説明

光反射フィルム、光反射フィルムの製造方法、およびそれを用いた光反射体

【課題】不燃性を有し、高屈折率層中の空隙を低減した光反射フィルムおよびそのような光反射フィルムの、水系媒体を使用した製造方法を提供する。
【解決手段】本発明によれば、基材上に高屈折率層と低屈折率層とを有するユニットを少なくとも一つ含む光反射フィルムにおいて、高屈折率層に、水溶性高分子およびアニオン化されたカチオン性金属酸化物粒子の表面を水溶性無機高分子で被覆した粒子を含有することを特徴とする光反射フィルムが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属光沢調フィルム、可視光反射フィルム、近赤外反射フィルムに好適に使用できる光反射フィルムに関する。また、その製造方法およびそれを用いた光反射体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギー対策への関心が高まり、建物や車両の窓ガラスから、太陽光の中、熱線の透過を遮断する近赤外光反射フィルムの開発が盛んに行われる様になってきている。これにより冷房設備にかかる負荷を減らすことが出来、省エネルギー対策として有効だからである。
【0003】
従来、近赤外光反射フィルムとして、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層させた積層膜を蒸着法、スパッタ、などのドライ製膜法で作製する提案がされている。また、交互に積層させた積層膜の光学膜厚を調整することで、近赤外光に替えて可視光を反射するように設計できることも知られている。しかし、ドライ製膜法は製造コストが高く、大面積化が困難であり、耐熱性素材に限定される等の課題がある。
【0004】
そこで、上記のような課題を有しているドライ製膜法に代えて、湿式塗布法を用いて熱線遮蔽フィルムを形成する方法が知られている。
【0005】
例えば、金属酸化物や金属化合物微粒子を含む熱硬化型シリコーン樹脂や紫外線硬化型アクリル樹脂を有機溶媒中に分散させた高屈折率層塗布液を、バーコーターを用いた湿式塗布方式により基材上に塗布して透明積層体を形成する方法(例えば、特許文献1参照。)や、ルチル型の酸化チタン、複素環系窒素化合物(例えば、ピリジン)、紫外線硬化型バインダー及び有機溶剤から構成される高屈折率塗膜形成用組成物を、バーコーターを用いた湿式塗布方式により基材上に塗布して透明積層体を形成する方法(例えば、特許文献2参照。)が開示されている。
【0006】
また、近赤外光反射フィルムの製造において、水溶性高分子を用いた水系塗布液をスピンコートする方法(例えば、特許文献3参照。)が開示されている。
【0007】
一方で、金属酸化物、及び水溶性高分子を用いた水系の同時多層塗布を用いた製造法として、インクジェットメディアの製造法があり、無機高分子を含有した水溶液下で分散したシリカ分散液、およびポリビニルアルコールを用いて高温でのゲル化を抑制し、かつ安定した低温ゲル化性を示す液を作製し、同時多層塗布を可能とする方法(例えば、特許文献4参照)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−110401号公報
【特許文献2】特開2004−123766号公報
【特許文献3】特開2009−86659号公報
【特許文献4】特開2002−320842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に開示されている方法では、高屈折率層形成用塗布液の媒体としては、主には、有機溶剤により形成されているため、高屈折率層形成及び乾燥時に、多量の有機溶剤を飛散させることになり、環境上の問題がある。
【0010】
これに対し、特許文献3の実施例で、低屈折率層を水溶液を用いてスピンコートしたとの記載がある。しかし、高屈折率層材料として無機酸化物粒子を添加したものではなく、高屈折率層は、TiO+分散剤+UV硬化樹脂の有機溶媒(PGMEA;Propylene Glycol Monomethyl Ether Acetate)溶液をスピンコートしているため、完全な水系塗布ではなかった。
【0011】
また、特許文献4に開示された水系塗布液を用いる方法を光反射フィルムの製造に適用した場合には、低屈折率層は問題なく形成できるが、高屈折率層は層内に空隙が形成され屈折率が下がるという問題が生じることが分かった。そのために、この従来技術による水系塗布の方法では、十分な性能を有する光反射フィルムを得ることは困難である。
【0012】
さらに、光反射フィルムは、使用する環境によっては不燃性が要求されるが、従来不燃性向上については十分な検討がされておらず、優れた不燃性を実現した光反射フィルムは未だ得られていない。
【0013】
本発明は上記した従来技術の問題点の解決を解決するためになされたものであり、本発明の第一の目的は、高屈折率層中の空隙等の欠陥が低減され、高屈折率層が高い屈折率範囲を示す高性能な光反射フィルム、特に水系塗布により製造された場合であっても高性能な光反射フィルムを提供することにある。
【0014】
本発明の別の目的は、優れた不燃性を有する光反射フィルムを提供することにある。
【0015】
さらに本発明の別の目的は、上記のように高性能の光反射フィルムを製造するための方法、特に水系塗布を用いることにより、製造コストが安く、大面積化が可能な製造方法を提供することにある。
【0016】
また、本発明のさらに別の目的は、上記のような光反射フィルムを備える光反射体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、本発明の上記目的は、以下の構成により達成されることを見出した。
【0018】
すなわち、本発明の第一の態様によれば、基材上に高屈折率層と低屈折率層とを積層したユニットを少なくとも一つ含む光反射フィルムにおいて、高屈折率層に、水溶性高分子およびアニオン化されたカチオン性金属酸化物粒子の表面を水溶性無機高分子で被覆した粒子を含有することを特徴とする光反射フィルムが提供される。
【0019】
また、本発明の一実施形態では、前記金属酸化物粒子が、酸化ジルコニウム、酸化セリウムおよび酸化チタンの少なくとも一種である。
【0020】
また、本発明の一実施形態では、前記水溶性無機高分子が、アルミニウム、ジルコニウムおよびチタンの少なくとも一種を骨格とする高分子である。
【0021】
また、本発明の一実施形態では、前記水溶性無機高分子がポリ塩化アルミニウムであり、組成式がAl(OH)Clである。
【0022】
本発明の第二の態様によれば、 前記カチオン性金属酸化物粒子をアニオン化し、アニオン化されたカチオン性金属酸化物粒子の表面を前記水溶性無機高分子で被覆する工程、前記水溶性高分子および前記アニオン化されたカチオン性金属酸化物粒子の表面を水溶性無機高分子で被覆した粒子を水系媒体中に含む高屈折率層塗布液を調製する工程、水系媒体を用いた低屈折率層塗布液を調製する工程、および前記高屈折率層塗布液と前記低屈折率層塗布液とを樹脂基材上に同時重層塗布する工程を含む、本発明の光反射フィルムの製造方法が提供される。
【0023】
また、本発明の一実施形態では、前記カチオン性金属酸化物粒子のアニオン化が、前記カチオン性金属酸化物粒子とアニオン性分散剤とを水系媒体中に分散させることにより行われる。
【0024】
また、本発明の一実施形態では、前記アニオン性分散剤が、前記カチオン性金属酸化物粒子の全質量に対して0.1〜10質量%である。
【0025】
また、本発明の第三の態様によれば、上記の光反射フィルムが、基体の少なくとも一方の面に設けられたことを特徴とする光反射体が提供される。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、水溶性高分子およびアニオン化されたカチオン性金属酸化物粒子の表面を水溶性無機高分子で被覆した粒子を含むことにより、水系塗布液を用いて製造されていても、高屈折率層中の空隙の発生を防止することができる。それにより、高屈折率層が高い屈折率範囲を示す高性能な光反射フィルムが実現される。加えて驚くべきことに、本発明の光反射フィルムは、高い不燃性を示す。
【0027】
また、本発明によれば、水系塗布液を用い、同時重層塗布により光反射フィルムを製造できるため、製造コストが安く、大面積化が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の光反射フィルム、光反射フィルムの製造方法および光反射体の構成要素、並びに本発明を実施するための形態等について詳細な説明をする。
【0029】
《光反射フィルム》
本発明の光反射フィルムの構成について説明する。光反射フィルムは、樹脂基材上に、高屈折率層と低屈折率層とから構成されるユニットを少なくとも一つ積層し、所望の波長の光を反射する光反射フィルムである。特に本発明では、基材上に高屈折率層と低屈折率層とを積層したユニットを少なくとも一つ含む光反射フィルムにおいて、高屈折率層に水溶性高分子、およびアニオン化されたカチオン性金属酸化物粒子の表面を水溶性無機高分子で被覆した粒子を含有することが特徴である。このような光反射フィルムは、高屈折率層中の空隙が低減され、かつ、優れた不燃性を有するものとなる。
【0030】
上記の従来技術のように、光反射フィルムを製造するために水系塗布液を使用すると、低屈折率層を形成する場合にはシリカなどアニオン性金属酸化物を用いるため、水溶性無機高分子を用いて水系媒体への分散が可能であったが、高屈折率層を形成するための高屈折率を示す粒子はうまく分散できない。本発明者は、その際、高屈折率を示す粒子は一般的にカチオン性を示し、水溶性無機高分子を用いても水系媒体中にうまく分散することができていないという点に着目した。高屈折率層塗布液中の金属酸化物粒子の分散が不安定であるために、塗布液を塗布後、乾燥した時に金属酸化物粒子が凝集し、高屈折率層内に空隙が形成され、結果として屈折率が低下し、光反射フィルムの性能を損なっていることが分かった。
【0031】
そこで、本発明者は、高屈折率を示す粒子として、アニオン化されたカチオン性金属酸化物粒子を準備し、この粒子の表面を水溶性無機高分子で被覆して用いることにより、金属酸化物粒子が水系媒体中に安定して分散されることを見出した。このような分散液を塗布して高屈折率層を形成することにより、分散液を塗布後に乾燥しても、高屈折率層中の空隙の発生を抑制することができる。空隙の発生が抑制されるメカニズムはいまだ明らかではないが、水溶性無機高分子による高いZ電位付与により、高屈折率層の塗布液を乾燥する時に金属酸化物が構造を作らない、さらに水溶性無機高分子による粒子と水溶性高分子の界面を安定化させる作用によるものと推測している。したがって、本発明によれば、従来生じていた屈折率の低下すなわち光反射フィルムの性能低下が起こらず、高性能な光反射フィルムを製造できる。
【0032】
また、本発明によれば、高屈折率層中の空隙の低減と共に、光反射フィルムに優れた不燃性も付与できることが分かった。不燃性の機構はいまだ明らかではないが、金属酸化物粒子表面に被覆された水溶性無機高分子が加熱により分解される際にできる無機酸化物が、高屈折率層中で吸熱し、かつ水を放出するからだと考えられる。
【0033】
アニオン化されたカチオン性金属酸化物粒子の表面が水溶性無機高分子で被覆されているかどうかは、得られた光反射フィルムを透過型電子顕微鏡にエネルギー分散型X線分光検出器を組み込んだ装置(TEM−EDX)により観察することで、水溶性無機高分子が金属酸化物粒子表面に偏在していることを確認でき、確認することができる。TEM−EDX分析装置としては、特に制限されず、例えば、日立社製 透過型電子顕微鏡 HT7700に対して、EDAX社製、EDX Apollo40を搭載した装置が挙げられる。なお、高屈折率層中でカチオン性金属酸化物粒子の表面が水溶性無機高分子で被覆されているかどうかは、高屈折率層塗布液中でカチオン性金属酸化物粒子の表面が水溶性無機高分子で被覆されているかどうかを反映しているため、塗布液中の金属酸化物粒子をTEM−EDXにより観察して確認することもできる。
【0034】
以下、本発明の光反射フィルムを構成する、各要素について説明する。
【0035】
〔高屈折率層〕
本発明に係る高屈折率層は、水溶性高分子、および高屈折率を示すアニオン化されたカチオン性金属酸化物粒子の表面を水溶性無機高分子で被覆した粒子を含有することを特徴とし、好ましくは1.80〜2.50、より好ましくは1.90〜2.20の屈折率を示す。
【0036】
本明細書における「水溶性高分子」「水溶性無機高分子」でいう「水溶性」とは、水系媒体に対し1質量%以上溶解することをいい、好ましくは3質量%以上溶解することを言う。水系媒体とは、水を主体とする媒体を意味し、不純物程度の濃度、すなわち10質量%以下の濃度で、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコールやその他の不純物を含んでいてもよい。
【0037】
高屈折率層においては、高屈折率を示すカチオン性金属酸化物粒子を含み、さらに、カチオン性金属酸化物粒子は、アニオン化され、水溶性無機高分子で被覆されている。本発明では、水溶性無機高分子をアニオン性分散剤により分散し、表面をアニオン化したカチオン性金属酸化物表面に被覆させることにより、高屈折率層中において層内に発生する空隙を抑制することができる。上記したように、空隙を抑制できる理由は、水溶性無機高分子による高いZ電位付与により、高屈折率層の塗布液を乾燥する時に金属酸化物が構造を作らない、さらに無機高分子による粒子と水溶性高分子の界面を安定化させる作用によるものと考えられる。さらに、本発明の高屈折率層は、カチオン性金属酸化物粒子表面を被覆した水溶性無機高分子が加熱により分解される際にできる無機酸化物が、吸熱、および水を放出すると考えられるために、光反射フィルムに高い不燃性を付与することができると考えられる。
【0038】
また、(水溶性高分子)対(アニオン化されたカチオン性金属酸化物粒子の表面を水溶性無機高分子で被覆した粒子)の比率は、高屈折率層として機能する屈折率を実現するためには、7:3〜3:7の体積比であることが好ましく、より好ましくは6:4〜4:6である。この体積比は、高屈性率層の比重を測定し、各構成材料の重量から計算によって見積もられる。
【0039】
また、本発明によれば、高屈折率層の空隙率は10%未満が達成される。従来金属酸化物粒子の凝集により高屈折率層中に空隙が生じ、屈折率の低下等の性能劣化が引き起こされていたが、特に高屈折率層の空隙率が10%を超えると、屈折率の低下および散乱の上昇が起こる場合がある。
【0040】
(水溶性高分子)
水溶性高分子は、本発明の光反射フィルムを構成し、その構造を維持する基本的な役割を果たす。本発明の光反射フィルムの高屈折率層に含まれる水溶性高分子としては、水溶性有機高分子を挙げることができる。より詳細には、反応性官能基を有するポリマーが挙げられ、好ましくは、例えば、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリル酸、アクリル酸−アクリルニトリル共重合体、アクリル酸カリウム−アクリルニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、若しくはアクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのアクリル系樹脂、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、若しくはスチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体などのスチレンアクリル酸樹脂、スチレン−スチレンスルホン酸ナトリウム共重合体、スチレン−2−ヒドロキシエチルアクリレート共重合体、スチレン−2−ヒドロキシエチルアクリレート−スチレンスルホン酸カリウム共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体などの酢酸ビニル系共重合体及びそれらの塩が挙げられる。これらの中では、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン類及びそれを含有する共重合体、ゼラチンがより好ましく、ポリビニルアルコールを含むことがより好ましい。なお、本発明に係る第1の水溶性高分子は、1種でも2種以上を混合して使用してもよい。水溶性高分子として好ましいポリビニルアルコールは、重合度や変性の種類違いなど二種類以上を併用することもできる。
【0041】
前記水溶性高分子の重量平均分子量は、1,000以上200,000以下が好ましい。更には、3,000以上150,000以下がより好ましい。重量平均分子量がこの範囲であれば、フィルムとしての十分な機械的強度を保持できる。高屈折率層中の水溶性高分子の含有量は、後述する高屈折率層塗布液中の固形分の含有量がほぼそのまま高屈折率層中に存在する。また、高屈折率層および低屈折率層を構成する他の成分についても、それぞれ、塗布液中の固形分の比率がそのまま反映される。
【0042】
(水溶性無機高分子)
本発明において、水溶性無機高分子は、アニオン化されたカチオン性金属酸化物粒子の表面を被覆している。さらに、水溶性無機高分子は、金属酸化物粒子を水系媒体中に均一に分散させ、最終的に高屈折率層中に高屈折率を示す金属酸化物粒子を均一に分散した状態で存在させ、空隙の発生を防止する重要な役割を果たす。本発明の光反射フィルムの高屈折率層に含まれる水溶性無機高分子は、炭素を含まず、アルミニウム、ジルコニウム、チタンなどを骨格とした無機高分子である。水溶性無機高分子を媒体に添加し撹拌すると、アニオン化されたカチオン性金属酸化物粒子の表面を取り巻き被覆させることができる。それにより、本発明では、カチオン性金属酸化物粒子を水系媒体中に安定して分散させることができるようになる。
【0043】
このような水溶性無機高分子としては、好ましくは、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、ポリジルコニアなどが挙げられる。本発明においては、不燃性を付与する効果の高く、屈折率が比較的高いポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウムを特に望ましく用いることができる。また、ポリ塩化アルミニウムの組成は塩素の含有量が異なる物も任意に選択して使用する事ができる。例をあげると組成式としてAl(OH)Cl、Al(OH)Clなどが市販されている。本発明においては、より酸性度の高いAl(OH)Clが空隙率を下げる効果が高く好ましい。
【0044】
これらの水溶性無機高分子は、市販品としては、例えば多木化学社製のタンホワイト、タキバイン#1000、タキバイン#1500等のポリ塩化アルミニウム、浅田化学社製のPaHo(組成式(Al(OH)・AlCln)等のポリ水酸化アルミニウム、第一希元素化学社製ジルコゾールZC−2等のポリジルコニアを容易に入手し使用する事ができる。
【0045】
これらの水溶性無機高分子は液体であり、かつ、水および水溶性高分子と均一に混合するために塗膜の濁度を上げることがなく好ましく用いる事ができる。無機高分子は特定のpH領域で、白濁析出する場合があり、塗布液はそれぞれの水溶性無機高分子の安定な領域に調整されていることが望ましい。これらの水溶性無機高分子の高屈折率層中の含有量は、0.1質量%〜25質量%が望ましく、より望ましくは5質量%〜15質量%である。この範囲であれば、十分な強度、及びフィルムの分散安定性を両立する事ができる。この含有量は、後述する高屈折率層塗布液の含有量がほぼそのまま高屈折率層中の含有量に対応する。
【0046】
(金属酸化物粒子)
本発明に係る高屈折率層に用いられる金属酸化物粒子は、高屈折率を示し、高屈折率層の機能の中心的な役割を果たす。このような金属酸化物粒子としては、屈折率が2.0以上で、体積平均粒径が100nm以下の金属酸化物粒子を用いることが好ましく、かつ、酸性の塗布液中ではカチオン性を示す。本発明では、金属酸化物粒子は、例えば、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化チタン等を挙げることができるが、特に、ルチル型酸化チタン粒子を用いることが好ましい。
【0047】
本発明において、高屈折率層中における金属酸化物の含有量としては、高屈折率層全質量の30質量%以上、90質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは、50質量%以上、80質量%以下である。この含有量は、高屈折率層塗布液中に含まれる金属酸化物粒子がそのまま高屈折率層中に存在したものである。
【0048】
本発明においては、金属酸化物粒子が、体積平均粒径が100nm以下のルチル型(正方晶形)の酸化チタン粒子であることが好ましい。さらに、4nm以上、50nm以下であることがより好ましく、更に好ましくは4nm以上、40nm以下である。体積平均粒径が100nm以下であれば、ヘイズが少なく可視光透過性に優れる観点で好ましい。体積平均粒径が100nmを超える酸化チタン粒子は、本発明に限らず高屈折率層に用いるには適正なものといえない。
【0049】
本発明に係る金属酸化物粒子の体積平均粒径とは、粒子そのものあるいは屈折率層の断面や表面に現れた粒子を電子顕微鏡で観察し、1,000個の任意の粒子の粒径を測定して求める。それぞれd、d・・・d・・・dの粒径を持つ粒子がそれぞれn、n・・・n・・・n個存在する金属酸化物粒子の集団において、体積をvとした場合に、体積平均粒径m={Σ(v・d)}/{Σ(v)}で表される体積で重み付けされた平均粒径である。
【0050】
さらに、本発明に係る金属酸化物粒子は、単分散であることが好ましい。ここでいう単分散とは、下記式で求められる単分散度が40%以下をいう。更に好ましくは30%以下であり、特に好ましくは0.1〜20%となる粒子である。
【0051】
単分散度=(粒径の標準偏差)/(粒径の平均値)×100
ここでいう粒径は、上記の方法で測定した体積平均粒径である。
【0052】
(アニオン系分散剤)
本発明においては、上記の金属酸化物粒子は、塗布液中でアニオン化されているために、アニオン系分散剤が周囲に存在する。アニオン性分散剤は、水系媒体中でカチオン性の金属酸化物粒子表面と引き合うことで自然に取り囲むため、特に制限はなく、金属酸化物粒子の表面にアニオン性を付与し分散を安定化するものであれば各種のものを使用できる。本発明におけるアニオン性分散剤は、水中に溶解した時に陰イオンに電離するものでありポリカルボン酸系、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合系、アルキルスルホン酸系、ポリリン酸塩系などが市販されている。より詳細には、例えば、N−アシル−N−アルキルタウリン塩、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等を挙げることができる。市販品としては、サンノプコ社製ノプコパース5600、ライオン株式会社製リボタックTE、第一工業製薬社製ネオゲン、第一工業製薬社製ハイテノールが挙げられる。これらのアニオン性分散剤は、単独でも、二種以上を混合して使用してもよい。
【0053】
〔低屈折率層〕
本発明の光反射フィルムは、前述の高屈折率層よりも低い屈折率を示す低屈折率層を有する。低屈折率層は、屈折率が1.6以下であることが好ましく、さらには、1.10〜1.60、1.30〜1.50であることが好ましい。
【0054】
本発明に係る低屈折率層は、水溶性高分子を含む。水溶性高分子としては、上記の高屈折率層に用いられる水溶性高分子と同様のものを用いることができる。また、低屈折率層が上記の好ましい屈折率を示すものであれば、低屈折率層は水溶性高分子だけで構成されていてもよく、さらに金属酸化物粒子を含有していてもよい。
【0055】
低屈折率層が金属酸化物粒子を含有する場合は、上記の屈折率を示すものであれば特に制限はなく使用できるが、二酸化ケイ素、MgF等を好ましく使用することができる。このうち、二酸化ケイ素を用いることがより好ましく、コロイダルシリカゾルを用いることが特に好ましい。金属酸化物粒子を含有させている場合は、表面を無機高分子で被覆することも可能である。金属酸化物粒子は、その平均粒径が100nm以下であることが好ましい。一次粒子の状態で分散された二酸化ケイ素の一次粒子の平均粒径(塗布する前の分散液状態での粒径)は、20nm以下のものが好ましく、より好ましくは10nm以下である。また二次粒子の平均粒径としては、30nm以下であることが、ヘイズが少なく可視光透過性に優れる観点で好ましい。
【0056】
金属酸化物の平均粒径は、粒子そのものあるいは屈折率層の断面や表面に現れた粒子を電子顕微鏡で観察し、1,000個の任意の粒子の粒径を測定し、その単純平均値(個数平均)として求められる。ここで個々の粒子の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定したときの直径で表したものである。
【0057】
低屈折率層中の水溶性高分子の含有量、および、金属酸化物粒子が含まれる場合のその含有量については、低屈折率層塗布液中に含まれる含有量がほぼそのまま低屈折率層中の含有量として含まれる。
【0058】
また、光反射フィルムの不燃性向上という観点からは、所望の屈折率および屈折率差を維持できる範囲で、低屈折率層にも水溶性無機高分子を含有することが好ましい。低屈折率層に含有させる水溶性無機高分子は、高屈折率層に含まれるものと同一でも異なっていてもよい。水溶性無機高分子の含有量は、低屈折率層塗布液中の含有量がほぼそのまま低屈折率層中に含まれる。
【0059】
高屈折率層と低屈折率層は、これらの間に明確な界面をもっていても、徐々に変化していてもよい。界面が徐々に変化している場合には、それぞれの層が混合し屈折率が交互に連続的に変化する構造の中で、最大屈折率−最小屈折率=Δnとした場合、2層間の最小屈折率+Δn/2の地点を層界面とみなす。このような場合の各層の屈折率は、EDX等で各層を構成する金属酸化物の存在率を測定し、層内各部位での屈折率を求め、求めた屈折率の平均値を採用することも可能である。
【0060】
〔その他の添加剤〕
本発明に係る高屈折率層および低屈折率層には、必要に応じて以下のような各種添加剤を用いることができる。
【0061】
(エマルジョン樹脂)
本発明においては、本発明に係る高屈折率層または前記低屈折率層が、更にエマルジョン樹脂を含有することが好ましい。乾燥時のひび割れ防止のためである。本発明でいうエマルジョン樹脂とは、水系媒体中に微細な、例えば、平均粒径が0.01〜2.0μm程度の樹脂粒子がエマルジョン状態で分散されている樹脂で、油溶性のモノマーを、高分子分散剤を用いてエマルジョン重合して得られる。
【0062】
エマルジョンの重合時に使用される分散剤としては、一般的には、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジエチルアミン、エチレンジアミン、4級アンモニウム塩のような低分子の分散剤の他に、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエキシエチレンラウリル酸エーテル、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドンのような高分子分散剤が挙げられる。
【0063】
また、水酸基を含む高分子分散剤も使用することができる。分散剤の種類によって、得られるエマルジョン樹脂のポリマー成分に基本的な違いは見られないが、水酸基を有する高分子分散剤を用いてエマルジョン重合すると、微細な微粒子の少なくとも表面に水酸基の存在が推定され、他の分散剤を用いて重合したエマルジョン樹脂とはエマルジョンの化学的、物理的性質が異なる。水酸基を含む高分子分散剤とは、重量平均分子量が10000以上の高分子の分散剤で、側鎖または末端に水酸基が置換されたものが好ましく、例えばポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミドのようなアクリル系の高分子で2−エチルヘキシルアクリレートが共重合されたもの、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールのようなポリエーテル、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。
【0064】
高分子分散剤として使用されるポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、カチオン変性したポリビニルアルコールやカルボキシル基のようなアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール、シリル基を有するシリル変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。ポリビニルアルコールは、平均重合度が5000以内であると、エマルジョン樹脂の粘度が高くなく、製造時に取り扱いやすい。したがって、平均重合度は300〜5000のものが好ましく、1500〜5000のものがより好ましく、3000〜4500のものが特に好ましい。ポリビニルアルコールのケン化度は70〜100モル%のものが好ましく、80〜99.5モル%のものがより好ましい。
【0065】
添加剤としてポリビニルアルコール等の本発明の高屈折率層または低屈折率層中の水溶性高分子と同様の物質を用いる場合には、水溶性高分子の含有量は、同様の物質の添加剤を含んだ量を意味する。
【0066】
上記の高分子分散剤で乳化重合される樹脂としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニル系化合物、スチレン系化合物といったエチレン系単量体、ブタジエン、イソプレンといったジエン系化合物の単独重合体または共重合体が挙げられ、例えばアクリル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂等が挙げられる。
【0067】
(各屈折率層のその他の添加剤)
本発明に係る高屈折率層と低屈折率層に適用可能な各種の添加剤を以下に列挙する。例えば、特開昭57−74193号公報、同57−87988号公報及び同62−261476号公報に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号、同57−87989号公報、同60−72785号公報、同61−146591号公報、特開平1−95091号公報及び同3−13376号公報等に記載されている退色防止剤、アニオン、カチオンまたはノニオンの各種界面活性剤、特開昭59−42993号公報、同59−52689号公報、同62−280069号公報、同61−242871号公報および特開平4−219266号公報等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、ジエチレングリコール等の潤滑剤、防腐剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有させることもできる。上記の添加剤は、各屈折率層塗布液中に0.01質量%〜10質量%で含まれ得る。
【0068】
〔樹脂基材〕
本発明の光反射フィルムに適用する樹脂基材としては、フィルム支持体であることが好ましく、フィルム支持体は、透明であっても不透明であってもよく、種々の樹脂フィルムを用いることができる。好ましくは、例えば、ポリオレフィンフィルム(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリ塩化ビニル、3酢酸セルロース等を用いることができ、好ましくはポリエステルフィルムである。ポリエステルフィルム(以降ポリエステルと称す)としては、特に限定されるものではないが、ジカルボン酸成分とジオール成分を主要な構成成分とするフィルム形成性を有するポリエステルであることが好ましい。主要な構成成分のジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルチオエーテルジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸などを挙げることができる。また、ジオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビスフェノールフルオレンジヒドロキシエチルエーテル、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ハイドロキノン、シクロヘキサンジオールなどを挙げることができる。これらを主要な構成成分とするポリエステルの中でも透明性、機械的強度、寸法安定性などの点から、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸や2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジオール成分として、エチレングリコールや1,4−シクロヘキサンジメタノールを主要な構成成分とするポリエステルが好ましい。中でも、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートを主要な構成成分とするポリエステルや、テレフタル酸と2,6−ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールからなる共重合ポリエステル、およびこれらのポリエステルの二種以上の混合物を主要な構成成分とするポリエステルが好ましい。
【0069】
本発明に係る樹脂基材の厚みは、10〜300μmであることが好ましく、より好ましくは20〜150μmである。また、本発明の樹脂基材は、2枚以上を重ねたものであっても良く、この場合、その種類が同じでも異なってもよい。
【0070】
(光反射フィルムの構造)
本発明の光反射フィルムにおいて、特定波長領域の反射率は、隣接する2層(高屈折率層および低屈折率層)の屈折率差と積層数で決まり、屈折率の差が大きいほど、少ない層数で同じ反射率を得られる。この屈折率差と必要な層数については、市販の光学設計ソフトを用いて計算することができる。例えば、赤外反射率90%以上を得るためには、2層の屈折率差が0.1より小さいと、20層以上の積層が必要になり、生産性が低下するだけでなく、積層界面での散乱が大きくなり、透明性が低下し、また故障なく製造することも非常に困難になる。屈折率差は0.1以上が好ましく、0.2以上であることが好ましく、さらに好ましくは0.3以上、もっとも好ましくは0.4以上である。反射率の向上と層数を少なくする観点からは、屈折率差に上限はないが、実質的には1.40程度が限界である。同様の観点から、好ましい総層数の範囲としては、100層以下、すなわち50ユニット以下であり、より好ましくは40層(20ユニット)以下であり、さらに好ましくは20層(10ユニット)以下である。
【0071】
また、本発明の光反射フィルムにおいては、高屈折率層と低屈折率層を上記のようにそれぞれ複数層有する場合には、全てのユニットが本発明で規定する要件を満たすことが好ましい。ただし、最表層や最下層に関しては、本発明で規定する要件外の構成であっても良い。
【0072】
本発明において、高屈折率層、低屈折率層の屈折率は、下記の方法に従って求めることができる。
【0073】
基材上に屈折率を測定する各屈折率層を単層で塗設したサンプルを作製し、このサンプルを10cm×10cmに断裁した後、下記の方法に従って屈折率を求める。分光光度計として、例えば、U−4000型(日立製作所社製)を用いて、各サンプルの測定面とは反対側の面(裏面)を粗面化処理した後、黒色のスプレーで光吸収処理を行って裏面での光の反射を防止して、5度正反射の条件にて可視光領域(400nm〜700nm)の反射率を25点測定して平均値を求め、その測定結果より平均屈折率を求める。
【0074】
(近赤外反射フィルムとしての特性)
以下、本発明の光反射フィルムの一つの用途である近赤外反射フィルムを例にとり、詳細に説明する。本発明の光反射フィルムを遮熱フィルムに用いる場合は、近赤外光反射フィルムとすることが有効である。
【0075】
本発明の近赤外反射フィルムの光学特性として、上記のユニットを20層程度積層した場合に、JIS R3106−1998で示される可視光領域の透過率が50%以上であり、かつ、波長900nm〜1400nmの領域に反射率50%を超える領域を有するように光学膜厚とユニットとを設計することができる。また、高屈折率層と低屈折率層とを5層塗布した場合には、透過率が60%未満であれば、遮熱フィルムとしての機能を果たすのに実使用上十分である。近赤外透過率が60%以上であると、近赤外反射フィルムとして最終製品にする際に積層数を増やさなければならず、膜物性悪化、機械物性の劣化が生じる場合があるためである。
【0076】
太陽直達光の入射スペクトルのうち赤外波長域が室内温度上昇に関係し、これを遮蔽することで室内温度の上昇を抑えることができる。日本工業規格JIS R3106に記載された重価係数をもとに赤外の最短波長(760nm)から最長波長3200nmまでの累積エネルギー比率をみると、波長760nmから最長波長3200nmまでの赤外全域の総エネルギーを100としたときの、760nmから各波長までの累積エネルギーをみると、760から1300nmのエネルギー合計が赤外域全体の約75%を占めている。従って、1300nmまでの波長領域を遮蔽することが熱線遮蔽による省エネルギー効果の効率がよい。
【0077】
この近赤外光域(760〜1300nm)の反射率を最大ピーク値で約80%以上にすると、体感温度の低下が官能評価により得られる。たとえば8月の午前中の南東方法を向く窓際での体感温度が、近赤外光域の反射率を最大ピーク値で約80%にまで遮蔽したときに明確な差が観察されている。本発明の光反射フィルムはこのような場合の近赤外反射フィルムとしても用いうる。
【0078】
〔膜設計〕
光反射フィルムにおいては、隣接した層界面での反射は、層間の屈折率比に依存するので、この屈折率比が大きいほど、反射率が高まる。また、単層膜でみたとき層表面における反射光と、層底部における反射光の光路差を、n・d=波長/4、で表される関係にすると位相差により反射光を強めあうよう制御でき、反射率を上げることができる。ここで、nは屈折率、dは層の物理膜厚、n・dは光学膜厚である。この光路差を利用することで、反射を制御できる。この関係を利用して、各層の屈折率と膜厚を制御して、可視光や、近赤外光の反射を制御する。即ち、各層の屈折率、各層の膜厚、各層の積層のさせ方で、特定波長領域の反射率を高くすることができる。
【0079】
本発明の光反射フィルムは反射率を高める特定波長領域を変えることにより、可視光反射フィルムや近赤外光反射フィルムとすることができる。即ち、反射率を高める特定波長領域を可視光領域に設定すれば可視光反射フィルムとなり、近赤外領域に設定すれば近赤外光反射フィルムとなる。
【0080】
特に、本発明の光反射フィルムを遮熱フィルムに用いる場合は、上記したように近赤外光反射フィルムとすればよく、JIS R3106−1998で示される条件を満たすように光学膜厚とユニットを設計することが好ましい。
【0081】
本発明の光反射フィルムが、このような遮熱フィルムとしての機能を発現するのに必要となる多層膜構造を光学シミュレーション(FTG Software Associates Film DESIGN Version 2.23.3700)で求めた結果、屈折率は1.9以上、望ましくは2.0以上の高屈折率層を利用し、6層以上積層した場合に優れた特性が得られることがわかっている。例えば、高屈折率層と低屈折率層(屈折率=1.35)を交互に8層積層したモデルのシミュレーション結果をみると、高屈折率層の屈折率が1.8では反射率が70%にも達しないが、1.9になると約80%の反射率が得られる。また、高屈折率層(屈折率=2.2)と低屈折率層(屈折率=1.35)を交互に積層したモデルでは、積層数が4では反射率が60%にも達していないが、6層になると約80%の反射率が得られる。
【0082】
〔光反射フィルムの製造方法〕
本発明の光反射フィルムの製造方法においては、樹脂機材上に、高屈折率層と低屈折率層とから構成されるユニットを少なくとも一つ形成し、高屈折率層が、水溶性高分子および前記アニオン化されたカチオン性金属酸化物粒子の表面を水溶性無機高分子で被覆した粒子を水系媒体中に含む高屈折率層塗布液を用いて形成される。ここで、本発明におけるカチオン性金属酸化物粒子とは、水系媒体中で表面がプラスの電荷を帯びる性質をもった金属酸化物粒子をいう。
【0083】
本発明の製造方法によれば、塗布方式で光反射フィルムを製造できるため、従来のドライ製膜方法と比較して、製造コストが大幅に安く、大面積化が可能な光反射フィルムを実現することができる。それだけではなく、水系媒体を用いた高屈折率層塗布液を使用することによって環境への影響が少ないものとなる。
【0084】
本発明の製造方法の特に好ましい実施形態は、カチオン性金属酸化物粒子をアニオン化し、アニオン化されたカチオン性金属酸化物粒子の表面を前記水溶性無機高分子で被覆する工程、前記水溶性高分子および前記アニオン化されたカチオン性金属酸化物粒子の表面を水溶性無機高分子で被覆した粒子を水系媒体中に含む高屈折率層塗布液を調製する工程、水系媒体を用いた低屈折率層塗布液を調製する工程、および前記高屈折率層塗布液と前記低屈折率層塗布液とを同時重層塗布する工程を含むことを特徴とする。本発明では、高屈折率層と低屈折率層とを水系同時重層塗布により形成することにより、さらに製造コストを下げることができ、作業時間も短縮できる。したがって、この方法は光反射フィルムの工業生産に非常に有利である。以下、特に本実施形態を取り上げて説明する。
【0085】
本発明の方法では、初めに、カチオン性金属酸化物粒子をアニオン化し、アニオン化されたカチオン性金属酸化物粒子の表面を水溶性無機高分子で被覆することができる。アニオン化されたとは、水系媒体中で表面がプラスに帯電しているカチオン性金属酸化物粒子の表面の少なくとも一部をアニオン性の分散剤が覆うように取り囲み、金属酸化物粒子が全体としてマイナスに帯電する、すなわちアニオン性の粒子として振舞うようになっている状態を言う。本発明で用いうるカチオン性金属酸化物粒子としては、上記したものを使用できるが、それらの金属酸化物粒子をゾルとして用いることが好適である。金属酸化物粒子としては特にルチル型酸化チタンが好ましく、一例として、以下、ルチル型酸化チタンゾルの製造方法を説明する。
【0086】
(ルチル型酸化チタンゾルの製造方法)
本発明で用いることのできるルチル型酸化チタンゾルの調製方法としては、例えば、特開昭63−17221号公報、特開平7−819号公報、特開平9−165218号公報、特開平11−43327号公報、特開昭63−17221号公報、特開平7−819号公報、特開平9−165218号公報、特開平11−43327号公報等に記載された事項を参照にすることができる。
【0087】
また、本発明に係るルチル型酸化チタンのその他の製造方法については、例えば、「酸化チタン−物性と応用技術」清野学 p255〜258(2000年)技報堂出版株式会社、或いは国際公開第2007/039953号明細書の段落番号0011〜0023の記載の工程(2)の方法を参考にすることができる。
【0088】
上記工程(2)による製造方法とは、二酸化チタン水和物をアルカリ金属の水酸化物又はアルカリ土類金属の水酸化物からなる群から選択される、少なくとも1種の塩基性化合物で処理する工程の後に、得られた二酸化チタン分散物を、カルボン酸基含有化合物及び無機酸で処理する工程を実施するものである。本発明では、工程(2)により得られた、無機酸によりpHを1.0〜3.0に調整したルチル型酸化チタンの水系ゾルを好ましく用いることができる。また、ルチル型酸化チタンは体積平均粒径が100nm以下が好ましく、チタン粒子のZ電位が正である水系の酸化チタンゾルとして用いることが好ましい。
【0089】
(表面被覆工程)
次いで、本発明の方法では、上記の方法などにより得られた金属酸化物粒子を用いて、アニオン化されたカチオン性金属酸化物粒子の表面を水溶性無機高分子で被覆した粒子を以下のように調製する。すなわち、前記カチオン性金属酸化物粒子をアニオン化し、アニオン化されたカチオン性金属酸化物粒子の表面を前記水溶性無機高分子で被覆する工程を実施する。カチオン性金属酸化物粒子、アニオン性分散剤および水溶性無機高分子については、上記したものを使用することができる。
【0090】
まず、カチオン性金属酸化物粒子をアニオン化するためには、まず、カチオン性金属酸化物粒子を水系媒体と混合しスラリーとする。ここで、水系媒体とは、水を主体とする媒体を意味し、不純物程度の濃度、すなわち10質量%以下の濃度で、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコールやその他の不純物を含んでいてもよい。水系媒体としては、好ましくは純水である。カチオン性金属酸化物粒子の濃度は、初期濃度として、水系媒体中1〜30質量%が望ましく、より望ましくは5〜20質量%である。このスラリーにアニオン性分散剤を徐々に滴化し、分散を行う。分散時の温度は15〜30℃の間が望ましい。過分散による粒子の凝集を防ぐため、分散粒子径を確認しながらバッチ式での分散が望ましい。このようにして、カチオン性金属酸化物粒子は、アニオン性分散剤により、水系媒体中でアニオン化されて分散される。
【0091】
アニオン性分散剤はカチオン性金属酸化物粒子の全質量に対して0.1〜30質量%で用いる事が望ましく、より好ましくは1%〜20質量%である。アニオン性分散剤をこの範囲で用いることにより、アニオン性分散剤と金属酸化物粒子とが沈降したり凝集したりすることなく、水系媒体中でアニオン化された金属酸化物粒子の安定した分散状態を維持することができる。カチオン性金属酸化物粒子およびアニオン性分散剤を水系媒体中に分散させる際は、分散後の分散液のpHが、pH1.5〜6となるように、予め酸などで調整しておくことが望ましい。分散液のpHは、より望ましくはpH2〜5である。
【0092】
分散方法としては、ビーズミル、超音波分散機、高圧分散機など一般的な装置を任意に選択し用いることができる。なかでもビーズミルは、分散時に使用するビーズが摩擦により削れ汚染する場合があることから、超音波分散機、高圧分散機を使うことがより望ましい。分散到達粒子径は、フィルム化した場合に散乱の原因になることがない粒子径であることが望ましく、体積平均粒子径として10〜100nmであることが好ましく、より好ましくは10〜50nmである。
【0093】
次いで、分散された、アニオン化された金属酸化物粒子への水溶性無機高分子の表面被覆工程としては、アニオン化されたカチオン性金属酸化物分散液中に、水溶性無機高分子を添加し、撹拌していくことにより、水溶性無機高分子でカチオン性金属酸化物表面を被覆する。撹拌には特に制限はなく、水溶性無機高分子が目視で均一に分散した状態になるまで撹拌を続ければよい。典型的には、30〜50℃で、超音波分散機または撹拌翼により、1〜30分、分散液を撹拌すればよい。また、カチオン性金属酸化物粒子の体積に対して、水溶性無機高分子の体積が4%以上15%が好ましい。
【0094】
水溶性無機高分子は、有機高分子にはない極めて高い電荷密度を有しており、高い分散安定性をアニオン化されたカチオン性金属酸化物表面に付与する事ができる。これにより、光反射フィルム製造の際の、高屈折率層塗布液を塗布した後の、乾燥過程における金属酸化物粒子の凝集の抑制、さらに水溶性高分子との混合におけるゲル化を抑制することができる。
【0095】
(高屈折率層塗布液および低屈折率塗布液の調製)
高屈折率層塗布液を調製するには、特に制限はなく、水溶性高分子、上記のように準備した表面が水溶性無機高分子で被覆されたアニオン化されたカチオン性金属酸化物粒子、および必要に応じてその他の添加剤を、水系媒体中に投入し、適宜撹拌すればよい。好ましくは、最初に、表面が水溶性無機高分子で被覆されたアニオン化されたカチオン性金属酸化物粒子を準備し、その後その中に水溶性高分子および水系媒体を加えて、60〜120分撹拌する。最後に添加剤を投入して撹拌し、塗布液を完成させることができる。
【0096】
低屈折率層塗布液の調製についても同様であり、水系媒体中に水溶性高分子等の低屈折率層を形成する材料を投入し、適宜撹拌すればよい。好ましくは、金属酸化物粒子を賜与する場合には、金属酸化物粒子ゾルを準備し、そこに水溶性高分子および水系媒体を投入して30〜50℃で1〜20分撹拌し、さらに添加剤を加えて塗布液とすることができる。低屈折率層に水溶性無機高分子を含有させる場合には、金属酸化物粒子ゾルに水溶性無機高分子を投入し、そこに水溶性高分子および水系媒体を投入して30〜50℃で1〜20分撹拌し、さらに添加剤を加えて塗布液とすることができる。ここで、水系媒体とは、水を主体とする媒体を意味し、不純物程度の濃度、すなわち10質量%以下の濃度で、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコールやその他の不純物を含んでいてもよい。水系媒体としては、好ましくは純水である。
【0097】
また、高屈折率層塗布液および低屈折率層塗布液双方において、全成分(固形分)の合計の濃度が、それぞれ、1vol%〜5vol%であることが好ましい。高屈折率層塗布液および低屈折率層塗布液中の全固形分の合計の濃度が上記の範囲であると、塗膜を所望の厚みで形成でき、かつ、後述する水系同時重層塗布に好適な粘度の塗布液となり好ましい。
【0098】
高屈折率層塗布液においては、塗布液中に上記の濃度で含まれる全固形分を100vol%としたときに、カチオン性金属酸化物粒子の含有量は30〜70vol%が好ましく、より好ましくは30〜50vol%である。さらに、水溶性無機高分子の含有量は、塗布液に含まれるカチオン性金属酸化物粒子の全体積を100vol%としたときに、50〜100vol%であることが好ましい。
【0099】
低屈折率層塗布液に金属酸化物粒子が含まれる場合には、金属酸化物粒子の含有量は、
塗布液中に含まれる全固形分を100vol%としたときに、30〜70vol%が好ましい。さらに、低屈折率層に水溶性無機高分子が含まれる場合には、水溶性無機高分子の含有量は、塗布液に含まれる金属酸化物粒子の全体積を100vol%としたときに、0.1〜20vol%が好ましい。金属酸化物粒子の含有量が上記の範囲であれば、低屈折率層として所望の屈折率を実現でき、水溶性無機高分子の含有量が上記の範囲であれば、低屈折率層にも不燃性を付与し得る。
【0100】
(水系同時重層塗布)
本発明の光反射フィルムの製造方法では、高屈折率層と低屈折率層とが交互に積層するように、同時重層塗布し、乾燥して積層体を形成することが好ましい。水系同時重層塗布とは、高屈折率層塗布液および低屈折率層塗布液として水系媒体を用いた塗布液を使用し、かつ、塗布液の吐出口が複数好ましくは所望の積層数分、少しずつ位置をずらして設けられた塗布装置を用いることにより、基材に対して塗布装置を移動させながら、所望の積層数を一度に重ねて塗布する方法である。その際、塗布液の粘度、吐出口の大きさ、塗布液の流出速度などを適当に制御することにより、各層の塗布液が実質的に混じり合わず、同時に複数層が重なった状態で塗布され形成される。この方法によれば、従来のドライ製膜方法または単層の塗布および乾燥工程を積層数分繰り返す方法に比較して、大幅な製造時間の短縮および製造コストの削減が可能になる。
【0101】
塗布方式としては、例えば、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法、あるいは米国特許第2,761,419号明細書、同第2,761,791号明細書に記載のホッパーを使用するスライドビード塗布方法、エクストルージョンコート法等が好ましく用いられる。このうち、同時重層塗布を実施するためには、特にスライドビード塗布方法を用いることが好ましい。
【0102】
同時重層塗布を行う際は、塗布後の乾燥段階で高屈折率層塗布液と低屈折率層塗布液とが混ざらないように、高屈折率層塗布液と低屈折率層塗布液とを30℃以上、好ましくは45〜40℃に加温して粘度が低い状態で塗布した後、15℃程度の冷風を当てると急激に増粘し固まるように液物性を調整することが好ましい。したがって、高屈折率層塗布液と低屈折率層塗布液の塗布時の粘度としては、45〜40℃で、それぞれ20〜500mPa・sの範囲が好ましく、さらに好ましくは50〜300mPa・sの範囲である。また、塗布液の15℃における粘度としては、100mPa・s以上が好ましく、100〜30,000mPa・sがより好ましく、さらに好ましくは3,000〜30,000mPa・sである。
【0103】
水溶性高分子として好ましいポリビニルアルコール等、水酸基を持つ水溶性高分子は、酸性下でホウ酸を添加する事によって40℃以上では流動性を持ち、15℃以下ではゲル化する性質を付与する事ができる。これにより、基材上に高温で塗布液を同時重層塗布し、冷却しゲル化させ乾燥する事で乾燥時の高屈折率層と低屈折率層の混合を抑制し、同時重層塗布を可能とすることができる。高屈折率層用塗布液および低屈折率層用塗布液の塗布厚は、上記で示したような好ましい乾燥時の厚みとなるように塗布すればよい。
【0104】
(乾燥工程)
上記のように高屈折率層および低屈折率層を塗布により形成した後は、乾燥工程を実施して、光反射フィルムを完成させる。乾燥方法は、形成した塗膜の温度を好ましくは1〜15℃に一旦冷却し(セット)、その後10℃以上で乾燥することが好ましい。より好ましい乾燥条件は、湿球温度5〜50℃、膜面温度10〜50℃の範囲の条件で温風乾燥する。また、塗布直後の冷却方式としては、形成された塗膜の均一性向上の観点から、水平セット方式で行うことが好ましい。
【0105】
〔光反射フィルムの応用〕
本発明の光反射フィルムは、光反射体として幅広い分野に応用することができる。例えば、建物の屋外の窓や自動車窓等長期間太陽光に晒らされる設備に貼り合せ、熱線反射効果を付与する熱線反射フィルム等の窓貼用フィルム、農業用ビニールハウス用フィルム等として、主として耐候性を高める目的で用いられる。
【0106】
特に、本発明に係る光反射フィルムが直接もしくは接着剤を介してガラスもしくはガラス代替樹脂基材に貼合されている部材には好適である。
【0107】
接着剤は、窓ガラスなどに貼り合わせたとき、光反射フィルムが日光(熱線)入射面側にあるように設置する。また近赤外反射フィルムを窓ガラスと基材との間に挟持すると、水分等周囲ガスから封止でき耐久性に好ましい。本発明の光反射フィルムを屋外や車の外側(外貼り用)に設置しても環境耐久性があって好ましい。
【0108】
本発明に適用可能な接着剤としては、光硬化性もしくは熱硬化性の樹脂を主成分とする接着剤を用いることができる。
【0109】
接着剤は紫外線に対して耐久性を有するものが好ましく、アクリル系粘着剤またはシリコーン系粘着剤が好ましい。更に粘着特性やコストの観点から、アクリル系粘着剤が好ましい。特に剥離強さの制御が容易なことから、アクリル系粘着剤において、溶剤系及びエマルジョン系の中で溶剤系が好ましい。アクリル溶剤系粘着剤として溶液重合ポリマーを使用する場合、そのモノマーとしては公知のものを使用できる。
【0110】
また、合わせガラスの中間層として用いられるポリビニルブチラール系樹脂、あるいはエチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂を用いてもよい。具体的には可塑性ポリビニルブチラール(積水化学工業社製、三菱モンサント社製等)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(デュポン社製、武田薬品工業社製、デュラミン)、変性エチレン−酢酸ビニル共重合体(東ソー社製、メルセンG)等である。なお、接着層には紫外線吸収剤、抗酸化剤、帯電防止剤、熱安定剤、滑剤、充填剤、着色、接着調整剤等を適宜添加配合してもよい。
【実施例】
【0111】
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0112】
《各屈折率層用塗布液の調製》
(高屈折率層塗布液1の調製)実施例1、2
20質量%二酸化チタンゾル(体積平均粒子径35nm、ルチル型二酸化チタン)80質量部にノプコパース5600(アニオン性分散剤、サンノプコ社製)3質量部を加え、25℃で超音波分散を3分間行った。さらにこの溶液を撹拌しながら40℃まで昇温した後、タンホワイト(ポリ塩化アルミニウム 組成式:Al(OH)Cl 多木化学(株)社製)3質量部を添加して超音波分散を10分間行った。次いで、3%ホウ酸水溶液20質量部を添加し、ポリビニルアルコール(PVA235 重量平均分子量15万 (株)クラレ社製)の5質量%水溶液100質量部と純水150質量部を添加して90分撹拌した後、5質量%界面活性剤水溶液(コータミン24P 花王(株)社製)0.45質量部を添加して高屈折率層塗布液1を調製した。また、高屈折率層塗布液1のpHは5.1であった。高屈折率層塗布液1中、全固形分の濃度は3.3vol%であり、全固形分の体積を100vol%としたときに、カチオン性金属酸化物粒子の含有量は33.3vol%であった。カチオン性金属酸化物粒子の体積を100vol%としたときに、水溶性無機高分子は、58vol%であった。
【0113】
(高屈折率層塗布液2の調製)実施例3
20質量%二酸化チタンゾル(体積平均粒子径35nm、ルチル型二酸化チタン)80質量部にノプコパース5600(アニオン性分散剤、サンノプコ社製)3質量部を加え25℃で超音波分散を3分間行った。さらにこの溶液を撹拌しながら40℃まで昇温した後、タンホワイト(ポリ塩化アルミニウム 組成式:Al(OH)Cl 多木化学(株)社製)5.2質量部を添加して超音波分散を10分間行った。次いで、3%ホウ酸水溶液20質量部を添加し、ポリビニルアルコール(PVA235 重量平均分子量15万 (株)クラレ社製)の5質量%水溶液100質量部と純水150質量部を添加して90分撹拌した後、5質量%界面活性剤水溶液(コータミン24P 花王(株)社製)0.45質量部を添加して高屈折率層塗布液2を調製した。また、高屈折率層塗布液2のpHは5.1であった。
【0114】
高屈折率層塗布液2中、全固形分の濃度は3.8vol%であり、全固形分の体積を100vol%としたときに、カチオン性金属酸化物粒子の含有量は29.2vol%であった。塗布液中、カチオン性金属酸化物粒子の体積を100vol%としたときに、水溶性無機高分子は、100vol%であった。
【0115】
(高屈折率層塗布液3の調製)実施例4
20質量%二酸化チタンゾル(体積平均粒子径35nm、ルチル型二酸化チタン)80質量部にノプコパース5600(アニオン性分散剤、サンノプコ社製)3質量部を加え25℃で超音波分散を3分間行った。さらにこの溶液を撹拌しながら40℃まで昇温した後、タンホワイト(ポリ塩化アルミニウム 組成式:Al(OH)Cl 多木化学(株)社製)3質量部を添加して超音波分散を10分間行った。次いで、3%ホウ酸水溶液20質量部を添加し、PVP−K90(PVP (株)日本合成化学製、重量平均分子量630000)の5質量%水溶液100質量部と純水150質量部を添加して90分撹拌した後、5質量%界面活性剤水溶液(コータミン24P 花王(株)社製)0.45質量部を添加して高屈折率層塗布液3を調製した。また、高屈折率層塗布液3のpHは5.1であった。
【0116】
高屈折率層塗布液3中、全固形分の濃度は3.3vol%であり、全固形分の体積を100vol%としたときに、カチオン性金属酸化物粒子の含有量は33.3vol%であった。塗布液中、カチオン性金属酸化物粒子の体積を100vol%としたときに、水溶性無機高分子は、58vol%であった。
【0117】
(高屈折率層塗布液4の調製)実施例5
20質量%二酸化チタンゾル(体積平均粒子径35nm、ルチル型二酸化チタン)80質量部にノプコパース5600(アニオン性分散剤、サンノプコ社製)3質量部を加え25℃で超音波分散を3分間行った。さらにこの溶液を撹拌しながら40℃まで昇温した後、タンホワイト(ポリ塩化アルミニウム 組成式:Al(OH)Cl 多木化学(株)社製)3質量部を添加して超音波分散を10分間行った。次いで、3%ホウ酸水溶液20質量部を添加し、酸処理ゼラチン(ゼラチン 重量平均分子量13万 )の5質量%水溶液100質量部と純水150質量部を添加して90分撹拌した後、5質量%界面活性剤水溶液(コータミン24P 花王(株)社製)0.45質量部を添加して高屈折率層塗布液4を調製した。また、高屈折率層塗布液4のpHは5.1であった。
【0118】
高屈折率層塗布液4中、全固形分の濃度は3.3vol%であり、全固形分の体積を100vol%としたときに、カチオン性金属酸化物粒子の含有量は33.3vol%であった。塗布液中、カチオン性金属酸化物粒子の体積を100vol%としたときに、水溶性無機高分子は、58vol%であった。
【0119】
(高屈折率層塗布液5の調製)実施例6
20質量%二酸化チタンゾル(体積平均粒子径35nm、ルチル型二酸化チタン)80質量部にノプコパース5600(アニオン性分散剤、サンノプコ社製)3質量部を加え25℃で超音波分散を3分間行った。さらにこの溶液を撹拌しながら40℃まで昇温した後、タキバイン#1500(ポリ塩化アルミニウム 組成式:Al(OH)Cl 多木化学(株)社製)3質量部を添加して超音波分散を10分間行った。次いで、3%ホウ酸水溶液20質量部を添加し、ポリビニルアルコール(PVA235 重量平均分子量15万 (株)クラレ社製)の5質量%水溶液100質量部と純水150質量部を添加して90分撹拌した後、5質量%界面活性剤水溶液(コータミン24P 花王(株)社製)0.45質量部を添加して高屈折率層塗布液5を調製した。また、高屈折率層塗布液5のpHは5.1であった。
【0120】
高屈折率層塗布液5中、全固形分の濃度は3.3vol%であり、全固形分の体積を100vol%としたときに、カチオン性金属酸化物粒子の含有量は33.3vol%であった。塗布液中、カチオン性金属酸化物粒子の体積を100vol%としたときに、水溶性無機高分子は、58vol%であった。
【0121】
(高屈折率層塗布液6の調製)実施例7
タンホワイト(ポリ塩化アルミニウム 組成式:Al(OH)Cl 多木化学(株)社製)の代わりにPaHo(ポリ水酸化アルミニウム 組成式:{Al(OH)・AlCl (n=8±1)、浅田工業株式会社 50%濃度)を6質量部使用したほかは高屈折率層用塗布液1と同様にして高屈折率層用塗布液6を調製した。高屈折率層塗布液6のpHは5.1であった。
【0122】
高屈折率層塗布液6中、全固形分の濃度は3.3vol%であり、全固形分の体積を100vol%としたときに、カチオン性金属酸化物粒子の含有量は33.3vol%であった。塗布液中、カチオン性金属酸化物粒子の体積を100vol%としたときに、水溶性無機高分子は、58vol%であった。
【0123】
(高屈折率層塗布液7の調製)実施例8
タンホワイト(ポリ塩化アルミニウム 組成式:Al(OH)Cl 多木化学(株)社製)の代わりにジルコゾールZC−2(第一希元素化学社製)を3質量部使用したほかは高屈折率層用塗布液1と同様にして高屈折率層用塗布液7を調製した。高屈折率層塗布液7のpHは5.1であった。
【0124】
高屈折率層塗布液7中、全固形分の濃度は3.3vol%であり、全固形分の体積を100vol%としたときに、カチオン性金属酸化物粒子の含有量は33.3vol%であった。塗布液中、カチオン性金属酸化物粒子の体積を100vol%としたときに、水溶性無機高分子は、58vol%であった。
【0125】
(高屈折率塗布液8の調製)実施例9
20質量%二酸化チタンゾルの代わりに20%酸化ジルコニウムゾルを使用したほかは高屈折率層用塗布液1と同様にして高屈折率層用塗布液8を調製した。また、高屈折率層塗布液8のpHは5.1であった。
【0126】
高屈折率層塗布液8中、全固形分の濃度は3.3vol%であり、全固形分の体積を100vol%としたときに、カチオン性金属酸化物粒子の含有量は33.3vol%であった。塗布液中、カチオン性金属酸化物粒子の体積を100vol%としたときに、水溶性無機高分子は、58vol%であった。
【0127】
(高屈折率層用塗布液1〜8の評価)
高屈折率層塗布液1〜8の金属酸化物粒子のZ電位測定により、金属酸化物粒子表面の電荷が、水溶性無機高分子を添加する前と添加した後とで反転することを確認した。アニオン性分散剤を添加した後に水溶性無機高分子がアニオン化された金属酸化物粒子を被覆すると、水溶性無機高分子がカチオン性を示すため、Z電位の反転により被覆が確認されたものである。さらに、塗布液中の金属酸化物粒子のTEM−EDX観察により、水溶性無機高分子が金属酸化物粒子表面を被覆していることを確認した。TEM−EDX分析装置としては、日立製作所社製透過型電子顕微鏡HT7700に対して、EDAX社製EDX Apollo40を搭載した装置を使用した。
【0128】
(高屈折率塗布液9の調製)比較例1
20質量%二酸化チタンゾル(体積平均粒子径35nm、ルチル型二酸化チタン)80質量部に3%ホウ酸水溶液20質量部を添加し、ポリビニルアルコール(PVA235 重量平均分子量15万 (株)クラレ社製)の5質量%水溶液100質量部と純水150質量部を添加して90分撹拌した後、5質量%界面活性剤水溶液(コータミン24P 花王(株)社製)0.45質量部を添加して高屈折率層塗布液6を調製した。
【0129】
(高屈折率塗布液10の調製)比較例2
20質量%二酸化チタンゾル(体積平均粒子径35nm、ルチル型二酸化チタン)80質量部にタンホワイト(ポリ塩化アルミニウム 組成式:Al(OH)Cl 多木化学(株)社製)3質量部を添加して超音波分散を10分間行った。次いで、3%ホウ酸水溶液20質量部を添加し、ポリビニルアルコール(PVA235 重量平均分子量15万 (株)クラレ社製)の5質量%水溶液100質量部と純水150質量部を添加して90分撹拌した後、5質量%界面活性剤水溶液(コータミン24P 花王(株)社製)0.45質量部を添加して高屈折率層塗布液7を調製した。
【0130】
(高屈折率層用塗布液9〜10の評価)
高屈折率層用塗布液9〜10では、TEM−EDX観察により、金属酸化物粒子表面がポリ塩化アルミニウムで被覆されていないことを確認した。TEM−EDX装置は上記と同様のものを使用した。
【0131】
(低屈折率層塗布液の調製)
(低屈折率層塗布液1)実施例1〜2、4〜9、比較例1、3
コロイダルシリカ(スノーテックスAK 日産化学工業(株)社製)68質量部及び3%ホウ酸水溶液20質量部を撹拌しながら40℃まで昇温した後、ポリビニルアルコール(PVA235 重量平均分子量15万 (株)クラレ社製)の5質量%水溶液280質量部と純水240質量部を添加して10分間攪拌した後、5質量%界面活性剤水溶液(コータミン24P 花王(株)社製)0.64質量部を添加して低屈折率層塗布液1を調製した。
【0132】
(低屈折率層塗布液2)実施例3、比較例2
コロイダルシリカ(スノーテックスAK 日産化学工業(株)社製)68質量部とタキバイン#1500(ポリ塩化アルミニウム 組成式:Al(OH)Cl 多木化学(株)社製)3質量部及び3%ホウ酸水溶液20質量部を撹拌しながら40℃まで昇温した後、ポリビニルアルコール(PVA235 重量平均分子量15万 (株)クラレ社製)の5質量%水溶液280質量部と純水240質量部を添加して10分間攪拌した後、5質量%界面活性剤水溶液(コータミン24P 花王(株)社製)0.64質量部を添加して低屈折率層塗布液2を調製した。
【0133】
《試料の作製》
(光反射フィルムの作製)
以下の高屈折率層、低屈折率層の形成においては、塗布液の安定性を確認するために、上記のように調製した高屈折率層用塗布液、低屈折率層用塗布液をそれぞれ45℃に保温しながら24時間撹拌保存したあとに用いた。
【0134】
上記の高屈折率層塗布液1〜10および低屈折率層塗布液1〜2を、表1−1に示す組み合わせで、樹脂基材上に、同時重層用スライドコーターを用いて、各層流量を調整し、各層の膜厚を乾燥時200nmに設定し5層同時塗布を行った。5層は、樹脂基材側から高屈折率層、低屈折率層、高屈折率層、低屈折率層、高屈折率層である。同時重層塗布後、冷却、増粘、さらに温風乾燥を行い、光反射フィルム1〜7を作製した。乾燥ゾーンの温度は50℃とし、温風乾燥を行った。冷却ゾーンは5℃の設定で作製を行った。このようにして、光反射フィルム1〜12を製造した。
【0135】
《発熱性試験》
上記のように得られた光反射フィルム1〜12について、輻射電気ヒーターからそれぞれのフィルム表面に50kW/mの輻射熱を照射し、加熱開始後20分間の総発熱量を測定した。加熱開始後20分間の間に、200kW/mを超えた時間を測定した。発熱性試験の結果が8MJ/m以下である場合に不燃性を○とし6NJ/m以下を◎とした、発熱性試験の結果が8MJ/mより大きい場合に不燃性を×とした。測定結果は、下記表1−2に示す。
【0136】
《光反射フィルムの評価》
上記作製した各光反射フィルムについて、下記の特性値の測定及び性能評価を行った。測定結果は、下記表1−2に示す。
【0137】
(高屈折率層の単層屈折率の測定)
基材上に屈折率を測定する対象層(高屈折率層)を単層で塗設したサンプルを作製し、下記の方法に従って、屈折率を求めた。
【0138】
分光光度計として、U−4000型(日立製作所社製)を用いて、各サンプルの測定側の裏面を粗面化処理した後、黒色のスプレーで光吸収処理を行って裏面での光の反射を防止して、5度正反射の条件にて可視光領域(400nm〜700nm)の反射率の測定結果より、屈折率を求めた。
【0139】
(近赤外透過率の測定)
上記分光光度計(積分球使用、日立製作所社製、U−4000型)を用い、各光反射フィルム1〜7の300nm〜2000nmの領域における透過率を測定した。可視光透過率は550nmにおける透過率の値を、近赤外透過率は1200nmにおける透過率の値を用いた。近赤外透過率が60%未満であれば、実使用上十分であるとした。5層塗布の場合に近赤外透過率が60%以上であると、近赤外反射フィルムとして最終製品にする際に積層数を増やさなければならず、膜物性悪化、機械物性の劣化が生じる場合があるためである。
【0140】
(空隙率測定)
Belsorpmini(自動比表面積、細孔分布測定装置 日本ベル社製)を用いて作製したフィルムの空隙率を測定した。空隙率が10%以下であれば、性能の劣化(屈折率の低下および散乱の上昇)が生じていないと判断した。
【0141】
【表1−1】

【0142】
【表1−2】

【0143】
上記表1−1および1−2に示されるように、実施例1〜9の光反射フィルムは、高屈折率層中の金属酸化物粒子が水溶性無機高分子で被覆されていない比較例1〜3に比べて、いずれも優れた不燃性を示した。また、低屈折率層中にも水溶性無機高分子が含まれる実施例3は、他の実施例に比較して特に優れた不燃性を示した。
【0144】
また、実施例1〜9の光反射フィルムはいずれも空隙率が10%未満であり、金属酸化物粒子の凝集等による空隙が抑制され、屈折率低下が生じていないことが分かる。一方、比較例1〜3は空隙率が10%以上を示し、これにより、実施例1〜9に比較して屈折率低下が引き起こされていることが分かる。
【0145】
また、水溶性無機高分子としてポリ塩化アルミニウムを使用した実施例1、ポリ水酸化アルミニウムを使用した実施例7、およびポリジルコニアを使用した実施例8を比較すると、ポリ塩化アルミニウムが空隙の抑制の点でより優れていることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基材上に高屈折率層と低屈折率層とを有するユニットを少なくとも一つ含む光反射フィルムにおいて、高屈折率層に、水溶性高分子およびアニオン化されたカチオン性金属酸化物粒子の表面を水溶性無機高分子で被覆した粒子を含有することを特徴とする光反射フィルム。
【請求項2】
前記カチオン性金属酸化物粒子が、酸化ジルコニウム、酸化セリウムおよび酸化チタンの少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の光反射フィルム。
【請求項3】
前記水溶性無機高分子が、アルミニウム、ジルコニウムおよびチタンの少なくとも一種を骨格とする高分子であることを特徴とする請求項1または2に記載の光反射フィルム。
【請求項4】
前記水溶性無機高分子がポリ塩化アルミニウムであり、組成式がAl(OH)Clであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光反射フィルム。
【請求項5】
前記カチオン性金属酸化物粒子をアニオン化し、アニオン化されたカチオン性金属酸化物粒子の表面を前記水溶性無機高分子で被覆する工程、
前記水溶性高分子および前記アニオン化されたカチオン性金属酸化物粒子の表面を水溶性無機高分子で被覆した粒子を水系媒体中に含む高屈折率層塗布液を調製する工程、
水系媒体を用いた低屈折率層塗布液を調製する工程、および
前記高屈折率層塗布液と前記低屈折率層塗布液とを樹脂基材上に同時重層塗布する工程を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光反射フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記カチオン性金属酸化物粒子のアニオン化が、前記カチオン性金属酸化物粒子とアニオン性分散剤とを水系媒体中に分散させることにより行われる、請求項5に記載の光反射フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記アニオン性分散剤が、前記カチオン性金属酸化物粒子の全質量に対して0.1〜10質量%である、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の光反射フィルムまたは請求項6もしくは7に記載の方法により製造された光反射フィルムが、基体の少なくとも一方の面に設けられたことを特徴とする光反射体。

【公開番号】特開2013−83722(P2013−83722A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222109(P2011−222109)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(303000408)コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】