説明

光半導体装置用ダイボンド材及びそれを用いた光半導体装置

【課題】放熱性が高く、かつ光の反射率が高く、更に高温に晒されても黄変し難い光半導体装置用ダイボンド材を提供する。
【解決手段】本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材は、珪素原子に結合した水素原子を有する第1のシリコーン樹脂と、珪素原子に結合した水素原子を有さずかつアルケニル基を有する第2のシリコーン樹脂と、ヒドロシリル化反応用触媒と、酸化チタンとを含む。該酸化チタンは、ルチル型酸化チタンである。該酸化チタンの熱伝導率は、10W/m・K以上である。該酸化チタンは、金属酸化物及び金属水酸化物の内の少なくとも1種により被覆されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード(LED)素子などの光半導体素子をダイボンディングするために用いられる光半導体装置用ダイボンド材、並びに該光半導体装置用ダイボンド材を用いた光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)素子などの光半導体素子が、表示装置の光源等に広く用いられている。光半導体素子を用いた光半導体装置の消費電力は低く、かつ寿命は長い。また、光半導体装置は、過酷な環境下でも使用され得る。従って、光半導体装置は、携帯電話用バックライト、液晶テレビ用バックライト、自動車用ランプ、照明器具及び看板などの幅広い用途で使用されている。
【0003】
光半導体装置では、一般にLED素子が基板の上面に、ダイボンド材を用いて接合されている。
【0004】
下記の特許文献1には、上記ダイボンド材として用いることが可能な接着剤組成物が開示されている。具体的には、特許文献1には、2個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基を有するシリコーン樹脂と、3個以上のSiH基を有するシリコーン樹脂と、白金系触媒と、接着性付与剤と、酸化チタンとを含む接着剤組成物が開示されている。
【0005】
下記の特許文献2には、ケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上有するシリコーン樹脂と、環状シロキサンオリゴマーと、熱伝導性充填剤と、白金系触媒と、脂肪族不飽和基を有する揮発性反応調整剤と、珪素原子に結合した水素原子を有するシリコーン樹脂とを含む熱伝導性組成物が開示されている。上記熱伝導性充填剤としては、酸化アルミニウム粉末、酸化ケイ素粉末、窒化ケイ素粉末、窒化ホウ素粉末及び窒化アルミニウム粉末等が挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−120844号公報
【特許文献2】特開2008−280395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
光半導体装置におけるLCD素子の電極として、銀電極と金電極とが広く用いられている。LED素子の電極が銀電極である場合には、封止材を透過した酸素等によって銀電極の表面が酸化して黒くなり、電極による光の反射率が低下しやすい。一方で、LCD素子の電極が金電極である場合には、電極自体が不活性であるため、周囲の雰囲気により電極が変色し難く、電極による光の反射率が比較的低下し難い。しかしながら、透明シリコーン樹脂を含むダイボンド材を用いると、LED素子から発せられた光が金電極の表面に至り、吸収され、光の取り出し効率が悪くなるという問題がある。このような理由から、ダイボンド材には光を十分に反射することが求められる。ダイボンド材による光の反射率は高いほどよい。
【0008】
特許文献1〜2に記載のような従来の組成物をダイボンド材として用いて光半導体装置を作製した場合には、ダイボンド材による光の反射率が低すぎて、光半導体装置から十分な明るさの光が発せられないことがある。さらに、ダイボンド材の放熱性が低いこともある。
【0009】
特に、特許文献1に記載の接着剤組成物では、酸化チタンの使用により、初期の光の反射率がある程度高くなるものの、放熱性を充分に高くすることは困難である。特許文献2に記載の熱伝導性組成物では、熱伝導性充填剤により放熱性はある程度高くなるものの、光の反射率を充分に高くすることは困難である。
【0010】
さらに、上記光半導体装置では、光半導体素子から光を発する際に、高い熱量が発生する。特許文献1〜2に記載のような従来の組成物をダイボンド材として用いて光半導体装置を作製した場合には、発生した熱によりダイボンド材が黄変するという問題もある。ダイボンド材が黄変すると、光半導体装置から取り出される光の明るさがより一層低くなる。
【0011】
本発明の目的は、放熱性が高く、かつ光の反射率が高く、更に高温に晒されても黄変し難い光半導体装置用ダイボンド材、並びに該光半導体装置用ダイボンド材を用いた光半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の広い局面によれば、珪素原子に結合した水素原子を有する第1のシリコーン樹脂と、珪素原子に結合した水素原子を有さず、かつアルケニル基を有する第2のシリコーン樹脂と、ヒドロシリル化反応用触媒と、酸化チタンとを含み、該酸化チタンの結晶構造がルチル型であり、上記酸化チタンの熱伝導率が10W/m・K以上であり、かつ、該酸化チタンが、金属酸化物及び金属水酸化物の内の少なくとも1種により被覆されている、光半導体装置用ダイボンド材が提供される。
【0013】
上記金属酸化物及び金属水酸化物を構成する金属元素は、アルミニウム及びジルコニウムの内の少なくとも1種であることが好ましい。
【0014】
上記酸化チタンは、酸化ジルコニウム及び酸化珪素の内の少なくとも1種を含む被覆材により被覆されていることが好ましい。
【0015】
本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材のある特定の局面では、上記第1のシリコーン樹脂は、下記式(1A)又は下記式(1B)で表され、かつ珪素原子に結合した水素原子を有する第1のシリコーン樹脂であり、上記第2のシリコーン樹脂は、下記式(51A)又は下記式(51B)で表され、かつ珪素原子に結合した水素原子を有さず、かつアルケニル基を有する第2のシリコーン樹脂である。
【0016】
【化1】

【0017】
上記式(1A)中、a、b及びcは、a/(a+b+c)=0.05〜0.50、b/(a+b+c)=0〜0.40及びc/(a+b+c)=0.30〜0.80を満たし、R1〜R6は、少なくとも1個が水素原子を表し、水素原子以外のR1〜R6は、炭素数1〜8の炭化水素基を表す。
【0018】
【化2】

【0019】
上記式(1B)中、a、b、c及びdは、a/(a+b+c+d)=0.05〜0.50、b/(a+b+c+d)=0〜0.40、c/(a+b+c+d)=0.30〜0.80及びd/(a+b+c+d)=0.01〜0.40を満たし、R1〜R6は、少なくとも1個が水素原子を表し、水素原子以外のR1〜R6は、炭素数1〜8の炭化水素基を表し、R7〜R10はそれぞれ、炭素数1〜8の炭化水素基を表し、R11は、炭素数1〜8の2価の炭化水素基を表す。
【0020】
【化3】

【0021】
上記式(51A)中、p、q及びrは、p/(p+q+r)=0.05〜0.50、q/(p+q+r)=0〜0.40及びr/(p+q+r)=0.30〜0.80を満たし、R51〜R56は、少なくとも1個がアルケニル基を表し、アルケニル基以外のR51〜R56は、炭素数1〜8の炭化水素基を表す。
【0022】
【化4】

【0023】
上記式(51B)中、p、q、r及びsは、p/(p+q+r+s)=0.05〜0.50、q/(p+q+r+s)=0〜0.40、r/(p+q+r+s)=0.30〜0.80及びs/(p+q+r+s)=0.01〜0.40を満たし、R51〜R56は、少なくとも1個がアルケニル基を表し、アルケニル基以外のR51〜R56は炭素数1〜8の炭化水素基を表し、R57〜60はそれぞれ、炭素数1〜8の炭化水素基を表し、R61は、炭素数1〜8の2価の炭化水素基を表す。
【0024】
本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材の他の特定の局面では、上記第1のシリコーン樹脂は、珪素原子に結合した水素原子と、アルケニル基とを有する第1のシリコーン樹脂である。
【0025】
本発明に係る光半導体装置は、本発明に従って構成された光半導体装置用ダイボンド材と、接続対象部材と、上記光半導体装置用ダイボンド材を用いて上記接続対象部材に接続された光半導体素子とを備える。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材は、珪素原子に結合した水素原子を有する第1のシリコーン樹脂と、珪素原子に結合した水素原子を有さずかつアルケニル基を有する第2のシリコーン樹脂と、ヒドロシリル化反応用触媒と、酸化チタンとを含み、更に該酸化チタンの結晶構造がルチル型であり、該酸化チタンの熱伝導率が10W/m・K以上であり、しかも該酸化チタンが、金属酸化物及び金属水酸化物の内の少なくとも1種により被覆されているので、放熱性を高くすることができ、更に光の反射率を高くすることができる。
【0027】
さらに、本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材は上記組成を有するので、本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材を用いた光半導体装置において、高い熱量が発生しても、ダイボンド材が黄変し難い。このため、高い光の反射率を長期間にわたり維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る光半導体装置を示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0030】
本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材は、珪素原子に結合した水素原子を有する第1のシリコーン樹脂と、珪素原子に結合した水素原子を有さず、かつアルケニル基を有する第2のシリコーン樹脂と、ヒドロシリル化反応用触媒と、酸化チタンとを含む。該酸化チタンの結晶構造はルチル型である。該酸化チタンの熱伝導率は、10W/m・K以上である。該酸化チタンは、金属酸化物及び金属水酸化物の内の少なくとも1種により被覆されている。
【0031】
上記組成の採用により、特にルチル型酸化チタンの熱伝導率が10W/m・K以上であるので、ダイボンド材の放熱性を高くすることができる。このため、光半導体装置の熱劣化を抑制できる。さらに、ダイボンド材の放熱性が高いことにより、光半導体装置において発生した熱量が、ダイボンド材を介して効果的に放散される。このため、ダイボンド材の黄変を抑制できる。さらに、特定のルチル型酸化チタンの使用により、ダイボンド材における光の反射率を高くすることもできる。このため、光半導体装置において、光半導体素子から光が発せられたときに、光がダイボンド材により効果的に反射される。このため、光半導体装置から取り出される光が明るくなる。
【0032】
さらに、上記組成の採用により、特にルチル型酸化チタンが特定の材料により被覆されていることに由来して、光半導体装置において高い熱量が発生し、ダイボンド材が高温に晒されても、ダイボンド材が黄変し難くなる。この結果、高い光の反射率を長期間にわたり維持できる。このため、光半導体装置から取り出される光の明るさが低下し難くなる。
【0033】
(第1のシリコーン樹脂)
本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材に含まれている第1のシリコーン樹脂は、珪素原子に結合した水素原子を有する。該水素原子は、珪素原子に直接結合している。ダイボンド材のガスバリア性をより一層高める観点からは、第1のシリコーン樹脂は、珪素原子に結合した水素原子と、アリール基とを有することが好ましい。該アリール基としては、無置換のフェニル基、置換フェニル基、無置換のフェニレン基、及び置換フェニレン基が挙げられる。
【0034】
ガスバリア性により一層優れたダイボンド材を得る観点からは、上記第1のシリコーン樹脂は、珪素原子に結合した水素原子と、アルケニル基とを有することが好ましい。
【0035】
ガスバリア性により一層優れたダイボンド材を得る観点からは、上記第1のシリコーン樹脂は、下記式(1A)又は下記式(1B)で表される第1のシリコーン樹脂であることが好ましい。ただし、第1のシリコーン樹脂として、下記式(1A)又は下記式(1B)で表される第1のシリコーン樹脂以外の第1のシリコーン樹脂を用いてもよい。下記式(1B)で表される第1のシリコーン樹脂は、フェニレン基を有していてもよく、フェニレン基を有していなくてもよい。上記第1のシリコーン樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0036】
【化5】

【0037】
上記式(1A)中、a、b及びcは、a/(a+b+c)=0.05〜0.50、b/(a+b+c)=0〜0.40及びc/(a+b+c)=0.30〜0.80を満たし、R1〜R6は、少なくとも1個が水素原子を表し、水素原子以外のR1〜R6は、炭素数1〜8の炭化水素基を表す。なお、上記式(1A)中、(R4R5SiO2/2)で表される構造単位及び(R6SiO3/2)で表される構造単位はそれぞれ、アルコキシ基を有していてもよく、ヒドロキシ基を有していてもよい。
【0038】
【化6】

【0039】
上記式(1B)中、a、b、c及びdは、a/(a+b+c+d)=0.05〜0.50、b/(a+b+c+d)=0〜0.40、c/(a+b+c+d)=0.30〜0.80及びd/(a+b+c+d)=0.01〜0.40を満たし、R1〜R6は、少なくとも1個が水素原子を表し、水素原子以外のR1〜R6は、炭素数1〜8の炭化水素基を表し、R7〜R10はそれぞれ、炭素数1〜8の炭化水素基を表し、R11は、炭素数1〜8の2価の炭化水素基を表す。なお、上記式(1B)中、(R4R5SiO2/2)で表される構造単位、(R6SiO3/2)で表される構造単位、(R7R8R9R10SiR11O2/2)で表される構造単位はそれぞれ、アルコキシ基を有していてもよく、ヒドロキシ基を有していてもよい。
【0040】
ガスバリア性にさらに一層優れたダイボンド材を得る観点からは、上記式(1A)中、R1〜R6は、少なくとも1個がフェニル基を表し、少なくとも1個が水素原子を表し、フェニル基及び水素原子以外のR1〜R6は、炭素数1〜8の炭化水素基を表すことが好ましい。
【0041】
ガスバリア性にさらに一層優れたダイボンド材を得る観点からは、上記式(1B)中、R1〜R6は、少なくとも1個がフェニル基を表し、少なくとも1個が水素原子を表し、フェニル基及び水素原子以外のR1〜R6は、炭素数1〜8の炭化水素基を表すことが好ましい。
【0042】
ガスバリア性にさらに一層優れたダイボンド材を得る観点からは、上記式(1A)中、R1〜R6は、少なくとも1個が水素原子を表し、少なくとも1個がアルケニル基を表し、水素原子及びアルケニル基以外のR1〜R6は、炭素数1〜8の炭化水素基を表すことが好ましい。
【0043】
ガスバリア性にさらに一層優れたダイボンド材を得る観点からは、上記式(1B)中、R1〜R6は、少なくとも1個が水素原子を表し、少なくとも1個がアルケニル基を表し、水素原子及びアルケニル基以外のR1〜R6は、炭素数1〜8の炭化水素基を表すことが好ましい。
【0044】
ガスバリア性にさらに一層優れたダイボンド材を得る観点からは、上記式(1A)中、R1〜R6は、少なくとも1個がフェニル基を表し、少なくとも1個が水素原子を表し、少なくとも1個がアルケニル基を表し、フェニル基、水素原子及びアルケニル基以外のR1〜R6は、炭素数1〜8の炭化水素基を表すことが好ましい。
【0045】
ガスバリア性にさらに一層優れたダイボンド材を得る観点からは、上記式(1B)中、R1〜R6は、少なくとも1個がフェニル基を表し、少なくとも1個が水素原子を表し、少なくとも1個がアルケニル基を表し、フェニル基、水素原子及びアルケニル基以外のR1〜R6は、炭素数1〜8の炭化水素基を表すことが好ましい。
【0046】
上記式(1A)及び式(1B)は平均組成式を示す。上記式(1A)及び式(1B)における炭化水素基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。上記式(1A)及び(1B)中のR1〜R6は同一であってもよく、異なっていてもよい。上記式(1B)中のR7〜R10は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0047】
上記式(1A)及び(1B)中、(R4R5SiO2/2)で表される構造単位における酸素原子部分、(R6SiO3/2)で表される構造単位における酸素原子部分、(R7R8R9R10SiR11O2/2)で表される構造単位における酸素原子部分はそれぞれ、シロキサン結合を形成している酸素原子部分、アルコキシ基の酸素原子部分、又はヒドロキシ基の酸素原子部分を示す。
【0048】
なお、一般に、上記式(1A)及び式(1B)の各構造単位において、アルコキシ基の含有量は少なく、更にヒドロキシ基の含有量も少ない。これは、一般に、第1のシリコーン樹脂を得るために、アルコキシシラン化合物などの有機珪素化合物を加水分解し、重縮合させると、アルコキシ基及びヒドロキシ基の多くは、シロキサン結合の部分骨格に変換されるためである。すなわち、アルコキシ基の酸素原子及びヒドロキシ基の酸素原子の多くは、シロキサン結合を形成している酸素原子に変換される。上記式(1A)及び式(1B)の各構造単位がアルコキシ基又はヒドロキシ基を有する場合には、シロキサン結合の部分骨格に変換されなかった未反応のアルコキシ基又はヒドロキシ基がわずかに残存していることを示す。後述の式(51A)及び(51B)の各構造単位がアルコキシ基又はヒドロキシ基を有する場合に関しても、同様のことがいえる。
【0049】
上記式(1A)及び式(1B)における炭素数1〜8の炭化水素基としては特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、イソへキシル基、シクロヘキシル基、ビニル基、アリル基及びフェニル基等が挙げられる。
【0050】
上記式(1B)における炭素数1〜8の2価の炭化水素基としては特に限定されず、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、シクロヘキシレン基及びフェニレン基等が挙げられる。
【0051】
上記式(1A)及び式(1B)中、アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基及びヘキセニル基等が挙げられる。ガスバリア性をより一層高める観点からは、第1のシリコーン樹脂におけるアルケニル基及び上記式(1A)及び式(1B)中のアルケニル基は、ビニル基又はアリル基であることが好ましく、ビニル基であることがより好ましい。
【0052】
上記第1のシリコーン樹脂における下記式(X1)より求められるアリール基の含有比率は10モル%以上、50モル%以下であることが好ましい。このアリール基の含有比率が10モル%以上であると、ガスバリア性がより一層高くなる。アリール基の含有比率が50モル%以下であると、ダイボンド材の剥離が生じ難くなる。ガスバリア性を更に一層高める観点からは、アリール基の含有比率は20モル%以上であることがより好ましい。ダイボンド材の剥離をより一層生じ難くする観点からは、アリール基の含有比率は、40モル%以下であることがより好ましい。
【0053】
アリール基の含有比率(モル%)=(上記第1のシリコーン樹脂の1分子あたりに含まれるアリール基の平均個数×アリール基の分子量/上記第1のシリコーン樹脂の数平均分子量)×100 ・・・式(X1)
【0054】
上記第1のシリコーン樹脂として、上記式(1A)又は上記式(1B)で表される第1のシリコーン樹脂を用いる場合には、上記式(X1)中、「第1のシリコーン樹脂」は、「平均組成式が上記式(1A)又は上記式(1B)で表される第1のシリコーン樹脂」を示す。
【0055】
上記式(1A)で表され、フェニル基を有する第1のシリコーン樹脂を用いる場合には、上記式(X1)におけるアリール基はフェニル基を示し、アリール基の含有比率はフェニル基の含有比率を示す。
【0056】
上記式(1B)で表され、フェニル基とフェニレン基とを有する第1のシリコーン樹脂を用いる場合には、上記式(X1)におけるアリール基はフェニル基とフェニレン基とを示し、アリール基の含有比率はフェニル基とフェニレン基との合計の含有比率を示す。
【0057】
上記式(1B)で表され、フェニル基を有し、かつフェニレン基を有さない第1のシリコーン樹脂を用いる場合には、上記式(X1)におけるアリール基はフェニル基を示し、アリール基の含有比率はフェニル基の含有比率を示す。
【0058】
ガスバリア性をより一層高める観点からは、上記式(1B)中、(R7R8R9R10SiR11O2/2)の構造単位は、下記式(1b−1)で表される構造単位であることが好ましい。下記式(1b−1)で表される構造単位はフェニレン基を有し、該フェニレン基は置換又は無置換のフェニレン基である。本明細書において、「フェニレン基」の用語には、炭素数1〜8の炭化水素基がベンゼン環に置換した置換フェニレン基も含まれる。なお、下記式(1b−1)で表される構造単位において、末端の酸素原子は、一般に隣接する珪素原子とシロキサン結合を形成しており、隣接する構造単位と酸素原子を共有している。従って、末端の1つの酸素原子を「O1/2」とする。
【0059】
【化7】

【0060】
上記式(1b−1)中、Raは、水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を表し、R7〜R10はそれぞれ、炭素数1〜8の炭化水素基を表す。上記炭化水素基は直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。なお、上記式(1b−1)中のベンゼン環に結合している3つの基の結合部位は特に限定されない。
【0061】
上記式(1B)中、(R7R8R9R10SiR11O2/2)の構造単位は、下記式(1b−2)で表される構造単位であることが好ましい。下記式(1b−2)で表される構造単位はフェニレン基を有し、該フェニレン基は置換又は無置換のフェニレン基である。下記式(1b−2)中のベンゼン環に結合しているRaの結合部位は特に限定されない。
【0062】
【化8】

【0063】
上記式(1b−2)中、Raは、水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を表し、R7〜R10はそれぞれ、炭素数1〜8の炭化水素基を表す。
【0064】
上記式(1B)中、(R7R8R9R10SiR11O2/2)の構造単位は、下記式(1b−3)で表される構造単位であることがより好ましい。下記式(1b−3)で表される構造単位はフェニレン基を有し、該フェニレン基は無置換のフェニレン基である。
【0065】
【化9】

【0066】
上記式(1b−3)中、R7〜R10はそれぞれ、炭素数1〜8の炭化水素基を表す。
【0067】
上記式(1A)又は式(1B)で表される第1のシリコーン樹脂において、(R4R5SiO2/2)で表される構造単位(以下、二官能構造単位ともいう)は、下記式(1−2)で表される構造、すなわち、二官能構造単位中の珪素原子に結合した酸素原子の1つがヒドロキシ基又はアルコキシ基を構成する構造を含んでいてもよい。
【0068】
(R4R5SiXO1/2) ・・・式(1−2)
【0069】
(R4R5SiO2/2)で表される構造単位は、下記式(1−b)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含み、更に下記式(1−2−b)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含んでいてもよい。すなわち、R4及びR5で表される基を有し、かつアルコキシ基又はヒドロキシ基が末端に残存している構造単位も、(R4R5SiO2/2)で表される構造単位に含まれる。具体的には、アルコキシ基がシロキサン結合の部分骨格に変換された場合には、(R4R5SiO2/2)で表される構造単位は、下記式(1−b)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を示す。未反応のアルコキシ基が残存している場合、又はアルコキシ基がヒドロキシ基に変換された場合には、残存アルコキシ基又はヒドロキシ基を有する(R4R5SiO2/2)で表される構造単位は、下記式(1−2−b)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を示す。
【0070】
【化10】

【0071】
上記式(1−2)及び(1−2−b)中、Xは、OH又はORを表し、ORは、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。上記式(1−b)、(1−2)及び(1−2−b)中のR4及びR5は、上記式(1A)又は式(1B)中のR4及びR5と同様の基である。
【0072】
上記式(1A)又は式(1B)で表される第1のシリコーン樹脂において、(R6SiO3/2)で表される構造単位(以下、三官能構造単位ともいう)は、下記式(1−3)又は(1−4)で表される構造、すなわち、三官能構造単位中の珪素原子に結合した酸素原子の2つがそれぞれヒドロキシ基若しくはアルコキシ基を構成する構造、又は、三官能構造単位中の珪素原子に結合した酸素原子の1つがヒドロキシ基若しくはアルコキシ基を構成する構造を含んでいてもよい。
【0073】
(R6SiX1/2) ・・・式(1−3)
(R6SiXO2/2) ・・・式(1−4)
【0074】
(R6SiO3/2)で表される構造単位は、下記式(1−c)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含み、更に下記式(1−3−c)又は(1−4−c)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含んでいてもよい。すなわち、R6で表される基を有し、かつアルコキシ基又はヒドロキシ基が末端に残存している構造単位も、(R6SiO3/2)で表される構造単位に含まれる。
【0075】
【化11】

【0076】
上記式(1−3)、(1−3−c)、(1−4)及び(1−4−c)中、Xは、OH又はORを表し、ORは、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。上記式(1−c)、(1−3)、(1−3−c)、(1−4)及び(1−4−c)中のR6は、上記式(1A)又は(1B)中のR6と同様の基である。
【0077】
上記式(1B)で表される第1のシリコーン樹脂において、(R7R8R9R10SiR11O2/2)で表される構造単位は、下記式(1−5)で表される構造、すなわち、(R7R8R9R10SiR11O2/2)の構造単位中の珪素原子に結合した酸素原子の1つがヒドロキシ基又はアルコキシ基を構成する構造を含んでいてもよい。
【0078】
(R7R8R9R10SiR11XO1/2) ・・・式(1−5)
【0079】
(R7R8R9R10SiR11O2/2)で表される構造単位は、下記式(1−d)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含み、更に下記式(1−5−d)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含んでいてもよい。すなわち、R7、R8、R9、R10及びR11で表される基を有し、かつアルコキシ基又はヒドロキシ基が末端に残存している構造単位も、(R7R8R9R10SiR11O2/2)で表される構造単位に含まれる。
【0080】
【化12】

【0081】
上記式(1−5)及び(1−5−d)中、Xは、OH又はORを表し、ORは、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。上記式(1−d)、(1−5)及び(1−5−d)中のR7〜R11は、上記式(1B)中のR7〜R11と同様の基である。
【0082】
上記式(1−b)〜(1−d)、式(1−2)〜(1−5)、並びに式(1−2−b)、(1−3−c)、(1−4−c)、及び(1−5−d)において、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基としては特に限定されず、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基及びt−ブトキシ基が挙げられる。
【0083】
上記式(1A)中、a/(a+b+c)の下限は0.05、上限は0.50である。a/(a+b+c)が上記下限以上及び上限以下であると、ダイボンド材の耐熱性をより一層高めることができ、かつダイボンド材の剥離をより一層抑制できる。上記式(1A)中、a/(a+b+c)の好ましい下限は0.10、より好ましい下限は0.15であり、好ましい上限は0.45、より好ましい上限は0.40である。
【0084】
上記式(1A)中、b/(a+b+c)の下限は0、上限は0.40である。b/(a+b+c)が上記上限を満たすと、ダイボンド材の高温での貯蔵弾性率を高くすることができる。なお、bが0であり、b/(a+b+c)が0である場合、上記式(1A)中、(R4R5SiO2/2)の構造単位は存在しない。
【0085】
上記式(1A)中、c/(a+b+c)の下限は0.30、上限は0.80である。c/(a+b+c)が上記下限を満たすと、ダイボンド材の高温での貯蔵弾性率を高くすることができる。c/(a+b+c)が上記上限を満たすと、ダイボンド材の耐熱性が高くなり、かつ高温環境下でダイボンド材の硬化物の厚みが減少し難くなる。上記式(1A)中、c/(a+b+c)の好ましい下限は0.35、より好ましい下限は0.40、好ましい上限は0.75である。
【0086】
上記式(1B)中、a/(a+b+c+d)の下限は0.05、上限は0.50である。a/(a+b+c+d)が上記下限及び上限を満たすと、ダイボンド材の耐熱性をより一層高めることができ、かつダイボンド材の剥離をより一層抑制できる。上記式(1A)中、a/(a+b+c+d)の好ましい下限は0.10、より好ましい下限は0.15であり、好ましい上限は0.45、より好ましい上限は0.40である。
【0087】
上記式(1B)中、b/(a+b+c+d)の下限は0、上限は0.40である。b/(a+b+c)が上記上限を満たすと、ダイボンド材の高温での貯蔵弾性率を高くすることができる。なお、bが0であり、b/(a+b+c+d)が0である場合、上記式(1B)中、(R4R5SiO2/2)の構造単位は存在しない。
【0088】
上記式(1B)中、c/(a+b+c+d)の下限は0.30、上限は0.80である。c/(a+b+c+d)が上記下限を満たすと、ダイボンド材の高温での貯蔵弾性率を高くすることができる。c/(a+b+c+d)が上記上限を満たすと、ダイボンド材の耐熱性が高くなり、かつ高温環境下でダイボンド材の硬化物の厚みが減少し難くなる。c/(a+b+c+d)の好ましい下限は0.35、より好ましい下限は0.40、好ましい上限は0.75である。
【0089】
上記式(1B)中、d/(a+b+c+d)の下限は0.01、上限は0.40である。d/(a+b+c+d)が上記下限及び上限を満たすと、腐食性ガスに対して高いガスバリア性を有し、過酷な環境下で使用されてもクラック又は剥離が生じ難い光半導体装置用ダイボンド材を得ることができる。腐食性ガスに対してより一層高いガスバリア性を有し、過酷な環境下で使用されてもクラック又は剥離がより一層生じ難い光半導体装置用ダイボンド材を得る観点からは、上記式(1B)中、d/(a+b+c+d)の好ましい下限は0.03、より好ましい下限は0.05、好ましい上限は0.35、より好ましい上限は0.30である。
【0090】
上記第1のシリコーン樹脂について、テトラメチルシラン(以下、TMS)を基準に29Si−核磁気共鳴分析(以下、NMR)を行うと、置換基の種類によって若干の変動は見られるものの、上記式(1A)及び式(1B)中の(R1R2R3SiO1/2で表される構造単位に相当するピークは+10〜−5ppm付近に現れ、上記式(1A)及び式(1B)中の(R4R5SiO2/2及び(1−2)の二官能構造単位に相当する各ピークは−10〜−50ppm付近に現れ、上記式(1A)及び式(1B)中の(R6SiO3/2、並びに(1−3)及び(1−4)の三官能構造単位に相当する各ピークは−50〜−80ppm付近に現れ、上記式(1B)中の(R7R8R9R10SiR11O2/2に相当するピークは0〜−5ppm付近に現れる。
【0091】
従って、29Si−NMRを測定し、それぞれのシグナルのピーク面積を比較することによって上記式(1A)及び式(1B)中の各構造単位の比率を測定できる。
【0092】
但し、上記TMSを基準にした29Si−NMRの測定で上記式(1A)及び式(1B)中の構造単位の見分けがつかない場合は、29Si−NMRの測定結果だけではなく、H−NMRの測定結果を必要に応じて用いることにより、上記式(1A)及び式(1B)中の各構造単位の比率を見分けることができる。
【0093】
(第2のシリコーン樹脂)
本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材に含まれている第2のシリコーン樹脂は、アルケニル基を有する。該アルケニル基は、珪素原子に直接結合している。上記アルケニル基の炭素−炭素二重結合における炭素原子が、珪素原子に結合していてもよく、上記アルケニル基の炭素−炭素二重結合における炭素原子とは異なる炭素原子が、珪素原子に結合していてもよい。
【0094】
ダイボンド材のガスバリア性をより一層高める観点からは、第2のシリコーン樹脂は、アルケニル基と、アリール基とを有することが好ましい。該アリール基としては、無置換のフェニル基、置換フェニル基、無置換のフェニレン基、及び置換フェニレン基が挙げられる。
【0095】
ガスバリア性により一層優れたダイボンド材を得る観点からは、上記第2のシリコーン樹脂は、下記式(51A)又は下記式(51B)で表される第2のシリコーン樹脂であることが好ましい。ただし、第2のシリコーン樹脂として、下記式(51A)又は下記式(51B)で表される第2のシリコーン樹脂以外の第2のシリコーン樹脂を用いてもよい。下記式(51B)で表される第2のシリコーン樹脂は、フェニレン基を有していてもよく、フェニレン基を有していなくてもよい。上記第2のシリコーン樹脂は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0096】
【化13】

【0097】
上記式(51A)中、p、q及びrは、p/(p+q+r)=0.05〜0.50、q/(p+q+r)=0〜0.40及びr/(p+q+r)=0.30〜0.80を満たし、R51〜R56は、少なくとも1個がアルケニル基を表し、アルケニル基以外のR51〜R56は、炭素数1〜8の炭化水素基を表す。なお、上記式(51A)中、(R54R55SiO2/2)で表される構造単位及び(R56SiO3/2)で表される構造単位はそれぞれ、アルコキシ基を有していてもよく、ヒドロキシ基を有していてもよい。
【0098】
【化14】

【0099】
上記式(51B)中、p、q、r及びsは、p/(p+q+r+s)=0.05〜0.50、q/(p+q+r+s)=0〜0.40、r/(p+q+r+s)=0.30〜0.80及びs/(p+q+r+s)=0.01〜0.40を満たし、R51〜R56は、少なくとも1個がアルケニル基を表し、アルケニル基以外のR51〜R56は炭素数1〜8の炭化水素基を表し、R57〜60はそれぞれ、炭素数1〜8の炭化水素基を表し、R61は、炭素数1〜8の2価の炭化水素基を表す。なお、上記式(51B)中、(R54R55SiO2/2)で表される構造単位、(R56SiO3/2)で表される構造単位、(R57R58R59R60SiR61O2/2)で表される構造単位はそれぞれ、アルコキシ基を有していてもよく、ヒドロキシ基を有していてもよい。
【0100】
上記式(51A)及び式(51B)は平均組成式を示す。上記式(51A)及び式(51B)における炭化水素基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。上記式(51A)及び式(51B)中のR51〜R56は同一であってもよく、異なっていてもよい。上記式(51B)中のR57〜R60は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0101】
上記式(51A)及び式(51B)中、アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基及びヘキセニル基等が挙げられる。ガスバリア性をより一層高める観点からは、第2のシリコーン樹脂におけるアルケニル基及び上記式(51A)及び式(51B)中のアルケニル基は、ビニル基又はアリル基であることが好ましく、ビニル基であることがより好ましい。
【0102】
上記式(51A)及び式(51B)における炭素数1〜8の炭化水素基としては特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、イソへキシル基、シクロヘキシル基、ビニル基、アリル基及びフェニル基が挙げられる。上記式(51B)における炭素数1〜8の2価の炭化水素基としては特に限定されず、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、シクロヘキシレン基、及びフェニレン基等が挙げられる。
【0103】
ダイボンド材のガスバリア性をより一層高め、かつ剥離をより一層生じ難くする観点からは、上記第2のシリコーン樹脂が、下記式(51A)又は下記式(51B)で表され、かつ珪素原子に結合した水素原子を有さず、かつアルケニル基及びアリール基を有する第2のシリコーン樹脂であることが好ましい。
【0104】
ガスバリア性により一層優れたダイボンド材を得る観点からは、上記式(51A)中、R51〜R56は、少なくとも1個がフェニル基を表し、少なくとも1個がアルケニル基を表し、フェニル基及びアルケニル基以外のR51〜R56は、炭素数1〜8の炭化水素基を表すことが好ましい。
【0105】
ガスバリア性により一層優れたダイボンド材を得る観点からは、上記式(51B)中、R51〜R56は、少なくとも1個がフェニル基を表し、少なくとも1個がアルケニル基を表し、フェニル基及びアルケニル基以外のR51〜R56は炭素数1〜8の炭化水素基を表し、R57〜60はそれぞれ、炭素数1〜8の炭化水素基を表し、R61は、炭素数1〜8の2価の炭化水素基を表すことが好ましい。
【0106】
上記第2のシリコーン樹脂における下記式(X51)より求められるアリール基の含有比率は10モル%以上、50モル%以下であることが好ましい。このアリール基の含有比率が10モル%以上であると、ガスバリア性がより一層高くなる。アリール基の含有比率が50モル%以下であると、ダイボンド材の剥離が生じ難くなる。ガスバリア性を更に一層高める観点からは、アリール基の含有比率は20モル%以上であることがより好ましい。剥離をより一層生じ難くする観点からは、アリール基の含有比率は、40モル%以下であることがより好ましい。
【0107】
アリール基の含有比率(モル%)=(第2のシリコーン樹脂の1分子あたりに含まれるアリール基の平均個数×アリール基の分子量/第2のシリコーン樹脂の数平均分子量)×100 ・・・式(X51)
上記第2のシリコーン樹脂として、上記式(51A)又は上記式(51B)で表される第2のシリコーン樹脂を用いる場合には、上記式(X51)中、「第2のシリコーン樹脂」は、「平均組成式が上記式(51A)又は上記式(51B)で表される第2のシリコーン樹脂」を示す。
【0108】
上記式(51A)で表され、フェニル基を有する第2のシリコーン樹脂を用いる場合には、上記式(X51)におけるアリール基はフェニル基を示し、アリール基の含有比率はフェニル基の含有比率を示す。
【0109】
上記式(51B)で表され、フェニル基とフェニレン基とを有する第2のシリコーン樹脂を用いる場合には、上記式(X51)におけるアリール基はフェニル基とフェニレン基とを示し、アリール基の含有比率はフェニル基とフェニレン基との合計の含有比率を示す。
【0110】
上記式(51B)で表され、フェニル基を有し、かつフェニレン基を有さない第2のシリコーン樹脂を用いる場合には、上記式(X51)におけるアリール基はフェニル基を示し、アリール基の含有比率はフェニル基の含有比率を示す。
【0111】
ガスバリア性をより一層高める観点からは、上記式(51B)中、(R57R58R59R60SiR61O2/2)の構造単位は、下記式(51b−1)で表される構造単位であることが好ましい。下記式(51b−1)で表される構造単位はフェニレン基を有し、該フェニレン基は置換又は無置換のフェニレン基である。
【0112】
【化15】

【0113】
上記式(51b−1)中、Rbは、水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を表し、R57〜R60はそれぞれ、炭素数1〜8の炭化水素基を表す。上記炭化水素基は直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。なお、上記式(51b−1)中のベンゼン環に結合している3つの基の結合部位は特に限定されない。
【0114】
上記式(51B)中、(R57R58R59R60SiR61O2/2)の構造単位は、下記式(51b−2)で表される構造単位であることが好ましい。下記式(51b−2)で表される構造単位はフェニレン基を有し、該フェニレン基は置換又は無置換のフェニレン基である。下記式(51b−2)中のベンゼン環に結合しているRbの結合部位は特に限定されない。
【0115】
【化16】

【0116】
上記式(51b−2)中、Rbは、水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を表し、R57〜R60はそれぞれ、炭素数1〜8の炭化水素基を表す。
【0117】
上記式(51B)中、(R57R58R59R60SiR61O2/2)の構造単位は、下記式(51b−3)で表される構造単位であることがより好ましい。下記式(51b−3)で表される構造単位はフェニレン基を有し、該フェニレン基は無置換のフェニレン基である。
【0118】
【化17】

【0119】
上記式(51b−3)中、R57〜R60はそれぞれ、炭素数1〜8の炭化水素基を表す。
【0120】
上記式(51A)又は式(51B)で表される第2のシリコーン樹脂において、(R54R55SiO2/2)で表される構造単位(以下、二官能構造単位ともいう)は、下記式(51−2)で表される構造、すなわち、二官能構造単位中の珪素原子に結合した酸素原子の1つがヒドロキシ基又はアルコキシ基を構成する構造を含んでいてもよい。
【0121】
(R54R55SiXO1/2) ・・・式(51−2)
【0122】
(R54R55SiO2/2)で表される構造単位は、下記式(51−b)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含み、更に下記式(51−2−b)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含んでいてもよい。すなわち、R54及びR55で表される基を有し、かつアルコキシ基又はヒドロキシ基が末端に残存している構造単位も、(R54R55SiO2/2)で表される構造単位に含まれる。
【0123】
【化18】

【0124】
上記式(51−2)及び(51−2−b)中、Xは、OH又はORを表し、ORは、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。上記式(51−b)、(51−2)及び(51−2−b)中のR54及びR55は、上記式(51A)又は式(51B)中のR54及びR55と同様の基である。
【0125】
上記式(51A)又は式(51B)で表される第2のシリコーン樹脂において、(R56SiO3/2)で表される構造単位(以下、三官能構造単位ともいう)は、下記式(51−3)又は(51−4)で表される構造、すなわち、三官能構造単位中の珪素原子に結合した酸素原子の2つがそれぞれヒドロキシ基若しくはアルコキシ基を構成する構造、又は、三官能構造単位中の珪素原子に結合した酸素原子の1つがヒドロキシ基若しくはアルコキシ基を構成する構造を含んでいてもよい。
【0126】
(R56SiX1/2) ・・・式(51−3)
(R56SiXO2/2) ・・・式(51−4)
【0127】
(R56SiO3/2)で表される構造単位は、下記式(51−c)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含み、更に下記式(51−3−c)又は(51−4−c)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含んでいてもよい。すなわち、R56で表される基を有し、かつアルコキシ基又はヒドロキシ基が末端に残存している構造単位も、(R56SiO3/2)で表される構造単位に含まれる。
【0128】
【化19】

【0129】
上記式(51−3)、(51−3−c)、(51−4)及び(51−4−c)中、Xは、OH又はORを表し、ORは、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。上記式(51−c)、(51−3)、(51−3−c)、(51−4)及び(51−4−c)中のR56は、上記式(51A)及び(51B)中のR56と同様の基である。
【0130】
上記式(51B)で表される第2のシリコーン樹脂において、(R57R58R59R60SiR61O2/2)で表される構造単位は、下記式(51−5)で表される構造、すなわち、(R57R58R59R60SiR61O2/2)の構造単位中の珪素原子に結合した酸素原子の1つがヒドロキシ基又はアルコキシ基を構成する構造を含んでいてもよい。
【0131】
(R57R58R59R60SiXR61O1/2) ・・・式(51−5)
【0132】
(R57R58R59R60SiR61O2/2)で表される構造単位は、下記式(51−d)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含み、更に下記式(51−5−d)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含んでいてもよい。すなわち、R57、R58、R59、R60及びR61で表される基を有し、かつアルコキシ基又はヒドロキシ基が末端に残存している構造単位も、(R57R58R59R60SiR61O2/2)で表される構造単位に含まれる。
【0133】
【化20】

【0134】
上記式(51−5)及び(51−5−d)中、Xは、OH又はORを表し、ORは、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。上記式(51−d)、(51−5)及び(51−5−d)中のR57〜R61は、上記式(51B)中のR57〜R61と同様の基である。
【0135】
上記式(51−b)〜(51−d)、式(51−2)〜(51−5)、並びに式(51−2−b)、(51−3−c)、(51−4−c)、及び(51−5−d)において、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基としては特に限定されず、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基及びt−ブトキシ基が挙げられる。
【0136】
上記式(51A)中、p/(p+q+r)の下限は0.05、上限は0.50である。p/(p+q+r)が上記下限及び上限を満たすと、ダイボンド材の耐熱性をより一層高めることができ、かつダイボンド材の剥離をより一層抑制できる。上記式(51A)中、中、p/(p+q+r)の好ましい下限は0.10、より好ましい下限は0.15であり、好ましい上限は0.45、より好ましい上限は0.40である。
【0137】
上記式(51A)中、q/(p+q+r)の下限は0、上限は0.40である。q/(p+q+r)上記上限を満たすと、ダイボンド材の高温での貯蔵弾性率を高くすることができる。上記式(51A)中、q/(p+q+r)の好ましい上限は0.35、より好ましい上限は0.30である。なお、qが0であり、q/(p+q+r)が0である場合、上記式(51A)中、(R54R55SiO2/2)の構造単位は存在しない。
【0138】
上記式(51A)中、r/(p+q+r)の下限は0.30、上限は0.80である。r/(p+q+r)が上記下限を満たすと、ダイボンド材の高温での貯蔵弾性率を高くすることができる。r/(p+q+r)が上記上限を満たすと、ダイボンド材の耐熱性が高くなり、かつ高温環境下でダイボンド材の硬化物の厚みが減少し難くなる。
【0139】
上記式(51B)中、p/(p+q+r+s)の下限は0.05、上限は0.50である。p/(p+q+r+s)が上記上限を満たすと、ダイボンド材の耐熱性をより一層高めることができ、かつダイボンド材の剥離をより一層抑制できる。
【0140】
上記式(51B)中、q/(p+q+r+s)の下限は0、上限は0.40である。q/(p+q+r+s)が上記上限を満たすと、ダイボンド材の高温での貯蔵弾性率を高くすることができる。なお、qが0であり、q/(p+q+r+s)が0である場合、上記式(51B)中、(R54R55SiO2/2)の構造単位は存在しない。
【0141】
上記式(51B)中、r/(p+q+r+s)の下限は0.30、上限は0.80である。r/(p+q+r+s)が上記下限を満たすと、ダイボンド材の高温での貯蔵弾性率を高くすることができる。上記上限を満たすと、ダイボンド材の耐熱性が高くなり、かつ高温環境下でダイボンド材の硬化物の厚みが減少し難くなる。
【0142】
上記式(51B)中、s/(p+q+r+s)の下限は0.01、上限は0.40である。s/(p+q+r+s)が上記下限及び上限を満たすと、腐食性ガスに対して高いガスバリア性を有し、過酷な環境下で使用されてもクラック又は剥離が生じ難い光半導体装置用ダイボンド材を得ることができる。腐食性ガスに対してより一層高いガスバリア性を有し、過酷な環境下で使用されてもクラック又は剥離がより一層生じ難い光半導体装置用ダイボンド材を得る観点からは、上記式(51B)中、s/(p+q+r+s)の好ましい下限は0.03、より好ましい下限は0.05、好ましい上限は0.35、より好ましい上限は0.30である。
【0143】
上記第2のシリコーン樹脂について、テトラメチルシラン(以下、TMS)を基準に29Si−核磁気共鳴分析(以下、NMR)を行うと、置換基の種類によって若干の変動は見られるものの、上記式(51A)及び式(51B)中の(R51R52R53SiO1/2で表される構造単位に相当するピークは+10〜−5ppm付近に現れ、上記式(51A)及び式(51B)中の(R54R55SiO2/2及び(51−2)の二官能構造単位に相当する各ピークは−10〜−50ppm付近に現れ、上記式(51A)及び式(51B)中の(R56SiO3/2、並びに(51−3)及び(51−4)の三官能構造単位に相当する各ピークは−50〜−80ppm付近に現れ、上記式(51B)中の(R57R58R59R60SiR61O2/2に相当するピークは0〜−5ppm付近に現れる。
【0144】
従って、29Si−NMRを測定し、それぞれのシグナルのピーク面積を比較することによって上記式(51A)及び式(51B)中の各構造単位の比率を測定できる。
【0145】
但し、上記TMSを基準にした29Si−NMRの測定で上記式(51A)及び式(51B)中の構造単位の見分けがつかない場合は、29Si−NMRの測定結果だけではなく、H−NMRの測定結果を必要に応じて用いることにより、上記式(51A)及び式(51B)中の各構造単位の比率を見分けることができる。
【0146】
上記第1のシリコーン樹脂100重量部に対して、上記第2のシリコーン樹脂の含有量は10重量部以上、400重量部以下であることが好ましい。第1,第2のシリコーン樹脂の含有量がこの範囲内であると、高温での貯蔵弾性率がより一層高く、かつガスバリア性により一層優れたダイボンド材を得ることができる。高温での貯蔵弾性率がさらに一層高く、かつガスバリア性にさらに一層優れたダイボンド材を得る観点からは、上記第1のシリコーン樹脂100重量部に対して、上記第2のシリコーン樹脂の含有量のより好ましい下限は30重量部、更に好ましい下限は50重量部、より好ましい上限は300重量部、更に好ましい上限は200重量部である。
【0147】
上記光半導体装置用ダイボンド材100重量%中、第1,第2のシリコーン樹脂の合計の含有量は、好ましくは20重量%以上、より好ましくは25重量%以上、更に好ましくは重量30%以上、特に好ましくは40重量%以上、好ましく80重量%以下、より好ましくは70重量%以下である。第1,第2のシリコーン樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、ダイボンド材の粘度を適度な範囲に容易に調整でき、かつダイボンド材の硬化性を高めることができる。
【0148】
ガスバリア性により一層優れているダイボンド材を得る観点からは、本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材は、上記式(1B)で表される第1のシリコーン樹脂及び上記式(51B)で表される第2のシリコーン樹脂の内の少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0149】
(第1,第2のシリコーン樹脂の他の性質及びその合成方法)
上記第1,第2のシリコーン樹脂のアルコキシ基の含有量の好ましい下限は0.5モル%、より好ましい下限は1モル%、好ましい上限は10モル%、より好ましい上限は5モル%である。アルコキシ基の含有量が上記好ましい範囲内であると、ダイボンド材の密着性を高めることができる。
【0150】
アルコキシ基の含有量が上記好ましい下限を満たすと、ダイボンド材の密着性を高めることができる。アルコキシ基の含有量が上記好ましい上限を満たすと、第1,第2のシリコーン樹脂及びダイボンド材の貯蔵安定性が高くなり、ダイボンド材の耐熱性がより一層高くなる。
【0151】
上記アルコキシ基の含有量は、第1,第2のシリコーン樹脂の平均組成式中に含まれる上記アルコキシ基の量を意味する。
【0152】
上記第1,第2のシリコーン樹脂はシラノール基を含有しないほうが好ましい。第1,第2のシリコーン樹脂がシラノール基を含有しないと、第1,第2のシリコーン樹脂及びダイボンド材の貯蔵安定性が高くなる。上記シラノール基は、真空下での加熱により減少させることができる。シラノール基の含有量は、赤外分光法を用いて測定できる。
【0153】
上記第1,第2のシリコーン樹脂の数平均分子量(Mn)の好ましい下限は500、より好ましい下限は800、更に好ましい下限は1000、好ましい上限は50000、より好ましい上限は15000である。数平均分子量が上記好ましい下限を満たすと、熱硬化時に揮発成分が少なくなり、高温環境下でダイボンド材の硬化物の厚みが減少しにくくなる。数平均分子量が上記好ましい上限を満たすと、粘度調節が容易である。
【0154】
上記数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレンを標準物質して求めた値である。上記数平均分子量(Mn)は、Waters社製の測定装置(カラム:昭和電工社製 Shodex GPC LF−804(長さ300mm)を2本、測定温度:40℃、流速:1mL/分、溶媒:テトラヒドロフラン、標準物質:ポリスチレン)を用いて測定された値を意味する。
【0155】
上記第1,第2のシリコーン樹脂を合成する方法としては特に限定されず、アルコキシシラン化合物を加水分解し縮合反応させる方法、クロロシラン化合物を加水分解し縮合させる方法が挙げられる。なかでも、反応の制御の観点からアルコキシシラン化合物を加水分解する方法が好ましい。
【0156】
アルコキシシラン化合物を加水分解し縮合反応させる方法としては、例えば、アルコキシシラン化合物、水と酸性触媒又は塩基性触媒との存在下で反応させる方法が挙げられる。また、ジシロキサン化合物を加水分解して用いてもよい。
【0157】
上記第1,第2のシリコーン樹脂にフェニル基を導入するための有機珪素化合物としては、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチル(フェニル)ジメトキシシラン、及びフェニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0158】
上記第1,第2のシリコーン樹脂に(R57R58R59R60SiR61O2/2)、(R7R8R9R10SiR11O2/2)を導入するための有機珪素化合物としては、例えば、1,4−ビス(ジメチルメトキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジエチルメトキシシリル)ベンゼン、1,4ービス(エトキシエチルメチルシリル)ベンゼン、1,6−ビス(ジメチルメトキシシリル)ヘキサン、1,6−ビス(ジエチルメトキシシリル)ヘキサン及び1,6−ビス(エトキシエチルメチルシリル)ヘキサン等が挙げられる。
【0159】
上記第1,第2のシリコーン樹脂にアルケニル基を導入するための有機珪素化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、メトキシジメチルビニルシラン、ビニルジメチルエトキシシラン及び1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン等が挙げられる。
【0160】
上記第1のシリコーン樹脂に珪素原子に結合した水素原子を導入するための有機珪素化合物としては、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、及び1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン等が挙げられる。
【0161】
上記第1,第2のシリコーン樹脂を得るために用いることができる他の有機珪素化合物としては、例えば、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、イソプロピル(メチル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(メチル)ジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン及びオクチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0162】
上記酸性触媒としては、例えば、無機酸、有機酸、無機酸の酸無水物及びその誘導体、並びに有機酸の酸無水物及びその誘導体が挙げられる。
【0163】
上記無機酸としては、例えば、塩酸、リン酸、ホウ酸及び炭酸が挙げられる。上記有機酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸及びオレイン酸が挙げられる。
【0164】
上記塩基性触媒としては、例えば、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属のアルコキシド及びアルカリ金属のシラノール化合物が挙げられる。
【0165】
上記アルカリ金属の水酸化物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化セシウムが挙げられる。上記アルカリ金属のアルコキシドとしては、例えば、ナトリウム−t−ブトキシド、カリウム−t−ブトキシド及びセシウム−t−ブトキシドが挙げられる。
【0166】
上記アルカリ金属のシラノール化合物としては、例えば、ナトリウムシラノレート化合物、カリウムシラノレート化合物及びセシウムシラノレート化合物が挙げられる。なかでも、カリウム系触媒又はセシウム系触媒が好適である。
【0167】
(ヒドロシリル化反応用触媒)
本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材に含まれているヒドロシリル化反応用触媒は、上記第1のシリコーン樹脂中の珪素原子に結合した水素原子と、上記第2のシリコーン樹脂中のアルケニル基とをヒドロシリル化反応させる触媒である。
【0168】
上記ヒドロシリル化反応用触媒として、ヒドロシリル化反応を進行させる各種の触媒を用いることができる。上記ヒドロシリル化反応用触媒は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0169】
上記ヒドロシリル化反応用触媒としては、例えば、白金系触媒、ロジウム系触媒及びパラジウム系触媒等が挙げられる。ダイボンド材の透明性を高くすることができるため、白金系触媒が好ましい。
【0170】
上記白金系触媒としては、白金粉末、塩化白金酸、白金−アルケニルシロキサン錯体、白金−オレフィン錯体及び白金−カルボニル錯体が挙げられる。特に、白金−アルケニルシロキサン錯体又は白金−オレフィン錯体が好ましい。
【0171】
上記白金−アルケニルシロキサン錯体におけるアルケニルシロキサンとしては、例えば、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、及び1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン等が挙げられる。上記白金−オレフィン錯体におけるオレフィンとしては、例えば、アリルエーテル及び1,6−ヘプタジエン等が挙げられる。
【0172】
上記白金−アルケニルシロキサン錯体及び白金−オレフィン錯体の安定性を向上させることができるため、上記白金−アルケニルシロキサン錯体又は白金−オレフィン錯体に、アルケニルシロキサン、オルガノシロキサンオリゴマー、アリルエーテル又はオレフィンを添加することが好ましい。上記アルケニルシロキサンは、好ましくは1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンである。上記オルガノシロキサンオリゴマーは、好ましくはジメチルシロキサンオリゴマーである。上記オレフィンは、好ましくは1,6−ヘプタジエンである。
【0173】
ダイボンド材100重量%中、上記ヒドロシリル化反応用触媒の含有量は、0.01〜0.5重量%の範囲内であることが好ましい。上記ヒドロシリル化反応用触媒の含有量が上記下限以上であると、ダイボンド材を十分に硬化させることが容易であり、ダイボンド材のガスバリア性をより一層高めることができる。上記ヒドロシリル化反応用触媒の含有量が上記上限以下であると、ダイボンド材がより一層変色し難くなる。上記ヒドロシリル化反応用触媒の含有量は、より好ましくは0.02重量%以上、より好ましくは0.3重量%以下である。
【0174】
(酸化チタン)
本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材に酸化チタンが含まれていることにより、ダイボンド材の光の反射率が高くなる。特に、ルチル型酸化チタンの使用により、ダイボンド材の光の反射率をより一層高くすることができる。また、上記酸化チタンの熱伝導率は10W/m・K以上であるので、ダイボンド材の熱伝導性を高くすることができる。この結果、ダイボンド材の放熱性が高くなる。
【0175】
さらに、本発明では、上記酸化チタンは、金属酸化物及び金属水酸化物の内の少なくとも1種により被覆されている。従って、ダイボンド材の熱伝導性をかなり高くすることができるだけでなく、かつダイボンド材が高温に晒されても黄変し難くすることができる。
【0176】
上記酸化チタンは、塩基性金属酸化物又は塩基性金属水酸化物で被覆されていることにより、表面が塩基性であることが好ましい。上記酸化チタンの表面が塩基性であると、高温下での黄変をより一層抑制できる。
【0177】
金属酸化物及び金属水酸化物としては、マグネシウム、ジルコニウム、セリウム、ストロンチウム、アンチモン、バリウムまたはカルシウムなどの金属の化合物が挙げられる。これらの中で、上記酸化チタンの熱伝導率が10W/m・Kとなるように、上記化合物が適宜選択されて用いられる。
【0178】
上記酸化チタンの熱伝導率を10W/m・K以上にするために、更にダイボンド材の熱による黄変を抑制するために、上記金属酸化物及び金属水酸化物を構成する金属元素は、アルミニウム及びジルコニウムの内の少なくとも1種であることが好ましい。高温に晒されたときにダイボンド材の黄変をより一層抑制できるので、上記酸化チタンは、酸化ジルコニウム及び酸化珪素の内の少なくとも1種を含む被覆材により被覆されていることが好ましい。金属酸化物及び金属水酸化物はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。金属酸化物と金属水酸化物とが併用されてもよい。
【0179】
酸化チタンを金属酸化物又は金属水酸化物である化合物で表面処理する方法としては、(1)上記化合物を添加した酸化チタンを流体エネルギー粉砕機、衝撃粉砕機等の乾式粉砕機を用いて粉砕する方法、(2)ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の高速攪拌機等を用いて、乾式粉砕した後の酸化チタンを上記化合物と攪拌、混合する方法、(3)酸化チタンの水性スラリーに上記化合物を添加し撹拌する方法が挙げられる。酸化チタンの粉砕と上記化合物による表面処理とを同時に行うことができるので、(1)の方法が好ましい。乾式粉砕機としては、流体エネルギー粉砕機が好ましく、ジェットミルなどの旋回式粉砕機がより好ましい。
【0180】
ダイボンド材中での分散性を高めて、均一な光の反射率を得る観点からは、上記酸化チタンの数平均粒子径は、好ましくは0.01μm以上、好ましくは1.0μm以下、より好ましくは0.5μm以下である。
【0181】
光半導体装置用型ダイボンド材100重量%中の酸化チタンの含有量は、好ましくは3重量%以上、より好ましくは10重量%以上、好ましくは80重量%以下、より好ましくは75重量%以下である。上記酸化チタンの含有量が上記下限以上であると、ダイボンド材の放熱性及び光の反射率がより一層高くなる。上記酸化チタンの含有量が上記上限以下であると、酸化チタンの分散性が高くなり、更にダイボンディングが容易になる。
【0182】
(カップリング剤)
本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材は、接着性を付与するために、カップリング剤をさらに含んでいてもよい。
【0183】
上記カップリング剤としては特に限定されず、例えば、シランカップリング剤等が挙げられる。該シランカップリング剤としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、及びN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。カップリング剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0184】
(他の成分)
本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材は、必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、溶剤、着色剤、充填剤、消泡剤、表面処理剤、難燃剤、粘度調節剤、分散剤、分散助剤、表面改質剤、可塑剤、防黴剤、レベリング剤、安定剤、カップリング剤、タレ防止剤又は蛍光体等を含有してもよい。
【0185】
(光半導体装置用ダイボンド材の詳細及び用途)
本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材は、ペースト状であってもよく、フィルム状であってもよい。本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材は、ペースト状であることが好ましい。
【0186】
上記第1のシリコーン樹脂と、上記第2のシリコーン樹脂と、上記ヒドロシリル化反応用触媒とは、これらを1種又は2種以上含む液を別々に調製しておき、使用直前に複数の液を混合して、本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材を調製してもよい。例えば、上記第2のシリコーン樹脂及び上記ヒドロシリル化反応用触媒を含むA液と、第1のシリコーン樹脂を含むB液とを別々に調製しておき、使用直前にA液とB液を混合して、ダイボンド材を調製してもよい。この場合に、上記酸化チタンは、A液に含まれていてもよく、B液に含まれていてもよい。このように上記第2のシリコーン樹脂及び上記ヒドロシリル化反応用触媒と上記第1のシリコーン樹脂とを別々に、第1の液と第2の液との2液にすることによって保存安定性を向上させることができる。
【0187】
本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材の製造方法としては特に限定されず、例えば、ホモディスパー、ホモミキサー、万能ミキサー、プラネタリウムミキサー、ニーダー、三本ロール又はビーズミル等の混合機を用いて、常温又は加温下で、上記第1のシリコーン樹脂、上記第2のシリコーン樹脂、上記ヒドロシリル化反応用触媒、上記酸化チタン及び必要に応じて配合される他の成分を混合する方法等が挙げられる。
【0188】
本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材を、基板等の接続対象部材上に配置し、又は光半導体素子の下面に配置し、ダイボンド材を介して接続対象部材と光半導体素子とを接続することにより、光半導体装置を得ることができる。
【0189】
本発明に係る光半導体装置用ダイボンド材の硬化温度は特に限定されない。光半導体装置用ダイボンド材の硬化温度は、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、好ましくは180℃以下、より好ましくは150℃以下である。硬化温度が上記好ましい下限以上であると、ダイボンド材の硬化が充分に進行する。硬化温度が上記好ましい上限以下であると、ダイボンド材及びダイボンド材により接合される部材の熱劣化が起こり難い。
【0190】
硬化には特に限定されないが、ステップキュア方式を用いることが好ましい。ステップキュア方式は、一旦低温で仮硬化させておき、その後に高温で硬化させる方法である。ステップキュア方式の使用により、ダイボンド材の硬化収縮を抑えることができる。
【0191】
(光半導体装置)
本発明に係る光半導体装置は、光半導体装置用ダイボンド材と、接続対象部材と、上記光半導体装置用ダイボンド材を用いて上記接続対象部材に接続された光半導体素子とを備える。
【0192】
本発明に係る光半導体装置としては、具体的には、例えば、発光ダイオード装置、半導体レーザー装置及びフォトカプラ等が挙げられる。このような光半導体装置は、例えば、液晶ディスプレイ等のバックライト、照明、各種センサー、プリンター及びコピー機等の光源、車両用計測器光源、信号灯、表示灯、表示装置、面状発光体の光源、ディスプレイ、装飾、各種ライト並びにスイッチング素子等に好適に用いることができる。
【0193】
上記光半導体素子である発光素子としては、半導体を用いた発光素子であれば特に限定されず、例えば、上記発光素子が発光ダイオードである場合、例えば、基板上にLED形式用半導体材料を積層した構造が挙げられる。この場合、半導体材料としては、例えば、GaAs、GaP、GaAlAs、GaAsP、AlGaInP、GaN、InN、AlN、InGaAlN、及びSiC等が挙げられる。
【0194】
上記基板の材料としては、例えば、サファイア、スピネル、SiC、Si、ZnO、及びGaN単結晶等が挙げられる。また、必要に応じ基板と半導体材料との間にバッファー層が形成されていてもよい。上記バッファー層の材料としては、例えば、GaN及びAlN等が挙げられる。
【0195】
図1は、本発明の一実施形態に係る光半導体装置を示す正面断面図である。
【0196】
本実施形態の光半導体装置1は、接続対象部材であるハウジング2と、光半導体素子3とを有する。ハウジング2内にLED素子である光半導体素子3が実装されている。この光半導体素子3の周囲を、ハウジング2の光反射性を有する内面2aが取り囲んでいる。本実施形態では、光半導体により形成された発光素子として、光半導体素子3が用いられている。
【0197】
ハウジング2の内面2aは、内面2aの径が開口端に向かうにつれて大きくなるように形成されている。従って、光半導体素子3から発せられた光のうち、内面2aに到達した光B1が内面2aにより反射され、光半導体素子3の前方側に進行する。
【0198】
光半導体素子3は、ハウジング2に設けられたリード電極4に、ダイボンド材5を用いて接続されている。ダイボンド材5は、光半導体装置用ダイボンド材である。光半導体素子3に設けられたボンディングパッド(図示せず)とリード電極4とが、ボンディングワイヤー6により電気的に接続されている。光半導体素子3及びボンディングワイヤー6を封止するように、内面2aで囲まれた領域内には、封止剤7が充填されている。
【0199】
ダイボンド材5は、光半導体素子3の底部からはみ出してその周囲を囲むように配置されてもよく、光半導体素子3の底部からはみ出さないように配置されてもよい。ダイボンド材5の厚みは、2〜50μmの範囲内であることが好ましい。
【0200】
光半導体装置1では、光半導体素子3を駆動すると、破線Aで示すように光が発せられる。この場合、光半導体素子3からリード電極4の上面とは反対側すなわち上方に照射される光だけでなく、ダイボンド材5に到達した光が矢印B2で示すように反射される光もある。
【0201】
なお、図1に示す構造は、本発明に係る光半導体装置の一例にすぎず、光半導体素子3の実装構造等には適宜変形され得る。
【0202】
以下に、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0203】
(第1,第2のシリコーン樹脂)
第1,第2のシリコーン樹脂を以下のようにして合成した。
【0204】
(合成例1)第1のシリコーン樹脂の合成
温度計、滴下装置及び攪拌機を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、ジメチルメトキシシラン120g、メチルトリメトキシシラン54g、及び1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン40gを入れ、50℃で攪拌した。その中に、塩酸1.2gと水83gとの溶液をゆっくりと滴下し、滴下後に50℃で6時間攪拌し、反応させて、反応液を得た。次に、減圧して揮発成分を除去してポリマーを得た。得られたポリマーにヘキサン150gと酢酸エチル150gとを添加し、イオン交換水300gで10回洗浄を行い、減圧して揮発成分を除去してポリマー(A)を得た。
【0205】
得られたポリマー(A)の数平均分子量(Mn)は1500であった。29Si−NMRより化学構造を同定した結果、ポリマー(A)は、下記の平均組成式(A1)を有していた。
【0206】
(HMeSiO1/20.20(MeSiO2/20.50(MeSiO3/20.30 …式(A1)
【0207】
上記式(A1)中、Meはメチル基を示す。
【0208】
なお、合成例1及び合成例2〜3で得られた各ポリマーの分子量は、10mgにテトラヒドロフラン1mLを加え、溶解するまで攪拌し、GPC測定により測定した。GPC測定では、Waters社製の測定装置(カラム:昭和電工社製 Shodex GPC
LF−804(長さ300mm)×2本、測定温度:40℃、流速:1mL/min、溶媒:テトラヒドロフラン、標準物質:ポリスチレン)を用いた。
【0209】
(合成例2)第1のシリコーン樹脂の合成
温度計、滴下装置及び攪拌機を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、メチルトリメトキシシラン204g、ビニルメチルジメトキシシラン40g、及び1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン80gを入れ、50℃で攪拌した。その中に、塩酸1.2gと水102gとの溶液をゆっくりと滴下し、滴下後に50℃で6時間攪拌し、反応させて、反応液を得た。次に、減圧して揮発成分を除去してポリマーを得た。得られたポリマーにヘキサン150gと酢酸エチル150gとを添加し、イオン交換水300gで10回洗浄を行い、減圧して揮発成分を除去してポリマー(B)を得た。
【0210】
得られたポリマー(B)の数平均分子量(Mn)は1500であった。29Si−NMRより化学構造を同定した結果、ポリマー(B)は、下記の平均組成式(B1)を有していた。
【0211】
(HMeSiO1/20.40(ViMeSiO2/20.10(MeSiO3/20.50 …式(B1)
【0212】
上記式(B1)中、Meはメチル基、Viはビニル基を示す。
【0213】
(合成例3)第2のシリコーン樹脂の合成
温度計、滴下装置及び攪拌機を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、トリメチルメトキシシラン41g、ジメチルジメトキシシラン72g、メチルトリメトキシシラン81g、及びビニルメチルジメトキシシラン52gを入れ、50℃で攪拌した。その中に、水酸化カリウム0.8gを水114gに溶かした溶液をゆっくりと滴下し、滴下後に50℃で6時間攪拌し、反応させて、反応液を得た。次に、反応液に酢酸0.9gを加え、減圧して揮発成分を除去し、酢酸カリウムをろ過により除去して、ポリマー(C)を得た。
【0214】
得られたポリマー(C)の数平均分子量(Mn)は2000であった。29Si−NMRより化学構造を同定した結果、ポリマー(C)は、下記の平均組成式(C1)を有していた。
【0215】
(MeSiO1/20.20(ViMeSiO2/20.20(MeSiO2/20.30(MeSiO3/20.30 …式(C1)
【0216】
上記式(C1)中、Meはメチル基、Viはビニル基を示す。
【0217】
(フィラー)
実施例及び比較例では、下記の表1に示すフィラーを用いた。
【0218】
【表1】

【0219】
上記表1において、ルチル型酸化チタンNo.1〜4は、塩基性金属化合物又は塩基性金属水酸化物により被覆されている。ルチル型酸化チタンを表面処理する際に、金属種がAlの場合は水酸化アルミニウムもしくは酸化アルミニウム、金属種がSiの場合は酸化ケイ素、金属種がZrの場合は酸化ジルコニウムが用いられている。
【0220】
(実施例1)
ポリマーB5重量部、ポリマーC5重量部、白金の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体(白金触媒)0.02重量部、ルチル型酸化チタンNo.4(D−918)60重量部を混合し、脱泡を行い、光半導体装置用ダイボンド材を得た。
【0221】
(実施例2〜8及び比較例1〜3)
使用した材料の種類及び配合量を、下記の表2に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、光半導体装置用ダイボンド材を得た。
【0222】
(評価)
(1)熱伝導率
実施例及び比較例で得られた各光半導体装置用ダイボンド材を150℃で3時間加熱し、硬化させ、100mm×100mm×厚さ50μmの硬化物を得た。この硬化物を評価サンプルとした。
【0223】
得られた評価サンプルの熱伝導率を、京都電子工業社製熱伝導率計「迅速熱伝導率計QTM−500」を用いて測定した。なお、熱伝導率は高い方がよく、熱伝導率は0.3W/m・K以上である必要がある。
【0224】
(2)反射率
色彩色差計(コニカミノルタ社製、商品名「CR−400」を用いて、上記(1)熱伝導率の評価で得られた評価サンプルの光の反射率Y値(%)を測定した。
【0225】
(3)耐熱性
上記(1)熱伝導率の評価で得られた評価サンプルをオーブン内に入れ、270℃で5分間加熱した。
【0226】
色彩・色差計(コニカミノルタ社製、CR−400)を用いて、熱処理される前の評価サンプルのL*、a*、b*を測定した。また、熱処理された後の評価サンプルのL*、a*、b*を測定し、これら2つの測定値からΔE*abを求めた。熱処理された後の評価サンプルのΔE*abが、0.8以下の場合を「○○」、0.8を超え、1.0以下の場合を「○」、1.0を超え、1.2以下の場合を「△」、1.2を超え、1.5以下の場合を「×」、1.5を超える場合を「××」と判定した。なお、ΔE*abが大きいほど、ダイボンド材の黄変の程度が大きかった。
【0227】
(4)接着性(ダイシェア強度)
AgメッキしたCu基板上に、接着面積が3mm×3mmになるように光半導体装置用ダイボンド材を塗布し、3mm角のSiチップを載せて、テストサンプルを得た。
【0228】
得られたテストサンプルを150℃で3時間加熱し、ダイボンド材を硬化させた。次に、ダイシェアテスター(アークテック社製、型番:DAGE 4000)を用いて、300μ/秒の速度で、185℃でのダイシェア強度を評価した。
【0229】
結果を下記の表2に示す。
【0230】
【表2】

【符号の説明】
【0231】
1…光半導体装置
2…ハウジング
2a…内面
3…光半導体素子
4…リード電極
5…ダイボンド材
6…ボンディングワイヤー
7…封止剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
珪素原子に結合した水素原子を有する第1のシリコーン樹脂と、
珪素原子に結合した水素原子を有さず、かつアルケニル基を有する第2のシリコーン樹脂と、
ヒドロシリル化反応用触媒と、
酸化チタンとを含み、
前記酸化チタンの結晶構造がルチル型であり、
前記酸化チタンの熱伝導率が10W/m・K以上であり、かつ、
前記酸化チタンが、金属酸化物及び金属水酸化物の内の少なくとも1種により被覆されている、光半導体装置用ダイボンド材。
【請求項2】
前記金属酸化物及び金属水酸化物を構成する金属元素が、アルミニウム及びジルコニウムの内の少なくとも1種である、請求項1に記載の光半導体装置用ダイボンド材。
【請求項3】
前記酸化チタンが、酸化ジルコニウム及び酸化珪素の内の少なくとも1種を含む被覆材により被覆されている、請求項1又は2に記載の光半導体装置用ダイボンド材。
【請求項4】
前記第1のシリコーン樹脂が、下記式(1A)又は下記式(1B)で表され、かつ珪素原子に結合した水素原子を有する第1のシリコーン樹脂であり、
前記第2のシリコーン樹脂が、下記式(51A)又は下記式(51B)で表され、かつ珪素原子に結合した水素原子を有さず、かつアルケニル基を有する第2のシリコーン樹脂である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光半導体装置用ダイボンド材。
【化1】

前記式(1A)中、a、b及びcは、a/(a+b+c)=0.05〜0.50、b/(a+b+c)=0〜0.40及びc/(a+b+c)=0.30〜0.80を満たし、R1〜R6は、少なくとも1個が水素原子を表し、水素原子以外のR1〜R6は、炭素数1〜8の炭化水素基を表す。
【化2】

前記式(1B)中、a、b、c及びdは、a/(a+b+c+d)=0.05〜0.50、b/(a+b+c+d)=0〜0.40、c/(a+b+c+d)=0.30〜0.80及びd/(a+b+c+d)=0.01〜0.40を満たし、R1〜R6は、少なくとも1個が水素原子を表し、水素原子以外のR1〜R6は、炭素数1〜8の炭化水素基を表し、R7〜R10はそれぞれ、炭素数1〜8の炭化水素基を表し、R11は、炭素数1〜8の2価の炭化水素基を表す。
【化3】

前記式(51A)中、p、q及びrは、p/(p+q+r)=0.05〜0.50、q/(p+q+r)=0〜0.40及びr/(p+q+r)=0.30〜0.80を満たし、R51〜R56は、少なくとも1個がアルケニル基を表し、アルケニル基以外のR51〜R56は、炭素数1〜8の炭化水素基を表す。
【化4】

前記式(51B)中、p、q、r及びsは、p/(p+q+r+s)=0.05〜0.50、q/(p+q+r+s)=0〜0.40、r/(p+q+r+s)=0.30〜0.80及びs/(p+q+r+s)=0.01〜0.40を満たし、R51〜R56は、少なくとも1個がアルケニル基を表し、アルケニル基以外のR51〜R56は炭素数1〜8の炭化水素基を表し、R57〜60はそれぞれ、炭素数1〜8の炭化水素基を表し、R61は、炭素数1〜8の2価の炭化水素基を表す。
【請求項5】
前記第1のシリコーン樹脂が、珪素原子に結合した水素原子と、アルケニル基とを有する第1のシリコーン樹脂である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光半導体装置用ダイボンド材。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の光半導体装置用ダイボンド材と、
接続対象部材と、
前記光半導体装置用ダイボンド材を用いて前記接続対象部材に接続された光半導体素子とを備える、光半導体装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−74416(P2012−74416A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216025(P2010−216025)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】