説明

光半導体装置用封止剤、光半導体装置用封止剤の硬化物及び光半導体装置

【課題】硬化物の表面のべたつきを抑制でき、更に光半導体装置における熱衝撃によるワイヤーの接続不良の発生を抑制できる光半導体装置用封止剤を提供する。
【解決手段】本発明に係る光半導体装置用封止剤は、オルガノポリシロキサン成分とヒドロシリル化反応用触媒とを含む。上記オルガノポリシロキサン成分は、珪素原子に結合したアリール基及び珪素原子に結合したアルケニル基を有する第1のオルガノポリシロキサンと、珪素原子に結合したアリール基及び珪素原子に結合した水素原子を有する第2のオルガノポリシロキサンとを含有する。上記オルガノポリシロキサン成分の珪素原子に結合したアルケニル基の含有比率は6.0〜9.0個数%であり、珪素原子に結合した水素原子の含有比率は5.0〜7.0個数%である。上記光半導体装置用封止剤の硬化物のゲル分率は85重量%以上、95重量%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体装置において光半導体素子を封止するために用いられる光半導体装置用封止剤、該光半導体装置用封止剤の硬化物、並びに該光半導体装置用封止剤を用いた光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)装置などの光半導体装置の消費電力は低く、かつ寿命は長い。また、光半導体装置は、過酷な環境下でも使用され得る。従って、光半導体装置は、携帯電話用バックライト、液晶テレビ用バックライト、自動車用ランプ、照明器具及び看板などの幅広い用途で使用されている。
【0003】
光半導体装置に用いられている発光素子である光半導体素子(例えばLED)が大気と直接触れると、大気中の水分又は浮遊するごみ等により、光半導体素子の発光特性が急速に低下する。このため、上記光半導体素子は、通常、光半導体装置用封止剤により封止されている。また、光半導体装置では、一般に、上記光半導体素子は基板上に積層されており、該光半導体素子と基板とがボンディングワイヤーにより電気的に接続されている。
【0004】
下記の特許文献1には、光半導体装置用封止剤として、水素添加ビスフェノールAグリシジルエーテルと、脂環式エポキシモノマーと、潜在性触媒とを含むエポキシ樹脂材料が開示されている。このエポキシ樹脂材料は、熱カチオン重合により硬化する。
【0005】
また、エポキシ樹脂を含む光半導体装置用封止剤だけでなく、シリコーン樹脂を含む光半導体装置用封止剤も広く用いられている。上記シリコーン樹脂は、青色から紫外領域の短波長の光に対する透過性が高く、耐熱性及び耐光性に優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−073452号公報
【特許文献2】特開2002−314142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1,2に記載のような従来の光半導体装置用封止剤では、該封止剤の保存安定性が低いことがある。
【0008】
さらに、特許文献2に記載のようなシリコーン樹脂を含む光半導体装置用封止剤を用いた場合には、封止剤の硬化物の表面がべたついて、表面にごみなどの異物が付着しやすくなるという問題がある。また、硬化物の表面がべたつくと、パッケージ同士のくっ付き、及び実装時のピックアップノズルへの付着が生じて、光半導体装置の生産性が大きく低下するという問題がある。
【0009】
さらに、従来の光半導体装置用封止剤を用いた光半導体装置では、熱衝撃が与えられると、ワイヤーが切断したりして、電気的な接続不良が生じることがある。
【0010】
本発明の目的は、硬化物の表面のべたつきを抑制でき、更に硬化物を用いた光半導体装置における熱衝撃によるワイヤーの接続不良の発生を抑制できる光半導体装置用封止剤、該光半導体装置用封止剤の硬化物、並びに該光半導体装置用封止剤を用いた光半導体装置を提供することである。
【0011】
本発明の限定的な目的は、保存安定性に優れている光半導体装置用封止剤、該光半導体装置用封止剤の硬化物、並びに該光半導体装置用封止剤を用いた光半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の広い局面によれば、オルガノポリシロキサン成分と、ヒドロシリル化反応用触媒とを含み、上記オルガノポリシロキサン成分が、珪素原子に結合したアリール基及び珪素原子に結合したアルケニル基を有する第1のオルガノポリシロキサン(但し、珪素原子に結合した水素原子を有するオルガノポリシロキサンを除く)と、珪素原子に結合したアリール基及び珪素原子に結合した水素原子を有する第2のオルガノポリシロキサンとを含有し、上記オルガノポリシロキサン成分の下記式(Xa)より求められる珪素原子に結合したアルケニル基の含有比率が6.0個数%以上、9.0個数%以下であり、上記オルガノポリシロキサン成分の下記式(Xb)より求められる珪素原子に結合した水素原子の含有比率が5.0個数%以上、7.0個数%以下であり、硬化後の硬化物のゲル分率が85重量%以上、95重量%以下である、光半導体装置用封止剤が提供される。
【0013】
珪素原子に結合したアルケニル基の含有比率(個数%)=(上記オルガノポリシロキサン成分に含まれる珪素原子に結合したアルケニル基の個数/上記オルガノポリシロキサン成分に含まれる珪素原子に結合した官能基の個数)×100 ・・・式(Xa)
珪素原子に結合した水素原子の含有比率(個数%)=(上記オルガノポリシロキサン成分に含まれる珪素原子に結合した水素原子の個数/上記オルガノポリシロキサン成分に含まれる珪素原子に結合した官能基の個数)×100 ・・・式(Xb)
【0014】
本発明に係る光半導体装置用封止剤のある特定の局面では、上記第2のオルガノポリシロキサンが、下記式(51−a)で表される構造単位を有する。
【0015】
【化1】

【0016】
上記式(51−a)中、R52及びR53はそれぞれ、珪素原子に結合した水素原子、珪素原子に結合したアリール基又は炭素数1〜8の炭化水素基を表す。
【0017】
本発明に係る光半導体装置用封止剤の他の特定の局面では、上記オルガノポリシロキサン成分の下記式(Xc)より求められる珪素原子に結合したアリール基の含有比率が、35個数%以上、45個数%以下である。
【0018】
珪素原子に結合したアリール基の含有比率(個数%)=(上記オルガノポリシロキサン成分に含まれる珪素原子に結合したアリール基の個数/上記オルガノポリシロキサン成分に含まれる珪素原子に結合した官能基の個数)×100 ・・・式(Xc)
【0019】
本発明に係る光半導体装置用封止剤のさらに他の特定の局面では、上記第2のオルガノポリシロキサンは、珪素原子に結合したアルケニル基を有する。
【0020】
本発明に係る光半導体装置用封止剤の別の特定の局面では、蛍光体がさらに含まれている。
【0021】
本発明に係る光半導体装置用封止剤の硬化物は、上述した光半導体装置用封止剤を硬化させることにより得られ、ゲル分率が85重量%以上、95重量%以下である。
【0022】
本発明に係る光半導体装置は、光半導体素子と、該光半導体素子を封止するように設けられた光半導体装置用封止剤の硬化物とを備えており、該光半導体装置用封止剤の硬化物が、上述した光半導体装置用封止剤を硬化させることにより形成されている。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る光半導体装置用封止剤は、オルガノポリシロキサン成分とヒドロシリル化反応用触媒とを含み、上記オルガノポリシロキサン成分が、珪素原子に結合したアリール基及び珪素原子に結合したアルケニル基を有する第1のオルガノポリシロキサン(但し、珪素原子に結合した水素原子を有するオルガノポリシロキサンを除く)と、珪素原子に結合したアリール基及び珪素原子に結合した水素原子を有する第2のオルガノポリシロキサンとを含有し、上記オルガノポリシロキサン成分の式(Xa)より求められる珪素原子に結合したアルケニル基の含有比率が6.0個数%以上、9.0個数%以下であり、上記オルガノポリシロキサン成分の式(Xb)より求められる珪素原子に結合した水素原子の含有比率が5.0個数%以上、7.0個数%以下であり、硬化後の硬化物のゲル分率が85重量%以上、95重量%以下であるので、封止剤の硬化物である硬化物の表面のべたつきを抑制できる。さらに、本発明に係る光半導体装置用封止剤を硬化させた硬化物を用いた光半導体装置では、熱衝撃によるワイヤーの接続不良の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る光半導体装置を示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0026】
本発明に係る光半導体装置用封止剤は、オルガノポリシロキサン成分と、ヒドロシリル化反応用触媒とを含む。上記オルガノポリシロキサン成分は、第1のオルガノポリシロキサンと、第2のオルガノポリシロキサンとを含有する。
【0027】
上記第1のオルガノポリシロキサン(但し、珪素原子に結合した水素原子を有するオルガノポリシロキサンを除く)は、珪素原子に結合したアリール基と珪素原子に結合したアルケニル基とを有する。上記第2のオルガノポリシロキサンは、珪素原子に結合したアリール基と珪素原子に結合した水素原子とを有する。
【0028】
上記オルガノポリシロキサン成分の下記式(Xa)より求められる珪素原子に結合したアルケニル基の含有比率は6.0個数%以上、9.0個数%以下である。
【0029】
珪素原子に結合したアルケニル基の含有比率(個数%)=(上記オルガノポリシロキサン成分に含まれる珪素原子に結合したアルケニル基の個数/上記オルガノポリシロキサン成分に含まれる珪素原子に結合した官能基の個数)×100 ・・・式(Xa)
【0030】
さらに、上記オルガノポリシロキサン成分の下記式(Xb)より求められる珪素原子に結合した水素原子の含有比率は5.0個数%以上、7.0個数%以下である。
【0031】
珪素原子に結合した水素原子の含有比率(個数%)=(上記オルガノポリシロキサン成分に含まれる珪素原子に結合した水素原子の個数/上記オルガノポリシロキサン成分に含まれる珪素原子に結合した官能基の個数)×100 ・・・式(Xb)
【0032】
さらに、本発明に係る光半導体装置用封止剤の硬化後の硬化物(封止剤の硬化物)のゲル分率は85重量%以上、95重量%以下である。
【0033】
本発明に係る光半導体装置用封止剤における上記構成の採用によって、封止剤の硬化物のべたつきを抑制できる。さらに、封止剤の硬化物を用いた光半導体装置における熱衝撃によるワイヤーの接続不良の発生を抑制できる。このため、光半導体装置の信頼性を高めることができる。
【0034】
さらに、本発明に係る光半導体装置用封止剤における上記構成の採用によって、封止剤の保存安定性を高めることもできる。
【0035】
上記珪素原子に結合したアルケニル基の含有比率及び上記珪素原子に結合した水素原子の含有比率が上記下限未満であると、ヒドロシリル化反応が進行し難くなり、硬化物の表面のべたつきが生じやすい。上記珪素原子に結合したアルケニル基の含有比率及び上記珪素原子に結合した水素原子の含有比率が上記上限を超えると、ヒドロシリル化反応が進行しやすくなりすぎて、封止剤の保存安定性が低くなる。
【0036】
上記ゲル分率が85重量%未満であると、封止剤の硬化物の表面がべたつきやすくなり、さらに複数の光半導体装置がくっつきやすくなって光半導体装置の生産効率が低下する。上記ゲル分率が95重量%を超えると、封止剤の硬化物にクラックが生じやすくなり、硬化中に封止剤の応力が緩和できずに、ワイヤーの切断が生じやすくなる。
【0037】
上記ゲル分率を測定するための硬化後の硬化物は、本発明に係る光半導体装置用封止剤を150℃で2時間硬化させた硬化物であることが好ましい。
【0038】
上記ゲル分率は、具体的には、上記硬化物(浸漬前の硬化物)の重量(W1)を測定する。次に、上記硬化物をトルエン中に23℃にて24時間浸漬した後、硬化物をトルエンから取り出して、110℃の条件下で1時間乾燥する。そして、乾燥後の硬化物(浸漬及び乾燥後の硬化物)の重量(W2)を測定する。重量(W1)と重量(W2)との測定値から、下記式(Y)によりゲル分率が算出される。
【0039】
ゲル分率(重量%)=(W2)/(W1)×100・・・式(Y)
W1:浸漬前の硬化物の重量(g)
W2:浸漬及び乾燥後の硬化物の重量(g)
【0040】
封止剤の保存安定性をより一層高め、封止剤の硬化物の表面のべたつきをより一層抑制し、更に光半導体装置におけるワイヤーの接続信頼性をより一層高める観点からは、上記第2のオルガノポリシロキサンは、式(51−a)で表される構造単位を有することが好ましい。
【0041】
封止剤の硬化物の表面のべたつきをより一層抑制し、更に光半導体装置における熱衝撃に対するワイヤーの接続信頼性をより一層高める観点からは、上記オルガノポリシロキサン成分の下記式(Xc)より求められる珪素原子に結合したアリール基の含有比率は、35個数%以上、45個数%以下であることが好ましい。
【0042】
珪素原子に結合したアリール基の含有比率(個数%)=(上記オルガノポリシロキサン成分に含まれる珪素原子に結合したアリール基の個数/上記オルガノポリシロキサン成分に含まれる珪素原子に結合した官能基の個数)×100 ・・・式(Xc)
【0043】
なお、上記式(Xa)、上記式(Xb)、上記式(Xc)、後述する式(Xd)又は後述する式(Xe)より求められる珪素原子に結合したアルケニル基の含有比率、珪素原子に結合した水素原子の含有比率、珪素原子に結合したアリール基の含有比率、珪素原子に結合した飽和鎖式炭化水素基の含有比率及び珪素原子に結合したアルコキシ基の含有比率はそれぞれ、H−NMRにより測定される。
【0044】
また、上記式(Xa)、上記式(Xb)、上記式(Xc)、後述する式(Xd)又は後述する式(Xe)において、「上記オルガノポリシロキサン成分」とは、「上記第1のオルガノポリシロキサン及び上記第2のオルガノポリシロキサン」を示す。
【0045】
また、上記式(Xa)、上記式(Xb)、上記式(Xc)、後述する式(Xd)又は後述する式(Xe)における「官能基」は、上記オルガノポリシロキサン成分(上記第1のオルガノポリシロキサン及び上記第2のオルガノポリシロキサン)中の珪素原子に直接結合している基を意味する。
【0046】
以下、本発明に係る光半導体装置用封止剤に含まれている各成分の詳細を説明する。
【0047】
(第1のオルガノポリシロキサン)
本発明に係る光半導体装置用封止剤に含まれている第1のオルガノポリシロキサン(但し、珪素原子に結合した水素原子を有するオルガノポリシロキサンを除く)は、珪素原子に結合したアリール基と、珪素原子に結合したアルケニル基とを有する。
【0048】
上記第1のオルガノポリシロキサンは、珪素原子に結合した水素原子を有さず、珪素原子に結合したアリール基と珪素原子に結合したアルケニル基とを有する第1のオルガノポリシロキサンである。上記第1のオルガノポリシロキサンは、珪素原子に結合した水素原子を有さないので、第2のオルガノポリシロキサンとは異なる。上記アリール基としては、無置換のフェニル基及び置換フェニル基が挙げられる。なお、上記アルケニル基の炭素−炭素二重結合における炭素原子が、珪素原子に結合していてもよく、上記アルケニル基の炭素−炭素二重結合における炭素原子とは異なる炭素原子が、珪素原子に結合していてもよい。上記第1のオルガノポリシロキサンは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0049】
封止剤の保存安定性をより一層高め、封止剤の硬化物の表面のべたつきをより一層抑制し、更に光半導体装置におけるワイヤーの接続信頼性をより一層高める観点からは、上記第1のオルガノポリシロキサンは、下記式(1)で表される第1のオルガノポリシロキサンであることが好ましい。但し、上記第1のオルガノポリシロキサンとして、下記式(1)で表される第1のオルガノポリシロキサン以外のオルガノポリシロキサンを用いてもよい。
【0050】
【化2】

【0051】
上記式(1)中、a、b及びcは、a/(a+b+c)=0〜0.50、b/(a+b+c)=0.40〜1.0及びc/(a+b+c)=0〜0.50を満たし、R1〜R6は、少なくとも1個が珪素原子に結合したアリール基を表し、少なくとも1個が珪素原子に結合したアルケニル基を表し、珪素原子に結合したアリール基及び珪素原子に結合したアルケニル基以外のR1〜R6は、炭素数1〜8の炭化水素基を表す。なお、上記式(1)中、(R4R5SiO2/2)で表される構造単位及び(R6SiO3/2)で表される構造単位はそれぞれ、アルコキシ基を有していてもよく、ヒドロキシ基を有していてもよい。
【0052】
上記式(1)は平均組成式を示す。上記式(1)における炭化水素基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。上記式(1)中のR1〜R6は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0053】
上記式(1)中の(R4R5SiO2/2)で表される構造単位における酸素原子部分、(R6SiO3/2)で表される構造単位における酸素原子部分はそれぞれ、シロキサン結合を形成している酸素原子部分、アルコキシ基の酸素原子部分、又はヒドロキシ基の酸素原子部分を示す。
【0054】
なお、一般に、上記式(1)の各構造単位において、アルコキシ基の含有量は少なく、更にヒドロキシ基の含有量も少ない。これは、一般に、第1のオルガノポリシロキサンを得るために、アルコキシシラン化合物などの有機珪素化合物を加水分解し、重縮合させると、アルコキシ基及びヒドロキシ基の多くは、シロキサン結合の部分骨格に変換されるためである。すなわち、アルコキシ基の酸素原子及びヒドロキシ基の酸素原子の多くは、シロキサン結合を形成している酸素原子に変換される。上記式(1)の各構造単位がアルコキシ基又はヒドロキシ基を有する場合には、シロキサン結合の部分骨格に変換されなかった未反応のアルコキシ基又はヒドロキシ基がわずかに残存していることを示す。後述の式(51)の各構造単位がアルコキシ基又はヒドロキシ基を有する場合に関しても、同様のことがいえる。
【0055】
上記式(1)中、アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基及びヘキセニル基等が挙げられる。封止剤のガスバリア性をより一層高める観点からは、上記第1のオルガノポリシロキサンにおけるアルケニル基及び上記式(1)中のアルケニル基は、ビニル基又はアリル基であることが好ましく、ビニル基であることがより好ましい。
【0056】
封止剤の保存安定性をより一層高め、封止剤の硬化物の表面のべたつきをより一層抑制し、更に光半導体装置におけるワイヤーの接続信頼性をより一層高める観点からは、上記第1のオルガノポリシロキサンは、珪素原子に結合したビニル基を有することが好ましい。また、上記第1のオルガノポリシロキサンにおけるアルケニル基は、ビニル基であることが好ましい。
【0057】
上記式(1)における炭素数1〜8の炭化水素基としては特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、イソへキシル基及びシクロヘキシル基が挙げられる。
【0058】
封止剤の硬化性及び保存安定性をより一層高め、封止剤の硬化物の表面のべたつきをより一層抑制し、更に光半導体装置におけるワイヤーの接続信頼性をより一層高める観点からは、上記式(1)中、(R1R2R3SiO1/2)で表される構造単位は、R1が珪素原子に結合したビニル基を表し、R2及びR3が珪素原子に結合した基又は炭素数1〜8の炭化水素基を表す構造単位を含むことが好ましい。すなわち、上記第1のオルガノポリシロキサンは、下記式(1−a)で表される構造単位を有することが好ましい。(R1R2R3SiO1/2)で表される構造単位は、下記式(1−a)で表される構造単位のみを含んでいてもよく、下記式(1−a)で表される構造単位と下記式(1−a)で表される構造単位以外の構造単位とを含んでいてもよい。下記式(1−a)の存在により、末端にビニル基を存在させることができ、末端にビニル基が存在することによって反応機会が多くなり、封止剤の硬化性をより一層高めることができる。なお、下記式(1−a)で表される構造単位において、末端の酸素原子は、一般に隣接する珪素原子とシロキサン結合を形成しており、隣接する構造単位と酸素原子を共有している。従って、末端の1つの酸素原子を「O1/2」とする。
【0059】
【化3】

【0060】
上記式(1−a)中、R2及びR3はそれぞれ、珪素原子に結合したアリール基又は炭素数1〜8の炭化水素基を示す。
【0061】
耐熱衝撃性がより一層高い封止剤を得る観点からは、上記第1のオルガノポリシロキサンは、1つの珪素原子に2つのフェニル基が結合したジフェニルシロキサン構造単位を含むことが好ましい。さらに、耐熱衝撃性がさらに一層高い封止剤を得る観点からは、上記第1のオルガノポリシロキサンの全シロキサン構造単位100モル%中、1つの珪素原子に2つのフェニル基が結合したジフェニルシロキサン構造単位の割合は20モル%以上であることが好ましく、30モル%以上であることがより好ましい。
【0062】
上記ジフェニルシロキサン構造単位は、下記式(1−b1)で表される構造単位であることが好ましい。また、下記式(1−b1)で表される構造単位において、末端の酸素原子は、一般に隣接する珪素原子とシロキサン結合を形成しており、隣接する構造単位と酸素原子を共有している。従って、末端の1つの酸素原子を「O1/2」とする。
【0063】
【化4】

【0064】
上記式(1)で表される第1のオルガノポリシロキサンにおいて、(R4R5SiO2/2)で表される構造単位(以下、二官能構造単位ともいう)は、下記式(1−2)で表される構造、すなわち、二官能構造単位中の珪素原子に結合した酸素原子の1つがヒドロキシ基又はアルコキシ基を構成する構造を含んでいてもよい。
【0065】
(R4R5SiXO1/2) ・・・式(1−2)
【0066】
(R4R5SiO2/2)で表される構造単位は、下記式(1−b)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含み、更に下記式(1−2−b)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含んでいてもよい。すなわち、R4及びR5で表される基を有し、かつアルコキシ基又はヒドロキシ基が末端に残存している構造単位も、(R4R5SiO2/2)で表される構造単位に含まれる。具体的には、アルコキシ基がシロキサン結合の部分骨格に変換された場合には、(R4R5SiO2/2)で表される構造単位は、下記式(1−b)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を示す。未反応のアルコキシ基が残存している場合、又はアルコキシ基がヒドロキシ基に変換された場合には、残存アルコキシ基又はヒドロキシ基を有する(R4R5SiO2/2)で表される構造単位は、下記式(1−2−b)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を示す。また、下記式(1−b)で表される構造単位において、Si−O−Si結合中の酸素原子は、隣接する珪素原子とシロキサン結合を形成しており、隣接する構造単位と酸素原子を共有している。従って、Si−O−Si結合中の1つの酸素原子を「O1/2」とする。
【0067】
【化5】

【0068】
上記式(1−2)及び(1−2−b)中、Xは、OH又はORを表し、ORは、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。上記式(1−b)、(1−2)及び(1−2−b)中のR4及びR5は、上記式(1)中のR4及びR5と同様の基である。
【0069】
上記式(1)で表される第1のオルガノポリシロキサンにおいて、(R6SiO3/2)で表される構造単位(以下、三官能構造単位ともいう)は、下記式(1−3)又は(1−4)で表される構造、すなわち、三官能構造単位中の珪素原子に結合した酸素原子の2つがそれぞれヒドロキシ基若しくはアルコキシ基を構成する構造、又は、三官能構造単位中の珪素原子に結合した酸素原子の1つがヒドロキシ基若しくはアルコキシ基を構成する構造を含んでいてもよい。
【0070】
(R6SiX1/2) ・・・式(1−3)
(R6SiXO2/2) ・・・式(1−4)
【0071】
(R6SiO3/2)で表される構造単位は、下記式(1−c)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含み、更に下記式(1−3−c)又は(1−4−c)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含んでいてもよい。すなわち、R6で表される基を有し、かつアルコキシ基又はヒドロキシ基が末端に残存している構造単位も、(R6SiO3/2)で表される構造単位に含まれる。
【0072】
【化6】

【0073】
上記式(1−3)、(1−3−c)、(1−4)及び(1−4−c)中、Xは、OH又はORを表し、ORは、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。上記式(1−c)、(1−3)、(1−3−c)、(1−4)及び(1−4−c)中のR6は、上記式(1)中のR6と同様の基である。
【0074】
上記式(1−b)及び(1−c)、上記式(1−2)〜(1−4)、並びに上記式(1−2−b)、(1−3−c)及び(1−4−c)において、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基としては特に限定されず、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基及びt−ブトキシ基が挙げられる。
【0075】
上記式(1)中、a/(a+b+c)は0以上、0.50以下である。a/(a+b+c)が上記上限以下であると、封止剤の耐熱性をより一層高めることができ、かつ封止剤の剥離をより一層抑制できる。上記式(1)中、a/(a+b+c)は好ましくは0.45以下、より好ましくは0.40以下である。なお、aが0であり、a/(a+b+c)が0である場合、上記式(1)中、(R1R2R3SiO1/2)の構造単位は存在しない。
【0076】
上記式(1)中、b/(a+b+c)は0.40以上、1.0以下である。b/(a+b+c)が上記下限以上であると、封止剤の硬化物が硬くなりすぎず、封止剤にクラックが生じ難くなる。上記式(1)中、b/(a+b+c)は好ましくは0.50以上である。
【0077】
上記式(1)中、c/(a+b+c)は0以上、0.50以下である。c/(a+b+c)が上記上限以下であると、封止剤の適正な粘度を維持することが容易であり、封止剤の密着性がより一層高くなる。上記式(1)中、c/(a+b+c)は好ましくは0.45以下、より好ましくは0.40以下、更に好ましくは0.35以下である。なお、cが0であり、c/(a+b+c)が0である場合、上記式(1)中、(R6SiO3/2)の構造単位は存在しない。
【0078】
上記式(1)中のc/(a+b+c)は0であることが好ましい。すなわち、上記式(1)で表される第1のオルガノポリシロキサンは、下記式(1A)で表される第1のオルガノポリシロキサンであることが好ましい。これにより、封止剤にクラックがより一層生じ難くなり、かつ封止剤がハウジング材等からより一層剥離し難くなる。
【0079】
【化7】

【0080】
上記式(1A)中、a及びbは、a/(a+b)=0〜0.50及びb/(a+b)=0.50〜1.0を満たし、R1〜R5は、少なくとも1個が珪素原子に結合したアリール基を表し、少なくとも1個が珪素原子に結合したアルケニル基を表し、珪素原子に結合したアリール基及び珪素原子に結合したアルケニル基以外のR1〜R5は、炭素数1〜8の炭化水素基を表す。
【0081】
上記式(1A)中、a/(a+b)は好ましくは0.45以下、より好ましくは0.40以下である。上記式(1A)中、b/(a+b)は好ましくは0.55以上、より好ましくは0.60以上である。
【0082】
上記第1のオルガノポリシロキサンについて、テトラメチルシラン(以下、TMS)を基準に29Si−核磁気共鳴分析(以下、NMR)を行うと、置換基の種類によって若干の変動は見られるものの、上記式(1)及び上記式(1A)中の(R1R2R3SiO1/2)で表される構造単位に相当するピークは+10〜−5ppm付近に現れ、上記式(1)及び上記式(1A)中の(R4R5SiO2/2)及び上記式(1−2)の二官能構造単位に相当する各ピークは−10〜−50ppm付近に現れ、上記式(1)中の(R6SiO3/2)、並びに上記式(1−3)及び上記式(1−4)の三官能構造単位に相当する各ピークは−50〜−80ppm付近に現れる。
【0083】
従って、29Si−NMRを測定し、それぞれのシグナルのピーク面積を比較することによって、上記式(1)及び上記式(1A)中の各構造単位の比率を測定できる。
【0084】
但し、上記TMSを基準にした29Si−NMRの測定で上記式(1)及び上記式(1A)中の構造単位の見分けがつかない場合は、29Si−NMRの測定結果だけではなく、H−NMRの測定結果を必要に応じて用いることにより、上記式(1)及び上記式(1A)中の各構造単位の比率を見分けることができる。
【0085】
(第2のオルガノポリシロキサン)
本発明に係る光半導体装置用封止剤に含まれている第2のオルガノポリシロキサンは、珪素原子に結合したアリール基と、珪素原子に結合した水素原子とを有する。水素原子は珪素原子に直接結合している。上記第2のオルガノポリシロキサンは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0086】
封止剤の保存安定性をより一層高め、封止剤の硬化物の表面のべたつきをより一層抑制し、更に光半導体装置におけるワイヤーの接続信頼性をより一層高める観点からは、上記第2のオルガノポリシロキサンは、下記式(51)で表される第2のオルガノポリシロキサンであることが好ましい。但し、上記第2のオルガノポリシロキサンとして、下記式(51)で表される第2のオルガノポリシロキサン以外のオルガノポリシロキサンを用いてもよい。
【0087】
【化8】

【0088】
上記式(51)中、p、q及びrは、p/(p+q+r)=0.05〜0.50、q/(p+q+r)=0.05〜0.50及びr/(p+q+r)=0.20〜0.80を満たし、R51〜R56は、少なくとも1個が珪素原子に結合したアリール基を表し、少なくとも1個が珪素原子に結合した水素原子を表し、珪素原子に結合したアリール基及び珪素原子に結合した水素原子以外のR51〜R56は、炭素数1〜8の炭化水素基を表す。なお、上記式(51)中、(R54R55SiO2/2)で表される構造単位及び(R56SiO3/2)で表される構造単位はそれぞれ、アルコキシ基を有していてもよく、ヒドロキシ基を有していてもよい。
【0089】
上記式(51)は平均組成式を示す。上記式(51)における炭化水素基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。上記式(51)中のR51〜R56は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0090】
上記式(51)中、(R54R55SiO2/2)で表される構造単位における酸素原子部分、(R56SiO3/2)で表される構造単位における酸素原子部分はそれぞれ、シロキサン結合を形成している酸素原子部分、アルコキシ基の酸素原子部分、又はヒドロキシ基の酸素原子部分を示す。
【0091】
上記式(51)における炭素数1〜8の炭化水素基としては特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、イソへキシル基、シクロヘキシル基、ビニル基等のアルケニル基及びアリル基が挙げられる。
【0092】
上記第2のオルガノポリシロキサンは、珪素原子に結合したアルケニル基を有することが好ましく、珪素原子に結合したビニル基を有することが好ましい。上記式(51)中、R51〜R56は、少なくとも1個が珪素原子に結合したアリール基を表し、少なくとも1個が珪素原子に結合した水素原子を表し、少なくとも1個が珪素原子に結合したアルケニル基を表し、珪素原子に結合したアリール基、珪素原子に結合した水素原子及び珪素原子に結合したアルケニル基以外のR51〜R56は、炭素数1〜8の炭化水素基を表すことが好ましい。
【0093】
封止剤の保存安定性をより一層高め、封止剤の硬化物の表面のべたつきをより一層抑制し、更に光半導体装置におけるワイヤーの接続信頼性をより一層高める観点からは、上記式(51)中の(R51R52R53SiO1/2)で表される構造単位は、R51が珪素原子に結合した水素原子を表し、R52及びR53が珪素原子に結合した水素原子、珪素原子に結合したアリール基又は炭素数1〜8の炭化水素基を表す構造単位を含むことが好ましい。この場合には、光半導体装置において、熱サイクルでのクラック及び剥離を抑制することもできる。上記式(51)中の(R51R52R53SiO1/2)で表される構造単位は、R51が珪素原子に結合した水素原子を表し、R52及びR53が珪素原子に結合したアリール基又は炭素数1〜8の炭化水素基を表す構造単位を含むことがより好ましい。
【0094】
すなわち、上記式(51)中、(R51R52R53SiO1/2)で表される構造単位は、下記式(51−a)で表される構造単位を含むことが好ましい。(R51R52R53SiO1/2)で表される構造単位は、下記式(51−a)で表される構造単位のみを含んでいてもよく、下記式(51−a)で表される構造単位と下記式(51−a)で表される構造単位以外の構造単位とを含んでいてもよい。下記式(51−a)の存在により、末端に水素原子を存在させることができる。末端に水素原子が存在することによって反応機会が多くなり、封止剤の硬化性をより一層高めることができる。なお、下記式(51−a)で表される構造単位において、末端の酸素原子は、一般に隣接する珪素原子とシロキサン結合を形成しており、隣接する構造単位と酸素原子を共有している。従って、末端の1つの酸素原子を「O1/2」とする。
【0095】
【化9】

【0096】
上記式(51−a)中、R52及びR53はそれぞれ、珪素原子に結合した水素原子、珪素原子に結合したアリール基又は炭素数1〜8の炭化水素基を表す。R52及びR53はそれぞれ、珪素原子に結合したアリール基又は炭素数1〜8の炭化水素基を表すことが好ましい。
【0097】
封止剤の保存安定性をより一層高め、封止剤の硬化物の表面のべたつきをより一層抑制し、更に光半導体装置におけるワイヤーの接続信頼性をより一層高める観点からは、上記式(51)中の全構造単位100モル%中、(R51R52R53SiO1/2)で表される構造単位であって、R51が珪素原子に結合した水素原子を表し、R52及びR53が珪素原子に結合した水素原子、珪素原子に結合したアリール基又は炭素数1〜8の炭化水素基を表す構造単位(上記式(51−a)で表される構造単位)の割合は、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上、好ましくは50モル%以下、より好ましくは45モル%以下である。
【0098】
上記式(51)で表される第2のオルガノポリシロキサンにおいて、(R54R55SiO2/2)で表される構造単位(以下、二官能構造単位ともいう)は、下記式(51−2)で表される構造、すなわち、二官能構造単位中の珪素原子に結合した酸素原子の1つがヒドロキシ基又はアルコキシ基を構成する構造を含んでいてもよい。
【0099】
(R54R55SiXO1/2) ・・・式(51−2)
【0100】
(R54R55SiO2/2)で表される構造単位は、下記式(51−b)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含み、更に下記式(51−2−b)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含んでいてもよい。すなわち、R54及びR55で表される基を有し、かつアルコキシ基又はヒドロキシ基が末端に残存している構造単位も、(R54R55SiO2/2)で表される構造単位に含まれる。
【0101】
【化10】

【0102】
上記式(51−2)及び(51−2−b)中、Xは、OH又はORを表し、ORは、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。上記式(51−b)、(51−2)及び(51−2−b)中のR54及びR55は、上記式(51)中のR54及びR55と同様の基である。
【0103】
上記式(51)で表される第2のオルガノポリシロキサンにおいて、(R56SiO3/2)で表される構造単位(以下、三官能構造単位ともいう)は、下記式(51−3)又は(51−4)で表される構造、すなわち、三官能構造単位中の珪素原子に結合した酸素原子の2つがそれぞれヒドロキシ基若しくはアルコキシ基を構成する構造、又は、三官能構造単位中の珪素原子に結合した酸素原子の1つがヒドロキシ基若しくはアルコキシ基を構成する構造を含んでいてもよい。
【0104】
(R56SiX1/2) ・・・式(51−3)
(R56SiXO2/2) ・・・式(51−4)
【0105】
(R56SiO3/2)で表される構造単位は、下記式(51−c)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含み、更に下記式(51−3−c)又は(51−4−c)で表される構造単位の破線で囲まれた部分を含んでいてもよい。すなわち、R56で表される基を有し、かつアルコキシ基又はヒドロキシ基が末端に残存している構造単位も、(R56SiO3/2)で表される構造単位に含まれる。
【0106】
【化11】

【0107】
上記式(51−3)、(51−3−c)、(51−4)及び(51−4−c)中、Xは、OH又はORを表し、ORは、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。上記式(51−c)、(51−3)、(51−3−c)、(51−4)及び(51−4−c)中のR56は、上記式(51)中のR56と同様の基である。
【0108】
上記式(51−b)及び(51−c)、上記式(51−2)〜(51−4)、並びに上記式(51−2−b)、(51−3−c)、(51−4−c)において、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基としては特に限定されず、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基及びt−ブトキシ基が挙げられる。
【0109】
上記式(51)中、p/(p+q+r)は0.05以上、0.50以下である。p/(p+q+r)が上記上限以下であると、封止剤の耐熱性をより一層高めることができ、かつ封止剤の剥離をより一層抑制できる。上記式(51)中、p/(p+q+r)は好ましくは0.10以上、好ましくは0.45以下である。
【0110】
上記式(51)中、q/(p+q+r)は0.05以上、0.50以下である。q/(p+q+r)が上記下限以上であると、封止剤の硬化物が硬くなりすぎず、封止剤にクラックが生じ難くなる。q/(p+q+r)が上記上限以下であると、封止剤のガスバリア性がより一層高くなる。上記式(51)中、q/(p+q+r)は好ましくは0.10以上、より好ましくは0.45以下である。
【0111】
上記式(51)中、r/(p+q+r)は0.20以上、0.80以下である。r/(p+q+r)が上記下限以上であると、封止剤の硬度が上がり、傷及びゴミの付着を防止でき、封止剤の耐熱性が高くなり、高温環境下で封止剤の硬化物の厚みが減少し難くなる。r/(p+q+r)が上記上限以下であると、封止剤の適正な粘度を維持することが容易であり、密着性がより一層高くなる。
【0112】
上記式(51)中のp/(p+q+r)は、0であることが好ましい。すなわち、上記式(51)で表される第2のオルガノポリシロキサンは、下記式(51A)で表される第2のオルガノポリシロキサンであることが好ましい。これにより、封止剤にクラックがより一層生じ難くなり、かつ封止剤がハウジング材等からより一層剥離し難くなる。
【0113】
【化12】

【0114】
上記式(51A)中、p及びqは、p/(p+q)=0〜0.25及びq/(p+q)=0.75〜1.0を満たし、R51〜R55は、少なくとも1個が珪素原子に結合した水素原子を表し、少なくとも1個が珪素原子に結合したアリール基を表し、珪素原子に結合した水素原子及び珪素原子に結合したアリール基以外のR51〜R55は、炭素数1〜8の炭化水素基を表す。
【0115】
上記式(51A)中、p/(p+q)は好ましくは0.20以下、より好ましくは0.15以下である。上記式(51A)中、q/(p+q)は好ましくは0.80以上、より好ましくは0.85以上である。
【0116】
上記第2のオルガノポリシロキサンについて、テトラメチルシラン(以下、TMS)を基準に29Si−核磁気共鳴分析(以下、NMR)を行うと、置換基の種類によって若干の変動は見られるものの、上記式(51)及び上記式(51A)中の(R51R52R53SiO1/2)で表される構造単位に相当するピークは+10〜−5ppm付近に現れ、上記式(51)及び上記式(51A)中の(R54R55SiO2/2)及び上記式(51−2)の二官能構造単位に相当する各ピークは−10〜−50ppm付近に現れ、上記式(51)中の(R56SiO3/2)、並びに上記式(51−3)及び上記式(51−4)の三官能構造単位に相当する各ピークは−50〜−80ppm付近に現れる。
【0117】
従って、29Si−NMRを測定し、それぞれのシグナルのピーク面積を比較することによって上記式(51)及び上記式(51A)中の各構造単位の比率を測定できる。
【0118】
但し、上記TMSを基準にした29Si−NMRの測定で上記式(51)及び上記式(51A)中の構造単位の見分けがつかない場合は、29Si−NMRの測定結果だけではなく、H−NMRの測定結果を必要に応じて用いることにより、上記式(51)及び上記式(51A)中の各構造単位の比率を見分けることができる。
【0119】
上記第1のオルガノポリシロキサン100重量部に対して、上記第2のオルガノポリシロキサンの含有量は好ましくは10重量部以上、より好ましくは15重量部以上、好ましくは400重量部以下、より好ましくは300重量部以下、更に好ましくは200重量部以下である。上記第1,第2のオルガノポリシロキサンの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、封止剤の硬化性及び保存安定性がより一層高くなり、封止剤の硬化物の表面のべたつきが抑えられ、更に光半導体装置におけるワイヤーの接続信頼性がより一層高くなる。
【0120】
(第1,第2のオルガノポリシロキサンの他の性質及びその合成方法)
封止剤の硬化物の表面のべたつきをより一層抑制し、更に光半導体装置における熱衝撃に対するワイヤーの接続信頼性をより一層高める観点からは、上記オルガノポリシロキサン成分の下記式(Xd)より求められる珪素原子に結合した飽和鎖式炭化水素基の含有比率は、好ましくは39個数%以上、好ましくは54個数%以下である。
【0121】
珪素原子に結合した飽和鎖式炭化水素基の含有比率(個数%)=(上記オルガノポリシロキサン成分に含まれる珪素原子に結合した飽和鎖式炭化水素基の個数/上記オルガノポリシロキサン成分に含まれる珪素原子に結合した官能基の個数)×100 ・・・式(Xd)
【0122】
上記オルガノポリシロキサン成分の上記式(Xd)より求められる珪素原子に結合した飽和鎖式炭化水素基の含有比率は好ましくは39個数%以下、より好ましくは54個数%以下である。アルコキシ基の含有比率が上記上限以下であると、上記第1,第2のオルガノポリシロキサン及び封止剤の保存安定性が高くなり、封止剤の耐熱衝撃性がより一層高くなる。
【0123】
珪素原子に結合したアルコキシ基の含有比率(個数%)=(上記オルガノポリシロキサン成分に含まれる珪素原子に結合したアルコキシ基の個数/上記オルガノポリシロキサン成分に含まれる珪素原子に結合した官能基の個数)×100 ・・・式(Xe)
【0124】
上記第1,第2のオルガノポリシロキサンはシラノール基を有さないほうが好ましい。上記第1,第2のオルガノポリシロキサンがシラノール基を有さないと、第1,第2のオルガノポリシロキサン及び封止剤の保存安定性が高くなる。上記シラノール基は、真空下での加熱により減少させることができる。シラノール基の含有量は、赤外分光法を用いて測定できる。
【0125】
上記第1,第2のオルガノポリシロキサンの数平均分子量(Mn)は好ましくは500以上、より好ましくは800以上、更に好ましくは1000以上、好ましくは50000以下、より好ましくは15000以下である。数平均分子量が上記下限以上であると、熱硬化時に揮発成分が少なくなり、高温環境下で封止剤の硬化物の厚みが減少しにくくなる。数平均分子量が上記上限以下であると、粘度調節が容易である。
【0126】
上記数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレンを標準物質して求めた値である。上記数平均分子量(Mn)は、Waters社製の測定装置(カラム:昭和電工社製 Shodex GPC LF−804(長さ300mm)を2本、測定温度:40℃、流速:1mL/分、溶媒:テトラヒドロフラン、標準物質:ポリスチレン)を用いて測定された値を意味する。
【0127】
上記第1,第2のオルガノポリシロキサンを合成する方法としては特に限定されず、アルコキシシラン化合物を加水分解し縮合反応させる方法、クロロシラン化合物を加水分解し縮合させる方法が挙げられる。なかでも、反応の制御の観点からアルコキシシラン化合物を加水分解し縮合させる方法が好ましい。
【0128】
上記アルコキシシラン化合物を加水分解し縮合反応させる方法としては、例えば、アルコキシシラン化合物を、水と酸性触媒又は塩基性触媒との存在下で反応させる方法が挙げられる。また、ジシロキサン化合物を加水分解して用いてもよい。
【0129】
上記第1,第2のオルガノポリシロキサンにアリール基を導入するための有機珪素化合物としては、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチル(フェニル)ジメトキシシラン、及びフェニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0130】
上記第1のオルガノポリシロキサンにアルケニル基を導入するための有機珪素化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、メトキシジメチルビニルシラン、ビニルジメチルエトキシシラン及び1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン等が挙げられる。
【0131】
上記第2のオルガノポリシロキサンに珪素原子に結合した水素原子を導入するための有機珪素化合物としては、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、及び1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン等が挙げられる。
【0132】
上記第1,第2のオルガノポリシロキサンを得るために用いることができる他の有機珪素化合物としては、例えば、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、イソプロピル(メチル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(メチル)ジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン及びオクチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0133】
上記酸性触媒としては、例えば、無機酸、有機酸、無機酸の酸無水物及びその誘導体、並びに有機酸の酸無水物及びその誘導体が挙げられる。
【0134】
上記無機酸としては、例えば、塩酸、リン酸、ホウ酸及び炭酸が挙げられる。上記有機酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸及びオレイン酸が挙げられる。
【0135】
上記塩基性触媒としては、例えば、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属のアルコキシド及びアルカリ金属のシラノール化合物が挙げられる。
【0136】
上記アルカリ金属の水酸化物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化セシウムが挙げられる。上記アルカリ金属のアルコキシドとしては、例えば、ナトリウム−t−ブトキシド、カリウム−t−ブトキシド及びセシウム−t−ブトキシドが挙げられる。
【0137】
上記アルカリ金属のシラノール化合物としては、例えば、ナトリウムシラノレート化合物、カリウムシラノレート化合物及びセシウムシラノレート化合物が挙げられる。なかでも、カリウム系触媒又はセシウム系触媒が好適である。
【0138】
(ヒドロシリル化反応用触媒)
本発明に係る光半導体装置用封止剤に含まれているヒドロシリル化反応用触媒は、上記第1のオルガノポリシロキサン中の珪素原子に結合したアルケニル基と、上記第2のオルガノポリシロキサン中の珪素原子に結合した水素原子とをヒドロシリル化反応させる触媒である。
【0139】
上記ヒドロシリル化反応用触媒として、ヒドロシリル化反応を進行させる各種の触媒が使用可能である。上記ヒドロシリル化反応用触媒は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0140】
上記ヒドロシリル化反応用触媒としては、例えば、白金系触媒、ロジウム系触媒及びパラジウム系触媒等が挙げられる。封止剤の透明性が高くなるので、白金系触媒が好ましい。
【0141】
上記白金系触媒としては、白金粉末、塩化白金酸、白金−アルケニルシロキサン錯体、白金−オレフィン錯体及び白金−カルボニル錯体が挙げられる。特に、白金−アルケニルシロキサン錯体又は白金−オレフィン錯体が好ましい。
【0142】
上記白金−アルケニルシロキサン錯体におけるアルケニルシロキサンとしては、例えば、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、及び1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン等が挙げられる。上記白金−オレフィン錯体におけるオレフィンとしては、例えば、アリルエーテル及び1,6−ヘプタジエン等が挙げられる。
【0143】
上記白金−アルケニルシロキサン錯体及び白金−オレフィン錯体の安定性を向上させることができるため、上記白金−アルケニルシロキサン錯体又は白金−オレフィン錯体に、アルケニルシロキサン、オルガノシロキサンオリゴマー、アリルエーテル又はオレフィンを添加することが好ましい。上記アルケニルシロキサンは、好ましくは1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンである。上記オルガノシロキサンオリゴマーは、好ましくはジメチルシロキサンオリゴマーである。上記オレフィンは、好ましくは1,6−ヘプタジエンである。
【0144】
高温下又は高湿下での過酷な環境で通電した状態で使用された際の光度の低下をより一層抑制し、かつ封止剤の変色をより一層抑制する観点からは、上記ヒドロシリル化反応用触媒は、白金のアルケニル錯体であることが好ましい。高温下又は高湿下での過酷な環境で通電した状態で使用された際の光度の低下をさらに一層抑制し、かつ封止剤の変色をさらに一層抑制する観点からは、上記白金のアルケニル錯体は、塩化白金酸6水和物と、6当量以上の2官能以上であるアルケニル化合物とを反応させることにより得られる白金のアルケニル錯体であることが好ましい。この場合に、白金のアルケニル錯体は、塩化白金酸6水和物と、6当量以上の2官能以上であるアルケニル化合物との反応物である。また、上記白金のアルケニル錯体の使用により、封止剤の透明性を高くすることもできる。上記白金のアルケニル錯体は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0145】
上記白金のアルケニル錯体を得るための白金原料として、上記塩化白金酸6水和物(HPtCl・6HO)を用いることが好ましい。
【0146】
上記白金のアルケニルを得るための上記6当量以上の2官能以上であるアルケニル化合物としては、例えば、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジメチル−1,3−ジフェニル−1,3−ジビニルジシロキサン及び1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン等が挙げられる。
【0147】
上記6当量以上の2官能以上であるアルケニル化合物における「当量」に関しては、上記塩化白金酸6水和物1モルに対して上記2官能以上のアルケニル化合物が1モルである重量を1当量とする。上記6当量以上の2官能以上であるアルケニル化合物は、50当量以下であることが好ましい。
【0148】
上記白金のアルケニル錯体を得るために用いられる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール及び1−ブタノール等のアルコール系溶媒が挙げられる。トルエン及びキシレン等の芳香族系溶媒を用いてもよい。上記溶媒は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0149】
上記白金のアルケニル錯体を得るために、上記成分に加えて単官能のビニル化合物を用いてもよい。上記単官能のビニル化合物としては、例えば、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン及びビニルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0150】
塩化白金酸6水和物と、6当量以上の2官能以上であるアルケニル化合物との反応物に関して、白金元素と6当量以上の2官能以上であるアルケニル化合物とは、共有結合していたり、配位していたり、又は共有結合しかつ配位していたりする。
【0151】
封止剤中で、上記ヒドロシリル化反応用触媒の含有量は、金属原子(白金のアルケニル錯体の場合には白金原子)の重量単位で好ましくは0.01ppm以上、より好ましくは1ppm以上、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは500ppm以下である。上記ヒドロシリル化反応用触媒の含有量が上記下限以上であると、封止剤を十分に硬化させることが容易である。上記ヒドロシリル化反応用触媒の含有量が上記上限以下であると、硬化物の着色の問題が生じ難い。
【0152】
(酸化珪素粒子)
本発明に係る光半導体装置用封止剤は、酸化珪素粒子を含むことが好ましい。この酸化珪素粒子の使用により、封止剤の硬化物の耐熱性及び耐光性を損なうことなく、硬化前の封止剤の粘度を適当な範囲に調整できる。従って、封止剤の取り扱い性が高くなる。また、上記酸化珪素粒子は、有機珪素化合物により表面処理されていることが好ましい。この表面処理により、酸化珪素粒子の分散性が非常に高くなり、硬化前の封止剤の温度上昇による粘度の低下をより一層抑制できる。
【0153】
上記酸化珪素粒子の一次粒子径は、好ましくは5nm以上、より好ましくは8nm以上、好ましくは200nm以下、より好ましくは150nm以下である。上記酸化珪素粒子の一次粒子径が上記下限以上であると、酸化珪素粒子の分散性がより一層高くなり、封止剤の硬化物の透明性がより一層高くなる。上記酸化珪素粒子の一次粒子径が上記上限以下であると、25℃における粘度の上昇効果を充分に得ることができ、かつ温度上昇における粘度の低下を抑制できる。
【0154】
上記酸化珪素粒子の一次粒子径は、以下のようにして測定される。光半導体装置用封止剤の硬化物を透過型電子顕微鏡(商品名「JEM−2100」、日本電子社製)を用いて観察する。視野中の100個の酸化珪素粒子の一次粒子の大きさをそれぞれ測定し、測定値の平均値を一次粒子径とする。上記一次粒子径は、上記酸化珪素粒子が球形である場合には酸化珪素粒子の直径の平均値を意味し、非球形である場合には酸化珪素粒子の長径の平均値を意味する。
【0155】
上記酸化珪素粒子のBET比表面積は、好ましくは30m/g以上、好ましくは400m/g以下である。上記酸化珪素粒子のBET比表面積が30m/g以上であると、封止剤の25℃における粘度を好適な範囲に制御でき、温度上昇における粘度の低下を抑制できる。上記酸化珪素粒子のBET比表面積が400m/g以下であると、酸化珪素粒子の凝集が生じ難くなり、分散性を高くすることができ、更に封止剤の硬化物の透明性をより一層高くすることができる。
【0156】
上記酸化珪素粒子としては特に限定されず、例えば、フュームドシリカ、溶融シリカ等の乾式法で製造されたシリカ、並びにコロイダルシリカ、ゾルゲルシリカ、沈殿シリカ等の湿式法で製造されたシリカ等が挙げられる。なかでも、揮発成分が少なく、かつ透明性がより一層高い封止剤を得る観点からは、上記酸化珪素粒子として、フュームドシリカが好適に用いられる。
【0157】
上記フュームドシリカとしては、例えば、Aerosil 50(比表面積:50m/g)、Aerosil 90(比表面積:90m/g)、Aerosil 130(比表面積:130m/g)、Aerosil 200(比表面積:200m/g)、Aerosil 300(比表面積:300m/g)、及びAerosil 380(比表面積:380m/g)(いずれも日本アエロジル社製)等が挙げられる。
【0158】
上記有機珪素化合物としては特に限定されず、例えば、アルキル基を有するシラン系化合物、ジメチルシロキサン等のシロキサン骨格を有する珪素系化合物、アミノ基を有する珪素系化合物、(メタ)アクリロイル基を有する珪素系化合物、及びエポキシ基を有する珪素系化合物等が挙げられる。上記「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基とメタクリロイル基とを意味する。
【0159】
酸化珪素粒子の分散性をさらに一層高める観点からは、上記有機珪素化合物は、ジメチルシリル基を有する有機珪素化合物、トリメチルシリル基を有する有機珪素化合物及びポリジメチルシロキサン基を有する有機珪素化合物からなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。
【0160】
有機珪素化合物による表面処理する方法の一例として、ジメチルシリル基を有する有機珪素化合物又はトリメチルシリル基を有する有機珪素化合物を用いる場合には、例えば、ジクロロジメチルシラン、ジメチルジメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシリルクロライド及びトリメチルメトキシシラン等を用いて、酸化珪素粒子を表面処理する方法が挙げられる。ポリジメチルシロキサン基を有する有機珪素化合物を用いる場合には、ポリジメチルシロキサン基の末端にシラノール基を有する化合物及び環状シロキサン等を用いて、酸化珪素粒子を表面処理する方法が挙げられる。
【0161】
上記ジメチルシリル基を有する有機珪素化合物により表面処理された酸化珪素粒子の市販品としては、R974(比表面積:170m/g)、及びR964(比表面積:250m/g)(いずれも日本アエロジル社製)等が挙げられる。
【0162】
上記トリメチルシリル基を有する有機珪素化合物により表面処理された酸化珪素粒子の市販品としては、RX200(比表面積:140m/g)、及びR8200(比表面積:140m/g)(いずれも日本アエロジル社製)等が挙げられる。
【0163】
上記ポリジメチルシロキサン基を有する有機珪素化合物により表面処理された酸化珪素粒子の市販品としては、RY200(比表面積:120m/g)(日本アエロジル社製)等が挙げられる。
【0164】
上記有機珪素化合物により酸化珪素粒子を表面処理する方法は特に限定されない。この方法としては、例えば、ミキサー中に酸化珪素粒子を添加し、攪拌しながら有機珪素化合物を添加する乾式法、酸化珪素粒子のスラリー中に有機珪素化合物を添加するスラリー法、並びに、酸化珪素粒子の乾燥後に有機珪素化合物をスプレー付与するスプレー法などの直接処理法等が挙げられる。上記乾式法で用いられるミキサーとしては、ヘンシェルミキサー及びV型ミキサー等が挙げられる。上記乾式法では、有機珪素化合物は、直接、又は、アルコール水溶液、有機溶媒溶液若しくは水溶液として添加される。
【0165】
上記有機珪素化合物により表面処理されている酸化珪素粒子を得るために、光半導体装置用封止剤を調製する際に、酸化珪素粒子と上記第1,第2のオルガノポリシロキサン等のマトリクス樹脂との混合時に、有機珪素化合物を直接添加するインテグレルブレンド法等を用いてもよい。
【0166】
上記第1のオルガノポリシロキサンと上記第2のオルガノポリシロキサンとの合計100重量部に対して、上記酸化珪素粒子の含有量は、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.5重量部以上、更に好ましくは1重量部以上、好ましくは40重量部以下、より好ましくは35重量部以下、更に好ましくは20重量部以下である。上記酸化珪素粒子の含有量が上記下限以上であると、硬化時の粘度低下を抑制可能である。上記酸化珪素粒子の含有量が上記上限以下であると、封止剤の粘度をより一層適正な範囲に制御でき、かつ封止剤の透明性をより一層高めることができる。
【0167】
(蛍光体)
本発明に係る光半導体装置用封止剤は、蛍光体をさらに含んでいてもよい。上記蛍光体は、光半導体装置用封止剤を用いて封止する発光素子が発する光を吸収し、蛍光を発生することによって、最終的に所望の色の光を得ることができるように作用する。上記蛍光体は、発光素子が発する光によって励起され、蛍光を発し、発光素子が発する光と蛍光体が発する蛍光との組み合わせによって、所望の色の光を得ることができる。
【0168】
例えば、発光素子として紫外線LEDチップを使用して最終的に白色光を得ることを目的とする場合には、青色蛍光体、赤色蛍光体及び緑色蛍光体を組み合わせて用いることが好ましい。発光素子として青色LEDチップを使用して最終的に白色光を得ることを目的とする場合には、緑色蛍光体及び赤色蛍光体を組み合わせて用いるか、又は、黄色蛍光体を用いることが好ましい。上記蛍光体は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0169】
上記青色蛍光体としては特に限定されず、例えば、(Sr、Ca、Ba、Mg)10(POCl:Eu、(Ba、Sr)MgAl1017:Eu、(Sr、Ba)MgSi:Eu等が挙げられる。
【0170】
上記赤色蛍光体としては特に限定されず、例えば、(Sr、Ca)S:Eu、(Ca、Sr)Si:Eu、CaSiN:Eu、CaAlSiN:Eu、YS:Eu、LaS:Eu、LiW:(Eu、Sm)、(Sr、Ca、Bs、Mg)10(POCl:(Eu、Mn)、BaMgSi:(Eu、Mn)等が挙げられる。
【0171】
上記緑色蛍光体としては特に限定されず、例えば、Y(Al、Ga)12:Ce、SrGa:Eu、CaScSi12:Ce、SrSiON:Eu、ZnS:(Cu、Al)、BaMgAl1017(Eu、Mn)、SrAl:Eu等が挙げられる。
【0172】
上記黄色蛍光体としては特に限定されず、例えば、YAl12:Ce、(Y、Gd)Al12:Ce、TbAl12:Ce、CaGa:Eu、SrSiO:Eu等が挙げられる。
【0173】
さらに、上記蛍光体としては、有機蛍光体であるペリレン系化合物等が挙げられる。
【0174】
所望の色の光を得るように、上記蛍光体の含有量は適宜調整でき、特に限定されない。本発明に係る光半導体装置用封止剤100重量部に対して、上記蛍光体の含有量は好ましくは0.1重量部以上、好ましくは40重量部以下である。光半導体装置用封止剤の蛍光体を除く全成分100重量部に対して、上記蛍光体の含有量は好ましくは0.1重量部以上、好ましくは40重量部以下である。
【0175】
(カップリング剤)
本発明に係る光半導体装置用封止剤は、接着性を付与するために、カップリング剤をさらに含有してもよい。
【0176】
上記カップリング剤としては特に限定されず、例えば、シランカップリング剤等が挙げられる。該シランカップリング剤としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、及びN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。上記カップリング剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0177】
(他の成分)
本発明に係る光半導体装置用封止剤は、必要に応じて、分散剤、酸化防止剤、消泡剤、着色剤、変性剤、レベリング剤、光拡散剤、熱伝導性フィラー又は難燃剤等の添加剤をさらに含有してもよい。
【0178】
なお、上記第1のオルガノポリシロキサンと、上記第2のオルガノポリシロキサンと、上記ヒドロシリル化反応用触媒とは、これらを1種又は2種以上含む液を別々に調製しておき、使用直前に複数の液を混合して、本発明に係る光半導体装置用封止剤を調製してもよい。例えば、上記第1のオルガノポリシロキサン及び上記ヒドロシリル化反応用触媒を含むA液と、上記第2のオルガノポリシロキサンを含むB液とを別々に調製しておき、使用直前にA液とB液を混合して、本発明に係る光半導体装置用封止剤を調製してもよい。この場合に、上記酸化珪素粒子及び上記蛍光体はそれぞれ、A液に添加してもよく、B液に添加してもよい。このように上記第1のオルガノポリシロキサン及び上記ヒドロシリル化反応用触媒と上記第2のオルガノポリシロキサンとを別々に、第1の液と第2の液との2液にすることによって、封止剤の保存安定性がより一層良好になる。
【0179】
(光半導体装置用封止剤の詳細及び用途)
本発明に係る光半導体装置用封止剤の硬化温度は特に限定されない。光半導体装置用封止剤の硬化温度は、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、好ましくは180℃以下、より好ましくは150℃以下である。硬化温度が上記下限以上であると、封止剤の硬化が充分に進行する。硬化温度が上記上限以下であると、パッケージの熱劣化が起こり難い。
【0180】
硬化方式は特に限定されないが、ステップキュア方式を用いることが好ましい。ステップキュア方式は、一旦低温で仮硬化させておき、その後に高温で硬化させる方法である。ステップキュア方式の使用により、封止剤の硬化収縮が抑えられる。
【0181】
本発明に係る光半導体装置用封止剤の製造方法としては特に限定されず、例えば、ホモディスパー、ホモミキサー、万能ミキサー、プラネタリウムミキサー、ニーダー、三本ロール又はビーズミル等の混合機を用いて、常温又は加温下で、上記第1のオルガノポリシロキサン、上記第2のオルガノポリシロキサン、上記ヒドロシリル化反応用触媒、及び必要に応じて配合される他の成分を混合する方法等が挙げられる。
【0182】
上記発光素子としては、半導体を用いた発光素子であれば特に限定されず、例えば、上記発光素子が発光ダイオードである場合、例えば、基板上にLED形式用半導体材料を積層した構造が挙げられる。この場合、半導体材料としては、例えば、GaAs、GaP、GaAlAs、GaAsP、AlGaInP、GaN、InN、AlN、InGaAlN、及びSiC等が挙げられる。
【0183】
上記基板の材料としては、例えば、サファイア、スピネル、SiC、Si、ZnO、及びGaN単結晶等が挙げられる。また、必要に応じ基板と半導体材料との間にバッファー層が形成されていてもよい。上記バッファー層の材料としては、例えば、GaN及びAlN等が挙げられる。
【0184】
本発明に係る光半導体装置としては、具体的には、例えば、発光ダイオード装置、半導体レーザー装置及びフォトカプラ等が挙げられる。このような光半導体装置は、例えば、液晶ディスプレイ等のバックライト、照明、各種センサー、プリンター及びコピー機等の光源、車両用計測器光源、信号灯、表示灯、表示装置、面状発光体の光源、ディスプレイ、装飾、各種ライト並びにスイッチング素子等に好適に用いることができる。
【0185】
本発明に係る光半導体装置は、光半導体素子と、該光半導体素子を封止するように設けられた光半導体装置用封止剤の硬化物とを備える。本発明に係る光半導体装置では、該光半導体装置用封止剤の硬化物が上述した光半導体装置用封止剤を硬化させることにより形成されている。
【0186】
(光半導体装置の実施形態)
図1は、本発明の一実施形態に係る光半導体装置を示す正面断面図である。
【0187】
本実施形態の光半導体装置1は、接続対象部材であるハウジング2と、光半導体素子3とを有する。ハウジング2内にLED素子である光半導体素子3が実装されている。この光半導体素子3の周囲を、ハウジング2の光反射性を有する内面2aが取り囲んでいる。本実施形態では、光半導体により形成された発光素子として、光半導体素子3が用いられている。
【0188】
ハウジング2の内面2aは、内面2aの径が開口端に向かうにつれて大きくなるように形成されている。従って、光半導体素子3から発せられた光のうち、内面2aに到達した光B1が内面2aにより反射され、光半導体素子3の前方側に進行する。
【0189】
光半導体素子3は、ハウジング2に設けられたリード電極4に、ダイボンド材5を用いて接続されている。光半導体素子3に設けられたボンディングパッド(図示せず)とリード電極4とが、ボンディングワイヤー6により電気的に接続されている。光半導体素子3及びボンディングワイヤー6を封止するように、内面2aで囲まれた領域内には、封止剤7が充填されている。封止剤7は、上述した光半導体装置用封止剤の硬化物であり、上述した光半導体装置用封止剤を硬化させることにより形成されている。
【0190】
光半導体装置1では、光半導体素子3を駆動すると、破線Aで示すように光が発せられる。この場合、光半導体素子3からリード電極4の上面とは反対側すなわち上方に照射される光だけでなく、ダイボンド材5に到達した光が矢印B2で示すように反射される光もある。
【0191】
なお、図1に示す構造は、本発明に係る光半導体装置の一例にすぎず、光半導体素子3の実装構造等には適宜変形され得る。
【0192】
以下に、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0193】
(合成例1)第1のオルガノポリシロキサンの合成
温度計、滴下装置及び攪拌機を備えた1000mLのセパラブルフラスコ中で、ジメチルジメトキシシラン112g、ジフェニルジメトキシシラン337.3g、及びビニルトリメトキシシラン51.4gを、50℃で攪拌して撹拌液を得た。その中に、水酸化カリウム0.65gを水88.3gに溶かした溶液をゆっくりと滴下し、滴下後に50℃で6時間攪拌し、反応させて、第一反応液を得た。次に、第一反応液中に、ビニルトリメトキシシラン73.8g及びトルエン258.8gを入れ、攪拌した。その中に、水酸化カリウム3.5gをメタノール172.8に溶かした溶液を入れ、80℃で2時間攪拌し、第二反応液を得た。次に第二反応液中に酢酸4.44gを加え、減圧して揮発成分を除去し、酢酸カリウムをろ過により除去して、ポリマー(A)を得た。
【0194】
得られたポリマー(A)の25℃での粘度は3700mPa・sであった。なお、合成例1及び後述する合成例で得られたポリマーの粘度は、東機産業社製「VISCOMETRE TV−22」、スピンドルNo.4を使って測定した。H−NMRによる測定の結果、ポリマー(A)のフェニル基の含有比率は51.9個数%、ビニル基の含有比率は6.6個数%、メチル基の含有比率は41.3個数%、アルコキシ基の含有比率は0.2個数%であった。なお、合成例1及び後述の合成例で示した含有比率は、珪素原子に結合した各基の含有比率を示す。
【0195】
(合成例2)第1のオルガノポリシロキサンの合成
第一反応液を得る際に、撹拌液を、ジメチルジメトキシシラン112g、ジフェニルジメトキシシラン333g、及びビニルトリメトキシシラン55gを50℃で攪拌した撹拌液に変更したこと以外は、合成例1と同様にしてポリマー(B)を得た。
【0196】
得られたポリマー(B)の25℃での粘度は3900mPa・sであった。H−NMRによる測定の結果、ポリマー(B)のフェニル基の含有比率は53個数%、ビニル基の含有比率は5.5個数%、メチル基の含有比率は41.3個数%、アルコキシ基の含有比率は0.2個数%であった。
【0197】
(合成例3)第1のオルガノポリシロキサンの合成
第一反応液を得る際に、撹拌液を、ジメチルジメトキシシラン102g、ジフェニルジメトキシシラン356g、及びビニルトリメトキシシラン53gを50℃で攪拌した撹拌液に変更したこと以外は、合成例1と同様にしてポリマー(C)を得た。
【0198】
得られたポリマー(C)の25℃での粘度は3800mPa・sであった。H−NMRによる測定の結果、ポリマー(C)のフェニル基の含有比率は52.4個数%、ビニル基の含有比率は8.2個数%、メチル基の含有比率は39.2個数%、アルコキシ基の含有比率は0.2個数%であった。
【0199】
(合成例4)第1のオルガノポリシロキサンの合成
第一反応液を得る際に、撹拌液を、ジメチルジメトキシシラン120g、ジフェニルジメトキシシラン321g、及びビニルトリメトキシシラン51.4gを50℃で攪拌した撹拌液に変更したこと以外は、合成例1と同様にしてポリマー(D)を得た。
【0200】
得られたポリマー(D)の25℃での粘度は3700mPa・sであった。H−NMRによる測定の結果、ポリマー(D)のフェニル基の含有比率は51.9個数%、ビニル基の含有比率は5.5個数%、メチル基の含有比率は42.4個数%、アルコキシ基の含有比率は0.2個数%であった。
【0201】
(合成例5)第1のオルガノポリシロキサンの合成
第一反応液を得る際に、撹拌液を、ジメチルジメトキシシラン115g、ジフェニルジメトキシシラン326g、及びビニルトリメトキシシラン55gを50℃で攪拌した撹拌液に変更したこと以外は、合成例1と同様にしてポリマー(E)を得た。
【0202】
得られたポリマー(E)の25℃での粘度は3800mPa・sであった。H−NMRよりポリマー(E)のフェニル基の含有比率は53個数%、ビニル基の含有比率は5.2個数%、メチル基の含有比率は41.6個数%、アルコキシ基の含有比率は0.2個数%であった。
【0203】
(合成例6)第1のオルガノポリシロキサンの合成
第一反応液を得る際に、撹拌液を、ジメチルジメトキシシラン108g、ジフェニルジメトキシシラン347g、及びビニルトリメトキシシラン50.5gを50℃で攪拌した撹拌液に変更したこと以外は、合成例1と同様にしてポリマー(F)を得た。
【0204】
得られたポリマー(F)の25℃での粘度は3200mPa・sであった。H−NMRによる測定の結果、ポリマー(F)のフェニル基の含有比率は51.1個数%、ビニル基の含有比率は9個数%、メチル基の含有比率は39.7個数%、アルコキシ基の含有比率は0.2個数%であった。
【0205】
(合成例7)第2のオルガノポリシロキサンの合成
温度計、滴下装置及び攪拌機を備えた1000mLのセパラブルフラスコ中で、トリメチルメトキシシラン51.6g、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン53.4g、ビニルメチルジメトキシシラン59.5g、トリメトキシビニルシラン11.1g、ジフェニルジメトキシシラン38.7g、及びフェニルトリメトキシシラン282.3gを、50℃で攪拌して撹拌液を得た。その中に、p−トルエンスルホン酸2.82gと水119gの溶液をゆっくりと滴下し、滴下後に50℃で6時間攪拌し、反応させて、反応液を得た。次に、減圧して揮発成分を除去してポリマーを得た。得られたポリマーにヘキサン150gと酢酸エチル150gとを添加し、イオン交換水300gで10回洗浄を行い、減圧して揮発成分を除去してポリマー(G)を得た。
【0206】
得られたポリマー(G)の25℃での粘度は1200mPa・sであった。H−NMRによる測定の結果、ポリマー(G)のフェニル基の含有比率は31個数%、ビニル基の含有比率は8.3個数%、メチル基の含有比率は51.3個数%、アルコキシ基の含有比率は0.1個数%であった。
【0207】
(合成例8)第2のオルガノポリシロキサンの合成
撹拌液を、トリメチルメトキシシラン58.3g、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン45g、ビニルメチルジメトキシシラン59.5g、トリメトキシビニルシラン10g、ジフェニルジメトキシシラン40g、及びフェニルトリメトキシシラン282.3gを50℃で撹拌した撹拌液に変更したこと以外は、合成例7と同様にしてポリマー(H)を得た。
【0208】
得られたポリマー(H)の25℃での粘度は1200mPa・sであった。H−NMRによる測定の結果、ポリマー(H)のフェニル基の含有比率は32個数%、ビニル基の含有比率は7個数%、メチル基の含有比率は52.9個数%、アルコキシ基の含有比率は0.1個数%であった。
【0209】
(合成例9)第2のオルガノポリシロキサンの合成
撹拌液を、トリメチルメトキシシラン50.5g、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン55g、ビニルメチルジメトキシシラン59.5g、トリメトキシビニルシラン12g、ジフェニルジメトキシシラン37g、及びフェニルトリメトキシシラン282.3gを50℃で撹拌した撹拌液に変更したこと以外は、合成例7と同様にしてポリマー(I)を得た。
【0210】
得られたポリマー(I)の25℃での粘度は1050mPa・sであった。H−NMRによる測定の結果、ポリマー(I)のフェニル基の含有比率は30個数%、ビニル基の含有比率は9.1個数%、メチル基の含有比率は50.8個数%、アルコキシ基の含有比率は0.1個数%であった。
【0211】
(合成例10)第2のオルガノポリシロキサンの合成
撹拌液を、トリメチルメトキシシラン51.5g、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン55.4g、ビニルメチルジメトキシシラン59.5g、トリメトキシビニルシラン9g、ジフェニルジメトキシシラン38.7g、及びフェニルトリメトキシシラン282.3gを50℃で撹拌した撹拌液に変更したこと以外は、合成例7と同様にしてポリマー(J)を得た。
【0212】
得られたポリマー(J)の25℃での粘度は1200mPa・sであった。H−NMRによる測定の結果、ポリマー(J)のフェニル基の含有比率は31個数%、ビニル基の含有比率は6.5個数%、メチル基の含有比率は52.2個数%、アルコキシ基の含有比率は0.1個数%であった。
【0213】
(合成例11)第2のオルガノポリシロキサンの合成
撹拌液を、トリメチルメトキシシラン61.7g、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン42g、ビニルメチルジメトキシシラン59.5g、トリメトキシビニルシラン8.5g、ジフェニルジメトキシシラン40g、及びフェニルトリメトキシシラン282.3gを50℃で撹拌した撹拌液に変更したこと以外は、合成例7と同様にしてポリマー(K)を得た。
【0214】
得られたポリマー(K)の25℃での粘度は1300mPa・sであった。H−NMRによる測定の結果、ポリマー(K)のフェニル基の含有比率は32個数%、ビニル基の含有比率は6.1個数%、メチル基の含有比率は54.8個数%、アルコキシ基の含有比率は0.1個数%であった。
【0215】
(合成例12)第2のオルガノポリシロキサンの合成
撹拌液を、トリメチルメトキシシラン47.8g、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン58g、ビニルメチルジメトキシシラン59.5g、トリメトキシビニルシラン12.5g、ジフェニルジメトキシシラン37g、及びフェニルトリメトキシシラン282.3gを50℃で撹拌した撹拌液に変更したこと以外は、合成例7と同様にしてポリマー(L)を得た。
【0216】
得られたポリマー(L)の粘度は1050mPa・sであった。H−NMRによる測定の結果、ポリマー(L)のフェニル基の含有比率は30個数%、ビニル基の含有比率は9.3個数%、メチル基の含有比率は49.6個数%、アルコキシ基の含有比率は0.1個数%であった。
【0217】
(白金アルケニル錯体Aの合成)
環流管を備えた反応フラスコに、塩化白金酸6水和物(HPtCl・6HO、300mg)、及び2−プロパノール(4.6ml)を入れて、窒素雰囲気下にて室温で20分間攪拌した。20分後、炭酸水素ナトリウム(NaHCO、400mg)を加えて、ガスの発生がなくなるまで攪拌し、次に1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(20当量、2.16g)を加え、反応溶液を60℃で24時間攪拌した。反応溶液を室温に戻し、無水硫酸マグネシウム(300mg)を加えて5分間攪拌した。その後、ジエチルエーテルを溶媒に用いてセライトろ過を行い、溶液量が5gになるまで濃縮し、白金アルケニル錯体Aの溶液を得た。
【0218】
(実施例1)
ポリマーA(10g)、ポリマーG(20g)及び白金アルケニル錯体Aの溶液(封止剤中での白金元素の含有量が10ppmとなる量)を混合し、脱泡を行い、光半導体装置用封止剤を得た。
【0219】
(実施例2)
ポリマーB(10g)、ポリマーH(20g)及び白金アルケニル錯体Aの溶液(封止剤中での白金元素の含有量が10ppmとなる量)を混合し、脱泡を行い、光半導体装置用封止剤を得た。
【0220】
(実施例3)
ポリマーC(10g)、ポリマーI(20g)及び白金アルケニル錯体Aの溶液(封止剤中での白金元素の含有量が10ppmとなる量)を混合し、脱泡を行い、光半導体装置用封止剤を得た。
【0221】
(実施例4)
ポリマーD(10g)、ポリマーJ(20g)及び白金アルケニル錯体Aの溶液(封止剤中での白金元素の含有量が10ppmとなる量)を混合し、脱泡を行い、光半導体装置用封止剤を得た。
【0222】
(比較例1)
ポリマーE(10g)、ポリマーK(20g)及び白金アルケニル錯体Aの溶液(封止剤中での白金元素の含有量が10ppmとなる量)を混合し、脱泡を行い、光半導体装置用封止剤を得た。
【0223】
(比較例2)
ポリマーF(10g)、ポリマーL(20g)及び白金アルケニル錯体Aの溶液(封止剤中での白金元素の含有量が10ppmとなる量)を混合し、脱泡を行い、光半導体装置用封止剤を得た。
【0224】
(評価)
(珪素原子に結合した官能基の比の測定)
封止剤中のオルガノポリシロキサン成分について、テトラメチルシラン(以下、TMS)を基準にH−NMRを行うと、珪素原子に結合したアルケニル基に相当するピークは7.0〜7.8ppm付近に現れ、珪素原子に結合した水素原子に相当するピークは4.5〜4.9ppm付近に現れ、珪素原子に結合したアリール基に相当するピークは5.6〜6.0ppm付近に現れ、珪素原子に結合した飽和鎖式炭化水素基に相当するピークは−0.4〜+0.4ppm付近に現れ、珪素原子に結合したアルコキシ基に相当するピークは3.3〜3.8ppm付近に現れる。従って、H−NMRを測定し、それぞれのシグナルのピーク面積から珪素原子に結合した官能基の比を測定した。
【0225】
H−NMRによる測定の結果、オルガノポリシロキサン成分の上記式(Xa)より求められる珪素原子に結合したアルケニル基の含有比率と、上記式(Xb)より求められる珪素原子に結合した水素原子の含有比率と、上記式(Xc)より求められる珪素原子に結合したアリール基の含有比率と、上記式(Xd)より求められる珪素原子に結合した飽和鎖式炭化水素基の含有比率と、上記式(Xe)より求められる珪素原子に結合したアルコキシ基の含有比率を測定した。
【0226】
(保存安定性)
得られた各光半導体装置用封止剤を混合し、脱泡した直後の初期粘度と、得られた光半導体装置用封止剤を混合し、脱泡してから40℃で24時間放置した後の経時後粘度とを測定した。E型粘度計(TV−22型、東機産業社製)を用いて、25℃における10rpmでの粘度(mPa・s)を測定し、粘度変化を保存安定性として評価した。下記式の粘度比が1.2以下の場合を「良好」、粘度比が1.2を超える場合を「悪化」と判定した。
【0227】
粘度比=(η1/η0)
η0:初期粘度(mPa・s)
η1:経時後粘度(mPa・s)
【0228】
(蛍光体入り封止剤の作製及び該蛍光体入り封止剤のゲル分率の測定)
得られた各光半導体装置用封止剤10重量部に、蛍光体粉末(体積平均粒径17μm、比重4.7、「EY4453」、インテマティックス社製)0.8重量部と、白金アルケニル錯体Aの溶液(封止剤中での白金元素の含有量が10ppmとなる量)とを入れて、攪拌し、脱泡し、光半導体装置用封止剤(以下、蛍光体入り封止剤と称することがある)を得た。蛍光体入り封止剤を150℃で2時間加熱して硬化させ、縦50mm×横10mm×厚み1mmの硬化物を得た。この硬化物の重量(W1)を測定した。次に、上記硬化物をトルエン中に23℃にて24時間浸漬した。その後、硬化物をトルエンから取り出して、110℃の条件下で1時間乾燥させた。そして、乾燥後の硬化物の重量(W2)を測定し、下記式(Y1)によりゲル分率を算出した。
【0229】
ゲル分率(重量%)=(W2−W3)/(W1−W3)×100・・・式(Y1)
W1:浸漬前の硬化物の重量(g)
W2:浸漬及び乾燥後の硬化物の重量(g)
W3:蛍光体の重量(g)
【0230】
(光半導体装置の作製)
光半導体用リードフレーム(エノモト社製「OP−1NEW」)に、ダイボンド材と主発光ピークが460nmの発光素子とを、ダイボンダー(キャノンマシナリー社製「BESTEM−D01R」)を用いて実装し、ダイボンド材を160℃で2時間加熱して硬化させた。その後、線径25μmの金ワイヤー(住友金属鉱山社製「CB−3」)をワイヤーボンダー(新川社製「UTC−2000」)を用いてワイヤーボンディングを行った。その後、得られた蛍光体入り光半導体装置用封止剤を注入し、150℃で2時間加熱して硬化させることにより光半導体装置を作製した。得られた光半導体装置を用いて、下記の熱衝撃試験を実施した。
【0231】
(ワイヤーの切断の有無)
得られた光半導体装置を、液槽式熱衝撃試験機(「TSB−51」、ESPEC社製)を用いて、−50℃で5分間保持した後、150℃まで昇温し、150℃で5分間保持した後−50℃まで降温する過程を1サイクルとする冷熱サイクル試験を実施した。500サイクル後にそれぞれ20個のサンプルを取り出した。
【0232】
実体顕微鏡(「SMZ−10」、ニコン社製)にてサンプルを観察した。20個のサンプルにおいてそれぞれワイヤーの切断が生じているか否かを評価した。
【0233】
(表面のべたつき)
得られた光半導体装置を、23℃及び50RH%の雰囲気下で24時間放置した。24時間放置した後直ちに、封止剤の硬化物の表面の粘着性(べたつき)を、硬化物に指を接触させて確認した。指を接触させた場合に粘着性(べたつき)をほとんど感じない場合には、べたつきを「なし」と判定し、指の表面が粘着性(べたつき)を感じた場合には、べたつきを「あり」と判定した。
【0234】
(蛍光体を含まない封止剤のゲル分率の測定)
実施例及び比較例で得られた各光半導体装置用封止剤を150℃で2時間加熱して硬化させ、縦50mm×横10mm×厚み1mmの硬化物を得た。この硬化物の重量(W1)を測定した。次に、上記硬化物をトルエン中に23℃にて24時間浸漬した。その後、硬化物をトルエンから取り出して、110℃の条件下で1時間乾燥させた。そして、乾燥後の硬化物の重量(W2)を測定し、下記式(Y2)によりゲル分率を算出した。
【0235】
ゲル分率(重量%)=(W2)/(W1)×100・・・式(Y2)
W1:浸漬前の硬化物の重量(g)
W2:浸漬及び乾燥後の硬化物の重量(g)
【0236】
結果を下記の表1に示す。なお、下記の表1に、上記式(Xa)、上記式(Xb)、上記式(Xc)、上記式(Xd)又は上記式(Xe)より求められる珪素原子に結合したアルケニル基の含有比率、珪素原子に結合した水素原子の含有比率、珪素原子に結合したアリール基の含有比率、珪素原子に結合した飽和鎖式炭化水素基の含有比率及び珪素原子に結合したアルコキシ基の含有比率の値を示した。
【0237】
【表1】

【符号の説明】
【0238】
1…光半導体装置
2…ハウジング
2a…内面
3…光半導体素子
4…リード電極
5…ダイボンド材
6…ボンディングワイヤー
7…封止剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オルガノポリシロキサン成分と、ヒドロシリル化反応用触媒とを含み、
前記オルガノポリシロキサン成分が、珪素原子に結合したアリール基及び珪素原子に結合したアルケニル基を有する第1のオルガノポリシロキサン(但し、珪素原子に結合した水素原子を有するオルガノポリシロキサンを除く)と、珪素原子に結合したアリール基及び珪素原子に結合した水素原子を有する第2のオルガノポリシロキサンとを含有し、
前記オルガノポリシロキサン成分の下記式(Xa)より求められる珪素原子に結合したアルケニル基の含有比率が6.0個数%以上、9.0個数%以下であり、
前記オルガノポリシロキサン成分の下記式(Xb)より求められる珪素原子に結合した水素原子の含有比率が5.0個数%以上、7.0個数%以下であり、
硬化後の硬化物のゲル分率が85重量%以上、95重量%以下である、光半導体装置用封止剤。
珪素原子に結合したアルケニル基の含有比率(個数%)=(上記オルガノポリシロキサン成分に含まれる珪素原子に結合したアルケニル基の比/上記オルガノポリシロキサン成分に含まれる珪素原子に結合した官能基の比)×100 ・・・式(Xa)
珪素原子に結合した水素原子の含有比率(個数%)=(上記オルガノポリシロキサン成分に含まれる珪素原子に結合した水素原子の個数/上記オルガノポリシロキサン成分に含まれる珪素原子に結合した官能基の個数)×100 ・・・式(Xb)
【請求項2】
前記第2のオルガノポリシロキサンが、下記式(51−a)で表される構造単位を有する、請求項1に記載の光半導体装置用封止剤。
【化1】

前記式(51−a)中、R52及びR53はそれぞれ、珪素原子に結合した水素原子、珪素原子に結合したアリール基又は炭素数1〜8の炭化水素基を表す。
【請求項3】
前記オルガノポリシロキサン成分の下記式(Xc)より求められる珪素原子に結合したアリール基の割合が、35個数%以上、45個数%以下である、請求項1又は2に記載の光半導体装置用封止剤。
珪素原子に結合したアリール基の含有比率(個数%)=(上記オルガノポリシロキサン成分に含まれる珪素原子に結合したアリール基の個数/上記オルガノポリシロキサン成分に含まれる珪素原子に結合した官能基の個数)×100 ・・・式(Xc)
【請求項4】
前記第2のオルガノポリシロキサンが、珪素原子に結合したアルケニル基を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光半導体装置用封止剤。
【請求項5】
蛍光体をさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光半導体装置用封止剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の光半導体装置用封止剤を硬化させることにより得られ、
ゲル分率が85重量%以上、95重量%以下である、光半導体装置用封止剤の硬化物。
【請求項7】
光半導体素子と、該光半導体素子を封止するように設けられた光半導体装置用封止剤の硬化物とを備え、
前記光半導体装置用封止剤の硬化物が、請求項1〜5のいずれか1項に記載の光半導体装置用封止剤を硬化させることにより形成されている、光半導体装置。

【図1】
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【公開番号】特開2013−6997(P2013−6997A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141881(P2011−141881)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】