説明

光出射方向制御フィルム、これを用いた光出射方向制御偏光板、液晶表示装置、及び光出射方向制御フィルムの製造方法

【課題】本発明の目的は、高透過率とモワレムラを解消した光出射方向制御フィルム、光出射方向制御偏光板、これを用いた液晶表示装置および光出射方向制御フィルムの製造方法を提供することにある。
【解決手段】透過領域と非透過領域とを有する光出射方向制御フィルムにおいて、透過領域がポリプロピレン樹脂と少なくともβ晶核剤を含み、ポリプロピレン樹脂のアイソタクチックペンタッド分率が90〜100%の範囲であり、β晶核剤の含有量が0.01〜1%の範囲であり、透過領域におけるβ晶比率が5%以下であることを特徴とする光出射方向制御フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透過率が良好でありかつモワレムラが改善された光出射方向制御フィルム、偏光板、液晶表示装置、及び光出射方向制御フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ルーバーフィルムに代表されるように、光出射方向制御フィルムに関する研究が活発に行われている。
【0003】
典型的なルーバーフィルムの構成は、非透過領域1と透過領域2とからなり、非透過領域1がフィルムの主平面に対して垂直(90度)に配向し、また非透過領域1が互いに平行に配置された構造をしている。(図1参照。)
このような光出射方向制御フィルムは垂直入射した光に対しては大きな透過率を示し、特定方向以上の角度で入射した光に対しては、光出射を制御する役割を果たす。(図2参照。)
光出射方向制御フィルムは、透過入射角度で入射した光の透過率の低下や、表示装置に用いた場合のモワレムラ等が課題となっており、これらの課題を解決する手段が望まれていた。
【0004】
特許文献1には、熱可塑性樹脂のポリプロピレンを用いた光出射方向制御フィルムについて記載されている。しかしながら、該特許ではβα晶変換を用いた高透過率化については記載されていない。
【0005】
ポリプロピレン樹脂の透明性に関しては、特許文献2に示されるように、ポリプロピレン樹脂のβ晶をα晶に変換する製造方法が記載されている。
【0006】
しかしながら、この特許ではα晶からβ晶への結晶変換を樹脂組成物全体に対して行っており、光出射方向の制御については触れられておらず、モワレ解消に関しては触れられていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−238851号公報
【特許文献2】特開平9−31266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、高透過率とモワレムラを解消した光出射方向制御フィルム、光出射方向制御偏光板、これを用いた液晶表示装置および光出射方向制御フィルムの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は以下の構成により達成される。
【0010】
1.透過領域と非透過領域とを有する光出射方向制御フィルムにおいて、透過領域がポリプロピレン樹脂と少なくともβ晶核剤を含み、ポリプロピレン樹脂のアイソタクチックペンタッド分率が90〜100%の範囲であり、β晶核剤の含有量が0.01〜1%の範囲であり、前記透過領域におけるβ晶比率が5%以下であることを特徴とする光出射方向制御フィルム。
【0011】
2.前記β晶核剤が針状形状であり、配向角度分布が5度以下であることを特徴とする前記1に記載の光出射方向制御フィルム。
【0012】
3.非透過領域が連通孔形状の光吸収性材料で充填されたことを特徴とする前記1または2に記載の光出射方向制御フィルム。
【0013】
4.保護フィルム、吸収型偏光子、光出射方向制御フィルムがこの順で積層構造であり、該光出射方向制御フィルムが前記1〜3のいずれか1項に記載の光出射方向制御フィルムであることを特徴とする光出射方向制御偏光板。
【0014】
5.バックライトユニット、反射型偏光子、光出射方向制御偏光板、液晶モジュール、偏光板がこの順に配置されており、該光出射方向制御偏光板が前記4であることを特徴とする液晶表示装置。
【0015】
6.前記1〜3のいずれか1項に記載の光出射方向制御フィルムの製造方法であって、
I)原料を280〜320℃の温度範囲で融解する工程、
II)溶融流延した後100〜130℃の温度範囲でフィルム形状に形成する工程、 III)β晶比率をパターニング調整する工程
を含むことを特徴とする光出射方向制御フィルムの製造方法。
【0016】
7.更に、
IV)β晶比率をパターニングしたフィルムをフィルム搬送方向に延伸する工程、
V)空隙中に光吸収性材料を充填する工程
を含むことを特徴とする前記6に記載の光出射方向制御フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、高透過率とモワレムラを解消した光出射方向制御フィルム、光出射方向制御偏光板、これを用いた液晶表示装置および光出射方向制御フィルムの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】ルーバーフィルムの模式図
【図2】ルーバーフィルムによる光線制御の模式図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0020】
本発明の光出射方向制御フィルムは、透過領域と非透過領域とを有する光出射方向制御フィルムにおいて、透過領域がポリプロピレン樹脂と少なくともβ晶核剤を含み、ポリプロピレン樹脂のアイソタクチックペンタッド分率が90〜100%の範囲であり、β晶核剤の含有量が0.01〜1%の範囲であり、前記透過領域におけるβ晶比率が5%以下であることを特徴とするものであり、かかる構成により、高透過率とモワレムラを解消した光出射方向制御フィルムを得るものである。
【0021】
前記透過領域に高ペンタッド値のポリプレン系樹脂及びβ晶核剤を用いて、β晶からα晶へと結晶変換させた光線制御フィルムを用いることにより透過領域における結晶界面での散乱を抑制することができ、高透過率を達成した光線出射方向制御フィルムを得るものである。
【0022】
さらに、針状粒子のβ晶核剤を配列させることによりポリプロピレン結晶の配向を揃え、ポリプロピレンの分子配向を制御することにより結晶界面で屈折率不一致を解消し、モワレムラの抑制を行うことができる。
【0023】
以下、本発明を要素毎に詳細に説明する。
【0024】
[ポリプロピレン樹脂]
本発明のポリプロピレン樹脂としては、具体的には、ホモプロピレン(プロピレン単独重合体)、またはプロピレンとエチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネンもしくは1−デセンなどα−オレフィンとのランダム共重合体またはブロック共重合体などが挙げられる。この中でも、光出射方向制御フィルムとしての高透過率の観点からはホモポリプロピレンがより好適に使用される。
【0025】
本発明において、ポリプロピレン樹脂は、立体規則性を示すアイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が90〜100%の範囲である。より好ましくは95〜100%の範囲である。アイソタクチックペンタッド分率が高いとβ晶の形成が十分に行われるため、β晶からα晶への転換により高透過率の光出射方向制御フィルムを作製することができる。
【0026】
アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)とは、任意の連続する5つのプロピレン単位で構成される炭素−炭素結合による主鎖に対して側鎖である5つのメチル基がいずれも同方向に位置する立体構造あるいはその割合を意味する。メチル基領域のシグナルの帰属は、A.Zambelli et al(Macromolecules8,687,(1975))に準拠している。
【0027】
また、ポリプロピレン樹脂は、分子量分布を示すパラメータであるMw/Mnが2.0〜10.0であることが好ましい。より好ましくは2.0〜8.0、更に好ましくは2.0〜6.0である。Mw/Mnが小さいほど分子量分布が狭いことを意味するが、Mw/Mnが2.0未満であると押出成形性が低下する等の問題が生じるほか、工業的に生産することも困難である。一方、Mw/Mnが10.0を超えた場合は低分子量成分が多くなり、光出射方向制御フィルムとしての機械的強度が低下しやすい。Mw/MnはGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって得られる。
【0028】
また、ポリプロピレン樹脂のメルトフローレート(MFR)は特に制限されるものではないが、通常、MFRは0.5〜15g/10分であることが好ましく、1.0〜10g/10分であることがより好ましい。MFRが0.5g/10分未満では成形加工時の樹脂の溶融粘度が高く生産性が低下する。一方、15g/10分を超えるとフィルムの機械的強度が不足するため実用上問題が生じやすい。MFRはJIS K7210に従い、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定している。
【0029】
なお、前記ポリプロピレン樹脂の製造方法は特に限定されるものではなく、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法、例えばチーグラー・ナッタ型触媒に代表されるマルチサイト触媒やメタロセン系触媒に代表されるシングルサイト触媒を用いた重合方法等が挙げられる。
【0030】
[β晶核剤]
本発明においては、光出射方向制御フィルムの透過領域にβ晶核剤を0.01〜1%の範囲で含有することを特徴とする。
【0031】
本発明で用いることのできるβ晶核剤としては、以下に示すものが挙げられるが、ポリプロピレン樹脂のβ晶の生成・成長を増加させるものであれば、特に限定されるものではなく、また2種類以上を混合して用いてもよい。
【0032】
β晶核剤としては、例えば、アミド化合物、テトラオキサスピロ化合物、キナクリドン類、ナノスケールのサイズを有する酸化鉄、1,2−ヒドロキシステアリン酸カリウム、安息香酸マグネシウムもしくはコハク酸マグネシウム、フタル酸マグネシウムなどに代表されるカルボン酸のアルカリもしくはアルカリ土類金属塩、ベンゼンスルホン酸ナトリウムもしくはナフタレンスルホン酸ナトリウムなどに代表される芳香族スルホン酸化合物、二もしくは三塩基カルボン酸のジもしくはトリエステル類、フタロシアニンブルーなどに代表されるフタロシアニン系顔料、有機二塩基酸である成分Aと周期律表第IIA族金属の酸化物、水酸化物もしくは塩である成分Bとからなる二成分系化合物、環状リン化合物とマグネシウム化合物からなる組成物などが挙げられる。
【0033】
これら特に好ましいβ晶核剤の具体例としては新日本理化社製β晶核剤『エヌジェスターNU−100』、β晶核剤の添加されたポリプロピレン樹脂の具体例としては、Aristech社製ポリプロピレン『Bepol B−022SP』、Borealis社製ポリプロピレン『Beta(β)−PP BE60−7032』、mayzo社製ポリプロピレン『BNX BETAPP−LN』などが挙げられる。
【0034】
β晶核剤の添加量はβ晶核剤の種類により適宜選択してよいが、ポリプロピレン樹脂のβ形成を十分に行える範囲として0.01〜1%の範囲である。0.01%以上の添加量にすることにより十分なβ晶形成を達成することができるため、後のβ晶からα晶への転換の際に高透過率を達成することが可能となる。また、添加量を1%以下にすることにより透過領域におけるβ晶核剤の散乱による透過率の低下を抑制することができる。
【0035】
ポリプロピレン樹脂のβ晶形成は、β晶核剤の表面に非均一系の結晶形成であると考えられる。β晶核剤の添加により、非添加の場合に比較して結晶のサイズを均一化する効果があり、粗大な結晶による光散乱を低減することができるため高透過率を達成することができる。
【0036】
本発明におけるβ晶核剤の形状は針状であり配向角度分布が5度以下であることが好ましい。ポリプロピレン樹脂のβ晶形成は、β晶核剤の表面のエピタキシャル成長だと考えられている。β晶核剤を針状にすることにより、針状の長手方向に垂直な方向にポリプロピレン結晶のc軸を持つβ結晶が形成されるため、ポリプロピレン樹脂の結晶の方向を規制することができる。さらに、β晶核剤の配向角度分布を揃えることによりフィルム全面に渡ってポリプロピレン樹脂の分子が同一方向に配向させることが可能となる。β晶からα晶への結晶転換後も分子配向は維持されるため、隣接する結晶の間での屈折率の不整合を抑制することができるため、高透過率であり光の干渉を抑制することができるためモワレの低減を達成することができる。
【0037】
[β晶比率]
本発明における、透過領域のβ晶比率は5%以下であることを特徴とする。
【0038】
β晶比率は、示差走査型熱量計(DSC)を用いて、該透過領域を25℃から240℃まで加熱速度10℃/分で昇温させた際に、検出されるポリプロピレンのα晶由来の結晶融解熱量(ΔHmα)とβ晶由来の結晶融解熱量(ΔHmβ)を用いて下記式で計算される。
【0039】
β晶比率(%)=〔ΔHmβ/(ΔHmβ+ΔHmα)〕×100
β晶の比率を5%以下にすることにより、α晶とβ晶の混晶状態による光散乱を解消し高透過率を達成することができる。
【0040】
β晶比率の調整は、β晶に熱、光等のエネルギーを与えることにより準安定なβ晶から安定なα晶への転換により行うことができる。
【0041】
具体的には、バーサレーザーVLS3.50(LASERWORKS社製)によるレーザーパターニング照射により選択的なα晶β晶パターニングを行うことができる。
【0042】
[その他添加剤]
本発明の光出射方向制御フィルムが含有することができる他の添加剤としては、通常、樹脂組成物に配合される一般的な添加剤が挙げられる。
【0043】
添加剤としては、成形加工性、生産性および光出射方向制御フィルムの諸物性を改良や調整する目的で添加される、端部などのトリミングロス等から発生するリサイクル樹脂やシリカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウム等の無機粒子、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料、難燃剤、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、溶融粘度改良剤、架橋剤、滑剤、核剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤または着色剤などの添加剤が挙げられる。
【0044】
具体的には、例えば、「プラスチックス配合剤」のP154〜P158に記載されている酸化防止剤、P178〜P182に記載されている紫外線吸収剤、P271〜P275に記載されている帯電防止剤としての界面活性剤、P283〜294に記載されている滑剤などが挙げられる。
【0045】
[透過領域と非透過領域]
本発明の光出射方向制御フィルムは透過領域と非透過領域からなる。本発明において、透過領域と非透過領域の様態(パターニング形状等)は、光出射方向の制御の目標により適宜選択することができ、例えば、点、縞、格子模様、またはハニカム模様等を有するもののいずれでも良い。
【0046】
また、非透過領域はフィルム膜厚方向に必ず垂直に配置されている必要もなく、膜厚垂直方向に対して傾斜した方向であっても良い。光出射方向のパターニング形状の設計手法としては、照明設計解析ソフトウェア(LightTools サイバネットシステム株式会社製)等を利用することができる。
【0047】
非透過領域の素材としては、光線の透過率を減少させるものであれば特に限定されない。具体的な例としては、散乱を発生させるポリプロピレン樹脂のβ晶、ポリプロピレン樹脂のβ晶とα晶の混晶、微細なボイド、ボイド中に含有させる染料等に代表される光吸収性素材、活性光線硬化樹脂やこれらの混合体等が上げられる。
【0048】
[連通孔形状]
本発明において、非透過領域が連通孔形状の光吸収性材料で充填されていることが好ましい。
【0049】
連通孔形状とは、光吸収性材料が少なくともフィルム表面へと連結していることを意味する。連通孔形状はフィルムの断層を電子顕微鏡により観察することにより確認することができる。
【0050】
非連結孔の形成には、ポリプロピレン樹脂のβ晶を形成した後に延伸操作により形成することができる。延伸操作により、密度の低いβ晶が高密度のα晶へと結晶変換を起こし、その際にボイドが形成され、さらに延伸することにより連結孔を形成することができる。連結孔を形成した後に、光吸収性材料を連結孔内部に浸透させることにより連結孔形状の光吸収材料本発明の光吸収性材料を形成することができる。
【0051】
連結孔形状を形成することにより、光吸収性材料は例えば膜厚方向に均一に浸透するため光出射方向の調整を行うことができる。
【0052】
[光出射方向制御偏光板]
本発明の光出射方向制御偏光板は、偏光板保護フィルム1/吸収型偏光子/偏光板保護フィルム2の積層体からなる。偏光板保護フィルム1としては、セルロースエステル系樹脂やノルボルネン系樹脂等を用いることができる。また、偏光板保護フィルム1は液晶表示装置の視野角拡大のために適当な位相差を持つことが好ましい。
【0053】
吸収型偏光子は、一方の偏光成分を吸収し、他方の偏光成分を透過する機能を有すれば特に限定されない。好ましい吸収型偏光子としては、ヨウ素により染色したポリビニルアルコールからなるフィルムを延伸によりヨウ素分子を配向させた偏光子が用いられる。
【0054】
偏光板保護フィルム2は、本発明に記載の光出射方向制御フィルムである。本発明の光出射方向制御フィルムと吸収型偏光子の接着には、例えば特開2007−316603号に記載のエポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、シアノアクリレート系樹脂、アクリルアミド系樹脂等を用いることができる。
【0055】
[液晶表示装置]
本発明の液晶表示装置は、バックライトユニット、反射型偏光子、光出射方向制御偏光板、液晶モジュール、偏光板がこの順に配置されている。
【0056】
光出射方向制御偏光板は、保護フィルム、吸収型偏光板、光出射方向制御フィルムがこの順で積層された構造からなり、光出射方向制御フィルムはバックライトユニット側に配置されていることが液晶表示装置の画質の観点から好ましい。
【0057】
また、偏光板保護フィルムとしては、セルロースエステル系フィルム、ノルボルネン系フィルム等を用いることが液晶表示装置の透過率の向上の観点から好ましい。さらに、偏光板保護フィルムは液晶表示装置の視野角拡大の観点から、位相差を持つことが好ましい。
【0058】
反射型偏光子は、一方の偏光を反射しこれに垂直な電場振動を持つ偏光を透過させる素子であればどのようなものであっても構わない。具体的な反射型偏光子としては、誘電体多層膜、散乱型反射型偏光子、λ/4フィルムとコレステリック液晶の積層体、ワイヤグリッド偏光子等が挙げられるがいずれのものでも好適に用いることができる。液晶表示装置の輝度向上率の観点から、特に誘電体多層膜(例えば、DBEF(3M社製))が好ましい。
【0059】
光出射方向の設定は、光出射方向制御フィルムの透過領域及び非透過領域の設計により制御することができる。
【0060】
[光出射方向制御フィルムの製造方法]
本発明の光出射方向制御フィルムは、I)原料を280〜320℃の温度範囲で融解する工程、II)溶融流延した後100〜130℃の温度範囲でフィルム形状に形成する工程、III)β晶比率をパターニング調整する工程を含む。
【0061】
〈工程I)原料を280〜320℃の温度範囲で融解する工程〉
ポリプロピレン樹脂とβ晶核剤を混合融解する工程であり、β晶核剤をポリプロピレン樹脂融液中に融解する。β晶核剤の融解は、樹脂の特性やβ晶核剤の種類や添加量によって異なるが、320以下で混合融解することによりポリプロピレン樹脂の熱分解を抑制することにより光出射方向制御フィルムの機械強度を保持する観点から好ましい。また融解の温度を280℃以上にすることにより、β晶核剤のポリプロピレン樹脂融液中へ分散が良好となり、フィルム全体に渡って均一性を保つことが可能となる。また、β晶核剤を適宜選択することにより、この温度領域でβ晶核剤の融解が起こり、次に冷却される過程でβ晶核剤の形状を針状に制御することが可能となる。
【0062】
工程I)終了後、一旦冷却し光出射方向制御フィルムの原料をペレタイズすることも好ましく行われる。
【0063】
〈工程II)溶融流延した後100〜130℃の温度範囲でフィルム形状に形成する工程〉
ポリプロピレン樹脂を溶融状態とし、これを押出成形することによって、β晶を含んだ光出射方向制御フィルム原反を得る工程である。
【0064】
光出射方向制御フィルム原反のβ晶分率は、50%以上であることが後に形成されるパターニングされた非透過領域の透過率を下げる観点及び連通孔形状を形成する場合に効率的な連通孔を形成する観点から好ましい。
【0065】
ポリプロピレン樹脂は、押出機中でスクリューの回転によって溶融混練され、Tダイからシート状に押出される。押出される溶融状シートの温度は、180〜320℃程度である。このときの溶融状シートの温度が180℃を下回ると、延展性が十分でなく、得られるフィルムの厚みが不均一になる可能性がある。また、その温度が320℃を超えると、樹脂の劣化や分解が起こりやすく、シート中に気泡が生じたり、炭化物が含まれたりすることがある。
【0066】
押出機は、単軸押出機であっても2軸押出機であってもよい。例えば単軸押出機の場合は、スクリューの長さLと直径Dの比であるL/Dが24〜36程度、樹脂供給部におけるねじ溝の空間容積と樹脂計量部におけるねじ溝の空間容積との比(前者/後者)である圧縮比が1.5〜4程度であって、フルフライトタイプ、バリアタイプ、さらにマドック型の混練部分を有するタイプなどのスクリューを用いることができる。ポリプロピレン樹脂の劣化や分解を抑制し、均一に溶融混練するという観点からは、L/Dが28〜36で、圧縮比が2.5〜3.5であるバリアタイプのスクリューを用いることが好ましい。また、ポリプロピレン樹脂の劣化や分解を可及的に抑制するため、押出機内は、窒素雰囲気又は真空にすることが好ましい。
【0067】
押出に使用されるTダイは、樹脂の流路表面に微小な段差や傷のないものが好ましく、また、そのリップ部分は、溶融したポリプロピレン樹脂との摩擦係数の小さい材料でめっき又はコーティングされ、さらにリップ先端が0.3mmφ以下に研磨されたシャープなエッジ形状のものが好ましい。摩擦係数の小さい材料としては、タングステンカーバイド系やフッ素系の特殊めっきなどが挙げられる。
【0068】
ポリプロピレン樹脂の押出変動を抑制する観点から、押出機とTダイとの間にアダプターを介してギアポンプを取り付けることが好ましい。また、ポリプロピレン樹脂中にある異物を取り除くため、リーフディスクフィルターを取り付けることが好ましい。
【0069】
Tダイから押し出された溶融状シートは、β晶核剤の配向角度分布を小さくするためにドラフト比1以上が好ましく、製膜の安定性の観点から350以下であることが好ましい。高ドラフト比で製膜するほど、β晶核剤の配向角分布を小さくすることが可能となるが、ドラフト比が350を超えると製膜時の膜厚の分布や破断等の課題が発生する。
【0070】
Tダイから押出された溶融状シートは、100〜130℃の温度範囲でフィルム状に成形されることによりβ晶を含んだ光出射方向制御フィルムの原反を得ることができる。
【0071】
130℃を超えた温度では、キャストしたロール上での固化が不十分となり、ロール状からの剥離が難しい。また、100℃以下では本発明の光制御フィルムの非透過領域のβ晶の効率的な形成が出来ず非透過領域での透過率が向上し、光出射方向の制御が困難となる。
【0072】
フィルム状原反の製造には温度制御された金属製冷却ロール(チルロール又はキャスティングロールともいう)上に溶融する手法等を用いることができる。さらに、金属製冷却ロール上に溶融流延されたフィルムに、100〜130℃に制御された風を用いることも好ましい。
【0073】
また、金属製冷却ロールの周方向に圧接して回転する弾性体を含むタッチロールとの間に、挟圧させて冷却固化することも膜厚の均一性の観点から好ましく行われる。
【0074】
この際、タッチロールは、ゴムなどの弾性体がそのまま表面となっているものでもよいし、弾性体ロールの表面を金属スリーブからなる外筒で被覆したものでもよい。弾性体ロールの表面が金属スリーブからなる外筒で被覆されたタッチロールを用いる場合は通常、金属製冷却ロールとタッチロールの間に、ポリプロピレン樹脂の溶融状シートを直接挟んで冷却する。一方、表面が弾性体となっているタッチロールを用いる場合は、ポリプロピレン樹脂の溶融状シートとタッチロールの間に熱可塑性樹脂の二軸延伸フィルムを介在させて挟圧することもできる。
【0075】
ポリプロピレン樹脂のβ晶形成の観点から、100〜130℃の温度範囲でのフィルム形成処理は5秒以上がこのましく、10秒以上がさらに好ましく、30秒以上が最もこのましい。また、生産性の向上の観点からは60秒以下が好ましい。
【0076】
使用する金属製冷却ロールは、その表面状態がポリプロピレン樹脂フィルムの表面に転写されるため、表面は可能な限り鏡面状態であることが好ましい。具体的には、金属製冷却ロールの表面の粗度は、最大高さの標準数列で表して0.3S以下であることが好ましく、さらには0.1S〜0.2Sであることがより好ましい。
【0077】
〈工程III)β晶比率をパターニングする工程〉
パターニングにより透過領域、非透過領域を形成することができる。
【0078】
工程II)で得られた光出射方向制御フィルムの原反を、熱や光等のエネルギーを局所的加えてβ晶からα晶への結晶転換をする工程である。β晶からα晶へ転換された部分が、本発明の光出射方向制御フィルムにおける透過領域となる。
【0079】
局所的に加えるエネルギーに特に制限はないが、任意の形状パターニングされたロールによる押圧や同様のロールによる局所的な加熱、レーザー照射等による手法等が用いられる。パターニングの自由度の観点から、レーザー照射が好ましく用いられる。
【0080】
本発明の光出射方向制御フィルムは、前記工程I)〜III)に加えて、IV)β晶比率をパターニングしたフィルムをフィルム搬送方向に延伸する工程、V)空隙中に光吸収性材料を充填する工程を含む。
【0081】
〈工程IV)β晶比率をパターニングしたフィルムをフィルム搬送方向に延伸する工程〉
工程III)で得られたパターニングされた光出射方向制御フィルムに局所的に空隙を形成する工程である。
【0082】
β晶を含むポリプロピレン樹脂は、延伸によりβ晶からα晶への結晶転移を起こす。延伸によるβ晶からα晶への結晶転移により、結晶密度差のために転換の際にパターニングされた微細な空隙を有する領域を形成することができる。
【0083】
延伸の手法は、β晶からα晶への結晶転換が行われる手法であれば公知の手法を用いることができる。
【0084】
公知の手法としてロール延伸法、圧延法、テンター延伸法、逐次二軸延伸法、同時二軸延伸法などの手法があり、これらを単独あるいは2つ以上組み合わせて一軸延伸あるいは二軸延伸を行う。中でも、多孔構造制御の観点からフィルム搬送(MD)方向及びフィルム搬送方向に対して垂直(TD)方向への逐次二軸延伸が好ましい。
【0085】
逐次二軸延伸を用いる場合、延伸温度は用いる樹脂組成物の組成、結晶融解ピーク温度、結晶化度等によって適時選択する必要があるが、多孔構造の制御が容易であり、機械強度や収縮率など他の諸物性とのバランスがとりやすい。縦延伸での延伸温度は概ね20℃〜130℃、好ましくは40℃〜120℃、更に好ましくは60℃〜110℃の範囲で制御される。また、縦延伸倍率は好ましくは2〜10倍、より好ましくは3〜8倍、更に好ましくは4〜7倍である。前記範囲内で縦延伸を行うことで、延伸時の破断を抑制しつつ、適度な空孔起点を発現させることができる。一方、横延伸での延伸温度は概ね100〜160℃、好ましくは110〜150℃、更に好ましくは120〜140℃である。また、横延伸倍率は好ましくは2〜10倍、より好ましくは3〜8倍、更に好ましくは4〜7倍である。前記範囲内で横延伸することで、縦延伸により形成された空孔起点を適度に拡大させ、微細な多孔構造を発現させることができる。前記延伸工程の延伸速度としては、500〜12000%/分が好ましく、1500〜10000%/分がより好ましく、2500〜8000%/分であることが更に好ましい。
【0086】
〈工程V)空隙中に光吸収性材料を充填する工程〉
前記工程IV)で形成された空隙中に光吸収性の材料を充填し、光出射方向制御フィルムの非透過領域の透過率を調整する工程である。
【0087】
光充填性材料の充填方法は、空隙中に前記の材料を充填出来れば特に限定はなく、グラビア塗布、バー塗布、インクジェット塗布等に代表される公知の塗布法やフィルム全体を光吸収性材料中へと浸漬する手法等が用いられる。
【0088】
光透過性領域の透過率の低下を抑制する観点から、余剰の光吸収性材料を拭き取る工程も好ましく行われる。
【0089】
(アニール工程)
本発明において、光出射方向制御フィルムの寸法安定性の観点から、アニール工程を含むことも好ましい。アニール工程は、前記工程III)以降の工程の任意に設定することができる。
【0090】
光出射方向制御フィルムの非透過領域が、β晶から形成されている場合には非透過領域の透過率低下を抑制する観点からβ晶α晶転換が起こらない温度条件で行うことが好ましい。具体的には、140℃以下が好ましく、また寸法の安定性のため80℃以上で処理することが好ましい。
【0091】
光出射方向制御フィルムの非透過領域が、空隙もしくは光吸収性材料が充填された光出射方向制御フィルムの場合には、空隙形成工程の後に処理することが好ましい。
【実施例】
【0092】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0093】
《評価手法》
(β晶核剤配向角度分布)
偏光顕微鏡(BX51−P(オリンパス株式会社製))と顕微鏡用ホットステージ(形式:10033L(ジャパンハイテック株式会社製))とを用いて、β晶核剤の角度を求めた。
【0094】
任意の基準軸1を設定し(フィルム作製時の製膜方向を基準)として、β晶核剤の長軸方向との角度差を求め角度分布ヒストグラム1を作成した。ヒストグラム1の最頻値をとる角度を再度基準軸2として設定し、角度分布ヒストグラム2を作成した。なお、最頻値が複数ある場合は、各々に対して標準偏差が最小になる角度を基準角度として採用した。基準軸から近い順に±1°単位で核剤数をカウントしβ晶核剤総数の90%が収まる最大角度をβ晶核剤の角度分布とした。
【0095】
(全光線透過率)
JIS K−6714に従って、ヘイズメーター(1001DP型、日本電色工業(株)製)を用いて測定し、全光線透過率を評価した。
【0096】
なお、基準試料としては実施例に記載の樹脂を用いて、β晶核剤を添加せずに実施例と同様の条件で作製した試料を用いた。但し、基準試料ではβ晶からα晶への変換の操作は除外した。基準試料の全光線透過率を測定し、実施例で作製された試料の全透過領域に対する透過領域の比から求めた値を基準値とした。
【0097】
◎:基準値に対して評価試料の全光線透過率が0.4%以上上昇
○:基準値に対して評価試料の全光線透過率が0.2%以上上昇
△:基準値に対して評価試料の全光線透過率の差なし
×:基準値に対して評価試料の全光線透過率が0.2%以上低下
(モワレ評価)
市販の液晶ディスプレイ(REGZA 32A1 株式会社東芝製)のバックライト側偏光板のバックライト側偏光板保護フィルムを取り外し、本発明の光出射方向制御フィルムに変えて、目視により評価を行った。
【0098】
(β晶核剤形状観察)
偏光顕微鏡(BX51−P(オリンパス株式会社製))と顕微鏡用ホットステージ(形式:10033L(ジャパンハイテック株式会社製))とを用いて、室温から、10℃/分の昇温速度で280℃まで昇温させながらβ晶核剤の形状を観察した。試料はホットステージ状にガラス板挟み観察を行った。なお、針状粒子は長軸長さと単軸長さの比が2以上のものとした。
【0099】
(連通孔形状の観察)
試料をミクロとロームによって、膜厚方向に断裁し電子顕微鏡により連通孔の形状を観察した。
【0100】
(光線方向制御)
積分球を用いて、光透過率を測定した。フィルムなしの状態での光量を100として計測、ゴニオフォトメータと積分球を組合せて光透過率を測定した。
【0101】
◎:非透過角度での光入射に対して、光透過率が5%以下
○:非透過角度での光入射に対して、光透過率が10%以下
×:非透過角度での光入射に対して、光透過率が10%を超える
実施例1
(樹脂組成物の作製)
以下の樹脂1から3及びβ晶核剤を表1に記載の比率で東芝機械株式会社製の同方向二軸押出機(口径φ40mm、L/D=32)を用いて280℃にて溶融混練してペレット状に加工した樹脂組成物を得た。なお、試料1−4及び1−5を樹脂2及び樹脂3を混合使用してペンタッド値を調整した。その他の試料については、樹脂1を用いた。
【0102】
ペンタッド値 MFR
樹脂1 F300SV((株)プライムポリマー製) 98% 3
樹脂2 F102W((株)プライムポリマー製) 95% 2
樹脂3 プライムT PO F−3900((株)プライムポリマー製)
70% 4.5
β晶核剤 エヌジェスターNU−100(新日本理化(株)製)
(光出射方向制御フィルム1−1〜1−13の作製)
上記樹脂組成物を押し出し機にてTダイより押出し、120℃のキャスティングロールで30秒冷却し、光出射方向制御フィルムの原反を作製した。各フィルムの膜厚は200μmであった。
【0103】
得られた光出射方向制御フィルムを切り出し、LASERWORKS社製 バーサレーザー VLS3.50を用いて透過領域(レーザー照射領域)100μm、非透過領域(レーザー非照射領域)10μmのラインアンドスペースのパターニング処理を行った。
【0104】
結果を表1にまとめて示す。
【0105】
【表1】

【0106】
表1に記載の結果から明らかなように、ペンタッド分率が90%以上で良好な全光線透過率を示し、さらにペンタッド分率が高いほど、全光線透過率が高い結果が得られた。
【0107】
これは初期のβ晶の形成比率が高いために、α晶へと転換された割合が高く、ヘイズが低下したためである。
【0108】
β晶核剤が0.01〜1%の添加量で、全光線透過率の高いフィルムが得られた。β晶核剤の量はこの範囲ではβ晶の形成能力が高いためである。
【0109】
また、核剤の添加量が1%を超える場合には、β晶核剤自体による散乱により全光線透過率が減少したものと考える。
【0110】
透過領域におけるβ晶比率は5%以下であることにより、良好な透過率のフィルムが得られた。β晶とα晶の混晶状態の屈折率の差に起因する散乱が低減されたためである。
【0111】
実施例2
実施例1と同様の手法で、表2に記載の試料2−1から2−4を作製した。
【0112】
なお、樹脂は実施例1に記載の樹脂2を用いた。なお、2−1、2−2、2−3、2−4の溶融製膜時のドラフト比は、それぞれ5、3、1.5、0.9とした。なお、2−4の樹脂混合物の作製は、240℃でペレタイズを行った。
【0113】
結果を表2にまとめて示す。
【0114】
【表2】

【0115】
表2から、明らかなようにβ晶核剤の配向角度分布が5°以内の時に全光線透過率とモワレ評価において良好な結果が得られた。
【0116】
β晶核剤が配向することにより、ポリプロピレン樹脂のβ晶が一方向に揃った形で結晶化する。そのため、α晶へ変換した場合にも隣接するα晶との屈折率が一致するため、モワレ等の光学特性が改善されたものと考える。
【0117】
β晶核剤が針状の場合、ポリプロピレン結晶成長時に分子の配向方向が揃うため、後のα晶変換後に、隣接するα晶同市の屈折率差がなくなるため良好なフィルムが作製できた。
【0118】
試料2−4ではペレタイズ温度が低いため、β晶核剤がポリプロピレン樹脂融液中で融解しないため、再析出から針状形状の形成ができなかったと考えている。
【0119】
実施例3
(樹脂組成物の作製)
表3に記載の比率で樹脂2及び樹脂3及びβ晶核剤を用いて樹脂組成物を作製した。
【0120】
なお、樹脂組成物のペレタイズ温度は表3に記載の温度で行った。
【0121】
ペンタッド値 MFR
樹脂2 F102W((株)プライムポリマー製) 95% 2
樹脂3 プライムT PO F−3900((株)プライムポリマー製)
70% 4.5
β晶核剤 エヌジェスターNU−100(新日本理化(株)製)
(光出射方向制御フィルム3−1〜3−9の作製)
上記樹脂組成物を押し出し機にてTダイよりドラフト比10の条件で押出し、表3に記載のキャスティングロール温度で30秒冷却し、光出射方向制御フィルムの原反を作製、LASERWORKS社製 バーサレーザー VLS3.50を用いて透過領域(レーザー照射領域)100μm、非透過領域(レーザー非照射領域)10μmのラインアンドスペースのパターニング処理を行った。
【0122】
パターニング処理したフィルムを120℃でMD方向に3倍延伸、TD方向に130℃で4倍の逐次延伸処理を行い非透過領域前駆領域に連通孔を形成し、130℃で3%緩和しながらアニール処理を行った。
【0123】
(光吸収性材料の調製)
以下の組成で光吸収性材料を調製した。
【0124】
<光吸収性材料組成>
カーボンブラック 20質量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 100質量部
(2量体及び3量体以上の成分を含む)
光反応開始剤(ジメトシキベンゾフェノン) 4質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 30質量部
メチルエチルケトン 100質量部
連通孔を形成したフィルムにバーコーターを用いて、光吸収性材料を塗布し連通孔部分に光吸収性材料を充填した。余剰の光吸収性材料を拭き取った後に、紫外線により硬化を行い試料3−1〜3−9を作製した。
【0125】
結果を表3にまとめて記載する。
【0126】
【表3】

【0127】
表3から、連通孔形状の光吸収性材料を持つサンプルは、光出射角度制御フィルムとして良好な結果が得られた。連通孔形状の非透過領域が形成されたサンプルは、光吸収材料がフィルム膜厚方向を貫通した形で形成されるため、厚み方向に光吸収層が形成されたため十分な光線方向制御が達成できた。
【0128】
また、ペレタイズ温度が320〜290℃の間ではβ晶核剤が一度溶解した後に、針状に析出したため良好なサンプルが得られた。330℃を超えると、ポリプロピレン樹脂の酸化により透過率が落ちた。また、280℃ではβ晶核剤のポリプロピレン樹脂中への溶解が不十分であり、針状結晶の形成が不十分であったものと考えられる。
【0129】
タッチロール温度が100〜130℃では、β晶の比率の高いフィルムが得られるため、その後の連結孔形成が効率よく進んだものと考えられる。
【0130】
タッチロール温度が140℃、及び90℃のサンプルでは、β晶比率が低くなり連結孔の形成がやや劣る結果となった。
【0131】
また、β晶核剤が添加されていないサンプルは、β晶の形成が不十分なためサンプルは得られなかった。
【0132】
実施例4
市販の偏光板(SEG 1425DU 日東電工(株)製)の保護フィルムの片側を剥離し、下記の組成の接着剤により実施例1の試料1−1を接着し、視野角制御偏光板を作製した。
【0133】
<接着剤組成>
ポリビニルアルコール(KL−318(株)クラレ製) 3質量部
水溶性ポリアミドエポキシ樹脂 1.5質量部
(Sumires Resin 650 住化ケムテックス(株)製)
水 100質量部
でき上がった偏光板は、視野角制御が良好な視野角制御偏光板であった。
【0134】
実施例5
市販の液晶ディスプレイ(REGZA 32A1 株式会社東芝製)のバックライトユニット側の偏光板を取り外し、実施例4で作製した視野角制御偏光板を貼合した。
【0135】
貼合の方向はバックライト側に本発明の光出射方向制御フィルムが対向する配置とした。
【0136】
また、バックライトユニット側には反射型偏光子(DBEF−D400 3M社製)を配置した。
【0137】
目視の結果、視野角が制御されかつモワレムラ等は観察されず良好なディスプレイ表示装置を作製できた。
【0138】
実施例6
(樹脂組成物の作製)
実施例1と同様の手法で、表4に記載の比率で樹脂2及びβ晶核剤を用いて樹脂組成物を作製した。
【0139】
なお、樹脂組成物のペレタイズ温度は表4に記載の温度で行った。
【0140】
ペンタッド値 MFR
樹脂2 F102W((株)プライムポリマー製) 95% 2
β晶核剤 エヌジェスターNU−100(新日本理化(株)製)
(光出射方向制御フィルム4−1〜4−10の作製)
上記樹脂組成物を押し出し機にてTダイよりドラフト比5の条件で押出し、表4に記載のキャスティングロール温度で30秒冷却し、光出射方向制御フィルムの原反を作製、LASERWORKS社製 バーサレーザー VLS3.50を用いて透過領域(レーザー照射領域)100μm、非透過領域(レーザー非照射領域)10μmのラインアンドスペースのパターニング処理を行い、試料4−1〜4−10を作製した。
【0141】
結果を表4にまとめて示す。
【0142】
【表4】

【0143】
表4より、ペレタイズ温度が高すぎると、ポリプロピレン樹脂の分解を引き起こしやすく透過率等への悪影響が出ることが分かる。
【0144】
また、ペレタイズ温度が低いと、ポリプロピレン樹脂中へのβ晶核剤の溶解が十分でないため透過率が十分に上がらない。
【0145】
タッチロール温度が高すぎる、もしくは低すぎるとβ晶分率が十分でなかったため、α晶とβ晶界面での散乱が減少し、光線方向制御がやや劣ることが分かった。
【符号の説明】
【0146】
1 非透過領域
2 透過領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透過領域と非透過領域とを有する光出射方向制御フィルムにおいて、透過領域がポリプロピレン樹脂と少なくともβ晶核剤を含み、ポリプロピレン樹脂のアイソタクチックペンタッド分率が90〜100%の範囲であり、β晶核剤の含有量が0.01〜1%の範囲であり、前記透過領域におけるβ晶比率が5%以下であることを特徴とする光出射方向制御フィルム。
【請求項2】
前記β晶核剤が針状形状であり、配向角度分布が5度以下であることを特徴とする請求項1に記載の光出射方向制御フィルム。
【請求項3】
非透過領域が連通孔形状の光吸収性材料で充填されたことを特徴とする請求項1または2に記載の光出射方向制御フィルム。
【請求項4】
保護フィルム、吸収型偏光子、光出射方向制御フィルムがこの順で積層構造であり、該光出射方向制御フィルムが請求項1〜3のいずれか1項に記載の光出射方向制御フィルムであることを特徴とする光出射方向制御偏光板。
【請求項5】
バックライトユニット、反射型偏光子、光出射方向制御偏光板、液晶モジュール、偏光板がこの順に配置されており、該光出射方向制御偏光板が請求項4であることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の光出射方向制御フィルムの製造方法であって、
I)原料を280〜320℃の温度範囲で融解する工程、
II)溶融流延した後100〜130℃の温度範囲でフィルム形状に形成する工程、 III)β晶比率をパターニング調整する工程
を含むことを特徴とする光出射方向制御フィルムの製造方法。
【請求項7】
更に、
IV)β晶比率をパターニングしたフィルムをフィルム搬送方向に延伸する工程、
V)空隙中に光吸収性材料を充填する工程
を含むことを特徴とする請求項6に記載の光出射方向制御フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−150257(P2012−150257A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8538(P2011−8538)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(303000408)コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】