説明

光半導体素子搭載用基板及びその製造方法、並びに光半導体装置

【課題】成形の工程の簡略化を可能にする熱硬化性樹脂組成物を用いた光半導体素子搭載用基板及びその製造方法、並びに、光半導体装置を提供すること。
【解決手段】底面及び内周側面から構成される凹部を有するとともに該内周側面を形成する樹脂成形品を有し、該底面が光半導体素子搭載領域である光半導体素子搭載用基板であって、前記樹脂成形品は、エポキシ樹脂及び硬化剤を含有する熱硬化性樹脂組成物から形成することができ、当該熱硬化性樹脂組成物を金型温度180℃、硬化時間90秒の条件でトランスファー成形して得られる硬化物の硬化度が、150℃、3時間の加熱によって更にアフターキュアされた後の当該硬化物と実質的に同等である、光半導体素子搭載用基板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂組成物に関する。本発明は更に、熱硬化性樹脂組成物を用いた光半導体素子及びその製造方法、並びに光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エポキシ樹脂は、優れた電気絶縁性、機械的強度、接着性、耐水性等の特徴を活かして、電気絶縁材料、半導体装置材料、光半導体封止材料、接着材料及び塗料材料などの様々な用途で用いられている。
【0003】
一般に、光半導体装置は、LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)などの光半導体素子と蛍光体を組み合わせて構成される。光半導体装置は高エネルギー効率、長寿命などの利点を有することから、近年、屋外用ディスプレイ、携帯液晶バックライト、車載用途などにおいてその需要が拡大している。光半導体装置に用いられる光半導体素子搭載用基板は、射出成形法によって製造されるのが主流である。例えば、熱可塑性樹脂と二酸化チタン等の白色顔料を複合化した熱可塑性樹脂組成物を用いて、射出成形法の特徴を活かし安価ながら生産性に優れた光半導体素子搭載用基板が提供されている。
【0004】
また、特許文献1では、エポキシ樹脂及び酸無水物系硬化剤を含む熱硬化性樹脂を用いた光半導体素子搭載用基板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−140207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の熱硬化性樹脂組成物は、射出成形や押出成形法に用いられる熱可塑性樹脂成形材料と比較して、耐久性は優れるものの、必要とされる工程数が多く生産性の点では不利なものであった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、成形の工程の簡略化を可能にする熱硬化性樹脂組成物を提供することにある。また、本発明は当該樹脂組成物を用いた光半導体装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、エポキシ樹脂、硬化剤及び硬化触媒を含有する熱硬化性樹脂組成物に関する。本発明に係る熱硬化性樹脂組成物を金型温度180℃、硬化時間90秒の条件でトランスファー成形して得られる硬化物の硬化度は、150℃、3時間の加熱によって更にアフターキュアされた後の当該硬化物と実質的に同等である。
【0009】
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物を金型温度180℃、硬化時間90秒の条件でトランスファー成形して得られる硬化物の、ガラス転移温度、40℃における貯蔵弾性率及びガラス領域における線膨張係数のうち少なくともいずれか一つは、150℃、3時間の加熱によって更にアフターキュアされた後の当該硬化物に対して−5%〜+5%の範囲内にあってもよい。
【0010】
上記本発明に係る熱硬化性樹脂組成物によれば、アフターキュアの前であっても、アフターキュアの後と実質的に同等の硬化度、ガラス転移温度、貯蔵弾性率又は線膨張係数が達成される。したがって、アフターキュアの工程を行うことなく、熱硬化性樹脂組成物の成形品を製造することが可能になる。その結果、熱硬化性樹脂組成物の成形において、工 程を大幅に簡略化できる。
【0011】
上記のような特徴を有する熱硬化性樹脂組成物は、例えば、下記一般式(1)で表される多価カルボン酸縮合体を含む硬化剤を用いることによって得られる。更に、係る硬化剤を用いることにより、熱硬化性樹脂組成物から透明で着色の少ない硬化物を得ることができる。
【0012】
【化1】

【0013】
式(1)中、Rxは脂肪族炭化水素環を有し該脂肪族炭化水素環がハロゲン原子又は直鎖状若しくは分岐状の炭化水素基で置換されていてもよい2価の基を示し、同一分子中の複数のRxは同一でも異なっていてもよく、Ryは酸無水物基又はカルボン酸エステル基で置換されていてもよい1価の炭化水素基を示し、同一分子中の2個のRyは同一でも異なっていてもよく、n1は1以上の整数を示す。
【0014】
Ryは、下記化学式(20)で表される1価の基、又は、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロへプタン、シクロオクタン、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、アダマンタン、水素化ナフタレン及び水素化ビフェニルから選ばれる環式脂肪族炭化水素から水素原子を除くことにより誘導される1価の基であることが好ましい。
【0015】
【化2】

【0016】
上記一般式(1)で表される多価カルボン酸縮合体は、下記一般式(1a)で表される化合物であることが特に好ましい。式(1a)中、mは0〜4の整数を示し、Rzはハロゲン原子又は直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4の炭化水素基を示し、mが2〜4であるとき複数のRzは同一でも異なっていてもよく、互いに連結して環を形成していてもよく、n1は1以上の整数を示す。
【化3】

【0017】
硬化剤は、下記一般式(21)で表されるトリカルボン酸化合物と下記一般式(22)で表されるモノカルボン酸化合物とを分子間で縮合させる方法により得ることのできる多価カルボン酸縮合体を含んでいてもよい。係る硬化剤を用いることによっても、アフターキュアの前であっても、アフターキュアの後と実質的に同等の硬化度、ガラス転移温度、貯蔵弾性率又は線膨張係数を達成することができる。
【化4】

【0018】
式(21)及び(22)中、Rは脂肪族炭化水素環、非芳香族複素環又はシロキサン環を有する3価の基を示し、Rは酸無水物基又はカルボン酸エステル基で置換されていてもよい1価の炭化水素基を示し、同一分子中の2個のRは同一でも異なっていてもよい。
【0019】
上記トリカルボン酸化合物が下記一般式(21a)で表されるイソシアヌル酸誘導体であり、上記モノカルボン酸化合物が下記化学式(22a)で表される水素化トリメリット酸無水物であってもよい。式(21a)中、Rは飽和炭化水素基又は不飽和炭化水素基を示す。
【0020】
【化5】

【0021】
硬化剤は、下記化学式(3)で表される多価カルボン酸縮合体を更に含んでいてもよい。
【0022】
【化6】

【0023】
硬化触媒の含有量は、エポキシ樹脂及び硬化剤の合計量100重量部に対して、1〜5重量部の範囲内にあることが好ましい。
【0024】
別の側面において、本発明は、底面及び内周側面から構成される凹部を有するとともに該内周側面を形成する樹脂成形品を有し、該底面が光半導体素子搭載領域である光半導体素子搭載用基板に関する。前記樹脂成形品は、上記本発明に係る熱硬化性樹脂組成物から形成することのできるものである。
【0025】
本発明に係る光半導体素子搭載用基板は、簡略化された工程によって高い生産性で製造されることが可能である。また、本発明に係る光半導体素子搭載用基板は耐久性の点でも十分に優れる。
【0026】
更に別の側面において、本発明は、底面及び内周側面から構成される凹部を有するとともに該内周側面を形成する樹脂成形品を有し、該底面が光半導体素子搭載領域である光半導体素子搭載用基板の製造方法に関する。本発明に係る製造方法は、上記本発明に係る熱硬化性樹脂組成物をトランスファー成形することにより上記樹脂成形品を形成する工程を備える。
【0027】
本発明に係る製造方法によれば、耐久性に優れる光半導体素子搭載用基板を高い生産性で製造することが可能である。
【0028】
更に別の側面において、本発明は光半導体装置に関する。本発明に係る光半導体装置は、上記本発明に係る光半導体素子搭載用基板と、当該光半導体素子搭載用基板の光半導体素子搭載領域に搭載された光半導体素子と、光半導体素子を当該光半導体素子搭載用基板の凹部内で覆う封止樹脂層とを備える。
【0029】
本発明に係る光半導体装置は、簡略化された工程によって高い生産性で製造されることが可能である。また、本発明に係る光半導体装置は耐久性の点でも十分に優れる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、成形の工程の簡略化を可能にする熱硬化性樹脂組成物が提供される。本発明に係る熱硬化性樹脂組成物の成形に際しては、アフターキュア工程を省略することが可能であり、また、アフターキュアのために必要とされる設備が不要となる。
【0031】
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物は、耐熱性及び耐光性の点でも優れており、光半導体装置搭載用基板を構成する光反射部材(リフレクター)として用いられる樹脂成形品を形成するための熱硬化性樹脂組成物として特に有用なものである。特に近年、LEDデバイスの高輝度化が進み、素子の発熱量増大によるジャンクション温度の上昇、更には直接的な光エネルギーの増大による材料の劣化の問題が顕在化していることから、耐熱性及び耐光性に優れることが重要である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】光半導体装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】光半導体装置の一実施形態を示す断面図である。
【図4】光半導体装置の一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0034】
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂、硬化剤及び硬化触媒を含有する。本実施形態に係る本発明の熱硬化性樹脂組成物は、光半導体装置等が有する光反射部材としての樹脂成形品を形成するために用いる光反射用熱硬化性樹脂組成物として特に好適に用いられる。
【0035】
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物を金型温度180℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間90秒の条件でトランスファー成形して得られる硬化物を、150℃、3時間の加熱によって更にアフターキュアしたとき、アフターキュアされる前の硬化物の硬化度は、アフターキュアされた後の硬化物の硬化度と実質的に同等である。言い換えると、アフターキュアされる前の硬化物は、アフターキュアされた後の硬化物と実質的に同等のガラス転移温度、40℃における貯蔵弾性率又はガラス領域における線膨張係数を有する。より具体的には、トランスファー成形して得られる硬化物の、ガラス転移温度、40℃における貯蔵弾性率及びガラス領域における線膨張係数のうち少なくともいずれか一つは、150℃、3時間の加熱によって更にアフターキュアされた後の当該硬化物に対して±5%以内にある。
【0036】
ガラス転移温度等の上記物性値の変化が±5%よりも大きいと、十分に硬化した成形品を得るためにはアフターキュアが必要とされることから、製造工数及び時間の点で不利となる。硬化反応が十分に進行しないままその後の製造工程に進むと、例えば光半導体素子を接着する工程や、光半導体装置をプリント基板等にはんだ、高温リフローなどにより実装する工程のような、200℃以上の加熱が必要とされる高温条件下の工程において、パッケージ又はリードフレームの剥離及びクラック、または、熱硬化性樹脂自体の熱分解による劣化が生じるおそれがある。そのため、光半導体装置の製造が困難となる場合がある。
【0037】
貯蔵弾性率は、例えば、アフターキュア前後それぞれの硬化物(樹脂成形品)から切り出された試験片の動的粘弾性をトーションモード、昇温速度5℃/minの条件で測定し、測定された動的粘弾性から所定の温度(例えば40℃)における貯蔵弾性率を読み取る方法によって測定することができる。測定装置としては、例えばTAインスツルメンツ社(旧レオメトリック社)製ARES2KSTDが用いられる。
【0038】
ガラス転移温度及び線膨張係数は、例えば、アフターキュア前後それぞれの硬化物から切り出された、19mm×3mm×3mmのサイズを有する試験片の線膨張曲線を、昇温速度5℃/minの条件で測定する方法によって測定される。ガラス転移温度は、線膨張係数の屈曲点に基づいて決定される。更に、線膨張曲線から、ガラス転移温度以下の温度領域(ガラス領域)における所定の温度における線膨張係数が読み取られる。通常、40℃における線膨張係数は、ガラス領域における線膨張係数である。線膨張曲線の測定は、例えば、セイコーインスツルメンツ社製TMASS6000を用いて行われる。
【0039】
熱硬化性樹脂組成物を、熱硬化をともなう成形方法によって成形して、樹脂成形品を製造することができる。硬化条件は特に限定されない。成形方法としては、例えば、トランスファー成形、圧縮成形及び注型成形のような方法がある。半導体封止樹脂、光半導体封止樹脂、光半導体素子搭載用基板用の樹脂の成形は、例えば、金型温度180℃、成型圧力6.9MPa、硬化時間90秒のトランスファー成形によって行われる。この程度の短時間の硬化であっても、本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物によれば十分な硬化度を達成することが可能であることから、従来必要とされたアフターキュア工程を省略できる。
【0040】
熱硬化性樹脂組成物は、1種又は2種以上のエポキシ樹脂を含有する。エポキシ樹脂としては、例えば電子部品封止用エポキシ樹脂成形材料として一般に使用されているものを用いることができる。エポキシ樹脂の具体例としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂及びオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂のような、フェノール類とアルデヒド類のノボラック樹脂をエポキシ化したもの、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS及びアルキル置換ビスフェノール等のジグリシジルエーテル、ジアミノジフェニルメタン及びイソシアヌル酸等のポリアミンとエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂及び脂環族エポキシ樹脂がある。これらのうち比較的着色のないものが好ましい。係る観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジグリシジルイソシアヌレート、トリグリシジルイソシアヌレート、及び、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸又は1,4−シクロヘキサンジカルボン酸から誘導されるジカルボン酸ジグリシジルエステルから選ばれる少なくとも1種のエポキシ樹脂が好ましい。同様の理由から、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、ナジック酸及びメチルナジック酸等のジカルボン酸のジグリシジルエステルも好ましい。核水素化トリメリット酸又は核水素化ピロメリット酸のグリシジルエステルも好ましい。更に、シラン化合物を有機溶媒、有機塩基および水の存在下に加熱して、加水分解・縮合させることにより製造される、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンも好ましい。グリシジルメタクリレート単量体と、これと重合可能な単量体との共重合体である、下記式(7)で示されるエポキシ樹脂を用いることもできる。
【0041】
【化7】

【0042】
式(7)中、Rはグリシジル基を示し、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜6の飽和又は不飽和の1価の炭化水素基を示し、Rは1価の飽和炭化水素基を示す。a及びbは正の整数を示す。
【0043】
熱硬化性樹脂組成物は、上述の硬化特性を達成するために、硬化剤が、下記一般式(1)で表される多価カルボン酸縮合体で表される多価カルボン酸縮合体を含むことが好ましい。
【0044】
【化8】

【0045】
式(1)中のRxは飽和炭化水素環を有する2価の飽和炭化水素基である。Rxが飽和炭化水素環を有する飽和炭化水素基であることにより、当該多価カルボン酸縮合体はエポキシ樹脂の透明な硬化物を形成させることが可能である。同一分子中の複数のRxは同一でも異なっていてもよい。Rxの飽和炭化水素環はハロゲン原子又は直鎖状若しくは分岐状の炭化水素基で置換されていてもよい。飽和炭化水素環を置換する炭化水素基は好ましくは飽和炭化水素基である。飽和炭化水素環は単環でもよいし、2以上の環から構成される縮合環、ポリシクロ環、スピロ環又は環集合であってもよい。Rxの炭素数は好ましくは3〜15である。
【0046】
Rxは式(1)の重合体を得るために用いられるモノマーとしての多価カルボン酸からカルボキシル基を除いて誘導される基である。モノマーとしての多価カルボン酸は、重縮合の反応温度よりも高い沸点を有することが好ましい。
【0047】
より具体的には、Rxはシクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロへプタン、シクロオクタン、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、アダマンタン、水素化ヒドロナフタレン及び水素化ビフェニルから選ばれる環式脂肪族炭化水素から水素原子を除くことにより誘導される2価の基であることが好ましい。Rxがこれらの基であることにより、透明で熱による着色の少ない硬化物が得られるという効果がより一層顕著に奏される。これら環式飽和炭化水素は、ハロゲン原子又は直鎖状若しくは分岐状の炭化水素基( 好ましくは飽和炭化水素基)で置換されていてもよい。
【0048】
特に、Rxは1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸又はこれらの誘導体からカルボキシル基を除いて誘導される基であることが好ましい。すなわち、Rxは下記一般式(10)で表される2価の基であることが好ましい。式(10)中、mは0〜4の整数を示す。Rzはハロゲン原子又は直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4の炭化水素基を示す。mが2〜4であるとき、複数のRzは同一でも異なっていてもよく、互いに連結して環を形成していてもよい。
【0049】
【化9】

【0050】
式(1)中の末端基であるRyは酸無水物基又はカルボン酸エステル基で置換されていてもよい1価の炭化水素基を示す。2個のRyは同一でも異なっていてもよい。Ryは、直鎖状、分岐状若しくは環状の炭素数2〜15の脂肪族若しくは芳香族モノカルボン酸(安息香酸等)からカルボキシル基を除くことにより誘導される1価の基であってもよい。Ryによって末端のカルボキシル基が封鎖され、これにより硬化剤を合成する際のカルボン酸基濃度が低減する。その結果、式(1)の多価カルボン酸縮合体の分子量の分散を抑えることができる。
【0051】
Ryは、好ましくは、下記化学式(20)で表される1価の基、又は、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロへプタン、シクロオクタン、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、アダマンタン、水素化ナフタレン及び水素化ビフェニルから選ばれる環式脂肪族炭化水素から水素原子を除くことにより誘導される1価の基である。Ryがこれらの基であることにより、透明で熱による着色の少ない硬化物が得られるという効果がより一層顕著に奏される。
【0052】
【化10】

【0053】
Rxが上記一般式(10)で表される2価の基であり、同時に、Ryが上記化学式(20)で表される1価の基であってもよい。すなわち、式(1)の多価カルボン酸縮合体は、下記一般式(1a)で表される化合物であってもよい。
【0054】
【化11】

【0055】
式(1)及び(1a)のn1は1以上の整数を示し、好ましくは1〜200の整数である。
【0056】
式(1)の多価カルボン酸縮合体は、例えば、下記一般式(5)で表される多価カルボン酸及び下記一般式(6)で表されるモノカルボン酸を含む反応液中で、それぞれが有するカルボキシル基を分子間で脱水縮合させる工程を備える方法によって得ることができる。
【0057】
【化12】

【0058】
脱水縮合の反応液は、例えば、多価カルボン酸及びモノカルボン酸と、これらを溶解する無水酢酸又は無水プロピオン酸、塩化アセチル、脂肪族酸塩化物及び有機塩基(トリメチルアミン等)から選ばれる脱水剤とを含有する。例えば、反応液を5〜30分にわたって窒素雰囲気下で還流した後、反応液の温度を180℃まで上昇させて窒素気流下の開放系で、生成する酢酸及び水を留去することにより重縮合を進行させる。揮発成分の発生が認められなくなった時点で、反応容器内を減圧しながら180℃の温度で3時間にわたって、より好ましくは1時間にわたって溶融状態で重縮合を進行させる。生成した多価カルボン酸縮合体を、無水酢酸等の非プロトン性溶媒を用いた再結晶や再沈殿法によって精製してもよい。
【0059】
硬化剤は、下記一般式(21)で表されるトリカルボン酸化合物と下記一般式(22)で表されるモノカルボン酸化合物とを分子間で縮合させる方法により得ることのできる多価カルボン酸縮合体(以下場合により「トリカルボン酸縮合体」という。)を含んでいてもよい。このトリカルボン酸縮合体は単独で用いることもできるし、式(1)の多価カルボン酸縮合体と併用することもできる。
【0060】
【化13】

【0061】
上記トリカルボン酸縮合体は、下記一般式(2)で表される化合物を主成分として含む。
【0062】
【化14】

【0063】
式(21)、(22)及び(2)において、Rは脂肪族炭化水素環、非芳香族複素環又はシロキサン環を有する3価の基を示し、Rは酸無水物基又はカルボン酸エステル基で置換されていてもよい1価の炭化水素基を示す。
【0064】
は、シクロヘキサン、シクロへプタン、シクロオクタン、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、アダマンタン、水素化ナフタレン、水素化ビフェニル及び環状シロキサンから選ばれる脂肪族炭化水素環、イソシアヌル環等の非芳香族複素環、又はシロキサン環を有する。これにより、透明な硬化物を得ることが可能となる。
【0065】
式(22)のモノカルボン酸化合物は縮合反応の温度よりも高い沸点を有することが好ましい。式(22)のモノカルボン酸化合物は、例えば、水素化トリメリット酸無水物、又は、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロへプタン、シクロオクタン、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、アダマンタン、水素化ナフタレン及び水素化ビフェニルから誘導されるモノカルボン酸、及びこれらの誘導体から選ばれる。Rはこれらモノカルボン酸化合物からカルボキシル基を除いて誘導される基である。これらモノカルボン酸化合物の中でも、安価であるという観点から、シクロヘキサン及びその誘導体にカルボキシル基が結合したモノカルボン酸が望ましい。
【0066】
式(21)のトリカルボン酸化合物は、下記一般式(21a)で表されるイソシアヌル酸誘導体であることが好ましい。また、式(22)のモノカルボン酸化合物は、下記化学式(22a)で表される水素化トリメリット酸無水物であることが好ましい。好ましくは、トリカルボン酸縮合物は下記一般式(2a)で表される化合物を含む。
【0067】
【化15】

【0068】
【化16】

【0069】
式(21a)及び(2a)中、Rは飽和炭化水素基又は不飽和炭化水素基を示す。Rは直鎖状、分岐状、脂環式若しくは複素環式の炭素数2〜15の飽和炭化水素基若しくは不飽和炭化水素基であることが好ましい。
【0070】
式(21)のトリカルボン酸化合物と式(22)のモノカルボン酸化合物とは、トリカルボン酸1当量に対して、モノカルボン酸を3当量の比率で反応させることが好ましい。
【0071】
硬化剤は、下記化学式(3)で表される多価カルボン酸縮合体を更に含んでいてもよい。式(3)の多価カルボン酸縮合体は、水素化トリメリット酸無水物2分子から誘導される。式(3)の化合物は、式(1)の多価カルボン酸縮合物又は上記トリカルボン酸縮合体を製造する際に副生成物として生成することがある。
【0072】
【化17】

【0073】
式(1)の多価カルボン酸縮合体及び上記トリカルボン酸縮合体の数平均分子量Mnは200〜20000であることが好ましい。数平均分子量Mnが200よりも小さいと、熱硬化性樹脂組成物をトランスファー成形したときの樹脂汚れの発生が多くなる傾向がある。数平均分子量Mnが20000よりも大きいと、多価カルボン酸縮合物のエポキシ樹脂との相溶性が低下する傾向、及び、熱硬化性脂組成物のトランスファー成形時の流動性が低下する傾向がある。
【0074】
多価カルボン酸縮合体の数平均分子量Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により、標準ポリスチレンによる検量線に基づいて測定される換算値である。GPCは、例えば、ポンプ(株式会社日立製作所製L−6200型)、カラム(TSKgel−G5000HXLおよびTSKgel−G2000HXL、いずれも東ソー株式会社製商品名)及び検出器(株式会社日立製作所製L−3300RI型)を用い、テトラヒドロフランを溶離液として温度30℃、流量1.0ml/minの条件で測定される。
【0075】
式(1)の多価カルボン酸縮合体及び上記トリカルボン酸縮合体の、ICIコーンプレート型粘度計によって測定される粘度は、100〜150℃の範囲で100〜30000 mPa・sであることが好ましい。この粘度が100mPa・sよりも小さいと、熱硬化性樹脂組成物をトランスファー成形するときの樹脂汚れの発生が多くなる傾向がある。また、粘度が30000mPa・sよりも大きいと、熱硬化性樹脂組成物のトランスファー成形時の金型内での流動性が低下する傾向がある。ここで「粘度」とはICIコーンプレート型粘度計を用いて測定した際の粘度を示す。多価カルボン酸縮合体の粘度は、例えばReseach Equipment(London)LTD.製のICIコーンプレート型粘度計を用いて測定することができる。
【0076】
式(1)の多価カルボン酸縮合体及び上記トリカルボン酸縮合体の軟化点は、20〜150℃であることが好ましい。軟化点が20℃よりも小さいと、熱硬化性樹脂組成物を製造する際のハンドリング性、混練性及び分散性が低下し、均一な組成物を得難くなる傾向がある。また、軟化点が低いとトランスファー成形時の樹脂汚れの発生を効果的に抑えることが困難となる傾向がある。軟化点が150℃よりも大きいと、トランスファー成形、圧縮成形又は注型成形のために熱硬化性樹脂組成物を100℃〜200℃に加熱したときに、樹脂組成物中に固形物が溶け残る可能性がある。その結果均一な成形品(硬化体)を得ることができない可能性がある。多価カルボン酸縮合体の軟化点は、より好ましくは30〜80℃、更に好ましくは30〜50℃である。これにより熱硬化性樹脂組成物を製造する際の混練性がより向上する。
【0077】
熱硬化性樹脂組成物は、以上のような多価カルボン酸縮合体以外の化合物を硬化剤として更に含有していてもよい。その他の硬化剤としては、例えば電子部品封止用エポキシ樹脂成形材料で一般に使用されているものを用いることができる。その他の硬化剤は、酸無水物系硬化剤(上述の多価カルボン酸縮合体を除く。)、又はイソシアヌル酸誘導体であることが好ましい。酸無水物系硬化剤は、多価カルボン酸が分子内で閉環縮合して形成される化合物である。
【0078】
酸無水物系硬化剤は、例えば、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、無水グルタル酸、無水ジメチルグルタル酸、無水ジエチルグルタル酸、無水コハク酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸及びメチルテトラヒドロ無水フタル酸からなる群より選ばれる。イソシアヌル酸誘導体は、例えば、1,3,5−トリス(1−カルボキシメチル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート及び1,3−ビス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレートからなる群より選ばれる。これらは、単独で用いても2種類以上併用しても良い。
【0079】
上記硬化剤の中では、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水グルタル酸、無水ジメチルグルタル酸、無水ジエチルグルタル酸及び1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレートが好ましい。
【0080】
多価カルボン酸縮合体以外の硬化剤は、その分子量が100〜10000であることが好ましく、また、無色ないし淡黄色であることが好ましい。無水トリメリット酸及び無水ピロメリット酸等の芳香環を有する酸無水物は、芳香環の不飽和結合のすべてを水素化させた水素化物として用いられることが好ましい。ポリイミド樹脂の原料として一般的に使用される酸無水物を用いてもよい。
【0081】
熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂100重量部と、硬化剤1〜150重量部とを含有することが好ましい。成形時の樹脂汚れを抑制するという観点から、エポキシ樹脂100重量部に対して、硬化剤が50〜120重量部であることがより好ましい。
【0082】
エポキシ樹脂及び硬化剤は、エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対して、当該エポキシ基との反応可能な硬化剤中の活性基(酸無水物基及び水酸基等)が好ましくは0.6〜2.0当量、より好ましくは0.7〜0.8当量となるように配合される。活性基の当量が0.6未満であると、熱硬化性樹脂組成物の硬化速度が低下したり、得られる硬化物のガラス転移温度及び弾性率が低下したりする傾向がある。一方、活性基が2.0当量を超えると硬化物の強度が低下する場合がある。
【0083】
硬化触媒は、例えば、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、トリエチレンジアミン及びトリ−2,4,6−ジメチルアミノメチルフェノールなどの3級アミン類;2−エチル−4メチルイミダゾール及び2−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類;トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオエート、テトラ−n−ブチルホスホニウム−テトラフルオロボレート、テトラ−n−ブチルホスホニウム−テトラフェニルボレート、テトラ−n−ブチルジメチルホスフェート、テトラ−n−ブチルホスホニウムアセテート及びテトラ−n−ブチルホスホニウムオクチルカルボキシレートなどのリン化合物;4級アンモニウム塩;およびこれらの誘導体が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、あるいは、併用してもよい。これらの硬化触媒の中では、3級アミン類、イミダゾール類又はリン化合物を用いることが好ましい。
【0084】
硬化触媒の含有量は、エポキシ樹脂と(B)硬化剤の合計総重量100重量部に対して、好ましくは1〜5重量部、より好ましくは1〜3重量部の範囲内にある。硬化促進剤の含有量が1重量部未満であると、硬化促進効果が小さくなる傾向があり、5重量部を超えると、得られる成形体に変色が見られる場合がある。
【0085】
熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂、硬化剤及び硬化促進剤に加えて、有機酸金属塩及び金属アルコキサイドのうち少なくとも一方を更に含有することが好ましい。これらは、硬化触媒を更に活性化する硬化助剤として機能することができる。
【0086】
有機酸金属塩は下記一般式(8):
(R0−COO)qM1
で表される金属石鹸であることが好ましい。式(8)中、R0はアルキレン基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、エポキシ基を有する炭素数3〜50の1価の有機基、カルボキシル基を有する1価の有機基又は炭素数3〜500のポリアルキレンエーテル基を示し、M1は第3周期の金属元素、IIA族、IVB族、IIB族、VIII族、IB族、IIIA族、IIIB又はIVA族に属する金属元素を示し、qは1〜4の整数を示す。
【0087】
M1はマグネシウム、カルシウム、バリウム、アルミニウム、スズ、チタン、鉄、コバルト、ニッケル、銅及び亜鉛から選ばれることが好ましい。化学的または物理的な安定性の観点から、より好ましくは、アルミニウム、スズ、チタン、鉄、コバルト、ニッケル、銅又は亜鉛である。亜鉛が最も好ましい。熱硬化性樹脂組成物の熱硬化反応過程や混練時のBステージ化(オリゴマー化または高分子量化)などの化学反応を伴う工程において、当該金属石鹸中に含まれる金属化合物が、予期しない副反応の反応触媒として作用しない有機酸金属塩を適宜選択することが好ましい。
【0088】
R0は、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及びモンタン酸のような、炭素数10〜50の1価の脂肪族カルボン酸からカルボキシル基を除いた基である。
【0089】
有機酸金属塩の具体例としては、アルミニウムステアレート及び亜鉛ステアレートがある。市販品として入手可能なものとしては、例えば、日本油脂株式会社製ジンクステアレート及びアルミニウムステアレート300がある。
【0090】
有機酸金属塩としては、有機酸のアルカリ金属塩水溶液とM1の金属塩とを用いる湿式法、又は脂肪酸とM1の金属を直接反応させる乾式法により製造される金属石鹸が知られている。係る金属石鹸は、遊離脂肪酸及び水分を含んでいる場合がある。室温(0〜35℃)において、金属石鹸中の遊離脂肪酸の含有量は好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下であり、特に好ましくは0.5重量%以下である。遊離脂肪酸の含有量が20重量%よりも多いと、熱硬化性樹脂組成物の貯蔵安定性が低下する可能性がある。また、室温(0〜35℃)において、金属石鹸中の水分の含有量は好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは3重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。金属石鹸中の水分含有量が10重量%よりも多いと、硬化後の成形体の耐リフロー性が低下する場合がある。
【0091】
有機酸金属塩は、エポキシ樹脂及び硬化剤に対する分散性の観点から、100℃以上200℃未満の融点を有することが好ましい。有機酸金属塩の融点はより好ましくは100℃以上、150℃未満であり、特に好ましくは110℃以上135℃未満である。融点が200℃を超えると、分散性が低下して成形工程において、熱硬化性樹脂組成物中に有機酸金属塩が固形のまま偏在しやすくなる。その結果離型不良が発生する場合がある。融点が100℃未満であると、ミキシングロールミルやニ軸押出等による混練の際に、熱硬化性樹脂組成物の粘度が低下して、混練性が十分に確保できない可能性がある。
【0092】
金属アルコキサイドは、金属原子にその結合価数と同じ数の有機アルコキサイド分子が結合した化合物、又はこれらが多量化し鎖を形成した化合物である。金属アルコキサイドは特に限定されるものではないが、シランアルコキサイド、アルミニウムアルコキサイド及びチタンアルコキサイドから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これらの中でもシランアルコキサイドが材料コストの観点で好ましい。有機アルコキサイドは、特に限定はされないが炭素数2〜10のアルキルオキサイド(メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基及びイソプロポキシ基など)が好ましい。これらのなかでも、テトラエトキシシランが特に好ましい。例えばテトラメトキシシランは反応性が高く水分が混入するとゲル化し易い。テトラエトキシシランは、白色顔料の凝集を防止する点からもテトラメトキシシランよりも好ましい。
【0093】
金属アルコキサイドの含有量は、エポキシ100重量部に対して、好ましくは0.5〜20重量部、より好ましくは1.0〜10重量部である。この含有量が20重量部よりも大きいと白色顔料の凝集が生じやすくなる傾向、及び熱硬化性樹脂組成物の硬化性が低下する傾向がある。含有量が0.5重量部よりも少ないと硬化助剤としての硬化促進効果が低下する傾向がある。
【0094】
熱硬化性樹脂組成物は、高い反射率を達成するために、白色顔料を含有することが好ましい。白色顔料は、公知のものを特に制限なく使用することができる。白色顔料は、例えば、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、珪酸ソーダガラス、アルミ珪酸ガラス、硼珪酸ソーダガラス及びシラスからなる群より選ばれる少なくとも1種である。白色顔料は無機中空粒子であってもよい。無機中空粒子は、例えば、珪酸ソーダガラス、アルミ珪酸ガラス、硼珪酸ソーダガラス又はシラスを含む。白色顔料の中心粒径は0.1〜50μmの範囲にあることが好ましい。この中心粒径が0.1μm未満であると粒子が凝集しやすいために分散性が低下する傾向があり、50μmを超えると硬化物の反射特性が低下する可能性がある。
【0095】
熱硬化性樹脂組成物は、白色顔料以外の無機充填材を更に含有していてもよい。無機充填剤の配合によって成形性を調整することができる。無機充填材は、特に限定されないが、例えば、シリカ、酸化アンチモン、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム及び炭酸バリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種である。熱伝導性、光反射特性、成型性及び難燃性の点からは、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウムから選ばれる2種類以上の組み合わせが好ましい。
【0096】
無機充填材の中心粒径は、特に限定されないが、白色顔料とのパッキングが効率良くなるように1〜100μmの範囲にあることが好ましい。
【0097】
無機充填材及び白色顔料の合計量は、熱硬化性樹脂組成物全体に対して、10体積%〜85体積%の範囲にあることが好ましい、この量が10体積%未満であると硬化物の光反射特性が低下する傾向があり、85体積%を超えると樹脂組成物の成型性が低下する傾向がある。
【0098】
熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂及び硬化剤と無機充填材及び白色顔料との接着性を向上させる観点から、カップリング剤を含有することが好ましい。カップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、シランカップリング剤及びチタネート系カップリング剤等がある。シランカップリング剤としては、エポキシシラン系、アミノシラン系、カチオニックシラン系、ビニルシラン系、アクリルシラン系、メルカプトシラン系及びこれらの組み合わせがある。任意の付着量で多々用いられる。カップリング剤の量、種類及び処理条件は特に限定されない。カップリング剤の配合量は熱硬化性樹脂組成物全体に対して5重量%以下が好ましい。熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、酸化防止剤、離型剤及びイオン捕捉剤等の添加剤を含有してもよい。
【0099】
熱硬化前の熱硬化性樹脂組成物は、加圧成形により室温(15〜30℃)においてタブレットを形成可能であることが好ましい。加圧成形は、例えば、室温(25℃)において、5〜50MPa、1〜5秒程度の条件下で成形を行うことができればよい。
【0100】
熱硬化性樹脂組成物の熱硬化によって形成される硬化物の光反射率は、波長350nm〜800nmにおいて80%以上であることが望まれる。この光反射率が80%未満であると、光半導体装置の輝度向上の効果が低下する傾向がある。より好ましくは、光反射率は90%以上である。
【0101】
熱硬化性樹脂組成物は、上記各種成分を均一に分散及び混合する方法により得ることができる。混合の手段や条件等は特に限定されない。一般的な方法として、押出機、ニーダー、ロール、エクストルーダー等によって(溶融)混練し、混錬物を冷却及び粉砕する方法が挙げることができる。(溶融)混練の条件は、成分の種類や配合量により適宜決定すればよく、特に限定されないが、15℃〜100℃の範囲で5〜40分間(溶融)混練することが好ましく、20℃〜100℃の範囲で10〜30分間(溶融)混練することがより好ましい。(溶融)混練温度が15℃未満であると、各成分を(溶融)混練させることが困難であり、分散性も低下する傾向にあり、100℃よりも高温であると、樹脂組成物の高分子量化が進行し、樹脂組成物が硬化してしまう可能性がある。また、(溶融)混練時間が5分未満であると、トランスファー成形時に樹脂汚れ(樹脂バリ)が発生してしまう可能性が高くなる傾向にある。光半導体素子搭載領域の開口部に樹脂汚れが発生すると、光半導体素子を搭載する際の障害になる可能性や、光半導体素子と金属配線とをボンディングワイヤなどの方法により電気的に接続する際の障害になる可能性がある。混練時間が30分よりも長いと、樹脂組成物の高分子量化が進行し、樹脂組成物が硬化してしまう可能性がある。
【0102】
熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じ、エポキシ樹脂及び硬化剤を予備混合してから、混合物をロールミル、押出機などを用いて混練する方法によって製造してもよい。エポキシ樹脂及び硬化剤の少なくともどちらかの一方が、0℃〜35℃以下の温度範囲で液状である場合、または100〜200℃の温度範囲で10mPa・s未満の低粘度である場合、予備混合を実施することが好ましい。このような場合に予備混合を実施しないと、熱硬化性樹脂組成物の貯蔵安定性が低下したり、溶融粘度が著しく低くなってトランスファー成形が困難となったりする傾向がある。
【0103】
エポキシ樹脂及び硬化剤を予め混合する予備混合の工程において、それらの混合物の粘度が、100〜150℃の範囲で10〜10000mPa・sの範囲にあることが好ましく、100℃における粘度が10〜10000mPa・sの範囲にあることがより好ましい。この粘度が10mPa・sよりも低いとトランスファー成形時にバリが発生しやすくなる傾向があり、10000mPa・sを超えると流動性が低下して、金型に樹脂を流し込んで成形することが困難となる傾向がある。
【0104】
エポキシ樹脂及び硬化剤は相溶性を有することが好ましい。言い換えると、エポキシ樹脂同士、及びエポキシ樹脂と硬化剤とが親和性を示し、これらの混合物が均一な状態で存在することが好ましい。より具体的には、例えばエポキシ樹脂と硬化剤とを1/1の重量比で混合し、混合物を120℃にて完全に溶解し、引き続き攪拌を行って得られる混合液を30分にわたり静置し、その後に混合液の一部を取り出して目視したときに、混合物が相分離のない透明な液体であることが確認できる場合に、両者が相溶性を有すると判断することができる。相分離によって不透明な液体である場合は「不溶」と称される。相溶性を有する組み合わせであっても、溶解するまでに長い時間が必要であると、長時間にわた加熱により多くの熱エネルギーを必要とし、生産性やコストの面で不利となる。
【0105】
予備混合工程において、エポキシ樹脂と硬化剤との反応物であるゲル等の析出物による白濁を生じないことが好ましい。析出物が発生すると粘度の増加が妨げられる。「析出物による白濁を生じない」とは電磁波の可視光領域における散乱がないことを意味する。より具体的には光のレイリー散乱、ミー散乱、回折散乱現象を生じるような、散乱中心を有する微粒子が混合物中に存在しないとき、「析出物による白濁を生じない」とみなすことができる。混合物の白濁の確認は、例えば、エポキシ樹脂100重量部及び硬化剤120重量部を耐熱ガラス製の容器に秤量し、容器をシリコーンオイルや水などの流体を媒体としたヒーターを用いて35℃〜180℃の温度範囲で加熱する方法によって行うことができる。加熱方法はこれに限定されるものではなく、熱電対、電磁波照射など公知の方法を用いることができ、さらに溶解を促進するために超音波などを照射してもよい。
【0106】
熱硬化性樹脂組成物に用いられるエポキシ樹脂及び硬化剤の一部又は全量を予備混合することができる。例えば、エポキシ樹脂100重量部及び硬化剤120重量部を含有する熱硬化性樹脂組成物を製造する場合、エポキシ樹脂50重量部及び硬化剤120重量部を耐熱ガラス製の容器に秤量する。次に容器をシリコーンオイルや水などの流体を媒体としたヒーターを用いて35℃から〜180℃の温度範囲で加熱して予備混合する。得られた予備混合物と、残りのエポキシ樹脂50重量部と、硬化触媒及び白色顔料それぞれの必要量とをロール混練などにより混合して、熱硬化性樹脂組成物を製造してもよい。
【0107】
図1は光半導体装置の一実施形態を示す斜視図であり、図2は図1のII−II線に沿う断面図である。図1、2に示す光半導体装置1は、底面S1及び内周側面S2から構成される凹部11を有する光半導体素子搭載用基板10と、光半導体素子搭載領域である底面S1に搭載された光半導体素子20と、光半導体素子20を凹部11内で覆う封止樹脂層30とから主として構成される。
【0108】
光半導体素子搭載用基板10は、板状の金属配線12と、金属配線12上に設けられたNi/Agめっき13及びリフレクター15を有する。Ni/Agめっき13は底面S1を構成している。リフレクター15は、底面S1(Ni/Agめっき13)が露出する開口を形成する内周側面S2を有する。リフレクター15は、上述の実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物を成形して形成される樹脂成形品である。
【0109】
光半導体素子20は、ボンディングワイヤ21を介して金属配線12及びNi/Agめっき13と電気的に接続されている。金属配線12は、光半導体素子20の底部に接している部分とボンディングワイヤ21が接続されている部分とに分割されている。これら二つの部分の間には絶縁層16が介在している。絶縁層16は、上述の実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物によって形成されていてもよい。
【0110】
封止樹脂層30は、透明樹脂層31と、透明樹脂層31内に分散した蛍光体32とを含む。封止樹脂層30は、蛍光体を含有する公知の透明封止樹脂組成物を用いて形成することができる。
【0111】
光半導体装置1は、例えば、上述の実施形態に係る光反射用熱硬化性樹脂組成物をトランスファー成形により成形して金属配線12上にリフレクター15としての樹脂成形品を形成する工程と、金属配線12上に電気めっきによりNi/Agめっき13を形成する工程と、光半導体素子20を半導体搭載領域(底面S1)に搭載する工程と、封止樹脂層30を形成する工程とを備える方法によって製造することができる。トランスファー成形の後、形成された樹脂成形品をアフターキュアすることなく、光半導体素子20の搭載等を行うことができる。
【0112】
金属配線12は、例えば、金属箔からの打ち抜き及びエッチング等の公知の方法により形成することができる。金属配線12を所定形状の金型に配置し、金型の樹脂注入口から熱硬化性樹脂組成物を注入し、これを好ましくは金型温度170〜200℃、成形圧力0.5〜20MPaで60〜120秒の条件で熱硬化させた後、金型を外す方法により、リフレクター15として樹脂成形品が得ることができる。
【0113】
本発明に係る光半導体素子搭載用基板及び光半導体素子は、上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形が可能である。例えば、図3の断面図に示されるように、光半導体素子20がはんだバンプ22を介して金属配線12及びNi/Agめっき13と電気的に接続されていてもよい。また、図4に示されるように、金属配線を用いるのに代えて、リード40を用いてもよい。図4に示す実施形態に係る光半導体装置1においては、光半導体素子(LED素子)20がダイボンド材42によって半導体素子搭載用基板10に接着されている。光半導体素子搭載用基板は2以上の凹部を有していてもよい。
【実施例】
【0114】
以下、実施例を挙げて本発明についてより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0115】
多価カルボン酸縮合体の作製
下記の実施例A1、A2及びA3にそれぞれ示した繰り返し単位用のモノマーと両末端モノマーを、無水酢酸中で30分にわたって窒素雰囲気下で還流した。その後、液温を160℃まで上昇させ、窒素気流下、開放系で反応によって生成した酢酸及び水を開放系で留去した。揮発成分の生成が認められなくなった時点で、反応容器内を減圧しながら130℃の温度で7時間にわたって溶融縮合し、多価カルボン酸縮合体を得た。
(実施例A1)
繰り返し単位:水素化テレフタル酸(東京化成社製);125g
両末端:水素化無水トリメリット酸(三菱瓦斯化学社製,製品名H−TMAn);126g
(実施例A2)
繰り返し単位:水素化テレフタル酸;218g
両末端:水素化無水トリメリット酸;86g
(実施例A3)
繰り返し単位:1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート(四国化成工業社製,製品名C3CIC酸);170g
両末端:水素化無水トリメリット酸;260g
【0116】
多価カルボン酸縮合体の特性評価
実施例A1、A2及びA3の多価カルボン酸縮合体の数平均分子量、粘度及び軟化点を評価した。評価結果を表1に示した。
【0117】
数平均分子量Mnは、下記条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により標準ポリスチレンによる検量線を用いて測定した。
・装置:ポンプ(株式会社日立製作所製L−6200型)、カラム(TSKgel―G5000HXLおよびTSKgel−G2000HXL、いずれも東ソー株式会社製商品名)、検出器(株式会社日立製作所製L−3300RI型)
・溶離液:テトラヒドロフラン
・温度30℃、流量1.0ml/min
【0118】
粘度測定はReseach Equipment(London)LTD.製のICIコーンプレート型粘度計を用いて行った。軟化点は、多価カルボン酸縮合体をホットプレート上で加熱し、性状の変化を目視で確認する方法により評価した。
【0119】
【表1】

【0120】
(実施例B1〜B11、比較例B1〜B4)
熱硬化性樹脂組成物の作製
エポキシ樹脂及び硬化剤を予備混合した後、表2に示した配合表に従って各材料を配合した。配合物をミキサーによって十分混合した後、ミキシングロールにより所定条件で溶融混練し、混錬後の配合物を冷却してから粉砕して、実施例B1〜B11及び比較例B1〜B4の熱硬化性光反射用樹脂組成物を得た。表中の各成分の配合量の単位は重量部であり、空欄は配合無しであることを表す。
【0121】
熱硬化性樹脂組成物の評価
各実施例及び各比較例の樹脂組成物を下記の各種特性試験によりそれぞれ評価した。結果を表2に示す。
【0122】
光反射性試験
各実施例及び各比較例の熱硬化性樹脂組成物を、成形型温度180℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間90秒の条件でトランスファー成形した。成形品の波長400nmにおける光反射率を、積分球型分光光度計V−750型(日本分光株式会社製)を用いて測定した。そして、下記の評価基準により光反射特性を評価した。評価結果を表2に示す。比較例B4についてはトランスファー成形不能であったため、カル部を使用し光学特性を評価した。
(光反射率の評価基準)
A:光波長400nmにおいて光反射率80%以上
B:光波長400nmにおいて光反射率70%以上、80%未満
C:光波長400nmにおいて光反射率70%未満
【0123】
貯蔵弾性率
各実施例及び各比較例の熱硬化性樹脂組成物を、成形型温度180℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間90秒の条件でトランスファー成形して、10×80×3mmのサイズを有する成形物を得た。得られた成形物の動的粘弾性を、TAインスツルメンツ社(旧レオメトリック社)製ARES2KSTDを用いて、昇温速度5℃/minの条件下で測定した。測定結果から、40℃及び260℃における貯蔵弾性率(GPa)を求めた。更に、トランスファー成形により得られた成形物を150℃、3時間の条件でアフターキュアして得た試験片の貯蔵弾性率も同様に求めた。
【0124】
ガラス転移温度及び線膨張係数
各実施例及び各比較例の熱硬化性樹脂組成物を、成形型温度180℃、成型圧力6.9MPa、硬化時間90秒の条件でトランスファー成型して、10×80×3mmのサイズを有する成形物を得た。成形物から切り出した19mm×3mm×3mmのサイズを有する試験片の熱膨張曲線を、昇温速度5℃/minの条件下で測定した。測定装置はセイコーインスツルメンツ社製TMASS6000を用いた。得られた線膨張曲線の屈曲点に基づいてガラス転移温度(以下「Tg」と略す。)を求めた。また、Tg以下の温度及びTg以上の温度のそれぞれの領域における線膨張曲線の傾きを、線膨張係数として求めた。Tg以下の温度領域における線膨張係数をα1、Tg以上の温度領域における線膨張係数をα2と略す。更に、トランスファー成形により得られた成形物を150℃、3時間の条件でアフターキュアして得た試験片のガラス転移温度及び線膨張係数も同様に求めた。
【0125】
【表2】


*1:トリグリシジルイソシアヌレート(エポキシ当量100、日産化学社製、商品名T EPIC−S)
*2:ヘキサヒドロ無水フタル酸(和光純薬社製)
*3:テトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチエート(日本化学工業社製、商品名PX−4ET)
*4:トリメトキシエポキシシラン(東レダウコーニング社製、商品名A−187)
*5:溶融シリカ(電気化学工業社製、商品名FB−301)
*6:中空粒子(住友3M社製、商品名S6〇−HS)
*7:アルミナ(アドマテックス社製、商品名AO−802)
【0126】
表2に示されるように、各実施例の熱硬化性樹脂組成物を金型温度180℃、90秒の条件で熱硬化させて得られた硬化物(成形物)は、これをアフターキュアして硬化反応を更に進行させて得られる硬化物と実質的に同等の物性値(貯蔵弾性率、Tg及び線膨張係数)を示した。具体的にはアフターキュア前後で各物性値の変化率がいずれも±5%以内であった。貯蔵弾性率、ガラス転移点及び線膨張係数の値は、樹脂組成物に含まれる多官能エポキシ樹脂と硬化剤の化学反応によって生じた架橋度合いを反映している。これらの物性値がアフターキュア前後で大きく変化する場合は、アフターキュア前の硬化物の架橋反応が十分に進行していないと考えられる。
【0127】
以上の実験結果から、本発明の熱硬化性樹脂組成物を硬化させた場合はアフターキュア等の後硬化工程を省略できることがわかる。本発明の熱硬化性樹脂組成物は成形性が従来の樹脂組成物よりも優れており、光半導体搭載用基板の製造時間短縮など、生産性の面で非常に有利であり実用上好ましい。
【符号の説明】
【0128】
1…光半導体装置、10…光半導体素子搭載用基板、11…凹部、12…金属配線、15…リフレクター、16…絶縁層、20…光半導体素子、21…ボンディングワイヤ、22…はんだバンプ、30…封止樹脂層、31…透明樹脂層、32…蛍光体、40…リード、42…ダイボンド材、S1…底面(光半導体素子搭載領域)、S2…内周側面。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面及び内周側面から構成される凹部を有するとともに該内周側面を形成する樹脂成形品を有し、該底面が光半導体素子搭載領域である光半導体素子搭載用基板であって、
前記樹脂成形品は、エポキシ樹脂及び硬化剤を含有する熱硬化性樹脂組成物から形成することができ、
当該熱硬化性樹脂組成物を金型温度180℃、硬化時間90秒の条件でトランスファー成形して得られる硬化物の硬化度が、150℃、3時間の加熱によって更にアフターキュアされた後の当該硬化物と実質的に同等である、光半導体素子搭載用基板。
【請求項2】
前記熱硬化性樹脂組成物を金型温度180℃、硬化時間90秒の条件でトランスファー成形して得られる硬化物のガラス転移温度が、150℃、3時間の加熱によって更にアフターキュアされた後の当該硬化物に対して−5%〜+5%の範囲内にある、請求項1記載の光半導体素子搭載用基板。
【請求項3】
前記熱硬化性樹脂組成物を金型温度180℃、硬化時間90秒の条件でトランスファー成形して得られる硬化物の40℃における貯蔵弾性率が、150℃、3時間の加熱によって更にアフターキュアされた後の当該硬化物に対して−5%〜+5%の範囲内にある、請求項1又は2記載の光半導体素子搭載用基板。
【請求項4】
前記熱硬化性樹脂組成物を金型温度180℃、硬化時間90秒の条件でトランスファー成形して得られる硬化物のガラス領域における線膨張係数が、150℃、3時間の加熱によって更にアフターキュアされた後の当該硬化物に対して−5%〜+5%の範囲内にある、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光半導体素子搭載用基板。
【請求項5】
前記硬化剤が、下記一般式(1)で表される多価カルボン酸縮合体を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光半導体素子搭載用基板。
【化1】


[式(1)中、Rxは脂肪族炭化水素環を有し該脂肪族炭化水素環がハロゲン原子又は直鎖状若しくは分岐状の炭化水素基で置換されていてもよい2価の基を示し、同一分子中の複数のRxは同一でも異なっていてもよく、Ryは酸無水物基又はカルボン酸エステル基で置換されていてもよい1価の炭化水素基を示し、同一分子中の2個のRyは同一でも異なっていてもよく、n1は1以上の整数を示す。]
【請求項6】
Ryが、下記化学式(20)で表される1価の基、又は、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロへプタン、シクロオクタン、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、アダマンタン、水素化ナフタレン及び水素化ビフェニルから選ばれる環式脂肪族炭化水素から水素原子を除くことにより誘導される1価の基である、請求項5記載の光半導体素子搭載用基板。
【化2】

【請求項7】
前記一般式(1)で表される多価カルボン酸縮合体が、下記一般式(1a)で表される化合物である、請求項5又は6記載の光半導体素子搭載用基板。
【化3】


[式(1a)中、mは0〜4の整数を示し、Rzはハロゲン原子又は直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4の炭化水素基を示し、mが2〜4であるとき複数のRzは同一でも異なっていてもよく、互いに連結して環を形成していてもよく、n1は1以上の整数を示す。]
【請求項8】
前記硬化剤が、下記一般式(21)で表されるトリカルボン酸化合物と下記一般式(22)で表されるモノカルボン酸化合物とを分子間で縮合させる方法により得ることのできる多価カルボン酸縮合体を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光半導体素子搭載用基板。
【化4】


[式(21)及び(22)中、Rは脂肪族炭化水素環、非芳香族複素環又はシロキサン環を有する3価の基を示し、Rは酸無水物基又はカルボン酸エステル基で置換されていてもよい1価の炭化水素基を示し、同一分子中の2個のRは同一でも異なっていてもよい。]
【請求項9】
前記トリカルボン酸化合物が下記一般式(21a)で表されるイソシアヌル酸誘導体であり、前記モノカルボン酸化合物が下記化学式(22a)で表される水素化トリメリット酸無水物である、請求項8記載の光半導体素子搭載用基板。
【化5】


[式(21a)中、Rは飽和炭化水素基又は不飽和炭化水素基を示す。]
【請求項10】
前記硬化剤が、下記化学式(3)で表される多価カルボン酸縮合体を更に含む、請求項5〜9のいずれか一項に記載の光半導体素子搭載用基板。
【化6】

【請求項11】
前記熱硬化性樹脂組成物が、硬化触媒を更に含有する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の光半導体素子搭載用基板。
【請求項12】
前記硬化触媒の含有量が、前記エポキシ樹脂及び前記硬化剤の合計量100重量部に対して、1〜5重量部の範囲内にある、請求項11に記載の光半導体素子搭載用基板。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の光半導体素子搭載用基板の製造方法であって、
前記熱硬化性樹脂組成物をトランスファー成形することにより前記樹脂成形品を形成する工程を備える、製造方法。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の光半導体素子搭載用基板と、
当該光半導体素子搭載用基板の光半導体素子搭載領域に搭載された光半導体素子と、
前記光半導体素子を当該光半導体素子搭載用基板の凹部内で覆う封止樹脂層と、
を備える光半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−79384(P2013−79384A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−256297(P2012−256297)
【出願日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【分割の表示】特願2008−264136(P2008−264136)の分割
【原出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(000004455)日立化成株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】