説明

光半導体装置用封止剤及び光半導体装置

【課題】製造段階及び実使用時のクラックが生じ難く、黄変などが生じ難く、さらに中空粒子のクラックも生じ難く、光をより効果的に拡散することを可能とする光半導体装置用封止剤を得る。
【解決手段】分子内に環状エーテル含有基を有するシリコーン樹脂と、前記環状エーテル含有基と反応可能な熱硬化剤と、中空粒子とを含有する、光半導体装置用封止剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば発光ダイオード(LED)素子などを封止するのに用いられる光半導体装置用封止剤及び光半導体装置に関し、より詳細には、発光素子からの光を拡散させる機能を有する光半導体装置用封止剤及び該光半導体装置用封止剤を用いた光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LED素子等の発光素子などの光半導体素子は、小型であり、消費電力が小さいため、様々な光源として注目を集めており、特に近年では照明器具への応用が進んでいる。
【0003】
もっとも、光半導体素子では、発光面積が小さく、かつ放射された光が直進性を有するため、広い範囲にわたり光を照射する必要がある照明器具には必ずしも適していない。
【0004】
そこで、例えば、下記の特許文献1のように、LED素子からの光を拡散することができる光拡散型発光ダイオードが提案されている。
【0005】
特許文献1に記載の光拡散型発光ダイオードでは、基板上にLED素子が実装されている。また、基板上にLED素子を取り囲む反射材が搭載されている。この反射材は、基板から遠ざかるにつれてその開口径が大きくなるように形成されている。上記反射材内の開口においてLED素子を封止するように、シール材が充填されている。シール材が、光を拡散させる多数のマイクロスフェアを有している。そのため、LED素子から発せられた光がマイクロスフェアにより拡散され、さらに反射材により反射されるので、広い範囲を照明することが可能とされている。
【0006】
特許文献1では、上記シール材は、硬化されていない液相のエポキシまたはシリコーンの中から選択される少なくとも一種以上の物質であり、積層状態での混合におけるマイクロスラー粒子のサイズが0.05μm以上であることが好ましいと記載されている。しかしながら、特許文献1では、具体的には、マイクロスフェアの形成を、エポキシ樹脂とシリコーン樹脂とを特定の割合で混合することにより形成する旨が記載されている。すなわち、液相のエポキシ樹脂と、液相のシリコーン樹脂とを混合し、マイクロスフェアを混合に際し形成し、この混合物をLED素子の周囲に充填し、硬化させることによりシール材が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2009−512226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載のシール材では、マイクロスフェアが、液相のエポキシ樹脂と液相のシリコーン樹脂との混合により形成されているため、硬化されたシール材は比較的硬かった。そのため、硬化時にクラックが生じたり、周囲の急激な温度変化によりクラックが生じるおそれがあった。また、長期間使用している内に紫外線等により黄変するおそれがあった。すなわち耐候性が充分でなかった。
【0009】
さらに、上記複数の樹脂の混合によりマイクロスフェアとしての気泡を形成するものであるため、硬化時に気泡が潰れたりすることがあり、拡散効果は充分ではなかった。
【0010】
本発明の目的は、上述した従来技術の欠点を解消し、製造段階及び実使用時にクラックが生じ難く、黄変などが生じ難く耐候性に優れており、さらに光半導体素子から生じた光をより効果的に拡散することを可能とする光半導体装置用封止剤及び該光半導体装置用封止剤を用いた光半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明にかかる光半導体装置用封止剤は、分子内に環状エーテル含有基を有するシリコーン樹脂と、前記環状エーテル含有基と反応可能な熱硬化剤と、中空粒子とを含有する。
【0012】
本発明にかかる光半導体装置用封止剤では、好ましくは、中空粒子の空隙率が5体積%〜50体積%の範囲にある。空隙率がこの範囲内にあることにより、拡散効果をより一層高めることができる。
【0013】
また、上記中空粒子は、単一の中空部を有する単孔粒子であってもよく、複数の中空部を有する多孔粒子であってもよい。好ましくは、中空粒子は多孔粒子である。
【0014】
本発明に化学半導体装置用封止剤では、好ましくは、前記分子内に環状エーテル含有基を有するシリコーン樹脂が、平均組成式が下記の一般式(1)で表される樹脂を含有し、かつ下記の式(a)により求められるフェニル基含有比率が15モル%〜60モル%の範囲にある。
【0015】
【化1】

【0016】
一般式(1)中、a、b及びcは、それぞれa/(a+b+c)=0〜0.3、b/(a+b+c)=0.5〜0.9、及びc/(a+b+c)=0.1〜0.5を満たし、R〜Rは、少なくとも1個が環状エーテル含有基又はフェニル基を表し、前記環状エーテル含有基又はフェニル基以外のR〜Rは、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜8の炭化水素基或いはそのフッ化物を表し、これらは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0017】
フェニル基含有比率(モル%)=(平均組成が一般式(1)で表される樹脂の1分子あたりに含まれるフェニル基の平均個数×フェニル基の分子量/平均組成が一般式(1)で表される樹脂成分の平均分子量)×100 ・・・式(a)
【0018】
上記シリコーン樹脂が上記特定の構造を有する場合、光を拡散する効果をより一層高めることができる。
【0019】
本発明にかかる光半導体装置は、光半導体発光素子と、該光半導体発光素子を封止するように設けられた本発明の光半導体装置用封止剤とを備える。本発明にかかる光半導体装置では、好ましくは、光半導体発光素子として、LED発光素子が用いられる。
【発明の効果】
【0020】
本発明にかかる光半導体装置用封止剤では、分子内に環状エーテル含有基を有するシリコーン樹脂と、該環状エーテル含有基と反応可能な熱硬化剤と、中空粒子とを含有しており、該シリコーン樹脂の熱硬化による硬化物はエポキシ樹脂硬化物に比べて柔らかいため、製造段階及び実使用時に急激な温度変化に晒されたとしてもクラックが生じ難い。従って、歩留りを高めることができるとともに、使用時の信頼性を高めることができる。加えて、エポキシ樹脂のような黄変が生じ難いため、輝度の低下等も生じ難い。
【0021】
さらに、上記分子内に環状エーテル含有基を有するシリコーン樹脂及び中空粒子を含有するため、光半導体発光素子から生じた光を効果的に拡散することができる。従って、光半導体照明装置などに好適な光半導体装置用封止剤及び該光半導体装置用封止剤を用いた光半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(a)は本発明の一実施形態にかかる光半導体装置を示す正面断面図であり、(b)は光半導体装置用封止剤に含有される中空粒子の断面図である。
【図2】本発明の光半導体装置用封止剤に用いられる中空粒子の他の類を示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0024】
本発明にかかる光半導体装置用封止剤は、分子内に環状エーテル含有基を有するシリコーン樹脂と、前記環状エーテル含有基と反応可能な熱硬化剤と、中空粒子とを含有する。
【0025】
(分子内に環状エーテル含有基を有するシリコーン樹脂)
本発明で用いられる上記分子内に環状エーテル含有基を有するシリコーン樹脂としては、環状エーテル含有基を有する限り特に限定されない。上記環状エーテル含有基としては、例えば、グリシジル含有基、エポキシシクロヘキシル含有基、オキセタン含有基などが挙げられる。
【0026】
好ましくは、下記の一般式(1)で表される樹脂を含有し、かつ下記式(a)より求められるフェニル基含有比率が15モル%〜60モル%であるシリコーン樹脂が用いられる。
【0027】
上記平均組成式が上記一般式(1)で表される樹脂とは、本発明の光半導体装置用封止剤が上記式(1)で表される樹脂成分のみを含有する樹脂だけでなく、種々の構造の樹脂成分を含有する混合物であり、含有する樹脂成分の組成の平均をとると上記式(1)で表される樹脂も含まれる。
【0028】
上記一般式(1)のシリコーン樹脂中に含まれる、R〜Rの少なくとも1個は、フェニル基であり、かつ、フェニル基の比率が15〜60モル%である。フェニル基の比率が15モル%に満たないと、ガスバリア性が不充分なものとなり、60モル%を超えると剥離が発生しやすくなる。
【0029】
より好ましい下限は20モル%であり、より好ましい上限は55モル%である。
【0030】
なお、本明細書において、上記フェニル基の比率とは、上記シリコーン樹脂成分の平均組成物中に含まれる上記フェニル基の比率である。具体的には、下記式(a)を用いて求められた比率である。
【0031】
フェニル基含有比率(モル%)=(平均組成が一般式(1)で表される樹脂の1分子あたりに含まれるフェニル基の平均個数×フェニル基の分子量/平均組成が一般式(1)で表される樹脂成分の平均分子量)×100 ・・・式(a)
【0032】
上記一般式(1)中、R〜Rの少なくとも1個は、環状エーテル含有基を表す。
【0033】
上記環状エーテル含有基としては特に限定されず、例えば、グリシジル含有基、エポキシシクロヘキシル含有基、またはオキセタン含有基等の環状エーテル基が挙げられる。なかでも、グリシジル含有基及び/又はエポキシシクロヘキシル含有基が好適である。
【0034】
なお、本明細書において環状エーテル含有基とは、少なくとも骨格の一部に環状エーテル基を含む官能基である。上記環状エーテル含有基は、例えば、環状エーテル基を骨格に含み、アルキル基やアルキルエーテル基等の他の骨格も含む官能基であってもよい。
【0035】
上記グリシジル含有基としては特に限定されず、例えば、2,3−エポキシプロピル基、3,4−エポキシブチル基、4,5−エポキシペンチル基、2−グリシドキシエチル基、3−グリシドキシプロピル基または4−グリシドキシブチル基等が挙げられる。
【0036】
上記エポキシシクロヘキシル含有基としては特に限定されず、例えば、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、または3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基等が挙げられる。
【0037】
上記シリコーン樹脂においては、上記環状エーテル含有基の含有比率の好ましい下限は0.1モル%、好ましい上限は50モル%である。上記環状エーテル含有基の含有比率が0.1モル%未満であると、上記シリコーン樹脂と後述する熱硬化剤との反応性が著しく低下し、本発明の光半導体装置用封止剤の硬化性が不充分となることがある。上記環状エーテル含有基の含有比率が50モル%を超えると、上記シリコーン樹脂と熱硬化剤との反応に関与しない環状エーテル含有基が増え、本発明の光半導体装置用封止剤の耐熱性が低下することがある。上記環状エーテル含有基の含有比率のより好ましい下限は1モル%、より好ましい上限は40モル%であり、更に好ましい下限は5モル%、更に好ましい上限は30モル%である。
【0038】
なお、本明細書において、上記環状エーテル含有基の比率とは、上記シリコーン樹脂成分の平均組成物中に含まれる上記環状エーテル含有基の比率である。具体的には、下記式(b)に基づいて求めた比率である。
【0039】
環状エーテル含有基の比率(モル%)=(平均組成が一般式(1)で表される樹脂の1分子あたりに含まれる環状エーテル含有基の平均個数×環状エーテル含有基の分子量/平均組成が一般式(1)で表される樹脂成分の平均分子量)×100 ・・・式(b)
【0040】
上記一般式(1)で表されるシリコーン樹脂において、上記環状エーテル含有基以外のR〜Rは、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜8の炭化水素基或いはそのフッ素化物を表す。
【0041】
上記直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜8の炭化水素としては特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、イソへキシル基、シクロヘキシル基、またはフェニル基が挙げられる。
【0042】
上記一般式(1)で表されるシリコーン樹脂において、(RSiO2/2)で表される構造単位(以下、二官能構造単位ともいう)は、下記一般式(1−2)で表される構造、すなわち、二官能構造単位中のケイ素原子に結合した酸素原子の1つがヒドロキシル基又はアルコキシ基を構成する構造を含む。
【0043】
【化2】

【0044】
上記一般式(1−2)中、Xは、OH又はORを表し、ORは、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。
【0045】
また、上記一般式(1)で表されるシリコーン樹脂において、(RSiO3/2)で表される構造単位(以下、三官能構造単位ともいう)は、下記一般式(1−3)又は(1−4)で表される構造、すなわち、三官能構造単位中のケイ素原子に結合した酸素原子の2つがそれぞれヒドロキシル基若しくはアルコキシ基を構成する構造、又は、三官能構造単位中のケイ素原子に結合した酸素原子の1つがヒドロキシル基若しくはアルコキシ基を構成する構造を含む。
【0046】
【化3】

【0047】
上記一般式(1−3)及び(1−4)中、Xは、OH又はORを表し、ORは、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。
【0048】
上記一般式(1−2)〜(1−4)において、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基としては特に限定されず、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基またはt−ブトキシ基が挙げられる。
【0049】
また、上記一般式(1)中、aは、a/(a+b+c)の下限が0、上限が0.3の関係を満たす数値である。a/(a+b+c)が0.3を超えると、本発明の光半導体装置用封止剤の耐熱性が悪くなったり、剥離が発生しやすくなることがある。より好ましい上限は0.25であり、さらに好ましくは0.2である。
【0050】
また、上記一般式(1)中、bは、b/(a+b+c)の下限が0.5、上限が0.9の関係を満たす数値である。b/(a+b+c)が0.5未満であると、本発明の光半導体装置用封止剤の硬化物が硬くなりすぎ、クラックが発生することがあり、0.9を超えると、ガスバリア性が悪くなることがある。より好ましい下限は0.6であり、より好ましい上限は0.85である。
【0051】
また、上記一般式(1)中、cは、c/(a+b+c)の下限が0.1、上限が0.5の関係を満たす数値である。c/(a+b+c)が0.1未満であると、耐熱性が悪くなったり高温環境下で封止剤の硬化物の厚みが減少することがあり、0.5を超えると、本発明の光半導体装置用封止剤としての適正な粘度を維持するのが困難になったり、密着性が低下する場合がある。より好ましい下限は0.15であり、より好ましい上限は0.4である。
【0052】
上記一般式(1)で表されるシリコーン樹脂について、テトラメチルシラン(以下、TMS)を基準に29Si−核磁気共鳴分析(以下、NMR)を行うと、置換基の種類によって若干の変動は見られるものの、上記一般式(1)の(RSiO1/2)aで表される構造単位に相当するピークは+10〜0ppm付近に現れ、上記一般式(1)の(RSiO2/2)b及び(1−2)の二官能構造単位に相当する各ピークは−10〜−50ppm付近に現れ、上記一般式(1)の(RSiO3/2)c、(1−3)及び(1−4)の三官能構造単位に相当する各ピークは−50〜−80ppm付近に現れる。
【0053】
従って、29Si−NMRを測定し、それぞれのシグナルのピーク面積を比較することによって一般式(1)の比率を測定することが可能である。
【0054】
但し、上記TMSを基準にした29Si−NMR測定で上記一般式(1)の官能構造単位の見分けがつかない場合は、29Si−NMR測定結果だけではなく、H−NMRや19F−NMRで測定した結果を必要に応じて用いることにより構造単位の比率を見分けることができる。
【0055】
上記シリコーン樹脂は、アルコキシ基を0.5〜10モル%含有することが好ましい。このようなアルコキシ基が含有されていると、耐熱性や耐光性が飛躍的に向上する。これはシリコーン樹脂中にアルコキシ基が含有されていることにより、硬化速度を飛躍的に向上させることができるため、硬化時での熱劣化が防止できているためと考えられる。
【0056】
また、このように硬化速度が飛躍的に高められることにより、硬化促進剤を添加する場合には比較的少ない添加量でも充分な硬化性が得られるようになる。
【0057】
アルコキシ基の含有量が0.5モル%未満であると、硬化速度が充分に得られず耐熱性が悪くなることがあり、10モル%を超えると、シリコーン樹脂や組成物の貯蔵安定性が悪くなったり、耐熱性が悪くなることがある。アルコキシ基の含有量のより好ましい下限は1モル%であり、より好ましい上限は5モル%である。
【0058】
なお、本明細書において、上記アルコキシ基の含有量は、上記シリコーン樹脂成分の平均組成物中に含まれる上記アルコキシ基の量を意味する。
【0059】
上記シリコーン樹脂はシラノール基を含有しないほうが好ましい。シラノール基はポリマーの貯蔵安定性を著しく悪化させるほか、樹脂組成物としたときの貯蔵安定性も著しく悪くなるために好ましくない。このようなシラノール基は、真空化で加熱することで減少させることが可能であり、シラノール基の量は赤外分光法を用いて測定可能である。
【0060】
本発明の光半導体装置用封止剤において、上記シリコーン樹脂の数平均分子量(Mn)の好ましい下限は1000、好ましい上限は5万である。上記シリコーン樹脂の数平均分子量(Mn)が1000未満であると、熱硬化時に揮発成分が多くなり、硬化後による膜減りが多くなり好ましくない。上記シリコーン樹脂の数平均分子量(Mn)が5万を超えると、粘度調節が困難になるため好ましくない。上記シリコーン樹脂の数平均分子量(M
n)のより好ましい下限は1500、より好ましい上限は15000である。
【0061】
なお、本明細書において、数平均分子量(Mn)とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いてポリスチレンをスタンダードとして求めた値であり、Waters社製の測定装置(カラムとして昭和電工社製 Shodex GPC LF−804(長さ300mm)を2本用い、測定温度が40℃、流速が1mL/min、溶媒としてテトラヒドロフラン、標準物質としてポリスチレンを用いる)を用いて測定した値を意味する。
【0062】
上記シリコーン樹脂を合成する方法としては特に限定されず、例えば、(1)SiH基を有するシリコーン樹脂と、環状エーテル含有基を有するビニル化合物のハイドロシリレーション反応により置換基を導入する方法、または(2)シロキサン化合物と環状エーテル含有基を有するシロキサン化合物とを縮合反応させる方法等が挙げられる。
【0063】
上記方法(1)において、ハイドロシリレーション反応とは、必要に応じて触媒の存在下、SiH基とビニル基とを反応させる方法である。
【0064】
上記SiH基を有するシリコーン樹脂としては、分子内にSiH基を含有し、上記環状エーテル含有基を有するビニル化合物を反応させた後、上述した一般式(1)で表される構造となるようなものを使用すればよい。
【0065】
上記環状エーテル含有基を有するビニル化合物としては、分子内に1個以上の環状エーテル含有基を有するビニル化合物であれば特に限定されず、例えば、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレートまたはビニルシクロヘキセンオキシドなどのエポキシ基含有化合物が挙げられる。
【0066】
上記方法(2)において、シロキサン化合物としては、例えば、下記一般式(2)、(3)、(4)のシロキサン単位を持つアルコキシシラン又はその部分加水分解物が挙げられる。
【0067】
【化4】

【0068】
上記一般式(2)〜(4)中、R22〜R27は、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜8の炭化水素或いはそのフッ素化物を表し、ORは、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。
【0069】
上記一般式(2)〜(4)中、R22〜R27が直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜8の炭化水素である場合、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、イソへキシル基、シクロヘキシル基またはフェニル基が挙げられる。
【0070】
また、上記一般式(2)〜(4)中、ORで表される直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基は、具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基またはt−ブトキシ基等が挙げられる。
【0071】
上記一般式(2)で表される化合物としては、具体的には例えば、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリフェニルメトキシシランまたはトリフェニルエトキシシランが挙げられる。
【0072】
上記一般式(3)で表される化合物としては、具体的には例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソプロピル(メチル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(メチル)ジメトキシシランまたはメチル(フェニル)ジメトキシシランが挙げられる。
【0073】
上記一般式(4)で表される化合物としては、具体的には例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシランまたはフェニルトリメトキシシランが挙げられる。
【0074】
上記環状エーテル含有基を有するシロキサン化合物としては、例えば、下記一般式(5)、(6)または(7)で表される環状エーテル含有基を有するアルコキシシラン又はその部分加水分解物が挙げられる。
【0075】
【化5】

【0076】
上記一般式(5)、(6)及び(7)中、R28、R29、R30の少なくとも一つ、R31及び/又はR32、R33は環状エーテル含有基であり、環状エーテル含有基以外のR28、R29、R30、R31、R32は、炭素数1〜8の炭化水素或いはそのフッ素化物を表し、ORは、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。
【0077】
一般式(5)、(6)及び(7)中、R28、R29、R30の少なくとも一つ、R31及び/又はR32、R33で表される環状エーテル含有基としては特に限定されず、例えば、グリシジル含有基、エポキシシクロヘキシル含有基、オキセタン含有基が挙げられる。なかでも、グリシジル含有基及び/又はエポキシシクロヘキシル含有基が好適である。
【0078】
上記グリシジル含有基としては特に限定されず、例えば、2,3−エポキシプロピル基、3,4−エポキシブチル基、4,5−エポキシペンチル基、2−グリシドキシエチル基、3−グリシドキシプロピル基または4−グリシドキシブチル基が挙げられる。
【0079】
上記エポキシシクロヘキシル含有基としては特に限定されず、例えば、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基または3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基が挙げられる。
【0080】
上記一般式(5)及び(6)中、環状エーテル含有基以外のR28、R29、R30、R31、R32は、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、イソへキシル基、シクロヘキシル基またはフェニル基が挙げられる。
【0081】
また、上記一般式(5)、(6)及び(7)中、ORで表される直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基は、具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基またはt−ブトキシ基が挙げられる。
【0082】
上記一般式(5)で表される化合物としては、具体的には例えば、3−グリシドキシプロピル(ジメチル)メチルメトキシシランまたは2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(ジメチル)メトキシシランが挙げられる。
【0083】
上記一般式(6)で表される化合物としては、具体的には例えば、3−グリシドキシプロピル(メチル)ジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピル(メチル)ジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピル(メチル)ジブトキシシラン、2,3−エポキシプロピル(メチル)ジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(メチル)ジメトキシシランまたは2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(メチル)ジエトキシシランが挙げられる。
【0084】
上記一般式(7)で表される化合物としては、具体的には例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランまたは2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランが挙げられる。
【0085】
上記方法(2)において、上記シロキサン化合物と環状エーテル含有基を有するシロキサン化合物とを縮合反応させる具体的な方法としては、例えば、上記シロキサン化合物と環状エーテル含有基を有する化合物とを水、及び、酸又は塩基性触媒の存在下で反応させてシリコーン樹脂を合成する方法が挙げられる。
【0086】
上記水の配合量としては、上記シロキサン化合物と上記環状エーテル含有基を有するシロキサン化合物中のケイ素原子に結合したアルコキシ基を加水分解できる量であれば特に限定されず、適宜調整される。
【0087】
上記酸性触媒は、上記シロキサン化合物と環状エーテル含有基を有するシロキサン化合物とを反応させるための触媒であり、例えば、無機酸、有機酸、これらの酸無水物又は誘導体が挙げられる。
【0088】
上記無機酸としては、例えば、リン酸、ホウ酸または炭酸が挙げられる。
【0089】
上記有機酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸またはオレイン酸が挙げられる。
【0090】
上記塩基性触媒は、上記シロキサン化合物と環状エーテル含有基を有するシロキサン化合物とを反応させるための触媒であり、例えば、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属のアルコキシドまたはアルカリ金属のシラノール化合物が挙げられる。
【0091】
上記アルカリ金属の水酸化物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたは水酸化セシウムが挙げられる。
【0092】
上記アルカリ金属のアルコキシドとしては、例えば、ナトリウム−t−ブトキシド、カリウム−t−ブトキシドまたはセシウム−t−ブトキシドが挙げられる。
【0093】
上記アルカリ金属のシラノール化合物としては、例えば、ナトリウムシラノレート化合物、カリウムシラノレート化合物またはセシウムシラノレート化合物が挙げられる。
なかでも、カリウム系触媒及びセシウム系触媒が好適である。
【0094】
本発明の光半導体装置用封止剤において、上述した樹脂以外に、本発明の効果を妨げない範囲で他の硬化性化合物を含有してもよい。そのような化合物としては例えば、アミノ基、ウレタン基、イミド基、水酸基、カルボキシル基またはエポキシ基を有する化合物が挙げられる。中でも、エポキシ化合物が好ましい。エポキシ化合物としては特に限定はされず、従来公知の種々のエポキシ化合物を用いることができる。
【0095】
上記その他の硬化性化合物の配合量としては特に限定はされないが、好ましい上限は、上述したシリコーン樹脂の合計100重量部に対して10重量部である。より好ましい上限は5重量部、更に好ましい上限は3重量部、特に好ましい上限は1重量部である。
【0096】
〔熱硬化剤〕
本発明の光半導体装置用封止剤は、上記環状エーテル含有基と反応する熱硬化剤(以下、単に熱硬化剤ともいう)を含有する。
【0097】
上記熱硬化剤としては、上記シリコーン樹脂の環状エーテル含有基と反応可能なものであれば特に限定されず、例えば、エチレンジアミン、トリエチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミン、ダイマー酸変性エチレンジアミン、N−エチルアミノピペラジン、イソホロンジアミンなどの脂肪族アミン、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェノルスルホン、4,4’−ジアミノジフェノルメタン、4,4’−ジアミノジフェノルエーテルなどの芳香族アミン、メルカプトプロピオン酸エステル、エポキシ樹脂の末端メルカプト化合物などのメルカプタン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールAD、テトラメチルビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールA、テトラフルオロビスフェノールA、ビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4−(1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)フェニル)エチリデン)ビスフェノール、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック、臭素化フェノールノボラック、臭素化ビスフェノールAノボラックなどのフェノール樹脂、これらフェノール樹脂の芳香環を水素化したポリオール、ポリアゼライン酸無水物、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、シクロヘキサン−1,2,3−トリカルボン酸−1,2無水物、シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸−1,2無水物などの脂環式酸無水物、3−メチルグルタル酸無水物などの分岐していてもよい炭素数1〜8のアルキル基を有する3−アルキルグルタル酸無水物、2−エチル−3−プロピルグルタル酸無水物などの分岐していてもよい炭素数1〜8のアルキル基を有する2,3−ジアルキルグルタル酸無水物、2,4−ジエチルグルタル酸無水物、2,4−ジメチルグルタル酸無水物などの分岐していてもよい炭素数1〜8のアルキル基を有する2,4−ジアルキルグルタル酸無水物等のアルキル置換グルタル酸無水物、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などの芳香族酸無水物、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールなどのイミダゾール及びその塩類、脂肪族アミン、芳香族アミン、及び/又はイミダゾールとエポキシ樹脂との反応により得られるアミンアダクト、アジピン酸ジヒドラジドなどのヒドラジン、ジメチルベンジルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7などの第3級アミンまたはトリフェニルホスフィンなどの有機ホスフィン、ジシアンジアミドが挙げられる。これらの熱硬化剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0098】
上記熱硬化剤のなかでも、耐熱性を高めるため、脂環式酸無水物類、アルキル置換グルタル酸無水物類、芳香族酸無水物類等の酸無水物が好ましく、より好ましくは、脂環式酸無水物類、アルキル置換グルタル酸無水物類であり、特に好ましくは、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、シクロヘキサン−1,2,3−トリカルボン酸−1,2無水物、シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸−1,2無水物、または2,4−ジエチルグルタル酸無水物である。
【0099】
上記熱硬化剤の配合量としては特に限定されないが、上記シリコーン樹脂100重量部に対して、好ましい下限は1重量部、好ましい上限は200重量部である。この範囲であると、本発明の光半導体装置用封止剤は、充分に架橋反応が進行し、耐熱性及び耐光性に優れるとともに、透湿度が充分に低いものとなる。より好ましい下限は5重量部、より好ましい上限は120重量部である。
【0100】
〔硬化促進剤〕
本発明の光半導体装置用熱硬化性組成物は、更に、硬化促進剤を含有することが好ましい。
【0101】
上記硬化促進剤としては特に限定されず、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類;1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の第3級アミン類及びその塩類;トリフェニルホスフィン等のホスフィン類;トリフェニルホスホニウムブロマイド等のホスホニウム塩類;アミノトリアゾール類、オクチル酸錫、ジブチル錫ジラウレート等の錫系、オクチル酸亜鉛等の亜鉛系、アルミニウム、クロム、コバルト、ジルコニウム等のアセチルアセトナート等の金属触媒類等が挙げられる。これらの硬化促進剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0102】
上記硬化促進剤の配合量としては特に限定されないが、上記シリコーン樹脂100重量部に対して、好ましい下限は0.01重量部、好ましい上限は5重量部である。0.01重量部未満であると、上記硬化促進剤を添加する効果が得られず、5重量部を超えると、硬化物の着色や耐熱性、耐光性の低下が著しくなるため好ましくない。より好ましい下限は0.05重量部であり、より好ましい上限は1.5重量部である。
【0103】
〔中空粒子〕
本発明にかかる光半導体装置用封止剤では、拡散効果高めるために中空粒子が含有されている。中空粒子としては、単一の中空部を有するいわゆる単孔中空粒子、及び複数の中空部が設けられている、いわゆる多孔中空粒子を用いることができる。好ましくは、光の拡散効果に優れているため、多孔粒子が好適に用いられる。
【0104】
上記中空粒子では、中空部の気体の屈折率が中空粒子の周りに存在する樹脂部分の屈折率との差により拡散作用を発現する。従って、同じ大きさであれば、複数の中空部を有する多孔中空粒子を用いることにより、拡散効果をより一層高めることができる。
【0105】
上記中空粒子を構成する材料、すなわち中空部を取り囲む粒子材料については特に限定されず、様々な無機材料または有機材料を挙げることができる。上記無機材料としては、酸化ケイ素、酸化アルミ、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛などを挙げることができる。
【0106】
有機材料としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂などを挙げることができる。
【0107】
上記中空粒子における空隙率は、好ましくは、5体積%〜50体積%の範囲であり、より好ましくは10体積%〜45体積%である。空隙率とは、中空粒子における中空部の体積の中空粒子全体に対する割合をいうものとする。空隙率が5体積%未満の場合には、充分な光拡散効果が得られないことがあり、50体積%を超えると、光拡散効果はそれ以上さほど高くならず、他方中空粒子が割れて、充分な光拡散効果を発現しないことがある。
【0108】
なお、本明細書において空隙率とは、中空樹脂粒子全体積中に占める中空部体積を百分率(%)で表示したものであり、例えば、アムコ社製ポロシメーター2000を用いて封入水銀圧力2000kg/cmの条件にて測定することができる。
【0109】
また、上記中空粒子の平均粒子径は0、1〜50μmであることが好ましい。0.1μm未満では、充分な光拡散効果が得られないことがあり、50μmを超えると、封止剤のクラックが発生しやすくなることがある。
【0110】
本発明にかかる光半導体装置用封止剤において、上記中空粒子の配合割合は、好ましくは、光半導体装置用封止剤硬化物中0.1〜20体積%の範囲とすることが望ましい。中空粒子の配合割合が0.1よりも少ないと、光拡散効果が充分得られないことがあり、20よりも多くなるとクラックが発生しやすくなることがある。
【0111】
〔その他の成分〕
本発明の光半導体装置用封止剤は、必要に応じて、分散剤、酸化防止剤、カップリング剤、消泡剤、着色剤、変性剤、レベリング剤、熱伝導性フィラー、蛍光体、充填剤、難燃剤等の添加剤が配合されていてもよい。
【0112】
〔硬化温度〕
本発明の光半導体装置用封止剤の硬化温度は特に限定されないが、好ましい硬化温度としては80℃〜180℃である。硬化温度が80℃より低いと硬化が進行しないことがあり、180℃より高ければパッケージの熱劣化が起こることがあり好ましくない。より好ましくは100℃〜150℃である。
【0113】
硬化には特に限定されないが、ステップキュア方式を用いることが好ましい。ステップキュア方式は、一旦低温で仮硬化させておき、その後に高温で硬化させる方法であり、封止剤の硬化収縮を抑えることが可能であるため好ましい。
【0114】
本発明の光半導体装置用封止剤の製造方法としては特に限定されず、例えば、ホモディスパー、ホモミキサー、万能ミキサー、プラネタリウムミキサー、ニーダー、三本ロール、ビーズミル等の混合機を用いて、常温又は加温下で、上述したシリコーン樹脂、熱硬化剤、中空粒子、及び、必要に応じて上記硬化促進剤、酸化防止剤等の各所定量を混合する方法等が挙げられる。
【0115】
上記光半導体素子としては特に限定されず、例えば、上記光半導体素子が発光ダイオードである場合、例えば、基板上に半導体材料を積層して形成したものが挙げられる。この場合、半導体材料としては、例えば、GaAs、GaP、GaAlAs、GaAsP、AlGaInP、GaN、InN、AlN、InGaAlN、SiC等が挙げられる。
【0116】
上記基板としては、例えば、サファイア、スピネル、SiC、Si、ZnO、GaN単結晶等が挙げられる。また、必要に応じ基板と半導体材料の間にバッファー層が形成されていてもよい。上記バッファー層としては、例えば、GaN、AlN等が挙げられる。
【0117】
本発明の光半導体装置は、具体的には、例えば、発光ダイオード装置、半導体レーザー装置、フォトカプラ等が挙げられる。このような本発明の光半導体装置は、例えば、液晶ディスプレイ等のバックライト、照明、各種センサー、プリンター、コピー機等の光源、車両用計測器光源、信号灯、表示灯、表示装置、面状発光体の光源、ディスプレイ、装飾
、各種ライトまたはスイッチング素子等に好適に用いることができる。
【0118】
(光半導体装置の実施形態)
図1は、本発明の一実施形態にかかる光半導体装置を示す正面断面図である。本実施形態の光半導体装置1は、ハウジング2を有する。ハウジング2の内にLEDからなる光半導体素子3が実装されている。ハウジング2の光反射性を有する内面2aがこの光半導体素子3の周囲を取り囲んでいる。内面2aは、開口端に向かうにつれてその径が大きくなるように形成されている。従って、光半導体素子3から発した光のうち、内面2aに到達した光が内面2aにより反射され、光半導体素子3の前方側に進行する。加えて、上記光半導体素子3を封止するように、上記内面2aで囲まれた領域内に、光半導体装置用封止剤4が充填されている。光半導体装置用封止剤4は、複数の中空粒子5を有するため、該中空粒子5の作用によって光半導体素子3から発せられた光が拡散し、上記内面2aの作用とも相まって、矢印で示すように、光半導体素子3で発生して光が広い範囲を照明する。
【0119】
なお、図1(a)に示す構造は、本発明の光半導体装置の一例に過ぎず、上記光半導体素子3の実装構造等については適宜変形し得る。
【0120】
なお、図1(b)で示すように、上記中空粒子5は、複数の中空部5aを有する多孔中空粒子であることが上述したように望ましいが、図2に示すように、単一の中空部5bを有するいわゆる単孔型の中空粒子5Aを用いてもよい。
【0121】
〔実施例及び比較例〕
以下、本発明の具体的な実施例及び比較例を挙げて、本発明の効果を明らかにする。
【0122】
(合成例1)
1000mLの温度計、滴下装置及び攪拌機付セパラブルフラスコに、トリメチルメトキシシランを23g、ジメチルジメトキシシランを180g、フェニルトリメトキシシランを100g、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランを100g入れ、50℃で攪拌した。その中に水酸化カリウム0.7gと、水107gとからなる水溶液をゆっくりと滴下し、滴下し終わってから50℃で6時間攪拌した。その中に、酢酸0.8gを入れ、減圧下で揮発成分を除去し、酢酸カリウムをろ過してポリマーAを得た。ポリマーAの分子量はMn=2200であり、29Si−NMRより
(MeSiO1/20.08(MeSiO2/20.58(PhSiO3/20.19(EpSiO3/20.15
であり、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基の比率は19モル%、フェニル基の比率は15モル%であり、エポキシ等量は691g/eq.であることを確認した。
【0123】
なお、分子量は、ポリマーA(10mg)にテトラヒドロフラン(1mL)を入れ溶解するまで攪拌し、Waters社製の測定装置(カラム:昭和電工社製 Shodex GPC LF−804(長さ300mm)×2本、測定温度:40℃、流速:1mL/min、溶媒:テトラヒドロフラン、標準物質:ポリスチレン)を用いてGPC測定により測定した。また、エポキシ当量は、JIS K−7236に準拠して求めた。
【0124】
(合成例2)
1000mLの温度計、滴下装置及び攪拌機付セパラブルフラスコに、トリメチルメトキシシランを25g、ジメチルジメトキシシランを208g、ジフェニルジメトキシシシランを71g、フェニルトリメトキシシランを58g、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランを111g入れ、50℃で攪拌した。その中に、水酸化カリウム0.8gと水117gとからなる水溶液をゆっくりと滴下し、滴下し終わってから50℃で6時間攪拌した。その中に、酢酸0.9gを入れ、減圧下で揮発成分を除去し、酢酸カリウムをろ過してポリマーBを得た。ポリマーBの分子量はMn=1800であり、29Si−NMRより
(MeSiO1/20.08(MeSiO2/20.57(PhSiO2/20.10(PhSiO3/20.10(EpSiO3/20.15
であり、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基の比率は17モル%、フェニル基の比率は21モル%であり、エポキシ等量は723g/eq.であることを確認した。
【0125】
なお、分子量、エポキシ当量は、合成例1と同様にして求めた。
【0126】
(合成例3)
1000mLの温度計、滴下装置及び攪拌機付セパラブルフラスコに、ジメチルジメトキシシランを254g、ジフェニルジメトキシシシランを106g、及び2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランを111g入れ、50℃で攪拌した。その中に水酸化カリウム0.8gと水116gとからなる水溶液をゆっくりと滴下し、滴下し終わってから50℃で6時間攪拌した。その中に、酢酸0.9gを入れ、減圧下で揮発成分を除去し、酢酸カリウムをろ過してポリマーCを得た。ポリマーCの分子量はMn=1600であり、29Si−NMRより
(MeSiO2/20.70(PhSiO2/20.15(EpSiO3/20.15
であり、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基の比率は17モル%、フェニル基の比率は21モル%であり、エポキシ等量は742g/eq.であることを確認した。
【0127】
なお、分子量、エポキシ当量は、合成例1と同様にして求めた。
【0128】
(実施例1)
上記ポリマーA100gと、酸無水物(4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸/ヘキサヒドロ無水フタル酸=70/30、新日本理化社製、品番:リカシッドMH−700G)25gと、硬化促進剤(サンアプロ社製、品番:U−CAT SA 102)0.3gと、酸化防止剤(クラリアント社製、品番:サンドスタブ P−EPQ)0.1gと、蛍光体(YAG/Ce蛍光体粉末、YAl12及びCeを含む。平均粒径4.5μm、比重4.7)4.5gと、中空粒子(アクリル樹脂からなる中空粒子、多孔中空粒子、空隙率30%、平均粒子径2.1μm)1gとを混合機に投入し、混合した後、脱泡を行い、光半導体装置用封止剤を得た。
【0129】
なお、本明細書において空隙率とは、中空樹脂粒子全体積中に占める中空部体積を百分率(%)で表示したものであり、例えば、アムコ社製ポロシメーター2000を用いて封入水銀圧力2000kg/cmの条件にて測定することができる。
【0130】
(実施例2)
上記ポリマーB100gと、酸無水物(4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸/ヘキサヒドロ無水フタル酸=70/30、新日本理化社製、品番:リカシッドMH−700G)25gと、硬化促進剤(サンアプロ社製、品番:U−CAT SA 102)0.3gと、酸化防止剤(クラリアント社製、品番:サンドスタブ P−EPQ)0.1gと、蛍光体(YAG/Ce蛍光体粉末、YAl12及びCeを含む。平均粒径4.5μm、比重4.7)4.5gと、中空粒子(アクリル樹脂からなる中空粒子、多孔中空粒子、空隙率30%、平均粒子径2.1μm)1gとを混合機に投入し、混合した後、脱泡を行い、光半導体装置用封止剤を得た。
【0131】
(実施例3)
上記ポリマーC100gと、酸無水物(4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸/ヘキサヒドロ無水フタル酸=70/30、新日本理化社製、品番:リカシッドMH−700G)25gと、硬化促進剤(サンアプロ社製、品番:U−CAT SA 102)0.3gと、酸化防止剤(クラリアント社製、品番:サンドスタブ P−EPQ)0.1gと、蛍光体(YAG/Ce蛍光体粉末、YAl12及びCeを含む。平均粒径4.5μm、比重4.7)4.5gと、中空粒子(アクリル樹脂からなる中空粒子、多孔中空粒子、空隙率30%、平均粒子径2.1μm)1gとを混合機に投入し、混合した後、脱泡を行い、光半導体装置用封止剤を得た。
【0132】
(実施例4)
上記ポリマーC100gと、酸無水物(4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸/ヘキサヒドロ無水フタル酸=70/30、新日本理化社製、品番:リカシッドMH−700G)25gと、硬化促進剤(サンアプロ社製、品番:U−CAT SA 102)0.3gと、酸化防止剤(クラリアント社製、品番:サンドスタブ P−EPQ)0.1gと、蛍光体(YAG/Ce蛍光体粉末、YAl12及びCeを含む。平均粒径4.5μm、比重4.7)4.5gと、中空粒子(アクリル樹脂からなる中空粒子、多孔中空粒子、空隙率50%、平均粒子径2.7μm)1gとを混合機に投入し、混合した後、脱泡を行い、光半導体装置用封止剤を得た。
【0133】
(実施例5)
上記ポリマーC100gと、酸無水物(4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸/ヘキサヒドロ無水フタル酸=70/30、新日本理化社製、品番:リカシッドMH−700G)25gと、硬化促進剤(サンアプロ社製、品番:U−CAT SA 102)0.3gと、酸化防止剤(クラリアント社製、品番:サンドスタブ P−EPQ)0.1gと、蛍光体(YAG/Ce蛍光体粉末、YAl12及びCeを含む。平均粒径4.5μm、比重4.7)4.5gと、中空粒子(アクリル樹脂からなる中空粒子、多孔中空粒子、空隙率10%、平均粒子径2.4μm)1gとを混合機に投入し、混合した後、脱泡を行い、光半導体装置用封止剤を得た。
【0134】
(実施例6)
中空粒子の空隙率を60体積%としたことを除いては、実施例1と同様にして光半導体装置用封止剤を得た。
【0135】
(比較例1)
中空粒子を配合しなかったことを除いては実施例1と同様にして、光半導体装置用封止剤を得た。
【0136】
(比較例2)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(EXA−850CRP、DIC社製)100gと、酸無水物(4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸/ヘキサヒドロ無水フタル酸=70/30、新日本理化社製、品番:リカシッドMH−700G)100gと、硬化促進剤(U−CAT SA 102、サンアプロ社製)1.2gと、酸化防止剤(サンドスタブ P−EPQ、クラリアント社製)0.4gと、蛍光体YAG/Ce蛍光体粉末(YAl12:Ce、平均粒径4.5μm、比重4.7)7.2重量部とを混合機に投入し、混合した後、脱泡を行い、光半導体装置用封止剤を得た。
【0137】
(評価)
(1)光半導体装置の作製
図1に示したようにポリフタルアミドからなるハウジング2に、図示しないダイボンド材により主発光ピークが460nmにあるLEDからなる光半導体発光素子3を実装した。ダイボンド材により固定された光半導体発光素子3を図示しない金ワイヤーでリード電極と電気的に接続し、この光半導体素子3の周囲の空間に、図1に示したように光半導体装置用封止剤を注入し、100℃で3時間加熱し、さらに130℃で3時間加熱し、硬化させ、光半導体装置1を得た。
【0138】
光半導体装置1について、ゴニオメーター(オプトロニックラボラトリーズ社製)を用いて光半導体装置から出射される光の強度の角度依存性を求めた。図1(a)に矢印Zで示すように、光半導体発光素子3の表面における光の強度に対し、矢印Zに対し40°の角度をなすZ1方向における光の相対強度を求めた。
【0139】
この光の相対強度が0.8以上の場合に○、0.7以上、0.8未満の場合△、0.7未満の場合×とした。すなわち、上記相対強度が0.8以上であれば拡散効果が高く、広い範囲を明るく照明することができ、0.7以上、0.8未満では、広い範囲をある程度明るく照明することができ、0.7未満では、拡散効果が充分でないことを意味する。結果を下記の表1に示す。
【0140】
(2)硬化物の断面の観察
上記のようにして作成した実施例または比較例の光半導体用封止剤を凹部を有する型に流し込み、100℃で3時間、続いて130℃で3時間加熱し硬化させ、厚み2mmの硬化物得た。この硬化物を切削し、切断した。断面にカーボンをコーティングし、低真空電界放射型走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製、品番、品番:S−4300SE/N)により断面を観察し、中空粒子の破壊の有無を評価した。中空粒子の破壊がみられない場合を○、中空粒子の破壊が確認された場合を×とした。結果を下記の表1に示す。
【0141】
【表1】

【0142】
表1から明らかなように、比較例1では、中空粒子が含有されていないため、拡散効果が充分でなかった。また、比較例2では、封止剤を構成する樹脂がエポキシ樹脂であるため硬く、硬化時の収縮により中空粒子の破壊が認められ、さらに光拡散効果も充分でなかった。他方、実施例1〜6では、封止剤を構成する樹脂が上記シリコーン樹脂であるため、中空粒子の割れは認められなかった。また、光拡散効果も高かった。特に、実施例1〜5では、実施例6に比べ、中空粒子の空隙率が50体積%以下であるため、光拡散効果がより一層高かった。
【符号の説明】
【0143】
1…光半導体装置
2…ハウジング
2a…内面
3…光半導体発光素子
4…光半導体装置用封止剤
5…多孔型中空粒子
5a…複数の中空部
5b…単一の中空部
5A…単孔型の中空粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に環状エーテル含有基を有するシリコーン樹脂と、前記環状エーテル含有基と反応可能な熱硬化剤と、中空粒子とを含有する、光半導体装置用封止剤。
【請求項2】
前記中空粒子の空隙率が5体積%〜50体積%の範囲にある、請求項1に記載の光半導体装置用封止剤。
【請求項3】
前記中空粒子が多孔粒子である、請求項2に記載の光半導体装置用封止剤。
【請求項4】
前記分子内に環状エーテル含有基を有するシリコーン樹脂が、平均組成式が下記の一般式(1)で表される樹脂を含有し、かつ下記の式(a)により求められるフェニル基含有比率が15モル%〜60モル%の範囲にある、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光半導体装置用封止剤。
【化1】

一般式(1)中、a、b及びcは、それぞれa/(a+b+c)=0〜0.3、b/(a+b+c)=0.5〜0.9、及びc/(a+b+c)=0.1〜0.5を満たし、R〜Rは、少なくとも1個が環状エーテル含有基又はフェニル基を表し、前記環状エーテル含有基又はフェニル基以外のR〜Rは、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜8の炭化水素基或いはそのフッ化物を表し、これらは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
フェニル基含有比率(モル%)=(平均組成が一般式(1)で表される樹脂の1分子あたりに含まれるフェニル基の平均個数×フェニル基の分子量/平均組成が一般式(1)で表される樹脂成分の平均分子量)×100 ・・・式(a)
【請求項5】
発光素子と、該発光素子を封止するように設けられた請求項1〜4のいずれか1項に記載の光半導体装置用封止剤とを備える、光半導体装置。
【請求項6】
前記発光素子が発光ダイオード素子である、請求項5に記載の光半導体装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−68811(P2011−68811A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−222457(P2009−222457)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】