説明

光伝送装置および光伝送装置の制御方法

【課題】上位制御装置にかかる負担を軽減することが可能な光伝送装置を提供すること。
【解決手段】複数の波長の光を含む光信号を増幅するプリアンプ11と、光の波長数を増減させる増減手段13,14と、光信号を増幅して出力するブースタアンプ17と、光信号のパワーを検出する第1検出手段12および第2検出手段16と、第1検出手段によって検出されたパワーを波長数によって除算することで一波長あたりのパワーを求め、損失を一波長あたりのパワーから減ずることで予想光パワーを算出する第1算出手段18と、第2検出手段によって検出されたパワーを、増減の結果として得られる波長数によって除算することで一波長の実測光パワーを算出する第2算出手段18と、実測光パワーが予想光パワーから所定値以上乖離している場合には、異常が発生したと判定する判定手段18と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光伝送装置および光伝送装置の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光通信システムにおけるノードは、プリアンプ、ブースタアンプ、光スプリッタ、および、光クロスコネクト等の複数の光サブシステムモジュール(以下、単に「光モジュール」と称する)によって構成され、それぞれの光モジュールは上位システムによって制御(または監視)されている。各光モジュールは、それぞれの光モジュールで検出できる情報から異常を検出した場合には、アラームを発出する機能を有している。
【0003】
例えば、各光モジュールは入力光のパワーをモニタし、それぞれの光モジュールに設定されたアラーム閾値と比較し、モニタされるパワーがアラーム閾値よりも小さくなった場合には、入力断を示すアラームを発出するように構成されている。
【0004】
ところで、各光モジュールは、上位制御装置(上位システム)からの指令により、独立に制御されており、自モジュール以外の情報を知ることができない。このため、例えば、ある光モジュールで異常が発生した場合、それ以降の光モジュールは全て異常の発生を上位制御装置に通知することから、上位制御装置での処理が非常に煩雑となる。
【0005】
そこで、各光モジュールにおいて、アラーム閾値を変更可能にすることで、各光モジュールにおいて検出される異常の発生頻度を変更するための技術が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−098873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、各光モジュールで発生した異常は、全て上位制御装置に通知され、各光モジュールから通知された情報を集約することで、どの光モジュールにおいて異常が発生したかを上位制御装置が判断する。このため、上位制御装置は、各光モジュールからの情報を集約する処理が負荷となるという問題点がある。
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、上位制御装置に負担が少ない光伝送装置および光伝送装置の制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の光伝送装置は、複数の波長の光を含む光信号の入力を受けて増幅するプリアンプと、前記光信号に含まれる光の波長数を増減させる増減手段と、前記増減手段から出力される前記光信号を増幅して出力するブースタアンプと、前記プリアンプから出力される前記光信号のパワーを検出する第1検出手段と、前記ブースタアンプに入力される前記光信号のパワーを検出する第2検出手段と、前記第1検出手段によって検出されたパワーを、入力される光信号に含まれる波長数によって除算することで一波長あたりのパワーを求め、前記プリアンプの出力から前記ブースタアンプの入力までの間における損失を前記一波長あたりのパワーから減ずることで前記ブースタアンプの予想光パワーを算出する第1算出手段と、前記第2検出手段によって検出されたパワーを、前記増減手段による増減の結果として得られる波長数によって除算することで一波長の実測光パワーを算出する第2算出手段と、前記実測光パワーが前記予想光パワーから所定値以上乖離している場合には、異常が発生したと判定する判定手段と、を有することを特徴とする。
このような構成によれば、上位システムにかかる負担を軽減することが可能になる。
【0010】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記増減手段は、光クロスコネクトまたはスプリッタであることを特徴とする。
このような構成によれば、光クロスコネクトまたはスプリッタによって波長数が増減される場合であっても、異常の発生を正確に判定することが可能になる。
【0011】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記光クロスコネクトは、前記プリアンプから入力された光信号に対して、他の光伝送装置から供給された所定の波長数の光信号を付加するか、または、前記プリアンプから入力された光信号の中から所定の波長数の光信号を他の光伝送装置に対して転送することを特徴とする。
このような構成によれば、他の光伝送装置との間で光信号の授受が行われる場合であっても、異常の発生を正確に判定することが可能になる。
【0012】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記入力される光信号に含まれる波長数および前記増減手段による増減の結果として得られる波長数を示す情報を、上位の制御装置としての上位制御装置から取得することを特徴とする。
このような構成によれば、他の光伝送装置との間で光信号の授受が行われる場合であっても、上位制御装置からの情報に基づいて、異常の発生を正確に判定することが可能になる。
【0013】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記入力される光信号に含まれる波長数および前記増減手段による増減の結果として得られる波長数を示す情報を、光チャンネルモニタによって取得することを特徴とする。
このような構成によれば、他の光伝送装置との間で光信号の授受が行われる場合であっても、光チャンネルモニタからの情報に基づいて、異常の発生を正確に判定することが可能になる。また、光チャンネルモニタからの情報に基づくことで、上位制御装置との間の通信が不要になることから、上位制御装置にかかる負荷を一層減少させることができる。
【0014】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記判定手段によって異常が発生したと判定された場合には、前記プリアンプまたは前記ブースタアンプのゲインを調整することで、異常の回復を図る回復手段を有していることを特徴とする。
このような構成によれば、異常が発生した場合であっても、個々の光伝送装置において回復を図ることにより、システム全体での通信の遮断状態を最少に留めることが可能になる。
【0015】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記回復手段は、回復に失敗した場合には、上位制御装置に対して異常の発生を通知することを特徴とする。
このような構成によれば、回復できなかった場合に初めて上位制御装置に通知されることから、上位制御装置の負担を軽減することができる。
【0016】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記プリアンプ、前記増減手段、および、前記ブースタアンプは、それぞれ固有の制御部を有し、当該制御部は入力される光信号が遮断された場合には、アラームを発出し、前記判定手段は、前記制御部によってアラームが発出された場合であっても、当該アラームを発出した制御部よりも前段の制御部がアラームを発出している場合には、後段の制御部が発出するアラームについては無視することを特徴とする。
このような構成によれば、アラームの発出が重複した場合であっても、負荷が増大することを防止できる。
【0017】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記判定手段は、アラームを発出している制御部のうち、最上流に存在する制御部に対応する装置が異常の発生源として特定することを特徴とする。
このような構成によれば、異常の発生源を特定することができるので、回復処理を迅速に実行することができるとともに、アラームの発出が重複した場合であっても、負荷が増大することを防止できる。
【0018】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記増減手段は光クロスコネクトであり、前記判定手段は前記光クロスコネクトの設定情報を参照し、前記光クロスコネクトから光信号が出力される状態である場合に、前記第2検出手段によって光信号が検出されないときには、前記光クロスコネクトにおいて異常が発生していると判定することを特徴とする。
このような構成によれば、光チャンネルモニタによってチャンネルの異常を検出する場合に比較して、光クロスコネクトの異常を迅速に検出することができる。
【0019】
また、本発明は、複数の波長の光を含む光信号の入力を受けて増幅するプリアンプと、前記光信号に含まれる光の波長数を増減させる増減手段と、前記増減手段から出力される前記光信号を増幅して出力するブースタアンプと、前記プリアンプから出力される前記光信号のパワーを検出する第1検出手段と、前記ブースタアンプに入力される前記光信号のパワーを検出する第2検出手段と、を有する光伝送装置の制御方法において、前記第1検出手段によって検出されたパワーを、入力される光信号に含まれる波長数によって除算することで一波長あたりのパワーを求め、前記プリアンプの出力から前記ブースタアンプの入力までの間における損失を前記一波長あたりのパワーから減ずることで前記ブースタアンプの予想光パワーを算出する第1算出ステップと、前記第2検出手段によって検出されたパワーを、前記増減手段による増減の結果として得られる波長数によって除算することで一波長の実測光パワーを算出する第2算出ステップと、前記実測光パワーが前記予想光パワーから所定値以上乖離している場合には、異常が発生したと判定する判定ステップと、を有することを特徴とする。
このような方法によれば、上位システムにかかる負担を軽減することが可能になる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、上位制御装置に負担が少ない光伝送装置および光伝送装置の制御方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態に係る光伝送装置の構成例を示す図である。
【図2】図1に示す制御装置の構成例を示す図である。
【図3】図1に示す第1実施形態の各部における波長数を示す図である。
【図4】本発明の実施形態において実行される処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【図5】本発明の第2実施形態に係る光伝送装置の構成例を示す図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る光伝送装置の構成例を示す図である。
【図7】図6に示す第3実施形態の各部における波長数を示す図である。
【図8】本発明の第4実施形態に係る光伝送装置の構成例を示す図である。
【図9】本発明の第4実施形態に係る光伝送装置の構成例を示す図である。
【図10】本発明の第7実施形態に係る光伝送装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の実施形態について説明する。
【0023】
(A)第1実施形態
図1は本発明の第1実施形態に係る伝送装置の構成例を示す図である。この図1に示すように、第1実施形態に係る光伝送装置1は、プリアンプ11、フォトダイオード(Photo Diode)12、スプリッタ13、光クロスコネクト14、光チャンネルモニタ15、フォトダイオード16、ブースタアンプ17、および、制御装置18を主要な構成要素としている。なお、光伝送装置1は、上位制御装置19と接続され、上位制御装置19からの指示に基づいて、制御装置18が光伝送装置1の各部の制御を行う。なお、図1の例では、光伝送装置1は1台だけの構成となっているが、実際には複数台の光伝送装置1が上位制御装置19に接続されている。
【0024】
ここで、プリアンプ11は、例えば、EDFA(Erbium Doped Fiber Amplifier)によって構成され、希土類元素であるエルビウムの発光作用を増幅器として利用し、光伝送装置1に入力される複数の波長の光を含む波長多重光信号を増幅して出力する。なお、プリアンプ11の出力光パワーは、制御装置18によって制御される。制御の方法としては、利得一定制御や出力一定制御等がある。
【0025】
フォトダイオード12は、プリアンプ11から出力される光信号を対応する電圧または電流を有する電気信号に変換して制御装置18に出力する。制御装置18は、フォトダイオード12から出力される電気信号を参照して、プリアンプ11から出力される光信号のパワーを検出する。なお、フォトダイオード12は、光信号に含まれている全ての波長の信号を対応する電気信号に変換する。
【0026】
スプリッタ13は、入力された光信号を分岐して減衰させる。光クロスコネクト14は、スプリッタ13から出力された光信号に対して、他の伝送装置(不図示)から出力された光信号を付加する機能を有する。具体的には、プリアンプ11に入力された光信号の波長数がmである場合に、他の装置から付加される波長数がnであり、遮断される波長数がoである場合、m+n−oの波長数の光信号を出力する。なお、光クロスコネクト14は、可変減衰器(Variable Optical Attenuator:VOA)14aを有しており、制御装置18は、光チャンネルモニタ15からの出力信号を参照し、新たに付加された波長の光のパワーが、スプリッタ13から出力される波長の光のパワーと等しくなるように可変減衰器14aによって調整する。
【0027】
光チャンネルモニタ15は、光クロスコネクト14から出力される光信号に含まれている複数の波長(チャンネル)の光のそれぞれのパワーをモニタし、制御装置18に出力する。制御装置18は、前述したように、光チャンネルモニタ15からの出力に基づいて、可変減衰器14aを制御することにより、各波長の光パワーが等しくなるように制御する。
【0028】
フォトダイオード16は、光クロスコネクト14から出力される光信号を対応する電圧または電流を有する電気信号に変換して制御装置18に出力する。制御装置18は、フォトダイオード16から出力される電気信号を参照して、光クロスコネクト14から出力される光信号のパワーを検出する。なお、フォトダイオード16は、前述の場合と同様に、光信号に含まれている全ての波長の信号を対応する電気信号に変換する。
【0029】
ブースタアンプ17は、プリアンプ11と同様に、例えば、EDFAによって構成され、希土類元素であるエルビウムの発光作用を増幅器として利用し、光クロスコネクト14から出力される複数の波長の光を含む波長多重光信号を増幅して出力する。なお、ブースタアンプ17の出力光パワーは、制御装置18によって制御される。制御の方法としては、前述の場合と同様に、利得一定制御や出力一定制御等がある。
【0030】
制御装置18は、図2に示すように、CPU(Central Processing Unit)181、ROM(Read Only Memory)182、RAM(Random Access Memory)183、I/F184、および、バス185を主要な構成要素とし、図1に示す上位制御装置19からの出力に基づいて、光クロスコネクト14を制御するとともに、フォトダイオード12,16、および、光チャンネルモニタ15の出力に基づいてプリアンプ11、ブースタアンプ17、および、可変減衰器14aを制御する。なお、制御装置18のROM182には、プログラム182aおよびデータ182bが格納されている。プログラム182aは、光伝送装置1の各部を制御するためのプログラムである。また、データ182bは、プログラム182aによって各部を制御する際に必要なデータである。
【0031】
つぎに、第1実施形態の動作について説明する。以下では、第1実施形態の動作の概略について説明した後に、図4に示すフローチャートを参照して、第1実施形態の動作の詳細について説明する。
【0032】
まず、第1実施形態の動作の概要について説明する。なお、以下では、図3に示すように、プリアンプ11に対して波長数mの光信号が入力され、光クロスコネクト14において波長数nの光が付加(add)されるとともに、光クロスコネクト14において波長数oの光が遮断(drop)される場合を例に挙げて説明する。
【0033】
図3に示すように、プリアンプ11に、波長数がmである光信号が入力されると、プリアンプ11は、制御装置18の制御に応じて所定の利得で光信号を増幅して出力する。なお、制御装置18はフォトダイオード12の出力に基づいて、利得が所望の値になるようにプリアンプ11を制御する。
【0034】
プリアンプ11によって増幅された光信号は、スプリッタ13に供給される。このとき、フォトダイオード12は、プリアンプ11から出力された光信号のパワーを検出し、制御装置18に供給する。なお、フォトダイオード12は、プリアンプ11から出力される光信号に含まれている全ての波長のパワーを検出して制御装置18に供給する。この結果、制御装置18では、全ての波長のパワーに対応する値としてのPout_totalを得る。
【0035】
続いて、制御装置18は、上位制御装置19から供給される制御情報に含まれている波長数mの値によって、前述したPout_totalの値を除算することにより、1波長あたりの光パワーとしてのPout_mon(=Pout_total/m)を求める。
【0036】
プリアンプ11から出力された光信号は、スプリッタ13に入力され、そこで分岐によって減衰される。なお、スプリッタ13における減衰をLOSS_splitterとする。
【0037】
スプリッタ13から出力された光信号は、光クロスコネクト14に入力される。光クロスコネクト14では、制御装置18の制御に基づいて、他の光伝送装置から所定の波長数の光信号を入力してスプリッタ13からの光信号に付加して出力するとともに、所定の波長数の光信号を遮断して出力する。なお、その際、制御装置18は、光チャンネルモニタ15からの出力を参照して可変減衰器14aを制御することにより、他の光伝送装置から供給された光信号に含まれる各波長のパワーが、スプリッタ13から出力される光信号に含まれる各波長のパワーと等しくなるように調整する。これにより、光クロスコネクト14から出力される光信号に含まれる各波長のパワーが等しい状態となる。
【0038】
フォトダイオード16は、光クロスコネクト14から出力された光信号のパワーに対応する電気信号を出力する。制御装置18は、フォトダイオード16から入力した電気信号をブースタアンプ17への光信号の入力パワーPin_totalとする。そして、制御装置18は、以下の式に基づいて、ブースタアンプ17に入力される光信号の各波長あたりの実測光パワーPin_monを算出する。
【0039】
Pin_mon=Pin_total/(m−o+n)・・・(1)
ここで、mはプリアンプ11に入力される光信号の波長数であり、oは光クロスコネクト14により付加される波長数であり、nは光クロスコネクト14により遮断される波長数である。これらの情報m,o,nは、上位制御装置19から制御情報として通知される。なお、(m−o+n)に代えて、光チャンネルモニタ15によって検出されるチャンネル数(=波長数)を用いるようにしてもよい。
【0040】
つぎに、制御装置18は、以下の式に基づいて、ブースタアンプ17に入力される光信号の各波長の予想されるパワーとしての予想光パワーPin_calcを算出する。
【0041】
Pin_calc=Pout_mon−Loss_mid・・・(2)
【0042】
ここで、Loss_midは以下の式によって定義される。
Loss_mid=LOSS_splitter+LOSS_add_oxc+LOSS_voa+LOSS_coupler・・・(3)
【0043】
なお、LOSS_splitterは、スプリッタ13における損失であり、LOSS_add_oxcは、光クロスコネクト14における損失であり、LOSS_voaは、可変減衰器14aにおける損失であり、LOSS_couplerは、プリアンプ11からブースタアンプ17までの間に存在するファイバカプラの損失である。
【0044】
また、Pout_monは、前述のように以下の式で表される。
Pout_mon=Pout_total/m・・・(4)
【0045】
つづいて、制御装置18は、実測光パワーPin_monと、予想光パワーPin_calcとを比較し、実測光パワーPin_monが予想光パワーPin_calcよりも小さい場合(あるいは所定量以上小さい場合)には、光伝送装置1内部において不具合が生じたと判定する。すなわち、予想光パワーPin_calcは、光伝送装置1の内部に不具合が生じていない場合には、実測光パワーPin_monと略等しくなる。しかしながら、これらが等しくならない場合には、数式に含まれていない損失(すなわち、不具合によって生じる損失)が発生したと判断する。
【0046】
つぎに、制御装置18は、自己回復処理を実行する。具体的には、プリアンプ11またはブースタアンプ17の出力を増大したり、あるいは、可変減衰器14aの減衰率を減少させたりすることにより、予想光パワーPin_calcと実測光パワーPin_monが等しくなるように制御することを試みる。その結果、これらが等しくなった場合にはそのままの状態を維持し、また、自己回復処理によっても所望のパワーまで増大できなかった場合には、制御装置18は、不具合の発生を上位制御装置19に対して通知する。
【0047】
このような通知を受けた上位制御装置19は回復処理を実行する。具体的には、上位制御装置19の制御により、不具合が発生している波長とは異なる波長を用いるように変更を施すことで、回復処理を実行する。あるいは、光伝送装置1が使用不能になった場合には、上位制御装置19の制御により、当該光伝送装置1の使用を停止するとともに、他の光伝送装置によって処理を代替させることにより回復処理を実行する。なお、それでも回復が図れない場合には、不具合が発生している光伝送装置1を交換する。
【0048】
以上の処理によれば、光伝送装置1を構成する各光モジュール(プリアンプ11、スプリッタ13、光クロスコネクト14、および、ブースタアンプ17)が独自に異常検出をして、上位制御装置19に個別に通知する場合に比較すると、以下のメリットがある。
【0049】
(1)波長単位で予想光パワーと実測光パワーを求めてこれらを比較するようにしたので、装置内において波長数の増減があった場合でも、不具合の発生の有無を正確に判断することができる。
(2)予想光パワーを求める際には、装置内部における損失も考慮するようにしたので、予想光パワーの計算精度を高めることにより、不具合の発生を正確に判断することができる。
(3)不具合が発生した場合には、各光伝送装置において自己回復処理を実行し、それでも回復が図れない場合に、上位制御装置19に通知するようにしたので、上位制御装置19にかかる負担を更に軽減することができる。
【0050】
つぎに、図4を参照して、図2に示す制御装置18において実行される処理の詳細について説明する。なお、この処理は、図2に示すプログラム182aがCPU181によって読み出されて実行されることにより実現される。
【0051】
ステップS10:CPU181は、上位制御装置19から制御情報を受信する。具体的には、CPU181は、上位制御装置19から、例えば、各光モジュールに対する制御情報や、プリアンプ11に入力される光信号の波長数m、光クロスコネクト14により付加される波長数o、光クロスコネクト14に遮断される波長数n等の情報を受信する。
【0052】
ステップS11:CPU181は、ステップS10で取得した制御情報が前回から変化しているか否かを判断し、変化している場合(ステップS11;YES)にはS12に進み、それ以外の場合(ステップS11;NO)にはステップS14に進む。例えば、波長数mが増加(または減少)した場合にはステップS12に進む。
【0053】
ステップS12:CPU181は、新たな制御情報に基づいて予想光パワーPin_calcの値を再計算する。具体的には、CPU181は、フォトダイオード12から供給される全ての波長のパワーに対応する値としてのPout_totalを、ステップS10で受信した制御情報に含まれている波長数mで除算することにより、波長単位の光パワーPout_monを求める。つぎに、CPU181は、例えば、データ182bに含まれる既定値としてのLOSS_splitter、LOSS_add_oxc、LOSS_voa、および、LOSS_couplerを加算した値としてのLoss_midを、Pout_monから減算することにより、Pin_calcを得る。
【0054】
ステップS13:CPU181は、ステップS10で受信した制御情報に基づいて各光モジュールを制御する。具体的には、CPU181は、制御情報に基づいて、例えば、光クロスコネクト14を制御する。
【0055】
ステップS14:CPU181は、フォトダイオード16の検出値をPin_totalとして取得する。すなわち、CPU181は、フォトダイオード16から出力されている全ての波長に対する光パワーの検出値をPin_totalとして取得する。
【0056】
ステップS15:CPU181は、S14において取得したモニタ値からPin_monを計算する。具体的には、CPU181は、プリアンプ11に入力される光信号の波長数m、光クロスコネクト14により付加される波長数o、光クロスコネクト14に遮断される波長数nを、ステップS10において受信した制御情報から取得し、式(1)に基づいてPin_monを計算する。なお、前述のように、(m−o+n)に代えて、光チャンネルモニタ15によって検出されるチャンネル数(=波長数)を用いるようにしてもよい。
【0057】
ステップS16:CPU181は、Pin_mon<Pin_calcを満たすか否かを判定し、満たす場合(ステップS16;YES)にはステップS17に進み、それ以外の場合(ステップS16;NO)にはステップS20に進む。
【0058】
ステップS17:CPU181は、自己回復処理を実行する。具体的には、CPU181は、プリアンプ11および/またはブースタアンプ17の出力を増大し、Pin_monが正常な範囲に収まるか否かを検出する。あるいは、CPU181は、可変減衰器14aの減衰率を減少させ、Pin_monが正常な範囲に収まるか否かを検出する。
【0059】
ステップS18:CPU181は、ステップS17の自己回復処理により、Pin_monが正常な範囲に収まったか否か(回復したか否か)を判定し、回復した場合(ステップS18;YES)にはステップS20に進み、それ以外の場合(ステップS18;NO)にはステップS19に進む。
【0060】
ステップS19:CPU181は、異常が発生したことを上位制御装置19に対して通知し、上位制御装置19による回復処理の実行を待つ。なお、このとき、CPU181が上位制御装置19に対して、例えば、不具合が生じている波長(チャンネル)に関する情報についても併せて通知するようにしてもよい。不具合が生じているチャンネルを知る方法としては、例えば、光チャンネルモニタ15の出力を参照し、検出値が低いチャンネルに不具合が生じていると判断することができる。なお、上位制御装置19では、不具合が発生している波長とは異なる波長を用いるように変更を施すことで、回復処理を実行する。あるいは、光伝送装置1が使用不能になった場合には、上位制御装置19の制御により、当該光伝送装置1の使用を停止するとともに、他の光伝送装置によって処理を代替させることにより回復処理を実行する。なお、それでも回復が図れない場合には、不具合が発生している光伝送装置1を交換するように管理者に指示し、その交換を待つ。
【0061】
ステップS20:CPU181は、処理を終了するか否かを判定し、終了しない場合(ステップS20;NO)にはステップS10に戻って同様の処理を繰り返し、それ以外の場合(ステップS20;YES)には処理を終了する。具体的には、例えば、光伝送装置1をシステムから取り外す場合には、ステップS20においてYESと判定されて処理を終了する。なお、これ以外の理由(例えば、上位制御装置19から動作停止が指示された場合)で処理を終了することも可能である。
【0062】
以上の処理によれば、前述したように、装置内において波長数の増減があった場合でも、不具合の発生の有無を正確に判断することができる。また、装置内部における損失も考慮して予想光パワーを求めるようにしたので、不具合の発生を正確に判断することができる。さらに、不具合が発生した場合には、各光伝送装置において自己回復処理を実行し、それでも回復が図れない場合に、上位制御装置19に通知するようにしたので、上位制御装置19にかかる負担を更に軽減することができる。
【0063】
(B)第2実施形態
図5は、本発明の第2実施形態について説明するための図である。なお、この図において図1と対応する部分には同一の符号を付してあるので、その説明は省略する。図5に示す第2実施形態では、図1の場合と比較して、光チャンネルモニタ20がプリアンプ11とスプリッタ13との間に新たに追加されている。これ以外の構成は、図1の場合と同様である。
【0064】
第2実施形態では、プリアンプ11に入力される光信号に含まれている波長数mを上位制御装置19から取得するのではなく、光チャンネルモニタ20から取得する点が第1実施形態と異なっている。それ以外の動作については、第1実施形態の場合と同様である。なお、光チャンネルモニタ20は、光信号に含まれている全ての波長の光を検出するためにはある程度の時間を要する。そのため、例えば、入力される光信号に含まれる波長の数が変化した場合、当該変化が検出されるまでにはある程度の時間を要する。したがって、図4の処理では、ステップS11において、制御情報(この例ではm)が変化するか否かを、光チャンネルモニタ20の検出に要する時間(全てのチャンネルを検出するために要する時間)よりも長い時間だけ監視し、変化がない場合にはステップS14に進み、それ以外の場合にはステップS12に進むようにすればよい。
【0065】
このような第2実施形態によれば、上位制御装置19から制御情報を受信する必要がなくなるので、上位制御装置19との間の通信に必要な処理を省略することで、上位制御装置19にかかる負荷を軽減することができる。また、光伝送装置1が単独で不具合の発生の検出と、自己回復処理とを実行することが可能になるので、上位制御装置19にかかる負担を一層軽減することができる。
【0066】
なお、ブースタアンプ17に入力される光信号の波長を検出するために、光チャンネルモニタ15を用いるようにしてもよい。なお、その場合には、前述の場合と同様に、光チャンネルモニタ15による全波長の検出に要する時間以上、ステップS11の処理を繰り返すようにすればよい。
【0067】
(C)第3実施形態
図6は、本発明の第3実施形態について説明するための図である。なお、この図において図1と対応する部分には同一の符号を付してあるので、その説明は省略する。図6に示す第3実施形態では、図1の場合と比較して、スプリッタ13が光クロスコネクト30に置換されている。それ以外の構成は、図1の場合と同様である。
【0068】
第3実施形態では、図7に示すように、光クロスコネクト30において、プリアンプ11から出力される波長数mの光信号から、波長数pの光信号が他の光伝送装置に転送される。なお、それ以外の波長数の増減は、図1の場合と同様である。
【0069】
第3実施形態では、以下の式に基づいてPin_calcを算出する。
Pin_calc=Pout_mon−Loss_mid ・・・(5)
ここで、Loss_mid、および、Pout_monは以下の式で表される。
Loss_mid=LOSS_drop_oxc+LOSS_add_oxc+LOSS_voa+LOSS_coupler ・・・(6)
Pout_mon=Pout_total/m ・・・(7)
なお、LOSS_drop_oxcは、光クロスコネクト30における損失である。
【0070】
また、Pin_monは以下の式で算出する。
Pin_mon=Pin_total/(m−p−o+n) ・・・(8)
【0071】
そして、第3実施形態では、第1実施形態と同様に、実測光パワーPin_monと予想光パワーPin_calcとの比較により、不具合の発生の有無を判断する。
【0072】
以上に説明したように本発明の第3実施形態によれば、光クロスコネクト30を設けて光信号に含まれる波長の一部を他の光伝送装置に転送するようにした場合であっても、不具合の発生を正確に判断することができる。
【0073】
(D)第4実施形態
図8は、本発明の第4実施形態について説明するための図である。なお、この図において図1と対応する部分には同一の符号を付してあるので、その説明は省略する。図8に示す第4実施形態では、図1の場合と比較して、プリアンプ11の入力側にフォトダイオード40が追加されている。また、図8の例では、光クロスコネクト14において他の光伝送装置からの入力が遮断された状態とされている。さらに、図8の例では、各光モジュールが不図示の制御部をそれぞれ有しており、各制御部が入力の有無に応じてアラームを発するように構成されている。例えば、ブースタアンプ17が有する制御部は、フォトダイオード16の出力に基づいて、入力が遮断状態になった場合には、アラームを制御装置
18に対して発出する。なお、これ以外の構成は、図1の場合と同様である。
【0074】
本発明の第4実施形態では、フォトダイオード16によって、ブースタアンプ17の入力が遮断されたことが検出された場合であっても、所定の条件が満たされている場合には、制御装置18は光伝送装置1内部の不具合とは判断しない。これについて以下に説明する。
【0075】
ブースタアンプ17への入力が遮断される場合を考えると、以下のいずれかの場合が想定される。
(1)プリアンプ11への入力が無い場合(フォトダイオード40の出力が“0”か、それに近い場合)
(2)プリアンプ11の出力が遮断されている場合
(3)光クロスコネクト14が光信号に含まれる全ての波長の光を遮断している場合
また、これら以外にも以下の条件を満たす必要がある。
(4)光クロスコネクト14において付加される信号が無い場合
【0076】
さらに、図9に示すように、スプリッタ13に代えて、光クロスコネクト30を使用する場合には、(5)光クロスコネクト30が全ての波長の光を遮断している場合が、前述の(1)〜(3)に加えて想定される。すなわち、(1)〜(3),(5)のいずれかに該当するとともに、(4)に該当すれば、ブースタアンプ17への入力が遮断される。なお、図9の構成は図8の場合と比較すると、スプリッタ13が光クロスコネクト30に置換されている以外は、図8の場合と同様である。すなわち、各光モジュールは、固有の制御部を有しており、不具合が生じた場合には制御装置18に通知する。
【0077】
第4実施形態では、例えば、光伝送装置1の下流側において不具合が生じて光伝送装置1を迂回させる必要が生じた場合には、ブースタアンプ17への入力が遮断状態であることが検出されても、それを無視する制御を行うことを特徴とする。具体的には、光伝送装置1の下流側において不具合が生じた場合には、制御装置18は、上位制御装置19からの指示に基づいて、光伝送装置1を迂回させるために、例えば、光クロスコネクト14によって全ての波長の光を遮断状態とするか、あるいは、光クロスコネクト30によって全ての波長の信号を遮断状態とする。このような場合、ブースタアンプ17への入力が遮断状態となる。このとき、ブースタアンプ17が前述した固有の制御部を有している場合、制御装置18には、ブースタアンプ17の制御部から異常が生じた旨が通知される。しかしながら、第4実施形態においては、制御装置18は、上位制御装置19から遮断する指示を受けている場合には、ブースタアンプ17からの異常の通知を無視する。
【0078】
従来においては、各光モジュールによって検出された異常は、上位制御装置に全て通知されていたため、上位制御装置19は異常の通知を受けると、異常の発生に対処するための処理を実行するとともに、異常が発生した光モジュールを一定期間監視する必要が生じるための負荷が生じていた。しかしながら、第4実施形態では、前述のように、光モジュールで異常が生じた場合であっても、所定の条件が満たされている場合には、制御装置18が判断して、これを無視するようにしたので、上位制御装置19にかかる負担を軽減することができる。なお、ブースタアンプ17からの異常の通知を、制御装置18側でマスクすることにより無効とすることができる場合には、無視するのではなく、マスクすることにより無効としてもよい。
【0079】
以上に説明したように、本発明の第4実施形態では、ブースタアンプ17の入力が遮断状態になっている場合であっても、所定の条件を満たす場合には、これを無視することで、上位制御装置19にかかる負担を軽減することができる。
【0080】
(E)第5実施形態
本発明の第5実施形態は、図9と同様の構成を有している。すなわち、スプリッタ13に代えて、光クロスコネクト30を有している。このような場合において、前述の場合と同様に、光伝送装置1よりも下流側において不具合が生じ、光伝送装置1を迂回する必要が生じた場合には、上位制御装置19は、制御装置18に対して光信号を遮断するように指示する。この結果、制御装置18は、光クロスコネクト30によって全ての波長の信号を遮断するように設定する。この結果、図9に示すように、プリアンプ11から出力された全ての波長の信号は、光クロスコネクト14には出力されない。
【0081】
ところで、図9において、光クロスコネクト14に対する光信号の入力が遮断されるのは、以下の場合である。
(1)プリアンプ11への光信号の入力がない場合
(2)プリアンプ11の出力が遮断されている場合
(3)全ての波長の光信号が光クロスコネクト30によって遮断されている場合
【0082】
これらは、光クロスコネクト14よりも上流側で発生しており、また、制御装置18は、これらの条件が成立していることを知っている。このような場合において、光クロスコネクト14が固有の制御部を有しているとすると、制御装置18は、光クロスコネクト14の制御部から入力が遮断状態である旨の通知がなされた場合であっても、これを無視する。これにより、前述の場合と同様に、つぎのような効果が得られる。すなわち、従来は、各光モジュールによって検出された異常は、上位制御装置に全て通知されていたため、上位制御装置は異常の通知を受けると、異常の発生に対処するための処理を実行するとともに、異常が発生した光モジュールを一定期間監視する必要が生じるための負荷が生じていた。しかしながら、第5実施形態では、前述のように、光クロスコネクト14で入力断が生じた場合であっても、所定の条件が満たされている場合には、制御装置18が判断して、これを無視するようにしたので、上位制御装置19にかかる負担を軽減することができる。なお、光クロスコネクト14からの異常の通知を、制御装置18側でマスクすることにより無効とすることができる場合には、無視するのではなく、マスクすることにより無効としてもよい。
【0083】
以上に説明したように、本発明の第5実施形態では、光クロスコネクト14の入力が遮断状態になっている場合であっても、所定の条件を満たす場合には、これを無視することで、上位制御装置19にかかる負担を軽減することができる。
【0084】
(F)第6実施形態
本発明の第6実施形態は、図9と同様の構成を有している。すなわち、スプリッタ13に代えて、光クロスコネクト30を有している。このような場合において、光クロスコネクト30が固有の制御部を有しているとすると、プリアンプ11からの出力がない場合には、光クロスコネクト30の制御部から制御装置18に対して異常が通知されるが、制御装置18は当該異常の通知を無視する。すなわち、図9において、光クロスコネクト30に対する光信号の入力が遮断されるのは、以下のいずれかの場合である。
(1)プリアンプ11への光信号の入力がない場合
(2)プリアンプ11の出力が遮断している場合
【0085】
制御装置18は、プリアンプ11を制御しており、これらの条件が成立していることを知ることができる。このため、これらのいずれかの条件が成立している場合において、光クロスコネクト30の制御部から異常の通知がなされた場合には、制御装置18は、当該通知を無視する。これにより、上位制御装置19にかかる負担を軽減することができる。なお、光クロスコネクト30からの異常の通知を、制御装置18側でマスクすることにより無効とすることができる場合には、無視するのではなく、マスクすることにより無効としてもよい。
【0086】
以上に説明したように、本発明の第6実施形態では、光クロスコネクト30の入力が遮断状態になっている場合であっても、所定の条件を満たす場合には、これを無視することで、上位制御装置19にかかる負担を軽減することができる。
【0087】
(G)第7実施形態
本発明の第7実施形態は、本発明の第4実施形態において、所定の条件下において、ブースタアンプ17への光信号の入力が遮断された場合に、ブースタアンプ17の出力が劣化した旨の通知を無視する。すなわち、第7実施形態では、図10に示す構成において、ブースタアンプ17への入力が無いことが分かっている以下の場合には、フォトダイオード41によってブースタアンプ17から出力が劣化したことが検出された場合であっても、これを無視する。あるいは、これをマスクする。
(1)光伝送装置1への入力が無い場合
(2)プリアンプ11の出力が遮断状態になっている場合
(3)図10のスプリッタ13に代えて光クロスコネクト30が付加されている場合に、光クロスコネクト30により全ての波長の光信号が遮断されているとき
【0088】
なお、図10に示す構成は、図8の場合に比較すると、ブースタアンプ17の出力側にフォトダイオード41が新たに追加されている。ブースタアンプ17の不図示の制御部は、フォトダイオード41の出力に基づいて、ブースタアンプ17の出力が遮断状態となっている場合には、アラームを発出する。これ以外の構成は、図8の場合と同様である。
【0089】
以上に説明したように、本発明の第7実施形態では、ブースタアンプ17の出力が劣化している場合であっても、所定の条件を満たす場合には、これを無視することで、上位制御装置19にかかる負担を軽減することができる。
【0090】
(H)第8実施形態
本発明の第8実施形態は、図1に示す構成において、光クロスコネクト14の波長の選択設定情報と、ブースタアンプ17の入力情報を用いて、制御装置18が光クロスコネクト14の内部故障を検出する。すなわち、光クロスコネクト14の機能としては、(1)入力された光信号のうち所定の波長の信号を下流に通過させる機能、(2)入力された光信号のうち所定の波長の光信号を遮断する機能、(3)他の光伝送装置からの光信号を付加して出力する機能を有している。
【0091】
ここで、光クロスコネクト14により選択されて通過される波長数をqとし、光クロスコネクト14により他の光伝送装置から付加される波長数をnとする。この場合、光クロスコネクト14は制御装置18から制御されるので、制御装置18はこれらq,nに関する情報を有している。ここで、光クロスコネクト14から光出力が存在する設定(q,nの少なくとも一方が1以上)となっているにも関わらず、ブースタアンプ17への光信号の入力が遮断状態となった場合、光クロスコネクト14の不具合により光出力が無くなったと判定することができる。
【0092】
従来においては、光クロスコネクト14の直後に配置されている光チャンネルモニタ15で信号の有無を検出して不具合を検出していた。しかしながら、光チャンネルモニタ15はフォトダイオード16と比較して検出速度が遅いため、不具合により信号が遮断されたことを検出するのに時間を要していた。一方、第8実施形態では、設定情報と、フォトダイオード16の出力とに基づいて判断することから、光クロスコネクト14の不具合を瞬時に検出することができる。そして、このようにして検出した不具合を、上位制御装置19に通知することで上位制御装置19は光信号を他の光伝送装置に迂回させるなどの対応を迅速に行うことができる。これにより、光信号が遮断される時間を少なくすることができるので、システム全体の信頼性を高めることができる。
【0093】
以上に説明したように、本発明の第8実施形態では、光クロスコネクト14の設定情報と、フォトダイオード16の出力に基づいて、光クロスコネクト14の不具合の有無を検出するようにしたので、不具合の有無を瞬時に判断することができるとともに、上位制御装置19による早期の回復処理を実行することができる。
【0094】
(I)第9実施形態
第9実施形態では、例えば、図1に示す構成において、制御装置18が光伝送装置1に含まれる光モジュールにおいて異常が発生した場合に、他の光モジュールにおける異常の発生の有無を判断することで、原因となる光モジュールを特定するとともに、当該光モジュールの下流の光モジュールについては異常を検出していたとしても、正常であると判断する。すなわち、従来においては、各光モジュールにおいて入力遮断状態を検出し、各々のインターフェースコネクタの異常を通知する「アラーム発出信号ピン」から入力断アラームを出力していた。具体的には、入力断アラームを検出する光モジュールは、プリアンプ11、光クロスコネクト14、ブースタアンプ17の3つある。各々の光モジュールに具備された制御装置が入力パワーを常時監視し、閾値と比較して異常を検出して上位制御装置19に通知する。
【0095】
ここで、光クロスコネクト14の入力パワーは、プリアンプ11の出力パワーに依存している。プリアンプ11がシャットダウン中は光クロスコネクト14への入力がなくなることは明らかである。従来の光モジュール毎の制御では、光クロスコネクト14はプリアンプ11のシャットダウン状態を知ることができなかったため、光クロスコネクト14はプリアンプ11の状態に関わらず一律に入力断アラームを発出していた。
【0096】
そこで、従来、光モジュールがそれぞれ具備していた制御装置を統合して1つの制御装置18とすることで、統合された制御装置18は、光クロスコネクト14の入力断の原因がプリアンプ11の出力がないためと判断できる。この場合、光クロスコネクト14の入力断は光クロスコネクト14自身の異常ではない。光クロスコネクト14から上位制御装置19への入力断アラーム通知を削減することが可能である。これにより、これまで光モジュールの数だけ必要であった入力断アラームの数を減らすことができ、上位制御装置19と光モジュール間のアラーム信号数を減らすことができるため、インターフェースの小型化を図ることができる。
【0097】
以上に説明したように、本発明の各実施形態によれば、上位制御装置19、および、制御装置18の両者にとって、不具合発生時におけるアラームのメンテナンスを簡便にすることができる。すなわち、各実施形態の光伝送装置は、その時点で発出中である全個別アラームと、障害要因アラームとを別々に上位制御装置へ通知できるため、従来、上位制御装置で対応してきたアラームの解析処理を、制御装置で高速に実施することができる。このため、障害切り分けや事後処理(例えば、経路切換処理など)を迅速に実行することができるため、信頼性や安全性の高い通信システムを構築することができる。
【0098】
また、従来は、閾値を超えるか否かに基づいて判定していた信号光の入力レベルアラームを、光モジュールの統合によって光伝送装置内の全ての光モジュールの情報を集約して解析することで、信号光が部分的に劣化していることを判定できるようになったため、伝送装置の内部異常を検出することが可能になる。また、光伝送装置内に複数存在する光モジュールを統合することで、アラームがどの光モジュールが原因で発生しているか自己判定できる。これによって、上位制御装置19はアラームの発生箇所を判定する必要がなくなり、負荷の軽減となる。また、光伝送装置にとっても、入力断アラームが発生した箇所から下流については、アラーム監視を行わなくてよいため、負荷の軽減となる。さらに、光クロスコネクトの信号波長選択情報と光入力パワーモニタ情報を組み合わせることで、高速に内部故障を検出することができる。これにより、上位制御装置19は信号経路の迂回を迅速に行うことができ、通信断を最小限にすることができる。また、冗長であった入力断アラームを削減することができるため、インターフェースコネクタの信号線削減・小型化を図ることができる。
【0099】
(J)変形実施形態
なお、上記の各実施形態は、一例であって、これ以外にも各種の変形実施態様が存在する。例えば、以上の各実施形態では、制御装置18を設けるようにしたが、例えば、各光モジュールに制御部をそれぞれ設け、各制御部が通信による情報交換によって状態を認識するとともに、規定のあるいは任意の制御部が上位制御装置19に対して不具合の発生を報告するようにしてもよい。
【0100】
また、以上の各実施形態では、実測光パワーPin_monと予想光パワーPin_calcの大小によって不具合の有無を検出するようにしたが、例えば、所定の閾値Mを設定し、実測光パワーPin_monが、予想光パワーPin_calc−Mよりも小さくなった場合に、不具合と判断するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0101】
1,1A,1B,1C,1D,1E 光伝送装置
11 プリアンプ
12 フォトダイオード(第1検出手段)
16 フォトダイオード(第2検出手段)
13 スプリッタ(増減手段)
14 光クロスコネクト(増減手段)
14a 可変減衰器
15 光チャンネルモニタ
17 ブースタアンプ
18 制御装置(第1算出手段、第2算出手段、判定手段、回復手段)
19 上位制御装置
40,41 フォトダイオード
181 CPU
182 ROM
183 RAM
184 I/F
185 バス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の波長の光を含む光信号の入力を受けて増幅するプリアンプと、
前記光信号に含まれる光の波長数を増減させる増減手段と、
前記増減手段から出力される前記光信号を増幅して出力するブースタアンプと、
前記プリアンプから出力される前記光信号のパワーを検出する第1検出手段と、
前記ブースタアンプに入力される前記光信号のパワーを検出する第2検出手段と、
前記第1検出手段によって検出されたパワーを、入力される光信号に含まれる波長数によって除算することで一波長あたりのパワーを求め、前記プリアンプの出力から前記ブースタアンプの入力までの間における損失を前記一波長あたりのパワーから減ずることで前記ブースタアンプの予想光パワーを算出する第1算出手段と、
前記第2検出手段によって検出されたパワーを、前記増減手段による増減の結果として得られる波長数によって除算することで一波長の実測光パワーを算出する第2算出手段と、
前記実測光パワーが前記予想光パワーから所定値以上乖離している場合には、異常が発生したと判定する判定手段と、
を有することを特徴とする光伝送装置。
【請求項2】
前記増減手段は、光クロスコネクトまたはスプリッタであることを特徴とする請求項1記載の光伝送装置。
【請求項3】
前記光クロスコネクトは、前記プリアンプから入力された光信号に対して、他の光伝送装置から供給された所定の波長数の光信号を付加するか、または、前記プリアンプから入力された光信号の中から所定の波長数の光信号を他の光伝送装置に対して転送することを特徴とする請求項2記載の光伝送装置。
【請求項4】
前記入力される光信号に含まれる波長数および前記増減手段による増減の結果として得られる波長数を示す情報を、上位の制御装置としての上位制御装置から取得することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光伝送装置。
【請求項5】
前記入力される光信号に含まれる波長数および前記増減手段による増減の結果として得られる波長数を示す情報を、光チャンネルモニタによって取得することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光伝送装置。
【請求項6】
前記判定手段によって異常が発生したと判定された場合には、前記プリアンプまたは前記ブースタアンプのゲインを調整することで、異常の回復を図る回復手段を有していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光伝送装置。
【請求項7】
前記回復手段は、回復に失敗した場合には、上位制御装置に対して異常の発生を通知することを特徴とする請求項6記載の光伝送装置。
【請求項8】
前記プリアンプ、前記増減手段、および、前記ブースタアンプは、それぞれ固有の制御部を有し、当該制御部は入力される光信号が遮断された場合には、アラームを発出し、
前記判定手段は、前記制御部によってアラームが発出された場合であっても、当該アラームを発出した制御部よりも前段の制御部がアラームを発出している場合には、後段の制御部が発出するアラームについては無視することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の光伝送装置。
【請求項9】
前記判定手段は、アラームを発出している制御部のうち、最上流に存在する制御部に対応する装置が異常の発生源として特定することを特徴とする請求項8に記載の光伝送装置。
【請求項10】
前記増減手段は光クロスコネクトであり、
前記判定手段は前記光クロスコネクトの設定情報を参照し、前記光クロスコネクトから光信号が出力される状態である場合に、前記第2検出手段によって光信号が検出されないときには、前記光クロスコネクトにおいて異常が発生していると判定することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の光伝送装置。
【請求項11】
複数の波長の光を含む光信号の入力を受けて増幅するプリアンプと、前記光信号に含まれる光の波長数を増減させる増減手段と、前記増減手段から出力される前記光信号を増幅して出力するブースタアンプと、前記プリアンプから出力される前記光信号のパワーを検出する第1検出手段と、前記ブースタアンプに入力される前記光信号のパワーを検出する第2検出手段と、を有する光伝送装置の制御方法において、
前記第1検出手段によって検出されたパワーを、入力される光信号に含まれる波長数によって除算することで一波長あたりのパワーを求め、前記プリアンプの出力から前記ブースタアンプの入力までの間における損失を前記一波長あたりのパワーから減ずることで前記ブースタアンプの予想光パワーを算出する第1算出ステップと、
前記第2検出手段によって検出されたパワーを、前記増減手段による増減の結果として得られる波長数によって除算することで一波長の実測光パワーを算出する第2算出ステップと、
前記実測光パワーが前記予想光パワーから所定値以上乖離している場合には、異常が発生したと判定する判定ステップと、
を有することを特徴とする光伝送装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−151584(P2011−151584A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10867(P2010−10867)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】