説明

光反射シート及びその製造方法

【課題】 光反射性、軽量性、光拡散性、剛性に優れたポリオレフィン系光反射シート、及びその製造方法の提供。
【解決手段】 ポリオレフィン系樹脂を含有する樹脂材料と、気泡と、を含むポリオレフィン系樹脂発泡体を有する光反射層を含む光反射シートにおいて、前記樹脂材料が、フィブリル化剤を含有し、前記光反射層が、その表面に筋状の凹凸を有することを特徴とする光反射シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光反射シート及びその製造方法に関し、特に、液晶ディスプレイや、照明器具等に使用される光反射シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の光反射シートとしては、特許文献1に記載されているようなポリエステル樹脂に粒子を含有させ二軸延伸法を用いてポリエステル樹脂と粒子の界面が剥離させボイドを形成する方法により得られる反射シートがある。また、特許文献2に記載されているような不活性ガスによるバッチ発泡で気泡を形成され、発泡倍率が2倍以上の微細な気泡を含む反射シートがある。また、一般的な反射部材として銀をコーティングして光を反射させる構造体もある。
【0003】
しかし、特許文献1では経時使用で紫外線による反射シートの黄変による反射光の色相変化が起こり好ましくなく、これを改善するために反射シートの表面に紫外線安定剤を塗布する試みもされているが工数が増えるためこれも好ましくない。特許文献2も同様に経時使用による不具合が起こり好ましくなく、この反射シートは正反射の挙動を示すため、広範囲にわたる光の反射をさせることができない。また、この製造方法では厚肉品しか製造することができず、昨今のディスプレイ製品の省スペース化要求を満足することはできない。
【0004】
特許文献3では、オレフィン系樹脂と粒子を含有させて延伸した反射シートが提案されている。ここでは、オレフィン系樹脂を用いることで紫外線による黄変は改善されているが、粒子を大量に含むため、軽量性の面で好ましくない。特許文献4はポリオレフィン系樹脂を発泡させた反射シートが提案されている。特許文献3同様にオレフィン系樹脂を用いており、紫外線による黄変は改善されているが衝撃吸収性を付与するため5倍以上の高発泡が必要なため材料の剛性つまりコシが低下し、昨今のディスプレイの大型化に伴う、アッセンブリ性が悪くなることが予想され好ましくない。特許文献5においても、樹脂を発泡させた反射シートが提案されているが、特許文献5ではポリオレフィン系樹脂を用いる記載はあるが非常に抽象的で再現性はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平04−296819号公報
【特許文献2】特開2003−145657号公報
【特許文献3】特開2004−307730号公報
【特許文献4】特開2008−275729号公報
【特許文献5】特開2006−195001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は光反射性、軽量性、光拡散性、剛性に優れたポリオレフィン系光反射シート、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明(1)は、ポリオレフィン系樹脂を含有する樹脂材料と、気泡と、を含むポリオレフィン系樹脂発泡体を有する光反射層を含む光反射シートにおいて、
前記樹脂材料が、フィブリル化剤を含有し、
前記光反射層が、その表面に筋状の凹凸を有することを特徴とする光反射シートである。
【0008】
本発明(2)は、前記ポリオレフィン系樹脂が、ポリプロピレンを含有する前記発明(1)の光反射シートである。
【0009】
本発明(3)は、前記ポリオレフィン系樹脂の主たる成分が融点160℃以上でJIS−K7210に規定される2.16kgfにおけるMFRが5以下である前記発明(1)又は(2)の光反射シートである。
【0010】
本発明(4)は、前記フィブリル化剤がフィブリル形成能を有する含フッ素ポリマーである前記発明(1)〜(3)のいずれか一つの光反射シートである。
【0011】
本発明(5)は、前記フィブリル化剤が、アクリル変性を施したポリテトラフルオロエチレンである前記発明(4)の光反射シートである。
【0012】
本発明(6)は、前記フィブリル化剤が、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して3.5〜10重量部含まれる前記発明(1)〜(5)のいずれか一つの光反射シートである。
【0013】
本発明(7)は、前記筋状の凹凸における凹凸差が3〜10μmである前記発明(1)〜(6)のいずれか一つの光反射シートである。
【0014】
本発明(8)は、樹脂材料がさらに高屈折率の粒子を含む前記発明(1)〜(7)のいずれか一つの光反射シートである。
【0015】
本発明(9)は、樹脂材料がポリオレフィン系樹脂100重量部に対して前記粒子を3〜25重量部含有する前記発明(8)の光反射シートである。
【0016】
本発明(10)は、ポリオレフィン系樹脂を含む樹脂材料とフィブリル化剤を押出機に投入し溶融・分散させる、溶融分散工程と、
前記溶融工程後、溶融樹脂材料に対してガスを溶解させる、ガス溶解工程と、
前記ガス溶解工程後、ガスを溶解させた溶融樹脂材料を押出して圧力を低下させ発泡させながらシートを形成し、前記シートを巻取ながら延伸する、ポリオレフィン系樹脂発泡体形成工程と、
を含む、光反射層を含む光反射シートの製造方法である。
【0017】
本発明(11)は、前記ガスが高圧ガスである前記発明(10)の光反射シートの製造方法である。
【0018】
本発明(12)は、前記高圧ガスが窒素ガスである前記発明(11)の光反射シートの製造方法である。
【0019】
本発明(13)は、高圧ガスが、超臨界状態の流体である前記発明(11)又は(12)の光反射シートの製造方法である。
【0020】
本発明(14)は、前記ポリオレフィン系樹脂が、ポリプロピレンを含有する前記発明(10)〜(13)のいずれか一つの光反射シートの製造方法である。
【0021】
本発明(15)は、前記ポリオレフィン系樹脂の主たる成分が融点160℃以上でJIS−K7210に規定される2.16kgfにおけるMFRが5以下である前記発明(10)〜(14)のいずれか一つの光反射シートの製造方法である。
【0022】
本発明(16)は、前記フィブリル化剤が、アクリル変性を施したポリテトラフルオロエチレンである前記発明(10)〜(15)のいずれか一つの光反射シートの製造方法である。
【0023】
本発明(17)は、前記フィブリル化剤が、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して3.5〜10重量部含まれる前記発明(10)〜(16)のいずれか一つの光反射シートの製造方法である。
【0024】
本発明(18)は、前記光反射層の表面に筋状の凹凸が形成され、当該筋状の凹凸における凹凸差が3〜10μmである前記発明(10)〜(17)のいずれか一つの光反射シートの製造方法である。
【0025】
本発明(19)は、樹脂材料がさらに高屈折率の粒子を含む前記発明(10)〜(18)のいずれか一つの光反射シートの製造方法である。
【0026】
本発明(20)は、樹脂材料がポリオレフィン系樹脂100重量部に対して前記粒子を3〜25重量部含有する前記発明(19)の光反射シートの製造方法である。
【0027】
ここで、本明細書における各種用語の意味を解説する。本発明において「シート」とは、にその厚さが長さと幅のわりには小さく平らな製品を意味し、板を含む概念である。
【発明の効果】
【0028】
本発明(1)によれば、光反射性、軽量性、光拡散性、剛性に優れたポリオレフィン系光反射シートを得ることができるという効果を奏する。特に、本発明の反射シートは、光反射層の表面に微小な凹凸が形成されるので、光反射の角度依存性が少ない。したがって、あらゆる角度から見ても、同じ明るさが得られるという拡散反射性に優れる効果を奏する。
【0029】
本発明(2)、(14)によれば、材料としてポリプロピレンを用いたため、長期間の紫外線暴露状態においても黄変しにくくなるという効果を奏する。これにより、液晶ディスプレイの反射板としてもちいた場合、画面がきれいになるという効果を奏する。また、耐熱性があり、光源から発生する熱により寸法変化が少ない。
【0030】
本発明(3)、(15)によれば、気抜けせずに良好な状態で発泡した反射シートを得ることができるという効果を奏する。
【0031】
本発明(4)、(5)、(16)によれば、フィブリル化剤が微細な繊維となりやすいため、より拡散反射性に優れる反射シートを得ることができるという効果を奏する。
【0032】
本発明(6)、(17)によれば、当該範囲の量でフィブリル化剤を含有することにより、反射シート表面に筋状の凹凸ができやすくなるため、拡散反射性に優れた反射シートを得ることができるという効果を奏する。
【0033】
本発明(7)、(18)によれば、凹凸差が所定の範囲であることによって、より拡散反射性に優れた反射シートを得ることができるという効果を奏する。
【0034】
本発明(8)、(9)、(19)、(20)によれば、反射層内に屈折率の高い粒子が含まれることによって、より拡散反射性に優れた反射シートを得ることができるという効果を奏する。
【0035】
本発明(10)〜(12)によれば、ガスを溶解して押出し成形により反射シートを成形することにより、反射シート内に気泡が形成されると共に、シート成形する際に巻取り張力によって材料の不均質性によって生じる強度のバラツキよってできる引張しわの頂点と谷点によって筋状の凹凸が形成されるため、拡散反射性に優れた反射シートを得ることができる。
【0036】
本発明(13)によれば、超臨界ガスを使用することにより、樹脂の流動性を高めることが出来ると共に、より細かな気泡を形成することができるため、拡散反射性に優れた反射シートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、実施例1の反射シートの延伸方向の断面図である。
【図2】図2は、(a)実施例1(表面)、(b)実施例1(裏面)、(c)比較例1、(d)比較例2の表面の様子を示した図である。
【図3】図3は、実施例及び比較例に係る反射シートのΔb値の経時変化を示した図である。
【図4】図4は、実施例及び比較例に係る反射シートの反射率の経時変化を示した図である。
【図5】図5は、実施例1に係る反射シートの反射特性を示した図である。
【図6】図6は、比較例1に係る反射シートの反射特性を示した図である。
【図7】図7は、比較例2に係る反射シートの反射特性を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
《構造》
本最良形態に係る光反射シートは、ポリオレフィン系樹脂を含有する樹脂材料と、気泡と、を含むポリオレフィン系樹脂発泡体を有する光反射層を含む光反射シートにおいて、前記樹脂材料が、フィブリル化剤を含有し、前記光反射層が、その表面に筋状の凹凸を有することを特徴とする。フィブリル化剤を含有することで、表面に筋状の凹凸が現れるため、これにより拡散反射性が向上する。また、フィブリル化剤を含有することにより、光反射シートの剛性を高めることができる。本最良形態に係る反射シートの光反射層は、紫外線による黄変問題を解決する為に、材料として、黄変しない素材であるポリオレフィン系樹脂を選択した。また、光反射層以外の構成としては、アッセンブリ性を補助するための剛性樹脂層等が含まれていてもよい。
【0039】
本最良形態に係る光反射シートは、光反射層の表面に筋状の凹凸を有する。筋状の凹凸の例を図2(a)、(b)に示す。図2は、ナノスケールハイブリット顕微鏡(VN−8000 キーエンス社製)で反射シートの表面を観察した結果を示す図である。ナノスケールハイブリット顕微鏡とは、デジタルマイクロスコープとAFMが融合した顕微鏡である。
ここで、筋状の凹凸は、例えば、シート成形する際に巻取り張力によって材料の不均質性によって生じる強度のバラツキよってできる引張しわの頂点と谷点によって形成される。
【0040】
尚、光反射シートの表面の凹凸差が3〜10μmであることが好適であり、4〜10μmであることがより好適であり、6〜10μmであることが更に好適である。反射シートの少なくとも一方の面の凹凸差が前記範囲内であればよい。このような範囲とすることにより、光反射シート表面で多数の乱反射が生じ光の拡散性が向上する。ここで、凹凸差とは、反射シート表面の最も高い凹部の頂点と最も低い凸部の谷点との高低差である。また、凹凸差は、フィブリル化剤の量を調整することによりその大小を調整することができる。例えば、フィブリル化剤の含有量を多くすれば、凹凸差の値は大きくなる傾向にあり、逆にフィブリル化剤の含有量を少なくすれば、凹凸差の値は小さくなる傾向にある。
【0041】
光反射層には気泡が形成され、光反射層の比重は、0.3〜0.6であり、0.3〜0.5が好適であり、0.3〜0.4がより好適である。このような範囲の比重とすることにより、単に軽量化できるだけでなく、気泡が数多く光反射層の内部に形成されていることとなるため、高い反射率を得ることができる。連続気泡または半連通に比べて光を反射させる空気/樹脂材料界面が多くなり、結果高い反射率を付与できる。
【0042】
光反射層に形成される気泡の形状は特に限定されないが、反射シートの平面に対して平行に扁平した形状であることが好適である。これはシートを延伸させることや、押出し成形することで形成されるが、このような構造とすることにより、元の厚みより薄くしてもシートの厚み方向に存在するセル壁数は変わらないので反射率の低下が起こりにくい。
すなわち、光反射層に形成される気泡は、断面形状が真円に近い形状ではなく、セル形状が楕円形状または扁平化されていることが好適である。すなわち、反射シートの(長手)押出し方向に平行な断面ではセルが非円形の長径を有する細長い形状となっており、一方、反射シートの(長手)押出し方向に直交する断面では略円形である。この(長手)押出し方向に平行な断面における非円形のセル(気泡)の平均長径は、30〜140μmが好適であり、40〜130μmがより好適である。(長手)押出し方向に平行な断面におけるセルの平均短径は、10〜30μmが好適であり、15〜25μmがより好適である。なお、セル径は、反射シートの断面を電子顕微鏡で撮影し、その中に写る一つのセルにおいて最も長くなる方向での直径を長径とし、その長径に直交する方向での直径を短径とした。また、その写真内に確認できるセルの長径をすべて測定し平均することで求める。
【0043】
このようなセルを断面観測により平均セル径比〔セルの短径/長径〕を求めると、0.15〜0.40であり、反射シートは角度依存性が少なく(拡散反射性に優れる)および波長依存性が少なくなる。一方、平均セル径比が0.8〜1.2の場合は、セル形状が略円形であるため、反射の際に角度依存性が高くなる傾向にあり、図5において、特定の角度領域の範囲に入ると急激に反射率が高くなる傾向を示す。
【0044】
光反射層に形成される気泡は、独立気泡であることが好適である。独立気泡であることにより、セル壁が多くなり、反射回数が増えて反射率が高くなる。
【0045】
尚、光反射層の厚さは、0.15〜1.0mmが好適であり、0.2〜0.8mmがより好適であり、0.2〜0.65mmが更に好適である。このような範囲とすることにより、反射シートの剛性、つまりはアッセンブリ時の作業性を保ちながら、昨今のディスプレイパネルの省スペース化、軽量化の両方が両立される。
【0046】
《成分》
本最良形態に係る光反射シートは、樹脂材料がフィブリル化剤を含有する。フィブリル化剤とは、当該剤そのものが微細な繊維となる性質を有する物質を意味し、微細な繊維となる前のものと、微細な繊維となる途中のものと、微細な繊維となった後のものとを含む概念である。微細な繊維とは、特に限定されないが、例えば、平均径が0.01〜0.6μmの繊維であることが好適である。当該フィブリル化剤は、フィブリル形成能を有する含フッ素ポリマーであることが好適である。フィブリル形成能を有する含フッ素ポリマーとしては、テトラフルオロエチレン重合体、特にアクリレートを共重合させたテトラフルオロエチレン共重合体、すなわちアクリル変性ポリテトラフルオロエチレンが好適に使用される。このアクリル変性ポリテトラフルオロエチレンは、特開平11−29679号公報に記載されているように、粒子径0.05〜1.0μmのポリテトラフルオロエチレンの分散液とポリマー粒子(ポリスチレン、ポリドデシルメタクリレートなど)の分散液とを混合した分散液中で、エチレン性不飽和結合を有する単量体、例えば、上記のエチレン、プロピレン、アクリレートなどを乳化重合させた後、凝固又はスプレードライにより粉体化されたポリテトラフルオロエチレン混合物が挙げられる。このポリテトラフルオロエチレン混合物として、三菱レイヨン株式会社より「メタブレンA−3000」「メタブレンA−3800」(商品名)として市販されているものが知られている。フィブリル形成能を有する含フッ素ポリマーの含有量は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して3.5〜10部含まれることが好適である。当該範囲の含有量とすることにより、反射シートの表面に筋状の凹凸が形成されやすくなるため、拡散反射性を高めることができる。
【0047】
ポリオレフィン系樹脂は、特に限定されないが、ポリプロピレン材料を含有する樹脂を使用することが好適である。その他、樹脂材料の中には、前記ポリプロピレン材料の他に、ポリエチレン、ゴム等の他の樹脂材料が含まれていてもよい。使用するポリプロピレン材料としては、プロピレンモノマー成分を含むポリマー材料であれば、特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体が挙げられる。また、ここで用いるポリオレフィン系樹脂の主たる成分は、融点160℃以上でJIS−K7210に規定される2.16kgfにおけるMFRが5以下であることが好適であり、4以下であることがより好適であり、3以下であることが更に好適である。ポリオレフィン系樹脂の主たる成分はポリプロピレン材料であることが好適である。尚、主たる成分とは、ポリオレフィン系樹脂中の85%以上を占める成分を意味する。
【0048】
また、ここで用いるポリプロピレン材料の結晶化率は、60〜100%が好適であり、60〜80%がより好適であり、60〜70%が更に好適である。当該範囲とすることにより、発泡成形時により冷却固化しやすく、微細なセルの発泡体を得ることができる。尚、結晶化率は、JIS−K7121プラスチックの転移温度測定方法を参考に算出する。予め200℃にて融解させ、10℃/分の冷却速度で冷却させた試料を昇温10℃/分にて融解させ、融解エネルギーを得る。比較材料としてJIS−7210に規定される230℃,2.16kgfで評価されたMFRが40以上のホモポリプロピレン樹脂を同様に測定し得られた融解エネルギー時の結晶化度を100%として評価したいサンプルの結晶化度を算出する。MFRが40以上のホモポリプロピレン樹脂は、融解エネルギーがほぼ一定になるためサチュレートと判断しMFR40以上の材料を比較材料とする。
【0049】
また、ポリプロピレン材料の結晶化温度(Tc)は、90〜120℃が好適であり、95〜120℃がより好適であり、100〜120℃が更に好適である。当該範囲とすることにより、発泡成形時により冷却固化しやすく、微細なセルの発泡体を得ることができる。尚、結晶化温度は、JIS−K7121に準じて評価した。
【0050】
尚、ポリプロピレン材料のJIS−K7210に規定される230℃,2.16kgf時のMFRは、0.1〜10が好適であり、0.2〜5がより好適であり、0.3〜3が更に好適である。
【0051】
樹脂材料の中には、粒子、顔料、酸化防止剤、発泡核剤、滑剤、結晶核材、架橋剤が含まれていてもよい。これらの中でも、粒子が含まれることがより好適である。また、粒子の中でも、高屈折率の粒子が含まれることが特に好適である。ここで、高屈折率とは、特に限定されないが、例えば、屈折率が1.6〜3.0であることを意味する。高屈折率の粒子としては、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛が挙げられる。
【0052】
顔料としては、公知の顔料を使用することができるが、例えば、ルチル型酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどが挙げられる。
【0053】
酸化防止剤としては、公知の酸化防止剤を使用することができるが、例えば、フェノール系酸化防止剤として株式会社ADEKA社製アデカスタブAO−60やチバジャパン株式会社製イルガノックス1010などが挙げられる。
【0054】
発泡核剤としては、公知の発泡核剤を使用することができるが、例えば、シリカ、タルクなどが挙げられる。
【0055】
滑剤としては公知の滑剤を使用することができる。例えば、住友スリーエム株式会社製ダイナマーFX9613などが挙げられる。
【0056】
結晶核剤としては公知の結晶核剤を使用することができる。例えば、新日本理化株式会社のゲルオールや株式会社ADEKAのアデカスタブNA11などが挙げられる。
【0057】
架橋剤としては公知の架橋剤を使用することができる。例えば、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)が挙げられる。
【0058】
《組成》
ポリオレフィン樹脂材料の含有量は、光反射層全体に対して、30〜80重量%が好適であり、40〜80重量%がより好適であり、70〜80重量%が更に好適である。ポリプロピレン材料の含有量は、光反射層全体に対して、30〜80重量%が好適であり、40〜80重量%がより好適であり、70〜80重量%が更に好適である。その他のポリマー材料の含有量は、光反射層全体に対して、0〜15重量%が好適であり、0〜10重量%がより好適であり、0.1〜8重量%が更に好適である。高屈折率の粒子の含有量は、ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、3〜25重量部が好適であり、5〜20重量部、7〜17重量部がより好適である。酸化防止剤の含有量は、光反射層全体に対して、0.1〜0.3重量%が好適であり、0.1〜0.25重量%がより好適であり、0.15〜0.25重量%が更に好適である。増核剤の含有量は、光反射層全体に対して、0.1〜0.5重量%が好適であり、0.1〜0.3重量%がより好適であり、0.2重量%が更に好適である。架橋剤の含有量は、光反射層全体に対して、0〜5重量%が好適であり、0〜4重量%がより好適であり、0.1〜3重量%が更に好適である。
【0059】
《製造方法》
本最良形態に係る反射シートの製造方法は、溶融分散工程と、ガス溶解工程と、発泡シート形成工程とが含まれる。ここで、任意で、アニール工程が含まれていてもよい。以下、各工程について詳細に説明する。
【0060】
溶融分散工程
溶融分散工程において、ポリオレフィン系樹脂を含む樹脂材料とフィブリル化剤を押出機に投入し溶融・分散させる。より詳細には、樹脂材料をシングル又はタンデム型(押出機が2台連結したタイプ)の押出機に投入し、溶融ゾーンで溶解し、更にフィブリル化剤を分散する。尚、溶融工程において用いる樹脂材料は、あらかじめ、2軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等の樹脂混合機械を用いて、材料を溶融混合し、ペレット化したものを用いることが好適である。
【0061】
ガス溶解工程
ガス溶解工程において、溶融樹脂材料に対してガスを溶解させる。ここで用いるガスは、高圧ガスであることが好適であり、超臨界ガスであることが更に好適である。溶融ゾーン付近に設けられたインジェクションノズルよりガス供給機により昇圧され超臨界状態になった窒素ガス又は炭酸ガスを押出機内に吐出し、溶融された材料中に溶解させる。超臨界状態のガスを押出機中に導入して、溶融した樹脂材料に溶解させて後述するポリオレフィン系樹脂発泡体形成工程において光反射層内に気泡を作る。
【0062】
ここで用いる超臨界ガスは、例えば、超臨界二酸化炭素、超臨界窒素が挙げられる。これらの中でも、超臨界窒素ガスを用いることにより、セル径を微細化できる。また、超臨界ガスの圧力は、7MPa以上が好適であり、8MPa以上がより好適であり、9MPa以上が更に好適である。尚、上限は特に限定されないが、例えば、20MPa以下である。
【0063】
ポリオレフィン系樹脂発泡体形成工程
ポリオレフィン系樹脂発泡体形成工程において、前記ガス溶解工程後、ガスを溶解させた溶融樹脂材料を押出して圧力を低下させ発泡させながらシートを形成する。さらに、前記シートを巻取りながら延伸する。押出機の中で樹脂の中でガスを導入し7MPa以上の高圧状態として、ダイ口から吐出して大気圧で減圧されて発泡されるまでの間、維持することにより、マイクロセル(50μm以下)で発泡倍率が1.5〜10倍の高いものを得ることが可能となる。これにより軽比重で反射効率の高い反射シートをつくることができる。
【0064】
押出機におけるダイ構造においても好適な反射シートとして供される軽比重のマイクロセル発泡体を得るには、ダイの中のExit角度を一定角度(20〜30°)に保つことが重要となる。
【0065】
更にシートを巻き取りながら延伸することにより、フィブリル化剤がフィブリル化する。更に、シート成形する際に巻取り張力によって材料の不均質性によって生じる強度のバラツキよってできる引張しわの頂点と谷点によって筋状凹凸が形成される。尚、筋状凹凸は、シートの延伸方向に配向して形成される。
【0066】
《使用方法及び用途》
本最良形態に係る反射シートは、液晶ディスプレイや、照明器具等において、光反射シートとして使用される。
【実施例】
【0067】
(実施例1)230℃、2.16kgfにおけるMFRが2.4のホモポリプロピレン100重量部に酸化チタン12重量部、フィブリル化剤6重量部のポリオレフィン系樹脂組成物を日本製鋼所製2軸押出機で溶融・調製し、超臨界窒素ガスを含浸させた後、溶融材料を押出して発泡シートを形成し光反射シートを製造した。得られた光反射シートの比重は、0.4g/cmであり、厚みは400μmであった。発泡セルは光反射シートの平面に対して平行に扁平した独泡であり、(長手)押出し方向に直交する断面におけるセルの長径は、51μmであった。一方、(長手)押出し方向に平行な断面におけるセルの長径は119μmであり、短径は22μmであった。(長手)押出し方向に平行な断面における平均セル径比[セルの短径/長径]を求めると、0.18であり、非常に細長く扁平したセル形状であった。また、このときの光反射シートを(長手)押出し方向に平行な断面の写真を図1に示した。
【0068】
ここでフィブリル化剤はアクリレートを共重合させたテトラフルオロエチレン共重合体、すなわちアクリル変性ポリテトラフルオロエチレンを用いた。具体的には、このポリテトラフルオロエチレン混合物として三菱レイヨン株式会社より「メタブレンA−3800」(商品名)を使用した。
【0069】
(比較例1)東レ ルミラー E−60L
セルサイズを測定すると、長径は11.3μm、短径は1.8μmであった。また、平均セル径比〔セルの短径/長径〕は0.16であった。
(比較例2)古河電気工業 MC−PET
セルサイズを測定すると、長径は4.1μm、短径は3.8μmであった。平均セル径比〔セルの短径/長径〕は1.08であった。
(比較例3)フィブリル化剤のみ未添加としたこと以外は、実施例1と同条件で反射シートを製造した。
(比較例4)230℃、2.16kgにおけるMFRが0.5のホモポリプロピレンを用いて酸化チタン、フィブリル化剤未添加にて発泡倍率10倍のシートを調製した。
【0070】
(表面分析)
実施例及び比較例の反射シートの表面をナノスケールハイブリット顕微鏡(キーエンス製、VN−8000)にて測定した。図2に結果を示した。図2(a)、(b)は、実施例1に係る反射シートの表面(a)及び裏面(b)の様子を示した図である。図2(c)は、比較例1の表面の様子を示した図である。図2(d)は、比較例2の表面の様子を示した図である。
(凹凸差)
実施例及び比較例の反射シートの表面をナノスケールハイブリット顕微鏡(キーエンス製、VN−8000)にて200μm×200μmの範囲を測定し、最も高い凹部の頂点と最も低い凸部の谷点との高低差を測定した。尚、明らかにキズと思われる逸脱したデータは除外した。結果を表1に示した。
(拡散反射性)
紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製 V−650)を用いて、2°刻みで、入射光に対して−30°〜30°まで角度を変えながら380nm〜780nmまでの反射光の波長依存空間分布を計測した。各波長毎の0度と30度および−30度の反射率の差に大きな変化があり、0度における反射率のトップピークが一定ではないものを×とする。各波長毎の反射率が0度、30度、−30度とも大きな変化がない、つまりは角度依存性が少ないものを◎とする。結果を表1、図5、6、7に示した。実施例1及び比較例1、2のシートの角度依存性を調べると、セルが細長い形状をしており、特定のセルサイズを有する実施例は角度依存性および波長依存性の少ない優れた物性が得られた(図5)。
一方、セルが細長い形状をしているが、セルサイズが非常に細かい比較例1は角度依存性が少ないが、波長依存性があり、780nmに近づくほど0アングルでの反射性が顕著となり、バラツキを生じる。
また、セルが略円形をしている比較例2は、角度依存性および波長依存性ともに劣るものとなった。
(剛性)
250mm×50mmの長方形型の試験片を切り出し、短辺の一端1cmのところで固定させる。固定した端辺と固定していない端辺の撓み量を評価した。自重に負け、固定していない端面が地に付いた状態を×とする。目視では撓みを判断できない場合は、アッセンブリ時に自重に負けないと判断し◎とする。結果を表1に示した。
(耐黄変性)
ダイプラメタルウェザー(ダイプラ・ウィンテス(株)製)にて、75mW/cm、ブラックパネル温度が63℃、湿度が70%で雨なし条件とし、メタルハライド装置を用いて、0、2、4、6、8、24時間照射したサンプルの表面を日本分光株式会社製、紫外可視分光光度計を用いて波長555nmにおける反射率、及び、0hつまり初期サンプルに対する色座標の変化(Δb値)を評価した。尚、反射率測定に用いた標準白色板はスペクトラロンを用いた。経時変化によってΔb値に大きな変化のあるものを×とする。経時変化によってもΔb値にほとんど変化がない(Δb値が1以内)を◎とする。表2及び3、図3及び4に評価結果を示した。
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

【0073】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂を含有する樹脂材料と、気泡と、を含むポリオレフィン系樹脂発泡体を有する光反射層を含む光反射シートにおいて、
前記樹脂材料が、フィブリル化剤を含有し、
前記光反射層が、その表面に筋状の凹凸を有することを特徴とする光反射シート。
【請求項2】
前記ポリオレフィン系樹脂が、ポリプロピレンを含有する請求項1記載の光反射シート。
【請求項3】
前記ポリオレフィン系樹脂の主たる成分が融点160℃以上でJIS−K7210に規定される2.16kgfにおけるMFRが5以下である請求項1又は2記載の光反射シート。
【請求項4】
前記フィブリル化剤がフィブリル形成能を有する含フッ素ポリマーである請求項1〜3のいずれか一項記載の光反射シート。
【請求項5】
前記フィブリル化剤が、アクリル変性を施したポリテトラフルオロエチレンである請求項4記載の光反射シート。
【請求項6】
前記フィブリル化剤が、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して3.5〜10重量部含まれる請求項1〜5のいずれか一項記載の光反射シート。
【請求項7】
前記筋状の凹凸における凹凸差が3〜10μmである請求項1〜6のいずれか一項記載の光反射シート。
【請求項8】
樹脂材料がさらに高屈折率の粒子を含む請求項1〜7のいずれか一項記載の光反射シート。
【請求項9】
樹脂材料がポリオレフィン系樹脂100重量部に対して前記粒子を3〜25重量部含有する請求項8記載の光反射シート。
【請求項10】
ポリオレフィン系樹脂を含む樹脂材料とフィブリル化剤を押出機に投入し溶融・分散させる、溶融分散工程と、
前記溶融工程後、溶融樹脂材料に対してガスを溶解させる、ガス溶解工程と、
前記ガス溶解工程後、ガスを溶解させた溶融樹脂材料を押出して圧力を低下させ発泡させながらシートを形成し、前記シートを巻取ながら延伸する、ポリオレフィン系樹脂発泡体形成工程と、
を含む、光反射層を含む光反射シートの製造方法。
【請求項11】
前記ガスが高圧ガスである請求項10記載の光反射シートの製造方法。
【請求項12】
前記高圧ガスが窒素ガスである請求項11記載の光反射シートの製造方法。
【請求項13】
高圧ガスが、超臨界状態の流体である請求項11又は12記載の光反射シートの製造方法。
【請求項14】
前記ポリオレフィン系樹脂が、ポリプロピレンを含有する請求項10〜13のいずれか一項記載の光反射シートの製造方法。
【請求項15】
前記ポリオレフィン系樹脂の主たる成分が融点160℃以上でJIS−K7210に規定される2.16kgfにおけるMFRが5以下である請求項10〜14のいずれか一項記載の光反射シートの製造方法。
【請求項16】
前記フィブリル化剤が、アクリル変性を施したポリテトラフルオロエチレンである請求項10〜15のいずれか一項記載の光反射シートの製造方法。
【請求項17】
前記フィブリル化剤が、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して3.5〜10重量部含まれる請求項10〜16のいずれか一項記載の光反射シートの製造方法。
【請求項18】
前記光反射層の表面に筋状の凹凸が形成され、当該筋状の凹凸における凹凸差が3〜10μmである請求項10〜17のいずれか一項記載の光反射シートの製造方法。
【請求項19】
樹脂材料がさらに高屈折率の粒子を含む請求項10〜18のいずれか一項記載の光反射シートの製造方法。
【請求項20】
樹脂材料がポリオレフィン系樹脂100重量部に対して前記粒子を3〜25重量部含有する請求項19記載の光反射シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−33815(P2011−33815A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179791(P2009−179791)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000127307)株式会社イノアック技術研究所 (73)
【Fターム(参考)】