説明

光共振器を有する電子デバイス

【課題】光共振器を含むデバイスを提供すること。
【解決手段】たとえば、そのような電子デバイス(図4)は、第1の波長を有する放射に対して光活性であるように設計された第1の電子構成要素(172)と、第2の波長を有する放射に対して光活性であるように設計された第2の電子構成要素(174)とを含むことができる。デバイスは、また、光共振器が、第1および第2の波長にロケートする連続共振モードで共振するような空洞長さを有する光共振器を規定する空洞を含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、電子デバイスおよびプロセスに関し、より特定的には、光共振器を有する電子デバイス、ならびにそれらの製造のための材料および方法に関する。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2004年12月30日に出願された米国仮特許出願第60/640,783号明細書、および2005年6月28日に出願された米国仮特許出願第60/694,874号明細書の利益を請求する。さらに、本出願は、2005年12月21日に出願された、代理人事件番号DPUC−0183/UC0508 PCT NAを有する米国特許出願に関連する。上記出願のすべての開示を、それらの全体を引用によりここに援用する。
【背景技術】
【0003】
有機電子デバイスは、電気エネルギーを放射に変換するか、電子プロセスによって信号を検出するか、放射を電気エネルギーに変換するか、1つまたは複数の有機半導体層を含む。有機電子デバイスを、ディスプレイ、センサアレイ、光起電力セルなどに使用することができる。その両方が有機発光ダイオード(「OLED」)である小分子有機発光ダイオード(「SMOLED」)およびポリマー発光ダイオード(「PLED」)が、有機電子ディスプレイのタイプである。しかし、そのようなディスプレイにおいてフルカラーを実現することは、問題であった。たとえば、CIE標準を満たす色純度を有する有機材料を製造することは困難であり、というのは、ほとんどの有機材料が広い発光スペクトルまたは透過スペクトルを有するからである。この短所を克服しようとする従来の試みは、複雑な製造プロセスを伴うか、劣った可読性または低コントラストを有するデバイスを製造する傾向がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、必要なのは、上記短所および欠点に対処する有機電子デバイスである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態において、電子デバイス、およびそれを製造するための方法、ならびにそれを含むデバイスおよびサブアセンブリを提供する。たとえば、そのような電子デバイスは、第1の波長を有する放射に対して光活性であるように設計された第1の電子構成要素と、第2の波長を有する放射に対して光活性であるように設計された第2の電子構成要素とを含むことができる。デバイスは、また、光共振器が、第1および第2の波長にロケートする(locate at)連続共振モードで共振するような空洞長さを有する光共振器を規定する空洞を含むことができる。
【0006】
先の一般的な説明および次の詳細な説明は、例示および説明にすぎず、特許請求の範囲に規定されるような本発明を限定するものではない。
【0007】
ここで提示されるような概念の理解を向上させるために、実施形態が添付の図に示される。
【0008】
図は、例として提供され、本発明を限定することは意図されない。当業者は、図の物体が、簡単かつ明確にするために示されており、必ずしも同じ割合で描かれていないことを理解する。たとえば、実施形態の理解を向上させるのを助けるために、図の物体のいくつかの寸法を他の物体に対して誇張することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】ファブリ−ペローエタロンの図を含む。
【図2】非対称光共振器の図を含む。
【図3】光共振器の3つの共振モードについて、波長対正規化スペクトルのプロットを含む。
【図4】電子構成要素を形成した後の基板の一部の断面図の図を含む。
【図5】平面化された絶縁層を電子構成要素間に形成した後の、図1の基板の断面図の図を含む。
【図6】光共振器がデバイスのカソード側に製造されたOLEDデバイスの断面図の図を含む。
【図7】実施形態による異なった波長を有するエミッタについて、波長対正規化スペクトルのプロットを含む。
【図8】実施形態による光共振器の内側のトップエミッションOLEDデバイスの断面図の図を含む。
【図9】実施形態による異なった波長を有するエミッタについて、波長対正規化スペクトルのプロットを含む。
【図10】実施形態によるブラッグ反射体を有する光共振器の内側の積重ねられたエミッタOLEDデバイスの図を含む。
【図11】実施形態によるミラーを有する光共振器の内側の積重ねられたエミッタOLEDデバイスの図を含む。
【発明を実施するための形態】
【0010】
一実施形態において、電子デバイスを提供する。電子デバイスは、第1の波長を有する第1の放射に対して光活性であるように設計された第1の電子構成要素と、第2の波長を有する第2の放射に対して光活性であるように設計された第2の電子構成要素と、光共振器を規定する空洞であって、光共振器が、第1および第2の波長にロケートする連続共振モードで共振するような長さを有する空洞とを含む。
【0011】
一実施形態において、空洞は、電子デバイスの第1および第2の層から形成される。
【0012】
一実施形態において、光共振器は、それを通って第1および第2の放射が共振する少なくとも1つの共振層をさらに含む。
【0013】
一実施形態において、共振層は、1つの側で第1の反射層によって境界をつけられ、第2の側で第2の反射層によって境界をつけられ、第1の反射層は、第1および第2の放射の少なくとも一部を共振層内に反射する。
【0014】
一実施形態において、第2の反射層は、第1および第2の放射が第2の反射層を通過することを少なくとも部分的に可能にし、提供される。
【0015】
一実施形態において、電気デバイスは複数の層をさらに含み、共振層は、1つの側で、複数の層の少なくとも2つによって形成された界面によって境界をつけられる。
【0016】
一実施形態において、第3の電子構成要素が、第3の波長を有する第3の放射に対して光活性であるように設計され、光共振器の空洞長さは、光共振器が、3の波長にロケートする共振モードでさらに共振するようなものである。
【0017】
一実施形態において、第1および第2の電子構成要素が、積重ねられた構成または横方向の構成で配列される。
【0018】
一実施形態において、有機発光デバイスを提供する。電子デバイスは、基板と、カソード層と、アノード層と、カソード層とアノード層との間に印加された電流に応答して、基板を通して、赤色、緑色、および青色可視領域の各々の光を発する発光層とを含む。電子デバイスは、それを通って光が共振する少なくとも1つの共振層を含む光共振器であって、光が少なくとも3つの連続共振モードで共振し、さらに、3つの連続共振モードが、赤色、緑色、および青色可視領域に対応する、光共振器をさらに含む。
【0019】
一実施形態において、共振層は、1つの側で第1の反射層によって境界をつけられ、第2の側で第2の反射層によって境界をつけられ、第1の反射層および第2の反射層の各々は、共振層を通って共振して反射層上に進む光の少なくとも一部を共振層内に反射して戻す。
【0020】
一実施形態において、電子デバイスを形成するための方法を提供する。方法は、第1の波長を有する第1の放射に対して光活性であるように設計された第1の電子構成要素を形成する工程と、第2の波長を有する第2の放射に対して光活性であるように設計された第2の電子構成要素を形成する工程と、光共振器が、第1および第2の波長にロケートする連続共振モードで共振するような空洞長さを有する光共振器を規定する空洞を形成する工程とを含む。
【0021】
一実施形態において、方法は、基板を形成する工程と、アノード層を形成する工程と、カソード層を形成する工程とをさらに含み、光共振器は、電子デバイスの、カソード層に対応する側に形成される。
【0022】
一実施形態において、光共振器は、それを通って第1および第2の放射が共振する少なくとも1つの共振層をさらに含む。
【0023】
一実施形態において、共振層は、1つの側で第1の反射層によって境界をつけられ、第2の側で第2の反射層によって境界をつけられ、第1の反射層は、第1および第2の放射の少なくとも一部を共振層内に反射する。
【0024】
一実施形態において、第2の反射層は、第1および第2の放射が第2の反射層を通過することを少なくとも部分的に可能にする。
【0025】
一実施形態において、方法は、第3の波長を有する第3の放射に対して光活性であるように設計された第3の電子構成要素を形成する工程をさらに含み、光共振器の空洞長さは、光共振器が、第3の波長にロケートする共振モードでさらに共振するようなものである。
【0026】
一実施形態において、上で説明された電子デバイスを含む組成物を提供する。
【0027】
一実施形態において、上で説明された電子デバイスを含む活性層を有する有機電子デバイスを提供する。
【0028】
一実施形態において、上で説明された電子デバイスを含む、有機電子デバイスの製造に有用な物品を提供する。
【0029】
一実施形態において、上で説明された化合物と、少なくとも1つの溶媒、加工助剤、電荷輸送材料、または電荷阻止材料とを含む組成物を提供する。これらの組成物は、溶媒、エマルション、およびコロイド分散液を含むがこれらに限定されない任意の形態であることができる。
【0030】
(定義)
「a」または「an」の使用は、本発明の要素および構成要素を説明するために使用される。これは、単に、便宜上、および本発明の一般的な意味を与えるために行われる。この説明は、1つまたは少なくとも1つを含むように読まれるべきであり、単数形は、そうでないように意味されることが明らかでない限り、また、複数形を含む。
【0031】
層または材料に言及するときの「活性」という用語は、電子特性または電気放射特性を示す層または材料を意味することが意図される。活性層材料は、放射を放出することができるか、放射を受けるとき電子−正孔対の濃度の変化を示すことができる。したがって、「活性材料」という用語は、デバイスの動作を電子的に促進する材料を指す。活性材料の例としては、電荷を伝導、注入、輸送、または阻止する材料が挙げられるが、これらに限定されず、電荷は電子または正孔であることができる。不活性材料の例としては、平面化材料、絶縁材料、および環境バリヤ材料が挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
「実際の厚さ」という用語は、電子デバイスまたは他の物理的物体内の1つまたは複数の層の厚さを意味することが意図される。
【0033】
「隣接した」という用語は、層、部材、または構造が、別の層、部材、または構造のすぐ隣であることを必ずしも意味しない。互いに直接接触する層、部材、または構造の組合せは、依然として互いに隣接している。
【0034】
デバイス内の1つまたは複数の層、1つまたは複数の部材、または1つまたは複数の構造の任意の組合せに言及するように使用されるときの「に隣接した」という用語は、1つの層、部材、または構造が、別の層、部材、または構造のすぐ隣であることを必ずしも意味しない。互いに直接接触する層、部材、または構造は、依然として互いに隣接している。
【0035】
「アレイ」、「周辺回路」、および「遠隔回路」という用語は、電子デバイスの異なった領域または構成要素を意味することが意図される。たとえば、アレイは、規則的な配列(通常、列および行によって示される)内のピクセル、セル、または他の構造を含むことができる。アレイ内のピクセル、セル、または他の構造は、アレイと同じ基板上であるがアレイ自体の外側にあることができる周辺回路によって制御することができる。遠隔回路は、典型的には、周辺回路から離れてあり、かつ、アレイに信号を送るか、アレイから信号を受けることができる(典型的には、周辺回路を介して)。遠隔回路は、また、アレイに無関係の機能を行うことができる。遠隔回路は、アレイを有する基板上に存在してもしなくてもよい。
【0036】
「青色発光有機層」という用語は、約400から500nmの範囲内の波長において放出最大を有する放射を放出することができる有機層を意味することが意図される。
【0037】
「計算された厚さ」という用語は、式によって定められた、1つまたは複数の層の厚さを意味することが意図される。実際の厚さおよび計算された厚さが、同じまたは互いに異なることができる。
【0038】
ここで使用されるように、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」という用語、またはそれらのいかなる他の変形も、非排他的な包含を網羅することが意図される。たとえば、要素のリストを含むプロセス、方法、物品、または装置が、必ずしも、それらの要素のみに限定されないが、明白に記載されていないか、そのようなプロセス、方法、物品、または装置に固有の他の要素を含むことができる。さらに、そうでないと明白に記載されていない限り、「または」は、排他的なまたはではなく、包含的なまたはを指す。たとえば、条件AまたはBが、次のいずれか1つによって満たされる。Aが真であり(または存在し)、かつBが偽である(または存在しない)、Aが偽であり(または存在せず)、かつBが真である(または存在する)、ならびに、AおよびBの両方が真である(または存在する)。
【0039】
「電子構成要素」という用語は、電気機能または電気放射(たとえば、電気光学)機能を行う回路の最も低いレベルのユニットを意味することが意図される。電子構成要素としては、トランジスタ、ダイオード、抵抗器、キャパシタ、インダクタ、半導体レーザ、光学スイッチなどを挙げることができる。電子構成要素は、寄生抵抗(たとえば、ワイヤの抵抗)または寄生キャパシタンス(たとえば、コンダクタ間のキャパシタが意図されないか偶発的である、異なった電子構成要素に接続された2つのコンダクタの間の容量結合)を含まない。
【0040】
「電子デバイス」という用語は、適切に電気接続され適切な電位が供給されると、集合的に機能を行う、回路、電子構成要素、またはそれらの組合せの集まりを意味することが意図される。電子デバイスは、システムを含むか、システムの一部であることができる。電子デバイスの例としては、ディスプレイ、センサアレイ、コンピュータシステム、アビオニクスシステム、自動車、携帯電話、他の消費者用または産業用電子製品、またはそれらの組合わせが挙げられる。
【0041】
「緑色発光有機層」という用語は、約500から600nmの範囲内の波長において放出最大を有する放射を放出することができる有機層を意味することが意図される。
【0042】
「すぐ隣接した(immediately adjacent)」という用語は、2つ以上の物体が互いに近く、そのような2つ以上の物体の間に他の重要な物体がないことを意味することが意図される。一実施形態において、2つ以上の物体は互いに触れる。別の実施形態において、2つ以上の物体を重要でない間隙によって分離することができる(たとえば、近接(contiguous)配列)。物体のいずれかが、層、部材、構造、またはそれらの任意の組合せを含むことができる。
【0043】
「層」という用語は、「フィルム」という用語と交換可能に使用され、所望の領域を被覆するコーティングを指す。この領域は、デバイス全体、または実際のビジュアルディスプレイなどの特定の機能領域ほど大きいか、1つのサブピクセルほど小さいことができる。フィルムを、蒸着および液体堆積を含む任意の従来の堆積技術によって形成することができる。液体堆積技術としては、スピンコーティング、グラビアコーティング、カーテンコーティング、ディップコーティング、スロットダイコーティング、スプレーコーティング、および連続ノズルコーティングなどの連続堆積技術;ならびにインクジェット印刷、グラビア印刷、およびスクリーン印刷などの不連続堆積技術が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
「ミラースタック」という用語は、ミラーとして作用する複数の層を意味することが意図される。一実施形態において、ミラースタックは、1つまたは複数のブラッグ反射体を含むことができる。
【0045】
「有機活性層」という用語は、有機層の少なくとも1つが、単独で、または異なる材料と接触するとき、整流接合を形成することができる、1つまたは複数の有機層を意味することが意図される。
【0046】
「有機電子デバイス」という用語は、1つまたは複数の半導体層または材料を含むデバイスを意味することが意図される。有機電子デバイスとしては、(1)電気エネルギーを放射に変換するデバイス(たとえば、発光ダイオード、発光ダイオードディスプレイ、ダイオードレーザ、またはライティングパネル)、(2)電子プロセスによって信号を検出するデバイス(たとえば、光検出器、光伝導セル、フォトレジスタ、フォトスイッチ、フォトトランジスタ、光電管、赤外線(「IR」)検出器、またはバイオセンサ)、(3)放射を電気エネルギーに変換するデバイス(たとえば、光起電力デバイスまたは太陽電池)、および(4)1つまたは複数の有機半導体層を含む1つまたは複数の電子構成要素を含むデバイス(たとえば、トランジスタまたはダイオード)が挙げられるが、これらに限定されない。デバイスという用語は、また、メモリストレージデバイスのためのコーティング材料、帯電防止フィルム、バイオセンサ、エレクトロクロミックデバイス、固体電解質キャパシタ、充電式バッテリなどのエネルギー蓄積デバイス、および電磁シールド用途を含む。
【0047】
「有機層」という用語は、層の少なくとも1つが、炭素と、水素、酸素、窒素、フッ素などの少なくとも1つの他の元素とを含む材料を含む、1つまたは複数の層を意味することが意図される。
【0048】
「対の層」という用語は、偶数の層を意味することが意図され、2、4、6、8、またはそれ以上の層を含むことができる。
【0049】
「光活性」は、印加電圧によって活性化されると光を発する(発光ダイオードまたは化学電池におけるような)か、放射エネルギーに応答し、印加バイアス電圧で、または印加バイアス電圧なしで、信号を発生する(光検出器におけるような)材料を指す。
【0050】
「放射放出構成要素」という用語は、適切にバイアスされると、目標波長または波長スペクトルにおける放射を放出する電子構成要素を意味することが意図される。放射は、可視光スペクトル内または可視光スペクトルの外側(UVまたはIR)であることができる。発光ダイオードが、放射放出構成要素の例である。
【0051】
「放射応答構成要素」という用語は、適切にバイアスされると、目標波長または波長スペクトルにおける放射に応答することができる電子構成要素を意味することが意図される。放射は、可視光スペクトル内または可視光スペクトルの外側(UVまたはIR)であることができる。IRセンサおよび光起電力セルが、放射検知構成要素の例である。
【0052】
「整流接合」という用語は、1つのタイプの電荷キャリヤが、接合を介して、1つの方向に、反対方向と比較して、より容易に流れる、半導体層内の接合、または半導体層と異なる材料との間の界面によって形成された接合を意味することが意図される。pn接合が、ダイオードとして用いることができる整流接合の例である。
【0053】
「赤色発光有機層」という用語は、約600から700nmの範囲内の波長において放出最大を有する放射を放出することができる有機層を意味することが意図される。
【0054】
「基板」という用語は、剛性または可撓性であることができ、かつ、ガラス、ポリマー、金属、またはセラミック材料、またはそれらの組合せを含むことができるがこれらに限定されない1つまたは複数の材料の1つまたは複数の層を含むことができるワークピースを意味することが意図される。
【0055】
「使用者表面」という用語は、電子デバイスの通常動作の間主として使用される電子デバイスの表面を意味することが意図される。ディスプレイの場合、使用者によって見られる電子デバイスの表面が、使用者表面である。センサまたは光起電力セルの場合、使用者表面は、検知されるか電気エネルギーに変換されるべき放射を主として透過する表面である。電子デバイスが1つを超える使用者表面を有することができることに留意されたい。
【0056】
特に定義されない限り、ここで使用される技術用語および科学用語はすべて、本発明が属する技術における当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。ここで説明されるものと同様のまたは同等の方法および材料を、本発明の実施形態の実施またはテストに用いることができるが、適切な方法および材料を以下で説明する。ここで挙げられる刊行物、特許出願、特許、および他の引例をすべて、特定の一節が引用されない限り、それらの全体を引用により援用する。矛盾する場合は、本明細書は、定義を含めて、優先する。さらに、材料、方法、および例は、例示にすぎず、限定することは意図されない。
【0057】
ここで説明されない程度に、特定の材料、処理行為、および回路に関する多くの詳細は、従来のものであり、有機発光ダイオードディスプレイ技術、光検出器技術、光起電技術および半導性部材技術の範囲内のテキストブックおよび他のソースに見出されるであろう。
【実施例】
【0058】
ここで説明される概念を、次の実施例でさらに説明し、実施例は、特許請求の範囲で説明された本発明の範囲を限定しない。
【0059】
1つまたは複数のブラッグ反射体を有する電子デバイスと関連する光共振器の使用は、2005年12月21日に出願された、代理人事件番号DPUC−0183/UC0508 PCT NAを有する同一譲受人による米国特許出願に記載されており、これを、その全体を引用によりここに援用する。
【0060】
光共振器は、光が共振することができる場所を提供する。典型的には、光は、空洞に境界をつける2つの反射層の間で共振する。空洞は、中空であるか、光が通過することができる任意の材料から構成することができる。反射層は、全反射または部分反射であることができ、また、たとえば、アノード、カソード、または基板などの、他の目的を果たすことができる。典型的な光共振器は、繰返された反射によって、共振器の空洞長さによって定められた選択された波長で光ビームを共振させる2つ以上のミラーを含む。ファブリ−ペローエタロンは、光共振器の典型であるとみなされる。その構造、および光ビーム伝播例が、図1に示されている。光共振器の他の構成例を以下で説明する。本発明の実施形態は、光共振器のいかなる構成も企図する。
【0061】
図1に示されたファブリ−ペローエタロンは、屈折率n’の媒体中に浸漬された、厚さdおよび屈折率nの平行平面板からなる。Aiの複素振幅(complex amplitude)を有する平面波が、垂線に対して角度θ’でエタロンに入射する。屈折光は、垂線に対して角度θでエタロンに入る。A1、A2などは、部分透過光の複素振幅であり、B1、B2、B3などは、部分反射光の複素振幅である。
【0062】
ここで、図1を参照すると、2つの連続透過(たとえば、A1およびA2)の間の経路差が、波長の整数倍数に等しいときはいつでも、透過光強度は最大に達する。
2nd cosθ=kλ (1)
ここで、
nはエタロンの屈折率であり、
dはエタロン厚さであり、
λは入射波の真空波長であり、
θはエタロン内の屈折角度であり、
kは次数である。
【0063】
透過ピークの半値全幅値(full width at half maximum value)は、エタロン表面の反射係数による。エタロンのフィネス(F)を下記の通り定義する。
【0064】
【数1】

【0065】
ここで、
Rはエタロン表面の反射率であり、
λは入射波の真空波長であり、
Δλは透過ピークの半値全幅(「FWHM」)値であり、
kは次数である。
【0066】
式(1)および(2)から、空洞長さを調整することによって、共振波長を選択することができることがわかり得る。エタロン表面の反射率を変えることによって、透過ピークのFWHMを変えることができる。上記例が対称光共振器に関連することが理解されるであろう。本発明の実施形態を、また、たとえば、図2に示されているような非対称光共振器に基かせることができる。
【0067】
非対称光共振器において、底面は、実質的に完全な反射率を提供することができ、これは、透過光がないであろうことを意味する。垂直入射ビームの共振条件は、下記の通りである。
2nd=kλ (3)
ここで、
nは光共振器の屈折率であり、
dは共振器の厚さであり、
λは入射波透過ピーク波長の真空波長であり、
kは次数である。
【0068】
空洞長さを調整して、共振器に、赤色、緑色、および青色可視領域にロケートする3つの連続共振モードを有させることができる。赤色、緑色、および青色のための次数は、それぞれ、4、5、および6であることができる。光経路長さは、たとえば、2560nmであることができ、これは、640nm、512nm、および427nmにおける3つの共振モードをもたらすことができる。光経路長さが短すぎる場合、光共振器は、可視領域内の3つの共振モードを持続することができないことがある。それが長すぎる場合、光共振器は、多くの共振モードを有することがあり、これは、不要な色と原色との混合をもたらすことがある。したがって、光経路長さは、約2400nmから約2800nmの範囲内であることができる。厳密な値は、他の可能な要因の中で、実際の用途および必要な色によることができる。光共振器の頂面の反射率を変えることによって、フィネスを調整することができる。たとえば、2のフィネス値は、赤色(640nm)、緑色(512nm)、および青色(427nm)について、それぞれ、80nm、51nm、および35nmのFWHMをもたらすことができる。図3に示されたプロットは、反射光強度の波長への依存例を示し、線301、303、および305は、それぞれ、青色、緑色、および赤色と関連する波長を表す。
【0069】
実施形態において、共振モードは、赤色、緑色、および青色について、それぞれ、(0.649, 0.350)、(0.120, 0.602)、および(0.165, 0.010)のCIE色座標を有することができる。可視領域全体にわたって一定のパワー分布スペクトルを有する白色光が光共振器に入射すると、共振モードのみを反射することができる。結果として、反射光強度は、入射強度の約44%であることができる(380nmから780nmの可視領域にわたる、共振曲線とx軸との間の全面積と、y=1とx軸との間の全面積との比)。たとえば、フルカラーOLEDデバイスにおいて、原色エミッタ(primary color emitter)の発光を光共振器によって修正することができ、これは、色座標を向上させることができる。さらに、反射周囲光強度を光共振器によって低減することができ、これは、より良好なコントラスト比をもたらすことができる。
【0070】
図4は、電子デバイスの形成の間、電子構成要素172、174、および176が上に製造された基板12の一部の断面図の図を含む。基板12は、ガラスまたは他のセラミック材料、プラスチック、またはそれらの任意の組合せなどの絶縁材料を含むことができる1つまたは複数の層を含むことができる。基板12は、剛性または可撓性であることができ、放射を透過させてもさせなくてもよい。一実施形態において、電子デバイスの使用者側は、基板12の反対側である。この実施形態において、基板12を通る放射の透過は重要ではない。別の実施形態において、電子デバイスの使用者側は、基板12の、電子構成要素172、174、および176の側と反対側にある。この実施形態において、電子構成要素172、174、および176によって放出されるか応答されるべき放射の少なくとも70%を、基板12を透過させることができる。図4〜6および図8に示された実施形態において、トップエミッション電子デバイス(すなわち、放出が基板12から離れて生じる)が形成されており、したがって、基板12を通る放射の透過は重要ではない。
【0071】
第1の電極14を基板12の上に形成することができる。一実施形態において、第1の電極14は、ディスプレイのための共通アノードとして作用することができる。別の実施形態において、第1の電極14を、基板12内の制御回路(図示せず)に結合することができる複数の第1の電極と取替えることができる。第1の電極14は、OLED内のアノードのために従来使用される1つまたは複数の材料の1つまたは複数の層を含むことができる。第1の電極14は、第1の電極14に入射する一部または実質的にすべての放射を反射することができる。1つの特定の実施形態において、第1の電極14は、第1の層および第2の層(図示せず)を含むことができ、第1の層は、第2の層と比較して、基板12により近くにある。第1の層は、第1の層に達する放射の一部または実質的にすべてを反射することができ、銀、アルミニウム、他の部分反射または高反射導電性材料、またはそれらの任意の組合せを含むことができる。第2の層は、第1の層と比較して、比較的より透明な層を含むことができ、酸化インジウムスズ(「ITO」)、酸化インジウム亜鉛(「IZO」)、酸化アルミニウム亜鉛(「AZO」)などを含むことができる。第1の電極14は、別の実施形態において導電性有機ポリマーを含むことができ、たとえば従来の堆積技術を用いて形成することができる。
【0072】
有機層162、164、および166を、第1の電極14の上に形成することができる。有機層162、164、および166は、実質的に同じまたは異なった組成物を有し、かつ1つまたは複数の層を有することができる。たとえば、有機層162、164、および166は、同じまたは異なった有機活性層を有することができる。一実施形態において、有機層162は青色発光有機層を含むことができ、有機層164は緑色発光有機層を含むことができ、有機層166は赤色発光有機層を含むことができる。別の実施形態において、有機層162、164、および166の各々は、白色発光有機層を含むことができる。さらに別の実施形態において、1つまたは複数の他の有機層を、有機活性層と関連して使用することができる。そのような他の層としては、バッファ層、電荷阻止層、電荷注入層、電荷輸送層、またはそれらの任意の組合せを挙げることができる。さらに別の実施形態において、有機層162、164、および166のいずれかが、1つの層の異なった部分が異なった目的を果たす(たとえば、1つの部分が正孔輸送層として作用し、別の部分がエレクトロルミネセンス層として作用する)1つの層を含むことができる。さらなる実施形態において、有機層162、164、および166のいずれか1つまたは複数を、たとえば、センサまたは光起電力セルなど、放射に応答するように設計することができる。有機層162、164、および166の組成物および厚さは、たとえば、従来のものであることができる。
【0073】
有機層162、164、および166の組成物および厚さは、従来のものであることができる。一実施形態において、有機層162、164、および166の各々の中の各層は、小分子またはポリマー(コポリマーを含んでも含まなくてもよい)材料を含むことができる。従来の堆積を用いて、有機層162、164、および166のいずれか1つまたは複数を形成することができる。堆積としては、化学蒸着、物理蒸着(physical vapor deposition)(たとえば、蒸着(evaporation)、スパッタリングなど)、キャスティング、スピンコーティング、インクジェット印刷、連続印刷などを挙げることができる。有機層162、164、および168の各々を、堆積させるときパターニングするか、堆積させ、その後パターニングすることができる。代替実施形態において、有機層162、164、および166を形成する前、1つまたは複数の基板構造(図示せず)を基板12の上に形成することができる。基板構造の例としては、ウェル構造、カソードセパレータなどを挙げることができる。
【0074】
第2の電極18を、有機層162、164、および166の上に形成することができる。第2の電極18は、電子構成要素172、174、および176のためのカソードとして作用することができる。一実施形態において、第2の電極18は、第1の層と、第2の層とを含むことができ、第1の層は、第2の層と比較して、有機層162、164、および166により近くにある。第1の層は、たとえば、比較的低い仕事関数を有する材料を含むことができる。そのような材料の例としては、たとえば、1族金属(たとえば、Li、Csなど)、2族(アルカリ土類)金属(たとえば、Mg、Caなど)、アルカリ金属化合物(たとえば、Li2O、LiBO2など)、ランタニドまたはアクチニドを含む希土類金属、任意のそのような金属の合金、またはそれらの任意の組合せを挙げることができる。第1の層は、また、たとえば、LiF、CsF、MgF2、CaF2などのアルカリフッ化物またはアルカリ土類フッ化物を含むことができる。低仕事関数を有する導電性ポリマーも使用することができる。
【0075】
第2の層は、電子デバイスの処理の間、第1の層を保護するのを助ける材料を含むことができる。第2の層は、第1の層と比較して、空気中でより安定していることができる。第2の層は、たとえば、ITO、IZO、AZO、Ag、Al、またはそれらの任意の組合せを含むことができる。第2の電極18は、有機層162、164、および166から放出される放射、または有機層162、164、および166が応答するように設計された放射に対して、透明または部分的に透明であることができる。1つの特定の実施形態において、第2の層は、放射を部分的に反射する。
【0076】
第2の電極18を、1つまたは複数の従来の技術を用いて、堆積させるときパターニングすることができるか、堆積させ、その後パターニングすることができる。示されていないが、完成された電子デバイスにおいて、第2の電極18を制御回路に結合することができる。あるいは、別個の第1の電極が使用される場合、共通の第2の電極も使用することができる。実施形態において、第2の電極18は、1ミクロンまでの厚さを有する。
【0077】
図5に示されているように、任意の平面化層22を、電子構成要素172、174、および176の間に形成することができる。平面化層22は、たとえばミラースタックなどの、その後形成された層の形態変化を低減するのを助けることができる。平面化層22は、有機または無機電気絶縁材料の1つまたは複数の層を含むことができる。平面化層22を堆積させるときパターニングするか、堆積させ、その後パターニングすることができる。平面化層22の頂面の高さは、第2の電極18の頂面とほぼ同じであることができる。別の実施形態において、高さは著しく異なることができる。
【0078】
さらに別の実施形態において、基板構造(図示せず)が、電子構成要素172、174、および176の間に存在することができる。実施形態において、基板構造および平面化層22の頂面がほぼ同じ高さであるように、平面化層22を基板構造の開口部内に形成することができる。別の実施形態において、頂面は著しく異なることができる。さらに別の実施形態において、平面化層22、基板構造、または両方が使用されない。
【0079】
図4および図5に示されていない他の回路を、任意の数の先に説明された層または付加的な層を使用して形成することができる。示されていないが、付加的な絶縁層および相互接続レベルを形成して、アレイの外側にあることができる周辺領域内の回路(図示せず)を考慮することができる。そのような回路としては、行または列デコーダ、ストローブ(たとえば、行アレイストローブ、列アレイストローブなど)、センス増幅器などを挙げることができる。たとえば、任意の乾燥剤(図示せず)を有するリッドを、アレイの外側の位置(図示せず)において基板12に取付けて、実質的に完成された電子デバイスを形成することができる。一実施形態において、放射がリッドを透過される。可視光スペクトル内の放射が、電子デバイスから放出されるか、電子デバイスによって受けられるべきである場合、リッドに入射する放射の少なくとも70%が、リッドを透過されるべきである。一実施形態において、リッドはガラスを含むことができる。放射が、リッドを介して、電子構成要素172、174、および176によって放出されるか受けられる必要がない場合、リッドは、放射を透過することができてもできなくてもよい。そのような実施形態において、リッドは、ガラス、金属などを含む多種多様な材料のいずれか1つまたは複数を含むことができる。リッドのために使用される1つまたは複数の材料、および取付けプロセスは、従来のものであることができる。
【0080】
乾燥剤が使用される場合、乾燥剤の位置は、乾燥剤が、電子デバイスから放出されるか電子デバイスによって受けられるべきである十分な放射を可能にすることができるかどうかによることができる。可視光スペクトル内の放射が、電子デバイスから放出されるか、電子デバイスによって受けられるべきである場合、乾燥剤に入射する放射の少なくとも70%を、乾燥剤を透過させることができる。乾燥剤が、十分な放射が透過されることを可能にしない場合、それは、放射の透過を実質的に妨げない1つまたは複数の位置にあることができる。そのような位置としては、アレイの外側、または、電子デバイスの上面図から、電子構成要素172、174、および176の間の位置を挙げることができる。放射が、乾燥剤を介して、電子構成要素172、174、および176によって放出されるか受けられる必要がない場合、乾燥剤を、リッドに沿ってほとんどいかなる位置にも配置することができる。
【0081】
実施形態において、電子デバイスは、アクティブマトリックスディスプレイまたはパッシブマトリックスディスプレイを含むことができる。他の電子構成要素(図示せず)を、基板12内にまたは基板12の上に、または別の基板内にまたは別の基板の上に形成することができ、そのような他の電子構成要素は、アレイ内の、電子構成要素172、174、および176を含む電子構成要素に与えられる信号を与えるか制御することができる。そのような他の電子構成要素およびそれらの製造、基板12への取付け、または両方が、当業者には知られているはずである。
【0082】
実施形態において、光共振器の一方の側の反射表面として役立つように、上述の層のいずれか、または上述の層のいずれかの間の界面を使用して、光共振器を形成することができる。たとえば、第2の電極18、平面化層22などと、付加的な層(図示せず)との間の界面が、光共振器の一方の側を形成することができ、第1の電極14などが、共振器の他方の側を形成することができる。そのような層のいずれかの厚さ、組成物などを調整して、適切な特徴(すなわち、空洞長さ、フィネスなど)を有する共振器を得ることができる。共振器の1つの側が、実質的に完全反射であることができ、別の側が部分反射であることができる。部分反射表面が、それを通って光がデバイスから発される表面であることが理解されるであろう。以下の実施例1〜4は、実施形態による光共振器を有する電子デバイスのさまざまな構成例を示す。
【0083】
電子デバイスは、放射放出構成要素に加えて、または放射放出構成要素の代わりに、放射応答構成要素を含むことができる。一実施形態において、放射応答構成要素は、センサアレイ内の放射センサであることができる。放射センサは、特定の波長または波長スペクトルにおける放射に応答するように設計することができる。一実施形態において、アレイが、放射放出構成要素と、センサとを含むことができる。さらに別の実施形態において、放射応答構成要素は、光起電力セル、または放射をエネルギーに変換することができる他の電子構成要素である。
【0084】
ディスプレイの動作の間、適切な電位が、第1の電極14、および第2の電極18のいずれか1つまたは複数の上に配置されて、放射が、有機層162、164、または166の1つまたは複数から放出されることを引起す。より特定的には、光が放出されるべきであるとき、第1の電極14と第2の電極18との間の電位差が、電子−正孔対が、対応する有機層内で組合さることを可能にし、それにより、光または他の放射を電子デバイスから放出することができる。ディスプレイにおいて、行および列が信号を与えられて、適切なピクセル(電子デバイス)を活性化して、見る人へのディスプレイを、人間が理解できる形態にすることができる。
【0085】
光検出器などの放射検出器の動作の間、センス増幅器をアレイの第1および第2の電極に結合して、放射が電子デバイスによって受けられると、著しい電流の流れを検出することができる。光起電力セルなどのボルタ電池において、光または他の放射を、外部エネルギー源なしで流れることができるエネルギーに変換することができる。本明細書を読んだ後、当業者は、電子デバイス、周辺回路、およびおそらくは遠隔回路を、特定の要求または望みに最もよく合うように設計することができる。
【0086】
次の実施例は、本発明のさまざまな実施形態による光共振器の適用によって、OLEDデバイスの性能を著しく向上させることができることを実証する。次の特定の実施例は、本発明の範囲を例示し、限定しないことが意図される。
【0087】
(実施例1)
この実施例は、OLEDデバイスのカソード側に製造された光共振器が、主エミッタの色座標、およびデバイスのコントラスト比を向上させることができることを実証する。図6は、OLEDデバイスのカソード側に製造された光共振器を示す。公称4インチのフルカラーアクティブマトリックスディスプレイパネルを使用することができる。基板12はガラスであり、第1の電極14はITOである。第1の電極14は、アノードとして役立つことができる。
【0088】
第1の電極14の上に、ポリアニリン(「PANI」)層またはポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(「PEDOT」)層を含む透明な層15を、厚さが約30nmから500nmの広範囲内で変えられたバッファ層としてスピンコーティングする。青色、緑色、および赤色エミッタ溶液を、それぞれの位置においてバッファ層上にインクジェットする。バッファ層およびエミッタの組合せは、有機層162、164、および166として示される。第2の電極(BaおよびAl)18は、真空下で蒸着させ、部分反射率を有する。有機層162、164、および166の、第2の電極18との組合せは、それぞれ、電子デバイス172、174、および176を形成する。電子デバイス172、174、および176は、原色エミッタとして役立つことができる。ITO層24をカソードの上にスパッタリングすることができる。上で説明された共振モードを有する光共振器を製造するために、光経路長さは約2560nmであることができる。ITOの屈折率が約1.5であるので、ITO層の厚さは約853nmであることができる。厚い銀層をITO上に堆積させて、光共振器を完成させた。
【0089】
光共振器がある、および光共振器がない、原色エミッタの発光スペクトルが、図6に示されている。赤色、緑色、および青色エミッタのCIE色座標は、それぞれ、(0.667, 0.331)、(0.423, 0.559)、および(0.157, 0.249)である。カソード側の光共振器がない、原色エミッタの発光スペクトルは、図7に、線711、712、および713(それぞれ、青色、緑色、および赤色に対応する)として示されている。光共振器をデバイス内に結合した後、赤色、緑色、および青色エミッタのCIE色座標は、それぞれ、(0.675, 0.323)、(0.384, 0.590)、および(0.157, 0.230)に向上された。カソード側の光共振器がある、原色エミッタの発光スペクトルは、図7に、線701、702、および703(それぞれ、青色、緑色、および赤色に対応する)として示されている。
【0090】
新たなデバイスの作業構造によって、赤原色および緑原色は、青原色より向上された。発された光が等方性であると想定して、光の半分が上方にアノード(たとえば、第1の電極14)の方に発され、光の半分が下方にカソード(たとえば、第2の電極18)の方に発される。下方発光は、光共振器によって修正され、アノードの方に反射されて戻され、最終的に、上方発光と混合されて、最終発光スペクトルを与える。図3の青色共振モード(線301として示された)を、図7の光共振器がない青色発光(線711)と比較することによって、下方青色発光が光共振器によって低減されることが発見された。結果として、最終発光は、上方発光によって支配され、これは、光共振器によって変更されなかった。
【0091】
円偏光子も光共振器もない公称4インチパネルのコントラスト比は、約15:1のコントラスト比を有する。光共振器があれば、コントラスト比は、円偏光子なしで、約35:1である。したがって、向上係数は2を超える。
【0092】
(実施例2)
この実施例は、光共振器の内側に製造されたOLEDデバイスが、主エミッタの色座標、および結果として生じるデバイスのコントラスト比の両方を向上させることを示す。適宜、図8を参照する。公称4インチのフルカラーアクティブマトリックスディスプレイパネルを使用することができる。基板12はガラスである。第1の電極14を形成する前、10nmのCr層を接合層13として堆積させ、Auの薄い層(層17)を蒸着させて、光共振器の部分反射側として役立つ。Auの厚さは、光共振器のフィネスを2に等しくするのに十分な反射率を提供するように選択することができる。ITOから形成された第1の電極14を、Au層17の上にスパッタリングする。第1の電極14の上に、ポリアニリン(「PANI」)層またはポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(「PEDOT」)層を含む透明な層15を、厚さが約30nmから500nmの広範囲内で変えられたバッファ層としてスピンコーティングする。
【0093】
青色、緑色、および赤色エミッタ溶液を、それぞれの位置においてバッファ層上にインクジェットする。バッファ層およびエミッタの組合せは、有機層162、164、および166として示される。実施例1と関連して上で説明された構成と異なり、第2の電極(BaおよびAl)18を、実質的に完全な反射率を有するように、高真空下で連続的に蒸着させる。有機層162、164、および166の、第2の電極18との組合せは、それぞれ、電子デバイス172、174、および176を形成する。電子デバイス172、174、および176は、原色エミッタとして役立つことができる。
【0094】
したがって、光共振器が、Au層17と第2の電極18との間に形成される。第1の電極14のITOは、2つの機能を果たすことができる。一方は、アノードの役割として役立つことであることができ、他方は、光経路長さを調整することであることができる。デバイスが光共振器の内側であるので、光共振器は、多くの層、すなわち、第1の電極14、透明な層15などを含む。結果として、光経路長さは、下記の通りである。
【0095】
【数2】

【0096】
ここで、
iは各層の屈折率であり、
iは各層の厚さであり、
iは各層の指数である。
【0097】
上で説明された共振モードを有する光共振器を製造するために、したがって、光経路長さは、2560nmであるように設定され、すなわち、
【0098】
【数3】

【0099】
光共振器がない、原色エミッタの発光スペクトルは、図9に、破線911、912、および913(それぞれ、青色、緑色、および赤色に対応する)として示されている。赤色、緑色、および青色エミッタのCIE色座標は、それぞれ、(0.667, 0.331)、(0.423, 0.559)、および(0.157, 0.249)から、(0.687, 0.312)、(0.176, 0.756)、および(0.156, 0.019)に向上された。デバイスが光共振器の内側にある、原色エミッタの発光スペクトルは、図9に、線901、902、および903(それぞれ、青色、緑色、および赤色に対応する)として示されている。
【0100】
公称4インチのパネルのコントラスト比は、約15:1から約35:1に向上した。したがって、向上係数は2を超える。反射防止フィルムの薄い層が基板12の表面上にコーティングされる場合、100:1を超えるコントラスト比が達成される。
【0101】
(実施例3)
上で説明された実施例2において、デバイス構造は「ボトムエミッション」デバイス(すなわち、光がデバイスのアノード側で発される)であった。たとえば、AMOLED技術において、ボトムエミッション構造より大きい開口率を有することができるトップエミッション構造を有することが望ましいであろう。より大きい開口率は、OLEDエミッタの光強度要件を低下させる傾向があり、これは、エミッタの寿命を延ばす傾向がある。実施例3は、光共振器の内側に製造されたトップエミッションOLEDデバイスが、主エミッタの色座標、およびデバイスのコントラスト比を向上させることができることを示す。再び、適宜、図8を参照する。
【0102】
公称4インチのフルカラーアクティブマトリックスディスプレイパネルを使用することができる。基板12はガラスである。第1の電極14を形成する前、10nmのCr層を接合層13として堆積させ、Auの厚い層(層17)を蒸着させて、光共振器の実質的に完全反射の側として役立つ。ITOから形成された第1の電極14を、Au層17の上にスパッタリングする。第1の電極14の上に、ポリアニリン(「PANI」)層またはポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(「PEDOT」)層を含む透明な層15を、厚さが約30nmから500nmの広範囲内で変えられたバッファ層としてスピンコーティングする。青色、緑色、および赤色エミッタ溶液を、それぞれの位置においてバッファ層上にインクジェットする。バッファ層およびエミッタの組合せは、有機層162、164、および166として示される。実施例2と関連して上で説明された構成と異なり、第2の電極(BaおよびAl)18を、部分反射率を有するように、高真空下で連続的に蒸着させる。第2の電極18の厚さは、光共振器のフィネスを2に等しくするのに十分な反射率を提供するように選択することができる。有機層162、164、および166の、第2の電極18との組合せは、それぞれ、電子デバイス172、174、および176を形成する。電子デバイス172、174、および176は、原色エミッタとして役立つことができる。
【0103】
したがって、光共振器が、Au層17と第2の電極18との間に形成される。実施例2の場合のように、第1の電極14のITOは、2つの機能を果たすことができる。一方は、アノードの役割として役立つことであることができ、他方は、光経路長さを調整することであることができる。デバイスが光共振器の内側であるので、光共振器は、多くの層、すなわち、第1の電極14、透明な層15などを含む。結果として、光経路長さは、下記の通りである。
【0104】
【数4】

【0105】
ここで、
iは各層の屈折率であり、
iは各層の厚さであり、
iは各層の指数である。
【0106】
上で説明された共振モードを有する光共振器を製造するために、したがって、光経路長さは、2560nmであるように設定され、すなわち、
【0107】
【数5】

【0108】
実施例2の場合のように、光共振器がない、原色エミッタの発光スペクトルは、図9に、破線911、912、および913(それぞれ、青色、緑色、および赤色に対応する)として示されている。赤色、緑色、および青色エミッタのCIE色座標は、再び、それぞれ、(0.667, 0.331)、(0.423, 0.559)、および(0.157, 0.249)から、(0.687, 0.312)、(0.176, 0.756)、および(0.156, 0.019)に向上された。デバイスが光共振器の内側にある、原色エミッタの発光スペクトルは、図9に、線901、902、および903(それぞれ、青色、緑色、および赤色に対応する)として示されている。
【0109】
公称4インチのパネルのコントラスト比は、約15:1から約35:1に向上した。したがって、向上係数は2を超える。反射防止フィルムの薄い層が基板12の表面上にコーティングされる場合、100:1を超えるコントラスト比が達成される。
【0110】
(実施例4)
フルカラーディスプレイを含む実施形態において、各ピクセルが、各原色、すなわち、青色、緑色、および赤色のための、3つのサブピクセルを含むことができる。実際的な理由によって、フルカラーピクセルのレイアウトは、3つのサブピクセルが並んで置かれる横方向である。(たとえば、そのようなレイアウトの構成例の図4〜6および図8を参照のこと)。フルカラーピクセルを積重ねられた構成で製造することによって、ディスプレイの解像度を3倍増加させることができるだけでなく、また、各サブピクセルの光強度要件を3倍低下させることができる。結果として、結果として生じるOLEDエミッタの寿命を著しく延ばすことができる。たとえば、大量(high content)情報ディスプレイの場合、積重ねられたフルカラーOLEDエミッタが、横方向の構成より適切であることができる。本実施例は、光共振器の内側の積重ねられたフルカラーOLEDエミッタが、主エミッタの色座標、および結果として生じるディスプレイのコントラストを向上させることを実証する。
【0111】
2つのデバイス構造が、図10および図11に示されている。図10および図11の参照番号は、図4〜6および図8と関連して上で使用されたものと一致し、上で説明された積重ねられた構成を反映する。さらに、パッシベーション層23を各主エミッタ間にスパッタリングする。再び、光経路長さは、下記の通りである。
【0112】
【数6】

【0113】
ここで、
iは各層の屈折率であり、
iは各層の厚さであり、
iは各層の指数である。
【0114】
パッシベーション層23は、2つの隣接した電極の間の絶縁層として作用し、共振条件:
【0115】
【数7】

【0116】
を満たすように、光経路長さを調整する。光経路長さは、また、第1の電極14によって調整することができる。図10に示されたデバイスはトップエミッションデバイスである(すなわち、光がデバイスのカソード側で発される)。広帯域ブラッグ反射体を、実質的に完全な反射率を有する光共振器の表面であるように使用することができる。ブラッグ反射体は、図10に示されており、3つのミラースタック30、40、および50を有し、各ミラースタック30、40、および50は、1対の層を含む。金属または導電性酸化物のミラー24を、部分反射率を有するように、高真空下で蒸着させるかスパッタリングする。反射率を、2に実質的に等しいフィネスを与えるように制御する。
【0117】
図11に示されたデバイスは従来のボトムエミッションデバイスである(すなわち、光がデバイスのアノード側で発される)。ミラー24は、実質的に完全な反射率を有するように、高真空下で蒸着されたかスパッタリングされた金属または導電性酸化物から製造される。ミラー24’は、必要なフィネスを与えるように、部分反射率を有するように、高真空下で蒸着されたかスパッタリングされた金属または導電性酸化物から製造される。実質的に完全な反射率を有するミラー24が、金属ミラーまたは広帯域ブラッグ反射体であることができ、実質的に完全な反射率を有するミラー24が、デバイスのアノード側またはカソード側で実現することができる(それぞれ、トップまたはボトムエミッションデバイスを製造する)ことが定められた。光共振器の内側の3つの主エミッタの配列は、1つのエミッタの主発光が他の2つのエミッタによって吸収されないという条件で、任意であることができる。光共振器の共振モードが、図3に示されたものと同じであるので、図10および図11のデバイスは、図7に示され、実施例2と関連して上で説明された性能向上を達成した。
【0118】
一般的な説明または例において上で説明された活動のすべてが必要とされるわけではないこと、特定の活動の一部を必要としなくてもよいこと、および、説明されたものに加えて、1つまたは複数のさらなる活動を行ってもよいことに留意されたい。さらに、活動が記載された順序は、必ずしも、それらが行われる順序ではない。本明細書を読んだ後、当業者は、どんな活動を特定の要求または望みのために用いることができるかを定めることができるであろう。
【0119】
先の明細書において、概念を特定の実施形態に関して説明した。しかし、当業者は、特許請求の範囲に記載されるような本発明の範囲から逸脱することなく、さまざまな修正および変更を行うことができることを理解する。したがって、明細書および図は、限定的な意味ではなく例示的な意味でみなされるべきであり、すべてのそのような修正が、本発明の範囲内に含まれることが意図される。
【0120】
多くの態様および実施形態が、上で説明され、単に例示にすぎず、限定するものではない。本明細書を読んだ後、当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、他の態様および実施形態が可能であることを理解する。
【0121】
利益、他の利点、および問題の解決策を、特定の実施形態に関して上で説明した。しかし、利益、利点、問題の解決策、および、いかなる利益、利点、または解決策が生じるかより顕著になることを引起し得るいかなる特徴も、特許請求の範囲のいずれかまたはすべての、重要な、必要な、または本質的な特徴と解釈されるべきではない。
【0122】
いくつかの特徴を、明確にするため、別個の実施形態に関連してここで説明し、また、1つの実施形態において組合せで提供することができることが理解されるべきである。逆に、簡潔にするため、1つの実施形態に関連して説明されるさまざまな特徴を、また、別個に、または任意のサブコンビネーションで提供することができる。さらに、範囲内に記載された値への言及は、その範囲内のどの値も含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
カソード層と、
アノード層と、
前記カソード層と前記アノード層との間に印加された電流に応答して、前記基板を通して、赤色、緑色、および青色可視領域の各々の光を発する発光層と、
それを通って前記光が共振する少なくとも1つの共振層を含む光共振器であって、前記光が少なくとも3つの連続共振モードで共振し、さらに、前記3つの連続共振モードが、赤色、緑色、および青色可視領域に対応する、光共振器と
を含むことを特徴とする有機発光デバイス。
【請求項2】
前記共振層が、1つの側で第1の反射層によって境界をつけられ、第2の側で第2の反射層によって境界をつけられ、前記第1の反射層および前記第2の反射層の各々が、前記共振層を通って共振して前記反射層上に進む前記光の少なくとも一部を前記共振層内に反射して戻すことを特徴とする請求項1に記載の有機発光デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−142106(P2011−142106A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93499(P2011−93499)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【分割の表示】特願2007−549466(P2007−549466)の分割
【原出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】