説明

光ラマンアンプを導入した光中継システム及び光中継方法

【課題】
ラマンアンプを導入した光中継システムにおいて、波長断発生時に制御監視信号の入出力レベルから算出する実効的なスパンロスに基づいた光増幅器の出力一定制御を行い、波長断からの復旧時間の低減および復旧時のWDM信号光の伝送品質を良好に保つ光中継システムを提供する。
【解決手段】
光ファイバ伝送路の一端における監視制御光の光レベルである出力レベルから光ファイバ伝送路の他端における監視制御光の光レベルである出力レベルを差し引いた監視制御号光の実効的な伝送路損失と、ラマンアンプモジュールから出力される励起光の前記光ファイバ伝送路への入力パワーと、光ファイバ伝送路のファイバ種別から算出される主信号光の実効的な伝送路損失に基づいて光増幅器の出力制御を行う制御部を有することを特徴とする光中継システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ラマンアンプを導入した光中継システムにおける、光増幅器の出力制御方式に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光増幅器(EDFA:Erbium Doped Fiber Amplifier)の発明と市場への投入により、信号対雑音比に対する要求は大幅に緩和され、1波長の伝送容量が10−Gbit/sを超える超高速光伝送システムが実用化されて、全世界的に導入されている。さらに、上記光増幅器の広帯域性を利用して、ある波長帯を一括増幅できる線形中継器が導入され、さらなる低コスト化が図られている。その中でも注目されているのは、光ラマンアンプ(分布ラマンアンプ、光ラマン増幅器)である。光ラマンアンプは、100nm近い波長帯域を持ち広帯域の光信号を低雑音で増幅できる光増幅器であり、増幅方法としては、増幅媒体としての光ファイバ伝送路に対して受信側から励起光を入射し、該励起光を信号光の伝播方向とは逆方向に伝播させることで、当該光ファイバ伝送路を伝播する信号光を誘導ラマン散乱の効果により増幅するものである。
【0003】
図1(a)(b)には、光増幅にEDFA102−1、102−2を使用した場合の光中継伝送の構成と伝送距離に対する光パワーの推移を示し、図1(c)(d)には、光増幅にEDFA102−3、102−4と光ラマンアンプモジュールを使用した場合の構成と伝送距離に対する光パワーの推移を示す。両者で最も異なる点は、光ファイバ伝送路101−1、101−2の下流に設置してある中継器100−2、100−4に入力する光パワーである。図1(c)(d)では、光ラマンアンプモジュール104−2内の励起光源103−2から出力された励起光による光ラマン増幅を行うことで、光ファイバ伝送路101−2の途中から光パワーが上昇し始め、中継器100−4に備えたEDFA102−4への入力パワーが、図1(a)(b)における中継器100−2に備えたEDFA102−2への入力パワーに比べて大となり、信号対雑音比の劣化が軽減でき、長距離光伝送が可能となる。
【0004】
ところで、光ファイバ伝送、もしくは、WDM(Wavelength Division Multiplexing)光信号を一定区間ごとに光増幅器(EDFA)で増幅しながら伝送する光中継システムにおいて、その光増幅器の制御方式は、利得を常に一定にする利得一定制御方式(AGC:Auto Gain Control)か、光信号の出力レベルを常に一定にする出力一定制御方式(ALC:Auto Level Control)などが用いられる。利得一定制御は、装置立上げ時に伝送路損失に応じた利得を設定し、その後、設定された利得を保持する制御方式である。また、出力一定制御方式は、装置立上げ時に伝送路損失に応じた利得を設定し、その後、伝送している光信号の波長数情報などに基づいて、光増幅器のトータル出力パワーが一定となるように、利得を可変制御する方式である。
【0005】
しかし、上記の利得一定制御については、伝送路損失の変化により光増幅器の出力光信号レベルが変動してしまうという問題がある。例えば、伝送路ファイバの伝送路損失は温度により変化する。また、何らかの理由で伝送路ファイバに曲げ等の応力が加わり、伝送路損失が変化する可能性もある。そのような条件下において利得一定制御を行うと、伝送路損失の変化に応じて光増幅器の出力光レベルが変動するようになり、信号受信感度面で最適な信号レベルから逸脱してしまう可能性がある。
【0006】
また、上記の出力一定制御については、WDM光信号の波長数情報を得るのに時間を要する事が原因で、信号レベル変動を引き起こしてしまうという問題点がある。出力一定制御を実現するためには、光増幅器が現在増幅しているWDM光信号の波長数の情報が必要である。なぜならば、出力一定制御は、1波長あたりの信号レベルに波長数を掛け合わせた総信号レベルを目標値として、光増幅器の利得を可変制御するためである。波長の異なる複数の光信号が束ねられたWDM光信号の波長数を検出するためには、1波長毎のレベルを測定して光信号の有無を検出する検出部が必要となる。WDM光伝送システム上の光増幅器に与えられるWDM信号光の波長数は、当該光増幅器よりも上流側に合分波器などを備えた光伝送装置、例えばOADM(Optical Add Drop Multiplexer)が適用されることにより、通信サービスの運用中もWDM信号光の波長数が任意に変化する。したがって、WDM光伝送用の光増幅器では、WDM信号光の波長数の変化に対応するために、通常、高速の利得一定制御が行われる。
【0007】
この高速の利得一定制御のみが行われるものが、前述した「利得一定制御」に該当しており、「出力一定制御」は、この高速の利得一定制御に加えて、波長数情報を使用して出力一定制御を実施するものである。しかし、波長数情報を検出するための検出デバイスの制約により、検出時間の高速化が困難になる場合もある。この問題点を鑑み、波長数検出の高速化が不要な出力一定制御の制御方法として、波長数情報を検出するための波長数検出部を具備するだけでなく、直前の中継器との間の伝送区間における損失(スパンロス)を常にモニタするスパンロスモニタも具備し、その波長数情報とスパンロスのモニタ結果に応じて光増幅器の出力信号レベルを一定に制御する方式が特許文献1で提案されている。
【0008】
図2は従来技術の光中継システムを示す略図である。このような一定制御を用いた光中継システムでは、波長の異なる複数の光信号が合波されたWDM信号光に対して所望の波長の光信号を合分波する合分波器200と、WDM信号光を増幅する第1光増幅ユニット201と、前記第1増幅ユニットで増幅されたWDM信号光が一端に入力される光ファイバ伝送路202と、前記光ファイバ伝送路の他端から出力されるWDM信号光を増幅する第2光増幅ユニット203と、を含んだ光中継システムにおいて、前記第1光増幅ユニット201に入力されるWDM信号光の波長数を検出して波長数情報を生成する波長数検出部204を備える。
【0009】
また、前記第1光増幅ユニット201は、入力されるWDM信号光を増幅する第1光増幅器205と、前記第1光増幅器205から出力されるWDM信号光の総パワーを検出して第1信号出力レベル情報を生成する第1信号出力モニタ206と、前記波長数検出部204で生成された波長数情報および前記第1信号出力モニタ206で生成された第1信号出力レベル情報を含んだ制御監視光(監視制御光、OSC(Optical Supervisory Channel)信号光)を送信する制御監視光送信器207と、前記第1信号出力モニタ206で生成された第1信号出力レベル情報を前記制御監視光送信器207に伝達する制御回路208と、前記第1光増幅器205で増幅されたWDM信号光および前記制御監視光送信器207から送信された制御監視光を合波して前記光ファイバ伝送路の一端に与える合波器209と、制御監視光の出力レベルをモニタする制御監視光出力モニタ210と、を有している。
【0010】
さらに、前記第2光増幅ユニット203は、前記光ファイバ伝送路202の他端から出力される光をWDM信号光および制御監視光に分波する分波器211と、前記分波器211で分波されたWDM信号光を増幅する第2光増幅器212と、前記第2光増幅器212に入力されるWDM信号光の総パワーを検出して第2信号入力レベル情報を生成する第2信号入力モニタ213と、前記第2光増幅器212から出力されるWDM信号光の総パワーを検出して第2信号出力レベル情報を生成する第2信号出力モニタ214と、前記分波器211で分波された制御監視光を受信して前記波長数情報および前記第1信号出力レベル情報を取得する制御監視光受信器215と、前記制御監視光受信器215で取得された第1信号出力レベル情報および前記第2信号入力モニタ213で生成された第2信号入力レベル情報を用いて前記光ファイバ伝送路202におけるスパンロスを算出し、当該スパンロスに基づいて前記第2光増幅器212に設定する利得を算出すると共に、前記制御監視光受信器215で取得された波長数情報を用いて前記第2光増幅器212の目標信号出力レベルを算出し、その目標信号出力レベルと前記第2信号出力モニタ214で生成された第2信号出力レベル情報との差分を補正値として前記算出した利得の補正を行い、当該補正した利得に従って前記第2光増幅器212を制御する制御回路216と、制御監視光の入力レベルをモニタする制御監視光入力モニタ217と、を有している。
【0011】
上記のような従来技術の光中継システムでは、上流側の第1光増幅ユニット201から光ファイバ伝送路202に出力されるWDM信号光についての波長数情報および第1信号出力レベル情報が制御監視光を利用して下流側の第2光増幅ユニット203に伝えられる。第2光増幅ユニット203では、制御回路216において、図5のように、第1信号出力レベル情報に示される上流側でのWDM信号光の総出力パワーと、信号入力モニタ213で検出された下流側でのWDM信号光の総入力パワーを用いて光ファイバ伝送路202の損失(スパンロス)が算出され、当該スパンロスに基づいて第2光増幅器212に設定する利得が算出される。
【0012】
また、WDM信号光の波長数情報を用いて第2光増幅器212の目標信号出力レベルが算出され、その目標信号出力レベルと第2信号出力モニタ214で検出された第2信号出力レベルとの差分が算出される。スパンロスを基に算出した利得はスパンロスの測定誤差を含んでいるので、当該誤差の補正が波長数情報を用いて算出した第2信号出力レベルの目標値と実測値との差分により行われ、補正後の利得に従って第2光増幅器の制御が行われる。上記の制御における波長数情報を用いた補正は、あくまで誤差を補正するために行われ、その実施周期は、当該誤差の要因によるが、主に温度や経年変動が要因と考えると、秒オーダーの長周期とすることが可能である。
【0013】
従来技術の中継システムによれば、スパンロスの測定誤差によって生じる利得の設定誤差が波長数情報を用いて算出した補正値により補償されるようにしたことで、光ファイバ伝送路のスパンロスやWDM信号光の波長数が変動しても、システム上下流側に設置する光増幅器の制御を高速かつ高精度に行うことができ、光中継システムにおける信号受信感度の向上を図ることが可能になる。また、波長数情報を用いた補正を実施するが、当該制御速度(実施周期)は前述の通り遅くすることが可能である。従来の波長数情報を用いた信号出力レベル一定制御では、スパンロスが高速に変動した時のレベル変動を抑圧するために、制御速度を極力速くする必要があったので、波長数の検出時間との関係でレベル変動が発生していた。しかし、スパンロスモニタによる出力一定制御の誤差の補正用として波長数情報を適用する場合には、従来のようなレベル変動も解消される。
【0014】
また、制御監視出力モニタ210を光ファイバ伝送路202の上流に設置した第1光増幅ユニット201の合波器209の後段に具備し、制御監視入力モニタ217を光ファイバ伝送路202の下流に設置した第2光増幅ユニット203の分波器211の後段に具備することで、制御監視出力モニタ210は第1光増幅ユニット201から光ファイバ伝送路202に送出される制御監視光の出力レベルをモニタし、当該モニタ結果を制御監視送信器207に伝達し、制御監視送信器207では波長数情報および信号出力レベル情報とともに制御監視信号の出力レベル情報を含んだ制御監視光が生成され、当該制御監視光は光ファイバ伝送路202に送出される。伝送路下流の制御監視入力モニタ217で、光ファイバ伝送路202を伝搬してきた制御監視光の入力レベルはモニタされ、そのモニタ結果は制御回路216に伝達される。このとき制御監視光の伝搬によって伝達された制御監視光の出力レベル情報と制御監視入力モニタ217でモニタされた制御監視光の入力レベル情報は、主信号であるWDM信号光の波長断発生時(WDM信号光の波長数ゼロのとき)におけるスパンロス算出に用いられる。一般的に、波長断発生時においても、制御監視光は疎通している場合が多いので、波長断発生後から波長断が復旧するまでの間は、上流側の第1光増幅ユニット201での制御監視出力レベル情報と、下流側の第2光増幅ユニット203の制御監視入力レベル情報とからスパンロスの変動量をモニタすることで、波長断の復旧時のWDM信号光の伝送品質を良好に保つことが可能となる。
【0015】
図3は、ラマンアンプモジュールを備えた従来技術の光中継システムを示す略図である。ここで、図3に示すように伝送路下流の第2光増幅ユニット303内に光ラマンアンプモジュール318を備えて、光ラマンアンプモジュール318内に具備した励起光源319から励起光をWDM信号光の進行方向とは逆向きに光ファイバ伝送路302に送出して、光ファイバ伝送路302で減衰したWDM信号光をラマン増幅する場合について言及する。
【0016】
主信号であるWDM信号光の波長断が発生していない場合、ラマンアンプモジュール318未導入時と同様に、伝送路上流の第1光増幅ユニット301内に備えた信号出力モニタ306で第1光増幅器305から出力されるWDM信号光の総パワーを検出及び生成した第1信号出力レベル情報と、波長数検出部304で検出及び生成した波長数情報を含んだ制御監視光を光ファイバ伝送路302に送出し、伝送路下流の第2光増幅ユニット303内に備えた第2信号入力モニタ313で第2光増幅器312に入力されるWDM信号光の総パワーを検出及び生成した第2信号入力レベル情報と、制御監視項受信器315で分波器311で分岐された制御監視光を受信することで取得した波長数情報及び信号出力レベル情報とを用いて、第1信号出力レベル情報と第2信号入力レベル情報からスパンロス(実際にはラマン利得が含まれているため、以降では「実効的なスパンロス」と記述する)の算出を行い、また算出した実効的なスパンロスに基づいて第2光増幅器312に設定する利得の算出を行い、さらに波長数情報から目標信号出力レベルを算出し、伝送路下流に備えた信号出力モニタ314で生成された出力レベル情報との差分を補正値として前記算出した利得の補正を行い、その補正した利得に従って、制御回路316は光増幅器312を制御することで出力一定制御は可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2008−85712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、ラマンアンプモジュールを備えた従来技術の光中継システムである図3において、主信号であるWDM信号光の波長断が発生した場合、ラマンアンプモジュール318未導入時と同じ方法で、すなわち制御監視信号の出力レベル情報と制御監視信号の入力レベル情報から実効的なスパンロスを算出し、当該実効的なスパンロスを基に第2光増幅器312の出力一定制御を行うと、次のような問題が生じる。
【0019】
図4は、ラマンアンプ導入時の伝送路下流における制WDM信号光と御監視光の光スペクトルである。一般的に図4に示すように主信号であるWDM信号光の波長帯のラマン利得は制御監視信号の波長帯のラマン利得に比べて数dB程度大きいため、制御監視信号の出力レベル情報と制御監視信号の入力レベル情報を基に算出した制御監視光の実効的なスパンロス(実際のスパンロスから制御監視光波長帯のラマン利得を差し引いた値)と主信号光の出力レベル情報と入力レベル情報を基に算出した主信号光の実効的なスパンロス(実際のスパンロスから主信号光波長帯のラマン利得を差し引いた値)にも数dB程度の差が生じてしまう。すなわち波長断発生時に、制御監視光の入出力レベル情報を基に算出した実効的なスパンロスに基づいて第2光増幅器312の信号出力レベルを制御する出力一定制御方式をラマンアンプが搭載された光中継システムに適用すると、第2光増幅器312から出力される信号レベルが数dB程度過剰な値に設定されてしまい、第2光増幅ユニット303内の装置内レベルダイヤが狂うことで、波長断からの復旧が大幅に遅れ、最悪の場合、後段に設置する別の光増幅器の故障に波及する可能性がある。
【0020】
本発明は上記の点に着目してなされたもので、ラマンアンプを導入した光中継システムにおいて、波長断発生時に制御監視信号の入出力レベルから算出する実効的なスパンロスに基づく出力一定制御を行うことにより、第2光増幅器から出力される信号レベルを適切に設定し、第2光増幅ユニット内の装置内レベルダイヤを正常にし、波長断からの復旧時間の低減および復旧時のWDM信号光の伝送品質を良好に保つ光中継システム及び光増幅装置を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記の目的を達成するため、本発明の光中継システムは、波長の異なる複数の光信号が合波されたWDM信号光に対して所望の波長の光信号を合分波する合分波器と、WDM信号光を増幅する第1光増幅ユニットと、前記第1増幅ユニットで増幅されたWDM信号光が一端に入力される光ファイバ伝送路と、前記光ファイバ伝送路の他端から出力されるWDM信号光を増幅する第2光増幅ユニットと、を含んだ光中継システムにおいて、前記第1光増幅ユニットに入力されるWDM信号光の波長数を検出して波長数情報を生成する波長数検出部を備え、前記第1光増幅ユニットは、入力されるWDM信号光を増幅する第1光増幅器と、前記第1光増幅器から出力されるWDM信号光の総パワーを検出して第1信号出力レベル情報を生成する第1信号出力モニタと、前記波長数検出部で生成された波長数情報および前記第1信号出力モニタで生成された第1信号出力レベル情報を含んだ制御監視光を送信する制御監視光送信器と、前記第1光増幅器で増幅されたWDM信号光および前記制御監視光送信器から送信された制御監視光を合波して前記光ファイバ伝送路の一端に与える合分波器と、前記制御監視光送信器から送信された前記制御監視光の一部を前記合分波器で分波して前記制御監視光の出力レベルをモニタする制御監視出力モニタと、を有している。
【0022】
さらに、前記第2光増幅ユニットは、前記光ファイバ伝送路の他端から出力される光をWDM信号光および制御監視光および制御監視光の一部に分波する分波器と、前記分波器で分波されたWDM信号光を増幅する第2光増幅器と、前記第2光増幅器に入力されるWDM信号光の総パワーを検出して信号入力レベル情報を生成する第2信号入力モニタと、前記第2光増幅器から出力されるWDM信号光の総パワーを検出して第2信号出力レベル情報を生成する第2信号出力モニタと、前記分波器で分波された制御監視光を受信して前記波長数情報および前記第1信号出力レベル情報を取得する制御監視光受信器と、前記分派器で分波された一部の前記制御監視光の入力レベルをモニタする制御監視信号入力モニタと、前記光ファイバ伝送路における主信号の実効的なスパンロスを算出し、当該実効的なスパンロスに基づいて前記第2光増幅器に設定する利得を算出すると共に、前記制御監視光受信器で取得された波長数情報を用いて前記第2光増幅器の目標信号出力レベルを算出し、その目標信号出力レベルと前記第2信号出力モニタで生成された第2信号出力レベル情報との差分を補正値として前記算出した利得の補正を行い、その補正した利得に従って前記第2光増幅器を制御する制御回路と、前記光ファイバ伝送路で減衰したWDM信号光を増幅するラマンアンプモジュールを有している。
【0023】
さらに、前記ラマンアンプモジュールは、前記WDM信号光をラマン増幅するための励起光を前記光ファイバ伝送路に送出する励起光源と、前記光ファイバ伝送路から伝搬されてくる前記WDM信号光と前記制御監視光と前記励起光を逆進方向に合波する合波器と、前記励起光源から出力される前記励起光の出力パワーを検出する励起光パワー検出部と、制御監視信号の出力レベル情報と入力レベル情報とから算出される制御監視信号の実効的なスパンロスと前記励起光パワー検出部で検出した励起光の出力パワー情報と前記光ファイバ伝送路のファイバ種別情報に基づいて主信号波長帯のラマン利得を算出し、当該主信号波長帯のラマン利得を用いて主信号の実効的なスパンロスを算出するために参照する参照テーブルと、を有している。
【0024】
上記のような本発明の光中継システムにおいて、主信号であるWDM信号光の波長断が発生した場合、前記第1光増幅ユニットから光ファイバ伝送路に出力される制御監視光の出力レベル情報が制御監視光を利用し前記第2光増幅ユニットに伝えられる。前記第2光増幅ユニットの制御回路は、制御監視光の出力レベル情報に示される制御監視光の出力レベルと、制御監視信号入力モニタで検出された制御監視信号の入力レベル情報を用いて制御監視光の実効的なスパンロスを算出し、前記制御監視光の実効的なスパンロスと前記励起光パワー検出部で検出した励起光の出力パワー情報と前記伝送路のファイバ種別情報に基に前記参照テーブルを参照して主信号光の実効的なスパンロスを算出し、前記主信号の実効的なスパンロスに基づいて第2光増幅器に設定する利得を算出する。算出された差分を用いて前記実行的なスパンロスに基づいて算出した利得を補正し、補正後の利得に従って第2光増幅器の制御を行う。
【0025】
また制御監視光の実効的なスパンロスにラマン利得差を加えることで、主信号光の実効的なスパンロスが算出できる。また、WDM信号光の波長数情報を用いて第2光増幅器712の目標信号出力レベルが計算され、その目標信号出力レベルと第2信号出力モニタ714で検出された信号出力レベルとの差分が計算される。前記主信号の実効的なスパンロスを基に算出した利得は実効的なスパンロスの測定誤差を含んでいるので、その誤差の補正が波長数情報を用いて計算した信号出力レベルの目標値と実測値との差分により行われ、補正後の利得に従って第2光増幅器712の制御が行われる。
【0026】
上記のような本発明の光中継システムにおいて、前記参照テーブルは、励起光の出力パワーとファイバ種別に対応して、主信号のラマン利得と、制御監視光のラマン利得の差(ラマン利得差)が格納されている。ラマン利得の波長方向のプロファイルは、励起光の出力パワーとファイバ種別でそのプロファイルは一意に決定される。そのため、例えば、あるファイバ種別の伝送路において、励起光の出力パワーを変化させた時の主信号光の波長帯のラマン利得と制御監視光の波長帯のラマン利得の値を実測しておき、それらの実測値の差を求めることで、あるファイバ種別と励起光の出力パワーに対応したラマン利得差(主信号光の波長帯のラマン利得−制御監視光の波長帯のラマン利得)のテーブルが作成できる。さらにファイバ種別を変更して、同様の作業を行うことで参照作成できる。参照テーブルは、ラマン利得の実測値ではなく、計算で求めたラマン利得プロファイルから作成しても良い。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、主信号であるWDM信号光の波長断が発生した場合においても、第2光増幅器から出力される信号レベルを適切に設定し、第2光増幅ユニット内の装置内レベルダイヤを正常にし、波長断からの復旧時間の低減および復旧時のWDM信号光の伝送品質を良好に保つことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】光中継伝送における光増幅の方法を示す略図である。(a)光増幅にEDFAを使用した場合の構成図(b)(a)の場合の伝送距離に対する光パワーを示す。(c)光増幅にEDFAと光ラマンアンプを使用した場合の構成図(d)(c)の場合の伝送距離に対する光パワーを示す。
【図2】従来技術の光中継システムを示す略図である。
【図3】ラマンアンプモジュールを備えた従来技術の光中継システムを示す略図である。
【図4】ラマンアンプ導入時の伝送路下流における制WDM信号光と御監視光の光スペクトルである。
【図5】ラマンアンプ未導入時におけるWDM信号光の伝送距離に対する光レベルを示すグラフである。
【図6−a】ラマンアンプ導入時における制御監視光の伝送距離に対する光レベルを示すグラフである。
【図6−b】ラマンアンプ導入時における雑音光の伝送距離に対する光レベルを示すグラフである。
【図7】本発明の第1の実施の形態の光伝送システムの構成図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態の光伝送システムの構成図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態の光伝送システムの構成図である。
【図10−a】ラマンアンプ導入時の伝送路下流における制WDM信号光と制御監視光の光スペクトルで、制御監視光の波長帯においてラマン利得の波長依存性の影響がある場合の略図である。
【図10−b】ラマンアンプ導入時の伝送路下流における制WDM信号光と御監視光の光スペクトルで、光フィルタを用いて制御監視光の波長帯においてラマン利得の波長依存性の影響がないようにした場合の略図である。
【図10−c】ラマンアンプ導入時の伝送路下流における制WDM信号光と御監視光の光スペクトルで、励起光の波長数を増やして、制御監視光の波長帯においてラマン利得の波長依存性の影響がないようにした場合の略図である。
【図11】第1の実施の形態で用いる参照用テーブルの一例を示している略図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0030】
図7は、本発明の第1実施形態によるラマンアンプが導入された光中継システムの主要部の構成を示すブロック図である。
【0031】
図7において、本実施形態の光中継システムは、波長の異なる複数の光信号が合波されたWDM信号光に対して所望の波長の光信号を合分波する合分波器700と、WDM信号光を増幅する第1光増幅ユニット701と、前記第1増幅ユニット701で増幅されたWDM信号光が一端に入力される光ファイバ伝送路702と、前記光ファイバ伝送路702の他端から出力されるWDM信号光を増幅する第2光増幅ユニット703と、から構成されており、前記第1光増幅ユニット701に入力されるWDM信号光の波長数を検出して波長数情報を生成する波長数検出部704を備える。
【0032】
また、前記第1光増幅ユニット701は、入力されるWDM信号光を増幅する第1光増幅器705と、前記第1光増幅器705から出力されるWDM信号光の総パワーを検出して第1信号出力レベル情報を生成する第1信号出力モニタ706と、前記波長数検出部704で生成された波長数情報および前記第1信号出力モニタ706で生成された第1信号出力レベル情報を含んだ制御監視光を送信する制御監視光送信器707と、前記第1光増幅器705で増幅されたWDM信号光および前記制御監視光送信器707から送信された制御監視光を合波して前記光ファイバ伝送路702の一端に与える合分波器709と、前記制御監視光送信器707から送信された前記制御監視光の一部を前記合分波器709で分波して前記制御監視光の出力レベルをモニタする制御監視出力モニタ710と、を有している。
【0033】
前記波長数検出部704で検出された波長数情報および前記第1信号出力モニタ706で検出された第1信号出力レベル情報は、図7中に細い矢印線で示した制御線を介して、前記制御監視光送信器707に伝達され、制御監視信号に含ませる。
【0034】
さらに、前記第2光増幅ユニット703は、前記光ファイバ伝送路702の他端から出力される光をWDM信号光および制御監視光および制御監視光の一部に分波する分波器711と、前記分波器711で分波されたWDM信号光を増幅する第2光増幅器712と、前記第2光増幅器712に入力されるWDM信号光の総パワーを検出して信号入力レベル情報を生成する信号入力モニタ713と、前記第2光増幅器712から出力されるWDM信号光の総パワーを検出して第2信号出力レベル情報を生成する第2信号出力モニタ714と、前記分波器711で分波された制御監視光を受信して前記波長数情報および前記第1信号出力レベル情報を取得する制御監視光受信器715と、前記分派器711で分波された一部の前記制御監視光の入力レベルをモニタする制御監視信号入力モニタ717と、前記光ファイバ伝送路702における主信号の実効的なスパンロス(実際のスパンロスからラマン利得を差し引いた値)を算出し、その実効的なスパンロスに基づいて前記第2光増幅器712に設定する利得を算出すると共に、前記制御監視光受信器715で取得された波長数情報を用いて前記第2光増幅器712の目標信号出力レベルを算出し、その目標信号出力レベルと前記第2信号出力モニタ714で生成された第2信号出力レベル情報との差分を補正値として前記算出した利得の補正を行い、その補正した利得に従って前記第2光増幅器を制御する制御回路716と、前記光ファイバ伝送路702で減衰したWDM信号光を増幅するラマンアンプモジュール718を有している。
【0035】
前記ラマンアンプモジュール718は、前記WDM信号光をラマン増幅するための励起光を前記光ファイバ伝送路712に送出する励起光源719と、前記光ファイバ伝送路702の上流から伝搬されてくる前記WDM信号光と前記制御監視光と前記励起光を逆進方向に合波する合波器720と、前記励起光源719から出力される前記励起光の出力パワーを検出する励起光パワー検出部721と、制御監視信号の出力レベル情報と入力レベル情報とから算出される制御監視信号の実効的なスパンロスと前記励起光パワー検出部721で検出した励起光の出力パワー情報と前記伝送路702のファイバ種別情報に基づいて主信号波長帯のラマン利得を算出して、当該主信号波長帯のラマン利得を用いて主信号の実効的なスパンロスを算出するために参照する参照テーブル722と、を有している。
【0036】
ここで、前記伝送路のファイバ種別情報について説明する。ファイバ種別情報は、ファイバケーブルを伝送路に敷設したときのデータもしくは資料などから決定する方法ないしは、サービスインの直前にファイバ伝送路の波長分散や損失などの伝送路情報を測定し、その情報に基づいて決定する方法によって明らかになる。後者の方法の例として、各ファイバは例えばファイバの波長分散に違いがあるため、波長分散が16〜20ps/nm/km程度だった場合はSMF(Single mode fiber)、3〜5ps/nm/km程度だった場合はDSF(Dispersion shift fiber)などと決定することができる。
【0037】
図11に参照テーブル722の一例を示す。参照テーブルには、励起光の出力パワー(PPump1、Ppump2・・・)とファイバ種別(SMF、DSF・・・)に対応して、主信号のラマン利得と、制御監視光のラマン利得の差(ラマン利得差)が格納されている。ここで、テーブルの作成アルゴリズムについて説明する。ラマン利得の波長方向のプロファイルは、図4に示したような形状をしており、励起光の出力パワーとファイバ種別でそのプロファイルは一意に決定される。そのため、例えば、あるファイバ種別の伝送路において、励起光の出力パワーを変化させた時の主信号光の波長帯のラマン利得と制御監視光の波長帯のラマン利得の値を実測しておき、それらの実測値の差を求めることで、あるファイバ種別と励起光の出力パワーに対応したラマン利得差(主信号光の波長帯のラマン利得−制御監視光の波長帯のラマン利得)のテーブルが作成できる。さらにファイバ種別を変更して、同様の作業を行うことで図11に示したような参照テーブル722が作成できる。参照テーブルは、ラマン利得の実測値ではなく、計算で求めたラマン利得プロファイルから作成しても良い。
【0038】
主信号であるWDM信号光の波長断が発生していない場合、上流側の第1光増幅ユニット701から光ファイバ伝送路702に出力されるWDM信号光についての波長数情報および第1信号出力レベル情報が制御監視光を利用して下流側の第2光増幅ユニット703に伝えられる。第2光増幅ユニット703では、第1信号出力レベル情報に示される上流側でのWDM信号光の総出力パワーと、信号入力モニタ713で検出された下流側でのWDM信号光の総入力パワーを用いてWDM信号光の実効的なスパンロスLSignal-EFF[dB]が算出され、当該WDM信号光の実効的なスパンロスに基づいて第2光増幅器712に設定する利得GEDFA[dB]=LSignal-EFFが算出される。
【0039】
また、WDM信号光の波長数情報N[波] と1波長あたりの出力パワーPOUTperλ[dBm]を用いて第2光増幅器712の目標信号出力レベルPOUTtarget-Signal[dBm]=POUTperλ・10・Log(N)が算出され、その目標信号出力レベルPOUTtarget-Signalと第2信号出力モニタ714で検出された信号出力レベルPOUTExp-Signalとの差分が算出される。前記実効的なスパンロスを基に算出した利得は実効的なスパンロスの測定誤
差を含んでいるので、その誤差の補正が波長数情報を用いて算出した信号出力レベルの目標値と実測値との差分により行われ、補正後の利得に従って第2光増幅器712の制御が行なわれる。
【0040】
主信号であるWDM信号光の波長断が発生した場合、上流側の第1光増幅ユニット701から光ファイバ伝送路702に出力される制御監視光の出力レベル情報が制御監視光を利用して下流側の第2光増幅ユニット703に伝えられる。第2光増幅ユニット703では、制御回路716において、前記制御監視光受信機715で取得した前記波長数情報から、WDM信号光の波長数がゼロであり、主信号であるWDM信号光の波長断が発生したと判断される場合、図6−aのように、制御監視光の出力レベル情報に示される上流側での制御監視光の出力レベルP制御監視-OUT[dBm]と、制御監視信号入力モニタ717で検出された制御監視信号の入力レベルP制御監視-IN[dBm]を用いて制御監視光の実効的なスパンロスL制御監視-EFF[dB]=P制御監視-OUT−P制御監視-INが算出され、前記制御監視光の実効的なスパンロスL制御監視-EFF[dB]と前記励起光パワー検出部721で検出した励起光の出力パワー情報PPump-OUT[dBm]と前記伝送路702のファイバ種別情報を基に前記参照テーブル722を参照して主信号波長帯のラマン利得GRaman―Signal[dB]と制御監視信号波長帯のラマン利得GRaman―制御監視[dB]の差ΔGRaman[dB]を算出して、当該ラマン利得差ΔGRamanと前記制御監視光の実効的なスパンロスL制御監視-EFFを用いて主信号の実効的なスパンロスLSignal-EFF[dB]=L制御監視-EFF+ΔGRamanを算出し、前記主信号の実効的なスパンロスに基づいて第2光増幅器712に設定する利得GEDFA[dB]=LSignal-EFFが算出される。
【0041】
なお前記参照テーブルは、図11のようなテーブル形式に限らず、ファイバ種別ごとにテーブルを保有することでも、光中継システムの上位レイヤのOpS(オペレーションシステム)などから光ファイバ種別ごとのテーブルをインプットしてもよい。
【0042】
また、WDM信号光の波長数情報N[波]と1波長あたりの出力パワーPOUTperλ[dBm]を用いて第2光増幅器712の目標信号出力レベルPOUTtarget-Signal[dBm]=POUTperλ・10・Log(N)が算出され、その目標信号出力レベルPOUTtarget-Signalと第2信号出力モニタ714で検出された信号出力レベルPOUTExp-Signalとの差分が算出される。前記主信号の実効的なスパンロスを基に算出した利得は実効的なスパンロスの測定誤差を含んでいるので、その誤差の補正が波長数情報を用いて算出した信号出力レベルの目標値と実測値との差分により行われ、補正後の利得に従って第2光増幅器712の制御が行われる。
【0043】
なお、図10−aに示したように制御監視光は、製造ばらつきや、温度特性によって波長方向にばらつく場合がある。制御監視光の波長帯のラマン利得は波長依存性が顕著のため、上述の主信号波長帯のラマン利得GRaman―Signal[dB]と制御監視信号波長帯のラマン利得GRaman―制御監視[dB]の差ΔGRaman[dB]にもばらつきが生じ、前記第2光増幅器712の出力制御に誤差が生じる可能性が考えられる。そこで、制御監視光入力モニタ717の直前に光等化器もしくは光フィルタなどを備えて、図10−bに示すように制御監視光の波長帯にラマン利得の波長依存性が現れないようにしたり、ラマンアンプモジュール718に具備した励起光源719の波長数を増やし、図10−cに示すようにラマン利得の広域化を行うことでラマン利得の波長依存性が現れないようにしたり、制御監視光入力モニタ717で複数回モニタした制御監視光の入力レベルの値を平均化することで波長ばらつきを軽減することで、ラマン利得の差ΔGRamanのばらつきが抑えられ、前記第2ひかり増幅器712の出力制御は正常に行われる。ただし、本発明では、前記波長数検出部704で取得した波長数情報に基づいて、前記第2光増幅器712の出力制御の補正を行うため、大きな誤差は生じないと考えられる。
【実施例2】
【0044】
図8は、本発明の第2実施形態によるラマンアンプが導入された光中継システムの主要部の構成を示すブロック図である。図8において、本実施形態の光中継システムは、波長の異なる複数の光信号が合波されたWDM信号光に対して所望の波長の光信号を合分波する合分波器800と、WDM信号光を増幅する第1光増幅ユニット801と、前記第1増幅ユニット801で増幅されたWDM信号光が一端に入力される光ファイバ伝送路802と、前記光ファイバ伝送路802の他端から出力されるWDM信号光を増幅する第2光増幅ユニット803と、から構成されており、前記第1光増幅ユニット801に入力されるWDM信号光の波長数を検出して波長数情報を生成する波長数検出部804を備える。
【0045】
また、前記第1光増幅ユニット801は、入力されるWDM信号光を増幅する第1光増幅器805と、前記第1光増幅器805から出力されるWDM信号光の総パワーを検出して第1信号出力レベル情報を生成する第1信号出力モニタ806と、前記波長数検出部804で生成された波長数情報および前記第1信号出力モニタ806で生成された第1信号出力レベル情報を含んだ制御監視光を送信する制御監視光送信器807と、前記第1光増幅器805で増幅されたWDM信号光および前記制御監視光送信器807から送信された制御監視光を合波して前記光ファイバ伝送路802の一端に与える合分波器809と、前記第1光増幅器805から出力される前記雑音光(ASE:Amplicated Spontaneous Emission)の一部を分岐して前記雑音光の出力レベルをモニタする雑音光出力モニタ810と、を有している。
【0046】
さらに、前記第2光増幅ユニット803は、前記光ファイバ伝送路802の他端から出力される光をWDM信号光および制御監視光および制御監視光の一部に分波する分波器811と、前記分波器811で分波されたWDM信号光を増幅する第2光増幅器812と、前記第2光増幅器812に入力されるWDM信号光の総パワーを検出して信号入力レベル情報を生成する信号入力モニタ813と、前記第2光増幅器812から出力されるWDM信号光の総パワーを検出して第2信号出力レベル情報を生成する第2信号出力モニタ814と、前記分波器811で分波された制御監視光を受信して前記波長数情報および前記第1信号出力レベル情報を取得する制御監視光受信器815と、前記第1増幅器から出力された前記雑音光の前記第2増幅ユニットへの入力レベルをモニタする雑音光入力モニタ817と、前記光ファイバ伝送路802における主信号の実効的なスパンロス(実際のスパンロスからラマン利得を差し引いた値)を算出し、その実効的なスパンロスに基づいて前記第2光増幅器812に設定する利得を算出すると共に、前記制御監視光受信器815で取得された波長数情報を用いて前記第2光増幅器812の目標信号出力レベルを算出し、その目標信号出力レベルと前記第2信号出力モニタ814で生成された第2信号出力レベル情報との差分を補正値として前記算出した利得の補正を行い、その補正した利得に従って前記第2光増幅器を制御する制御回路816と、前記光ファイバ伝送路802で減衰したWDM信号光を増幅するラマンアンプモジュール818を有している。
【0047】
前記ラマンアンプモジュール818は、前記WDM信号光をラマン増幅するための励起光を前記光ファイバ伝送路812に送出する励起光源819と、前記光ファイバ伝送路802の上流から伝搬されてくる前記WDM信号光と前記制御監視光と前記励起光を逆進方向に合波する合波器820と、を有している。
【0048】
上記のような構成の光中継システムでは、主信号であるWDM信号光の波長断が発生していない場合、上流側の第1光増幅ユニット801から光ファイバ伝送路802に出力されるWDM信号光についての波長数情報および第1信号出力レベル情報が制御監視光を利用して下流側の第2光増幅ユニット803に伝えられる。第2光増幅ユニット803では、制御回路816において、第1信号出力レベル情報に示される上流側でのWDM信号光の総出力パワーと、信号入力モニタ813で検出された下流側でのWDM信号光の総入力パワーを用いてWDM信号光の実効的なスパンロスLSignal-EFF[dB]が算出され、当該WDM信号光の実効的なスパンロスに基づいて第2光増幅器812に設定する利得GEDFA[dB]=LSignal-EFFが算出される。また、WDM信号光の波長数情報N[波] と1波長あたりの出力パワーPOUTperλ[dBm]を用いて第2光増幅器812の目標信号出力レベルPOUTtarget-Signal[dBm]=POUTperλ・10・Log(N)が算出され、その目標信号出力レベルPOUTtarget-Signalと第2信号出力モニタ814で検出された信号出力レベルPOUTExp-Signalとの差分が算出される。前記実効的なスパンロスを基に算出した利得は実効的なスパンロスの測定誤差を含んでいるので、その誤差の補正が波長数情報を用いて算出した信号出力レベルの目標値と実測値との差分により行われ、補正後の利得に従って第2光増幅器812の制御が行われる。
【0049】
また主信号であるWDM信号光の波長断が発生した場合、上流側の第1光増幅ユニット801から光ファイバ伝送路802に出力される制御監視光の出力レベル情報が制御監視光を利用して下流側の第2光増幅ユニット803に伝えられる。第2光増幅ユニット803では、制御回路816において、前記制御監視光受信機715で取得した前記波長数情報から、WDM信号光の波長数がゼロであり、主信号であるWDM信号光の波長断が発生したと判断される場合、図6−bのように、前記第1増幅器から出力された雑音光の出力レベル情報PASE-OUT[dBm]と、雑音光入力モニタ817で検出された前記雑音光の入力レベルPASE-IN[dBm]を用いて前記雑音光の実効的なスパンロスLASE-EFF[dB]=PASE-OUT−PASE-INが算出され、前記雑音光の実効的なスパンロスLASE-EFF[dB]に基づいて、第2光増幅器812に設定する利得GEDFA[dB]=LASE-EFFが算出される。
【0050】
例えば、第1光増幅器805のNF(Noise Fogure)を5[dB]、実際のスパンロスを30[dB]、ラマン利得を15[dB]とすると、出力レベルPASE-OUT=−28[dBm]=−53(NF5[dB]、光増幅器0[dBm]入力の場合の0.1nmあたりの光雑音量)+25(主信号波長帯域30nm)、前記雑音光の入力レベルPASE-IN=−43[dBm]=−28(出力レベル)−30(実際のスパンロス)+15(ラマン利得)となり、実現可能な光レベルである。また、WDM信号光の波長数情報N[波]と1波長あたりの出力パワーPOUTperλ[dBm]を用いて第2光増幅器812の目標信号出力レベルPOUTtarget-Signal[dBm]=POUTperλ・10・Log(N)が算出され、その目標信号出力レベルPOUTtarget-Signalと第2信号出力モニタ814で検出された信号出力レベルPOUTExp-Signalとの差分が算出される。前記主信号の実効的なスパンロスを基に算出した利得は実効的なスパンロスの測定誤差を含んでいるので、その誤差の補正が波長数情報を用いて算出した信号出力レベルの目標値と実測値との差分により行われ、補正後の利得に従って第2光増幅器812の制御が行われる。
【実施例3】
【0051】
図9は、本発明の第3実施形態によるラマンアンプが導入された光中継システムの主要部の構成を示すブロック図である。
【0052】
図9において、本実施形態の光中継システムは、波長の異なる複数の光信号が合波されたWDM信号光に対して所望の波長の光信号を合分波する合分波器900と、WDM信号光を増幅する第1光増幅ユニット901と、前記第1増幅ユニット901で増幅されたWDM信号光が一端に入力される光ファイバ伝送路902と、前記光ファイバ伝送路902の他端から出力されるWDM信号光を増幅する第2光増幅ユニット903と、から構成されており、前記第1光増幅ユニット901に入力されるWDM信号光の波長数を検出して波長数情報を生成する波長数検出部904を備える。
【0053】
また、前記第1光増幅ユニット901は、入力されるWDM信号光を増幅する第1光増幅器905と、前記第1光増幅器905から出力されるWDM信号光の総パワーを検出して第1信号出力レベル情報を生成する第1信号出力モニタ906と、前記波長数検出部904で生成された波長数情報および前記第1信号出力モニタ906で生成された第1信号出力レベル情報を含んだ制御監視光を送信する制御監視光送信器907と、前記第1光増幅器905で増幅されたWDM信号光および前記制御監視光送信器907から送信された制御監視光を合波して前記光ファイバ伝送路902の一端に与える合分波器909と、前記第1光増幅器が増幅するWDM信号光の波長数がゼロになった場合に主信号の代わりにダミー光を前記光ファイバ伝送路902に送出するダミー光源910と、を有している。
【0054】
さらに、前記第2光増幅ユニット903は、前記光ファイバ伝送路902の他端から出力される光をWDM信号光および制御監視光および制御監視光の一部に分波する分波器911と、前記分波器911で分波されたWDM信号光を増幅する第2光増幅器912と、前記第2光増幅器912に入力されるWDM信号光の総パワーを検出して信号入力レベル情報を生成する信号入力モニタ913と、前記第2光増幅器912から出力されるWDM信号光の総パワーを検出して第2信号出力レベル情報を生成する第2信号出力モニタ914と、前記分波器911で分波された制御監視光を受信して前記波長数情報および前記第1信号出力レベル情報を取得する制御監視光受信器915と、前記光ファイバ伝送路902における主信号の実効的なスパンロス(実際のスパンロスからラマン利得を差し引いた値)を算出し、その実効的なスパンロスに基づいて前記第2光増幅器912に設定する利得を算出すると共に、前記制御監視光受信器915で取得された波長数情報を用いて前記第2光増幅器912の目標信号出力レベルを算出し、その目標信号出力レベルと前記第2信号出力モニタ914で生成された第2信号出力レベル情報との差分を補正値として前記算出した利得の補正を行い、その補正した利得に従って前記第2光増幅器を制御する制御回路916と、前記光ファイバ伝送路902で減衰したWDM信号光を増幅するラマンアンプモジュール917を有している。
【0055】
前記ラマンアンプモジュール917は、前記WDM信号光をラマン増幅するための励起光を前記光ファイバ伝送路912に送出する励起光源918と、前記光ファイバ伝送路902の上流から伝搬されてくる前記WDM信号光および前記制御監視光と、前記励起光とを逆進方向に合波する合波器919と、を有している。
【0056】
上記のような構成の光中継システムでは、主信号であるWDM信号光の波長断が発生していない場合、上流側の第1光増幅ユニット901から光ファイバ伝送路902に出力されるWDM信号光についての波長数情報および第1信号出力レベル情報が制御監視光を利用して下流側の第2光増幅ユニット903に伝えられる。第2光増幅ユニット903では、制御回路916において、第1信号出力レベル情報に示される上流側でのWDM信号光の総出力パワーと、信号入力モニタ913で検出された下流側でのWDM信号光の総入力パワーを用いてWDM信号光の実効的なスパンロスLSignal-EFF[dB]が算出され、当該WDM信号光の実効的なスパンロスに基づいて第2光増幅器912に設定する利得GEDFA[dB]=LSignal-EFFが算出される。また、WDM信号光の波長数情報N[波] と1波長あたりの出力パワーPOUTperλ[dBm]を用いて第2光増幅器912の目標信号出力レベルPOUTtarget-Signal[dBm]=POUTperλ・10・Log(N)が算出され、その目標信号出力レベルPOUTtarget-Signalと第2信号出力モニタ914で検出された信号出力レベルPOUTExp-Signalとの差分が算出される。前記実効的なスパンロスを基に算出した利得は実効的なスパンロスの測定誤差を含んでいるので、その誤差の補正が波長数情報を用いて算出した信号出力レベルの目標値と実測値との差分により行われ、補正後の利得に従って第2光増幅器912の制御が行われる。
【0057】
また主信号であるWDM信号光の波長断が発生した場合、上流側の第1光増幅ユニット901から光ファイバ伝送路902に出力される前記ダミー光の出力レベル情報が制御監視光を利用して下流側の第2光増幅ユニット903に伝えられる。第2光増幅ユニット903では、制御回路916において、前記制御監視光受信機715で取得した前記波長数情報から、WDM信号光の波長数がゼロであり、主信号であるWDM信号光の波長断が発生したと判断される場合、前記ダミー光の出力レベル情報PDummy-OUT[dBm]と、第1信号入力モニタ913で検出された前記ダミー光の入力レベルPDummy-IN[dBm]を用いて前記ダミー光の実効的なスパンロスLDummy-EFF[dB]=PDummy-OUT−PDummy-INが算出され、前記ダミー光の実効的なスパンロスLDummy-EFF[dB]に基づいて、第2光増幅器912に設定する利得GEDFA[dB]=LDummy-EFFが算出される。また、WDM信号光の波長数情報N[波]と1波長あたりの出力パワーPOUTperλ[dBm]を用いて第2光増幅器812の目標信号出力レベルPOUTtarget-Signal[dBm]=POUTperλ・10・Log(N)が算出され、その目標信号出力レベルPOUTtarget-Signalと第2信号出力モニタ914で検出された信号出力レベルPOUTExp-Signalとの差分が算出される。前記主信号の実効的なスパンロスを基に算出した利得は実効的なスパンロスの測定誤差を含んでいるので、その誤差の補正が波長数情報を用いて算出した信号出力レベルの目標値と実測値との差分により行われ、補正後の利得に従って第2光増幅器912の制御が行われる。
【符号の説明】
【0058】
100−1,100−2,100−3,100−4 中継器
101−1,101−2 光ファイバ伝送路
102−1, 102−2, 102−3, 102−4 EDFA
103−1, 103−2 励起光源
104−1, 104−2 光ラマンアンプモジュール
200,300,700,800,900 合分波器
201,301,701,801,901 第1光増幅ユニット
202,302,702,802,902 光ファイバ伝送路
203,303,703,803,903 第2光増幅ユニット
204,304,704,804,904 波長数検出部
205,305,705,805,905 第1光増幅器
206,306,706,806,906 第1信号出力モニタ
207,307,707,807,907 制御監視光送信器
208,308,708,808,908 制御回路
209,309,709,809,909 合分波器
210,310,710 制御監視光出力モニタ
211,311,711,811,911 分波器
212,312,712,812,912 第2光増幅器
213,313,713,813,913 第2信号入力モニタ
214,314,714,814,914 第2信号出力モニタ
215, 315, 715, 815, 915 制御監視光受信器
216,316,716,816,916 制御回路
217,317,717 制御監視光入力モニタ
318,718,818,917 光ラマンアンプモジュール
319,719,819,918 励起光源
320,720,820,919 合波器
721 励起光パワー検出部
722 参照用テーブル
810 雑音光出力モニタ
817 雑音光入力モニタ
910 ダミー光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の信号光と第2の信号光を含む光信号を光ファイバ伝送路に送出する光送信器と、前記光信号が伝搬する光ファイバ伝送路と、前記光ファイバ伝送路で伝搬してきた光信号を受信する光受信器と、一定区間の光ファイバ伝送路で減衰した少なくとも前記第1の信号光を含む前記光信号を増幅して後段に続く光ファイバに送出する光増幅器と、前記光ファイバ伝送路に前記光信号の進行方向とは逆向きに励起光を送出して前記光信号を前記光ファイバ伝送路上で分布ラマン増幅するラマンアンプモジュールをそれぞれ1つ以上含む光増幅ユニットと、前記光ファイバ伝送路の一端における前記第2の信号光の光レベルである出力レベルから前記光ファイバ伝送路の他端における前記第2の信号光の光レベルである出力レベルを差し引いた前記第2の信号光の伝送路損失と、前記ラマンアンプモジュールから出力される励起光の前記光ファイバ伝送路への入力パワーと、前記光ファイバ伝送路のファイバ種別から算出される前記第1の信号光の伝送路損失に基づいて前記光増幅器の出力制御を行う制御部を有することを特徴とする光中継システム。
【請求項2】
前記第2の信号光は、線路監視、波長数情報の伝達、前記光信号の前記光ファイバ伝送路への入力レベル情報の伝達、前記信号光の前記光ファイバ伝送路への入力レベル情報の伝達などを目的にした制御監視光であって、
前記制御監視光の波長帯が主信号である前記第1の信号光の波長帯とは異なることを特徴とする請求項1に記載の光中継システム
【請求項3】
前記第2の信号光は主信号である前記第1の信号光と同じ波長帯であって、前記光送信器から出力される雑音光であることを特徴とする請求項1に記載の光中継システム
【請求項4】
前記第2の信号光は主信号である前記第1の信号光と同じ波長帯であって、前記光ファイバ伝送路を伝搬している前記第1の信号光が1波長も伝搬していない波長断状態であるときに伝搬するダミー光であることを特徴とする請求項1に記載の光中継システム
【請求項5】
前記光ファイバ伝送路の他端における前記第2の信号光の光レベルである前記出力レベルは、前記光増幅ユニット内に具備してある前記第2の信号光用の出力レベルモニタによってモニタされ、前記出力レベルモニタには、光フィルタを設置してラマン利得の波長依存性の影響を回避する機構を具備した請求項1に記載の光中継システム
【請求項6】
前記ラマンアンプモジュールは、前記励起光を前記光ファイバ伝送路に送出する1つ以上の励起光源を具備し、前記励起光源は、主信号である前記第1の信号光の波長帯と前記第2の信号光の波長帯でラマン利得に波長依存性がでないように前記励起光の波長配置を実現することを特徴とする請求項1に記載の光中継システム
【請求項7】
前記光ファイバ伝送路の他端における前記第2の信号光の光レベルである前記出力レベルは、前記出力レベルモニタによってモニタされた値の2回以上の測定結果の平均値として、ラマン利得の波長依存性の影響を回避する機構を具備した請求項1に記載の光中継システム
【請求項8】
請求項1に記載の光中継システムであって、前記光中継システムは前記光ファイバ伝送路を伝搬する前記光信号の波長数を検出する波長数検出部を具備し、前記波長数検出部は前記光信号の波長数に変更があった場合に、前記波長数情報を前記制御監視光を介して前記光増幅ユニット内に設置された前記光増幅器の制御回路に伝達し、前記制御回路は前記波長数情報に基づいて前記光増幅器から出力される光パワーの補正を行うことを特徴とする。
【請求項9】
第1の信号光と第2の信号光を含む光信号を光ファイバ伝送路に光送信器より送出し、前記光ファイバ伝送路で伝搬してきた光信号を光受信器で受信し、一定区間の光ファイバ伝送路で減衰した少なくとも前記第1の信号光を含む前記光信号を光増幅器により増幅して後段に続く光ファイバに送出し、前記光ファイバ伝送路に前記光信号の進行方向とは逆向きに励起光を送出して前記光信号を前記光ファイバ伝送路上で分布ラマン増幅し、前記光ファイバ伝送路の一端における前記第2の信号光の光レベルである出力レベルから前記光ファイバ伝送路の他端における前記第2の信号光の光レベルである出力レベルを差し引いた前記第2の信号光の伝送路損失と、前記ラマンアンプモジュールから出力される励起光の前記光ファイバ伝送路への入力パワーと、前記光ファイバ伝送路のファイバ種別から算出される前記第1の信号光の伝送路損失に基づいて前記光増幅器の出力制御を行うこと特徴とする光中継方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6−a】
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【図6−b】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10−a】
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【図10−b】
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【図10−c】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−74456(P2013−74456A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211875(P2011−211875)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】