説明

光半導体素子

【課題】光を変調し得る波長帯域が狭いリング共振器の共振波長を入力光の波長に容易に一致させ、高効率で入力光を変調し得る光半導体素子を提供する。
【解決手段】入力光が入力される第1の導波路と、第1の導波路と光学的に結合するように配されたリング変調器と、第1の導波路と光学的に結合するように配され、リング変調器の周回光路長より小さな周回光路長を有する第1のリング共振器と、第1の導波路と光学的に結合するように配され、リング変調器の周回光路長より大きな周回光路長を有する第2のリング共振器と、リング変調器と第1のリング共振器と第2のリング共振器とに近接して配されたヒータと、第1のリング共振器中の光パワーをモニタする第1の光検出器と、第2のリング共振器中の光パワーをモニタする第2の光検出器と、第1の光検出器及び第2の光検出器により検出された信号に基づいて、リング変調器の共振波長が入力光の波長と一致するようにヒータを制御する制御部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体素子に関する。
【背景技術】
【0002】
光送受信器の小型大容量化・低消費電力化を行う上でシリコン上の光デバイスの実現が重要な役割を持つ。シリコン上の光デバイスは屈折率差の大きい光導波路が使えることから他材料と比較して小型化に有利であり、電子回路との集積が容易なことから1チップで多数の光送受信器を集積することが可能になる。光デバイスの中でも特に変調器は、その特性が光送受信器の消費電力やサイズに大きな影響を与える。特にリング型変調器は、素子自体が小型なことや、変調電圧が小さく、光損失も小さいため小型化・低消費電力化に有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開2009/0169149号明細書
【特許文献2】特開2008−268276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、リング変調器には、変調効率を高くすると光を変調し得る波長帯域が狭くなるという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、光を変調し得る波長帯域が狭いリング共振器の共振波長を入力光の波長に容易に一致させ、高効率で入力光を変調し得る光半導体素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の一観点によれば、入力光が入力される第1の導波路と、前記第1の導波路と光学的に結合するように配されたリング変調器と、前記第1の導波路と光学的に結合するように配され、前記リング変調器の周回光路長より小さな周回光路長を有する第1のリング共振器と、前記第1の導波路と光学的に結合するように配され、前記リング変調器の前記周回光路長より大きな周回光路長を有する第2のリング共振器と、前記リング変調器と前記第1のリング共振器と前記第2のリング共振器とに近接して配されたヒータと、前記第1のリング共振器中の光パワーをモニタする第1の光検出器と、前記第2のリング共振器中の光パワーをモニタする第2の光検出器と、前記第1の光検出器及び前記第2の光検出器により検出された信号に基づいて、前記リング変調器の共振波長が前記入力光の波長と一致するように前記ヒータを制御する制御部とを有する光半導体素子が提供される。
【発明の効果】
【0007】
開示の光半導体素子によれば、入力光と光共振器との間の波長ずれを広い波長範囲で許容しつつ、光共振器の共振波長を入力光の波長に容易に一致させることができる。また、光共振器の共振を強めることが可能となり、変調効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、第1実施形態による光半導体素子を示す概略図である。
【図2】図2は、第1実施形態による光半導体素子を示す断面図(その1)である。
【図3】図3は、第1実施形態による光半導体素子を示す断面図(その2)である。
【図4】図4は、第1実施形態による光半導体素子を示す断面図(その3)である。
【図5】図5は、第1の光共振器の変調光出力パワーと波長との関係を示すグラフ(その1)である。
【図6】図6は、第1の光共振器の変調光出力パワーと波長との関係を示すグラフ(その2)である。
【図7】図7は、モニタ電流と波長との関係を示すグラフ(その1)である。
【図8】図8は、モニタ電流と波長との関係を示すグラフ(その2)である。
【図9】図9は、光半導体素子を示す概略図(その1)である。
【図10】図10は、光共振器の変調光出力パワーと波長との関係を示すグラフ(その1)である。
【図11】図11は、光共振器の変調光出力パワーと波長との関係を示すグラフ(その2)である。
【図12】図12は、モニタ光パワーと波長との関係を示すグラフである。
【図13】図13は、光半導体素子を示す概略図(その2)である。
【図14】図14は、モニタ可能波長幅と波長との関係を示すグラフである。
【図15】図15は、第2実施形態による光半導体素子を示す概略図である。
【図16】図16は、第3実施形態による光半導体素子を示す概略図である。
【図17】図17は、第4実施形態による光半導体素子を示す概略図である。
【図18】図18は、第5実施形態による光半導体素子を示す概略図である。
【図19】図19は、第6実施形態による光半導体素子を示す概略図である。
【図20】図20は、モニタ電流と波長との関係を示すグラフ(その3)である。
【図21】図21は、第7実施形態による光半導体素子を示す概略図である。
【図22】図22は、第7実施形態による光半導体素子を示す断面図(その1)である。
【図23】図23は、第7実施形態による光半導体素子を示す断面図(その2)である。
【図24】図24は、第8実施形態による光半導体素子を示す概略図である。
【図25】図25は、第8実施形態による光半導体素子を示す断面図である。
【図26】図26は、第9実施形態による光半導体素子を示す概略図である。
【図27】図27は、第10実施形態による光半導体素子を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1実施形態]
第1実施形態による光半導体素子について図1乃至図14を用いて説明する。
【0010】
図1は、本実施形態による光半導体素子を示す概略図である。図2乃至図4は、本実施形態による光半導体素子を示す断面図である。図5、図6、図10及び図11は、光共振器の変調光出力パワーと入力光の波長との関係を示すグラフである。図7及び図8は、モニタ電流と入力光の波長との関係を示すグラフである。図9及び図13は、参考例による光半導体素子を示す概略図である。図12は、モニタ光パワーと入力光の波長との関係を示すグラフである。図14は、モニタ可能波長幅と入力光の波長との関係を示すグラフである。
【0011】
はじめに、本実施形態による光半導体素子の構造について図1乃至図4を用いて説明する。なお、図2は、図1におけるA−A′線断面図である。図3は、図1におけるB−B′線断面図である。図4は、図1におけるC−C′線断面図である。
【0012】
本実施形態による光半導体素子は、図1に示すように、直線導波路10と、直線導波路10の近傍に光学的に結合するように配された第1の光共振器12、第2の光共振器14及び第3の光共振器16とを有している。また、導波路26,30を有する光検出器36a,36bと、光検出器36a,36bにより検出された信号(モニタ電流)に基づいてヒータ22を制御する制御部38と、変調信号を出力するドライバ回路40とを有している。
【0013】
入力光であるCW(Continuous Wave、連続)光が入力される直線導波路10の入力端32側には、第2の光共振器14と第3の光共振器16とが隣接して配されている。直線導波路10の出力端34側には、第1の光共振器12が配されている。
【0014】
第1の光共振器12は、リング型導波路18と、リング型導波路18に近接して配されたヒータ22とを有している。リング型導波路18には、リング型導波路18の屈折率を変化するための信号(変調信号)を与える電極20a,20bが接続されている。すなわち、第1の光共振器12は、リング変調器として機能する。
【0015】
第2の光共振器14は、リング型導波路24と、リング型導波路24に近接して配されたヒータ22とを有している。なお、リング型導波路により形成される光共振器は、リング共振器と呼ばれることもある。
【0016】
第3の光共振器16は、リング型導波路28と、リング型導波路28に近接して配されたヒータ22とを有している。
【0017】
ヒータ22は、リング型導波路18,24,28と近接するようにそれぞれ別個に設けられたものではなく、1つのヒータ22によってリング型導波路18,24,28を同時に加熱できるように形成されている。
【0018】
リング型導波路18,24,28の直径は、それぞれd,d−Δd,d+Δdとなるように設定されている。例えば、d=10μm,Δd=0.015μmとして、リング型導波路18の直径は10μm、リング型導波路24の直径は9.985μm、リング型導波路28の直径は10.015μmとなっている。
【0019】
直線導波路10とリング型導波路18との間隔は、直線導波路10とリング型導波路24,28との間隔より広く設定されている。例えば、直線導波路10とリング型導波路18との間隔は、250nmに設定されている。直線導波路10とリング型導波路24との間隔及び直線導波路10とリング型導波路28との間隔は、100nmに設定されている。
【0020】
第2の光共振器14には、リング型導波路24に光学的に結合された導波路26を介して光検出器36aが接続されている。同様に、第3の光共振器16には、リング型導波路28に光学的に結合された導波路30を介して光検出器36bが接続されている。
【0021】
図1に示す光導波路構造は、例えばSOI(Silicon On Insulator)基板50のSOI層52を用いて形成することができる。
【0022】
例えば、図2乃至図4に示すように、直線導波路10、リング型導波路18,24,28及び導波路26,30は、SOI層52をパターニングすることにより形成される。SOI層52の周囲には、シリコン酸化膜層54が形成されており、直線導波路10、リング型導波路18,24,28及び導波路26,30を囲うクラッドとして機能する。
【0023】
リング型導波路18の一部の領域には、光の導波方向に沿って外周側及び内周側に、それぞれN型領域56a及びP型領域56bが形成されている。なお、N型領域56aとP型領域56bとは、逆に配置してもよい。
【0024】
シリコン酸化膜層54上には、VIA配線58aを介してリング型導波路18のN型領域56aに接続された電極20aと、VIA配線58bを介してリング型導波路18のP型領域56bに接続された電極20bとが形成されている。電極20aは、ドライバ回路40と接続されている。電極20bは、グラウンド線に接続されている。電極20a、20bは、例えばアルミニウムによって形成される。VIA配線58a,58bは、例えばタングステンにより形成される。
【0025】
また、シリコン酸化膜層54上には、ヒータ22が形成されている。ヒータ22としては、例えば白金薄膜ヒータを用いることができる。
【0026】
制御部38は、光検出器36a,36bに接続された電流減算回路60と、電流減算回路60に接続されたPID(Proportional Integral Differential、比例・積分・微分)制御回路62とを有している。PID制御回路とは、フィードバック制御回路の一種であり、入力値の制御を出力値と目標値との偏差、積分、及び微分の3つの要素によって行う回路である。こうして、光検出器36a及び光検出器36bの出力信号に基づいて、PID制御回路62によってヒータ22を制御できるようになっている。
【0027】
ドライバ回路40は、電極20aに接続されており、電極20aを介してリング型導波路18に変調信号を入力できるようになっている。
【0028】
次に、本実施形態による光半導体素子の動作について図5乃至図14を用いて説明する。
【0029】
まず、直線導波路10の入力端32から入力光である波長λのCW光を入力する。このとき、直線導波路10の出力端34から出力される出力光の強度は、CW光の波長とリング型導波路18の共振波長との関係に応じて変化する。
【0030】
CW光の波長とリング型導波路18の共振波長とが一致している場合、直線導波路10からリング型導波路18への透過率が最大となり、出力端34から出力されるCW光の強度(変調光出力パワー)は最小となる。直線導波路10からリング型導波路18への透過率は、CW光の波長がリング型導波路18の共振波長からずれるに従って小さくなる。この結果、入力光の波長と出力光の強度との関係は、図5に実線で示すような変調光出力パワー曲線となる。
【0031】
リング型導波路18の共振波長は、電極20a,20b間に電圧を印加してリング型導波路18内の屈折率を変化することにより、変化することができる。例えば、電極20a,20b間に電圧Vonを印加すると、リング型導波路18の共振波長は長波長側にシフトしてλ′となり、図5に点線で示すように、変調光出力パワー曲線は共振波長の増加分だけ長波長側にシフトする。
【0032】
ここで、入力光としてのCW光の波長λがλである場合、電極20a,20b間に印加する電圧を変化することにより、出力光の強度を変化することができる。例えば、電極20a,20b間に電圧を印加していない状態(電圧V)では、図5の実線上の●部に相当する出力パワーを得ることができ、電極20a,20b間に電圧を印加した状態(電圧Von)では、図5の点線上の●部に相当する出力パワーを得ることができる。
【0033】
このように、本実施形態による光半導体素子は、入力光の強度を変調して出力するものである。変調効率の高い光半導体素子を得るためには、電圧を印加していない状態で出力光の強度が最小であること、即ち、リング型導波路18の共振波長が入力光の波長に一致していることが望ましい。
【0034】
しかしながら、CW光の波長とリング型導波路18の共振波長とは、製造ばらつきや環境温度等によって必ずしも一致しているとは限らない。CW光の波長とリング型導波路18の共振波長とが一致してない場合、例えば図6に示すように、リング型導波路18に電圧が印加されても変調光出力パワーに十分な変化が生じないことがある。
【0035】
そこで、そのような場合、本実施形態による光半導体素子では、第2の光共振器14、第3の光共振器16及びヒータ22を用いて、CW光の波長とリング型導波路18の共振波長とが一致するように調整を行う。
【0036】
直線導波路10に入力されるCW光は、リング型導波路18だけでなく、リング導波路24,28にも導かれる。リング型導波路24,28に導かれたCW光は、導波路26,30に導かれ、光検出器36a,36bによって検出される。
【0037】
光検出器36a,36bによって検出されるモニタ電流I1,I2は、図7に示すような波長特性を有する。即ち、モニタ電流I1の波長特性を示すモニタ電流曲線S1は波長λ−Δλにおいて最大値を示し、モニタ電流I2の波長特性を示すモニタ電流曲線S2は波長λ+Δλにおいて最大値を示す。モニタ電流曲線S1,S2が波長λ−Δλ,λ+Δλにおいて最大値を示すのは、リング型導波路18,24,28の直径をd,d−Δd,d+Δdとなるように設定しているためである。
【0038】
リング型導波路18,24,28の実効屈折率をnとすると、リング型導波路18,24,28の光学的距離(周回光路長)は、それぞれ2πnd,2πn(d−Δd),2πn(d+Δd)と表される。共振波長は光学的距離の整数分の1であるので、リング型導波路18の共振波長のうちの1つをλとすると、リング型導波路24,28の共振波長は、それぞれλ−Δλ,λ+Δλと表される。例えば、リング型導波路18の直径が10μmとすると、リング型導波路18の共振波長が1310nmのとき、リング型導波路24の共振波長は1308nmとなり、リング型導波路28の共振波長は1312nmとなる。
【0039】
また、モニタ電流曲線S1とモニタ電流曲線S2とは、リング型導波路18の共振波長である波長λにおいて交わるようになっている。これは、第2の光共振器14の直径は第1の光共振器12の直径よりΔdだけ小さく、第3の光共振器16の直径は第1の光共振器12の直径よりΔdだけ大きくなるように設定することにより実現することができる。また、これを実現するための付随的な特徴として、直線導波路10とリング型導波路24との間隔と、直線導波路10とリング型導波路28との間隔とが等しく、リング型導波路24と導波路26との間隔とリング型導波路28と導波路30との間隔が等しいことが挙げられる。リング型導波路24と導波路26との間隔及びリング型導波路28と導波路30との間隔は、例えば100nmに設定されている。
【0040】
光検出器36a,36bによって検出されたモニタ電流I1,I2は、電流減算回路60により、モニタ電流I1からモニタ電流I2を減算した電流I3に変換される。
【0041】
PID制御回路62は、電流減算回路60によって生成される電流I3に基づいて、電流I3がゼロとなるようにヒータ22を制御する。即ち、PID制御回路60は、モニタ電流I1とモニタ電流I2とが等しくなるように、ヒータ22をフィードバック制御する。
【0042】
PID制御回路60は、電流I3がゼロでない場合、即ち、モニタ電流I1とモニタ電流I2とが等しくない場合、入力光の波長λと第1の光共振器12の共振波長λとが一致していないと判断し、ヒータ22に駆動信号を出力する。
【0043】
例えば、図7に示すように、入力光の波長λが第3の光共振器16の共振波長λ+Δλの近傍の値であるとき、モニタ電流I2はモニタ電流I1より大きくなり、電流I3はゼロにはならない。このようなとき、PID制御回路62は、電流I3の大きさ、即ち、波長λと波長λとの乖離幅に応じた駆動信号をヒータ22に出力し、ヒータ22を加熱する。
【0044】
リング型導波路24,28の形成材料であるシリコンの屈折率の温度係数は正であるため、リング型導波路24,28の温度が増加するほどに第2の光共振器14及び第3の光共振器16の共振波長は、長波長側にシフトする。即ち、モニタ電流曲線S1,S2は長波長側にシフトする。
【0045】
PID制御回路62は、ヒータ22により加熱された状態において再び電流I3の測定を行い、電流I3がゼロになったかどうかをチェックする。電流I3がゼロであれば、PID制御回路62は、ヒータ22に出力する駆動信号をそのまま維持する。電流I3がゼロでない場合には、PID制御回路62は、電流I3の値に応じてヒータ22の駆動信号を適宜増減する。PID制御回路62は、このようなフィードバック制御を継続して行い、電流I3がゼロ近傍で安定するようにヒータ22を制御する。
【0046】
電流I3がゼロのとき、信号光の波長λは、モニタ電流曲線S1とモニタ電流曲線S2との交点に位置する。また、リング型導波路18は、リング型導波路24及びリング型導波路28とともにヒータ22によって加熱されているため、第1の共振器12の共振波長λも第2の光共振器14の共振波長及び第3の光共振器16の共振波長と同方向に同じ割合でシフトする。これにより、入力光の波長λと第1の光共振器12の共振波長λとを一致させることができる。
【0047】
なお、シリコンにより形成した光導波路は温度が高いほど共振波長が長波長側にシフトする性質を有するため、ヒータ22により制御できるのは光共振器の共振波長を長波長側にシフトすることだけである。ヒータ22の加熱温度を制御することによって光共振器の共振波長を信号光の波長と一致させるためには、リング型導波路18の共振波長が入力光の波長よりも短波長側に位置するように、予め設定しておくことが望ましい。
【0048】
モニタ電流I1,I2を用いてヒータ22を制御する際、モニタ電流I1,I2を検出し得る波長帯域(モニタ可能波長幅)は、可能な限り広いことが望ましい。このような観点から、本実施形態では、直線導波路10とリング型導波路24,28との間隔を、直線導波路10とリング型導波路18との間隔よりも狭く設定している。
【0049】
直線導波路10とリング型導波路24,28との間隔を直線導波路10とリング型導波路18との間隔より狭く設定する理由について、図9及び図13に示す参考例による光半導体素子68,80と比較しながら説明する。
【0050】
図9に示す光半導体素子68は、直線導波路70,72と、その間に設けられたリング型導波路74とを有するものである。直線導波路70の一端部から入力されたCW光は、リング型導波路74に導かれ、電極76a,76bと電極76cとの間に印加される変調信号によって変調される。変調されたCW光は、直線導波路72に導かれ、直線導波路72の一端部から出力される。
【0051】
図13に示す光半導体素子80は、直線導波路90,92と、その間に設けられたリング型導波路82とを有するものである。直線導波路90の一端部から入力されたCW光は、直線導波路90の他端部から出力される。電極84a,84bと電極84cとの間に印加される変調信号によってリング型導波路82の共振波長を変化することにより、直線導波路90の他端部から出力される出力光を変調する。この光半導体素子80では、直線導波路92に接続された光検出器94により検出されたモニタ電流に基づいて制御部96がヒータ86を制御することにより、CW光の波長とリング型導波路82の共振波長とを一致させる。
【0052】
図9に示す光半導体素子68において、直線導波路70とリング型導波路74との間隔によって設定されるパワー透過率をT、直線導波路72とリング型導波路74との間隔によって設定されるパワー透過率をTとする。パワー透過率とは、ある導波路から別の導波路へ光が伝搬する割合である。導波路間の間隔が狭いほど、パワー透過率は高くなる。変調光出力パワー曲線のピークの波長帯域は、パワー透過率が高いほど、即ち、導波路間の間隔が狭いほど広くなる。
【0053】
パワー透過率が低いとき、例えばT=T=1%の場合、図10に示すような変調光パワー曲線が得られる。リング型導波路74に変調信号を印加していない状態(電圧V)では、実線で示すような変調光出力パワー曲線が得られる。また、リング型導波路74に変調信号をした状態(電圧Von)では、点線で示すような変調光出力パワー曲線が得られる。
【0054】
このように、パワー透過率が低いときには、変調光出力パワー曲線のピークが急峻になり、変調光出力パワー曲線のピークの波長帯域は狭くなる。このことは、変調信号の変化に対する変調光出力パワーの変化が大きいことを意味するものであり、急峻な変調光出力パワー曲線は、光半導体素子の変調効率を高めるうえで有効である。すなわち、例えば図10に矢印の範囲で示すように、変調信号の有無によって、大きな変調光出力パワーの変化を得ることができる。
【0055】
このような特性は、本実施形態による光半導体素子でも同様である。すなわち、本実施形態による光半導体素子においても、変調光出力パワー曲線のピークを図10に示すような急峻なピークにするために、直線導波路10とリング導波路18との間のパワー透過率は低い値に設定することが望ましい。
【0056】
一方、パワー透過率が高いとき、例えばT=T=40%の場合、図11に示すような光変調パワー曲線が得られる。リング型導波路74に変調信号を印加していない状態(電圧V)では、実線で示すような変調光出力パワー曲線が得られる。また、リング型導波路74に変調信号をした状態(電圧Von)では、点線で示すような変調光出力パワー曲線が得られる。
【0057】
このように、パワー透過率が高いときには、波長の変化に対する変調光出力パワーの変化は小さく、図11に矢印の範囲で示すように、変調効率は高いとは言えない。その一方、変調光出力パワー曲線のピークの波長帯域は広いため、広い波長範囲において変調光出力をモニタするという観点からは、望ましいと言える。モニタ可能波長幅が広いほど、入力光の波長と光共振器18の共振波長との間のずれの許容量を大きくすることができる。
【0058】
すなわち、本実施形態による光半導体素子において、変調光出力パワー曲線のピークを図11に示すようななだらかなピークとしてモニタ可能波長幅を広げるために、直線導波路10とリング導波路24との間及び直線導波路10とリング導波路28との間のパワー透過率は、高い値に設定することが望ましい。
【0059】
図13に示す光半導体素子80において、リング型導波路82と直線導波路90,92との間のパワー透過率が1%の場合、光検出器94により検出されるモニタ光パワーは、図12に示すようになる。モニタ限界パワーが10−2程度であるとすると、モニタ可能波長幅はおよそ0.5nmとなる。
【0060】
これに対し、本実施形態による光半導体素子において、直線導波路10とリング型導波路24,28との間のパワー透過率を80%に設定すると、光検出器36a,36bにより検出されるモニタ光パワーは、図12に示すようになる。モニタ限界パワーが10−2程度であるとすると、モニタ可能波長幅はおよそ7.5nmとなる。
【0061】
光半導体素子のモニタ可能波長幅は、図14に示すように、モニタ限界パワーが小さくなるほど大きくなる。本実施形態による光半導体素子によれば、モニタ可能波長幅を、光半導体素子80のモニタ可能波長幅の約13〜20倍程度にまで高めることができる。
【0062】
本実施形態による光半導体素子では、光変調を行う光共振器10を別に設けており、直線導波路10とリング型導波路18との間のパワー透過率を、直線導波路10とリング型導波路24,28との間のパワー透過率とは独立して設定することができる。したがって、モニタ可能波長幅を広げつつ、変調効率をも高めることができる。
【0063】
このように、本実施形態では、入力光を変調する光共振器12とは別に、光共振器12の共振波長よりも共振波長が短波長及び長波長の光共振器14,16とを設ける。そして、これら光共振器14,16からの出力信号を用いて光共振器12の共振波長が入力光の波長に一致するように温度制御を行う。したがって、本実施形態の光半導体素子によれば、入力光と光共振器12との間の波長ずれを広い波長範囲で許容しつつ、光共振器12の共振波長を入力光の波長に容易に一致させることができる。また、光共振器12の共振を強めることが可能となり、変調効率を向上することができる。
【0064】
[第2実施形態]
第2実施形態による光半導体素子について図15を用いて説明する。図1乃至図14に示す第1実施形態による光半導体素子と同一の構成要素には同一の符号を付し説明を省略し又は簡潔にする。
【0065】
図15は、本実施形態による光半導体素子を示す概略図である。
【0066】
本実施形態による光半導体素子は、リング型導波路の平面形状が異なるほかは、第1実施形態による光半導体素子と同様である。
【0067】
すなわち、本実施形態による光半導体素子は、リング型導波路18,24,28の代わりに、図15に示すように、4つの直線部分と4つの円弧部分とを組み合わせた構造のリング型導波路18a,24a,28aを有している。
【0068】
リング型導波路18a,24a,28aの円弧部分は、半径rの円を4等分したものである。直線部分は、円弧部分の間に配され、対向する直線部分の長さは等しくなるように設定されている。直線導波路10と光学的に結合するように配された直線部分の長さは、リング型導波路18a,24a,28aにおいてそれぞれ等しくなるように設定されている。直線導波路10と光学的に結合するように配された直線部分の長さを、例えばlとする。他の一対の対向する直線部分においては、リング型導波路18aにおける直線部分の長さをlとすると、リング型導波路24aにおける直線部分の長さはl−Δl、リング型導波路28aにおける直線部分の長さはl+Δlとなるように設定されている。
【0069】
このようなリング型導波路18a,24a,28aの共振波長は、以下のように表される。
【0070】
リング型導波路18a,24a,28aの実効屈折率をnとすると、リング型導波路18a,24a,28aの光学的距離は、それぞれ2n(πr+l+l),2n(πr+l+l−Δl),2n(πr+l+l+Δl)と表される。共振波長は光学的距離の整数分の1であるので整数をmとすると、リング型導波路18a,24a,28aの共振波長は、それぞれ2n(πr+l+l−Δl)/m、2n(πr+l+l−Δl)/m、2n(πr+l+l+Δl)と表される。即ち、リング型導波路24a,28aの共振波長は、リング型導波路18aの共振波長からΔλ=2nΔl/mだけ離れた共振波長となる。
【0071】
このように、本実施形態においても、リング型導波路18aと、リング型導波路18aの共振波長よりΔλだけ短波長であるリング型導波路24aと、リング型導波路18aの共振波長よりΔλだけ長波長であるリング型導波路28aとを設けることができる。
【0072】
したがって、本実施形態の光半導体素子によれば、入力光と光共振器12aとの間の波長ずれを広い波長範囲で許容しつつ、光共振器12aの共振波長を入力光の波長に容易に一致させることができる。また、光共振器12aの共振を強めることが可能となり、変調効率を向上することができる。
【0073】
[第3実施形態]
第3実施形態による光半導体素子について図16を用いて説明する。図1乃至図15に示す第1実施形態又は第2実施形態による光半導体素子と同一の構成要素には同一の符号を付し説明を省略し又は簡潔にする。
【0074】
図16は、本実施形態による光半導体素子を示す概略図である。
【0075】
本実施形態による光半導体素子は、図16に示すように、第2の光共振器14と第3の光共振器16との配置が逆であるほかは、第1実施形態による光半導体素子と同様である。
【0076】
第2の光共振器14と第3の光共振器16とを逆に配置した場合にも、第1実施形態による光半導素子と同様に機能することができる。
【0077】
このように、本実施形態の光半導体素子によれば、入力光と光共振器12との間の波長ずれを広い波長範囲で許容しつつ、光共振器12の共振波長を入力光の波長に容易に一致させることができる。また、光共振器12の共振を強めることが可能となり、変調効率を向上することができる。
【0078】
[第4実施形態]
第4実施形態による光半導体素子について図17を用いて説明する。図1乃至図16に示す第1乃至第3実施形態による光半導体素子と同一の構成要素には同一の符号を付し説明を省略し又は簡潔にする。
【0079】
図17は、本実施形態による光半導体素子を示す概略図である。
【0080】
本実施形態では、第2の光共振器14及び第3の光共振器を、直線導波路10から分岐した導波路(分岐導波路)99a,99bに光学的に結合するように配置している。
【0081】
すなわち、図17に示すように、直線導波路10から分岐して、導波路99a及び導波路99bが設けられている。第2の光共振器14は、導波路99aに光学的に結合するように配されている。また、第3の光共振器16は、導波路99bに光学的に結合するように配されている。
【0082】
第2の光共振器14及び第3の光共振器16を、直線導波路10から分岐した導波路99a,99bに設けることにより、光共振器12の共振波長を入力光の波長に一致させる際の温度制御性を向上することができる。
【0083】
例えば、第1実施形態では、第3の光共振器16は第2の光共振器14の後段に配されているため、第2の光共振器14に導かれるCW光の光量の分だけ第3の光共振器16に導かれるCW光の光量が減少する。そのような場合、モニタ電流曲線S1のピーク値とモニタ電流曲線S2のピーク値とが異なり、モニタ電流曲線S1とモニタ電流曲線S2との交点が必ずしもピーク波長の中間点に一致するとは限らない。モニタ電流曲線S1とモニタ電流曲線S2との交点が中間点からずれると、モニタ電流I1とモニタ電流I2とが一致するようにヒータ22を制御してもCW光の波長とリング型導波路18の共振波長とを一致させることはできない。
【0084】
直線導波路10から分岐して導波路99a,99bを設けることにより、第2の光共振器14に導かれるCW光の光量と、第3の光共振器16に導かれるCW光の光量とを等しくすることができる。これにより、モニタ電流曲線S1のピーク値とモニタ電流曲線S2のピーク値とを一致させ、モニタ電流曲線S1とモニタ電流曲線S2との交点をピーク波長の中間点に位置させることができる。
【0085】
このように、本実施形態によれば、第2の光共振器14及び第3の光共振器16を、直線導波路10から分岐した導波路99a,99bに設けるので、光共振器12の共振波長を入力光の波長に一致させる際の温度制御性を向上することができる。
【0086】
[第5実施形態]
第5実施形態による光半導体素子について図18を用いて説明する。図1乃至図17に示す第1乃至第4実施形態による光半導体素子と同一の構成要素には同一の符号を付し説明を省略し又は簡潔にする。
【0087】
図18は、本実施形態による光半導体素子を示す概略図である。
【0088】
本実施形態による光半導体素子は、図18に示すように、第2の光共振器14と第3の光共振器16とが直線導波路10の同じ場所で光学的に結合するように配されているほかは、第1実施形態による光半導体素子と同様である。
【0089】
第2の光共振器14と第3の光共振器16とを直線導波路10の同じ場所で光学的に結合することにより、第2の光共振器14に導かれるCW光の光量と第3の光共振器16に導かれるCW光の光量とを等しくすることができる。これにより、モニタ電流曲線S1のピーク値とモニタ電流曲線S2のピーク値とを一致させ、モニタ電流曲線S1とモニタ電流曲線S2との交点をピーク波長の中間点に位置させることができる。
【0090】
このように、本実施形態によれば、第2の光共振器14及び第3の光共振器16を、直線導波路10から分岐した導波路99a,99bに設けるので、光共振器12の共振波長を入力光の波長に一致させる際の温度制御性を向上することができる。
【0091】
[第6実施形態]
第6実施形態による光半導体素子について図19及び図20を用いて説明する。図1乃至図18に示す第1実施形態乃至第5実施形態による光半導体素子と同一の構成要素には同一の符号を付し説明を省略し又は簡潔にする。
【0092】
図19は、本実施形態による光半導体素子を示す概略図である。図20は、モニタ電流曲線と波長との関係を示すグラフ(その3)である。
【0093】
はじめに、本実施形態による光半導体素子の構造について図19を用いて説明する。
【0094】
本実施形態による光半導体素子は、図1に示す第1実施形態による光半導体素子において、モニタ用に更に2つの光共振器を追加したものである。すなわち、図19に示すように、直線導波路10に光学的に結合するように、第4の光共振器100及び第5の光共振器102とが更に設けられている。また、導波路104,106を有する光検出器36c,36dとが更に設けられている。
【0095】
第4の光共振器100は、リング型導波路110と、リング型導波路110に近接して配されたヒータ22とを有している。
【0096】
第5の光共振器102は、リング型導波路112と、リング型導波路112に近接して配されたヒータ22とを有している。
【0097】
リング型導波路18,24,28,110,112の直径は、それぞれd,d−Δd,d+Δd,d−Δd,d+Δdとなるように設定されている。本実施形態では、例えばΔdはΔdより大きくなるように設定されている。
【0098】
直線導波路10とリング型導波路24,28との間隔は、直線導波路10とリング型導波路110,112との間隔より狭く設定されている。また、直線導波路10とリング型導波路110,112との間隔は、直線導波路10とリング型導波路18との間隔より狭く設定されている。例えば、直線導波路10とリング型導波路24,28との間隔は、100nmに設定されている。直線導波路10とリング型導波路110,112との間隔は、200nmに設定されている。直線導波路10とリング型導波路18との間隔は、250nmに設定されている。
【0099】
光検出器36cは、導波路104を介してリング型導波路110と光学的に結合している。光検出器36dは、導波路106を介してリング型導波路112と光学的に結合している。
【0100】
制御部38aは、光検出器36a,36bに接続された電流減算回路60aと、電流減算回路60aに接続されたPID制御回路62aとを有している。制御部38bは、光検出器36c,36dに接続された電流減算回路60bと、電流減算回路60bに接続されたPID制御回路60bとを有している。
【0101】
電圧加算回路108は、PID制御回路62a,62bに接続されている。電圧加算回路108は、PID制御回路62aから出力される駆動信号とPID制御回路62bから出力される駆動信号とを加算するものである。
【0102】
次に、本実施形態による光半導体素子の動作について図20を用いて説明する。
【0103】
CW光の波長とリング型導波路18の共振波長とが一致している場合、本実施形態による光半導体素子は、第1実施形態による光半導体素子と同様に動作する。
【0104】
CW光の波長とリング型導波路18の共振波長とが一致してない場合、第2の光共振器14、第3の光共振器16、第4の光共振器100、第5の光共振器102及びヒータ22を用いて、CW光の波長とリング型導波路18の共振波長とが一致するように調整する。
【0105】
直線導波路10に入力されるCW光は、リング型導波路18だけでなく、リング導波路24,28,110,112にも導かれる。リング型導波路24,28,110,112に導かれたCW光は、導波路26,30,104,106に導かれ、光検出器36a〜36dによって検出される。
【0106】
光検出器36a〜36bによって検出されるモニタ電流I1,I2,I5,I6は、図20に示すような波長特性を有する。図20において、モニタ電流曲線S1はモニタ電流I1の波長特性を示し、モニタ電流曲線S2はモニタ電流I2の波長特性を示している。また、モニタ電流曲線S3はモニタ電流I5の波長特性を示し、モニタ電流曲線S4はモニタ電流I6の波長特性を示している。
【0107】
図20に示すように、モニタ電流曲線S3,S4のピーク波長は、モニタ電流曲線S1のピーク波長とモニタ電流曲線S2のピーク波長との間に位置している。これは、ΔλがΔλより小さい、即ち、ΔdがΔdより大きくなるようにリング導波路24,28,110,112を設計しているからである。
【0108】
また、モニタ電流曲線S3,S4のピークの波長帯域は、モニタ電流曲線S1,S2のピークの波長帯域より狭くなっている。これは、直線導波路10とリング型導波路110,112との間隔を直線導波路10とリング型導波路24,28との間隔よりも広く設定しているからである。
【0109】
光検出器36a,36bによって検出されたモニタ電流I1,I2は、電流減算回路60aにより、モニタ電流I1からモニタ電流I2を減算した電流I3に変換される。光検出器36c,36dによって検出されたモニタ電流I5,I6は、電流減算回路60bにより、モニタ電流I5からモニタ電流I6を減算した電流I7に変換される。
【0110】
PID制御回路62a,62bは、電流減算回路60a,60bによって生成される電流I3,I7に基づいて、電流I3,I7がゼロとなるようにヒータ22をフィードバック制御する。
【0111】
PID制御回路62a,62bは、電流I3,I7がゼロでない場合、入力光の波長λと第1の光共振器12の共振波長λとが一致していないと判断し、ヒータ22に駆動信号を出力する。
【0112】
PID制御回路62aから出力された駆動信号とPID制御回路62bから出力された駆動信号とは、電圧加算回路108により加算され、ヒータ22に送信される。
【0113】
ヒータ22による加熱後、PID制御回路62a,62bは再度電流I3,I7の測定を行い、電流I3,I7がゼロであるかどうかをチェックする。電流I3,I7がゼロであれば、PID制御回路62a,62bは、ヒータ22に出力する駆動信号をそのまま維持する。電流I3,I7がゼロでない場合には、PID制御回路62a,62bは、電流I3,I7の値に応じてヒータ22の駆動信号を適宜増減する。
【0114】
PID制御回路62a,62bは、このようなフィードバック制御を継続して行い、電流I3,I7がゼロ近傍で安定するようにヒータ22を制御する。これにより、入力光の波長λと第1の光共振器12の共振波長とを一致させることができる。
【0115】
電流I3だけでなく電流I7を更に用いてヒータ22を制御するのは、上述したように、モニタ電流曲線S1とモニタ電流曲線とが波長λからずれて交わる場合があり、そのような場合、CW光の波長とリング型導波路18の共振波長とがずれるためである。
【0116】
そのような場合、第4の光共振器100と第5の光共振器102とを更に用い、CW光の波長とリング型導波路18の共振波長とのずれを補正する。
【0117】
直線導波路10とリング型導波路110,112との間隔は、直線導波路10とリング型導波路24,28との間隔より広いため、モニタ電流曲線S3,S4のピークの波長帯域は、モニタ電流曲線S1,S2のピークの波長帯域より狭くなる。これにより、電流I3のみを用いた波長制御より精度の高い波長制御が可能となる。
【0118】
このように、本実施形態では、入力光を変調する光共振器12とは別に、光共振器12の共振波長より共振波長がΔλ,Δλだけ短波長及び長波長の光共振器14,16,100,102とを設ける。そして、これら光共振器14,16,100,102からの出力信号を用いて光共振器12の共振波長が入力光の波長に一致するように温度制御を行う。
【0119】
したがって、本実施形態によれば、広範囲の波長制御と、狭い波長範囲ではあるが高精度な波長制御とを組み合わせることにより、広い波長帯域で精度の高い波長制御が可能となる。
【0120】
[第7実施形態]
第7実施形態による光半導体素子について図21乃至図23を用いて説明する。図1乃至図20に示す第1乃至第6実施形態による光半導体素子と同一の構成要素には同一の符号を付し説明を省略し又は簡潔にする。
【0121】
図21は、本実施形態による光半導体素子を示す概略図である。図22及び図23は、本実施形態による光半導体素子を示す断面図である。
【0122】
本実施形態による光半導体素子は、図21に示すように、光検出器36a,36bの代わりに、光検出器36eと、光検出器36fとが設けられているほかは、第1実施形態による光半導体素子と同様である。
【0123】
光検出器36e,36fは、例えば図22及び図23に示すように、リング型導波路24,28の一部を用いて形成されている。リング型導波路24,28の一部の領域には、第1の導電型(例えばN型)の不純物がドーピングされており、その上に、例えばGe等により第2導電型(例えばP型)の光吸収部114,118が形成されている。
【0124】
シリコン酸化膜54上には、VIA配線122aを介してリング型導波路24に接続された電極116aと、VIA配線122bを介して光吸収部114に接続された電極116bが形成されている。また、VIA配線123aを介してリング型導波路28に接続された電極120aと、VIA配線123bを介して光吸収部118に接続された電極120bとが形成されている。電極116a,120aは、電源113に接続されている。電極116b,120bは、電流減算回路60に接続されている。電極116a,116b,120a,120bは、例えばアルミニウムによって形成される。VIA配線122a,122b,123a,123bは、例えばタングステンによって形成される。
【0125】
このように、光検出器36e,36fでは、第1導電型を有するリング型導波路24,28の一部と第2導電型を有する光吸収部114,118とがPN接合を形成している。したがって、このPN結合に逆バイアスを印加することにより、光吸収部114,118に吸収された光をモニタ電流I1,I2として検出することができる。
【0126】
このように、本実施形態によれば、リング型導波路24,28の一部の領域に光検出器36e,36fを形成することができる。
【0127】
[第8施形態]
第8施形態による光半導体素子について図24及び図25用いて説明する。図1乃至図23に示す第1乃至第7実施形態による光半導体素子と同一の構成要素には同一の符号を付し説明を省略し又は簡潔にする。
【0128】
図24は、本実施形態による光半導体素子を示す概略図である。図25は、図24におけるA−A′線断面図である。
【0129】
本実施形態による光半導体素子は、図24に示すように、リング型導波路18,24,28の周囲に断熱溝124a〜124jが形成されているほかは、第1実施形態による光半導体素子と同様である。
【0130】
リング型導波路18,24,28の周囲に断熱溝124a〜124jを形成するのでヒータ22で発生した熱の拡散を抑制することができ、温度制御効率を向上させることができる
断熱溝124a〜124jは、例えば図25に示すように、リング型導波路18,24,28の周囲のSOI基板50及びシリコン酸化膜層54をエッチングすることにより形成される。
【0131】
このように、本実施形態によれば、リング型導波路18,24,28の周囲に断熱溝124a〜124jを形成することにより、ヒータ22で発生した熱の拡散を抑制することができ、温度制御効率を向上させることができる。
【0132】
[第9実施形態]
第8実施形態による光半導体素子について図26を用いて説明する。図1乃至図25に示す第1乃至第8実施形態による光半導体素子と同一の構成要素には同一の符号を付し説明を省略し又は簡潔にする。
【0133】
図26は、本実施形態による光半導体素子を示す概略図である。
【0134】
本実施形態による光半導体素子では、図26に示すように、リング型導波路18と光学的に結合するように配された導波路126から出力光を出力するようにしているほかは、図1に示す第1実施形態による光半導体素子と同様である。
【0135】
本実施形態では、リング型導波路18に導かれる光が出力光として導波路126の出力端128から出力される。このため、変調光出力パワーは、例えば図10に示す光共振器78の変調光出力パワーのように、直線導波路10からリング型導波路18への透過率が最大となるとき、変調光出力パワーも最大となる。すなわち、本実施形態による光半導体素子では、第1実施形態による光半導体素子と反転した変調信号が得られる。
【0136】
このように、本実施形態の光半導体素子によれば、入力光と光共振器12との間の波長ずれを広い波長範囲で許容しつつ、光共振器12の共振波長を入力光の波長に容易に一致させることができる。また、光共振器12の共振を強めることが可能となり、変調効率を向上することができる。
【0137】
[第10実施形態]
第10実施形態による光半導体素子について図27を用いて説明する。図27は、本実施形態による光半導体素子を示す概略図である。図1乃至図26に示す第1乃至第9実施形態による光半導体素子と同一の構成要素には同一の符号を付し説明を省略し又は簡潔にする。
【0138】
本実施形態では、電流減算回路60及びPID制御回路62の具体例を示す。
【0139】
電流減算回路60は、例えば図27に示すように、抵抗値Rの抵抗130a,130bと、抵抗値Rの抵抗132a,132bと、オペアンプ(Operational Amplifier、オペレーショナル・アンプリファイア、演算増幅器)134とを有している。抵抗130aの一端は光検出器36aに接続され、他端はオペアンプ134のマイナス入力端子に接続されている。抵抗130bの一端は光検出器36bに接続され、他端はオペアンプ134のプラス入力端子に接続されている。抵抗132aの一端は抵抗130aとオペアンプ134との間に設けられた接続点T1に接続され、他端はオペアンプ134の出力端とPID制御回路62の入力端との間に設けられた接続点T2に接続されている。抵抗132bの一端は抵抗130bとオペアンプ134のプラス入力端子との間に設けられた接続点T3に接続され、他端はグラウンド線に接続されている。
【0140】
PID制御回路62は、比例制御回路(負帰還増幅回路)136と、積分制御回路138と、微分制御回路140とを有している。比例制御回路とは、入力値を出力値と目標値との偏差の一次関数として制御する回路である。積分制御回路とは、出力値と目標値との偏差の時間積分に比例して入力値を変化させる回路である。微分制御回路とは、出力値と目標値との偏差の時間微分に比例して入力値を変化させる回路のことである。
【0141】
比例制御回路136は、例えば図27に示すように、抵抗値RP1の抵抗142と、抵抗値RP2の144と、オペアンプ146とを有している。抵抗142と抵抗144とは直列に接続されている。抵抗142の一端はオペアンプ134の出力端に接続され、抵抗144の一端は微分制御回路140の抵抗154aに接続されている。オペアンプ146のプラス入力端子は、グラウンド線に接続されている。オペアンプ146のマイナス入力端子は、抵抗142と抵抗144との間に設けられた接続点T4に接続されている。オペアンプ146の出力端は、抵抗144と微分制御回路140の抵抗154aとの間に設けられた接続点T5に接続されている。
【0142】
積分制御回路138は、例えば図27に示すように、抵抗値Rの抵抗148と、容量Cのキャパシタ150と、オペアンプ152とを有している。抵抗148とキャパシタ150とは、直列に接続されている。抵抗148の一端はオペアンプ134の出力端に接続され、キャパシタ150の一端は微分制御回路140の抵抗154bに接続されている。オペアンプ152のプラス入力端子は、グラウンド線に接続されている。オペアンプ152のマイナス入力端子は、抵抗148とキャパシタ150との間に設けられた接続点T6に接続されている。オペアンプ152の出力端は、キャパシタ150と微分制御回路140の抵抗154bとの間に設けられた接続点T7に接続されている。
【0143】
微分制御回路140は、例えば図27に示すように、抵抗値Rの抵抗154a〜154cと、抵抗値RD′の156と、容量Cのキャパシタ158と、オペアンプ160とを有している。抵抗156とキャパシタ160とは直列に接続されている。抵抗156の一端はオペアンプ154のマイナス入力端子に接続され、キャパシタ158の一端はオペアンプ134の出力端に接続されている。オペアンプ160のプラス入力端子は、グラウンド線に接続されている。オペアンプ160の出力端はヒータ22に接続されている。抵抗154aの一端は、抵抗156とオペアンプ160のマイナス入力端子との間に設けられた接続点T8に接続されている。抵抗154bの一端は、抵抗156とオペアンプ160のマイナス入力端子との間に設けられた接続点T9に接続されている。抵抗154cの一端は抵抗156とオペアンプ160のマイナス入力端子との間に設けられた接続点T8に接続され、他端はオペアンプ160の出力端とヒータ22との間に設けられた接続点T10に接続されている。
【0144】
このような電流減算回路60及びPID制御回路62は、第1乃至第9実施形態による光半導体素子に用いられる電流減算回路60,60a,60b及びPID制御回路62,62a,62bとして用いることができる。
【0145】
[変形実施形態]
上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。
【0146】
例えば、上記実施形態では、シリコンを用いて光共振器12,14,16,100,102を形成したが、光共振器12,14,16,100,102の形成材料は特に限定されるものではない。例えば、SiGeや化合物半導体を用いてもよい。
【0147】
また、上記実施形態では、電極20a,20b間に電圧を印加していない状態でCW光の波長と第1の光共振器12の共振波長とを一致させたが、これに限定されるものではない。例えば、電極20a,20b間に電圧Vonを印加した状態でCW光の波長と第1の光共振器12の共振波長とが一致するように調整してもよい。その際は、電極20a,20b間に電圧Vonを印加した際の第1の光共振器12の共振波長がCW光の波長より短くなるようにリング型導波路18の直径を適宜設定するとよい。
【0148】
また、第6実施形態では、ΔλがΔλより大きくなるように設定したが、ΔλがΔλより小さくなるように設定してもよい。
【0149】
また、第4実施形態による光半導体素子と第5実施形態による光半導体素子とを組み合わせるほかは、第2乃至第9実施形態による光半導体素子を適宜組み合わせることができる。例えば、第6実施形態による光半導体素子と第8実施形態による光半導体素子とを組み合わせることにより、高い温度制御性を有し、且つ、広い波長帯域で精度の高い温度制御が可能な光半導体素子となる。
【0150】
以上の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0151】
(付記1) 入力光が入力される第1の導波路と、
前記第1の導波路と光学的に結合するように配されたリング変調器と、
前記第1の導波路と光学的に結合するように配され、前記リング変調器の周回光路長より小さな周回光路長を有する第1のリング共振器と、
前記第1の導波路と光学的に結合するように配され、前記リング変調器の前記周回光路長より大きな周回光路長を有する第2のリング共振器と、
前記リング変調器と前記第1のリング共振器と前記第2のリング共振器とに近接して配されたヒータと、
前記第1のリング共振器中の光パワーをモニタする第1の光検出器と、
前記第2のリング共振器中の光パワーをモニタする第2の光検出器と、
前記第1の光検出器及び前記第2の光検出器により検出された信号に基づいて、前記リング変調器の共振波長が前記入力光の波長と一致するように前記ヒータを制御する制御部と
を有することを特徴とする光半導体素子。
【0152】
(付記2) 付記1記載の光半導体素子において、
前記リング変調器の前記周回光路長と前記第1のリング共振器の前記周回光路長との差と、前記リング変調器の前記周回光路長と前記第2のリング共振器の前記周回光路長の差とが同一である
ことを特徴とする光半導体素子。
【0153】
(付記3) 付記1又は2記載の光半導体素子において、
前記第1の導波路と前記第1のリング共振器との間隔及び前記第1の導波路と前記第2のリング共振器との間隔は、前記第1の導波路と前記リング変調器との間隔より狭い
ことを特徴とする光半導体素子。
【0154】
(付記4) 付記3記載の光半導体素子において、
前記第1のリング共振器及び前記第2のリング共振器は、前記第1の導波路の入力端側に配されている
ことを特徴とする光半導体素子。
【0155】
(付記5) 付記4記載の光半導体素子において、
前記第1の導波路は、第1の分岐導波路と第2の分岐導波路とを有し、
前記第1のリング共振器は、前記第1の分岐導波路と光学的に結合するように配され、
前記第2のリング共振器は、前記第2の分岐導波路と光学的に結合するように配されている
ことを特徴とする光半導体素子。
【0156】
(付記6) 付記4記載の光半導体素子において、
前記第1のリング共振器と前記第2のリング共振器とは、前記第1の導波路の同じ場所において光学的に結合するように配されている
ことを特徴とする光半導体素子。
【0157】
(付記7) 付記1乃至6のいずれか1項に記載の光半導体素子において、
前記リング変調器と光学的に結合するように配された第2の導波路を更に有し、
出力光は、前記第2の導波路から出力される
ことを特徴とする光半導体素子。
【0158】
(付記8) 付記項1乃至7のいずれか1項に記載の光半導体素子において、
前記第1の光検出器は、前記第1のリング共振器の一部に形成され、
前記第2の光検出器は、前記第2のリング共振器の一部に形成されている
ことを特徴とする光半導体素子。
【0159】
(付記9) 付記1乃至8のいずれか1項に記載の光半導体素子において、
前記リング変調器と前記第1のリング共振器と前記第2のリング共振器の周囲に形成された断熱溝を更に有する
ことを特徴とする光半導体素子。
【0160】
(付記10) 付記1乃至9のいずれか1項に記載の光半導体素子において、
前記制御部は、前記第1の光検出器の出力信号と前記第2の光検出器の出力信号とが入力される電流減算回路と、前記電流減算回路から出力される出力信号に基づいて前記ヒータを制御するPID制御回路とを有する
ことを特徴とする光半導体素子。
【0161】
(付記11) 付記10記載の光半導体装置において、
前記PID制御回路は、前記電流減算回路から出力される前記出力信号がゼロになるように前記ヒータを制御する
ことを特徴とする光半導体素子。
【0162】
(付記12) 付記1乃至11のいずれか1項に記載の光半導体素子において、
前記ヒータに近接して、前記第1の導波路と光学的に結合するように配され、前記第1のリング共振器の前記周回光路長より大きく、前記リング変調器の前記周回光路長より小さな周回光路長を有する第3のリング共振器と、
前記ヒータに近接して、前記第1の導波路と光学的に結合するように配され、前記リング変調器の前記周回光路長より大きく、前記第2のリング共振器の前記周回光路長より小さな周回光路長を有する第4のリング共振器と、
前記第3のリング共振器中の光パワーをモニタする第3の光検出器と、
前記第4のリング共振器中の光パワーをモニタする第4の光検出器とを更に有する
ことを特徴とする光半導体素子。
【0163】
(付記13) 付記12記載の光半導体素子において、
前記リング変調器の前記周回光路長と前記第3のリング共振器の前記周回光路長との差と、前記リング変調器の前記周回光路長と前記第4のリング共振器の前記周回光路長の差とが同一である
ことを特徴とする光半導体素子。
【0164】
(付記14) 付記12又は13記載の光半導体素子において、
前記第1の導波路と前記第3のリング共振器との間隔及び前記第1の導波路と前記第4のリング共振器との間隔は、前記第1の導波路と前記リング変調器との間前記隔より狭く、前記第1の導波路と前記第1のリング共振器との前記間隔及び前記第1の導波路と前記第2のリング共振器との前記間隔より広い
ことを特徴とする光半導体素子。
【0165】
(付記15) 付記14記載の光半導体素子において、
前記第3のリング共振器及び前記第4のリング共振器は、前記第1の導波路の前記入力端側に配されている
ことを特徴とする光半導体素子。
【符号の説明】
【0166】
10…直線導波路
12,12a…第1の光共振器
14,14a,14b…第2の光共振器
16,16a,16b…第3の光共振器
18,18a…リング型導波路
20a,20b…電極
22…ヒータ
24,24a…リング型導波路
26…導波路
28,28a…リング型導波路
30…導波路
32…入力端
34…出力端
36a〜36f…光検出器
38…制御部
40…ドライバ回路
50…SOI基板
52…SOI層
54…シリコン酸化膜層
56a…P型領域
56b…N型領域
58a,58b…VIA配線
60,60a,60b…電流減算回路
62,62a,62b…PID制御回路
68…光半導体素子
70…直線導波路
72…直線導波路
74…リング型導波路
76a〜76c…電極
78…光共振器
80…光半導体素子
82…リング型導波路
84a〜84c…電極
86…ヒータ
88…光共振器
90…直線導波路
92…直線導波路
94…光検出器
96…制御部
98…ドライバ回路
99a,99b…導波路
100…第4の光共振器
102…第5の光共振器
104…導波路
106…導波路
108…電圧加算回路
110…リング型導波路
112…リング型導波路
113…DC電源
114…光吸収部
116a,116b…電極
118…光吸収部
120a,120b…電極
122a,122b…VIA配線
123a,123b…VIA配線
124a〜124j…断熱溝
126…導波路
128…出力端
130a,132b…抵抗
132a,132b…抵抗
134…オペアンプ
136…比例制御回路
138…積分制御回路
140…微分制御回路
142…抵抗
144…抵抗
146…オペアンプ
148…抵抗
150…キャパシタ
152…オペアンプ
154a〜154c…抵抗
156…抵抗
158…キャパシタ
160…オペアンプ
T1〜T10…接続点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力光が入力される第1の導波路と、
前記第1の導波路と光学的に結合するように配されたリング変調器と、
前記第1の導波路と光学的に結合するように配され、前記リング変調器の周回光路長より小さな周回光路長を有する第1のリング共振器と、
前記第1の導波路と光学的に結合するように配され、前記リング変調器の前記周回光路長より大きな周回光路長を有する第2のリング共振器と、
前記リング変調器と前記第1のリング共振器と前記第2のリング共振器とに近接して配されたヒータと、
前記第1のリング共振器中の光パワーをモニタする第1の光検出器と、
前記第2のリング共振器中の光パワーをモニタする第2の光検出器と、
前記第1の光検出器及び前記第2の光検出器により検出された信号に基づいて、前記リング変調器の共振波長が前記入力光の波長と一致するように前記ヒータを制御する制御部と
を有することを特徴とする光半導体素子。
【請求項2】
請求項1記載の光半導体素子において、
前記リング変調器の前記周回光路長と前記第1のリング共振器の前記周回光路長との差と、前記リング変調器の前記周回光路長と前記第2のリング共振器の前記周回光路長の差とが同一である
ことを特徴とする光半導体素子。
【請求項3】
請求項1又は2記載の光半導体素子において、
前記第1の導波路と前記第1のリング共振器との間隔及び前記第1の導波路と前記第2のリング共振器との間隔は、前記第1の導波路と前記リング変調器との間隔より狭い
ことを特徴とする光半導体素子。
【請求項4】
請求項3記載の光半導体素子において、
前記第1の導波路は、第1の分岐導波路と第2の分岐導波路とを有し、
前記第1のリング共振器は、前記第1の分岐導波路と光学的に結合するように配され、
前記第2のリング共振器は、前記第2の分岐導波路と光学的に結合するように配されている
ことを特徴とする光半導体素子。
【請求項5】
請求項3記載の光半導体素子において、
前記第1のリング共振器と前記第2のリング共振器とは、前記第1の導波路の同じ場所において光学的に結合するように配されている
ことを特徴とする光半導体素子。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光半導体素子において、
前記リング変調器と光学的に結合するように配された第2の導波路を更に有し、
出力光は、前記第2の導波路から出力される
ことを特徴とする光半導体素子。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の光半導体素子において、
前記第1の光検出器は、前記第1のリング共振器の一部に形成され、
前記第2の光検出器は、前記第2のリング共振器の一部に形成されている
ことを特徴とする光半導体素子。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の光半導体素子において、
前記制御部は、前記第1の光検出器の出力信号と前記第2の光検出器の出力信号とが入力される電流減算回路と、前記電流減算回路から出力される出力信号に基づいて前記ヒータを制御するPID制御回路とを有する
ことを特徴とする光半導体素子。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の光半導体素子において、
前記ヒータに近接して、前記第1の導波路と光学的に結合するように配され、前記第1のリング共振器の前記周回光路長より大きく、前記リング変調器の前記周回光路長より小さな周回光路長を有する第3のリング共振器と、
前記ヒータに近接して、前記第1の導波路と光学的に結合するように配され、前記リング変調器の前記周回光路長より大きく、前記第2のリング共振器の前記周回光路長より小さな周回光路長を有する第4のリング共振器と、
前記第3のリング共振器中の光パワーをモニタする第3の光検出器と、
前記第4のリング共振器中の光パワーをモニタする第4の光検出器とを更に有する
ことを特徴とする光半導体素子。
【請求項10】
請求項9記載の光半導体素子において、
前記第1の導波路と前記第3のリング共振器との間隔及び前記第1の導波路と前記第4のリング共振器との間隔は、前記第1の導波路と前記リング変調器との間前記隔より狭く、前記第1の導波路と前記第1のリング共振器との前記間隔及び前記第1の導波路と前記第2のリング共振器との前記間隔より広い
ことを特徴とする光半導体素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2013−37281(P2013−37281A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175007(P2011−175007)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】