光偏向方法および光偏向装置
【課題】小さい制御光パワーにより偏向角度の大きさを調整することができる光偏向方法および光偏向装置を提供する。
【解決手段】1種類以上の波長の信号光16を照射する信号光光源と、信号光とは異なる波長の制御光17を照射する制御光光源と、信号光16は透過し、制御光17を選択的に吸収する光吸収層22を含む熱レンズ形成光素子と、光吸収層22に制御光17と信号光16とを各々収束点を異ならせて集光させる集光手段と、を有し、前記熱レンズ形成光素子は、制御光17と信号光16が、光の進行方向で光吸収層22の入射面またはその近辺において収束したのち拡散することによって、光吸収層22内における制御光17を吸収した領域およびその周辺領域に起こる温度上昇に起因し可逆的に形成される熱レンズにより、屈折率が変化して、進行方向が変更された信号光19を出力可能な光偏向装置である。
【解決手段】1種類以上の波長の信号光16を照射する信号光光源と、信号光とは異なる波長の制御光17を照射する制御光光源と、信号光16は透過し、制御光17を選択的に吸収する光吸収層22を含む熱レンズ形成光素子と、光吸収層22に制御光17と信号光16とを各々収束点を異ならせて集光させる集光手段と、を有し、前記熱レンズ形成光素子は、制御光17と信号光16が、光の進行方向で光吸収層22の入射面またはその近辺において収束したのち拡散することによって、光吸収層22内における制御光17を吸収した領域およびその周辺領域に起こる温度上昇に起因し可逆的に形成される熱レンズにより、屈折率が変化して、進行方向が変更された信号光19を出力可能な光偏向装置である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信、光情報処理などの光エレクトロニクス(フォトニクス)の分野において有用な、熱レンズ形成光素子、それを用いる偏向素子、光制御方法および光制御装置に関するものである。特に熱レンズ形成光素子の屈折率の変化に基づいて、光(信号光)の偏向を行う熱レンズ形成光素子、この熱レンズ形成光素子を用いた偏向素子、光制御方法、光制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光を偏向する手段としては、次のような方法が一般に採られている。
(1)機械的にミラーを振る。
(2)機械的にポリゴンミラーを回転させる。
(3)音響光学効果を用いる。
(4)電気光学効果を用いる。
【0003】
機械的にミラーを振る偏向方法は高精度に行うためには高価な制御機構が必要、また高周波数まで応答できないという欠点を有する。ポリゴンミラーを用いる方法は、大変高価である。音響光学効果および電気光学効果を用いる方法は、高価で、大きく、また偏向角が小さいという欠点を有する。
【0004】
温度により、媒体内に屈折率分布を生じさせ、光を変調する方法が提案されている(特許文献1参照)。この特許文献1に開示された手法は、発熱抵抗体で媒体に熱を与え、媒体内に屈折率分布を生じさせ、光を偏向している。そして、この偏向した光が遮光板で遮光されるか否かにより、光スポットを点滅させるものである。しかしながら、この特許文献1に開示された手法は、発熱抵抗体で発熱させ、熱伝導で媒体を加熱することになるので、「熱の広がり」という問題を本来的に有する。つまり、熱の広がりにより、広い面積内で微細な熱勾配を与えることができず、所望の屈折率分布を得るのが困難である。更に、発熱抵抗体の微細加工は半導体集積回路で用いられているフォトリソグラフィ技術を採用しても、現実には極めて困難であり、一定の限界を有し、素子が大型化せざるを得ない。素子が大型化すれば、それに伴い光学系も複雑かつ大型化する。また、発熱抵抗体で発熱させ、熱伝導で媒体を加熱することになるので、応答が遅く、屈折率変化の周波数を上げることができないという不具合を本質的な問題として有している。
【0005】
また、レーザ光を照射して物質を加熱することによりレーザ光の照射された物質の屈折率を変え、レーザ光を偏向する方法が提案されている(特許文献2および特許文献3参照)。どちらの方法も、ビーム径が太く、大パワーを入力させないとレーザ光の偏向はほんのわずかである。特許文献2の方法は、照射光の加熱で照射光自身が偏向する方法である。この方法を光偏向に用いる場合は、加熱して屈折率を変えるために照射光は吸収されるので、物質を透過する光は原理的に大きく減少してしまうことになる。
【0006】
特許文献3の方法は、電気的または機械的手段を取らず、制御ビームの照射でスイッチ物質の屈折率を変え、信号ビームの光路を変える光学的スイッチである。しかしながら、この場合のも、制御ビームも信号ビームもレンズを用いて集光する方法を取っておらず、屈折率変化を起こさせるレーザ光パワーは大パワーが必要である。また、装置も大がかりになってしまう。また、本提案のように屈折変化領域がビームの進行に従って拡がるような手段を取り得ないので、偏向角を余り大きくできない。
【0007】
また、光応答組成物からなる熱レンズ形成光素子と、該熱レンズ形成光素子にくさび形の光強度分布で光を照射するための強度分布調整手段とから少なくとも構成され、制御光により前記熱レンズ形成光素子中に屈折率分布を形成し、該屈折率分布により前記制御光とは異なる波長の信号光の偏向を行うことを特徴とする熱レンズ形成光素子を用いた偏向素子が開示されている(特許文献4参照)。この方式は、光で光を制御する点では優れたものであるが、該熱レンズ形成光素子にくさび形の光強度分布で光を照射するための強度分布調整手段の調整に高度な技術が必要であり、制御光強度が微妙に変化するだけで偏向角度が大きく変動するという問題がある。
【0008】
【特許文献1】特開昭60−14221号公報
【特許文献2】米国特許第4,776,677号
【特許文献3】米国特許第4,585,301号
【特許文献4】特開平11−194373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、複雑で高価な電気回路や機械的可動部品を用いずに光偏向を可能とすることができるとともに、故障が極めて少なく、耐久性の高い、偏波依存性の極めて少ない、信号光の光強度減衰が少なく、小さい制御光パワーにより偏向角度を大きく調整することができ、信号光断面におけるエネルギー分布が回析光学的に収束の容易な状態(例えばガウス分布)を保ちつつ偏向が可能で後段の光ファイバーへの光結合を高効率に行うことができ、さらに調整が容易で動作の安定した、光偏向方法および光偏向装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の特徴を有する。
【0011】
(1)少なくとも光吸収層を含む熱レンズ形成光素子中の光吸収層に、制御光と信号光とを入射させ、前記制御光および前記信号光は、前記光吸収層にて収束するように照射されかつ前記制御光および前記信号光の各々の収束点の位置が相異なるように照射され、前記制御光の波長と前記信号光の波長を異ならせ、前記制御光の波長は前記光吸収層が吸収する波長帯域から選ばれ、前記信号光の波長は前記光吸収層が吸収しない波長帯域から選ばれ、前記制御光と前記信号光は、光の進行方向で前記光吸収層の入射面またはその近辺において収束したのち拡散することによって、前記光吸収層内における前記制御光を吸収した領域およびその周辺領域に起こる温度上昇に起因し可逆的に形成される熱レンズにより、屈折率が変化して、前記信号光の進行方向を変える光偏向方法である。
【0012】
(2)前記制御光と前記信号光は、光の進行方向で前記光吸収層の入射面から0〜+60μm以内に収束または集光するようにした上記(1)に記載の光偏向方法である。
【0013】
(3)前記制御光の収束点と前記信号光の収束点との距離は、光軸に対して垂直方向に25〜50μmである上記(1)または(2)に記載の光偏向方法である。
【0014】
(4)2つ以上の複数の制御光を前記光吸収層に照射し、前記複数の制御光の組み合わせによって、前記信号光の進行方向を変える上記(1)から(3)のいずれか1つに記載の光偏向方法である。
【0015】
(5)1種類以上の波長の信号光を照射する信号光光源と、前記信号光とは異なる波長の制御光を照射する制御光光源と、前記信号光は透過し、前記制御光を選択的に吸収する光吸収層を含む熱レンズ形成光素子と、前記光吸収層に前記制御光と前記信号光とを各々収束点を異ならせて集光させる集光手段と、を有し、前記熱レンズ形成光素子は、前記制御光と前記信号光が、光の進行方向で前記光吸収層の入射面またはその近辺において収束したのち拡散することによって、前記光吸収層内における前記制御光を吸収した領域およびその周辺領域に起こる温度上昇に起因し可逆的に形成される熱レンズにより、屈折率が変化して、前記信号光の進行方向を変える光偏向装置である。
【0016】
(6)前記集光手段は、前記制御光と前記信号光は、光の進行方向で前記光吸収層の入射面から0〜+60μm以内に収束または集光するように制御する上記(5)に記載の光偏向装置である。
【0017】
(7)前記集光手段は、前記制御光の収束点と前記信号光の収束点との距離は、光軸に対して垂直方向に25〜50μmであるように制御する上記(5)または(6)に記載の光偏向装置である。
【0018】
(8)前記制御光光源は、2つ以上の複数の制御光を照射し、前記集光手段は、前記複数の制御光の収束点を異ならせて前記光吸収層に収束または集光させる上記(5)から(7)のいずれか1つに記載の光偏向装置である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、制御光を集光して光吸収層に照射することにより局部的に光パワー密度を高めることができ、また低パワーで光吸収層の局所の温度を高めることができ、その部分および近辺の屈折率を変えることができる。また信号光も集光して制御光の照射位置近辺の光吸収層に入射させることにより、制御光による屈折率の変化を効率よく利用でき、信号光の偏向が可能となる。
【0020】
さらに、制御光を光吸収層の入射面近辺に集光して入射させることにより、光吸収層内で制御光が収束点(集光点)から拡散するので、屈折率の変化領域も拡がり信号光の偏向を大きくすることが可能となる。
【0021】
また、本発明では、制御光および信号光を集光し、かつ収束点(集光点)を近接できるので、高速の光偏向が可能となる。また、偏向された信号光は、集光前のビーム断面と同じ形状で熱レンズ形成光素子より出力されるため、偏向された信号光をのちに集光させて用いる際にも実用性が高い。すなわち、信号光断面におけるエネルギー分布が回析光学的に収束の容易な状態(例えばガウス分布)を保ちつつ偏向が可能で光ファイバーへの光結合を高効率に行うことができる。
【0022】
また、低パワーの半導体レーザを用いることも可能であるため、小型で安価な光偏向装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0024】
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係る光偏向装置の概略構成例である。本発明の第1の実施の形態に係る光偏向装置は、図1に概要を例示するように信号光光源である信号光入射端子1と、信号光をほぼ平行光にする第1のコリメートレンズ2と、制御光光源である制御光入射端子3と、制御光をほぼ平行光にする第2のコリメートレンズ4と、信号光と制御光とを合わせる光混合器5と、信号光と制御光とを熱レンズ形成光素子7の光吸収層に集光する集光手段である集光レンズ6と、熱レンズ形成光素子7と、波長選択透過フィルター8とを有する。
【0025】
図示されていないが、信号光入射端子1には、光ファイバーにより信号光を入射させた。信号光波長は、本実施例では1550nmを用いた。信号光はこれ以外でも熱レンズ形成光素子7の光吸収層を透過する波長であれば何でも良い。あるいは、用いられる信号光の波長を透過する吸収スペクトル特性の熱レンズ形成光素子7が用いられる。本実施例では、信号光は光ファイバーで入射させているが、信号光入射端子1には、信号光を発光するレーザ光源を直接設置しても良い。
【0026】
本発明の光偏向方法および光偏向装置で使用される熱レンズ形成光素子中の光吸収層の材料、信号光の波長帯域、および制御光の波長帯域は、これらの組み合わせとして、使用目的に応じて適切な組み合わせを選定し用いることができる。具体的な設定手順としては、例えば、まず、使用目的に応じて信号光の波長ないし波長帯域を決定し、これを制御するのに最適な光吸収層膜の材料と制御光の波長の組み合わせを選定すれば良い。または、使用目的に応じて信号光と制御光の波長の組み合わせを決定してから、この組み合わせに適した光吸収層膜の材料を選定すれば良い。例えば、信号光によって画像や文字を直接表示しようとする場合は、信号光としては波長400〜800nmの可視光線を用い、制御光としては波長980nmの赤外線を用い、光吸収層の材料としては前記波長の可視光線を透過し前記波長の赤外線を吸収するものが用いられる。また、例えば、使用する光吸収層の材料の光吸収スペクトルにおける吸収極大の最長波長λ1に相当する波長の光を制御光として用いる場合、λ1よりも長波長の光を信号光として好適に用いることができる。具体的には、光吸収層の材料としてペリレンを用いる場合、制御光を例えば405nm、信号光を例えば540nm、660nm、780nm、830nm、980nm、1310nm、または,1550nmとすることができる。また、光吸収層の材料として銅フタロシアニン誘導体を用いる場合、制御光を例えば650nm、信号光を例えば690nm、780nm、830nm、980nm、1310nm、または,1550nmとすることができる。
【0027】
図示されていないが、制御光入射端子3には光ファイバーにより制御光を入射させた。制御光波長は、本実施例では980nmを用いた。制御光はこれ以外でも熱レンズ形成光素子7の光吸収層で吸収される波長であれば任意の波長を用いることができる。本実施例では、制御光は光ファイバーで入射させているが、制御光入射端子3には、制御光を発光するレーザを直接設置しても良い。
【0028】
第1のコリメートレンズ2および第2のコリメートレンズ4は、焦点距離8mmの非球面レンズを用いた。焦点距離は8mmである必要はなく、より小型の光偏向装置にするために更に短い焦点距離を用いても良いことは言うまでもない。また、非球面レンズである必要はないが、小型軽量にするために非球面レンズを用いた。
【0029】
光混合器5は、信号光は透過し、制御光は反射するダイクロイックミラーを用いた。もちろん、信号光入射端子と制御光入射端子との位置を入れ替えて、信号光が反射し、制御光が透過する様にしたダイクロイックミラーを用いても良いことは言うまでもない。
【0030】
集光レンズ6は、焦点距離8mmの非球面レンズを用いた。焦点距離は8mmである必要はなく、より小型の光偏向装置にするために更に短い焦点距離を用いても良いことは言うまでもない。また、非球面レンズである必要はないが、小型軽量にするために非球面レンズを用いた。
【0031】
信号光と制御光は、集光レンズ6により、光の進行方向で光吸収層の入射面またはその近辺において収束する様にした。信号光と制御光とを光吸収層の入射面近辺の同一のところに収束(集光)すると信号光はドーナツ状に拡がる。この状況を図12に示す。制御光がない場合には図12(a)の写真1aの様に丸ビームであった信号光が、制御光が同時に同一のところに照射されると、図12(b)の写真1bの様になる。このドーナツ形状が鮮明で大きく形成されるのが、光吸収層の入射面であると思われる。よって、本提案で光吸収層の入射面という場合は、このドーナツ形状が鮮明で大きく形成される位置とする。もちろん、本提案では信号光と制御光とは収束(集光)点の位置では25〜50μmほど離れているので、ドーナツ形状は形成されないが、調整時には信号光と制御光とを同一点に入射させ、ドーナツ形状を形成させ、その後信号光と制御光との収束(集光)点が分離させている。なお、信号光と制御光との収束点間の距離が25μm未満の場合には、図12に示すような丸ビームにならず、三日月型ビームになってしまう。この三日月型ビームの信号光では、のちに集光させ光ファイバーに入射させたり、小さな穴を通過させる場合には、情報量が減少してしまい、実用性にかけるおそれがある。また、この三日月型ビームの信号光では、ビームを偏向して画像表示や文字表示をする場合には、意図したように表示できない欠点が生じる。
【0032】
熱レンズ形成光素子7は、図5に示した様な構成であるが、本実施例では説明を容易にするため、光吸収層のみを図示した。図5において、熱レンズ形成光素子23の光吸収層22は、色素を溶剤に溶解したものをガラス容器24に封じて用いた。溶剤に可溶性の色素としては、使用する制御光の波長領域に吸収があり、使用する信号光の波長領域に吸収のない公知の色素を使用することができる。レーザ光25が透過するガラス容器24のガラスの厚みは約500μm、光吸収層22の厚みは200〜1000μmであった。色素の具体例としては、例えば、ローダミンB、ローダミン6G、エオシン、フロキシンBなどのキサンテン系色素、アクリジンオレンジ、アクリジンレッドなどのアクリジン系色素、エチルレッド、メチルレッドなどのアゾ色素、ポルフィリン系色素、フタロシアニン系色素、3,3’−ジエチルチアカルボシアニンヨージド、3,3’−ジエチルオキサジカルボシアニンヨージドなどのシアニン色素、エチル・バイオレット、ビクトリア・ブルーRなどのトリアリールメタン系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド系色素、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド系色素などを好適に使用することができる。また、これらの色素を単独で、または、2種以上を混合して使用することができる。溶剤としては、少なくとも使用する色素を溶解するものを用いることができるが、熱レンズ形成時の温度上昇に際し、熱分解することなく、かつ、沸騰する温度(沸点)が100℃以上、好ましくは200℃以上、更に好ましくは300℃以上のものを好適に用いることができる。具体的には、硫酸などの無機系溶剤、o−ジクロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族炭化水素系、1−フェニル−1−キシリルエタンまたは1−フェニル−1−エチルフェニルエタンなどの芳香族置換脂肪族炭化水素系、ニトロベンゼンなどのニトロベンゼン誘導体系、などの有機溶剤を好適に用いることができる。
【0033】
波長選択透過フィルター8は、熱レンズ形成光素子7をわずかに透過する制御光を遮光し、信号光は透過する誘電体フィルターである。熱レンズ形成光素子7で実用上問題ない程度に制御光が吸収されれば、波長選択透過フィルター8を用いる必要はない。
【0034】
熱レンズ形成光素子7の光吸収層で制御光が吸収されると、光吸収層の温度が上昇し、屈折率が変わる。温度が上昇するので、一般に屈折率は下がる方向に変化する。通常のレーザ光源から出射するレーザ光、および、通常のレーザ光源から出射し光ファイバーを透過してきたレーザ光の強度分布はガウス分布である。また、前記レーザ光をレンズ等で集光した光もガウス分布をしている。よって、制御光が照射された光吸収層での屈折率分布は、制御光の光軸で屈折率が一番低下し、制御光の周辺では屈折率の低下が少なくなる。また、熱伝導があるので、光の照射されていない部分でも屈折率が変化する。
【0035】
図4は、信号光が偏向する状況を説明した図である。なお、説明を簡単にするため、図4では光吸収層と光吸収層の周りの媒質との屈折率の違いによる光の屈折は無視している。図4において、熱レンズ形成光素子の光吸収層22に、信号光16と制御光17が照射され、制御光が照射されなかった場合の熱レンズ形成光素子を透過した信号光18と、制御光が照射された場合の熱レンズ形成光素子を透過した信号光19が示されている。さらに、熱レンズ形成光素子の光吸収層22の入射面近辺での制御光の光強度分布20、および、熱レンズ形成光素子の光吸収層22の出射面近辺での光強度分布21が示されている。
【0036】
図4aはレーザ光を集光しない場合、図4bはレーザ光を集光した場合のレーザ光の光路を模式的に示したものである。レーザ光を集光しない場合のレーザ光の強度分布領域は、光吸収層の入射面近辺と出射面近辺では変わらない。このことは、信号光が光吸収層22を進むに従って、屈折率の変化の少ない領域を通過することを意味する。一方、レーザ光を集光した場合はレーザ光の強度分布領域は、光吸収層の入射面近辺と出射面近辺では大きく変わり、出射面近辺では領域が拡がっている。このことは、屈折率も徐々に拡がっていることになり、信号光が光吸収層を進むに従ってより偏向させる作用を及ぼすことになる。なお、屈折率変化は制御光パワーにほぼ比例して変化するので、光吸収層を進むに従って屈折率変化は小さくなる。
【0037】
図4bでは、信号光も熱レンズ形成光素子の光吸収層22の入射面に収束(集光)する様にしているが、入射面近辺であれば良い。特に信号光は、光吸収層のもう少し出射面側に収束(集光)する様にしても良い。また、信号光と制御光とは光の進行方向で同一面に入射するようにしているが、全く同一面である必要はなく、多少ずれていても構わない。
【0038】
本実施の形態では、信号光1550nmをコア径9.5μmのシングルモード石英光ファイバーで信号光入射端子に入射させ、制御光980nmをコア径9.5μmのシングルモード石英光ファイバーで制御光入射端子に入射させ、焦点距離8mmの第1のコリメートレンズおよび第2のコリメートレンズで信号光および制御光をほぼ平行光にし、光吸収層の厚み500μmであって光吸収層の波長1550nmにおける透過率95%および980nmにおける透過率0.2%、の熱レンズ形成光素子に、焦点距離8mmのレンズで収束(集光)して入射させた。
【0039】
偏向角は、次の条件が変わると変化する。
1.熱レンズ形成光素子の光吸収層の、信号光と制御光の第1の集光レンズ6の収束(集光)点に対する位置
2.制御光パワー
3.制御光位置(第1の集光レンズ6の集光点での信号光と制御光の光軸に直角方向の距離)
4.熱レンズ形成光素子の光吸収層の厚み
5.制御光波長および信号光波長。
6.光吸収層の色素濃度
これ以外にも、光吸収層の材質、光吸収層への制御光および信号光の収束(集光)角等によっても変化する。
【0040】
図6に、図4に示した熱レンズ形成光素子7の光吸収層22への信号光と制御光の収束(集光)点の入射位置(「光吸収層位置」と記す)と偏向角との関係を示す。図6において、横軸の光吸収層位置は熱レンズ形成光素子7の光吸収層22への光の入射の位置(制御光と信号光の収束(集光)点に対する位置)である。0点は、熱レンズ形成光素子7の光吸収層22の光の入射面の位置が制御光と信号光の収束(集光)点の位置であり、図4bの状態である。マイナス方向が光の進行方向であり、プラスの位置では信号光と制御光が熱レンズ形成光素子7の光吸収層22内で収束(集光)する。縦軸は偏向角である。なお、図6において、制御光パワーは約12.9mWであり、制御光位置(集光点での信号光と制御光の光軸に直角方向の距離)は35μm、光吸収層の厚みは500μmであって光吸収層の波長1550nmにおける透過率95%および980nmにおける透過率0.2%である。
【0041】
光吸収層22の光の入射位置が0より小さい場合は、元の光ビーム形状が円形であったものが、三日月型の光ビーム形状になった。熱レンズ形成光素子位置が−65μmより小さい場合は、偏向された光ビーの形状が大きく崩れてしまい、測定が不可能になった。光吸収層位置を0より大きくするとビーム形状の崩れは小さい。
【0042】
しかし、図6より明らかなように、光吸収層位置を0より大きくすると偏向角が小さくなる。光吸収層22の光の入射面位置が0の場合とは図4bの状態の時であり、光吸収層22の光の入射面位置が0より大きくなった場合は光吸収層内で収束(集光)することになり、制御光ビームの拡がりによる偏向角は、図4bに示す偏向角より小さくなる。
【0043】
図7に制御光パワーと偏向量(偏向角)との関係の例を示す。制御光パワーにほぼ比例して偏向量(偏向角)は変化する。制御光パワーを調整することにより所望の偏向量(偏向角)に調整することが可能である。なお、図7において、制御光位置(集光点での信号光と制御光の光軸に直角方向の距離)は35μm、熱レンズ形成光素子7の光吸収層22への信号光と制御光の収束(集光)点の入射位置である光吸収層位置は60μm、光吸収層の厚みは500μmであって光吸収層の波長1550nmにおける透過率95%および980nmにおける透過率0.2%である。
【0044】
図8は、制御光位置(集光点での信号光と制御光の光軸に直角方向の距離)と偏向量(偏向角)の関係を示す。制御光位置(集光点での信号光と制御光の光軸に直角方向の距離)が大きくなると偏向角が小さくなる。逆に制御光位置が小さくなると偏向角が大きくなるが、25μmよりも小さくすると偏向されだ光ビーム形状が三日月型になってくる。なお図8において、光吸収層位置は60μm、制御光パワーは12.9mW、光吸収層の厚みは500μmであって光吸収層の波長1550nmにおける透過率95%および980nmにおける透過率0.2%である。
【0045】
図9は、光吸収層の厚みと偏向角との関係を示す。図9において光吸収層の波長1550nmにおける透過率95〜80%、および、980nmにおける透過率24〜0.2%であった。光吸収層の厚みが約200μmまでは急激に偏向角が増大し、それ以降の増大は緩やかになり、500μmを越すと増大はほんのわずかであった。なお、図9において、光吸収層位置は60μm、制御光パワーは12.9mW、制御光位置(集光点での信号光と制御光の光軸に直角方向の距離)は35μmである。
【0046】
図10は、光吸収層の色素濃度と偏向角の関係を示す。図10において、色素濃度によらず、光吸収層の波長1550nmにおける透過率は0.2%前後であった。また、光吸収層の波長980nmにおける透過率は、色素濃度0.05%、0.1%、0.15%、0.2%、および、0.25%の場合、各々、7.3%、0.85%、0.11%、0.068%、および、0.03%であった。図10において、線26(丸点結ぶ実線)は光吸収層22への制御光と信号光の収束(集光)点の入射の位置(光吸収層位置)が、光吸収層22の光の入射面の位置であり(すなわち光吸収層位置が0μm)、線27(四角点結ぶ実線)は光吸収層22の光の入射面の位置から約60μm光吸収層22に入った位置(すなわち光吸収層位置が60μm)、線28(三角点結ぶ実線)は光吸収層22の光の入射面の位置から約100μm光吸収層22に入った位置(すなわち光吸収層位置が100μm)での偏向角のデータである。線26の光吸収層22への制御光と信号光の収束(集光)点の入射の位置の場合は、濃度が0.2%と高い方が偏向角が大きい傾向があるが、60μmあるいは100μmと制御光と信号光が光吸収層22のなかで収束(集光)する場合は、偏向角が減少する傾向がある。なお、図10では、制御光パワーは12.9mW、制御光位置(集光点での信号光と制御光の光軸に直角方向の距離)は35μm、光制御層の厚み500μmである。
【0047】
偏向角は、制御光波長および信号光波長によっても異なる。波長が短いほど偏向角が大きくなる。
【0048】
(比較例1)
第1の実施の形態において、集光レンズ6を用いず、各々コリメートされた信号光および制御光を収束することなく熱レンズ形成光素子7に照射する点を除いては、第1の実施形態と同様の実験を行ったが、制御光パワー18mW程度では、制御光を照射しても信号光の偏向は全く観察されなかった。そこで、制御光光源をTi:サイファイアレーザに変えて、更にハイパワーの制御光(980nm)を照射したところ、信号光の偏向が検知される前に熱レンズ形成光素子中の色素溶液の溶剤が沸騰を開始し、信号光の偏向を行うことが困難であることが確認された。更に、制御光のパワーを前記沸騰が始まる寸前まで下げて、熱レンズ形成光素子に入射するまでの信号光と制御光の配置およびビーム間距離を微調整したが、信号光の光路偏向は観察されなかった。更にまた、熱レンズ形成光素子中の光吸収層における信号光と制御光の配置およびビーム間距離を微調整したが、信号光の光路偏向は観察されなかった。すなわち、制御光を収束させて熱レンズ形成光素子中の光吸収層において拡散しながら光吸収が起こるようにしないで、コリメートされた平行ビームとして照射した場合、信号光の光路を偏向するに足る大きさの熱レンズが形成されないことが判った。
【0049】
(第2の実施の形態)
図2は本発明の第2の実施の形態に係る光偏向装置の概略構成例である。本発明の第2の実施の形態において、第1の実施の形態と同じ光学部材については、同一の番号を付けた。
【0050】
図2において、第2の信号光入射端子10、第2の制御光入射端子11、焦点距離8mmの第2の結像レンズ12とを有する光偏向装置が示されている。熱レンズ形成光素子7および波長選択透過フィルター8は、図1と同じである。また、用いた信号光の波長は1550nm、制御光の波長は980nmであった。しかし、信号光の波長も制御光の波長もこれ以外の波長でも良いことは第1の実施例と同様言うまでもない。制御光のパワーを変えると偏向量(偏向角)が変わることは、第1の実施の形態と同じである。
【0051】
第2の信号光入射端子10と第2の制御光入射端子11には、図11(a)に示した2芯光ファイバーフェルールを設置した。
【0052】
図11(a)の2芯光ファイバーフェルールの信号光出射ファイバー30と制御光出射ファイバー29はコア9.5μmのシングルモード石英光ファイバーのクラッド層をフッ酸で所望の太さにエッチングして用いた。エッチングする部分は、光ファイバーの先端数mmだけであった。エッチングした後の光ファイバーの太さ「ω」は、光吸収層に収束(集光)した信号光と制御光の収束(集光)点の光軸に直角方向の距離「χ」と次の関係にした。
(式1)
ω=χ/m
ここでmは、第2の集光レンズ12の結像倍率である。本実施例では、mは1であった。mを小さくすればエッチング後の光ファイバーの太さは太くでき、mを大きくすればエッチング後の光ファイバーの太さは細くしなければならない。
【0053】
本実施の形態では、mは1,ωは35μmにした。第1の実施例からも明らかである様に、ωを大きくすると偏向角は小さくなるので、ωは25〜50ミクロンが相応しい。25μm以下にすると、レーザ光の透過率が悪くなった。特に、980nmのレーザ光の透過が悪くなり、長さ1mのファイバーを通過させた場合の透過率が20%〜80%となった。
【0054】
制御光用の光ファイバーと信号光用の光ファイバーは、太さ2ω+数μmにあけられたフェルールの穴に接着剤で固定した後、先端を研磨して用いた。
【0055】
本実施の形態では、光ファイバーのコア径は9.5μmのシングルモード光ファイバーを用いたが、レーザ光の波長を変える場合は、それに相応しいコア径の光ファイバーにする必要がある。例えば、制御光を660nmにする場合は、コア径4.5μmにした方が良い。
【0056】
本実施例での光の偏向量(偏向角)は、第1の実施の形態とほぼ同じであった。
【0057】
(第3の実施の形態)
図3は本発明の第3の実施の形態に係る光偏向装置の概略構成例である。本発明の第3の実施の形態において、第1の実施の形態および第2の実施の形態と同じ光学部材については、同一の番号を付けた。第3の実施の形態は、第2の実施例より制御光の数を1つ増やし、偏向角を2倍にした例である。
【0058】
図3において、第3の信号光入射端子13と、第3の制御光入射端子14と、第4の制御光入射端子15とを有する光偏向装置が示されており、第2の集光レンズ12および熱レンズ形成光素子7は、図1および図2と同じである。また、用いた信号光の波長は1550nm、制御光の波長は980nmであった。しかし、信号光の波長も制御光の波長もこれ以外の波長でも良いことは第1の実施の形態および第2の実施の形態と同様であることは言うまでもない。制御光のパワーを変えると偏向量(偏向角)が変わることは、第1の実施の形態および第2の実施の形態と同じである。
【0059】
第3の信号光入射端子13と第3の制御光入射端子14および第4の制御光入射端子15には、図11(b)に示した3芯光ファイバーフェルールを設置した。
【0060】
図11(c)の3芯光ファイバーは、光の偏向を2次元に行う場合の例である。制御光出射ファイバー29のそれぞれから出射する制御光パワーを調整することにより、2次元に偏向できる。
【0061】
図11の3芯光ファイバーフェルールの信号光出射ファイバー30と制御光出射ファイバー29はコア9.5μmのシングルモード石英光ファイバーのクラット層をフッ酸で所望の太さにエッチングして用いた。エッチングする部分は、光ファイバーの先端数mmだけであった。エッチングした後の光ファイバーの太さ「ω」は、光吸収層に収束(集光)した信号光と制御光の収束(集光)点の光軸に直角方向の距離「χ」と次の関係にした。
(式2)
ω=χ/m
ここでmは、第2の集光レンズ12の結像倍率である。本実施例では、mは1であった。mを小さくすればエッチング後の光ファイバーの太さは太くでき、mを大きくすればエッチング後の光ファイバーの太さは細くしなければならない。
【0062】
本実施の形態では、mは1,ωは35μmにした。第1の実施例からも明らかである様に、ωを大きくすると偏向角は小さくなるので、ωは25〜50ミクロンが相応しい。25μm以下にすると、レーザ光の透過率が悪くなった。特に、980nmのレーザ光の透過が悪くなり、1mのファイバーでの透過率が20%〜80%となった。
【0063】
図11(b)の場合の制御光用の光ファイバーと信号光用の光ファイバーは、太さ3ω+数μmにあけられたフェルールの穴に接着剤で固定した後、先端を研磨して用いた。また、図11(c)の場合の制御光用の光ファイバーと信号光用の光ファイバーは、太さ(1+√2)ω+数μmにあけられたフェルールの穴に接着剤で固定した後、先端を研磨して用いた。
【0064】
本実施の形態では、光ファイバーのコア径は9.5μmのシングルモード光ファイバーを用いたが、レーザ光の波長を変える場合は、それに相応しいコア径の光ファイバーにする必要がある。例えば、制御光を660nmにする場合は、コア径4.5μmにした方が良い。
【0065】
本実施の形態での光の偏向量(偏向角)は、第1の実施の形態および第2の実施の形態とほぼ同じであった。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の偏向方法および偏向素子を用いて、画像表示装置、空間情報伝達装置、光スイッチ装置等への応用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第1の実施の形態の光偏向装置の概念図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態の光偏向装置の概念図である。
【図3】本発明の第3の実施の形態の光偏向装置の概念図である。
【図4a】信号光の偏向を説明する図である。
【図4b】信号光の偏向を説明する図である。
【図5】熱レンズ形成光素子の構成の一例を示す図である。
【図6】光吸収層の位置と偏向角との関係を示すグラフである。
【図7】制御光パワーと偏向角との関係を示すグラフである。
【図8】制御光位置と偏向角との関係を示すグラフである。
【図9】光吸収層厚みと偏向角との関係を示すグラフである。
【図10】色素濃度と偏向角との関係を示す図である。
【図11】ファイバーフェルールの概念図である。
【図12】出力された信号光の断面を示す図である。
【符号の説明】
【0068】
1 信号光入力端子、2 第1のコリメートレンズ、3 制御光入力端子、4 第2のコリメートレンズ、5 光混合器、6 集光レンズ、7 熱レンズ形成光素子、8 波長選択透過フィルター。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信、光情報処理などの光エレクトロニクス(フォトニクス)の分野において有用な、熱レンズ形成光素子、それを用いる偏向素子、光制御方法および光制御装置に関するものである。特に熱レンズ形成光素子の屈折率の変化に基づいて、光(信号光)の偏向を行う熱レンズ形成光素子、この熱レンズ形成光素子を用いた偏向素子、光制御方法、光制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光を偏向する手段としては、次のような方法が一般に採られている。
(1)機械的にミラーを振る。
(2)機械的にポリゴンミラーを回転させる。
(3)音響光学効果を用いる。
(4)電気光学効果を用いる。
【0003】
機械的にミラーを振る偏向方法は高精度に行うためには高価な制御機構が必要、また高周波数まで応答できないという欠点を有する。ポリゴンミラーを用いる方法は、大変高価である。音響光学効果および電気光学効果を用いる方法は、高価で、大きく、また偏向角が小さいという欠点を有する。
【0004】
温度により、媒体内に屈折率分布を生じさせ、光を変調する方法が提案されている(特許文献1参照)。この特許文献1に開示された手法は、発熱抵抗体で媒体に熱を与え、媒体内に屈折率分布を生じさせ、光を偏向している。そして、この偏向した光が遮光板で遮光されるか否かにより、光スポットを点滅させるものである。しかしながら、この特許文献1に開示された手法は、発熱抵抗体で発熱させ、熱伝導で媒体を加熱することになるので、「熱の広がり」という問題を本来的に有する。つまり、熱の広がりにより、広い面積内で微細な熱勾配を与えることができず、所望の屈折率分布を得るのが困難である。更に、発熱抵抗体の微細加工は半導体集積回路で用いられているフォトリソグラフィ技術を採用しても、現実には極めて困難であり、一定の限界を有し、素子が大型化せざるを得ない。素子が大型化すれば、それに伴い光学系も複雑かつ大型化する。また、発熱抵抗体で発熱させ、熱伝導で媒体を加熱することになるので、応答が遅く、屈折率変化の周波数を上げることができないという不具合を本質的な問題として有している。
【0005】
また、レーザ光を照射して物質を加熱することによりレーザ光の照射された物質の屈折率を変え、レーザ光を偏向する方法が提案されている(特許文献2および特許文献3参照)。どちらの方法も、ビーム径が太く、大パワーを入力させないとレーザ光の偏向はほんのわずかである。特許文献2の方法は、照射光の加熱で照射光自身が偏向する方法である。この方法を光偏向に用いる場合は、加熱して屈折率を変えるために照射光は吸収されるので、物質を透過する光は原理的に大きく減少してしまうことになる。
【0006】
特許文献3の方法は、電気的または機械的手段を取らず、制御ビームの照射でスイッチ物質の屈折率を変え、信号ビームの光路を変える光学的スイッチである。しかしながら、この場合のも、制御ビームも信号ビームもレンズを用いて集光する方法を取っておらず、屈折率変化を起こさせるレーザ光パワーは大パワーが必要である。また、装置も大がかりになってしまう。また、本提案のように屈折変化領域がビームの進行に従って拡がるような手段を取り得ないので、偏向角を余り大きくできない。
【0007】
また、光応答組成物からなる熱レンズ形成光素子と、該熱レンズ形成光素子にくさび形の光強度分布で光を照射するための強度分布調整手段とから少なくとも構成され、制御光により前記熱レンズ形成光素子中に屈折率分布を形成し、該屈折率分布により前記制御光とは異なる波長の信号光の偏向を行うことを特徴とする熱レンズ形成光素子を用いた偏向素子が開示されている(特許文献4参照)。この方式は、光で光を制御する点では優れたものであるが、該熱レンズ形成光素子にくさび形の光強度分布で光を照射するための強度分布調整手段の調整に高度な技術が必要であり、制御光強度が微妙に変化するだけで偏向角度が大きく変動するという問題がある。
【0008】
【特許文献1】特開昭60−14221号公報
【特許文献2】米国特許第4,776,677号
【特許文献3】米国特許第4,585,301号
【特許文献4】特開平11−194373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、複雑で高価な電気回路や機械的可動部品を用いずに光偏向を可能とすることができるとともに、故障が極めて少なく、耐久性の高い、偏波依存性の極めて少ない、信号光の光強度減衰が少なく、小さい制御光パワーにより偏向角度を大きく調整することができ、信号光断面におけるエネルギー分布が回析光学的に収束の容易な状態(例えばガウス分布)を保ちつつ偏向が可能で後段の光ファイバーへの光結合を高効率に行うことができ、さらに調整が容易で動作の安定した、光偏向方法および光偏向装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の特徴を有する。
【0011】
(1)少なくとも光吸収層を含む熱レンズ形成光素子中の光吸収層に、制御光と信号光とを入射させ、前記制御光および前記信号光は、前記光吸収層にて収束するように照射されかつ前記制御光および前記信号光の各々の収束点の位置が相異なるように照射され、前記制御光の波長と前記信号光の波長を異ならせ、前記制御光の波長は前記光吸収層が吸収する波長帯域から選ばれ、前記信号光の波長は前記光吸収層が吸収しない波長帯域から選ばれ、前記制御光と前記信号光は、光の進行方向で前記光吸収層の入射面またはその近辺において収束したのち拡散することによって、前記光吸収層内における前記制御光を吸収した領域およびその周辺領域に起こる温度上昇に起因し可逆的に形成される熱レンズにより、屈折率が変化して、前記信号光の進行方向を変える光偏向方法である。
【0012】
(2)前記制御光と前記信号光は、光の進行方向で前記光吸収層の入射面から0〜+60μm以内に収束または集光するようにした上記(1)に記載の光偏向方法である。
【0013】
(3)前記制御光の収束点と前記信号光の収束点との距離は、光軸に対して垂直方向に25〜50μmである上記(1)または(2)に記載の光偏向方法である。
【0014】
(4)2つ以上の複数の制御光を前記光吸収層に照射し、前記複数の制御光の組み合わせによって、前記信号光の進行方向を変える上記(1)から(3)のいずれか1つに記載の光偏向方法である。
【0015】
(5)1種類以上の波長の信号光を照射する信号光光源と、前記信号光とは異なる波長の制御光を照射する制御光光源と、前記信号光は透過し、前記制御光を選択的に吸収する光吸収層を含む熱レンズ形成光素子と、前記光吸収層に前記制御光と前記信号光とを各々収束点を異ならせて集光させる集光手段と、を有し、前記熱レンズ形成光素子は、前記制御光と前記信号光が、光の進行方向で前記光吸収層の入射面またはその近辺において収束したのち拡散することによって、前記光吸収層内における前記制御光を吸収した領域およびその周辺領域に起こる温度上昇に起因し可逆的に形成される熱レンズにより、屈折率が変化して、前記信号光の進行方向を変える光偏向装置である。
【0016】
(6)前記集光手段は、前記制御光と前記信号光は、光の進行方向で前記光吸収層の入射面から0〜+60μm以内に収束または集光するように制御する上記(5)に記載の光偏向装置である。
【0017】
(7)前記集光手段は、前記制御光の収束点と前記信号光の収束点との距離は、光軸に対して垂直方向に25〜50μmであるように制御する上記(5)または(6)に記載の光偏向装置である。
【0018】
(8)前記制御光光源は、2つ以上の複数の制御光を照射し、前記集光手段は、前記複数の制御光の収束点を異ならせて前記光吸収層に収束または集光させる上記(5)から(7)のいずれか1つに記載の光偏向装置である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、制御光を集光して光吸収層に照射することにより局部的に光パワー密度を高めることができ、また低パワーで光吸収層の局所の温度を高めることができ、その部分および近辺の屈折率を変えることができる。また信号光も集光して制御光の照射位置近辺の光吸収層に入射させることにより、制御光による屈折率の変化を効率よく利用でき、信号光の偏向が可能となる。
【0020】
さらに、制御光を光吸収層の入射面近辺に集光して入射させることにより、光吸収層内で制御光が収束点(集光点)から拡散するので、屈折率の変化領域も拡がり信号光の偏向を大きくすることが可能となる。
【0021】
また、本発明では、制御光および信号光を集光し、かつ収束点(集光点)を近接できるので、高速の光偏向が可能となる。また、偏向された信号光は、集光前のビーム断面と同じ形状で熱レンズ形成光素子より出力されるため、偏向された信号光をのちに集光させて用いる際にも実用性が高い。すなわち、信号光断面におけるエネルギー分布が回析光学的に収束の容易な状態(例えばガウス分布)を保ちつつ偏向が可能で光ファイバーへの光結合を高効率に行うことができる。
【0022】
また、低パワーの半導体レーザを用いることも可能であるため、小型で安価な光偏向装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0024】
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係る光偏向装置の概略構成例である。本発明の第1の実施の形態に係る光偏向装置は、図1に概要を例示するように信号光光源である信号光入射端子1と、信号光をほぼ平行光にする第1のコリメートレンズ2と、制御光光源である制御光入射端子3と、制御光をほぼ平行光にする第2のコリメートレンズ4と、信号光と制御光とを合わせる光混合器5と、信号光と制御光とを熱レンズ形成光素子7の光吸収層に集光する集光手段である集光レンズ6と、熱レンズ形成光素子7と、波長選択透過フィルター8とを有する。
【0025】
図示されていないが、信号光入射端子1には、光ファイバーにより信号光を入射させた。信号光波長は、本実施例では1550nmを用いた。信号光はこれ以外でも熱レンズ形成光素子7の光吸収層を透過する波長であれば何でも良い。あるいは、用いられる信号光の波長を透過する吸収スペクトル特性の熱レンズ形成光素子7が用いられる。本実施例では、信号光は光ファイバーで入射させているが、信号光入射端子1には、信号光を発光するレーザ光源を直接設置しても良い。
【0026】
本発明の光偏向方法および光偏向装置で使用される熱レンズ形成光素子中の光吸収層の材料、信号光の波長帯域、および制御光の波長帯域は、これらの組み合わせとして、使用目的に応じて適切な組み合わせを選定し用いることができる。具体的な設定手順としては、例えば、まず、使用目的に応じて信号光の波長ないし波長帯域を決定し、これを制御するのに最適な光吸収層膜の材料と制御光の波長の組み合わせを選定すれば良い。または、使用目的に応じて信号光と制御光の波長の組み合わせを決定してから、この組み合わせに適した光吸収層膜の材料を選定すれば良い。例えば、信号光によって画像や文字を直接表示しようとする場合は、信号光としては波長400〜800nmの可視光線を用い、制御光としては波長980nmの赤外線を用い、光吸収層の材料としては前記波長の可視光線を透過し前記波長の赤外線を吸収するものが用いられる。また、例えば、使用する光吸収層の材料の光吸収スペクトルにおける吸収極大の最長波長λ1に相当する波長の光を制御光として用いる場合、λ1よりも長波長の光を信号光として好適に用いることができる。具体的には、光吸収層の材料としてペリレンを用いる場合、制御光を例えば405nm、信号光を例えば540nm、660nm、780nm、830nm、980nm、1310nm、または,1550nmとすることができる。また、光吸収層の材料として銅フタロシアニン誘導体を用いる場合、制御光を例えば650nm、信号光を例えば690nm、780nm、830nm、980nm、1310nm、または,1550nmとすることができる。
【0027】
図示されていないが、制御光入射端子3には光ファイバーにより制御光を入射させた。制御光波長は、本実施例では980nmを用いた。制御光はこれ以外でも熱レンズ形成光素子7の光吸収層で吸収される波長であれば任意の波長を用いることができる。本実施例では、制御光は光ファイバーで入射させているが、制御光入射端子3には、制御光を発光するレーザを直接設置しても良い。
【0028】
第1のコリメートレンズ2および第2のコリメートレンズ4は、焦点距離8mmの非球面レンズを用いた。焦点距離は8mmである必要はなく、より小型の光偏向装置にするために更に短い焦点距離を用いても良いことは言うまでもない。また、非球面レンズである必要はないが、小型軽量にするために非球面レンズを用いた。
【0029】
光混合器5は、信号光は透過し、制御光は反射するダイクロイックミラーを用いた。もちろん、信号光入射端子と制御光入射端子との位置を入れ替えて、信号光が反射し、制御光が透過する様にしたダイクロイックミラーを用いても良いことは言うまでもない。
【0030】
集光レンズ6は、焦点距離8mmの非球面レンズを用いた。焦点距離は8mmである必要はなく、より小型の光偏向装置にするために更に短い焦点距離を用いても良いことは言うまでもない。また、非球面レンズである必要はないが、小型軽量にするために非球面レンズを用いた。
【0031】
信号光と制御光は、集光レンズ6により、光の進行方向で光吸収層の入射面またはその近辺において収束する様にした。信号光と制御光とを光吸収層の入射面近辺の同一のところに収束(集光)すると信号光はドーナツ状に拡がる。この状況を図12に示す。制御光がない場合には図12(a)の写真1aの様に丸ビームであった信号光が、制御光が同時に同一のところに照射されると、図12(b)の写真1bの様になる。このドーナツ形状が鮮明で大きく形成されるのが、光吸収層の入射面であると思われる。よって、本提案で光吸収層の入射面という場合は、このドーナツ形状が鮮明で大きく形成される位置とする。もちろん、本提案では信号光と制御光とは収束(集光)点の位置では25〜50μmほど離れているので、ドーナツ形状は形成されないが、調整時には信号光と制御光とを同一点に入射させ、ドーナツ形状を形成させ、その後信号光と制御光との収束(集光)点が分離させている。なお、信号光と制御光との収束点間の距離が25μm未満の場合には、図12に示すような丸ビームにならず、三日月型ビームになってしまう。この三日月型ビームの信号光では、のちに集光させ光ファイバーに入射させたり、小さな穴を通過させる場合には、情報量が減少してしまい、実用性にかけるおそれがある。また、この三日月型ビームの信号光では、ビームを偏向して画像表示や文字表示をする場合には、意図したように表示できない欠点が生じる。
【0032】
熱レンズ形成光素子7は、図5に示した様な構成であるが、本実施例では説明を容易にするため、光吸収層のみを図示した。図5において、熱レンズ形成光素子23の光吸収層22は、色素を溶剤に溶解したものをガラス容器24に封じて用いた。溶剤に可溶性の色素としては、使用する制御光の波長領域に吸収があり、使用する信号光の波長領域に吸収のない公知の色素を使用することができる。レーザ光25が透過するガラス容器24のガラスの厚みは約500μm、光吸収層22の厚みは200〜1000μmであった。色素の具体例としては、例えば、ローダミンB、ローダミン6G、エオシン、フロキシンBなどのキサンテン系色素、アクリジンオレンジ、アクリジンレッドなどのアクリジン系色素、エチルレッド、メチルレッドなどのアゾ色素、ポルフィリン系色素、フタロシアニン系色素、3,3’−ジエチルチアカルボシアニンヨージド、3,3’−ジエチルオキサジカルボシアニンヨージドなどのシアニン色素、エチル・バイオレット、ビクトリア・ブルーRなどのトリアリールメタン系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド系色素、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド系色素などを好適に使用することができる。また、これらの色素を単独で、または、2種以上を混合して使用することができる。溶剤としては、少なくとも使用する色素を溶解するものを用いることができるが、熱レンズ形成時の温度上昇に際し、熱分解することなく、かつ、沸騰する温度(沸点)が100℃以上、好ましくは200℃以上、更に好ましくは300℃以上のものを好適に用いることができる。具体的には、硫酸などの無機系溶剤、o−ジクロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族炭化水素系、1−フェニル−1−キシリルエタンまたは1−フェニル−1−エチルフェニルエタンなどの芳香族置換脂肪族炭化水素系、ニトロベンゼンなどのニトロベンゼン誘導体系、などの有機溶剤を好適に用いることができる。
【0033】
波長選択透過フィルター8は、熱レンズ形成光素子7をわずかに透過する制御光を遮光し、信号光は透過する誘電体フィルターである。熱レンズ形成光素子7で実用上問題ない程度に制御光が吸収されれば、波長選択透過フィルター8を用いる必要はない。
【0034】
熱レンズ形成光素子7の光吸収層で制御光が吸収されると、光吸収層の温度が上昇し、屈折率が変わる。温度が上昇するので、一般に屈折率は下がる方向に変化する。通常のレーザ光源から出射するレーザ光、および、通常のレーザ光源から出射し光ファイバーを透過してきたレーザ光の強度分布はガウス分布である。また、前記レーザ光をレンズ等で集光した光もガウス分布をしている。よって、制御光が照射された光吸収層での屈折率分布は、制御光の光軸で屈折率が一番低下し、制御光の周辺では屈折率の低下が少なくなる。また、熱伝導があるので、光の照射されていない部分でも屈折率が変化する。
【0035】
図4は、信号光が偏向する状況を説明した図である。なお、説明を簡単にするため、図4では光吸収層と光吸収層の周りの媒質との屈折率の違いによる光の屈折は無視している。図4において、熱レンズ形成光素子の光吸収層22に、信号光16と制御光17が照射され、制御光が照射されなかった場合の熱レンズ形成光素子を透過した信号光18と、制御光が照射された場合の熱レンズ形成光素子を透過した信号光19が示されている。さらに、熱レンズ形成光素子の光吸収層22の入射面近辺での制御光の光強度分布20、および、熱レンズ形成光素子の光吸収層22の出射面近辺での光強度分布21が示されている。
【0036】
図4aはレーザ光を集光しない場合、図4bはレーザ光を集光した場合のレーザ光の光路を模式的に示したものである。レーザ光を集光しない場合のレーザ光の強度分布領域は、光吸収層の入射面近辺と出射面近辺では変わらない。このことは、信号光が光吸収層22を進むに従って、屈折率の変化の少ない領域を通過することを意味する。一方、レーザ光を集光した場合はレーザ光の強度分布領域は、光吸収層の入射面近辺と出射面近辺では大きく変わり、出射面近辺では領域が拡がっている。このことは、屈折率も徐々に拡がっていることになり、信号光が光吸収層を進むに従ってより偏向させる作用を及ぼすことになる。なお、屈折率変化は制御光パワーにほぼ比例して変化するので、光吸収層を進むに従って屈折率変化は小さくなる。
【0037】
図4bでは、信号光も熱レンズ形成光素子の光吸収層22の入射面に収束(集光)する様にしているが、入射面近辺であれば良い。特に信号光は、光吸収層のもう少し出射面側に収束(集光)する様にしても良い。また、信号光と制御光とは光の進行方向で同一面に入射するようにしているが、全く同一面である必要はなく、多少ずれていても構わない。
【0038】
本実施の形態では、信号光1550nmをコア径9.5μmのシングルモード石英光ファイバーで信号光入射端子に入射させ、制御光980nmをコア径9.5μmのシングルモード石英光ファイバーで制御光入射端子に入射させ、焦点距離8mmの第1のコリメートレンズおよび第2のコリメートレンズで信号光および制御光をほぼ平行光にし、光吸収層の厚み500μmであって光吸収層の波長1550nmにおける透過率95%および980nmにおける透過率0.2%、の熱レンズ形成光素子に、焦点距離8mmのレンズで収束(集光)して入射させた。
【0039】
偏向角は、次の条件が変わると変化する。
1.熱レンズ形成光素子の光吸収層の、信号光と制御光の第1の集光レンズ6の収束(集光)点に対する位置
2.制御光パワー
3.制御光位置(第1の集光レンズ6の集光点での信号光と制御光の光軸に直角方向の距離)
4.熱レンズ形成光素子の光吸収層の厚み
5.制御光波長および信号光波長。
6.光吸収層の色素濃度
これ以外にも、光吸収層の材質、光吸収層への制御光および信号光の収束(集光)角等によっても変化する。
【0040】
図6に、図4に示した熱レンズ形成光素子7の光吸収層22への信号光と制御光の収束(集光)点の入射位置(「光吸収層位置」と記す)と偏向角との関係を示す。図6において、横軸の光吸収層位置は熱レンズ形成光素子7の光吸収層22への光の入射の位置(制御光と信号光の収束(集光)点に対する位置)である。0点は、熱レンズ形成光素子7の光吸収層22の光の入射面の位置が制御光と信号光の収束(集光)点の位置であり、図4bの状態である。マイナス方向が光の進行方向であり、プラスの位置では信号光と制御光が熱レンズ形成光素子7の光吸収層22内で収束(集光)する。縦軸は偏向角である。なお、図6において、制御光パワーは約12.9mWであり、制御光位置(集光点での信号光と制御光の光軸に直角方向の距離)は35μm、光吸収層の厚みは500μmであって光吸収層の波長1550nmにおける透過率95%および980nmにおける透過率0.2%である。
【0041】
光吸収層22の光の入射位置が0より小さい場合は、元の光ビーム形状が円形であったものが、三日月型の光ビーム形状になった。熱レンズ形成光素子位置が−65μmより小さい場合は、偏向された光ビーの形状が大きく崩れてしまい、測定が不可能になった。光吸収層位置を0より大きくするとビーム形状の崩れは小さい。
【0042】
しかし、図6より明らかなように、光吸収層位置を0より大きくすると偏向角が小さくなる。光吸収層22の光の入射面位置が0の場合とは図4bの状態の時であり、光吸収層22の光の入射面位置が0より大きくなった場合は光吸収層内で収束(集光)することになり、制御光ビームの拡がりによる偏向角は、図4bに示す偏向角より小さくなる。
【0043】
図7に制御光パワーと偏向量(偏向角)との関係の例を示す。制御光パワーにほぼ比例して偏向量(偏向角)は変化する。制御光パワーを調整することにより所望の偏向量(偏向角)に調整することが可能である。なお、図7において、制御光位置(集光点での信号光と制御光の光軸に直角方向の距離)は35μm、熱レンズ形成光素子7の光吸収層22への信号光と制御光の収束(集光)点の入射位置である光吸収層位置は60μm、光吸収層の厚みは500μmであって光吸収層の波長1550nmにおける透過率95%および980nmにおける透過率0.2%である。
【0044】
図8は、制御光位置(集光点での信号光と制御光の光軸に直角方向の距離)と偏向量(偏向角)の関係を示す。制御光位置(集光点での信号光と制御光の光軸に直角方向の距離)が大きくなると偏向角が小さくなる。逆に制御光位置が小さくなると偏向角が大きくなるが、25μmよりも小さくすると偏向されだ光ビーム形状が三日月型になってくる。なお図8において、光吸収層位置は60μm、制御光パワーは12.9mW、光吸収層の厚みは500μmであって光吸収層の波長1550nmにおける透過率95%および980nmにおける透過率0.2%である。
【0045】
図9は、光吸収層の厚みと偏向角との関係を示す。図9において光吸収層の波長1550nmにおける透過率95〜80%、および、980nmにおける透過率24〜0.2%であった。光吸収層の厚みが約200μmまでは急激に偏向角が増大し、それ以降の増大は緩やかになり、500μmを越すと増大はほんのわずかであった。なお、図9において、光吸収層位置は60μm、制御光パワーは12.9mW、制御光位置(集光点での信号光と制御光の光軸に直角方向の距離)は35μmである。
【0046】
図10は、光吸収層の色素濃度と偏向角の関係を示す。図10において、色素濃度によらず、光吸収層の波長1550nmにおける透過率は0.2%前後であった。また、光吸収層の波長980nmにおける透過率は、色素濃度0.05%、0.1%、0.15%、0.2%、および、0.25%の場合、各々、7.3%、0.85%、0.11%、0.068%、および、0.03%であった。図10において、線26(丸点結ぶ実線)は光吸収層22への制御光と信号光の収束(集光)点の入射の位置(光吸収層位置)が、光吸収層22の光の入射面の位置であり(すなわち光吸収層位置が0μm)、線27(四角点結ぶ実線)は光吸収層22の光の入射面の位置から約60μm光吸収層22に入った位置(すなわち光吸収層位置が60μm)、線28(三角点結ぶ実線)は光吸収層22の光の入射面の位置から約100μm光吸収層22に入った位置(すなわち光吸収層位置が100μm)での偏向角のデータである。線26の光吸収層22への制御光と信号光の収束(集光)点の入射の位置の場合は、濃度が0.2%と高い方が偏向角が大きい傾向があるが、60μmあるいは100μmと制御光と信号光が光吸収層22のなかで収束(集光)する場合は、偏向角が減少する傾向がある。なお、図10では、制御光パワーは12.9mW、制御光位置(集光点での信号光と制御光の光軸に直角方向の距離)は35μm、光制御層の厚み500μmである。
【0047】
偏向角は、制御光波長および信号光波長によっても異なる。波長が短いほど偏向角が大きくなる。
【0048】
(比較例1)
第1の実施の形態において、集光レンズ6を用いず、各々コリメートされた信号光および制御光を収束することなく熱レンズ形成光素子7に照射する点を除いては、第1の実施形態と同様の実験を行ったが、制御光パワー18mW程度では、制御光を照射しても信号光の偏向は全く観察されなかった。そこで、制御光光源をTi:サイファイアレーザに変えて、更にハイパワーの制御光(980nm)を照射したところ、信号光の偏向が検知される前に熱レンズ形成光素子中の色素溶液の溶剤が沸騰を開始し、信号光の偏向を行うことが困難であることが確認された。更に、制御光のパワーを前記沸騰が始まる寸前まで下げて、熱レンズ形成光素子に入射するまでの信号光と制御光の配置およびビーム間距離を微調整したが、信号光の光路偏向は観察されなかった。更にまた、熱レンズ形成光素子中の光吸収層における信号光と制御光の配置およびビーム間距離を微調整したが、信号光の光路偏向は観察されなかった。すなわち、制御光を収束させて熱レンズ形成光素子中の光吸収層において拡散しながら光吸収が起こるようにしないで、コリメートされた平行ビームとして照射した場合、信号光の光路を偏向するに足る大きさの熱レンズが形成されないことが判った。
【0049】
(第2の実施の形態)
図2は本発明の第2の実施の形態に係る光偏向装置の概略構成例である。本発明の第2の実施の形態において、第1の実施の形態と同じ光学部材については、同一の番号を付けた。
【0050】
図2において、第2の信号光入射端子10、第2の制御光入射端子11、焦点距離8mmの第2の結像レンズ12とを有する光偏向装置が示されている。熱レンズ形成光素子7および波長選択透過フィルター8は、図1と同じである。また、用いた信号光の波長は1550nm、制御光の波長は980nmであった。しかし、信号光の波長も制御光の波長もこれ以外の波長でも良いことは第1の実施例と同様言うまでもない。制御光のパワーを変えると偏向量(偏向角)が変わることは、第1の実施の形態と同じである。
【0051】
第2の信号光入射端子10と第2の制御光入射端子11には、図11(a)に示した2芯光ファイバーフェルールを設置した。
【0052】
図11(a)の2芯光ファイバーフェルールの信号光出射ファイバー30と制御光出射ファイバー29はコア9.5μmのシングルモード石英光ファイバーのクラッド層をフッ酸で所望の太さにエッチングして用いた。エッチングする部分は、光ファイバーの先端数mmだけであった。エッチングした後の光ファイバーの太さ「ω」は、光吸収層に収束(集光)した信号光と制御光の収束(集光)点の光軸に直角方向の距離「χ」と次の関係にした。
(式1)
ω=χ/m
ここでmは、第2の集光レンズ12の結像倍率である。本実施例では、mは1であった。mを小さくすればエッチング後の光ファイバーの太さは太くでき、mを大きくすればエッチング後の光ファイバーの太さは細くしなければならない。
【0053】
本実施の形態では、mは1,ωは35μmにした。第1の実施例からも明らかである様に、ωを大きくすると偏向角は小さくなるので、ωは25〜50ミクロンが相応しい。25μm以下にすると、レーザ光の透過率が悪くなった。特に、980nmのレーザ光の透過が悪くなり、長さ1mのファイバーを通過させた場合の透過率が20%〜80%となった。
【0054】
制御光用の光ファイバーと信号光用の光ファイバーは、太さ2ω+数μmにあけられたフェルールの穴に接着剤で固定した後、先端を研磨して用いた。
【0055】
本実施の形態では、光ファイバーのコア径は9.5μmのシングルモード光ファイバーを用いたが、レーザ光の波長を変える場合は、それに相応しいコア径の光ファイバーにする必要がある。例えば、制御光を660nmにする場合は、コア径4.5μmにした方が良い。
【0056】
本実施例での光の偏向量(偏向角)は、第1の実施の形態とほぼ同じであった。
【0057】
(第3の実施の形態)
図3は本発明の第3の実施の形態に係る光偏向装置の概略構成例である。本発明の第3の実施の形態において、第1の実施の形態および第2の実施の形態と同じ光学部材については、同一の番号を付けた。第3の実施の形態は、第2の実施例より制御光の数を1つ増やし、偏向角を2倍にした例である。
【0058】
図3において、第3の信号光入射端子13と、第3の制御光入射端子14と、第4の制御光入射端子15とを有する光偏向装置が示されており、第2の集光レンズ12および熱レンズ形成光素子7は、図1および図2と同じである。また、用いた信号光の波長は1550nm、制御光の波長は980nmであった。しかし、信号光の波長も制御光の波長もこれ以外の波長でも良いことは第1の実施の形態および第2の実施の形態と同様であることは言うまでもない。制御光のパワーを変えると偏向量(偏向角)が変わることは、第1の実施の形態および第2の実施の形態と同じである。
【0059】
第3の信号光入射端子13と第3の制御光入射端子14および第4の制御光入射端子15には、図11(b)に示した3芯光ファイバーフェルールを設置した。
【0060】
図11(c)の3芯光ファイバーは、光の偏向を2次元に行う場合の例である。制御光出射ファイバー29のそれぞれから出射する制御光パワーを調整することにより、2次元に偏向できる。
【0061】
図11の3芯光ファイバーフェルールの信号光出射ファイバー30と制御光出射ファイバー29はコア9.5μmのシングルモード石英光ファイバーのクラット層をフッ酸で所望の太さにエッチングして用いた。エッチングする部分は、光ファイバーの先端数mmだけであった。エッチングした後の光ファイバーの太さ「ω」は、光吸収層に収束(集光)した信号光と制御光の収束(集光)点の光軸に直角方向の距離「χ」と次の関係にした。
(式2)
ω=χ/m
ここでmは、第2の集光レンズ12の結像倍率である。本実施例では、mは1であった。mを小さくすればエッチング後の光ファイバーの太さは太くでき、mを大きくすればエッチング後の光ファイバーの太さは細くしなければならない。
【0062】
本実施の形態では、mは1,ωは35μmにした。第1の実施例からも明らかである様に、ωを大きくすると偏向角は小さくなるので、ωは25〜50ミクロンが相応しい。25μm以下にすると、レーザ光の透過率が悪くなった。特に、980nmのレーザ光の透過が悪くなり、1mのファイバーでの透過率が20%〜80%となった。
【0063】
図11(b)の場合の制御光用の光ファイバーと信号光用の光ファイバーは、太さ3ω+数μmにあけられたフェルールの穴に接着剤で固定した後、先端を研磨して用いた。また、図11(c)の場合の制御光用の光ファイバーと信号光用の光ファイバーは、太さ(1+√2)ω+数μmにあけられたフェルールの穴に接着剤で固定した後、先端を研磨して用いた。
【0064】
本実施の形態では、光ファイバーのコア径は9.5μmのシングルモード光ファイバーを用いたが、レーザ光の波長を変える場合は、それに相応しいコア径の光ファイバーにする必要がある。例えば、制御光を660nmにする場合は、コア径4.5μmにした方が良い。
【0065】
本実施の形態での光の偏向量(偏向角)は、第1の実施の形態および第2の実施の形態とほぼ同じであった。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の偏向方法および偏向素子を用いて、画像表示装置、空間情報伝達装置、光スイッチ装置等への応用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第1の実施の形態の光偏向装置の概念図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態の光偏向装置の概念図である。
【図3】本発明の第3の実施の形態の光偏向装置の概念図である。
【図4a】信号光の偏向を説明する図である。
【図4b】信号光の偏向を説明する図である。
【図5】熱レンズ形成光素子の構成の一例を示す図である。
【図6】光吸収層の位置と偏向角との関係を示すグラフである。
【図7】制御光パワーと偏向角との関係を示すグラフである。
【図8】制御光位置と偏向角との関係を示すグラフである。
【図9】光吸収層厚みと偏向角との関係を示すグラフである。
【図10】色素濃度と偏向角との関係を示す図である。
【図11】ファイバーフェルールの概念図である。
【図12】出力された信号光の断面を示す図である。
【符号の説明】
【0068】
1 信号光入力端子、2 第1のコリメートレンズ、3 制御光入力端子、4 第2のコリメートレンズ、5 光混合器、6 集光レンズ、7 熱レンズ形成光素子、8 波長選択透過フィルター。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも光吸収層を含む熱レンズ形成光素子中の光吸収層に、制御光と信号光とを入射させ、
前記制御光および前記信号光は、前記光吸収層にて収束するように照射されかつ前記制御光および前記信号光の各々の収束点の位置が相異なるように照射され、
前記制御光の波長と前記信号光の波長を異ならせ、前記制御光の波長は前記光吸収層が吸収する波長帯域から選ばれ、前記信号光の波長は前記光吸収層が吸収しない波長帯域から選ばれ、
前記制御光と前記信号光は、光の進行方向で前記光吸収層の入射面またはその近辺において収束したのち拡散することによって、前記光吸収層内における前記制御光を吸収した領域およびその周辺領域に起こる温度上昇に起因し可逆的に形成される熱レンズにより、屈折率が変化して、前記信号光の進行方向を変えることを特徴とする光偏向方法。
【請求項2】
前記制御光と前記信号光は、光の進行方向で前記光吸収層の入射面から0〜+60μm以内に収束または集光するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の光偏向方法。
【請求項3】
前記制御光の収束点と前記信号光の収束点との距離は、光軸に対して垂直方向に25〜50μmであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光偏向方法。
【請求項4】
2つ以上の複数の制御光を前記光吸収層に照射し、前記複数の制御光の組み合わせによって、前記信号光の進行方向を変えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の光偏向方法。
【請求項5】
1種類以上の波長の信号光を照射する信号光光源と、
前記信号光とは異なる波長の制御光を照射する制御光光源と、
前記信号光は透過し、前記制御光を選択的に吸収する光吸収層を含む熱レンズ形成光素子と、
前記光吸収層に前記制御光と前記信号光とを各々収束点を異ならせて集光させる集光手段と、を有し、
前記熱レンズ形成光素子は、前記制御光と前記信号光が、光の進行方向で前記光吸収層の入射面またはその近辺において収束したのち拡散することによって、前記光吸収層内における前記制御光を吸収した領域およびその周辺領域に起こる温度上昇に起因し可逆的に形成される熱レンズにより、屈折率が変化して、前記信号光の進行方向を変えることを特徴とする光偏向装置。
【請求項6】
前記集光手段は、前記制御光と前記信号光は、光の進行方向で前記光吸収層の入射面から0〜+60μm以内に収束または集光するように制御することを特徴とする請求項5に記載の光偏向装置。
【請求項7】
前記集光手段は、前記制御光の収束点と前記信号光の収束点との距離は、光軸に対して垂直方向に25〜50μmであるように制御することを特徴とする請求項5または請求項6に記載の光偏向装置。
【請求項8】
前記制御光光源は、2つ以上の複数の制御光を照射し、
前記集光手段は、前記複数の制御光の収束点を異ならせて前記光吸収層に収束または集光させることを特徴とする請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の光偏向装置。
【請求項1】
少なくとも光吸収層を含む熱レンズ形成光素子中の光吸収層に、制御光と信号光とを入射させ、
前記制御光および前記信号光は、前記光吸収層にて収束するように照射されかつ前記制御光および前記信号光の各々の収束点の位置が相異なるように照射され、
前記制御光の波長と前記信号光の波長を異ならせ、前記制御光の波長は前記光吸収層が吸収する波長帯域から選ばれ、前記信号光の波長は前記光吸収層が吸収しない波長帯域から選ばれ、
前記制御光と前記信号光は、光の進行方向で前記光吸収層の入射面またはその近辺において収束したのち拡散することによって、前記光吸収層内における前記制御光を吸収した領域およびその周辺領域に起こる温度上昇に起因し可逆的に形成される熱レンズにより、屈折率が変化して、前記信号光の進行方向を変えることを特徴とする光偏向方法。
【請求項2】
前記制御光と前記信号光は、光の進行方向で前記光吸収層の入射面から0〜+60μm以内に収束または集光するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の光偏向方法。
【請求項3】
前記制御光の収束点と前記信号光の収束点との距離は、光軸に対して垂直方向に25〜50μmであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光偏向方法。
【請求項4】
2つ以上の複数の制御光を前記光吸収層に照射し、前記複数の制御光の組み合わせによって、前記信号光の進行方向を変えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の光偏向方法。
【請求項5】
1種類以上の波長の信号光を照射する信号光光源と、
前記信号光とは異なる波長の制御光を照射する制御光光源と、
前記信号光は透過し、前記制御光を選択的に吸収する光吸収層を含む熱レンズ形成光素子と、
前記光吸収層に前記制御光と前記信号光とを各々収束点を異ならせて集光させる集光手段と、を有し、
前記熱レンズ形成光素子は、前記制御光と前記信号光が、光の進行方向で前記光吸収層の入射面またはその近辺において収束したのち拡散することによって、前記光吸収層内における前記制御光を吸収した領域およびその周辺領域に起こる温度上昇に起因し可逆的に形成される熱レンズにより、屈折率が変化して、前記信号光の進行方向を変えることを特徴とする光偏向装置。
【請求項6】
前記集光手段は、前記制御光と前記信号光は、光の進行方向で前記光吸収層の入射面から0〜+60μm以内に収束または集光するように制御することを特徴とする請求項5に記載の光偏向装置。
【請求項7】
前記集光手段は、前記制御光の収束点と前記信号光の収束点との距離は、光軸に対して垂直方向に25〜50μmであるように制御することを特徴とする請求項5または請求項6に記載の光偏向装置。
【請求項8】
前記制御光光源は、2つ以上の複数の制御光を照射し、
前記集光手段は、前記複数の制御光の収束点を異ならせて前記光吸収層に収束または集光させることを特徴とする請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の光偏向装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−225825(P2007−225825A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−46027(P2006−46027)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(000002820)大日精化工業株式会社 (387)
【出願人】(504243718)株式会社トリマティス (24)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(000002820)大日精化工業株式会社 (387)
【出願人】(504243718)株式会社トリマティス (24)
【Fターム(参考)】
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