説明

光半導体封止用エポキシ樹脂組成物

本発明は、(A)式(1)で表されるビスフェノール型エポキシ樹脂であって、該樹脂全体に対して、n=0、1または2である低分子量体の合計含有割合が10重量%以上であるビスフェノール型エポキシ樹脂、(B)環状テルペン化合物1分子にフェノール類を2分子付加させてなるテルペン骨格含有多価フェノール硬化剤、(C)硬化促進剤、(D)上記成分(A)以外のエポキシ樹脂及び硬化剤としてのノボラック樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種の樹脂を含む光半導体封止用エポキシ樹脂組成物、該組成物の硬化物で封止された光半導体素子に関するものであり、該組成物は作業性に優れ、封止光半導体の生産性に優れ、該組成物の硬化物で封止された光半導体は吸湿後の耐半田リフロー性、HC向け耐熱性においても優れている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、吸湿後の耐半田性に優れた光半導体封止用エポキシ樹脂組成物に関する。
【背景技術】
光半導体等のオプトエレクトロニクス部品を保護するために通常気密封止が行われている。オプトエレクトロニクス部品の封止に当たっては、封止剤で封止後において、その封止膜が高い光透過性(透明性)を持つことが要求される。高信頼性を必要とするオプトエレクトロニクス部品についてはガラスを用いて気密封止する方式が一般に広く採用されている。しかし、該気密封止はコストが高く、オプトエレクトロニクス部品の生産性が低いため、汎用品の封止に関しては、経済性の高い樹脂封止が採用されてきている。樹脂封止には一般的にエポキシ樹脂組成物が使用される。その際、硬化剤として酸無水物が使用される。しかし、該エポキシ樹脂組成物の硬化物は、酸無水物とエポキシ基の反応により形成されたエステル結合を含むため、該硬化物(例えば気密封止用樹脂膜)を高湿度下で保存した場合、エステル結合が加水分解され、接着性と透明性が低下するという欠点を有している。また樹脂封止された光半導体素子において、素子に接続されたワイヤーが封止樹脂の熱膨張で切断される場合があるため、ガラス転位点(Tg)が105℃以上のもの、好ましくは110℃以上のものが求められている。
一方、エステル結合を含まないフェノール化合物を硬化剤として用いて、エポキシ樹脂組成物での気密封止をした場合、得られる硬化物(気密封止の樹脂膜)は高湿度下での保存後も透明性を維持するので、該硬化剤は酸無水物を用いた硬化剤より優れてる。しかし、近年、半田溶融温度が高くなり、吸湿後の半田リフローの際に、封止樹脂とリードフレームとの接着面に剥離が生じるという新たな問題が注目され始めた(吸湿後の耐半田性)。特にAgメッキリードフレームにおいては、前記何れの硬化剤を用いたエポキシ樹脂組成物でも、未だ上記の求められているすべての条件を満たす樹脂硬化物(封止物)は得られていない。また、特開2001−2758号公報にはテルペン骨格含有多価フェノールを硬化剤として使用したエポキシ樹脂組成物が提案されている。該エポキシ樹脂組成物から得られる硬化物は上記の従来の技術の欠点のいくつかを改善するものであるがまだ充分に満足のいくものではない。
本発明は、吸湿後の耐半田リフロー性に優れる樹脂封止光半導体を得ることができ、かつ作業性(封止光半導体素子の生産性)に優れる光半導体封止用エポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。
【発明の開示】
本発明者らは前記した課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、上記成分(A)のエポキシ樹脂、成分(B)のテルペン骨格含有多価フェノール硬化剤及び(C)硬化促進剤と共に、成分(D)として、成分(A)以外のエポキシ樹脂及び硬化剤としてのノボラック樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種の樹脂を併用することにより、上記問題点を克服した光半導体用エポキシ樹脂組成物が得られることを見出したものである。即ち本発明は
1.(A)下記式(1)

(式中、Rは水素原子、C1〜C8のアルキル基、ハロゲン原子を示し、互いに同一又は異なってもよい。Rは水素原子、C1〜C5のアルキル基、ハロゲン置換(C1〜C5)アルキル基またはフェニル基を示し、互いに同一又は異なってもよい。nは整数を示す。)
で表されるビスフェノール型エポキシ樹脂であって、該樹脂全体に対して、n=0、1または2である低分子量体の合計含有割合が10重量%以上の割合で含有するビスフェノール型エポキシ樹脂、
(B)環状テルペン化合物1分子にフェノール類を2分子付加させてなるテルペン骨格含有多価フェノール硬化剤、
(C)硬化促進剤、
(D)上記成分(A)以外のエポキシ樹脂及び硬化剤としてのノボラック樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種の樹脂
を含む光半導体封止用エポキシ樹脂、
2.成分(A)以外のエポキシ樹脂を含み、全エポキシ樹脂に対し、前記式(1)のnが0、1または2である低分子量体の合計含有割合が、10重量%以上である上記1に記載の光半導体封止用エポキシ樹脂組成物、
3.成分(A)のエポキシ樹脂における上記低分子量体の合計含有割合が成分(A)の全体に対して15〜50重量%である上記1に記載の光半導体封止用エポキシ樹脂組成物、
4.エポキシ樹脂全体に対して、成分(D)として成分(A)以外のエポキシ樹脂を20〜90重量%、成分(A)のエポキシ樹脂を10〜80重量%含有する上記1にまたは3に記載の光半導体封止用エポキシ樹脂、
5.成分(A)以外のエポキシ樹脂がビフェニル骨格含有フェノールノボラック樹脂である上記1または4に記載の光半導体封止用エポキシ樹脂組成物、
6.成分(A)がビスフェノールA型及びまたはビスフェノールF型エポキシ樹脂である上記1に記載の光半導体封止用エポキシ樹脂組成物、
7.成分(B)のテルペン骨格含有多価フェノール硬化剤が2官能型である上記1に記載の光半導体封止用エポキシ樹脂組成物、
8.上記1〜7のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物で封止された光半導体素子、
9.上記1〜7のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物で封止することを特徴とする封止光半導体素子の製造法、
10.樹脂組成物の硬化物のガラス転位点が105℃以上であり、該硬化物で封止された光半導体素子の吸湿後の硬化樹脂の剥離面積率が60%以下となる上記1〜7のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物、
に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明で用いられる成分(A)のエポキシ樹脂(以下においてエポキシ樹脂(A)ともいう)は、上記式(1)におけるnが0、1または2の低分子量体を、エポキシ樹脂(A)の全量に対して10重量%(以下特に断らないかぎり、%は重量%を意味する)以上、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上含有する。エポキシ樹脂(A)の全量が該低分子量体であってもよいが、好ましくは80%以下、より好ましくは60%以下、更に好ましくは50%以下であり、最も好ましくは40%以下である。該低分子量体は上記のnが0、1または2のいずれか一種からなっていても、また、2種以上の混合物からなっていてもよい。通常3種の混合物からなっている。低分子量体全体に対するそれぞれの含量は特に制限はないが、通常n=0体が30%以下、n=1体が25〜40%、n=2体が残部であるが、n=2体は30%以上、好ましくは40%以上含まれるのが好ましい。このような低分子量体を含有するエポキシ樹脂は例えば東都化成(株)や三井化学(株)製のエポキシ樹脂が市場より入手可能である。以後、必要に応じてnが0のものを0核体、nが1ものを1核体、nが2のものを2核体と記述する場合もある。
ビスフェノール型エポキシ樹脂は、通常、前記式(1)のnが0〜20程度の異なった分子が多数混在しているため、本発明においては使用するエポキシ樹脂中の低分子量体(0核体、1核体または2核体)の含有割合を知る必要があり、その方法としてGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)分析が有効である。
分析条件例を示す。
GPC測定条件例
shodex KF−803+KF−8025+KF−802+KF−801
溶解溶剤:THF(テトラヒドロフラン)
流速:1ml/分
検出光源:示差屈折率法(島津製作所RID6A)
上記分析条件例以外にも該エポキシ樹脂の含有量が分析可能であれば上記条件にこだわる必要は無い。
式(1)において、Rの炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の直鎖状または枝分かれ状の炭素数1〜8のアルキル基が挙げられ、ハロゲン原子としては塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
式(1)において、Rの炭素数1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等の直鎖状または枝分かれ状の炭素数1〜5のアルキル基が挙げられ、ハロゲン置換(C1〜C5)アルキル基としてはやこれらアルキル基の水素原子の一部または全部を塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子で置換したハロゲン置換アルキル基等が挙げられる。
式(1)において複数存在するRはそれぞれ互いに同一であっても異なっていてもよいが、全てが水素原子またはメチル基であるものが好ましい。また、式(1)において複数存在するRはそれぞれ互いに同一であっても異なっていてもよいが、全てが水素原子、メチル基またはエチル基であるものが好ましい。下表にRとRの好ましい組み合わせにつき例示する。

本発明において、式(1)のエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(R=H,R=CH)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(R=H,R=H)、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールB型エポキシ樹脂、ビスフェノールAP型エポキシ樹脂またはビスフェノールAB型エポキシ樹脂が好ましく、それそれ単独でまたは任意の割合で混合して使用することができる。
また、本発明では、(A)成分以外にも、本発明の効果の妨げにならない範囲内で、他のエポキシ樹脂を(D)成分の1つとして、組み合わせて用いることが出来る。また、他のエポキシ樹脂を適度に組み合わせて用いることにより、よりよい本発明の効果を達成することができる。従って本発明においてはこの他のエポキシ樹脂を(D)成分として併用することは好ましい。
他のエポキシ樹脂の具体例としては、ポリフェノール化合物のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂、各種ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、ハロゲン化フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂が上げられる。
ポリフェノール化合物のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂としては、ポリフェノール化合物、例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4,4’−ビフェニルフェノール、テトラメチルビスフェノールA、ジメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、ジメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、ジメチルビスフェノールS、テトラメチル−4,4’−ビフェノール、ジメチル−4,4’−ビフェニルフェノール、1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−[4−(1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニル]プロパン、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリスヒドロキシフェニルメタン、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロガロール、ジイソプロピリデン骨格を有するフェノール類、1,1−ジ−4−ヒドロキシフェニルフルオレン等のフルオレン骨格を有するフェノール類、フェノール化ポリブタジエン等をグリシジルエーテル化して得られる多官能エポキシ樹脂(ポリフェノール化合物のグリシジルエーテル化物)が挙げられる。
各種ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂としては、各種ノボラック樹脂、例えば各種フェノールを原料とするノボラック樹脂、キシリレン骨格含有フェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有フェノールノボラック樹脂、ビフェニル骨格含有フェノールノボラック樹脂、フルオレン骨格含有フェノールノボラック樹脂等、のグリシジルエーテル化物が挙げられる。また上記で使用される各種フェノールとしてはフェノール、クレゾール類、エチルフェノール類、ブチルフェノール類、オクチルフェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ナフトール類等を挙げることができる。
脂環式エポキシ樹脂としては、環式脂肪族骨格、例えば3,4−エポキシシクロヘキシルメチル3’,4’−シクロヘキシルカルボキシレート等のシクロヘキサン骨格等を有する脂環式エポキシ樹脂を挙げることができる。
脂肪族系エポキシ樹脂としては多価アルコールのグリシジルエーテル類が挙げられ、多価アルコールとしては多価アルコールであればいずれも使用しうるが1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ペンタエリスリトール、キシリレングリコール誘導体等の炭素数2〜6のグリコール類、ポリ(C1〜C4)アルキレングリコール類、C5〜C6環状グリコールなどが挙げられる。
複素環式エポキシ樹脂としてはイソシアヌル環、ヒダントイン環等の複素環を有する複素環式エポキシ樹脂が挙げられる。
グリシジルエステル系エポキシ樹脂としてはヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル等のカルボン酸類からなるエポキシ樹脂が挙げられる。
グリシジルアミン系エポキシ樹脂としてはアニリン、トルイジン、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン誘導体、ジアミノメチルベンゼン誘導体等のアミン類をグリシジル化したエポキシ樹脂、ハロゲン化フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂としてはブロム化ビスフェノールA、ブロム化ビスフェノールF、ブロム化ビスフェノールS、ブロム化フェノールノボラック、ブロム化クレゾールノボラック、クロル化ビスフェノールS、クロル化ビスフェノールA等のハロゲン化フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂が挙げられる。
これらエポキシ樹脂の使用にあたっては特に制限はないが、透明性の観点から着色性の少ないものがより好ましい。通常使用されるものとしては、フェノール類のグリシジルエーテル化物である多官能エポキシ樹脂、各種ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物、シクロヘキサン骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、多価アルコール(例えば1,6−ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール)のグリシジルエーテル類、トリグリシジルイソシアヌレート、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル等が挙げられる。上記フェノール類のグリシジルエーテル化物である多官能エポキジ樹脂におけるフェノール類として好ましいものはビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4,4’−ビフェニルフェノール、テトラメチル−4,4’ビフェノール、1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−[4−(1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニル]プロパン、トリスヒドロキシフェニルメタン、レゾルシノール、2,6−ジtert−ブチルハイドロキノン、ジイソプロピリデン骨格を有するフェノール類、1,1−ジ−4−ヒドロキシフェニルフルオレン等のフルオレン骨格を有するフェノール類等である。また、各種ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物における好ましいノボラック樹脂としては、各種フェノール、例えばフェノール、クレゾール類、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ナフトール類等を原料とするノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有フェノールノボラック樹脂、ビフェニル骨格含有フェノールノボラック樹脂、フルオレン骨格含有フェノールノボラック樹脂等のノボラック樹脂が挙げられる。シクロヘキサン骨格を有する脂環式エポキシ樹脂としては3,4−エポキシシクロヘキシルメチル3’,4’−シクロヘキシルカルボキシレートを挙げることができる。
上記エポキシ樹脂においてビフェニル骨格含有フェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物が好ましい。それらとしては例えばNC−3000(商品名、日本化薬株式会社製)、NC−3000H(商品名、日本化薬株式会社製)等を挙げることができる。ビフェニル骨格含有フェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物としては常温(例えば25℃)において固体で、軟化点が100℃以下のものが好ましく、より好ましくは75℃以下のものであり、更に好ましくは60℃以下のものである。
これらエポキシ樹脂は必要に応じ1種又は2種以上を併用することができ、硬化樹脂の性質の向上、例えば、耐熱性付与等を行うことが出来る。
これら他のエポキシ樹脂は、成分(A)のエポキシ樹脂と任意の割合で混合して使用することができる。例えば、(D)成分としてノボラック樹脂(硬化剤)が使用されているときにはこの他のエポキシ樹脂の添加量はゼロでも良いが、通常(D)成分として、エポキシ樹脂全体に対して、他のエポキシ樹脂を10〜95%(以下同じ)、好ましくは20〜90%、より好ましくは30〜85%、更に好ましくは40〜85%であり、成分(A)のエポキシ樹脂の含量は残部である。即ち成分(A)のエポキシ樹脂の含量はエポキシ樹脂全体に対して5〜90%、好ましくは10〜80%、より好ましくは15〜70%、更に好ましくは15〜60%である。
上記他のエポキシ樹脂を併用する場合、リードフレームとの接着性を考慮すると全エポキシ樹脂中に、式(1)の低分子量体(0、1、2核体)の合計含有割合が3%以上、好ましくは4%以上、より好ましくは7%以上含まれるのが好ましい。場合により該割合が10%以上、好ましくは15%以上となる割合で使用されてもよい。厳密な上限はないが、通常上限は70%以下、好ましくは50%以下、より好ましくは30%以下である。本発明において最も好適には20%以下であり、場合によっては12%以下である。また、この場合、使用する成分(A)としては、特に制限はないが、式(1)のビスフェノール型エポキシ樹脂中におけるn=0,1または2の低分子量体含量が、該ビスフェノール型エポキシ樹脂全体に対して、15%以上、より好ましくは18%以上で、50%以下、より好ましくは40%以下であるものを用いるのが好ましい。
本発明において用いられる硬化剤は、分子中に環状テルペン骨格とフェノール性水酸基を有する化合物であれば特に制限はない。具体的には、例えば日本特許2572293号に詳細に記載されているように、環状テルペン化合物とフェノール類とを反応させて、環状テルペン化合物1分子にフェノール類が約2分子の割合で付加させてなる環状テルペン骨格含有多価フェノール化合物を使用することができる。
ここで環状テルペン化合物としては、リモネン(下記式(1))、リモネンの光学異性体であるジペンテン、α型ピネン(下記式(2))、β型ピネン(下記式(3))、α型テルピネン(下記式(4))、β型テルピネン(下記式(5))、γ型テルピネン(下記式(6))、3,8型メタンジエン(下記式(7))、2,4型メタンジエン(下記式(8))、テルピノーレン(下記式(9))等の化合物が挙げられる。

環状テルペン化合物に付加させるフェノール類としては、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、o−tert−ブチルフェノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、2,5−ジエチルフェノール、2,6−ジエチルフェノール、2−メチル−6−tert−ブチルフェノール、ピロカテコール、レゾルシノール、p−ハイドロキノン、2−メチルレゾルシノール、4−メチルレゾルシノール、2,5−ジ−tert−ブチルp−ハイドロキノン、o−アリルフェノール、2,6−ジアリルフェノール、2−アリル−6−メチルフェノール、2−アリル−3−メチルフェノール、o−クロロフェノール、m−クロロフェノール、o−ブロモフェノール、m−ブロモフェノール、2−クロロ−3−メチルフェノール、2,6−ジクロロフェノール等が挙げられる。
更に好ましくはフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、2−メチル−6−tert−ブチルフェノール、レゾルシノール、p−ハイドロキノン、2−メチルレゾルシノール、4−メチルレゾルシノール、2,5−ジ−tert−ブチルp−ハイドロキノン、o−アリルフェノール、2,6−ジアリルフェノール、2−アリル−6−メチルフェノール、2−アリル−3−メチルフェノールであり、特に好ましくは、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、レゾルシノール、o−アリルフェノール、2,6−ジアリルフェノール、2−アリル−6−メチルフェノール、2−アリル−3−メチルフェノールである。
反応は、塩酸、硫酸、リン酸、ポリリン酸、三フッ化ホウ素等の酸触媒の存在下で行い、通常は、芳香族炭化水素類、アルコール類、エーテル類等の溶媒が使用される。
こうして得られた環状テルペン骨格含有多価フェノール化合物は、リモネンとフェノールを反応させた化合物を例にとると下記式(I)と式(II)の化合物の混合物であると推定され、構造の特定は困難である。

また、更に得られた環状テルペン骨格含有多価フェノール化合物とアルデヒド類及びケトン類からなる群から選ばれる1種以上とを縮合反応させて高分子量化した化合物も硬化剤として使用することができる。ここで使用できるアルデヒド類又はケトン類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、アセトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
本発明において環状テルペン骨格含有多価フェノール化合物は、2官能型であるものが好ましい。
また、本発明で用いられる硬化剤(B)以外にも、物性の妨げにならない範囲内で、または本発明の硬化を向上させるために、他の硬化剤を組み合わせて用いることが出来る。他の硬化剤としては、フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤等が挙げられる。
フェノール系硬化剤としてはノボラック樹脂が好ましい。該ノボラック樹脂は(D)成分として、硬化剤(B)と共に使用することができる。前記他のエポキシ樹脂が併用されないときには硬化剤(B)と共に使用するが好ましい。該ノボラック樹脂としては例えば、各種フェノールを原料とするフェノールノボラック樹脂、キシリレン骨格含有フェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有フェノールノボラック樹脂、ビフェニル骨格含有フェノールノボラック樹脂、フルオレン骨格含有フェノールノボラック樹脂等が挙げられる。上記で使用される各種フェノールとしてはビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4,4’−ビフェニルフェノール、テトラメチルビスフェノールA、ジメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、ジメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、ジメチルビスフェノールS、テトラメチル−4,4’−ビフェノール、ジメチル−4,4’ビフェニルフェノール、1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−[4−(1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニル]プロパン、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリスヒドロキシフェニルメタン、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロガロール、ジイソプロピリデン、1,1−ジ−4−ヒドロキシフェニルフルオレン等のフルオレン骨格を有するフェノール類、フェノール化ポリブタジエン、フェノール、クレゾール類、エチルフェノール類、ブチルフェノール類、オクチルフェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ナフトール類等の各種フェノールが挙げられる。
このうち、着色、耐熱性の観点から、置換基としてC1−C3アルキル基またはヒドロキシ置換を有してもよいフェニル置換C1−C3アルキル基を有するフェノールノボラック樹脂が好ましく、具体的にはパラクレゾールノボラック樹脂、オルソクレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂等のノボラック樹脂が好ましい。
酸無水物系硬化剤の具体例としては、フタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコール無水トリメリット酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸無水物等の芳香族カルボン酸無水物、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の脂肪族カルボン酸の無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、ナジック酸無水物、ヘット酸無水物、ハイミック酸無水物等の脂環式カルボン酸無水物が挙げられる。
これら他の硬化剤の使用量は、全硬化剤に対して、0〜70%程度、好ましくは0〜50%程度、より好ましくは0〜35%、更に好ましくは0〜25%であり、残部が(B)成分である。全硬化剤に対して、(B)成分の含有割合は、通常30%以上、好ましくは50%以上、特に好ましくは75%以上である。
これらの硬化剤のエポキシ樹脂に対する使用割合はエポキシ当量1に対し0.5〜1.3当量の範囲であり、好ましくは0.8〜1.2当量の範囲であり、更に好ましくは0.9〜1.1当量の範囲である。
本発明で用いられる成分(C)の硬化促進剤としては、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6(2’−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−ウンデシルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−エチル,4−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸の2:3付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−3,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−ヒドロキシメチル−5−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニル−3,5−ジシアノエトキシメチルイミダゾールの各種イミダゾール類、及び、それらイミダゾール類とフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、マレイン酸、蓚酸等の多価カルボン酸との塩類,ジシアンジアミド等のアミド類、1,8−ジアザ−ビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7等のジアザ化合物及びそれらのフェノール類、前記多価カルボン酸類、又はホスフィン酸類との塩類、テトラブチルアンモニュウムブロマイド、セチルトリメチルアンモニュウムブロマイド、トリオクチルメチルアンモニュウムブロマイド等のアンモニュウム塩、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート等のホスフィン類、2,4,6−トリスアミノメチルフェノール等のフェノール類,アミンアダクト、及びこれら硬化剤をマイクロカプセルにしたマイクロカプセル型硬化促進剤等が挙げられる。これら硬化促進剤の種類と量は、例えば透明性、硬化速度、作業条件といった得られる透明樹脂組成物に要求される特性によって適宜選択される。一般的にはホスフィン類が好ましく、特にトリフェニルホスフィンが好ましい。これらの硬化促進剤はエポキシ樹脂全量に対して、0.2〜10%程度、好ましくは1〜5%程度使用される。
本発明のエポキシ樹脂組成物には、目的に応じ着色剤、カップリング剤、レベリング剤、滑剤等を適宜添加することが出来る。
着色剤としては特に制限はなく、フタロシアニン、アゾ、ジスアゾ、キナクリドン、アントラキノン、フラバントロン、ペリノン、ペリレン、ジオキサジン、縮合アゾ、アゾメチン系の各種有機系色素、酸化チタン、硫酸鉛、クロムエロー、ジンクエロー、クロムバーミリオン、弁殻、コバルト紫、紺青、群青、カーボンブラック、クロムグリーン、酸化クロム、コバルトグリーン等の無機顔料が挙げられる。
レベリング剤としてはエチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアクリレート類からなる分子量4000〜12000のオリゴマー類、エポキシ化大豆脂肪酸、エポキシ化アビエチルアルコール、水添ひまし油、チタン系カップリング剤等が挙げられる。
滑剤としてはパラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス等の炭化水素系滑剤、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸等の高級脂肪酸系滑剤、ステアリルアミド、パルミチルアミド、オレイルアミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド等の高級脂肪酸アミド系滑剤、硬化ひまし油、ブチルステアレート、エチレングリコールモノステアレート、ペンタエリスリトール(モノ−,ジ−,トリ−,又はテトラ−)ステアレート等の高級脂肪酸エステル系滑剤、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリグリセロール等のアルコール系滑剤、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リシノール酸、ナフテン酸等のマグネシュウム、カルシュウム、カドニュウム、バリュウム、亜鉛、鉛等の金属塩である金属石鹸類、カルナウバロウ、カンデリラロウ、密ロウ、モンタンロウ等の天然ワックス類が挙げられる。
カップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−(2−(ビニルベンジルアミノ)エチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のシラン系カップリング剤剤、イソプロピル(N−エチルアミノエチルアミノ)チタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、チタニュウムジ(ジオクチルピロフォスフェート)オキシアセテート、テトライソプロピルジ(ジオクチルフォスファイト)チタネート、ネオアルコキシトリ(p−N−(β−アミノエチル)アミノフェニル)チタネート等のチタン系カップリング剤、Zr−アセチルアセトネート、Zr−メタクリレート、Zr−プロピオネート、ネオアルコキシジルコネート、ネオアルコキシトリスネオデカノイルジルコネート、ネオアルコキシトリス(ドデカノイル)ベンゼンスルフォニルジルコネート、ネオアルコキシトリス(エチレンジアミノエチル)ジルコネート、ネオアルコキシトリス(m−アミノフェニル)ジルコネート、アンモニュウムジルコニュウムカーボネート、Al−アセチルアセトネート、Al−メタクリレート、Al−プロピオネート等のジルコニュウム、或いはアルミニュウム系カップリング剤が挙げられるが好ましくはシリコン系カップリング剤である。カップリング剤を使用する事により耐湿信頼性が優れ、吸湿後の接着強度の低下が少ない硬化物が得られる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、(A)成分の式(1)のエポキシ樹脂、(B)成分の硬化剤(必要により他の硬化剤を併用しても良い)、(C)成分の硬化促進剤及び(D)成分としての(A)成分以外の他のエポキシ樹脂またはノボラック樹脂硬化剤のいずれか一方若しくは両者、更に必要によりその他の添加剤、例えばカップリング剤、着色剤及びレベリング剤等の配合成分を適当に均一に混合し、必要に応じて適当に成形することにより調製することができる。例えば配合成分が固形の場合はヘンシェルミキサー、ナウターミキサー等の配合機を用いて混合後、ニーダー、エクストルーダー、加熱ロールを用いて80〜120℃で混練し冷却後、粉砕して粉末状として本発明のエポキシ樹脂組成物が得られる。一方、配合成分が液状の場合はプラネタリーミキサー等を用いて均一に混合して本発明のエポキシ樹脂組成物とすることができる。
該樹脂組成物は作業性に優れ、封止光半導体の生産性に優れ、該組成物の硬化物で封止された光半導体は耐半田リフロー性においても優れている。
耐半田リフロー性に関して以下に具体的に説明する。
耐半田リフロー性は通常樹脂封止光半導体素子における硬化樹脂のリードフレームからの剥離面積率で評価される。本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて得られた樹脂封止光半導体素子を、半田浴温度260℃、30秒間浸漬したときの該剥離率は10%以下、好ましくは5%以下である。該素子を30℃×70%RHの条件下に48時間放置後(吸湿後)の該剥離率は60%以下である。好ましい本発明のエポキシ樹脂組成物を用いた場合には、半田浴温度270℃、30秒間浸漬の条件下においても、該剥離率は上記と同じであり、吸湿後の該剥離率も60%以下である。
また、好ましい該樹脂組成物においては、該組成物の硬化物のガラス転位点(Tg)(TMA(サーモメカニカルアナライザー)にて、2℃/minの昇温条件にて測定)が105℃以上、好ましくは110℃以上であり、樹脂封止光半導体に対するヒートサイクル試験に充分合格する。
上記のようにして得られた本発明のエポキシ樹脂組成物用いて、封止半導体素子を製造するには半導体素子の半導体面を該樹脂組成物で覆った後、硬化して半導体面を気密封止すればよい。より具体的には本発明のエポキシ樹脂組成物が固形の場合は、低圧トランスファー成型機等の成型機に、本発明のエポキシ樹脂組成物を半導体素子の半導体面を完全に覆うように充填後、100〜200℃で一次硬化させ、成型品を得る。該成型品を成型機における金型から取り出し、100〜200℃でオーブン等で再度加熱し、完全硬化させ、本発明の封止光半導体素子を得る。又液状の場合は光半導体素子の入った型に、本発明のエポキシ樹脂組成物を注入し、光半導体面が完全に該組成物で覆われるように注型、或いはディスペンス後、100〜200℃に加熱して硬化させ本発明の封止光半導体素子とする。
本発明の封止光半導体素子としては前記の本発明のエポキシ樹脂組成物で封止された受光素子や発光素子等が含まれる。また、該素子を組み込んだ半導体部品としては、例えばDIP(デュアルインラインパッケージ)、QFP(クワッドフラットパッケージ)、BGA(ボールグリッドアレイ)、CSP(チップサイズパッケージ)、SOP(スモールアウトラインパッケージ)、TSOP(シンスモールアウトラインパッケージ)、TQFP(シンクワッドフラットパッケージ)等が挙げられる。
【実施例】
実施例によって、本発明を更に具体的に説明するが、本発明がこれらの実施例のみの限定されるものではない。実施例、比較例において「部」は重量部を意味する。
本発明で用いた原料は下記のものである。
エポキシ樹脂1(EPOXY 1)1:YD−012(東都化成(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、n=0,1,2核体の合計含有率24%:GPC面積%)
エポキシ樹脂2(EPOXY 2) :YD−904(東都化成(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、n=0,1,2核体の合計含有率13%:GPC面積%)
エポキシ樹脂3(EPOXY 3) :NC−3000(日本化薬(株)製、ビフェニル骨格含有ノボラック型エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂4(EPOXY 4) :EOCN−104S(日本化薬(株)製、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂)
硬化剤1:テルペン骨格含有2官能フェノール硬化剤(フェノール当量158g/eq)(リモネンにフェノールを付加させたもの)
硬化剤2:テルペン骨格含有ノボラック型多官能フェノール硬化剤(フェノール当量174g/eq)(リモネンにノボラック型多官能フェノールを付加させたもの)
硬化剤3:ビスフェノールノボラック硬化剤(フェノール当量118g/eq)(ビスフェノールAノボラック樹脂)
促進剤:トリフェニルホスフィン(TPP)
【実施例】
【実施例A】
後記表1に示すエポキシ樹脂(EPOXY 1、EPOXY 2、EPOXY 3、EPOXY 4)、硬化剤(硬化剤1、2、3)及び硬化促進剤(TPP)を表1に示す配合割合で配合機に入れ、均一になるまで混合し、得られた混合物を2軸混練機にて樹脂温度60℃〜100℃で溶融混練を行う。得られた混練物を一旦冷却し、粉砕機にて粉末化し、タブレットマシーンにて、錠剤化して本発明のエポキシ樹脂組成物を得た。
実施例1〜3、比較例1〜3
下記表1に示した組成物(数値は「部」)40gを、12PIN SOP銅製リードフレームAg無光沢メッキした模擬リードフレーム(縦8cm、横2cm)を装填した金型に、低圧トランスファーを用いて充填し、金型温度150℃、脱型時間5分で成形した。得られた成形物を、ポストキュア150℃×1時間でエポキシ樹脂組成物の硬化を完了させ、本発明樹脂組成物の硬化物で封止された模擬素子を作成した。
これらの素子を用いて、(a)吸湿無し、(b)30℃×70%RHの条件下48時間放置後の各条件での元、所定温度の半田浴に30秒浸漬し樹脂とリードフレームの剥離面積率を光学顕微鏡により観察した。結果を表1に示す。

注)表1における耐半田性の評価は、封止光半導体素子数n=5でのリードフレームからの樹脂の平均剥離面積率につき下記の基準で評価した結果を示した。
0〜30%剥離:○
30〜60%剥離:△
60%〜90%剥離:×
90%以上:××
なお、樹脂の平均剥離面積率は次のようにして算出した。
半田浴で浸漬処理したリードフレームを写真に撮り、その写真から剥離部分を判定し、その面積を算出し、そのリードフレーム全面積に対する割合を%で表示した。

HC向け耐熱性の試験は下記の通りである。
試験方法
低圧トランスファを用いて、光半導体素子封止用金型に本発明のエポキシ樹脂組成物を充填し、金型温度150℃、脱型時間5分で成形した後、ポストキュア150℃×1時間の条件で硬化を完了し、得られた硬化物を、高さ10mm底面積25mmの大きさに切断した。TMA(サーモメカニカルアナライザー)にて、2℃/minの昇温条件にてTgを測定した。
【産業上の利用可能性】
本発明により表1及び2の試験結果から明らかなように、該組成物は作業性に優れ、封止光半導体の生産性に優れ、該組成物の硬化物で封止された光半導体は吸湿後の耐半田リフロー性、HC向け耐熱性においても優れている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記式(1)

(式中、Rは水素原子、C1〜C8のアルキル基、ハロゲン原子を示し、互いに同一又は異なってもよい。Rは水素原子、C1〜C5のアルキル基、ハロゲン置換(C1〜C5)アルキル基またはフェニル基を示し、互いに同一又は異なってもよい。nは整数を示す。)
で表されるビスフェノール型エポキシ樹脂であって、該樹脂全体に対して、n=0、1または2である低分子量体の合計含有割合が10重量%以上であるビスフェノール型エポキシ樹脂、
(B)環状テルペン化合物1分子にフェノール類を2分子付加させてなるテルペン骨格含有多価フェノール硬化剤、
(C)硬化促進剤、
(D)上記成分(A)以外のエポキシ樹脂及び硬化剤としてのノボラック樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種の樹脂
を含む光半導体封止用エポキシ樹脂。
【請求項2】
成分(A)以外のエポキシ樹脂を含み、全エポキシ樹脂中の前記式(1)のnが0、1または2である低分子量体の合計含有割合が、10重量%以上である請求の範囲第1項に記載の光半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
成分(A)のエポキシ樹脂における上記低分子量体の合計含有割合が成分(A)の全体に対して15〜50重量%である請求の範囲第1項に記載の光半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
成分(D)として成分(A)以外のエポキシ樹脂を、エポキシ樹脂全体に対して、20〜90重量%、成分(A)のエポキシ樹脂を10〜80%含有する請求の範囲第1項または第3項に記載の光半導体用エポキシ樹脂。
【請求項5】
成分(A)以外のエポキシ樹脂がビフェニル骨格含有フェノールノボラック樹脂である請求の範囲第4項に記載の光半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
成分(A)がビスフェノールA型及びまたはビスフェノールF型エポキシ樹脂である請求の範囲第1項に記載の光半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
成分(B)のテルペン骨格含有多価フェノール硬化剤が2官能型である請求の範囲第1項に記載の光半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
上記請求の範囲第1項〜第7項のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物で封止された光半導体素子。
【請求項9】
上記請求の範囲第1項〜第7項のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物で封止することを特徴とする封止光半導体素子の製造法。
【請求項10】
樹脂組成物の硬化物のガラス転位点が105℃以上であり、該硬化物で封止された光半導体素子の吸湿後の硬化樹脂の剥離面積率が60%以下となる上記請求の範囲第1項〜第7項のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物。

【国際公開番号】WO2004/031257
【国際公開日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【発行日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−541280(P2004−541280)
【国際出願番号】PCT/JP2003/012677
【国際出願日】平成15年10月2日(2003.10.2)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】