】
また、請求項2の発明は、前記主固定部材には、前記補助固定部材の主固定部材保持部と係合する係合部が設けられた構成としている。
【0010】
また、請求項3の発明は、前記光ファイバ挿入凹部にも前記接着剤が入り込んだ状態で、前記主固定部材と補助固定部材と光ファイバとを一体に接着した構成としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、光素子に近付くに従って穴の内径が小さくなるように傾斜した光ファイバ案内面を有する光ファイバ挿入凹部に光ファイバの端部が挿入されるから、この挿入時に光ファイバの端部が光ファイバ案内面により案内されることにより、この光ファイバのコア部と光素子の光軸とを合わせることができる。このため、光ファイバのコア部と光素子の光軸とのずれを防止して、光軸の位置ずれに伴う光学損失を低減することができる。
【0012】
また、光ファイバが通る接着剤収容部に充填される接着剤によりこの光ファイバが補助固定部材に接着されるから、この接着剤収容部に充填されて硬化する接着剤により光ファイバの周面を覆うことができ、光ファイバと接着剤とが接触する面積(接着面積)を確保できる。このため、接着剤による光ファイバの固定強度を確保でき、従来技術で必要な押さえ板等が不要になる分、固定作業を容易に行うことができ、生産性を向上できると共にコストを低減することができる。
【0013】
また、請求項2の発明によれば、主固定部材に補助固定部材の主固定部材保持部と係合する係合部が設けられているから、主固定部材と補助固定部材とを組立てた状態で、これら主固定部材と補助固定部材とを分離しにくくできる。このため、光ファイバの挿入作業や接着剤の充填作業を容易に行うことができる。
【0014】
また、請求項3の発明によれば、光ファイバ挿入凹部にも接着剤が入り込んだ状態で主固定部材と補助固定部材と光ファイバとが接着されるから、主固定部材と補助固定部材との固定強度、主固定部材と光ファイバとの固定強度も確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施の形態による光モジュールを示す斜視図である。
【図2】光モジュールを構成する主固定部材を示す斜視図である。
【図3】光モジュールを構成する補助固定部材を示す斜視図である。
【図4】補助固定部材を図3の右上側からみた斜視図である。
【図5】主固定部材と補助固定部材とを組立てる前の状態を示す斜視図である。
【図6】主固定部材と補助固定部材とを組立てた状態を示す斜視図である。
【図7】主固定部材と補助固定部材とを組立てた後、光ファイバの端部を主固定部材の光ファイバ挿入凹部に挿入する前の状態を示す斜視図である。
【図8】主固定部材と補助固定部材とを組立てた後、光ファイバの端部を主固定部材の光ファイバ挿入凹部に挿入した状態を示す斜視図である。
【図9】主固定部材と補助固定部材とを組立て、光ファイバの端部を主固定部材の光ファイバ挿入凹部に挿入した後、補助固定部材の接着材収容部に接着剤を充填する前の状態を示す図8中の矢示IX−IX方向からみた平面図である。
【図10】主固定部材と補助固定部材とを組立て、光ファイバの端部を主固定部材の光ファイバ挿入凹部に挿入した後、補助固定部材の接着材収容部に接着剤を充填した状態を示す図1中の矢示X−X方向からみた断面図である。
【図11】光モジュールを回路基板に取付ける前の状態を示す斜視図である。
【図12】光モジュールを回路基板に取付けた状態を示す斜視図である。
【図13】本発明の第2の実施の形態による光モジュールを示す斜視図である。
【図14】光モジュールを回路基板に取付ける前の状態を示す斜視図である。
【図15】光モジュールを回路基板に取付けた状態を示す斜視図である。
【図16】本発明の第1の変形例による補助固定部材を示す図4と同様な斜視図である。
【図17】補助固定部材を図16の左上側からみた図3と同様な斜視図である。
【図18】主固定部材と補助固定部材とを組立てた後、光ファイバの端部を主固定部材の光ファイバ挿入凹部に挿入する前の状態を示す平面図である。
【図19】本発明の第2の変形例による光モジュールを示す図18と同様な平面図である。
【図20】本発明の第3の変形例による光モジュールを示す図18と同様な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態による光モジュールを光送信モジュールに適用した場合を例に挙げて、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0017】
まず、図1ないし図12は本発明の第1の実施の形態を示している。図中、1は光モジュールとしての光送信モジュールで、該光送信モジュール1は、後述の発光素子2、主固定部材3、補助固定部材9、光ファイバ13、接着剤14等によって構成されている。
【0018】
2は光素子としての発光素子で、該発光素子2は、例えば発光ダイオード(LED)、レーザダイオード(LD)、面発光レーザダイオード(VCSEL)等によって構成され、光信号を発光する。ここで、発光素子2は、後述の主固定部材3に設けられている(実装されている)。
【0019】
3は発光素子2を実装する主固定部材で、該主固定部材3は、例えば図2に示すように、後述の基板4、電極端子5、樹脂部材6、光ファイバ挿入凹部7、係合凹溝8等により構成されている。
【0020】
4は発光素子2が実装された基板で、後述の電極端子5が形成されている。ここで、該基板4は、例えば厚みをもった四角形の平板状に形成され、発光素子2と電極端子5とをプリント配線等により接続させた状態で、これら発光素子2と電極端子5とを固定している。
【0021】
5は基板4に固定された1対の電極端子で、該各電極端子5は、例えば図2に示す状態で基板4の上面から上方に突出している。そして、これら各電極端子5は、光送信モジュール1を後述の回路基板15(図11ないし図12参照)に取付けた状態で、この回路基板15のバネ端子19と接合することにより、この回路基板15内に設けられた回路と発光素子2とを接続させるものである。
【0022】
6は基板4のうち発光素子2が固定された側面を覆う樹脂部材で、該樹脂部材6は、例えば基板4よりも厚みのある直方体状に形成され、発光素子2を封止(包埋)した状態で基板4の側面に固着している。ここで、樹脂部材6は、発光素子2の光信号を透過させる透光性をもった樹脂材料を用いて形成されている。具体的には、樹脂部材6は、予め用意した金型の内部に発光素子2、電極端子5等を実装した基板4を挿入した状態で、金型内に樹脂材料を流し込むことによって金型成型され、基板4の側面に不離に固着されている。
【0023】
7は樹脂部材6のうち基板4に固着した側面とは反対側の側面に設けられた光ファイバ挿入凹部で、該光ファイバ挿入凹部7は、発光素子2に近付くに従って穴の内径が小さくなるように傾斜した光ファイバ案内面7Aを有する円すい凹面状の有底穴として形成されている。そして、光ファイバ挿入凹部7の底面7Bを、後述する光ファイバ13の端面とほぼ同じ形状、すなわち、光ファイバ13の外径とほぼ同じ外径を有する円形状の底面7Bとしている。
【0024】
さらに、光ファイバ挿入凹部7の底面7Bの中心と発光素子2の光軸とを一致させており、光ファイバ13の端部を光ファイバ挿入凹部7の奥部にまで(例えば光ファイバ13の端面が光ファイバ挿入凹部7の底面7Bに当接するまで)挿入した状態で、光ファイバ13の中心(コア部)と発光素子4の光軸とが合うようにしている。これにより、底面7Bは、光ファイバ13の端部を位置決めする光ファイバ位置決め部を構成している。
【0025】
8は樹脂部材6の各外側面(樹脂部材6の幅方向外側の面で、例えば図2に示す状態で左,右方向の左側面と右側面)に設けられた係合部としての1対の係合凹溝で、該各係合凹溝8は、断面四角形状で互いに平行に形成されている。ここで、各係合凹溝8は、主固定部材3を後述の補助固定部材9に組付ける際に、補助固定部材9に設けられた各ガイド凸部11Bと係合することにより、主固定部材3と補助固定部材9との位置決めをしつつ、これら主固定部材3と補助固定部材9とが容易に分離しないようにするものである。
【0026】
9は主固定部材3を装着する補助固定部材で、該補助固定部材9は、例えば樹脂材料を用いて形成されたもので、例えば図3に示すように、後述の接着剤収容部10、主固定部材保持部11、係合凸部12等により構成されている。
【0027】
10は後述する接着剤14を充填するための接着剤収容部で、該接着剤収容部10は、例えば図3に示す状態で上方が開口した有底の凹部として形成されている。すなわち、接着剤収容部10は、四角形状の底板部10Aと、この底板部10Aの四方を囲む状態で設けられた枠板部10Bとを有する。そして、底板部10Aの上側で枠板部10Bにより囲まれた空間を、後述する接着剤14を入れる(充填する)ための接着材収容空間10Cとしている。
【0028】
また、枠板部10Bには、接着材収容空間10Cを挟んで互いに対向する位置に1対の貫通孔10Dを互いに同心に形成しており、これら各貫通孔10Dには、後述の光ファイバ13が挿入される。すなわち、光ファイバ13は、接着剤収容空間10Cを貫通し、各貫通孔10Dに掛け渡された状態で、これら各貫通孔10Dに挿入される。
【0029】
また、枠板部10Bのうち主固定部材3を構成する樹脂部材6と対向する部分(対向部10B1)の高さは、他の部分の高さよりも低くしている。より具体的には、図6に示すように、対向部10B1の高さを、補助固定部材9に主固定部材3を組付けた状態で光ファイバ挿入凹部7の開口部の一部を露出させられる高さにしている。そして、後述の接着剤14を接着剤収容空間10C内に入れる際に、この接着剤14が光ファイバ挿入凹部7内にも入り込むようにしている。
【0030】
11は補助固定部材9に主固定部材3を装着するための主固定部材保持部で、該主固定部材保持部11は、接着剤収容部10に隣接して主固定部材3を保持するものである。ここで、主固定部材保持部11は、接着剤収容部10を構成する枠板部10Bの対向部10B1を挟んで接着剤収容空間10Cとは反対側位置に設けられており、主固定部材3を載置する底板部11Aと、主固定部材3の各係合凹溝8と係合する1対のガイド凸部11B等とを備えている。
【0031】
そして、主固定部材3を補助固定部材9に組付けた状態で、補助固定部材9のガイド凸部11Bと主固定部材3の係合凹溝8との係合により、主固定部材3に設けられた発光素子2の光軸と補助固定部材9の各貫通孔10Dの中心軸とが一致するようにしている。
【0032】
12は後述の回路基板15(図11ないし図12参照)に光送信モジュール1を取付けた状態で、この回路基板15に設けられた凹部18Aと係合する1対の係合凸部で、該係合凸部12は、補助固定部材9の各外側面(補助固定部材9の幅方向外側の面で、例えば図9に示す状態で上,下方向の上側面と下側面)に、この外側面から突出する状態で互いに平行に設けられている。ここで、各係合凸部12は、断面半円形に形成されると共に、後述する光ファイバ13の配設方向(例えば図11に示す状態で左,右方向)に延びる様に形成されている。
【0033】
13は光信号を伝送する光ファイバで、該光ファイバ13は、補助固定部材9の接着剤収容部10を通って主固定部材3の光ファイバ挿入凹部7に向け挿入されるものである。ここで、光ファイバ13は、光ファイバ挿入凹部7の奥部にまで挿入された状態で、例えば光ファイバ13の端部が光ファイバ挿入凹部7の底面7Bに当接(密着)し、主固定部材3に設けられた発光素子2と対向する。
【0034】
14は主固定部材3と補助固定部材9と光ファイバ13とを一体に接着するための接着剤で、該接着剤14は、光信号を透過させる透光性をもった、例えばエポキシ樹脂系、シリコーン樹脂系等の接着剤により構成している。ここで、接着剤14は、図5ないし図6に示すように補助固定部材9に主固定部材3を組付け、さらに図7ないし図8に示すように光ファイバ13を補助固定部材9の接着剤収容部10を通って主固定部材3の光ファイバ挿入凹部7に挿入した状態で、図1および図10に示すように接着剤収容部10内に充填される。そして、充填後、接着剤14が硬化することにより、主固定部材3と補助固定部材9と光ファイバ13とが一体に接着(固定)される。
【0035】
次に、光送信モジュール1の組立手順(製造方法)について説明する。
【0036】
まず、図5に示すように、主固定部材3を補助固定部材9の主固定部材保持部11に対向させる。そして、図6に示すように、補助固定部材9のガイド突部11Bに主固定部材3の係合凹溝8を係合させつつ、主固定部材3を補助固定部材9の主固定部材保持部11に組付ける。このとき、補助固定部材9を構成する枠板部10Bに設けられた各貫通孔10Dの中心軸と光ファイバ挿入凹部7の中心軸と発光素子2の光軸とが一直線状に位置する。
【0037】
次いで、図7に示すように、光ファイバ13の端部を、補助固定部材9に設けられた貫通孔10Dに対向させる。そして、図8に示すように、光ファイバ13を補助固定部材3の接着剤収容部10を通って主固定部材3の光ファイバ挿入凹部7に挿入する。このとき、光ファイバ13の端部は、光ファイバ挿入凹部7の案内面7Aに案内されつつ、この光ファイバ挿入凹部7の奥部にまで挿入され、例えば図9に示すように、この光ファイバ13の端面が光ファイバ挿入凹部7の底面7Bに当接する。
【0038】
次いで、図1に示すように、補助固定部材9の接着剤収容部10内に接着剤14を、少なくとも光ファイバ13が浸漬するまで(例えば光ファイバ13の外周面が全周にわたり接着剤14により覆われるまで)、より好ましくは、接着剤収容部10を構成する枠板部10Bの対向部10B1よりも高い位置まで入れる(充填する)。このとき、接着剤14は、図10に示すように、光ファイバ挿入凹部7の開口部のうち枠板部10Bの対向部10B1よりも上側に露出した部分から光ファイバ挿入凹部7に入り込む。そして、接着剤14が硬化することにより、主固定部材3と補助固定部材9と光ファイバ13とが接着され、光送信モジュール1が完成する。
【0039】
次に、図11ないし図12を参照しつつ光送信モジュール1が取付けられる回路基板15について説明する。
【0040】
15は光送信モジュール1が取付けられる回路基板で、該回路基板15は、後述の基板16、樹脂パッケージ17、取付部18、バネ端子19等により構成されている。
【0041】
16は回路が実装された(配線が施された)基板で、該基板16は、例えば厚みをもった四角形の平板状に形成されている。また、基板16のうち例えば図11に示す状態で上側となる面(上面16A)には、発光素子2を駆動する回路(図示せず)が設けられると共に、該回路を樹脂封止するための後述の樹脂パッケージ17が固着されている。また、基板16のうちで樹脂パッケージ17から露出した部分には、後述のバネ端子19が設けられている。一方、基板16の裏側面(下面16B)には、例えば回路基板15をマザーボード(図示省略)に表面実装するための電極が設けられている。
【0042】
17は内部に回路が封止された樹脂パッケージで、該樹脂パッケージ17は、基板16の上面16Aに固着されている。具体的には、樹脂パッケージ17は、予め用意した金型の内部に基板16を挿入した状態で、金型内に樹脂材料を流し込むことによって金型成型され、基板16の上面16Aに不離に固着されている。
【0043】
18は光送信モジュール1を回路基板15に取付けるための取付部で、該取付部18は、基板16の上面16Aで樹脂パッケージ17に覆われていない部分、即ち、基板16の上面16Aのうちで樹脂パッケージ17から露出した部分(露出部16C)と、樹脂パッケージ17のうち露出部16Cを挟んで互いに向かい合う1対の側面17Aとにより構成している。
【0044】
そして、これら各側面17Aには、光送信モジュール1の補助固定部材9に設けられた各係合凸部12と係合する1対の凹部18Aが設けられている。これら各凹部18Aは、各係合凸部12と同じ断面半円形状で互いに平行に形成されている。また、各凹部18Aの長さ寸法は、各係合凸部12の長さ寸法と同じにしている。そして、これら各凹部18Aと各係合凸部12との係合に基づいて、光送信モジュール1が回路基板15の取付部18に固定される。
【0045】
19は基板16の上面16Aのうちで樹脂パッケージ17から露出した露出部16Cに設けられたバネ端子で、該バネ端子19は、図12に示すように光送信モジュール1を回路基板15の取付部18に取付けた状態で、この光送信モジュール1の電極端子5と接合し、光送信モジュール1の発光素子2と回路基板15の回路とを接続するものである。
【0046】
本実施の形態による光送信モジュール1は上述の如き構成を有するもので、次にその作
動について説明する。
【0047】
光送信モジュール1が取付けられた回路基板15等からの駆動電流の供給に基づいて発光素子2が光信号を発光すると、この光信号はこの発光素子2に対向する光ファイバ13のコア部を通じて伝送される。
【0048】
ここで、本実施の形態では、光ファイバ13の端部は、発光素子2に近付くに従って穴の内径が小さくなるように傾斜した光ファイバ案内面7Aを有する光ファイバ挿入凹部7に挿入されるから、光ファイバ13のコア部と発光素子2の光軸とを合わせることができる。すなわち、光ファイバ13を光ファイバ挿入凹部7に挿入する際に、光ファイバ13の端部が光ファイバ案内面7Aにより案内されつつ、この光ファイバ挿入凹部7の奥部にまで入り込む。また、この状態で、光ファイバ13の端面は、この端面と同形状で、かつ、発光素子2の光軸にその中心を一致させた光ファイバ挿入凹部7の底面7Bと当接する。このため、光ファイバ13のコア部と発光素子2の光軸とを確実に合わせることができ、光ファイバ13のコア部と発光素子2の光軸とのずれを防止できる。この結果、光軸の位置ずれに伴う光学損失を低減することができる。
【0049】
また、本実施の形態では、光ファイバ13が通る接着剤収容部10に充填される接着剤14により光ファイバ13が補助固定部材9に接着されるから、この接着剤収容部10に充填されて硬化する接着剤14により光ファイバ13の外周面を全体にわたって覆うことができる。このため、光ファイバ13と接着剤14とが接触する面積(接着面積)を確保でき、接着剤14による光ファイバ13の固定強度を確保できる。この結果、従来技術で必要だった押さえ板等が不要になる分、固定作業を容易に行うことができ、生産性を向上できると共にコストを低減することができる。
【0050】
また、本実施の形態では、補助固定部材9に主固定部材3を組立てた状態で、補助固定部材9の主固定部材保持部11に設けられたガイド凸部11Bと主固定部材3に設けられた係合凸部12とが係合するから、これら主固定部材3と補助固定部材9とを分離しにくくできる。このため、光ファイバ13の挿入作業や接着剤14の充填作業を容易に行うことができる。
【0051】
さらに、本実施の形態では、光ファイバ挿入凹部7にも接着剤14が入り込んだ状態で主固定部材3と補助固定部材9と光ファイバ13とが接着されるから、主固定部材3と補助固定部材9との固定強度、主固定部材3と光ファイバ13との固定強度も確保できる。
【0052】
次に、図13ないし図15は本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、補助固定部材に把持部を設けたことにある。なお、本実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0053】
図中、21は本実施の形態の光送信モジュールで、該光送信モジュール21は、発光素子2、主固定部材3、補助固定部材22、光ファイバ13、接着剤14等によって構成されている。
【0054】
22は主固定部材3を装着する補助固定部材で、該補助固定部材22は、接着剤14を充填するための接着剤収容部10、後述の主固定部材保持部23、把持部24、凹部25等により構成されている。
【0055】
23は補助固定部材22に主固定部材3を装着するための主固定部材保持部で、該主固定部材保持部23は、接着剤収容部10に隣接して主固定部材3を保持するものである。ここで、主固定部材保持部23は、主固定部材3をがたつきなく内嵌する嵌合凹部として形成されている。また、主固定部材保持部23に主固定部材3を内嵌した状態で、この主固定部材3の電極端子5が露出するように、例えば図13に示す状態で上側となる部分に、切り欠き部23Aを設けている。
【0056】
24は補助固定部材22を手で把持し易くするための把持部で、該把持部24は、厚みをもった四角形の平板状に形成され、補助固定部材22の外側面(補助固定部材22の幅方向外側の面)から外側に延びるように形成されている。
【0057】
25は後述の回路基板26(図14ないし図15参照)に設けられた係合凸部27と係合する1対の凹部で、該凹部25は、把持部24の先端面と、補助固定部材22のうち把持部24を設けた外側面とは反対側の外側面とに、これら各面からそれぞれ凹入する状態で互いに平行に設けられている。ここで、各凹部25は、断面半円形に形成されると共に、光ファイバ13の配設方向に延びる様に形成されている。
【0058】
次に、図14ないし図15を参照しつつ光送信モジュール21が取付けられる回路基板26について説明する。
【0059】
26は光送信モジュール21が取付けられる回路基板で、該回路基板26は、基板16、樹脂パッケージ17、取付部28、バネ端子19等により構成されている。
【0060】
28は光送信モジュール21を回路基板26に取付けるための取付部で、該取付部28は、基板16の上面16Aで樹脂パッケージ17に覆われていない部分、即ち、基板16の上面16Aのうちで樹脂パッケージ17から露出した部分(露出部16C)と、樹脂パッケー17の上面に形成された段部17Bと、この段部17Bと露出部16Cとを挟んで互いに向かい合う1対の側面17Aとにより構成している。
【0061】
そして、樹脂パッケージ17の各側面17Aには、光送信モジュール21の補助固定部材22に設けられた凹部25と係合する係合凸部27を設けている。これら各係合凸部27は、各凹部25と同じ断面半円形状で互いに平行に形成されている。また、各係合凸部27の長さ寸法は、各凹部25の長さ寸法と同じにしている。そして、これら各係合凸部27と各凹部25との係合に基づいて、光送信モジュール21が回路基板26の取付部28に固定される。
【0062】
本実施の形態による光送信モジュール21は、上述の如き補助固定部材22に主固定部材3を組立て、光ファイバ13を補助固定部材22の接着剤収容部10を通って主固定部材3の光ファイバ挿入凹部7に挿入した状態で、接着剤収容部10内に接着剤14を充填することにより、補助固定部材22と主固定部材3と光ファイバ13とを一体に接着する。従って、本実施の形態においても、上述した第1の実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0063】
しかも、第2の実施の形態では、補助固定部材22に把持部24を設ける構成としているので、補助固定部材22と主固定部材3との組立体である光送信モジュール21の取扱い性(取扱易さ)を確保できる。
【0064】
なお、上述した各実施の形態では、接着剤収容部10を構成する枠板部10Bのうち光ファイバ13を挟んで対向する各内側面を平行にした場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば図16ないし図17に示すように、接着剤収容部10を構成する枠板部10Bのうち光ファイバ13を挟んで対向する各内側面31を、発光素子2に近付くに従って近付くように傾斜させる構成としてもよい。
【0065】
また、上述した第1の実施の形態では、主固定部材3の係合凹溝8の底部と補助固定部材9を構成する主固定部材保持部11のガイド凸部11Bの頂部とを平坦面とした場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば図19に示すように、補助固定部材9を構成する主固定部材保持部11のガイド凸部11Bの先端に爪部32を設けると共に、主固定部材3の係合凹溝8にこの爪部32を係止する係止凹部33を設ける構成としてもよい。
【0066】
また、上述した各実施の形態では、光ファイバ挿入凹部7の内面を全体にわたって傾斜させ、この内面全体を光ファイバ案内面7Aとした場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば図20に示すように、光ファイバ挿入凹部7の奥部に光ファイバ位置決め部としての円筒面部34を設ける構成としてもよい。この場合には、この円筒面部34の内径を、光ファイバ13をがたつきなく内嵌できる大きさ(例えば光ファイバの外径と同じ)にする。
【0067】
また、上述した各実施の形態では、光モジュールとして光送信モジュール1,21に適用した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、光ファイバからの光信号を受光素子を用いて受光する光受信モジュールに適用してもよい。この場合、光素子は、例えばフォトダイオード(PD)、フォトトランジスタ等の受光素子によって構成するものである。
【0068】
また、上述した各実施の形態では、光信号を透過させる透光性をもった接着剤14を用いる場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限るものではなく、例えば光ファイバの端面と光ファイバ挿入凹部の底面との間に接着剤が入り込まないようにできるのであれば、透光性をもたない接着剤を用いることもできる。
【0069】
また、上述した各実施の形態では、主固定部材3を構成する樹脂部材6を、光信号を透過させる透光性をもった樹脂材料を用いて形成した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば光ファイバの端部と光素子との間に光結合を可能とする隙間等を形成できるのであれば、透光性をもたない樹脂材料を用いることもできる。
【0070】
さらに、上述した各実施の形態では、発光素子2を基板4に表面実装した場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限るものではなく、例えば光素子から基板にボンディングワイヤにより配線し、このボンディングワイヤを光素子と共に樹脂部材に封止する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1,21 光送信モジュール(光モジュール)
2 発光素子(光素子)
3 主固定部材
7 光ファイバ挿入凹部
7A 光ファイバ案内面
8 係合凹溝(係合部)
9,22 補助固定部材
10 接着剤収容部
11,23 主固定部材保持部
13 光ファイバ
14 接着剤
24 把持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光信号を発光または受光する光素子と、
該光素子が設けられると共に、該光素子に近付くに従って穴の内径が小さくなるように傾斜した光ファイバ案内面を有する光ファイバ挿入凹部が設けられた主固定部材と、
接着剤収容部と該接着剤収容部に隣接して前記主固定部材を保持する主固定部材保持部とを有する補助固定部材と、
該補助固定部材の接着剤収容部を通って前記主固定部材の光ファイバ挿入凹部に向け挿入され、前記光素子に端部が対向する光ファイバと、
前記主固定部材と前記補助固定部材とを組立て前記光ファイバを前記補助固定部材の接着剤収容部を通って前記主固定部材の光ファイバ挿入凹部に挿入した状態で、前記接着剤収容部に充填され前記主固定部材と補助固定部材と光ファイバとを一体に接着する接着剤とを備えてなる光モジュール。
【請求項2】
前記主固定部材には、前記補助固定部材の主固定部材保持部と係合する係合部が設けられた構成としてなる請求項1に記載の光モジュール。
【請求項3】
前記光ファイバ挿入凹部にも前記接着剤が入り込んだ状態で、前記主固定部材と補助固定部材と光ファイバとを一体に接着した構成としてなる請求項1または2に記載の光モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−145469(P2011−145469A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5876(P2010−5876)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】