説明

光反射体ならびにそれを用いた面光源装置及び照明装置

【課題】光源光を複数個設置した照明装置に使用した場合であっても、輝線が発生しにくい光反射体の提供。
【解決手段】反射角ピーク比(即ち、反射面の法線に対して45°の角度から光線を照射したときの反射ピーク値/反射面の法線に対して15°の角度から光線を照射したときの反射ピーク値)が1.3〜10であり、正反射率(即ち、反射率−拡散反射率)が1.4〜10%である樹脂フィルムからなる輝線防止層2を含む光反射体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光反射体ならびにそれを用いた面光源装置及び照明装置に関するものである。本発明の光反射体は、面光源装置に使用される反射板、リフレクター及び各種照明装置に用いられる光反射用の部材として有用である。
【背景技術】
【0002】
内蔵式光源を配置したバックライト型の液晶ディスプレイや液晶テレビ、電飾看板等が広く普及している。バックライト型の内蔵式光源(面光源装置)のうち、直下式バックライトの典型的な構成は図2に示すとおりであり、構造体兼光反射体の役割を果たすハウジング11、拡散板14、そして冷陰極ランプ15などの光源からなる。サイドライト式バックライトの典型的な構成は図3に示すとおりであり、透明なアクリル板13に網点印刷12を行った導光板、光反射体11、拡散板14、そして冷陰極ランプ15などの光源からなる。何れも光源からの光を光反射体で反射させて、拡散板で均一面状の光を形成する。近年は表示物の大型化に伴い照明光源も高出力化や光源ランプ数の増加などの改良が図られてきている。輝度向上のため、光源は図2,図3に示すように複数個設置される場合もある。
【0003】
従来から本用途の光反射体には、構造体となるハウジングへの白色塗装や、白色ポリエステルフィルム(例えば特許文献1)が使用されることが多かった。ところが、白色塗装では充分な反射光による輝度向上が望めず、また、白色ポリエステルフィルムを用いた光反射体では近年の光量の増加により光反射体の色調の変化(黄変)が問題になることがあり、より変色の少ない素材が求められていた。このため、色調の変化が少ない白色ポリオレフィンフィルムを用いた光反射体も提案されている(例えば特許文献2〜5)。
【特許文献1】特開平4−239540号公報
【特許文献2】特開平6−298957号公報
【特許文献3】特開2002−31704号公報
【特許文献4】特開平8−262208号公報
【特許文献5】特開2003−176367号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、輝度向上のために光源を複数個設置した直下式光源を採用した場合、従来の白色ポリエステルフィルムや白色ポリオレフィンフィルムでは輝線による輝度ムラが生じてしまうという問題があった。これは光源ランプを複数個設置した場合に、ハウジングの構造や光反射体(白色フィルム)の光反射特性によって、干渉光の様に反射光が集中する部位が生じ、輝度が不均一となってしまう問題である。本発明ではこうした反射光の局在化に起因する面光源の輝度ムラを輝線と呼び、このような輝線の発生を抑えることを解決しようとする課題とした。
これとは別に、サイドライト型面光源において、光源ランプ近傍の光源光の漏れにより部分的に生じる輝度が高い部分を輝線と呼ぶ場合があるが、本願の課題はこの現象とは区別されるものである。
【0005】
すなわち本発明は、特に光源光(光源ランプ等)を複数個設置した照明装置のように、従来は輝線による輝度ムラが発生しやすかった照明装置に使用した場合であっても、輝線が発生しにくい光反射体を提供することを目的とした。また、本発明は、輝度ムラの少ない照明装置を提供することも目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、反射角ピーク比Pと正反射率R2を特定の範囲に制御した樹脂フィルムを光反射体に使用すれば、従来技術の課題を解決しうることを見出して本発明を提供するに至った。
すなわち本発明は、樹脂フィルムを含む光反射体であって、前記樹脂フィルムは輝線防止層(B)を含むものであり、前記輝線防止層(B)は20重量%以下の濃度でフィラーを含有するものであり、前記輝線防止層(B)表面にて測定される反射ピーク値P1及び反射ピーク値P2から下記の式(1)により求められる反射角ピーク比Pが1.3〜10であり、前記輝線防止層(B)表面にて測定される反射率R1及び拡散反射率R3から下記の式(2)により求められる正反射率R2が1.4〜10%である、樹脂フィルムを含む光反射体を提供するものである。
【0007】
【数1】

(上式において、P1は光反射体の輝線防止層(B)表面の法線に対して15°の角度から光線を照射したときの光反射体の反射ピーク値を表し、P2は光反射体の輝線防止層(B)表面の法線に対して45°の角度から光線を照射したときの光反射体の反射ピーク値を表す。)
【0008】
【数2】

(上式において、R1は光反射体の輝線防止層(B)表面の反射率を表し、R3は光反射体の輝線防止層(B)表面の拡散反射率を表す。)
【0009】
本発明の光反射体は前記輝線防止層(B)表面の凹凸個数密度が0.1×10-4〜3.5×10-4個/μm2であることが好ましく、反射率R1が95〜106%であることが好ましい。また、前記輝線防止層(B)に含まれるフィラーが平均粒径0.05〜15μmの無機フィラー及び/又は平均分散粒径0.05〜15μmの有機フィラーであることが好ましい。
本発明の光反射体を構成する樹脂フィルムは、基材層(A)と、基材層(A)の少なくとも片面に設けた輝線防止層(B)とを含む積層樹脂フィルムであることが好ましい。基材層(A)は熱可塑性樹脂(特にポリオレフィン系樹脂)とフィラーを含有し、基材層(A)が延伸されており、その面積延伸倍率が1.3〜80倍であることが好ましい。
中でも、基材層(A)が5〜75重量%の濃度でフィラーを含有しており、該フィラーが平均粒径0.05〜1.5μmの無機フィラー(特に表面処理された無機フィラー)及び/又は平均分散粒径0.05〜1.5μmの有機フィラーであることが好ましい。さらには基材層(A)の空孔率は15〜70%であることが好ましい。
さらに、樹脂フィルムは、少なくとも基材層(A)の輝線防止層(B)を含む面とは反対面に補強層(C)を有することが好ましく、輝線防止層(B)の肉厚は0.5〜20μmであることが好ましい。
【0010】
本発明は、上記光反射体を用いた面光源装置及び照明装置も提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の光反射体は、光源光の数・ハウジング形状・それぞれの部材の設置位置などが異なっている種々の面光源装置に設置したときに、設置した面光源装置の構造や構成によらずに輝線の発生を効果的に抑制することができる。
【0012】
また本発明の光反射体は、照明装置の光反射用の部材として用いた場合にも、高反射率であるもののハレーションを起こしにくいので有用である。
【発明の実施するための最良の形態】
【0013】
以下において、本発明の光反射体の構成及び効果を詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本発明において光拡散層「〜」はその前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
【0014】
本発明の光反射体は、樹脂フィルムからなる。樹脂フィルムは、輝線防止層(B)を含むものであり、基材層(A)と基材層(A)の少なくとも片面(反射面側)に輝線防止層(B)を含む積層樹脂フィルムであることが好ましく、必要に応じて補強層(C)をさらに有していることが好ましい。
【0015】
基材層(A)
基材層(A)は、輝線防止層(B)との積層樹脂フィルムとした際に、光反射体全体の反射率を向上させるための層であり、また樹脂フィルムの成形をより容易にするための基材として用いる層である。熱可塑性樹脂を含有する層であり、好ましくは熱可塑性樹脂とフィラーを含有する層である。
【0016】
(熱可塑性樹脂)
基材層(A)に用いられる熱可塑性樹脂の種類は特に制限されない。基材層(A)に使用する熱可塑性樹脂(A)としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等のエチレン系樹脂、プロピレン系樹脂、ポリメチル−1−ペンテン、エチレン−環状オレフィン共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−6,10、ナイロン−6,12等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやその共重合体、ポリエチレンナフタレート、脂肪族ポリエステル等の熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート、アタクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド等の熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂は1種だけを選択してこれを単独で使用してもよいし、2種以上を選択して組み合わせて使用してもよい。
【0017】
これらの中でも、耐薬品性や生産コスト等の観点より、ポリオレフィン系樹脂を用いることが好ましく、プロピレン系樹脂を用いることがより好ましい。
プロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体や、主成分であるプロピレンと、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン,4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィンとの共重合体を用いることができる。立体規則性は特に制限されず、アイソタクティックないしはシンジオタクティック及び種々の程度の立体規則性を示すものを用いることができる。また、共重合体は2元系でも3元系でも4元系でもよく、またランダム共重合体でもブロック共重合体であってもよい。
【0018】
基材層(A)を構成する主要な樹脂がプロピレン系樹脂の場合、延伸性を改良するために、ポリエチレンやエチレン酢酸ビニル等のプロピレン系樹脂より低融点の樹脂をプロピレン系樹脂に対して3〜25重量%配合してもよい。
【0019】
基材層(A)における熱可塑性樹脂の含有量は25〜95重量%であることが好ましく、30〜90重量%であることがより好ましい。基材層(A)における熱可塑性樹脂の含有量が25重量%以上であれば、後述する延伸成形時に表面にキズが生じにくくなる傾向があり、95重量%以下であれば、充分な空孔が得られやすくなる傾向がある。
【0020】
(フィラー)
基材層(A)に熱可塑性樹脂とともに用いられるフィラーとしては、各種無機フィラーまたは有機フィラーを挙げることができる。
【0021】
無機フィラーとしては、重質炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウム、焼成クレー、タルク、酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、珪藻土等を例示することができる。また、上記無機フィラーの種々の表面処理剤による表面処理品も例示できる。中でも重質炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウム及びそれらの表面処理品、クレー、珪藻土は安価で延伸時の空孔形成性がよいために好ましい。さらに好ましいのは、重質炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウムを種々の表面処理剤で表面処理したものである。
【0022】
表面処理剤としては、例えば樹脂酸、脂肪酸、有機酸、硫酸エステル型陰イオン界面活性剤、スルホン酸型陰イオン界面活性剤、石油樹脂酸、これらのナトリウム、カリウム、アンモニウム等の塩、または、これらの脂肪酸エステル、樹脂酸エステル、ワックス、パラフィン等が好ましく、非イオン系界面活性剤、ジエン系ポリマー、チタネート系カップリング剤、シラン系カップリング剤、燐酸系カップリング剤等も好ましい。硫酸エステル型陰イオン界面活性剤としては、例えば長鎖アルコール硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル、硫酸化油等あるいはそれらのナトリウム、カリウム等の塩が挙げられ、スルホン酸型陰イオン界面活性剤としては、例えばアルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、パラフィンスルホン酸、α−オレフィンスルホン酸、アルキルスルホコハク酸等あるいはそれらのナトリウム、カリウム等の塩が挙げられる。また、脂肪酸としては、例えばカプロン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ヘベン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸等が挙げられ、有機酸としては、例えばマレイン酸、ソルビン酸等が挙げられ、ジエン系ポリマーとしては、例えばポリブタジエン、イソプレンなどが挙げられ、非イオン系界面活性剤としてはポリエチレングリコールエステル型界面活性剤等が挙げられる。これらの表面処理剤は1種だけを選択してこれを単独で使用してもよいし、2種以上を選択して組み合わせて使用してもよい。これらの表面処理剤を用いた無機フィラーの表面処理方法としては、例えば、特開平5−43815号公報、特開平5−139728号公報、特開平7−300568号公報、特開平10−176079号公報、特開平11−256144号公報、特開平11−349846号公報、特開2001−158863号公報、特開2002−220547号公報、特開2002−363443号公報などに記載の方法を使用することができる。
【0023】
有機フィラーとしては、基材層(A)に使用する熱可塑性樹脂の融点またはガラス転移点よりも高い融点またはガラス転移点(例えば、120〜300℃)を有するものが使用される。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、メラミン樹脂、環状オレフィン単独重合体、環状オレフィンとエチレンとの共重合体、ポリエチレンサルファイト、ポリイミド、ポリエチルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイト等を例示することができる。中でも、基材層(A)に使用する熱可塑性樹脂(特にポリオレフィン系樹脂)よりも融点またはガラス転移温度が高くて非相溶性の有機フィラーを使用するのが空孔形成の点で好ましい。
【0024】
基材層(A)には、無機フィラーまたは有機フィラーの中から1種を選択してこれを単独で使用してもよいし、2種以上を選択して組み合わせて使用してもよい。2種以上を組み合わせて使用する場合には、有機フィラーと無機フィラーを混合して使用してもよい。
【0025】
無機フィラーの平均粒径及び有機フィラーの平均分散粒径は、例えば、マイクロトラック法、走査型電子顕微鏡による一次粒径の観察(本発明では粒子100個の平均値を平均粒径とした)、比表面積からの換算(本発明では(株)島津製作所製の粉体比表面積測定装置SS−100を使用し比表面積を測定した)などにより求めることができる。
延伸成形により発生させる空孔サイズを好ましい範囲に調整するため、基材層(A)に使用する無機フィラーの平均粒径または有機フィラーの平均分散粒径は、好ましくはそれぞれが0.05〜1.5μmの範囲、より好ましくはそれぞれが0.1〜1μmの範囲のものを使用する。平均粒径または平均分散粒径が1.5μm以下のフィラーを用いれば、空孔がより均一になる傾向がある。また、平均粒径または平均分散粒径が0.05μm以上のフィラーを用いれば、所定の空孔がより得られやすくなる傾向がある。
【0026】
基材層(A)は内部に所定の空孔を設けるために、延伸されていることが好ましい。基材層(A)の面積延伸倍率は1.3〜80倍であることが好ましく、より好ましくは7〜70倍、さらに好ましくは22倍〜65倍、最も好ましくは25〜60倍である。
延伸成形により発生させる空孔を好ましい範囲で付与するため、延伸フィルム中への上記フィラーの配合量は好ましくは5〜75重量%、より好ましくは10〜70重量%の範囲にする。フィラーの配合量を5重量%以上にすれば、充分な空孔数が得られやすくなる傾向がある。また、フィラーの配合量を75重量%以下にすれば、表面にキズがより生じにくくなる傾向がある。
【0027】
(構造)
本発明で用いる基材層(A)は、単層構造であっても、多層構造であってもよい。基材層(A)の肉厚は、30〜1000μmが好ましく、40〜400μmがより好ましく、50〜300μmがさらに好ましい。
【0028】
本発明の光反射体を構成する基材層(A)は、これに含まれる無機フィラー及び/又は有機フィラーと、延伸成形によって、内部に空孔を形成することが好ましい。該基材層(A)の空孔率は、好ましくは15〜70%、より好ましくは20〜55%の範囲とする。本明細書において「空孔率」とは、下記式(3)にしたがって計算される値を意味する。
【0029】
【数3】

(上式において、ρ0は基材層(A)の真密度であり、ρは基材層(A)の密度である)
【0030】
延伸前の材料が多量の空気を含有するものでない限り、真密度は延伸前の密度にほぼ等しい。本発明で用いる基材層(A)の密度は、一般に0.5〜1.2g/cm3の範囲であり、空孔が多いほど密度は小さくなり空孔率は大きくなる。空孔率が大きい方が表面の反射特性を向上させやすい。
【0031】
輝線防止層(B)
本発明の輝線防止層(B)は、樹脂フィルムを光反射体として用いた際、特定の数値範囲の反射角ピーク比P及び正反射率R2を発現する様に設けるものである。
輝線防止層(B)は単体で、または基材層(A)の光反射面のみの片面もしくは基材層(A)の両面に形成できる。輝線防止層(B)の形成方法としては、通常の単層フィルム成形方法と同様にIダイやOダイを用いて押出成形する方法,輝線防止層(B)と基材層(A)の溶融原料を多層TダイやIダイを使用して共押出し樹脂フィルムを得る方法,成形された基材層(A)上に輝線防止層(B)の溶融原料を押し出してラミネートする方法,或いは基材層(A)を成形して得た後に輝線防止層(B)を接着層を介して貼合して設ける方法等が挙げられる。
これらの樹脂フィルムは押出成形後に延伸することが好ましい。単層の樹脂フィルムまたは共押出による積層樹脂フィルムは、成形後に一軸延伸または二軸延伸することができる。基材層(A)を成形して得た後にこれを一軸延伸し、次いで輝線防止層(B)の溶融原料を押し出してラミネートし、この積層フィルムを延伸して延伸積層樹脂フィルムとしても良い。
【0032】
輝線防止層(B)には、基材層(A)に使用されるものと同様の熱可塑性樹脂を使用することができる。輝線防止層(B)に使用されるフィラーの粒径は、好ましくは0.05〜15μm、より好ましくは2〜10μmである。粒径が0.05μm以上のフィラーを用いれば、好ましい表面凹凸が形成されて輝線が発生しにくくなる傾向がある。粒径が15μm以下のフィラーを用いれば、表面強度が高くてフィラーが脱落しにくい光反射体を製造しやすくなる傾向がある。フィラーの配合量は、好ましくは0〜20重量%、より好ましくは1〜15重量%の範囲である。配合量が20重量%を越えると、表面凹凸個数が適度な範囲を越えて多くなり、輝線発生を抑えにくくなる傾向がある。
【0033】
輝線防止層(B)の肉厚は、好ましくは0.5〜20μm、より好ましくは2〜6μmである。肉厚が0.5μm以上であれば、十分な輝線防止効果が得られやすい傾向がある。また、20μm以下であれば、基材層(A)の反射性能を阻害しにくくて高い反射率を維持しやすい傾向がある。
【0034】
補強層(C)
本発明の光反射体を構成する樹脂フィルムとして、基材層(A)や輝線防止層(B)の他に補強層(C)が設けてもよい。補強層(C)は、基材層(A)や輝線防止層(B)の範疇に入らない層であって、樹脂フィルム全体の強度を補強することができる層をいう。補強層(C)は、基材層(A)の反射面側に設けてもよい。従って、基材層(A)と輝線防止層(B)の間に設けて(B)/(C)/(A)の構成とすることができる。また、基材層(A)の反射面側の反対側の面に設けて(B)/(A)/(C)の構成としてもよい。
【0035】
補強層(C)の形成方法としては、上記基材層(A)の延伸成形前に多層TダイやIダイを使用して補強層(C)の溶融原料を共押出し、得られた積層体を延伸成形して設ける方法、上記基材層(A)が2軸延伸の場合、1軸方向の延伸が終了したのち、補強層(C)の溶融原料を押し出し貼合し、この積層体を1軸延伸成形して設ける方法、上記基材層(A)を延伸成形して得た後に補強層(C)の原料樹脂を直接または易接着層を介して押し出し貼合して設ける方法等が挙げられる。
【0036】
補強層(C)には、基材層(A)に使用されるものと同様の熱可塑性樹脂を使用することができる。また、上記フィラーを含有しても良く、フィラーの含有量は好ましくは0〜20重量%、より好ましくは0〜10重量%、さらに好ましくは0〜5重量%、特に好ましくは0〜3重量%である。
補強層(C)の肉厚は、1μm以上が好ましく、2〜30μmがより好ましく、3〜20μmがさらに好ましい。1μm以上にすれば、光反射体の表面強度と加工適性を向上させやすい傾向がある。
【0037】
樹脂フィルム
(層構成)
本発明の光反射体を構成する樹脂フィルムは、上記の基材層(A)と輝線防止層(B)を含む積層フィルムであることが好ましい。例えば、基材層(A)の両面に輝線防止層(B)を積層した構造を挙げることができる。また、本発明の光反射体を構成する樹脂フィルムは、基材層(A)と輝線防止層(B)以外の層がさらに積層された構造を有していてもよい。例えば、基材層(A)の輝線防止層(B)を含む面とは反対面もしくは基材層(A)と輝線防止層(B)の間に補強層(C)を有していてもよい。樹脂フィルムの具体的な層構成として、(B)/(A)、(B)/(A)/(B)、(B)/(A)/(C)、(B)/(C)/(A)、(B)/(C)/(A)/(B)、(B)/(C)/(A)/(C)、(B)/(C)/(A)/(C)/(B)などの構造を例示することができる。
【0038】
(添加剤)
本発明の光反射体を構成する樹脂フィルムには、必要により、蛍光増白剤、安定剤、光安定剤、分散剤、滑剤等を配合してもよい。安定剤を使用する場合は、立体障害フェノール系やリン系、アミン系等の安定剤を、該安定剤を含有する層の重量の0.001〜1重量%配合することが好ましい。また、光安定剤を使用する場合は、立体障害アミンやベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系などの光安定剤を、該光安定剤を含有する層の重量の0.001〜1重量%配合することが好ましい。さらに、無機フィラーの分散剤を使用する場合は、シランカップリング剤、オレイン酸やステアリン酸等の高級脂肪酸、金属石鹸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸ないしはそれらの塩等を、該分散剤を含有する層の重量の0.01〜4重量%配合することが好ましい。
【0039】
樹脂フィルムは複数の層から構成される積層体であることが好ましいが、その場合は各層に上記の添加剤を適宜選択して添加することができる。
【0040】
(成形)
樹脂フィルムの成形方法としては、一般的な1軸延伸や2軸延伸方法が使用できる。具体例としてはスクリュー型押出機に接続された単層または多層のTダイやIダイを使用して溶融樹脂をシート状に押し出した後、ロール群の周速差を利用した縦延伸で1軸延伸する方法、さらにこの後にテンターオーブンを使用した横延伸を組み合わせた2軸延伸方法や、テンターオーブンとリニアモーターの組み合わせによる同時2軸延伸などが挙げられる。
【0041】
延伸温度は使用する熱可塑性樹脂の融点より2〜60℃低い温度、ガラス転移点より2〜60℃高い温度であることが好ましい。例えば、使用する熱可塑性樹脂がプロピレン単独重合体(融点155〜167℃)のときは95〜165℃、ポリエチレンテレフタレート(ガラス転移点:約70℃)のときは100〜130℃で延伸することが好ましい。また、延伸速度は20〜350m/分が好ましい。
【0042】
延伸後のフィルムは、必要により熱処理(アニーリング処理)を行って、結晶化の促進やフィルムの熱収縮率低減などを図ることもできる。
【0043】
延伸後のフィルム中に発生する空孔の大きさを調整するために、基材層(A)の面積延伸倍率は好ましくは1.3〜80倍の範囲とし、より好ましくは7〜70倍の範囲、さらに好ましくは22倍〜65倍、最も好ましくは25〜60倍とする。面積延伸倍率が1.3〜80倍の範囲内であれば、微細な空孔が得られやすく、反射率の低下も抑えやすい傾向がある。
【0044】
光反射体
本発明の光反射体は、上記の樹脂フィルムを有する点に特徴がある。本発明の光反射体は、上記の樹脂フィルムのみからなっていてもよいし、上記の樹脂フィルムにさらに適当な材料が付加されたものであってもよい。
【0045】
本発明の光反射体に用いる樹脂フィルムは、特定の数値範囲の反射角ピーク比P及び正反射率R2を有する。本発明の光反射体は、この反射角ピーク比P及び正反射率R2をそれぞれ特定の数値範囲とすることで、効果的に輝線の発生を防止することができる。
光反射体の輝線防止層(B)表面の法線に対して15°の角度から光線を照射し、受光器の角度を変えながら光反射体の反射率を測定したときの、反射率の最大値を反射ピーク値P1とした。同様に、光反射体の輝線防止層(B)表面の法線に対して45°の角度から光線を照射し、受光器の角度を変えながら光反射体の反射率を測定したときの、反射率の最大値を反射ピーク値P2とした。得られた値P2を値P1で割った値を反射角ピーク比Pとした。
本発明の光反射体に用いる樹脂フィルムは、上記式(1)で表される反射角ピーク比Pが1.3〜10の範囲内の値を取り、好ましくは1.4〜3の範囲内の値を取る。反射角ピーク比Pは、反射光分布の指標となる。反射角ピーク比Pが1.3未満の場合は、ランプ間が暗くなり輝線が発生しやすくなる。反射角ピーク比Pが10を超える場合、ランプ直近が暗くなり輝線が発生しやすくなる。
また、光反射体の輝線防止層(B)表面で測定される全反射率をR1とし、光反射体の輝線防止層(B)表面で測定される拡散反射率をR3とした。得られた値R1から値R3を引いた値を正反射率R2とした。
本発明の光反射体は、上記式(2)で表される正反射率R2が1.4〜10%の範囲の値を取り、好ましくは2〜5%の範囲の値を取る。正反射率R2が1.4未満の場合はランプ間が暗くなり輝線が発生しやすくなる。また、正反射率R2が10を超える場合、ランプ間が明るくなりすぎ、輝線として現われる。
【0046】
また、本発明の光反射体の反射表面は、凹凸個数密度が0.1×10-4〜3.5×10-4個/μm2であることが好ましく、0.3×10-4〜3.0×10-4個/μm2であることがさらに好ましい。凹凸個数密度が0.1×10-4個/μm2未満、或いは3.5×10-4個/μm2を超えると、反射ピーク比Pを本発明の範囲内に調整しにくい傾向がある。
波長550nmで測定した波長の反射率R1は好ましくは95〜106%、より好ましくは98〜106%である。反射率が95%未満であると、面光源装置に十分な輝度が得にくい。反射率R1は大きいほど良いが、本発明の実施形態では106%を越えて大きな反射率R1は得にくい。
【0047】
本発明の光反射体は面光源装置として有用であり、面光源装置としては、例えば液晶TV、モニターなどの液晶表示装置用のバックライト、電飾看板用バックライトなどが挙げられる。
また本発明の光反射は照明装置として有用であり、本発明の照明装置としては、例えばシーリングライト、ダウンライト、ベースライト、キッチンライト、ブラケット、ペンダントなどの家庭用照明装置などが挙げられる。
【実施例】
【0048】
以下に実施例、比較例及び試験例を記載して、本発明をさらに具体的に説明する。以下に示す材料、使用量、割合、操作等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適時変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に制限されるものではない。なお、本実施例に使用した材料を表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
(実施例1〜3)
表1に記載の材料を表2に記載の配合で混合した組成物(A)を押出機を用いて250℃に溶融混練した。その後、シート状に押し出し、冷却ロールで約60℃まで冷却することによって基材層(A)を得た。この基材層(A)を145℃に再加熱した後、多数のロール群の周速差を利用して縦方向に表2に記載の倍率で延伸した。
表1に記載の材料を表2に記載の配合で混合した組成物(B)、(C)を溶融混練し、得られた基材層(A)の両面に溶融押し出しして輝線防止層(B)、補強層(C)をB/C/A/Cとなるように積層した。ついでこの積層物を160℃に再加熱してテンターで横方向に表2に記載の倍率で延伸した。その後、160℃でアニーリング処理した後、60℃まで冷却し、耳部をスリットして表2に記載の厚みを有する四層構造の積層フィルムを得た。この積層フィルムを光反射体とした。
【0051】
(比較例1)
表1に記載の材料を表2に記載の配合で混合した以外は実施例1〜3と同様にして光反射体を得た。
【0052】
(試験例)
実施例1〜3及び比較例1で得られた各光反射体について、以下の測定を行った。
【0053】
(1)変角分光光度計による測定
自動変角分光光度計(GP200:(株)村上色彩研究所製)を用いて測定を行った。光線照射角45°、受光角度−60°〜90°の条件で測定した際の反射ピーク値を測定してP2とした。
光線照射角を15°に変更しその他の条件はP2の測定条件と同様にして測定を行い、P2との相対反射率として表したものをP1とした。
また、P2/P1をピーク比Pとした。
【0054】
(2)積分球を装着した分光光度計による測定
φ150mmの積分球を装着した分光光度計((株)日立製作所製:U−3310)を用いて、JIS−Z8722条件d記載の方法に従って測定した波長550nmの反射率をR1とした。
φ150mmの積分球を装着した分光光度計((株)日立製作所製:U−3310)を用いて、JIS−Z8722条件d記載の方法に従い、光トラップを用いて正反射成分をカットして測定した波長550nmの反射率を拡散反射率R3とした。
また、R1−R3を正反射率R2とした。
【0055】
(3)空孔率の測定
JIS−P8118にしたがって基材層(A)の密度ρを測定し、さらに基材層(A)の真密度ρ0を測定した後、上記式(3)にしたがって空孔率を算出した。
【0056】
(4)凹凸個数密度の測定
非接触3次元表面形状粗さ測定器(ザイゴ(株)製:NewView5010)を用いて、測定面積:2mm×2mm、対物レンズ:20倍、14μm以下の波長をカットすることにより測定を行い、解析ソフト(ザイゴ(株)製:Metro Pro)を用いて解析を行って得たPeak Density(1/μm2)を凹凸個数密度とした。
【0057】
(5)輝線レベルの評価
図2の面光源装置に設置することによって、以下の5段階で輝線レベルを評価した。各レベルの内容は下記のとおりであり、光反射体として許容しうるレベルは3以上である。
5: 輝線が全く見えず良好なレベル
4: 輝線が若干発生するが良好なレベル
3: 輝線が発生するが実用上問題ないレベル
2: 輝線が発生し実用上問題あるレベル
1: 輝線が明瞭に見え使用に耐えないレベル
【0058】
これらの各測定結果を表2、3に示す。
【0059】
【表2】

【0060】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の光反射体を用いれば、特に光源光(光源ランプ等)を複数個設置した照明装置のように、従来は輝線による輝度ムラが発生しやすかった照明装置であっても、輝線による輝度ムラを効果的に抑えることができる。このような効果は、光源光の数・ハウジング形状・それぞれの部材の設置位置などが異なっている種々の面光源装置に設置したときにも得られる。したがって、本発明の産業上の利用可能性は高い。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】光反射体の層構成例を示す断面図である。
【図2】直下式バックライトの構成を示す断面図である。
【図3】サイドライト式バックライトの構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0063】
1 基材層(A)
2 輝線防止層(B)
3 補強層(C)
11 光反射体(ハウジング)
12 反射用白色網点印刷
13 アクリル板(導光板)
14 拡散板
15 冷陰極ランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フィルムを含む光反射体であって、
前記樹脂フィルムは輝線防止層(B)を含むものであり、
前記輝線防止層(B)は20重量%以下の濃度でフィラーを含有するものであり、
前記輝線防止層(B)表面にて測定される反射ピーク値P1及び反射ピーク値P2から下記の式(1)により求められる反射角ピーク比Pが1.3〜10であり、
前記輝線防止層(B)表面にて測定される反射率R1及び拡散反射率R3から下記の式(2)により求められる正反射率R2が1.4〜10%である、樹脂フィルムを含む光反射体。
【数1】

(上式において、P1は前記光反射体の輝線防止層(B)表面の法線に対して15°の角度から光線を照射したときの前記光反射体の反射ピーク値を表し、P2は前記光反射体の輝線防止層(B)表面の法線に対して45°の角度から光線を照射したときの前記光反射体の反射ピーク値を表す。)
【数2】

(上式において、R1は前記光反射体の輝線防止層(B)表面の反射率を表し、R3は前記光反射体の輝線防止層(B)表面の拡散反射率を表す。)
【請求項2】
前記光反射体の輝線防止層(B)表面の凹凸個数密度が0.1×10-4〜3.5×10-4個/μm2であることを特徴とする請求項1に記載の光反射体。
【請求項3】
前記反射率R1が95〜106%であることを特徴とする請求項1または2に記載の光反射体。
【請求項4】
前記輝線防止層(B)に含まれるフィラーが平均粒径0.05〜15μmの無機フィラー及び/又は平均分散粒径0.05〜15μmの有機フィラーであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光反射体。
【請求項5】
前記樹脂フィルムが、基材層(A)と、基材層(A)の少なくとも片面に設けた前記輝線防止層(B)とを含む積層樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光反射体。
【請求項6】
前記基材層(A)が延伸された層であって、前記基材層(A)の面積延伸倍率が1.3〜80倍であることを特徴とする請求項5に記載の光反射体。
【請求項7】
前記基材層(A)が熱可塑性樹脂と5〜75重量%の濃度でフィラーを含有し、前記フィラーが平均粒径0.05〜1.5μmの無機フィラー及び/又は平均分散粒径0.05〜1.5μmの有機フィラーであることを特徴とする請求項5または6に記載の光反射体。
【請求項8】
前記基材層(A)に含まれる前記無機フィラーが表面処理された無機フィラーであることを特徴とする請求項7に記載の光反射体。
【請求項9】
前記基材層(A)が熱可塑性樹脂としてポリオレフィン系樹脂を含有することを特徴とする請求項5〜8のいずれか一項に記載の光反射体。
【請求項10】
前記基材層(A)の空孔率が15〜70%であることを特徴とする請求項5〜9のいずれか一項に記載の光反射体。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の光反射体を用いた面光源装置。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の光反射体を用いた照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−148391(P2007−148391A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−294380(P2006−294380)
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【出願人】(000122313)株式会社ユポ・コーポレーション (73)
【Fターム(参考)】